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会場 A
領域 3 4 5
A-1 マイクロメートルスケールのらせん軸長を有するキラル磁性体CrNb3S6単結晶試料における磁化過程のサイズ効果
九工大院工 A 広大キラル国際研究拠点 B 東大総合文化 C 東邦大理 D 岡山大異分野基礎研 E 広大院
理 F 大隈理央A 若山登 A 田中将嗣 A 美藤正樹 AB 篠嵜美沙子 C 加藤雄介 BC 大江純一郎 D 高阪
勇輔 BE 秋光純 E 井上克也 BF
キラル磁性体 CrNb3S6 は強磁性交換相互作用とジャロシ
ンスキー守谷相互作用との競合によってキラルらせん磁気
構造を示すらせん軸の c軸に垂直に直流磁場を印加すると
キラルソリトン格子 (CSL)と呼ばれる磁気超格子構造が安定
化されるまたトポロジカルな性格を有しておりサイズ
や形状を変えることでソリトンの出入りの振る舞いが劇的に
変わる [1-4]
今回我々は断面積 (Sab)をサブミリスケールc軸長 (Lc)
をマイクロスケールに加工したサンプルについて磁気測定を
行った図 1は 5 Kにおける Lc が 10 μmの試料 Aと 3 μ
mの試料 Bの磁化過程であるc軸長を短くすることで低磁
場領域の上凸の振る舞いが顕著になった講演ではサブミ
リスケールの領域において系統的に資料サイズを変えた場合
のソリトンの出入りについて議論したい
[1] Y Togawa et al Phys Rev B 92 220412 (2015)
[2] K Tsuruta et al J Phys Soc Jpn 85 013707 (2016)
[3] K Tsuruta et al J Appl Phys 120 143901 (2016)
[4] M Mito et al Phys Rev B 97 024408 (2018)
00 05 1000
02
04
06
08
10
MM
s
HHc
A Lc = 10μm Sab = 012 mm2
B Lc = 3 μm Sab = 015 mm2
theoretical
curve
図1 CrNb3S6単結晶の磁化過程平均場近似による理論曲線(黒線)と比較すると低磁場領域で上凸の曲線が顕著である
5 K
2
A-2 Growth and Magnetism of Kagome Lattice MgMn3(OH)6Cl2
Department of Physics Saga UniversityA Department of Applied Quantum Physics KB
Md Mahbubur Rahman BhuiyanA Takahiro YuasaA Takeru NumanoA Ichihiro YamauchiA Xu-
Guang ZhengA Tastuya KawaeB
Kagome lattice compounds have received a lot of in-
terest because of exotic magnetic behaviours they ex-
hibit Here we report the growth and magnetism of
the S = 52 kagome lattice compound MgMn3(OH)6Cl2
Successful synthesis was realized by solvothermal reac-
tion of MgCl2 6H2O MnCl24H2O and NaOH at high
temperature in water-ethanol solution in nitrogen atmo-
sphere The samples were subject to x-ray diffraction
dc magnetic and neutron diffraction experiments The
refined XRD data showed that the compound crystal-
lizes in the rhombohedral structure with space group R-
3m with magnetic ions in the triangular planes almost
completely replaced by non-magnetic Mg2+ The sus-
ceptibility measurement showed antiferromagnetic tran-
sition TN at 79 K below which a long-range order
in MgMn3(OD)6Cl2 was revealed by neutron diffraction
Fig 1Temperature dependence of the dc susceptibilities
χ (left axis) and the inverse susceptibilities 1χ (right
axis)
A-3 三角格子物質Cu(OH)Clにおける逐次相転移
佐賀大学物理 A 沼野壮A 湯浅貴裕 A 鄭旭光 A
近年我々は 3d 磁気イオンからなる M 2OH3X [M 3d
磁気イオン X ハロゲンイオン] 物質群の幾何学的フラ
ストレーションを研究しており多くの物質において特
異な磁気状態が存在していることを見出した近縁物質
で磁性イオンが三角格子を形成する Cu(OH)Cl にも着目
し幾何学的フラストレーションの存在TN = 11 K で
の反強磁性転移および磁気格子誘電の相関を報告し
た Phys Rev Mater 2 104401 (2018)]その中で
T lowast~ 5 K での誘電率異常を観測した今回はさらに高
品質な単結晶を成長し磁化率測定により T lowast~ 5 K で磁
気状態の変化を観察できた(図1)詳細は当日報告する
3
A-4 幾何学的フラストレーション物質 paratacamite Cu2(OH)3Clの磁性
佐賀大学物理 A 湯浅貴裕A 沼野壮 A 山内一宏 A 鄭旭光 A
近年幾何学的フラストレーションに起因する量子スピン
状態の研究は物性物理学の中心テーマの一つになってきてい
る当研究室では銅水酸塩化物 clinoatacamite Cu2(OH)3Cl
等の特有の結晶構造が幾何学的フラストレーションをもたら
し部分スピン液体状態を作り出すことを見出した [1][2]本
研究では clinoatacamite の異形体で結晶対称性が高い para
tacamite の単結晶 Cu2(OD)3Cl を用いて磁化率測定とミュ
オンスピン回転緩和 (microSR)実験を行ったミュオンが大き
い磁気回転比をもち非常に敏感な磁気プローブとなること
から microSRは量子磁性を調べる最適手段である microSR実験
の結果より 20Kからの磁気秩序の発生及び 57Kでの磁気
状態の変化が示唆された (図 1)詳細は当日報告する
[1] XGZheng et al Phys Rev Lett 95 057201
(2005)
[2] XGZheng et al Phys Rev B 71 052409 (2005)
A-5 s=12正三角スピンリングのNMR
九大院工 A Iowa State UniversityB Indian Institute of Technology MadrasC 稲垣 祐次A Qing-Ping
DingB Panchanan KhuntiaC 古川 裕次 B 河江 達也 A
KBa3Ca4Cu3V7O28 は六方晶(P63mc)に属しc面内で Cu2+(S= 12)イオンが正三角形を形成している [1]磁化率や強
磁場磁化過程の結果から三角形内の反強磁性相互作用は約 200K 程度であることがわかっている [2]50mK までの比熱測定
で長距離秩序を示す異常も観測されておらず [3]低温ではトータルスピンST=12の孤立三角クラスターのみでほぼ磁性を記
述できると考えられる従って基底状態はカイラル自由度を内包した 4重縮退状態の可能性があり詳細を調べる為本系に
対して 51V-NMR測定を実施した
NMRスペクトルは強磁場低温領域で何等かのスピン構造が固まりつつある様子を示しておりスピン格子緩和時間からも
同領域に向かって揺らぎが抑制されていく過程が確認された当日は結果の詳細を紹介し本系における基底状態とカイラリ
ティについて議論する予定である
[1] M von Postel and M BuschbaumHk Z Anorg Allgem Chem 619 123 (1993)
[2] H Sakurai et al J Phys Soc Jpn 71 664 (2002)
[3] P Khuntia et al private communication
4
A-6 Pd075Mn025におけるボロン添加による室温強磁性誘起
福岡工業大学 A 北川二郎A 坂口航平 A
強磁性 Mn 化合物はMn の磁気モーメントが大きくなる
ことがあり注目されている昔からMn原子間距離を長く
すると強磁性が発現しやすいことが知られているしかし
元素添加によって化学的にMn原子間距離をコントロールし
て室温強磁性の誘起や室温強磁性特性を制御できる化合物
はほとんど報告されていない我々はα-Pd 型スピングラス
Pd075Mn025 合金にボロンを添加すると格子定数が大きく
なり室温強磁性が発現することを発見した図に室温での
磁化率測定結果を示す母物質 Pd075Mn025 は常磁性状態
であるがボロン濃度 x=0015 ですでに室温強磁性が誘起
されている室温での飽和磁化は x の増加とともに増加し
x=0125 で 268 μ BMn に達するキュリー温度もこのボ
ロン濃度で最大値 390 Kとなった
発 表 論 文rdquoNew room-temperature ferromag-
net B-added Pd075Mn025 alloyrdquo J Kita-
gawa and K Sakaguchi Journal of Mag-
netism and Magnetic Materials 468 (2018) 115
A-7 CoFeAlAg 界面における抵抗スイッチング現象とスピン依存伝導
九州大学大学院理学府 A 九大理 B 九大スピンセ C 伊藤大樹A 有木大晟 A 大西紘平 BC 木村崇 BC
抵抗スイッチング型メモリは素子構造の単純さに加えて
得られる抵抗変化が極めて大きいことから次世代ナノエレク
トロニクスにおいて主要な役割を担うと期待されているま
たスピン依存伝導を利用したスピンデバイスも省エネルギー
エレクトロニクスの観点から期待されているもしこれら
2つの特性を持つデバイスが実現できればより魅力的な特性
が期待できるのは言うまでもないそこで本研究では強磁
性非磁性界面に抵抗スイッチング現象を示す接合を用いて横
型スピンバルブを試作しそのスピン伝導特性について実験的
に調べたので報告する試料は図に示すような CoFeAlAg
で構成される素子で界面に形成された Al2O3 と Ag粒子の
移動により抵抗スイッチング素子を構成するCoFeAl の
伝導電子がスピン偏極しているためAg に注入されるキャリ
アもスピン偏極しているこのスピン偏極を別の CoFeAl電
極にて検出する今回同素子を用いて抵抗スイッチング現
象及びスピンバルブ現象の両方を観測することに成功した
5
A-8 熱起因現象を意識したCoFeBPt 二層系におけるスピンダイナミクスの評価
九大理 A 九大スピンセ B 宮崎圭司A 屋冨祖稔 A 金晨東 A 鄭剛 A 木村崇 B
強磁性常磁性二層構造におけるスピンダイナミクスはス
ピントルクによるホモダイン磁気抵抗信号とスピン注入によ
る逆スピンホール信号が混在する複雑な系である更に近
年我々は強磁性共鳴時に強磁性体が発熱することを確認
しておりそれによって形成される熱スピン注入の重要性
を指摘しているしかしながら実験で観測される信号の起
源を特定するためにはスピン流が熱の流れを変化させた
実験が必要となるそこで今回我々はPtCoFeBFzSi
と CoFeBPtFzSi の2つの試料を用意し素子中の高周波
電流によって誘起されるスピンダイナミクスを比較するこ
とで各種信号変化の起源を考察した本素子構造において
は高周波電流によるジュール熱が Pt 層からまた強磁
性共鳴に伴う発熱がCoFeB から発生する前述の二種類
の膜では熱の方向が反転するため各種信号の起源の解
明に極めて有効である講演では各種のスペクトルの磁
場依存性やパワー依存性を紹介し詳細な起源解明を行う
A-9 LiTaO3におけるラマン散乱分光とフォノンの第一原理計算
九大理 A 河野輝A 徐維宏 A 吉瀬みのり A 佐藤琢哉 A
結晶内の格子振動(フォノン)は物質の対称性を反映するとともにその多くの物性に影響を与えるフォノンを光学的に観測
する手段としてラマン散乱分光法が挙げられる光の偏光自由度を制御することで検出されるフォノンの対称性(モード)
を特定することができる一方結晶内のフォノンとミクロな原子変位とを対応させて考察したい場合フォノンの第一原理計
