東海大学広報メディア学科河井ゼミ 地域スポーツ2014

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プロ野球独立リーグが存続していくために必要な要因とは何か夏目・竹内・小室・高舘

研究背景

現在、日本のスポーツをとりまく環境

現在の日本はスポーツに追い風が吹いている

・次々と誕生するプロスポーツ・リーグ

・2011年に「スポーツ立国の実現」を目指して定められたスポーツ基本法

・2020年に開催が決まった東京オリンピック

2005年より 2005年より 2014年より

なぜ注目したのか

1993 年にサッカーのJ リーグが開幕し、96 年からは誰

もが「観(み)る」「する」「参加する」スポーツ環境作りを掲げた「Jリーグ100 年構想」により地域性を明確に

したリーグ・チーム運営がおこなわれるようになり、このJ リーグの取組みを参考に、最近、多くのスポーツに

おいて地域に根ざしたプロリーグやチームが新設されている。

参考・「スポーツビジネスの現状」 関東経済産業局

Jリーグの地域密着政策の成功により、それをモデルとして近年、多くのプロスポーツリーグ・チームが誕生している

私達はこれらを第二次地域密着型プロスポーツと呼びます

この用語は、新潟県や金沢市でも使われている言葉である

地域密着型プロスポーツとは

新潟県

新潟県には、サッカー、バスケットボール、野球などのプロスポーツチームがあります。

県では、スポーツを通じて地域に活力を、県民のみなさんに夢と感動を与えることのできる、プロスポーツに代表される「みるスポーツ」を推進しています。(新潟スポーツネットより)

金沢市

金沢市では、地域に根差し市民から愛されるクラブを目指す地元密着型のプロスポーツチームと、市民との交流を通じた支援活動を展開することにより、地域スポーツの振興や地域の活性化を図るとともに、選手と市民との触れ合いの場の創出につなげます。(金沢市公式ホームページより)

なぜ、独立リーグなのか

独立リーグ以外

独立リーグ

各地域にあるチームを一つのリーグが管理・運営をしている

各地域にリーグがあり、地域ごとで管理・運営している

よって、よりプロスポーツと地域との関係をはかりやすいと考え、注目した。

独立リーグ各球団ベースボールチャレンジリーグ

(BCリーグ)【2007~】

• 群馬ダイヤモンドペガサス

• 信濃グランセローズ

• 新潟アルビレックスBC

• 富山サンダーバース

• 石川ミリオンスターズ

• 福井ミラクルエレファンス

2015年から新加入

• 福島ホープス

• 武蔵ヒートベアーズ(埼玉)

四国アイランドリーグ【2005~】・徳島インディゴソックス・香川オリーブガイナーズ・高知ファイティングドッグス・愛媛マンダリンパイレーツ

これまでに地域密着型プロスポーツを扱った研究の中で、観客が生み出す経済効果に触れているものがある

早稲田大学 スポーツ科学学術院

武藤泰明教授

J地域に密着したプロスポーツは「観客が来なければチームが成立しない」

・観客が来なければ、入場料や飲食などの直接効果は生まれない

・また、観客が来なければ、地元の人の理解が得られず、スタジアムの改築などで発生する経済波及効果も生まれない

参考・プロスポーツクラブの地域密着活動の意味と意義は何か

入場料・チケット料などの直接効果発生

地元の人が理解

スタジアムの改築や道路整備、宿泊施設などへの投資により、経済波及効果発生

しかし

一試合の平均観客動員数(2011年)

BCリーグ(上位4球団)新潟アルビレックスBC

1038人福井ミラクルエレファンツ

975人信濃グランセローズ

935人石川ミリオンスターズ

860人

四国ILリーグ香川オリーブガイナーズ

793人愛媛マンダリンパイレーツ

621人徳島インディゴソックス

439人高知ファイティングドッグス

375人

同年のNPBの平均観客数は約25000人

歴史や規模からして、違いがあるとはいえ、集客人数が30000人の球場を使っている球団もあり、その中で、この観客数では、観客が来ているとは言い難い。

仮説

観客が来ているとは言えず、経済的効果を生み出せているとは言い難いプロ野球独立リーグが、存続できているのは、地域の行政や企業からの支援という要因があり、その支援を受けるためにリーグやチームが地域に密着した経営をしているからではないか?

