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素粒子物理学2素粒子物理学序論B
2010年度講義第2回
今回の目次
高エネルギー物理学を学ぶための道具立て自然単位ファインマン・ダイアグラム
素粒子の性質を探る方法断面積崩壊
2
単位について
MKS単位系長さL(m), 質量M(kg), 時間T(sec)物理量は LaMbTc で表されるエネルギー [E] = ML2T-2 = kg⋅m2/sec2 ≡ ジュール
エネルギーとして電子ボルト(eV) = 電荷1の粒子を1ボルト加速 ⇐ 対象は素粒子定義により1V = 1J/C. よって[J]=[CV]あるいは [エネルギー] = [LF] = [L(C⋅V/L)] = [CV]
1eV = 1.6 x 10-19 CV(クーロン・ボルト) = 1.6 x 10-19 J(ジュール)1KeV = 103 eV, 1MeV = 106 eV, 1GeV = 109 eV, 1TeV = 1012 eV, etc...
3
F=qE
ところで…
E [エネルギー] = 1.4 x 10-23 x T [温度]
1eVはT = 1.6 x 10-19 / (1.4 x 10-23) ≅ 10,000 (K)
LHCで加速される陽子のエネルギー7TeV = 70,000,000,000,000,000 eV = 7京
4
自然単位
や c を基本単位に選ぶ
[L] = [ c] x [E-1][T] = [ ] x [E-1] とおく長さも時間も [1/E]. 単位は (eV)-1 になる速度はcを単位として無次元質量M [E/c2] ⇒[E] = eV, MeV, GeV, TeV, ...運動量 p [Ev/c2]=[E/c]⇒[E]=eV, MeV, GeV, TeV, ..
5
= c = c = 1
= 1.055× 10−34J · sec = 6.582× 10−22MeV · sec
c = 197.33× 10−15MeV · m
自然単位系からの変換
次元を合わせる例1. 長さ 1/mp, mp = 938 MeV
例2. 時間 1/mp
例3. 断面積σの単位はバーン(b)=10-24cm2が使われる 1 (GeV)-2 = 0.389 mb を示せ
6
1mp
=c(MeV · m)
938MeV=
197× 10−15(m)938
= 0.2× 10−13(cm)
1mp
=(MeV · sec)
938MeV=
6.58× 10−22(sec)938
= 7.0× 10−25(sec)
ホントは「1/エネルギー」と言うべき
別の例
プランクスケール:重力と静止エネルギー(=質量)が同程度になるエネルギースケールあるいは質量のこと
重力の強さが他の3つと同程度⇒重力の量子化が必要ブラックホールとの境界
7
G = 6.67× 10−11m3kg−1s−2
= 6.71× 10−39c(GeV/c2)−2
にするとG
MM
r= Mc2
r =
Mc
⇒M =
c/G
⇒M =
1/G
= 1.22× 1019(GeV )
シュバルツシルト半径
ブラックホール(古典的には)光速で運動したとしても重力のポテンシャルに勝てないシュバルツシルト半径は
ブラックホールになるには大きさ(=コンプトン波長)がシュバルツシルト半径になればよいので
プランクスケールより小さな空間を考えることができない
8
12mc2 < G
Mm
r∴ r <
2GM
c2
Mc
<2GM
c2∴ M >
c
2G=
1√2mpl
さらに別の例
不安定粒子ある寿命を持って崩壊 ⇒ 粒子の存在時間に Δt ~ τの不定性⇒ 不確定性原理より、ΔEあるいはΔmにも不定性例として π± τ= 2.6 x 10-8 sec, m = 140 MeV
Δm/m ~ 2 x 10-16ρ± では Δm/m ~ 0.2 (m = 770 MeV)質量の測定からΔm(~ΔE)がわかるので からτがわかる
9
∆m = ∆E =∆t
=6.58× 10−22MeV · sec
2.6× 10−8sec
= 2.5× 10−14MeV
∆E · ∆t(= Γ · τ) = τ = /∆E = /Γ = 4.2× 10−24sec
崩壊幅
素粒子の性質を探る手だて
粒子の散乱断面積断面積の角度依存性
不安定粒子の崩壊崩壊幅=寿命崩壊角度分布
などなど
10
実験による観測事実とラグランジアンをどうやって結びつけるのか?