算が有用である
我々は強誘電酸化物 LiTaO3 (0001) を対象としてラマン測定を行いフォノンの検出とそのモードの特定を行ったま
た密度汎関数摂動論(DFPT)に基づいたフォノンの第一原理計算を行った誘電体物質ではフォノンと分極電場が結合
しLO minus TO 分裂が生じる旧来の計算 [1] では分極を考慮できず TO フォノンの計算しか扱えなかったが我々は近年
の DFPTの実装を用いて TOフォノンだけでなく LOフォノンも取り扱いフォノン振動数において LOminus TO分裂を確認し
た
LiTaO3 (0001) に垂直な入射散乱光によって検出されるフォノンは群論を用いた解析によって A1 (LO) モードおよ
び E (TO)モードの2つと予測できるラマン測定の結果から特定されたフォノンと計算結果との比較を行ったE (TO)モ
ードについては実験と計算のフォノン振動数は一致するがA1 (LO)モードの場合はしない一方でA1 (TO)モードについ
ては [1]で実測された振動数と我々の計算は一致するこのことから我々の計算において LOフォノンの取り扱いに改善すべき
点があると考えられる講演ではそれらの定量的な整合性と考察を報告する
[1] S Sanna et al Phys Rev B 91 (2015) 224302
6
A-10 非周期構造を有する超格子ポテンシャルに入射するGraphene中の電子の透過特性
九大総理工 A 小川名太一A 坂口英継 A
本研究はフラクタル構造に代表されるCantor 構造を
有した超格子ポテンシャルにグラフェンの電子が入射した
場合の波動関数の透過率及びコンダクタンスを計算した
Cantor 型構造はスケール因子 a と分割数 N で特徴づけ
られる一般化された Cantor 構造を用いておりそのフラ
クタル次元は ln(N) ln(a) であるCantor 型超格子ポテン
シャルの幅を L高さを U0 とするとポテンシャルの世
代 n における波動関数の透過率は第 2 種 Chebyshev 多項式
uj(tj) (j = 0 middot middot middot nminus 1)を用いて厳密に
T =
1 + |g(k θ)|2 sin2 (qxLan)nminus1prodj=0
u2j (tj)
minus1
(1)
と表せることが分かったここで g(k θ) はポテンシャ
ルを透過するグラフェン電子の特性を示す関数であり
tj (j = 0 n minus 1) は世代 j 番目の Cantor 型構造の情報を
含む関数である(1) の特徴として電子がポテンシャルに
垂直入射しない場合の透過率に自己相似なパターンが対数
周期的に出現することであるがこの原因は第 2 種 Cheby-
shev 多項式の有限乗積によるものである又透過率の自
己相似性はこの系に磁場を印加した際のコンダクタンスに
現れ自己相似な構造を持つ振動を有することも報告する
A-11 酸素分子ナノロッドの固体相の温度-圧力相図
九工大院工 A 福大理 B 北村雄一郎A 美藤正樹 A 針尾健介 A 田尻恭之 B
酸素分子は磁気活性な等核二原子分子であり常温常圧で
磁性を持つ数少ない気体分子である高圧下での酸素分子の
研究は磁気測定X線回折光学測定中性子回折ラマン
分光法赤外線吸収電気抵抗測定などの様々な測定方法で
行われている本研究ではメソ多孔質構造 SBA-15中で一
次元ロッド状に酸素分子を凝集させた「酸素分子ナノロッド」
の固体相の温度圧力相図をバルク固体酸素分子のそれと比
較検討する
図 1は直径 85 nm 及び 24 nmの酸素分子ナノロッドにお
ける固体相の温度圧力相図であるバルク状態の固体相と
比較すると酸素分子ナノロッド固体相の相転移温度は低温
側にシフトしており個体数効果が要因であると考えられる
85 nm (βminusγ) 85 nm (αminusβ)
24 nm (αminusβ) 24 nm (βminusγ)
図1酸素分子ナノロッドの固体相の温度圧力相図
0
50
100
150
200
250
300
0 1 2 3 4 5
T (K
)
P (GPa)
Bulk (liquidminusγ )
Bulk (βminusγ )
Bulk (αminusβ )
7
A-12 超高圧実験仕様に開発されたコイル振動型 SQUID磁束計
九工大院工 A 阪大リノベ B 近藤広隆A 柴山慶介 A 入江邦彦 A 高木精志 A 美藤正樹 A 石塚守 B
10 GPa を超える高圧力下ではダイヤモンドアンビルセ
ル (DAC) の使用が不可欠となるがそこでの磁気測定は
大きく電磁誘導を利用した測定方法と超伝導量子干渉素子
(SQUID) を用いた測定方法に分けられる本研究で採用す
る VCM (Vibrating-Coil-Magnetometer) 法は検出コイル
を DAC中の試料周辺で振動させSQUIDにより磁束を検出
する [1]
巨大ひずみが初期導入された V の超伝導転移温度 TC
を追跡すべくSQUIDminusVCM 法による磁気測定を行った
図 1に 32 GPaまでの圧力下での直流磁化率の温度依存性
を示す当日は SQUIDminusVCMの詳細を説明する
[1] MIshizuka et al Rev Sci Instrum 66 3307 (1995)
4 5 6 7 8 9 10 11 12
0GPa88GPa157GPa320GPa
0001 VOe
VV
CM
H
DC [
Vo
e]
T [K]
図1 SQUID-VCM法によるVの各圧力下での直流磁化率の温度依存性
times2times045times180
A-13 強磁性常磁性二層膜構造における高圧下でのスピン依存型熱伝導現象
九大理 A 松友寛太A 有木大晟 A 木村崇 A 光田暁弘 A
強磁性常磁性重金属の界面では強磁性近接効果スピ
ンホール効果スピンポンピングジャロシンスキー守谷相互
作用などの数多くの興味深い現象が期待されており近年ス
ピン流を用いてそれらの物性を評価する研究が活発化してい
る一方で実際の実験において観測される物理量は巨視的
な量であり上記の現象の複数が絡み合って観測されるため
実験結果から微視的な起源を特定するのが困難になっている
もし何らかの手法で界面状態を調整しその上で系統的
な物性実験を行えれば各種起源の解明に極めて有効になる
と期待できるそこで本研究ではCoFeBPt 二層膜にお
ける圧力効果を実験的に調べた 二層膜のスピン流に起因
現象に特有の電気伝導特性及び熱伝導特性を圧力をパラ
メータにして系統的に測定し各種信号の起源を解明する
8338
8339
834
8341
8342
8343
8344
8345
8346
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
電圧
(μV
)
磁場(mT)
P=05GPaでの磁気抵抗効果
8
A-14 横型スピンバルブを用いたスピンネルンスト効果の観測
九大理 A 九大スピンセ B 松田亮A 須小遼河 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A NagarjunaAsamA 木村崇 AB
スピントロニクス分野の発展に伴いスピン流と熱の相互
作用に起因する各種現象が注目されている一方で熱流と
磁化の相互作用に起因する磁気熱電効果も存在し両者は
極めて類似の現象を引き起こすため実験的に観測された信
号の真の起源を見分けることは容易ではない我々は極
めて最近に観測され始めているスピンネルンスト効果に着
目し横型スピンバルブを用いた新奇な測定法を考案したの
で報告する試料は電子線描画装置による微細加工と真空
蒸着法スパッタリング法を用いて作成した PtCoFeAlCu
の細線で構成される素子である作製した素子の電子顕微
鏡写真を右図に示す発表では同素子を用いたスピンネル
ンスト効果スピンホール効果の実験等の結果を報告する
CuCu
Cu Cu
Cu
Cu
CoFeAlPt
Cu
作成したPtCoFeAlCuの細線素子のSEM画像
A-15 スピン依存ペルチェ - ゼーベック効果の相関関係の実験的評価
九大理 A 九大スピンセ B 須小遼河A 松田亮 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A 大西紘平 AB 木村崇 AB
異なる金属接合に電流を流すことで熱流が発生するペル
チェ効果は広く知られているが近年同様の効果がスピ
ン流を流すことでも発生することが知られているこの
スピン依存ペルチェ効果の観測は熱流の制御が困難な
ため容易ではなく明瞭な実験結果は報告されていない
今回我々はスピン依存ゼーベック係数が大きな物質で
はスピン依存ペルチェ係数が大きくなることに着目し
CoFeAlCu 横型スピンバルブを用いてスピン依存ペル
チェ効果の観測を試みたので報告する作製した素子の電
子顕微鏡写真を図に示す本素子において左側接合にお
ける非局所スピン注入法により純スピン流を生成しそれ
を右側接合を介してCoFeAl 電圧端子に吸収させスピン
バルブ信号及びスピン依存ペルチェ信号の観測を試みた
9
A-16 MnNiGe-CoNiGe系の輸送特性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学教育センター B 東京大学 ISSPC 恩田圭二朗A 佐藤裕汰 A 廣
井政彦 A 真中浩貴 A 寺田教男 A 近藤晃弘 C 金道弘一 C 伊藤昌和 B
近年環境に優しい冷凍技術として磁気冷凍の研究がすす
められているその中でMnNiGe-CoNiGeの系は一次磁気
相転移を起こし巨大磁気熱量効果を引き起こす材料として
注目が集まっているこの系は Ni2In 型の常磁性六方晶か
らTiNiSi 型の反強磁性斜方晶へと磁気相転移とマルテン
サイト変態を起こし両相転移のカップリングが磁気冷凍に
は重要とされているまたこの系の置換量を増やしていく
ことでスピングラスのような振舞も観測される今回我々は
この系におけるスピングラスのような振舞を磁性的な視点か
ら明らかにする図に Mn1minusxCoxNiGe(x = 02) における
磁化の温度依存性を示す強磁性的な曲線から常磁性的な曲
線への相転移が観測されると同時に低温側でゼロ磁場中冷
却 (ZFC)と磁場中冷却 (FC)に明らかなヒステリシスも観測
されるすなわちこの組成域においてスピングラスのよう
な振舞が観測できると考えられる講演ではx ge 02 にお
ける磁化の温度依存性および磁場依存性について議論する
A-17 強磁性薄膜におけるパルス磁場励起ダイナミクスの数値シミュレーション
九大理 A 谷脇俊介A 今野克洋 A 松本慧大 A 佐藤琢哉 A
磁性体中に励起される磁化の運動はマグノニクスという新しい分野で盛んに研究されている磁場パルスによって励起される
磁化の運動は円運動をしながら徐々に減衰していることが知られており最近磁化の運動の理論式が提案された [1]しかし
ながら具体的な計算によるその理論式の検証はなされていなかったそこで我々は磁性体薄膜において磁化を短時間の磁場パ
ルスによって励起した磁化の運動の様子をGPU ベースのマイクロマグネティックシミュレーションソフトである mumax3
を用いて計算した講演ではその結果を解析し提案された磁場の強さと時間幅の 2次に比例する理論式と一致したことを報
告する
[1] Kozhaev Mikhail AAU et al Scientific Reports 8 11435 (2018)
10
A-19 層間結合した強磁性多層膜における非線形スピンダイナミクスの観測
九大理 A 九大スピンセ B 屋冨祖稔A 宮崎圭司 A TowfiqHossainTaskA 木村崇 B
複数の磁性層を持つ磁性多層膜においてマイクロ波を照
射すると各磁性層の状態に合わせた強磁性共鳴が励起され
る異なる磁性層の共鳴条件が近い場合共鳴振動は結合し
同期共鳴による位相ロックモードあるいは反交差モードな
どの特殊状態の観測が期待できる一方でそのような同時
共鳴状態からずれた状況においても各種の層間相互作用が
存在するため磁性層の共鳴モードは単層膜のそれらから
変調されると期待できるそのような多層膜の多重共鳴を観
測するために今回CoFeAlCuPy多層膜を作成しその
共鳴特性を微分強磁性共鳴法及びホモダイン検波法を用
いて評価した講演ではマイクロ波パワー強度の増大に伴
う共鳴状態の変化やスピントルクの影響について考察する
A-20 CrAlGeの磁性と熱物性
鹿児島大学大学院理工学研究科 A 鹿児島大教育センター B 白濱透A 恩田圭二朗 A 増満勇人 A 三井好
古 A 小山佳一 A 藤井伸平 A 伊藤昌和 B
Cr 基三元化合物 CrAlGe は斜方晶系 TiSi ₂型結晶構造を取り強磁性転移温度 TC = 80K を持つ弱い遍歴電子強磁性
体であることが報告されている 1)一方で交流磁化率の詳細な解析からT cで見られる磁化異常の原因は長距離秩序
を持たない強磁性クラスターグラスによる可能性が最近指摘された 2)今回我々はこの物質の基底状態を調べるため熱
測定を行った図に CrAlGe の比熱CpT の温度依存性を示す磁化の温度依存性では TC以下で強磁性的な振る舞いが