リーグ存続

最低限の観客数 行政・企業の支援

地域に密着した経営

研究目的経済的効果を生み出しているとは言い難い、プロ野球独立リーグが、存続していくためには、どのような要因が必要なのかを明らかにする。

社会的意義

多くの研究者や学生によって様々な研究がなされている

出来て、間もないこともあり研究された事例が少ない

というより、ほぼない

これまで、プロスポーツの成功には経済的効果が必要不可欠であるとされていた。プロ野球独立リーグの研究により、

新たなビジネスモデルの提案ができれば良い

研究手法事例研究

ヒアリング

事例研究①~地方紙がつなぐ独立リーグと地域~

北陸地域新聞購読データ

県名

世帯数

新聞名

発行部

数 普及率

(%)

新聞名

発行部

数 普及率

(%)

新聞名

発行部

数 普及率

(%)

新潟県 869,721 新潟日報 471,288 54.19 読売 106,394 12.23 朝日 66,152 7.61

富山県 403,627 北日本 240,351 59.55 読売 83,492 20.69北國・富山

43,757 10.84

石川県 462,124 北國・富山 306,110 66.24北陸中日

88,994 19.26 読売 19,845 4.29

福井県 283,611 福井 206,614 72.85 読売 12,801 4.51日本経済

10,659 3.76

1位 2位 3位

参考:adv.yomiuri読売新聞購読ガイド 2013

四国地方の新聞購読データ

県名

世帯数

新聞名

発行部数

普及率(%

)

新聞名

世帯数

普及率(%

)

新聞名

発行部数

普及率(%

)

徳島県 329,886 徳島 242,252 73.44 朝日 13,122 3.98日本経済

12,183 3.69

香川県 427,135 四国 203,249 47.58 読売 52,59712.3

1朝日 52,269 12.24

愛媛県 645,431 愛媛 261,506 40.52 読売 74,08111.4

8朝日 69,142 10.71

高知県 353,246 高知 190,535 53.94 読売 10,174 2.88 朝日 8,326 2.36

1位

参考:adv.yomiuri読売新聞購読ガイド 2013

これらの地方紙は、独立リーグ各球団のメインスポンサーでもある

地方紙における独立リーグの取り上げられ方

北國新聞(石川)の朝刊の一面

ヒアリングより

1月19日 電話にて 高知ファイティングドッグス球団株式会社秘書広報室 久保田真帆さん

球団経営には、地方紙の存在が重要だと思うのですが、どうですか?

→高知県の地方紙である高知新聞は大切なスポン

サーです。試合の結果から、地域での活動まで様々なことを記事にしてもらっています。1年でだいたい200回前後、取り上げてもらっています。

地方紙は、それ自体が球団を支援する重要なスポンサーである。

同時に、大きな記事で独立リーグを扱うことにより、企業や行政に独立リーグのことを伝える、理解させるといった役割も担っている。

事例研究②~こちらから出向くのが独立リーグ~

通常、プロスポーツはホーム球場があり、ファンの方に見に来てもらう。

しかし、現在、四国アイランドリーグの中にはホーム球場を持たず、県内にある様々な球場に出向き、試合を行っているという球団がある。例えば

高知県黒潮町大方にある野球場。スタンドもなければ外野のラバーも

ない

生名スポレク球場。生名島という離島にある

なぜ、このような場所で試合を行うのか• ポイントは球団と自治体の利害の一致

老朽化した球場を何とか活用してリノベーションを進めたい

野球の試合というビッグイベントによって、島に人を呼びたい

ファンの裾野を拡大したい

高い収入が欲しい(1試合50万円で開催)

利害の一致

高知県黒潮町大方 生名島

人口 1,886人 人口 11.316人

観客 885人観客 377人

引用 http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041/article/1692013年07月21日

引用 http://shikokukagawa83th.ashita-sanuki.jp/c1876.html2009年05月18日

地域の抱えるニーズを満たす

興行権収入ファンの拡大

独立リーグと地域との間にはウィン・ウィンの関係が出来上がっている

先ほど挙げた観客数も一般的に見れば少ないのかもしれないが、過疎に悩んでいる地域からすれば、非常に多い数字なのかもしれない

ここまでの事例は、仮説を裏付けるものだったのですが、他の事例を見ていくと、仮説に当てはまらないものが出てきました

事例研究③~国際化はビジネスチャンス~

2012シーズン

四国ILリーグ、BCリーグで42人の外国人がプレー

→フランス人、チェコ人、イタリア人、オーストラリア人

BCリーグでは野球後進国の国籍選手の所属も見える

野球後進国独立リーグ各球団

授業料

プロ体験

戦力としてはプロ未満だが、プロ体験をビジネスにしている

石川MS ハモンド→オリックス・バッファローズ(2012年)香川OG マエストリ→オリックス・バッファローズ(2012年)