断面積と崩壊
断面積
微分散乱断面積粒子ビームが単位面積あたり毎秒ni個入射するとき、標的粒子1個につき(θ,Φ)方向の立体角dΩの中に散乱される粒子の数をdN個/secとすると
全断面積
12
θ, φ
dΩ
ni/sec/cm2
dN = nidσ
dΩ(θ, φ)dΩ
σ =
dσ
dΩdΩ
単位1barn(b) ≡ 10-24cm21mb, 1μb, 1pb, 1fb, ...
ある初期状態から終状態への遷移確率に関係してる相互作用ラグランジアン(ハミルトニアン)に関係してる
相互作用を摂動として扱う
自由粒子に対するSchrodinger方程式(体積V中に1個)
相互作用ポテンシャルV(x,t)の中で運動する1個の粒子に対して
を解く
13
H0φn = Enφn ,
Vφ∗mφnd
3x = δmn
(H0 + V (x, t))ψ = i∂ψ
∂t
摂動として扱えない相互作用は計算不能
•非常に短距離では強い力も弱い(漸近的自由)•Lattice QCD という数値計算による手法
電磁気力、弱い力はいいとして、強い力はヤバいのでは?
--- (*)
--- (**)
遷移振幅
時刻 t=-T/2 から t=T/2 への遷移を考える
14
ψ =
n
an(t)φn(x)e−iEnt
daf
dt= −i
n
an(t)
φ∗fV φnd3xei(Ef−En)t
daf
dt= −i
d3xφ∗fV φie
i(Ef−Ei)t
Tfi ≡ af (T/2) = −i
T/2
−T/2dt
d3x[φf (x)e−iEf t]∗V (x, t)[φi(x)e−iEit]
(**)に入れて、φf*をかけ体積Vで積分。(*)を使う
(**)の解は という形に表せるとする
ai(−T/2) = 1 an(−T/2) = 0, (n = i)相互作用前はH0の固有状態 ⇒
af (t) = −i
t
−T/2dt
d3xφ∗fV φie
i(Ef−Ei)t
は と の間の状態数
フェルミの黄金律
ポテンシャルが時間に依存しない場合を考える
単位時間あたりの遷移確率
15
Vfi ≡
d3xφ∗f (x)V (x)φi(x)
W = limT→∞
|Tfi|2
T
Tfi = −iVfi
+T/2
−T/2dtei(Ef−Ei)t
wfi = 2π|Vfi|2ρf(Ei)
wfi =
WdEfρf (Ef )
= 2π
dEfρf (Ef )|Vfi|2δ(Ef − Ei)
ρf
ρf (Ef )dEf Ef Ef + dEf
終状態密度
= −2πiVfiδ(Ef − Ei)
エネルギー保存 ⇒ Δt = ∞⇒ 2乗しても確率にならない
断面積
A + B → C + D (規格化定数NA,B,C,D )
Wfiは単位体積あたりの遷移率
ただし
終状態の数
入射フラックス
16
断面積 = Wfi x [終状態の数] / [入射フラックス]
V d3pC
(2π)32EC· V d3pD
(2π)32ED
F = |vA|2EA
V
2EB
V
Wfi =|Tfi|2
TV= (2π)4
δ(4)(pc + pD − pA − pB)|M |2
V 4
不変振幅Tfi = −2πiVfiδ(Ef − Ei)
Tfi = −iNANBNCND(2π)4δ(4)(pD + pC − pB − pA)M
2Eは体積Vあたりの粒子数
微分断面積
A + B → C + D
微分断面積は
17
断面積 = Wfi x [終状態の数] / [入射フラックス]
位相空間
知りたいラグランジアンの情報はここに含まれているdσ =
|M |2
FdLips
dσ =V 2
|vA|2EA2EB
1V 4
|M|2(2π)4δ(4)(pC + pD − pA − pB)V d3pC
(2π)32EC· V d3pD
(2π)32ED
dLips = (2π)4δ(4)(pC + pD − pA − pB)d3pC
(2π)32EC· d3pD
(2π)32ED
(規格化因子Vはキャンセルしてる)
ラザフォード散乱
非相対論的取り扱い
18
φi = Neipix, φf = Neipf x N = 1/√
V
HIS =14π
Ze2
r
Vfi =
d3xφ
∗f (x)HISφi(x)
HIS =Ze
2
4πV
d3x
ei(pi−pf )x
rI ≡
d3x
eiqx
r= ... =
4π
q2
q ≡ pi − pf
HIS =Ze
2
4πV
4π
q2q2 = (pi − pf )2 = 4p2 sin2(θ/2)
ρf = δ(Ei − Ef )V d3p
(2π)3=
V
(2π)3dp
dEp2dΩ =
V mpdΩ8π3
入射粒子の速度をv=p/mとすると入射フラックスはv/V (σ=wfi V/v)
dσ
dΩ= (
Ze2
4π)2
4m2
q4=
Z2α2m2
4p4 sin4(θ/2) α =e2
4π∼ 1
137
ラザフォード散乱で何がわかるか?