みられるにも関わらず比熱には長距離秩序を示すような異常は見られなかった一般的にグラス転移では比熱の異常は
現れないことが知られているこのことからCrAlGe の基底状態はグラス的なものと考えられる講演ではこの系のゼー
ベック係数抵抗率熱伝導率についても報告する参考文献)1)SY oshinaga etalPhysProcedia 75(2015)9182
)MUKhan etalPhysRevMaterials1(2017)034402
11
会場 B
領域 6 8
B-1 液体金属の微視的破壊の解明多変量解析の応用
大分大 A 山田爽水A 岩下拓哉 A
液体は身近なものであり産業的にも多く利用されるも
のではあるがその基本的な物性の理論的枠組みは完成し
ていないそこで液体の動的な構造の時空間相関を把握
することが重要であるが実際液体の構造がいつどこ
で励起するのか明確な基準が確立されていない課題があ
る本研究では液体の粒子の運動を追跡し液体の微視
的破壊の起源を曖昧なく特定することを目的とする本講
演では二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュ
レーションと多変量解析を融合し液体のダイナミクス
の素過程を検出する試みを紹介する図のような原子
あたりの機械的特性 (局所応力や弾性率) の多変量時系列
データから異常検知などで使用されるマハラノビス距離を
計算しその外れ値を検出したまたこの原子あたりの
異常度と液体の局所構造変化の関係性について議論する 0
05
1
15
2
25
3
35
4
45
5
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
Binfin
Ginfin
σxx
σyy
σzz
σxy
σyz
σzx
evAring3
t(fs)
12
B-2 液体金属の不均一な局所応力緩和
大分大 A 古賀遼生A 岩下拓哉 A
液体の輸送特性である粘度の微視的解明は物性科学の重
要な課題である高温液体を急冷すると融点以下となって
も結晶化せず準安定な過冷却液体となり最終的に系の構造
緩和時間が観測時間を越え実質上固化するというガラス転
移現象を示すこのとき液体の粘性率が数十桁の増大を示
すがその物理的機構は曖昧なままである本研究の目的は
二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュレーション
を用いて液体の粘性率と局所構造の関係性を明らかにする
ことである液体の局所応力と局所構造パラメタである配位
数に着目し高温から低温へと温度を下げていく過程でどの
ように粘度へ寄与するのか解析を行った図は局所応力の
緩和時間の配位数依存性であり低温になるにつれて高い配
位数依存を示し系が不均一になっていくことがわかった
B-4 超伝導デバイス応用に向けたMoRe薄膜の作製と評価
熊本大学院自然科学研究科理学専攻 A 産業技術総合研究所 B 九州大学理学部 C 熊本大学理学部 D
澤田元気A 溝上裕也 A 藤野洋平 A 野上達也 A 前田翔 A 牧瀬圭正 B 篠崎文重 C 市川聡夫 D
超伝導デバイスの評価方法を開発するため超伝導薄膜の
諸特性を定量的に調べているこれまで研究した Mo 系の
MoNMoRuに加えて今回はMoRe薄膜に対して超伝
導-絶縁体 (S-I) 転移の臨界面抵抗臨界温度対破壊パラ
メータ等を測定し求めた質量比 7525のMoReをターゲッ
トによる RF スパッタリング装置を用いて試料を作製した
今回は膜厚を変化させて薄膜を成膜した温度範囲 2 K sim300 K磁場minus7 T sim 7Tの範囲において抵抗やHall抵抗を測
定した測定の結果膜厚 25 nm sim 52 nmで膜厚誘起 SI転
移を示し膜厚 57 nmで磁場誘起 SI転移を示したRNsq と
Tc の関係は Finkelrsquostein 理論式で説明できた図に示すよ
うに臨界面抵抗の値は約 15 kΩと見積もる事ができるまた
熱的ゆらぎによる Cooper対の生成と消滅による過剰伝導 σrsquo
の解析から対破壊パラメータ δfluc を見積もり非弾性散乱
時間 τin を見積もったしかしフィッティングがうまくあわ
ない試料もでてきたこれは膜の不均一や δfluc の温度依存
性が大きいことに依るものではないかと考えられるデバイ
ス応用を視野に入れると面抵抗の大きな薄膜も必要となる
現在窒素ガスを導入してMoRe-N薄膜の作製を試みている
$
Tc
(K
)
amp amp
RsqN (Ω)
Tc0 = 827 K
τ = 39 times 10-17
s
13
B-5 低温水素吸蔵を利用した PdHx及び PdDxの磁化測定による超伝導転移の観測
九大工 A 九大院工 B 廣田壮平A 司文 B 川崎洋輔 B 高田弘樹 B 稲垣祐次 B 河江達也 B
PdHxは水素濃度 x(x=HPd)が 075以上になると超伝導
が出現することが1970年代の初めに報告されているその
後水素濃度の増加とともに転移温度が高くなりPdHでは
約 10K 近くにまで上昇することが明らかになっている一
方同じ濃度の水素化物と重水素化物を比較すると重水素の
方が転移温度が高いという「逆同位体効果」などBCS理論で
は説明できない特徴も報告されている以上のように PdHx
の超伝導は発見から長く時間が経過するにも関わらずその物
性は十分解明されたとは言い難いその研究の進展を阻害す
る原因の 1つとしてPdHxサンプルのldquo品質維持の困難さrdquo
があるサンプル作製後実験装置に移し替える際に水素が
抜け出てしまったりサンプル内の水素分布が不均一になっ
たりするそこでこの問題を解決するため温度 200 Kで
Pdへの水素吸蔵を行いその後急冷し水素の離脱を抑制した
上で超伝導転移の観測を試みたその結果図に示すように
超伝導転移を観測することが出来た講演当日はそれらサ
ンプル作製法や測定法得られた測定結果の詳細を報告する
図 外部磁場に対する PdHx超伝導体の磁化変化
B-6 Resistivity Measurement of Superconducting PdHx Prepared by Low Temperature
Absorption
九大院工 A 九大院理 B 司文A 廣田壮平 A 伊藤大樹 B 稲垣佑次 A 木村崇 B 河江達也 A
Hydride alloy has drawn many attentions recently because of the discovery of the high temperature superconductivity
in hydride sulfide We focus on the superconductivity in palladium hydride (PdHx) where the transition temperature
varies from 1K to 10K with increasing the hydrogen ratio x higher than 07 We report that the PdHx powder samples
prepared with a new method using the low-temperature absorption show the superconductivity from the magnetization
measurements [1] To demonstrate the efficacy of the low-temperature absorption method we try to measure the
resistivity of PdHx wire and film samples The results will be shown in the presentation [1] Y Inagaki S Wen et al J
Phys Soc Jpn 87 123701 (2018)
14
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
A-2 Growth and Magnetism of Kagome Lattice MgMn3(OH)6Cl2
Department of Physics Saga UniversityA Department of Applied Quantum Physics KB
Md Mahbubur Rahman BhuiyanA Takahiro YuasaA Takeru NumanoA Ichihiro YamauchiA Xu-
Guang ZhengA Tastuya KawaeB
Kagome lattice compounds have received a lot of in-
terest because of exotic magnetic behaviours they ex-
hibit Here we report the growth and magnetism of
the S = 52 kagome lattice compound MgMn3(OH)6Cl2
Successful synthesis was realized by solvothermal reac-
tion of MgCl2 6H2O MnCl24H2O and NaOH at high
temperature in water-ethanol solution in nitrogen atmo-
sphere The samples were subject to x-ray diffraction
dc magnetic and neutron diffraction experiments The
refined XRD data showed that the compound crystal-
lizes in the rhombohedral structure with space group R-
3m with magnetic ions in the triangular planes almost
completely replaced by non-magnetic Mg2+ The sus-
ceptibility measurement showed antiferromagnetic tran-
sition TN at 79 K below which a long-range order
in MgMn3(OD)6Cl2 was revealed by neutron diffraction
Fig 1Temperature dependence of the dc susceptibilities
χ (left axis) and the inverse susceptibilities 1χ (right
axis)
A-3 三角格子物質Cu(OH)Clにおける逐次相転移
佐賀大学物理 A 沼野壮A 湯浅貴裕 A 鄭旭光 A
近年我々は 3d 磁気イオンからなる M 2OH3X [M 3d
磁気イオン X ハロゲンイオン] 物質群の幾何学的フラ
ストレーションを研究しており多くの物質において特
異な磁気状態が存在していることを見出した近縁物質
で磁性イオンが三角格子を形成する Cu(OH)Cl にも着目
し幾何学的フラストレーションの存在TN = 11 K で
の反強磁性転移および磁気格子誘電の相関を報告し
た Phys Rev Mater 2 104401 (2018)]その中で
T lowast~ 5 K での誘電率異常を観測した今回はさらに高
品質な単結晶を成長し磁化率測定により T lowast~ 5 K で磁
気状態の変化を観察できた(図1)詳細は当日報告する
3
A-4 幾何学的フラストレーション物質 paratacamite Cu2(OH)3Clの磁性
佐賀大学物理 A 湯浅貴裕A 沼野壮 A 山内一宏 A 鄭旭光 A
近年幾何学的フラストレーションに起因する量子スピン
状態の研究は物性物理学の中心テーマの一つになってきてい
る当研究室では銅水酸塩化物 clinoatacamite Cu2(OH)3Cl
等の特有の結晶構造が幾何学的フラストレーションをもたら
し部分スピン液体状態を作り出すことを見出した [1][2]本
研究では clinoatacamite の異形体で結晶対称性が高い para
tacamite の単結晶 Cu2(OD)3Cl を用いて磁化率測定とミュ
オンスピン回転緩和 (microSR)実験を行ったミュオンが大き
い磁気回転比をもち非常に敏感な磁気プローブとなること
から microSRは量子磁性を調べる最適手段である microSR実験
の結果より 20Kからの磁気秩序の発生及び 57Kでの磁気
状態の変化が示唆された (図 1)詳細は当日報告する
[1] XGZheng et al Phys Rev Lett 95 057201
(2005)
[2] XGZheng et al Phys Rev B 71 052409 (2005)
A-5 s=12正三角スピンリングのNMR