NPB

移籍金

外国人選手 独立リーグ各球団

これらの国際化は

行政や企業からの支援

地域密着の経営

では、なぜ、行っているのか

石川ミリオンスターズ球団社長端保 聡さん

外国人選手には、日本の選手にはできない分かりやすさがある。

具体的にいうならば、150キロが投げられて、150mのホームランが打てる。

試合を観に来たお客さんは、これらのプレーに魅せられて、納得して帰ってくださる。

2013年8月28日 ヒアリングより

つまり

国際化の目的は、試合を観に来た人に、外国人選手の分かりやすくすごいプレーを見せることで、納得してもらうことである

なぜ、納得してもらう必要があるのか

リーグ存続

最低限の観客数 行政・企業の支援

地域に密着した経営

この支援に使われるお金は、行政ならば、税金。企業ならば、会社の売り上げである。

意味のないものに使っていると分かれば、当然、市民、株主、従業員から不満が出る。

そうならないために独立リーグは、それらの人を納得させるだけのことをしなければならない。

リーグ存続

最低限の観客数

行政・企業の支援

地域に密着した経営

市民、株主、従業員の精神的支援

must

先ほど挙げた事例も精神的支援につながっている

独立リーグが地域の中で重要なもの、欠かせないものとなり、市民、株主、従業員の精神的支援につながる

大きな記事で独立リーグを伝える

独立リーグの支持につながる

ヒアリングより1月10日 メールにて BCリーグ 新潟アルビレックスのファン

上野 仁さん

北陸地方では、地元地方紙における独立リーグ(BC

リーグ)の取り上げられ方が全国紙に比べ大きいですが、地元地方紙を読むことでBCリーグを支持する気持ちに影響はありますか?

→あります。地元紙が球団スポンサーになってユニ

フォームにもロゴが入っていますので読者として一体感があります。

事例研究④

~共に働くことでできるつながり~

BCリーグでの就業支援

キャリアサポーター制度によるセカンドキャリア支援

シーズンオフには選手たちが地元の企業で就業する機会を提供します。(1)シーズンオフの生活費を稼ぎながら、(2)社会経験を積み、(3)地域交流の場をもつ、「一石三鳥」の施策です。

BCリーグ公式サイトより http://www.bc-l.jp/bcl/localCoherence.html

四国アイランドリーグでの就業支援

セカンドキャリアパートナーについて

セカンドキャリアパートナー協賛とは、選手の引退後のキャリア支援に特化したスポンサー企業として、社会人マナー講習や引退後の選手の積極的な受け入れなどにご協力頂くスポンサードです。

四国アイランドリーグplus公式サイトよりhttp://www.iblj.co.jp/topics_detail/id=4146

現役中、引退後、地域で働く

選手を身近なものだと感じる

地域の中で働く選手と、接する、または共に働くという経験をすることで、選手、そしてチーム、リーグが身近なものとなり、精神的支援につながる

ヒアリングより1月10日 メールにて BCリーグ 新潟アルビレックスのファン

上野 仁さん

BCリーグには、シーズンオフに選手たちが地元の企

業で就業する機会を提供するという制度がありますが、この制度により「選手・チームを身近な存在」だと感じますか?