既知:何の粒子を使っているかZ と m
実験で測定する量微分断面積入射粒子の運動量依存性散乱角度
わかること が正しいかどうか⇐相互作用の(形)理解
結合定数α
19
dσ
dΩ= (
Ze2
4π)2
4m2
q4=
Z2α2m2
4p4 sin4(θ/2)
HIS =14π
Ze2
r
不変振幅
知りたい物理が不変振幅に含まれている
例として、”仮想的に”スピンを持たない電子とミューオンの散乱を考える
20
Tfi = −iNANBNCND(2π)4δ4(pD + pC − pB − pA)M
e− e−
µ− µ−
γ
pA
pB
pC
pD
j(e)µ
j(µ)µ
V = −ie(∂µAµ + Aµ∂µ)− e2A2
ゲージ対称性に基づくQEDより
無視
不変振幅
知りたい物理が不変振幅に含まれている
例として、”仮想的に”スピンを持たない電子とミューオンの散乱を考える
20
Tfi = −iNANBNCND(2π)4δ4(pD + pC − pB − pA)M
e− e−
µ− µ−
γ
pA
pB
pC
pD
j(e)µ
j(µ)µ
V = −ie(∂µAµ + Aµ∂µ)− e2A2
ゲージ対称性に基づくQEDより
無視
j(e)µ = −eNANC(pC + pA)µei(pC−pA)x
Tfi = −i
φ∗f (x)V (x)φi(x)d4x
= i
φ∗f ie(Aµ∂µ + ∂µAµ)φid
4x
= −i
j(e)µ Aµd4x
電磁場Aμによる電子の散乱
不変振幅(続き)
21
e− e−
µ− µ−
γ
pA
pB
pC
pD
j(e)µ
j(µ)µ
j(µ)µ = −eNBND(pD + pB)µei(pD−pB)x
ミューオンが電磁場Aμを作ると考える
Aµ = − 1q2
j(µ)µ q = pD − pB
不変振幅(続き)
21
e− e−
µ− µ−
γ
pA
pB
pC
pD
j(e)µ
j(µ)µ
不変振幅(続き)
21
e− e−
µ− µ−
γ
pA
pB
pC
pD
j(e)µ
j(µ)µ
Tfi = −i
j(e)µ (x)(− 1
q2)j(µ)
µ (x)d4x
= −iNANBNCND(2π)4δ4(pD + pC − pB − pA)M
−iM = (ie(pA + pC)µ)(−igµν
q2)(ie(pB + pD)ν)
不変振幅(続き)
21
e− e−
µ− µ−
γ
pA
pB
pC
pD
j(e)µ
j(µ)µ
Tfi = −i
j(e)µ (x)(− 1
q2)j(µ)
µ (x)d4x
= −iNANBNCND(2π)4δ4(pD + pC − pB − pA)M
−iM = (ie(pA + pC)µ)(−igµν
q2)(ie(pB + pD)ν)
M不変振幅 はファインマンダイアグラムに対応している
モット(Mott)散乱
クーロンポテンシャルに散乱されるスピン1/2の電子ラザフォード散乱の相対論版
スピン状態を si, sf とすると
ラザフォード散乱に比べて
22
Hint = −ejµAµ jµ = ψγµψ Aµ = (
Ze
4πr; 0, 0, 0)
Tfi =
d4xf |Hint|i
= −
d4xpf , sf |ejµ(x)|pi, siAµ(x)
= ... ちょっと面倒な計算(スピノール)があって
m→ E 1→ 1− v2 sin2(θ
2) スピンの効果
dσ
dΩ=
4Z2α2
q4E2(1− v2 sin2 θ
2)
QED
崩壊幅
生成と崩壊における物理 は同じ
フラックスと位相空間は変更が必要
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A
B
C
A
B
C
A+B→C C→A+B
時間を反転
M
Γ =|M|2
FdLips
dΓ =1
2EC|M|2 d3pA
(2π)32EA
d3pB
(2π)32EB(2π)4δ4(pC − pA − pB)
今日のまとめ
自然単位系 に慣れてください
断面積と崩壊幅導出方法知りたい物理の情報(=相互作用ラグランジアン)は不変振幅に含まれている実験で測定する断面積から相互作用の形結合定数の大きさ
24
= c = c = 1
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