九大院工 A Iowa State UniversityB Indian Institute of Technology MadrasC 稲垣 祐次A Qing-Ping
DingB Panchanan KhuntiaC 古川 裕次 B 河江 達也 A
KBa3Ca4Cu3V7O28 は六方晶(P63mc)に属しc面内で Cu2+(S= 12)イオンが正三角形を形成している [1]磁化率や強
磁場磁化過程の結果から三角形内の反強磁性相互作用は約 200K 程度であることがわかっている [2]50mK までの比熱測定
で長距離秩序を示す異常も観測されておらず [3]低温ではトータルスピンST=12の孤立三角クラスターのみでほぼ磁性を記
述できると考えられる従って基底状態はカイラル自由度を内包した 4重縮退状態の可能性があり詳細を調べる為本系に
対して 51V-NMR測定を実施した
NMRスペクトルは強磁場低温領域で何等かのスピン構造が固まりつつある様子を示しておりスピン格子緩和時間からも
同領域に向かって揺らぎが抑制されていく過程が確認された当日は結果の詳細を紹介し本系における基底状態とカイラリ
ティについて議論する予定である
[1] M von Postel and M BuschbaumHk Z Anorg Allgem Chem 619 123 (1993)
[2] H Sakurai et al J Phys Soc Jpn 71 664 (2002)
[3] P Khuntia et al private communication
4
A-6 Pd075Mn025におけるボロン添加による室温強磁性誘起
福岡工業大学 A 北川二郎A 坂口航平 A
強磁性 Mn 化合物はMn の磁気モーメントが大きくなる
ことがあり注目されている昔からMn原子間距離を長く
すると強磁性が発現しやすいことが知られているしかし
元素添加によって化学的にMn原子間距離をコントロールし
て室温強磁性の誘起や室温強磁性特性を制御できる化合物
はほとんど報告されていない我々はα-Pd 型スピングラス
Pd075Mn025 合金にボロンを添加すると格子定数が大きく
なり室温強磁性が発現することを発見した図に室温での
磁化率測定結果を示す母物質 Pd075Mn025 は常磁性状態
であるがボロン濃度 x=0015 ですでに室温強磁性が誘起
されている室温での飽和磁化は x の増加とともに増加し
x=0125 で 268 μ BMn に達するキュリー温度もこのボ
ロン濃度で最大値 390 Kとなった
発 表 論 文rdquoNew room-temperature ferromag-
net B-added Pd075Mn025 alloyrdquo J Kita-
gawa and K Sakaguchi Journal of Mag-
netism and Magnetic Materials 468 (2018) 115
A-7 CoFeAlAg 界面における抵抗スイッチング現象とスピン依存伝導
九州大学大学院理学府 A 九大理 B 九大スピンセ C 伊藤大樹A 有木大晟 A 大西紘平 BC 木村崇 BC
抵抗スイッチング型メモリは素子構造の単純さに加えて
得られる抵抗変化が極めて大きいことから次世代ナノエレク
トロニクスにおいて主要な役割を担うと期待されているま
たスピン依存伝導を利用したスピンデバイスも省エネルギー
エレクトロニクスの観点から期待されているもしこれら
2つの特性を持つデバイスが実現できればより魅力的な特性
が期待できるのは言うまでもないそこで本研究では強磁
性非磁性界面に抵抗スイッチング現象を示す接合を用いて横
型スピンバルブを試作しそのスピン伝導特性について実験的
に調べたので報告する試料は図に示すような CoFeAlAg
で構成される素子で界面に形成された Al2O3 と Ag粒子の
移動により抵抗スイッチング素子を構成するCoFeAl の
伝導電子がスピン偏極しているためAg に注入されるキャリ
アもスピン偏極しているこのスピン偏極を別の CoFeAl電
極にて検出する今回同素子を用いて抵抗スイッチング現
象及びスピンバルブ現象の両方を観測することに成功した
5
A-8 熱起因現象を意識したCoFeBPt 二層系におけるスピンダイナミクスの評価
九大理 A 九大スピンセ B 宮崎圭司A 屋冨祖稔 A 金晨東 A 鄭剛 A 木村崇 B
強磁性常磁性二層構造におけるスピンダイナミクスはス
ピントルクによるホモダイン磁気抵抗信号とスピン注入によ
る逆スピンホール信号が混在する複雑な系である更に近
年我々は強磁性共鳴時に強磁性体が発熱することを確認
しておりそれによって形成される熱スピン注入の重要性
を指摘しているしかしながら実験で観測される信号の起
源を特定するためにはスピン流が熱の流れを変化させた
実験が必要となるそこで今回我々はPtCoFeBFzSi
と CoFeBPtFzSi の2つの試料を用意し素子中の高周波
電流によって誘起されるスピンダイナミクスを比較するこ
とで各種信号変化の起源を考察した本素子構造において
は高周波電流によるジュール熱が Pt 層からまた強磁
性共鳴に伴う発熱がCoFeB から発生する前述の二種類
の膜では熱の方向が反転するため各種信号の起源の解
明に極めて有効である講演では各種のスペクトルの磁
場依存性やパワー依存性を紹介し詳細な起源解明を行う
A-9 LiTaO3におけるラマン散乱分光とフォノンの第一原理計算
九大理 A 河野輝A 徐維宏 A 吉瀬みのり A 佐藤琢哉 A
結晶内の格子振動(フォノン)は物質の対称性を反映するとともにその多くの物性に影響を与えるフォノンを光学的に観測
する手段としてラマン散乱分光法が挙げられる光の偏光自由度を制御することで検出されるフォノンの対称性(モード)
を特定することができる一方結晶内のフォノンとミクロな原子変位とを対応させて考察したい場合フォノンの第一原理計
算が有用である
我々は強誘電酸化物 LiTaO3 (0001) を対象としてラマン測定を行いフォノンの検出とそのモードの特定を行ったま
た密度汎関数摂動論(DFPT)に基づいたフォノンの第一原理計算を行った誘電体物質ではフォノンと分極電場が結合
しLO minus TO 分裂が生じる旧来の計算 [1] では分極を考慮できず TO フォノンの計算しか扱えなかったが我々は近年
の DFPTの実装を用いて TOフォノンだけでなく LOフォノンも取り扱いフォノン振動数において LOminus TO分裂を確認し
た
LiTaO3 (0001) に垂直な入射散乱光によって検出されるフォノンは群論を用いた解析によって A1 (LO) モードおよ
び E (TO)モードの2つと予測できるラマン測定の結果から特定されたフォノンと計算結果との比較を行ったE (TO)モ
ードについては実験と計算のフォノン振動数は一致するがA1 (LO)モードの場合はしない一方でA1 (TO)モードについ
ては [1]で実測された振動数と我々の計算は一致するこのことから我々の計算において LOフォノンの取り扱いに改善すべき
点があると考えられる講演ではそれらの定量的な整合性と考察を報告する
[1] S Sanna et al Phys Rev B 91 (2015) 224302
6
A-10 非周期構造を有する超格子ポテンシャルに入射するGraphene中の電子の透過特性
九大総理工 A 小川名太一A 坂口英継 A
本研究はフラクタル構造に代表されるCantor 構造を
有した超格子ポテンシャルにグラフェンの電子が入射した
場合の波動関数の透過率及びコンダクタンスを計算した
Cantor 型構造はスケール因子 a と分割数 N で特徴づけ
られる一般化された Cantor 構造を用いておりそのフラ
クタル次元は ln(N) ln(a) であるCantor 型超格子ポテン
シャルの幅を L高さを U0 とするとポテンシャルの世
代 n における波動関数の透過率は第 2 種 Chebyshev 多項式
uj(tj) (j = 0 middot middot middot nminus 1)を用いて厳密に
T =
1 + |g(k θ)|2 sin2 (qxLan)nminus1prodj=0
u2j (tj)
minus1
(1)
と表せることが分かったここで g(k θ) はポテンシャ
ルを透過するグラフェン電子の特性を示す関数であり
tj (j = 0 n minus 1) は世代 j 番目の Cantor 型構造の情報を
含む関数である(1) の特徴として電子がポテンシャルに
垂直入射しない場合の透過率に自己相似なパターンが対数
周期的に出現することであるがこの原因は第 2 種 Cheby-
shev 多項式の有限乗積によるものである又透過率の自
己相似性はこの系に磁場を印加した際のコンダクタンスに
現れ自己相似な構造を持つ振動を有することも報告する
A-11 酸素分子ナノロッドの固体相の温度-圧力相図
九工大院工 A 福大理 B 北村雄一郎A 美藤正樹 A 針尾健介 A 田尻恭之 B
酸素分子は磁気活性な等核二原子分子であり常温常圧で
磁性を持つ数少ない気体分子である高圧下での酸素分子の
研究は磁気測定X線回折光学測定中性子回折ラマン
分光法赤外線吸収電気抵抗測定などの様々な測定方法で
行われている本研究ではメソ多孔質構造 SBA-15中で一
次元ロッド状に酸素分子を凝集させた「酸素分子ナノロッド」
の固体相の温度圧力相図をバルク固体酸素分子のそれと比
較検討する
図 1は直径 85 nm 及び 24 nmの酸素分子ナノロッドにお
ける固体相の温度圧力相図であるバルク状態の固体相と
比較すると酸素分子ナノロッド固体相の相転移温度は低温
側にシフトしており個体数効果が要因であると考えられる
85 nm (βminusγ) 85 nm (αminusβ)
24 nm (αminusβ) 24 nm (βminusγ)
図1酸素分子ナノロッドの固体相の温度圧力相図
0
50
100
150
200
250
300
0 1 2 3 4 5
T (K
)
P (GPa)
Bulk (liquidminusγ )
Bulk (βminusγ )
Bulk (αminusβ )
7
A-12 超高圧実験仕様に開発されたコイル振動型 SQUID磁束計
九工大院工 A 阪大リノベ B 近藤広隆A 柴山慶介 A 入江邦彦 A 高木精志 A 美藤正樹 A 石塚守 B
10 GPa を超える高圧力下ではダイヤモンドアンビルセ
ル (DAC) の使用が不可欠となるがそこでの磁気測定は
大きく電磁誘導を利用した測定方法と超伝導量子干渉素子
(SQUID) を用いた測定方法に分けられる本研究で採用す
る VCM (Vibrating-Coil-Magnetometer) 法は検出コイル
を DAC中の試料周辺で振動させSQUIDにより磁束を検出
する [1]
巨大ひずみが初期導入された V の超伝導転移温度 TC
を追跡すべくSQUIDminusVCM 法による磁気測定を行った
図 1に 32 GPaまでの圧力下での直流磁化率の温度依存性
を示す当日は SQUIDminusVCMの詳細を説明する
[1] MIshizuka et al Rev Sci Instrum 66 3307 (1995)
4 5 6 7 8 9 10 11 12
0GPa88GPa157GPa320GPa
0001 VOe
VV
CM
H
DC [
Vo
e]
T [K]
図1 SQUID-VCM法によるVの各圧力下での直流磁化率の温度依存性
times2times045times180
A-13 強磁性常磁性二層膜構造における高圧下でのスピン依存型熱伝導現象
九大理 A 松友寛太A 有木大晟 A 木村崇 A 光田暁弘 A
強磁性常磁性重金属の界面では強磁性近接効果スピ
ンホール効果スピンポンピングジャロシンスキー守谷相互
作用などの数多くの興味深い現象が期待されており近年ス
ピン流を用いてそれらの物性を評価する研究が活発化してい
る一方で実際の実験において観測される物理量は巨視的
な量であり上記の現象の複数が絡み合って観測されるため
実験結果から微視的な起源を特定するのが困難になっている
もし何らかの手法で界面状態を調整しその上で系統的
な物性実験を行えれば各種起源の解明に極めて有効になる
と期待できるそこで本研究ではCoFeBPt 二層膜にお
ける圧力効果を実験的に調べた 二層膜のスピン流に起因
現象に特有の電気伝導特性及び熱伝導特性を圧力をパラ
メータにして系統的に測定し各種信号の起源を解明する
8338
8339
834
8341
8342
8343
8344
8345
8346
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
電圧
(μV
)
磁場(mT)
P=05GPaでの磁気抵抗効果
8
A-14 横型スピンバルブを用いたスピンネルンスト効果の観測
九大理 A 九大スピンセ B 松田亮A 須小遼河 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A NagarjunaAsamA 木村崇 AB
スピントロニクス分野の発展に伴いスピン流と熱の相互
作用に起因する各種現象が注目されている一方で熱流と