→感じます。特に他県出身の選手がオフも地元に戻

らず頑張っていることで一層応援する気持ちになります。人によっては就労しているお店を訪れて売上に協力するファン・サポーターもいます。

事例研究⑤

~野球だけではない!独立リーグにできること

高知ファイティングドッグスへのヒアリングより~

1月19日

我がチームでは、高知県佐川町と越知町とホームタウン協定を結んでいます。これは、ただ興行権を与えるだけでなく、地域を元気にするために様々なことを球団が行うというものです。高知ファイティングドッグス

秘書広報室久保田真帆さん

ドッグス田・畑での農業 学校での体育の授業 外国人選手による授業

これらは地域の抱える問題を解決している

過疎化、若者の流出による農業従事者の不足

特に小学校の教師の中には体育を教えるのが苦手な人もいる

地域には、日本語を話せる外国の人がいない

その結果、起きたこと

選手が農業をしていることに感動をしたおばあさんが、山奥にある民家を訪ね、ファイティングドッグスのファンクラブに入ってくれと頼んでくれるようになった。

選手が体育を教えた小学校のスポーツテストの結果があがり、学校からお礼を言われた。

現在、高知県全体に選手を派遣できるように、教育委員会と交渉の最中。

高知ファイティングドッグス秘書広報室

久保田真帆さん

選手が野球をして、それを観てもらうということは当然なのですが、選手達の活気にあふれた若い力で地域の足りない部分を補い、地域の中で欠かせない存在になるということが、今、私達の考えている事です。

考察

県内過疎地での試合開催、国際化、就業支援、地域でのイベントといったリーグやチームが行うものに市民、株主、従業員が関わること、また、メインスポンサーである地方紙を通して伝わることで、独立リーグは精神的支援をうけることがで

きる。そして、その精神的支援により、リーグは存続している。

BCリーグ 新潟アルビレックスのファン上野 仁さん

リーグの経営を金銭的な面で支援する行政・企業が税金や会社の売り上げから球団・リーグにお金を払うことに対して納得いっていますか?

→納得します。地域振興・社

会貢献の一環だと思います。私が勤務する会社も法人後援会員ですが、誇りに感じます。

1月10日 ヒアリングより

この考察から、消滅してしまった関西独立リーグについて考えてみる

関西独立リーグ(2009~2013)

リーグ発足時は4球団(大阪、明石、神戸、和歌山)だったが、途中加盟が増えたり(6球団)と頻繁に入れ替わる(中途で活動を休止してしまうチーム4球団、関西独立リーグ脱退3球団)など不安定な運営が続き2013年12月に関西独立リーグは消滅した。

関西地方の新聞購読データ

1位県名

世帯数

新聞名

発行部数

普及率

(%)

新聞名

発行部数

普及率

(%)

新聞名

発行部数

普及率

(%)

滋賀県 543,393 読売 138,486 25.49 朝日 109,708 20.19 京都 78,663 14.48

京都府 1,168,371 京都 409,234 35.03 読売 196,326 16.80 朝日 179,175 15.34

大阪府 4,090,596 読売 905,461 22.14 朝日 736,695 18.01 産経 550,366 13.45

兵庫県 2,448,763 神戸 551,710 22.53 読売 541,182 22.10 朝日 471,913 19.27

奈良県 573,923 毎日 149,769 26.10 朝日 140,640 24.51 読売 132,704 23.12

和歌山県 436,289 読売 118,992 27.27 朝日 94,663 21.70 毎日 74,458 17.07

2位 3位

参考:adv.yomiuri読売新聞購読ガイド

2009年の開幕戦は3月27日、京セラドームで行われた。

私は大阪ミナミにあった事務所まで、直接チケットを買いに行ったが、対応がぞんざいで、非常に悪い印象を持ったのを覚えている。四国やBCは、地域の人々や企業との連携に熱心で、実

に細やかな対応をしているが、関西独立リーグはそうした地道な努力をしているようには見えなかった。

プロ野球を表面的に模倣することはしても、お客を集めるための努力はほとんどしなかった。

関西独立リーグのファンの方のブログよりhttp://news.livedoor.com/article/detail/834

3515/

よって

関西ではメインスポンサーとなり、リーグやチームの試合情報、イベントを伝える地方紙の購読率が低く、また、市民、株主、従業員のために何かするということがなかった。あろうことか、それらの人に対する対応がぞんざいであった。

このことにより、精神的支援を受けられず、消滅してしまったと考えられる。

リーグ存続

最低限の観客数

行政・企業の支援

地域に密着した経営

市民、株主、従業員の精神的支援

must

当然、市民、株主、従業員から不満が出る。

今後は

高知ファイティングドッグスへのヒアリングにより、独立リーグは野球をするだけではなく、様々な面で地域の力になることができるとわかった。今回は、「存続していくためには」で考えてしまったが、もしかしたら、それ以上があるのかもしれない。もっと多くのヒアリング、データ調査により、それを調べていきたい。

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