磁化の相互作用に起因する磁気熱電効果も存在し両者は
極めて類似の現象を引き起こすため実験的に観測された信
号の真の起源を見分けることは容易ではない我々は極
めて最近に観測され始めているスピンネルンスト効果に着
目し横型スピンバルブを用いた新奇な測定法を考案したの
で報告する試料は電子線描画装置による微細加工と真空
蒸着法スパッタリング法を用いて作成した PtCoFeAlCu
の細線で構成される素子である作製した素子の電子顕微
鏡写真を右図に示す発表では同素子を用いたスピンネル
ンスト効果スピンホール効果の実験等の結果を報告する
CuCu
Cu Cu
Cu
Cu
CoFeAlPt
Cu
作成したPtCoFeAlCuの細線素子のSEM画像
A-15 スピン依存ペルチェ - ゼーベック効果の相関関係の実験的評価
九大理 A 九大スピンセ B 須小遼河A 松田亮 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A 大西紘平 AB 木村崇 AB
異なる金属接合に電流を流すことで熱流が発生するペル
チェ効果は広く知られているが近年同様の効果がスピ
ン流を流すことでも発生することが知られているこの
スピン依存ペルチェ効果の観測は熱流の制御が困難な
ため容易ではなく明瞭な実験結果は報告されていない
今回我々はスピン依存ゼーベック係数が大きな物質で
はスピン依存ペルチェ係数が大きくなることに着目し
CoFeAlCu 横型スピンバルブを用いてスピン依存ペル
チェ効果の観測を試みたので報告する作製した素子の電
子顕微鏡写真を図に示す本素子において左側接合にお
ける非局所スピン注入法により純スピン流を生成しそれ
を右側接合を介してCoFeAl 電圧端子に吸収させスピン
バルブ信号及びスピン依存ペルチェ信号の観測を試みた
9
A-16 MnNiGe-CoNiGe系の輸送特性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学教育センター B 東京大学 ISSPC 恩田圭二朗A 佐藤裕汰 A 廣
井政彦 A 真中浩貴 A 寺田教男 A 近藤晃弘 C 金道弘一 C 伊藤昌和 B
近年環境に優しい冷凍技術として磁気冷凍の研究がすす
められているその中でMnNiGe-CoNiGeの系は一次磁気
相転移を起こし巨大磁気熱量効果を引き起こす材料として
注目が集まっているこの系は Ni2In 型の常磁性六方晶か
らTiNiSi 型の反強磁性斜方晶へと磁気相転移とマルテン
サイト変態を起こし両相転移のカップリングが磁気冷凍に
は重要とされているまたこの系の置換量を増やしていく
ことでスピングラスのような振舞も観測される今回我々は
この系におけるスピングラスのような振舞を磁性的な視点か
ら明らかにする図に Mn1minusxCoxNiGe(x = 02) における
磁化の温度依存性を示す強磁性的な曲線から常磁性的な曲
線への相転移が観測されると同時に低温側でゼロ磁場中冷
却 (ZFC)と磁場中冷却 (FC)に明らかなヒステリシスも観測
されるすなわちこの組成域においてスピングラスのよう
な振舞が観測できると考えられる講演ではx ge 02 にお
ける磁化の温度依存性および磁場依存性について議論する
A-17 強磁性薄膜におけるパルス磁場励起ダイナミクスの数値シミュレーション
九大理 A 谷脇俊介A 今野克洋 A 松本慧大 A 佐藤琢哉 A
磁性体中に励起される磁化の運動はマグノニクスという新しい分野で盛んに研究されている磁場パルスによって励起される
磁化の運動は円運動をしながら徐々に減衰していることが知られており最近磁化の運動の理論式が提案された [1]しかし
ながら具体的な計算によるその理論式の検証はなされていなかったそこで我々は磁性体薄膜において磁化を短時間の磁場パ
ルスによって励起した磁化の運動の様子をGPU ベースのマイクロマグネティックシミュレーションソフトである mumax3
を用いて計算した講演ではその結果を解析し提案された磁場の強さと時間幅の 2次に比例する理論式と一致したことを報
告する
[1] Kozhaev Mikhail AAU et al Scientific Reports 8 11435 (2018)
10
A-19 層間結合した強磁性多層膜における非線形スピンダイナミクスの観測
九大理 A 九大スピンセ B 屋冨祖稔A 宮崎圭司 A TowfiqHossainTaskA 木村崇 B
複数の磁性層を持つ磁性多層膜においてマイクロ波を照
射すると各磁性層の状態に合わせた強磁性共鳴が励起され
る異なる磁性層の共鳴条件が近い場合共鳴振動は結合し
同期共鳴による位相ロックモードあるいは反交差モードな
どの特殊状態の観測が期待できる一方でそのような同時
共鳴状態からずれた状況においても各種の層間相互作用が
存在するため磁性層の共鳴モードは単層膜のそれらから
変調されると期待できるそのような多層膜の多重共鳴を観
測するために今回CoFeAlCuPy多層膜を作成しその
共鳴特性を微分強磁性共鳴法及びホモダイン検波法を用
いて評価した講演ではマイクロ波パワー強度の増大に伴
う共鳴状態の変化やスピントルクの影響について考察する
A-20 CrAlGeの磁性と熱物性
鹿児島大学大学院理工学研究科 A 鹿児島大教育センター B 白濱透A 恩田圭二朗 A 増満勇人 A 三井好
古 A 小山佳一 A 藤井伸平 A 伊藤昌和 B
Cr 基三元化合物 CrAlGe は斜方晶系 TiSi ₂型結晶構造を取り強磁性転移温度 TC = 80K を持つ弱い遍歴電子強磁性
体であることが報告されている 1)一方で交流磁化率の詳細な解析からT cで見られる磁化異常の原因は長距離秩序
を持たない強磁性クラスターグラスによる可能性が最近指摘された 2)今回我々はこの物質の基底状態を調べるため熱
測定を行った図に CrAlGe の比熱CpT の温度依存性を示す磁化の温度依存性では TC以下で強磁性的な振る舞いが
みられるにも関わらず比熱には長距離秩序を示すような異常は見られなかった一般的にグラス転移では比熱の異常は
現れないことが知られているこのことからCrAlGe の基底状態はグラス的なものと考えられる講演ではこの系のゼー
ベック係数抵抗率熱伝導率についても報告する参考文献)1)SY oshinaga etalPhysProcedia 75(2015)9182
)MUKhan etalPhysRevMaterials1(2017)034402
11
会場 B
領域 6 8
B-1 液体金属の微視的破壊の解明多変量解析の応用
大分大 A 山田爽水A 岩下拓哉 A
液体は身近なものであり産業的にも多く利用されるも
のではあるがその基本的な物性の理論的枠組みは完成し
ていないそこで液体の動的な構造の時空間相関を把握
することが重要であるが実際液体の構造がいつどこ
で励起するのか明確な基準が確立されていない課題があ
る本研究では液体の粒子の運動を追跡し液体の微視
的破壊の起源を曖昧なく特定することを目的とする本講
演では二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュ
レーションと多変量解析を融合し液体のダイナミクス
の素過程を検出する試みを紹介する図のような原子
あたりの機械的特性 (局所応力や弾性率) の多変量時系列
データから異常検知などで使用されるマハラノビス距離を
計算しその外れ値を検出したまたこの原子あたりの
異常度と液体の局所構造変化の関係性について議論する 0
05
1
15
2
25
3
35
4
45
5
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
Binfin
Ginfin
σxx
σyy
σzz
σxy
σyz
σzx
evAring3
t(fs)
12
B-2 液体金属の不均一な局所応力緩和
大分大 A 古賀遼生A 岩下拓哉 A
液体の輸送特性である粘度の微視的解明は物性科学の重
要な課題である高温液体を急冷すると融点以下となって
も結晶化せず準安定な過冷却液体となり最終的に系の構造
緩和時間が観測時間を越え実質上固化するというガラス転
移現象を示すこのとき液体の粘性率が数十桁の増大を示
すがその物理的機構は曖昧なままである本研究の目的は
二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュレーション
を用いて液体の粘性率と局所構造の関係性を明らかにする
ことである液体の局所応力と局所構造パラメタである配位
数に着目し高温から低温へと温度を下げていく過程でどの
ように粘度へ寄与するのか解析を行った図は局所応力の
緩和時間の配位数依存性であり低温になるにつれて高い配
位数依存を示し系が不均一になっていくことがわかった
B-4 超伝導デバイス応用に向けたMoRe薄膜の作製と評価
熊本大学院自然科学研究科理学専攻 A 産業技術総合研究所 B 九州大学理学部 C 熊本大学理学部 D
澤田元気A 溝上裕也 A 藤野洋平 A 野上達也 A 前田翔 A 牧瀬圭正 B 篠崎文重 C 市川聡夫 D
超伝導デバイスの評価方法を開発するため超伝導薄膜の
諸特性を定量的に調べているこれまで研究した Mo 系の
MoNMoRuに加えて今回はMoRe薄膜に対して超伝
導-絶縁体 (S-I) 転移の臨界面抵抗臨界温度対破壊パラ
メータ等を測定し求めた質量比 7525のMoReをターゲッ
トによる RF スパッタリング装置を用いて試料を作製した
今回は膜厚を変化させて薄膜を成膜した温度範囲 2 K sim300 K磁場minus7 T sim 7Tの範囲において抵抗やHall抵抗を測
定した測定の結果膜厚 25 nm sim 52 nmで膜厚誘起 SI転
移を示し膜厚 57 nmで磁場誘起 SI転移を示したRNsq と
Tc の関係は Finkelrsquostein 理論式で説明できた図に示すよ
うに臨界面抵抗の値は約 15 kΩと見積もる事ができるまた
熱的ゆらぎによる Cooper対の生成と消滅による過剰伝導 σrsquo
の解析から対破壊パラメータ δfluc を見積もり非弾性散乱
時間 τin を見積もったしかしフィッティングがうまくあわ
ない試料もでてきたこれは膜の不均一や δfluc の温度依存
性が大きいことに依るものではないかと考えられるデバイ
ス応用を視野に入れると面抵抗の大きな薄膜も必要となる
現在窒素ガスを導入してMoRe-N薄膜の作製を試みている
$
Tc
(K
)
amp amp
RsqN (Ω)
Tc0 = 827 K
τ = 39 times 10-17
s
13
B-5 低温水素吸蔵を利用した PdHx及び PdDxの磁化測定による超伝導転移の観測
九大工 A 九大院工 B 廣田壮平A 司文 B 川崎洋輔 B 高田弘樹 B 稲垣祐次 B 河江達也 B
PdHxは水素濃度 x(x=HPd)が 075以上になると超伝導
が出現することが1970年代の初めに報告されているその
後水素濃度の増加とともに転移温度が高くなりPdHでは
約 10K 近くにまで上昇することが明らかになっている一
方同じ濃度の水素化物と重水素化物を比較すると重水素の
方が転移温度が高いという「逆同位体効果」などBCS理論で
は説明できない特徴も報告されている以上のように PdHx
の超伝導は発見から長く時間が経過するにも関わらずその物
性は十分解明されたとは言い難いその研究の進展を阻害す
る原因の 1つとしてPdHxサンプルのldquo品質維持の困難さrdquo
があるサンプル作製後実験装置に移し替える際に水素が
抜け出てしまったりサンプル内の水素分布が不均一になっ
たりするそこでこの問題を解決するため温度 200 Kで
Pdへの水素吸蔵を行いその後急冷し水素の離脱を抑制した
上で超伝導転移の観測を試みたその結果図に示すように
超伝導転移を観測することが出来た講演当日はそれらサ
ンプル作製法や測定法得られた測定結果の詳細を報告する
図 外部磁場に対する PdHx超伝導体の磁化変化
B-6 Resistivity Measurement of Superconducting PdHx Prepared by Low Temperature
Absorption
九大院工 A 九大院理 B 司文A 廣田壮平 A 伊藤大樹 B 稲垣佑次 A 木村崇 B 河江達也 A
Hydride alloy has drawn many attentions recently because of the discovery of the high temperature superconductivity
in hydride sulfide We focus on the superconductivity in palladium hydride (PdHx) where the transition temperature
varies from 1K to 10K with increasing the hydrogen ratio x higher than 07 We report that the PdHx powder samples
prepared with a new method using the low-temperature absorption show the superconductivity from the magnetization
measurements [1] To demonstrate the efficacy of the low-temperature absorption method we try to measure the
resistivity of PdHx wire and film samples The results will be shown in the presentation [1] Y Inagaki S Wen et al J
Phys Soc Jpn 87 123701 (2018)
14
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
A-4 幾何学的フラストレーション物質 paratacamite Cu2(OH)3Clの磁性
佐賀大学物理 A 湯浅貴裕A 沼野壮 A 山内一宏 A 鄭旭光 A
近年幾何学的フラストレーションに起因する量子スピン
状態の研究は物性物理学の中心テーマの一つになってきてい
る当研究室では銅水酸塩化物 clinoatacamite Cu2(OH)3Cl
等の特有の結晶構造が幾何学的フラストレーションをもたら
し部分スピン液体状態を作り出すことを見出した [1][2]本
研究では clinoatacamite の異形体で結晶対称性が高い para
tacamite の単結晶 Cu2(OD)3Cl を用いて磁化率測定とミュ
オンスピン回転緩和 (microSR)実験を行ったミュオンが大き
い磁気回転比をもち非常に敏感な磁気プローブとなること
から microSRは量子磁性を調べる最適手段である microSR実験
の結果より 20Kからの磁気秩序の発生及び 57Kでの磁気
状態の変化が示唆された (図 1)詳細は当日報告する
[1] XGZheng et al Phys Rev Lett 95 057201
(2005)
[2] XGZheng et al Phys Rev B 71 052409 (2005)
A-5 s=12正三角スピンリングのNMR
九大院工 A Iowa State UniversityB Indian Institute of Technology MadrasC 稲垣 祐次A Qing-Ping
DingB Panchanan KhuntiaC 古川 裕次 B 河江 達也 A
KBa3Ca4Cu3V7O28 は六方晶(P63mc)に属しc面内で Cu2+(S= 12)イオンが正三角形を形成している [1]磁化率や強
磁場磁化過程の結果から三角形内の反強磁性相互作用は約 200K 程度であることがわかっている [2]50mK までの比熱測定
で長距離秩序を示す異常も観測されておらず [3]低温ではトータルスピンST=12の孤立三角クラスターのみでほぼ磁性を記
述できると考えられる従って基底状態はカイラル自由度を内包した 4重縮退状態の可能性があり詳細を調べる為本系に
対して 51V-NMR測定を実施した
NMRスペクトルは強磁場低温領域で何等かのスピン構造が固まりつつある様子を示しておりスピン格子緩和時間からも
同領域に向かって揺らぎが抑制されていく過程が確認された当日は結果の詳細を紹介し本系における基底状態とカイラリ
ティについて議論する予定である
[1] M von Postel and M BuschbaumHk Z Anorg Allgem Chem 619 123 (1993)
[2] H Sakurai et al J Phys Soc Jpn 71 664 (2002)
[3] P Khuntia et al private communication
4
A-6 Pd075Mn025におけるボロン添加による室温強磁性誘起
福岡工業大学 A 北川二郎A 坂口航平 A
強磁性 Mn 化合物はMn の磁気モーメントが大きくなる
ことがあり注目されている昔からMn原子間距離を長く
すると強磁性が発現しやすいことが知られているしかし
元素添加によって化学的にMn原子間距離をコントロールし
て室温強磁性の誘起や室温強磁性特性を制御できる化合物
はほとんど報告されていない我々はα-Pd 型スピングラス
Pd075Mn025 合金にボロンを添加すると格子定数が大きく
なり室温強磁性が発現することを発見した図に室温での
磁化率測定結果を示す母物質 Pd075Mn025 は常磁性状態
であるがボロン濃度 x=0015 ですでに室温強磁性が誘起
されている室温での飽和磁化は x の増加とともに増加し
x=0125 で 268 μ BMn に達するキュリー温度もこのボ
ロン濃度で最大値 390 Kとなった
発 表 論 文rdquoNew room-temperature ferromag-
net B-added Pd075Mn025 alloyrdquo J Kita-
gawa and K Sakaguchi Journal of Mag-
netism and Magnetic Materials 468 (2018) 115
A-7 CoFeAlAg 界面における抵抗スイッチング現象とスピン依存伝導
九州大学大学院理学府 A 九大理 B 九大スピンセ C 伊藤大樹A 有木大晟 A 大西紘平 BC 木村崇 BC
抵抗スイッチング型メモリは素子構造の単純さに加えて
得られる抵抗変化が極めて大きいことから次世代ナノエレク
トロニクスにおいて主要な役割を担うと期待されているま
たスピン依存伝導を利用したスピンデバイスも省エネルギー
エレクトロニクスの観点から期待されているもしこれら
2つの特性を持つデバイスが実現できればより魅力的な特性
が期待できるのは言うまでもないそこで本研究では強磁
性非磁性界面に抵抗スイッチング現象を示す接合を用いて横
型スピンバルブを試作しそのスピン伝導特性について実験的
に調べたので報告する試料は図に示すような CoFeAlAg
で構成される素子で界面に形成された Al2O3 と Ag粒子の
移動により抵抗スイッチング素子を構成するCoFeAl の
伝導電子がスピン偏極しているためAg に注入されるキャリ
アもスピン偏極しているこのスピン偏極を別の CoFeAl電
極にて検出する今回同素子を用いて抵抗スイッチング現
象及びスピンバルブ現象の両方を観測することに成功した
5
A-8 熱起因現象を意識したCoFeBPt 二層系におけるスピンダイナミクスの評価
九大理 A 九大スピンセ B 宮崎圭司A 屋冨祖稔 A 金晨東 A 鄭剛 A 木村崇 B
強磁性常磁性二層構造におけるスピンダイナミクスはス
ピントルクによるホモダイン磁気抵抗信号とスピン注入によ
る逆スピンホール信号が混在する複雑な系である更に近
年我々は強磁性共鳴時に強磁性体が発熱することを確認
しておりそれによって形成される熱スピン注入の重要性
を指摘しているしかしながら実験で観測される信号の起
源を特定するためにはスピン流が熱の流れを変化させた
実験が必要となるそこで今回我々はPtCoFeBFzSi
と CoFeBPtFzSi の2つの試料を用意し素子中の高周波
電流によって誘起されるスピンダイナミクスを比較するこ
とで各種信号変化の起源を考察した本素子構造において
は高周波電流によるジュール熱が Pt 層からまた強磁
性共鳴に伴う発熱がCoFeB から発生する前述の二種類
の膜では熱の方向が反転するため各種信号の起源の解
明に極めて有効である講演では各種のスペクトルの磁
場依存性やパワー依存性を紹介し詳細な起源解明を行う
A-9 LiTaO3におけるラマン散乱分光とフォノンの第一原理計算
九大理 A 河野輝A 徐維宏 A 吉瀬みのり A 佐藤琢哉 A
結晶内の格子振動(フォノン)は物質の対称性を反映するとともにその多くの物性に影響を与えるフォノンを光学的に観測
する手段としてラマン散乱分光法が挙げられる光の偏光自由度を制御することで検出されるフォノンの対称性(モード)
を特定することができる一方結晶内のフォノンとミクロな原子変位とを対応させて考察したい場合フォノンの第一原理計
算が有用である
我々は強誘電酸化物 LiTaO3 (0001) を対象としてラマン測定を行いフォノンの検出とそのモードの特定を行ったま
た密度汎関数摂動論(DFPT)に基づいたフォノンの第一原理計算を行った誘電体物質ではフォノンと分極電場が結合
しLO minus TO 分裂が生じる旧来の計算 [1] では分極を考慮できず TO フォノンの計算しか扱えなかったが我々は近年
の DFPTの実装を用いて TOフォノンだけでなく LOフォノンも取り扱いフォノン振動数において LOminus TO分裂を確認し
た
LiTaO3 (0001) に垂直な入射散乱光によって検出されるフォノンは群論を用いた解析によって A1 (LO) モードおよ
び E (TO)モードの2つと予測できるラマン測定の結果から特定されたフォノンと計算結果との比較を行ったE (TO)モ
ードについては実験と計算のフォノン振動数は一致するがA1 (LO)モードの場合はしない一方でA1 (TO)モードについ
ては [1]で実測された振動数と我々の計算は一致するこのことから我々の計算において LOフォノンの取り扱いに改善すべき
点があると考えられる講演ではそれらの定量的な整合性と考察を報告する
[1] S Sanna et al Phys Rev B 91 (2015) 224302
6
A-10 非周期構造を有する超格子ポテンシャルに入射するGraphene中の電子の透過特性
九大総理工 A 小川名太一A 坂口英継 A
本研究はフラクタル構造に代表されるCantor 構造を
有した超格子ポテンシャルにグラフェンの電子が入射した
場合の波動関数の透過率及びコンダクタンスを計算した
Cantor 型構造はスケール因子 a と分割数 N で特徴づけ
られる一般化された Cantor 構造を用いておりそのフラ
クタル次元は ln(N) ln(a) であるCantor 型超格子ポテン
シャルの幅を L高さを U0 とするとポテンシャルの世
代 n における波動関数の透過率は第 2 種 Chebyshev 多項式
uj(tj) (j = 0 middot middot middot nminus 1)を用いて厳密に
T =
1 + |g(k θ)|2 sin2 (qxLan)nminus1prodj=0
u2j (tj)
minus1
(1)
と表せることが分かったここで g(k θ) はポテンシャ
ルを透過するグラフェン電子の特性を示す関数であり
tj (j = 0 n minus 1) は世代 j 番目の Cantor 型構造の情報を
含む関数である(1) の特徴として電子がポテンシャルに
垂直入射しない場合の透過率に自己相似なパターンが対数
周期的に出現することであるがこの原因は第 2 種 Cheby-
shev 多項式の有限乗積によるものである又透過率の自
己相似性はこの系に磁場を印加した際のコンダクタンスに
現れ自己相似な構造を持つ振動を有することも報告する
A-11 酸素分子ナノロッドの固体相の温度-圧力相図
九工大院工 A 福大理 B 北村雄一郎A 美藤正樹 A 針尾健介 A 田尻恭之 B
酸素分子は磁気活性な等核二原子分子であり常温常圧で
磁性を持つ数少ない気体分子である高圧下での酸素分子の
研究は磁気測定X線回折光学測定中性子回折ラマン
分光法赤外線吸収電気抵抗測定などの様々な測定方法で
行われている本研究ではメソ多孔質構造 SBA-15中で一
次元ロッド状に酸素分子を凝集させた「酸素分子ナノロッド」
の固体相の温度圧力相図をバルク固体酸素分子のそれと比
較検討する
図 1は直径 85 nm 及び 24 nmの酸素分子ナノロッドにお
ける固体相の温度圧力相図であるバルク状態の固体相と
比較すると酸素分子ナノロッド固体相の相転移温度は低温
側にシフトしており個体数効果が要因であると考えられる
85 nm (βminusγ) 85 nm (αminusβ)
24 nm (αminusβ) 24 nm (βminusγ)
図1酸素分子ナノロッドの固体相の温度圧力相図
0
50
100
150
200
250
300
0 1 2 3 4 5
T (K
)
P (GPa)
Bulk (liquidminusγ )
Bulk (βminusγ )
Bulk (αminusβ )
7
A-12 超高圧実験仕様に開発されたコイル振動型 SQUID磁束計
九工大院工 A 阪大リノベ B 近藤広隆A 柴山慶介 A 入江邦彦 A 高木精志 A 美藤正樹 A 石塚守 B
10 GPa を超える高圧力下ではダイヤモンドアンビルセ
ル (DAC) の使用が不可欠となるがそこでの磁気測定は
大きく電磁誘導を利用した測定方法と超伝導量子干渉素子
(SQUID) を用いた測定方法に分けられる本研究で採用す
る VCM (Vibrating-Coil-Magnetometer) 法は検出コイル
を DAC中の試料周辺で振動させSQUIDにより磁束を検出
する [1]
巨大ひずみが初期導入された V の超伝導転移温度 TC
を追跡すべくSQUIDminusVCM 法による磁気測定を行った
図 1に 32 GPaまでの圧力下での直流磁化率の温度依存性
を示す当日は SQUIDminusVCMの詳細を説明する
[1] MIshizuka et al Rev Sci Instrum 66 3307 (1995)
4 5 6 7 8 9 10 11 12
0GPa88GPa157GPa320GPa
0001 VOe
VV
CM
H
DC [
Vo
e]
T [K]
図1 SQUID-VCM法によるVの各圧力下での直流磁化率の温度依存性
times2times045times180
A-13 強磁性常磁性二層膜構造における高圧下でのスピン依存型熱伝導現象
九大理 A 松友寛太A 有木大晟 A 木村崇 A 光田暁弘 A
強磁性常磁性重金属の界面では強磁性近接効果スピ
ンホール効果スピンポンピングジャロシンスキー守谷相互
作用などの数多くの興味深い現象が期待されており近年ス
ピン流を用いてそれらの物性を評価する研究が活発化してい
る一方で実際の実験において観測される物理量は巨視的
な量であり上記の現象の複数が絡み合って観測されるため
実験結果から微視的な起源を特定するのが困難になっている
もし何らかの手法で界面状態を調整しその上で系統的
な物性実験を行えれば各種起源の解明に極めて有効になる
と期待できるそこで本研究ではCoFeBPt 二層膜にお
ける圧力効果を実験的に調べた 二層膜のスピン流に起因
現象に特有の電気伝導特性及び熱伝導特性を圧力をパラ
メータにして系統的に測定し各種信号の起源を解明する
8338
8339
834
8341
8342
8343
8344
8345
8346
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
電圧
(μV
)
磁場(mT)
P=05GPaでの磁気抵抗効果
8
A-14 横型スピンバルブを用いたスピンネルンスト効果の観測
九大理 A 九大スピンセ B 松田亮A 須小遼河 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A NagarjunaAsamA 木村崇 AB
スピントロニクス分野の発展に伴いスピン流と熱の相互
作用に起因する各種現象が注目されている一方で熱流と
磁化の相互作用に起因する磁気熱電効果も存在し両者は
極めて類似の現象を引き起こすため実験的に観測された信
号の真の起源を見分けることは容易ではない我々は極
めて最近に観測され始めているスピンネルンスト効果に着
目し横型スピンバルブを用いた新奇な測定法を考案したの
で報告する試料は電子線描画装置による微細加工と真空
蒸着法スパッタリング法を用いて作成した PtCoFeAlCu
の細線で構成される素子である作製した素子の電子顕微
鏡写真を右図に示す発表では同素子を用いたスピンネル
ンスト効果スピンホール効果の実験等の結果を報告する
CuCu
Cu Cu
Cu
Cu
CoFeAlPt
Cu
作成したPtCoFeAlCuの細線素子のSEM画像
A-15 スピン依存ペルチェ - ゼーベック効果の相関関係の実験的評価
九大理 A 九大スピンセ B 須小遼河A 松田亮 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A 大西紘平 AB 木村崇 AB
異なる金属接合に電流を流すことで熱流が発生するペル
チェ効果は広く知られているが近年同様の効果がスピ
ン流を流すことでも発生することが知られているこの
スピン依存ペルチェ効果の観測は熱流の制御が困難な
ため容易ではなく明瞭な実験結果は報告されていない
今回我々はスピン依存ゼーベック係数が大きな物質で
はスピン依存ペルチェ係数が大きくなることに着目し
CoFeAlCu 横型スピンバルブを用いてスピン依存ペル
チェ効果の観測を試みたので報告する作製した素子の電
子顕微鏡写真を図に示す本素子において左側接合にお
ける非局所スピン注入法により純スピン流を生成しそれ
を右側接合を介してCoFeAl 電圧端子に吸収させスピン
バルブ信号及びスピン依存ペルチェ信号の観測を試みた
9
A-16 MnNiGe-CoNiGe系の輸送特性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学教育センター B 東京大学 ISSPC 恩田圭二朗A 佐藤裕汰 A 廣
井政彦 A 真中浩貴 A 寺田教男 A 近藤晃弘 C 金道弘一 C 伊藤昌和 B
近年環境に優しい冷凍技術として磁気冷凍の研究がすす
められているその中でMnNiGe-CoNiGeの系は一次磁気
相転移を起こし巨大磁気熱量効果を引き起こす材料として
注目が集まっているこの系は Ni2In 型の常磁性六方晶か
らTiNiSi 型の反強磁性斜方晶へと磁気相転移とマルテン
サイト変態を起こし両相転移のカップリングが磁気冷凍に
は重要とされているまたこの系の置換量を増やしていく
ことでスピングラスのような振舞も観測される今回我々は
この系におけるスピングラスのような振舞を磁性的な視点か
ら明らかにする図に Mn1minusxCoxNiGe(x = 02) における
磁化の温度依存性を示す強磁性的な曲線から常磁性的な曲
線への相転移が観測されると同時に低温側でゼロ磁場中冷
却 (ZFC)と磁場中冷却 (FC)に明らかなヒステリシスも観測
されるすなわちこの組成域においてスピングラスのよう
な振舞が観測できると考えられる講演ではx ge 02 にお
ける磁化の温度依存性および磁場依存性について議論する
A-17 強磁性薄膜におけるパルス磁場励起ダイナミクスの数値シミュレーション
九大理 A 谷脇俊介A 今野克洋 A 松本慧大 A 佐藤琢哉 A
磁性体中に励起される磁化の運動はマグノニクスという新しい分野で盛んに研究されている磁場パルスによって励起される
磁化の運動は円運動をしながら徐々に減衰していることが知られており最近磁化の運動の理論式が提案された [1]しかし
ながら具体的な計算によるその理論式の検証はなされていなかったそこで我々は磁性体薄膜において磁化を短時間の磁場パ
ルスによって励起した磁化の運動の様子をGPU ベースのマイクロマグネティックシミュレーションソフトである mumax3
を用いて計算した講演ではその結果を解析し提案された磁場の強さと時間幅の 2次に比例する理論式と一致したことを報
告する
[1] Kozhaev Mikhail AAU et al Scientific Reports 8 11435 (2018)
10
A-19 層間結合した強磁性多層膜における非線形スピンダイナミクスの観測
九大理 A 九大スピンセ B 屋冨祖稔A 宮崎圭司 A TowfiqHossainTaskA 木村崇 B
複数の磁性層を持つ磁性多層膜においてマイクロ波を照
射すると各磁性層の状態に合わせた強磁性共鳴が励起され
る異なる磁性層の共鳴条件が近い場合共鳴振動は結合し
同期共鳴による位相ロックモードあるいは反交差モードな
どの特殊状態の観測が期待できる一方でそのような同時
共鳴状態からずれた状況においても各種の層間相互作用が
存在するため磁性層の共鳴モードは単層膜のそれらから
変調されると期待できるそのような多層膜の多重共鳴を観
測するために今回CoFeAlCuPy多層膜を作成しその
共鳴特性を微分強磁性共鳴法及びホモダイン検波法を用
いて評価した講演ではマイクロ波パワー強度の増大に伴
う共鳴状態の変化やスピントルクの影響について考察する
A-20 CrAlGeの磁性と熱物性
鹿児島大学大学院理工学研究科 A 鹿児島大教育センター B 白濱透A 恩田圭二朗 A 増満勇人 A 三井好
古 A 小山佳一 A 藤井伸平 A 伊藤昌和 B
Cr 基三元化合物 CrAlGe は斜方晶系 TiSi ₂型結晶構造を取り強磁性転移温度 TC = 80K を持つ弱い遍歴電子強磁性
体であることが報告されている 1)一方で交流磁化率の詳細な解析からT cで見られる磁化異常の原因は長距離秩序
を持たない強磁性クラスターグラスによる可能性が最近指摘された 2)今回我々はこの物質の基底状態を調べるため熱
測定を行った図に CrAlGe の比熱CpT の温度依存性を示す磁化の温度依存性では TC以下で強磁性的な振る舞いが
みられるにも関わらず比熱には長距離秩序を示すような異常は見られなかった一般的にグラス転移では比熱の異常は
現れないことが知られているこのことからCrAlGe の基底状態はグラス的なものと考えられる講演ではこの系のゼー
ベック係数抵抗率熱伝導率についても報告する参考文献)1)SY oshinaga etalPhysProcedia 75(2015)9182
)MUKhan etalPhysRevMaterials1(2017)034402
11
会場 B
領域 6 8
B-1 液体金属の微視的破壊の解明多変量解析の応用
大分大 A 山田爽水A 岩下拓哉 A
液体は身近なものであり産業的にも多く利用されるも
のではあるがその基本的な物性の理論的枠組みは完成し
ていないそこで液体の動的な構造の時空間相関を把握
することが重要であるが実際液体の構造がいつどこ
で励起するのか明確な基準が確立されていない課題があ
る本研究では液体の粒子の運動を追跡し液体の微視
的破壊の起源を曖昧なく特定することを目的とする本講
演では二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュ
レーションと多変量解析を融合し液体のダイナミクス
の素過程を検出する試みを紹介する図のような原子
あたりの機械的特性 (局所応力や弾性率) の多変量時系列
データから異常検知などで使用されるマハラノビス距離を
計算しその外れ値を検出したまたこの原子あたりの
異常度と液体の局所構造変化の関係性について議論する 0
05
1
15
2
25
3
35
4
45
5
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
Binfin
Ginfin
σxx
σyy
σzz
σxy
σyz
σzx
evAring3
t(fs)
12
B-2 液体金属の不均一な局所応力緩和
大分大 A 古賀遼生A 岩下拓哉 A
液体の輸送特性である粘度の微視的解明は物性科学の重
要な課題である高温液体を急冷すると融点以下となって
も結晶化せず準安定な過冷却液体となり最終的に系の構造
緩和時間が観測時間を越え実質上固化するというガラス転
移現象を示すこのとき液体の粘性率が数十桁の増大を示
すがその物理的機構は曖昧なままである本研究の目的は
二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュレーション
を用いて液体の粘性率と局所構造の関係性を明らかにする
ことである液体の局所応力と局所構造パラメタである配位
数に着目し高温から低温へと温度を下げていく過程でどの
ように粘度へ寄与するのか解析を行った図は局所応力の
緩和時間の配位数依存性であり低温になるにつれて高い配
位数依存を示し系が不均一になっていくことがわかった
B-4 超伝導デバイス応用に向けたMoRe薄膜の作製と評価
熊本大学院自然科学研究科理学専攻 A 産業技術総合研究所 B 九州大学理学部 C 熊本大学理学部 D
澤田元気A 溝上裕也 A 藤野洋平 A 野上達也 A 前田翔 A 牧瀬圭正 B 篠崎文重 C 市川聡夫 D
超伝導デバイスの評価方法を開発するため超伝導薄膜の
諸特性を定量的に調べているこれまで研究した Mo 系の
MoNMoRuに加えて今回はMoRe薄膜に対して超伝
導-絶縁体 (S-I) 転移の臨界面抵抗臨界温度対破壊パラ
メータ等を測定し求めた質量比 7525のMoReをターゲッ
トによる RF スパッタリング装置を用いて試料を作製した
今回は膜厚を変化させて薄膜を成膜した温度範囲 2 K sim300 K磁場minus7 T sim 7Tの範囲において抵抗やHall抵抗を測
定した測定の結果膜厚 25 nm sim 52 nmで膜厚誘起 SI転
移を示し膜厚 57 nmで磁場誘起 SI転移を示したRNsq と
Tc の関係は Finkelrsquostein 理論式で説明できた図に示すよ
うに臨界面抵抗の値は約 15 kΩと見積もる事ができるまた
熱的ゆらぎによる Cooper対の生成と消滅による過剰伝導 σrsquo
の解析から対破壊パラメータ δfluc を見積もり非弾性散乱
時間 τin を見積もったしかしフィッティングがうまくあわ
ない試料もでてきたこれは膜の不均一や δfluc の温度依存
性が大きいことに依るものではないかと考えられるデバイ
ス応用を視野に入れると面抵抗の大きな薄膜も必要となる
現在窒素ガスを導入してMoRe-N薄膜の作製を試みている
$
Tc
(K
)
amp amp
RsqN (Ω)
Tc0 = 827 K
τ = 39 times 10-17
s
13
B-5 低温水素吸蔵を利用した PdHx及び PdDxの磁化測定による超伝導転移の観測
九大工 A 九大院工 B 廣田壮平A 司文 B 川崎洋輔 B 高田弘樹 B 稲垣祐次 B 河江達也 B
PdHxは水素濃度 x(x=HPd)が 075以上になると超伝導
が出現することが1970年代の初めに報告されているその
後水素濃度の増加とともに転移温度が高くなりPdHでは
約 10K 近くにまで上昇することが明らかになっている一
方同じ濃度の水素化物と重水素化物を比較すると重水素の
方が転移温度が高いという「逆同位体効果」などBCS理論で
は説明できない特徴も報告されている以上のように PdHx
の超伝導は発見から長く時間が経過するにも関わらずその物
性は十分解明されたとは言い難いその研究の進展を阻害す
る原因の 1つとしてPdHxサンプルのldquo品質維持の困難さrdquo
があるサンプル作製後実験装置に移し替える際に水素が
抜け出てしまったりサンプル内の水素分布が不均一になっ
たりするそこでこの問題を解決するため温度 200 Kで
Pdへの水素吸蔵を行いその後急冷し水素の離脱を抑制した
上で超伝導転移の観測を試みたその結果図に示すように
超伝導転移を観測することが出来た講演当日はそれらサ
ンプル作製法や測定法得られた測定結果の詳細を報告する
図 外部磁場に対する PdHx超伝導体の磁化変化
B-6 Resistivity Measurement of Superconducting PdHx Prepared by Low Temperature
Absorption
九大院工 A 九大院理 B 司文A 廣田壮平 A 伊藤大樹 B 稲垣佑次 A 木村崇 B 河江達也 A
Hydride alloy has drawn many attentions recently because of the discovery of the high temperature superconductivity
in hydride sulfide We focus on the superconductivity in palladium hydride (PdHx) where the transition temperature
varies from 1K to 10K with increasing the hydrogen ratio x higher than 07 We report that the PdHx powder samples
prepared with a new method using the low-temperature absorption show the superconductivity from the magnetization
measurements [1] To demonstrate the efficacy of the low-temperature absorption method we try to measure the
resistivity of PdHx wire and film samples The results will be shown in the presentation [1] Y Inagaki S Wen et al J
Phys Soc Jpn 87 123701 (2018)
14
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
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E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
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会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
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F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
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F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
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F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
A-6 Pd075Mn025におけるボロン添加による室温強磁性誘起
福岡工業大学 A 北川二郎A 坂口航平 A
強磁性 Mn 化合物はMn の磁気モーメントが大きくなる
ことがあり注目されている昔からMn原子間距離を長く
すると強磁性が発現しやすいことが知られているしかし
元素添加によって化学的にMn原子間距離をコントロールし
て室温強磁性の誘起や室温強磁性特性を制御できる化合物
はほとんど報告されていない我々はα-Pd 型スピングラス
Pd075Mn025 合金にボロンを添加すると格子定数が大きく
なり室温強磁性が発現することを発見した図に室温での
磁化率測定結果を示す母物質 Pd075Mn025 は常磁性状態
であるがボロン濃度 x=0015 ですでに室温強磁性が誘起
されている室温での飽和磁化は x の増加とともに増加し
x=0125 で 268 μ BMn に達するキュリー温度もこのボ
ロン濃度で最大値 390 Kとなった
発 表 論 文rdquoNew room-temperature ferromag-
net B-added Pd075Mn025 alloyrdquo J Kita-
gawa and K Sakaguchi Journal of Mag-
netism and Magnetic Materials 468 (2018) 115
A-7 CoFeAlAg 界面における抵抗スイッチング現象とスピン依存伝導
九州大学大学院理学府 A 九大理 B 九大スピンセ C 伊藤大樹A 有木大晟 A 大西紘平 BC 木村崇 BC
抵抗スイッチング型メモリは素子構造の単純さに加えて
得られる抵抗変化が極めて大きいことから次世代ナノエレク
トロニクスにおいて主要な役割を担うと期待されているま
たスピン依存伝導を利用したスピンデバイスも省エネルギー
エレクトロニクスの観点から期待されているもしこれら
2つの特性を持つデバイスが実現できればより魅力的な特性
が期待できるのは言うまでもないそこで本研究では強磁
性非磁性界面に抵抗スイッチング現象を示す接合を用いて横
型スピンバルブを試作しそのスピン伝導特性について実験的
に調べたので報告する試料は図に示すような CoFeAlAg
で構成される素子で界面に形成された Al2O3 と Ag粒子の
移動により抵抗スイッチング素子を構成するCoFeAl の
伝導電子がスピン偏極しているためAg に注入されるキャリ
アもスピン偏極しているこのスピン偏極を別の CoFeAl電
極にて検出する今回同素子を用いて抵抗スイッチング現
象及びスピンバルブ現象の両方を観測することに成功した
5
A-8 熱起因現象を意識したCoFeBPt 二層系におけるスピンダイナミクスの評価
九大理 A 九大スピンセ B 宮崎圭司A 屋冨祖稔 A 金晨東 A 鄭剛 A 木村崇 B
強磁性常磁性二層構造におけるスピンダイナミクスはス
ピントルクによるホモダイン磁気抵抗信号とスピン注入によ
る逆スピンホール信号が混在する複雑な系である更に近
年我々は強磁性共鳴時に強磁性体が発熱することを確認
しておりそれによって形成される熱スピン注入の重要性
を指摘しているしかしながら実験で観測される信号の起
源を特定するためにはスピン流が熱の流れを変化させた
実験が必要となるそこで今回我々はPtCoFeBFzSi
と CoFeBPtFzSi の2つの試料を用意し素子中の高周波
電流によって誘起されるスピンダイナミクスを比較するこ
とで各種信号変化の起源を考察した本素子構造において
は高周波電流によるジュール熱が Pt 層からまた強磁
性共鳴に伴う発熱がCoFeB から発生する前述の二種類
の膜では熱の方向が反転するため各種信号の起源の解
明に極めて有効である講演では各種のスペクトルの磁
場依存性やパワー依存性を紹介し詳細な起源解明を行う
A-9 LiTaO3におけるラマン散乱分光とフォノンの第一原理計算
九大理 A 河野輝A 徐維宏 A 吉瀬みのり A 佐藤琢哉 A
結晶内の格子振動(フォノン)は物質の対称性を反映するとともにその多くの物性に影響を与えるフォノンを光学的に観測
する手段としてラマン散乱分光法が挙げられる光の偏光自由度を制御することで検出されるフォノンの対称性(モード)
を特定することができる一方結晶内のフォノンとミクロな原子変位とを対応させて考察したい場合フォノンの第一原理計
算が有用である
我々は強誘電酸化物 LiTaO3 (0001) を対象としてラマン測定を行いフォノンの検出とそのモードの特定を行ったま
た密度汎関数摂動論(DFPT)に基づいたフォノンの第一原理計算を行った誘電体物質ではフォノンと分極電場が結合
しLO minus TO 分裂が生じる旧来の計算 [1] では分極を考慮できず TO フォノンの計算しか扱えなかったが我々は近年
の DFPTの実装を用いて TOフォノンだけでなく LOフォノンも取り扱いフォノン振動数において LOminus TO分裂を確認し
た
LiTaO3 (0001) に垂直な入射散乱光によって検出されるフォノンは群論を用いた解析によって A1 (LO) モードおよ
び E (TO)モードの2つと予測できるラマン測定の結果から特定されたフォノンと計算結果との比較を行ったE (TO)モ
ードについては実験と計算のフォノン振動数は一致するがA1 (LO)モードの場合はしない一方でA1 (TO)モードについ
ては [1]で実測された振動数と我々の計算は一致するこのことから我々の計算において LOフォノンの取り扱いに改善すべき
点があると考えられる講演ではそれらの定量的な整合性と考察を報告する
[1] S Sanna et al Phys Rev B 91 (2015) 224302
6
A-10 非周期構造を有する超格子ポテンシャルに入射するGraphene中の電子の透過特性
九大総理工 A 小川名太一A 坂口英継 A
本研究はフラクタル構造に代表されるCantor 構造を
有した超格子ポテンシャルにグラフェンの電子が入射した
場合の波動関数の透過率及びコンダクタンスを計算した
Cantor 型構造はスケール因子 a と分割数 N で特徴づけ
られる一般化された Cantor 構造を用いておりそのフラ
クタル次元は ln(N) ln(a) であるCantor 型超格子ポテン
シャルの幅を L高さを U0 とするとポテンシャルの世
代 n における波動関数の透過率は第 2 種 Chebyshev 多項式
uj(tj) (j = 0 middot middot middot nminus 1)を用いて厳密に
T =
1 + |g(k θ)|2 sin2 (qxLan)nminus1prodj=0
u2j (tj)
minus1
(1)
と表せることが分かったここで g(k θ) はポテンシャ
ルを透過するグラフェン電子の特性を示す関数であり
tj (j = 0 n minus 1) は世代 j 番目の Cantor 型構造の情報を
含む関数である(1) の特徴として電子がポテンシャルに
垂直入射しない場合の透過率に自己相似なパターンが対数
周期的に出現することであるがこの原因は第 2 種 Cheby-
shev 多項式の有限乗積によるものである又透過率の自
己相似性はこの系に磁場を印加した際のコンダクタンスに
現れ自己相似な構造を持つ振動を有することも報告する
A-11 酸素分子ナノロッドの固体相の温度-圧力相図
九工大院工 A 福大理 B 北村雄一郎A 美藤正樹 A 針尾健介 A 田尻恭之 B
酸素分子は磁気活性な等核二原子分子であり常温常圧で
磁性を持つ数少ない気体分子である高圧下での酸素分子の
研究は磁気測定X線回折光学測定中性子回折ラマン
分光法赤外線吸収電気抵抗測定などの様々な測定方法で
行われている本研究ではメソ多孔質構造 SBA-15中で一
次元ロッド状に酸素分子を凝集させた「酸素分子ナノロッド」
の固体相の温度圧力相図をバルク固体酸素分子のそれと比
較検討する
図 1は直径 85 nm 及び 24 nmの酸素分子ナノロッドにお
ける固体相の温度圧力相図であるバルク状態の固体相と
比較すると酸素分子ナノロッド固体相の相転移温度は低温
側にシフトしており個体数効果が要因であると考えられる
85 nm (βminusγ) 85 nm (αminusβ)
24 nm (αminusβ) 24 nm (βminusγ)
図1酸素分子ナノロッドの固体相の温度圧力相図
0
50
100
150
200
250
300
0 1 2 3 4 5
T (K
)
P (GPa)
Bulk (liquidminusγ )
Bulk (βminusγ )
Bulk (αminusβ )
7
A-12 超高圧実験仕様に開発されたコイル振動型 SQUID磁束計
九工大院工 A 阪大リノベ B 近藤広隆A 柴山慶介 A 入江邦彦 A 高木精志 A 美藤正樹 A 石塚守 B
10 GPa を超える高圧力下ではダイヤモンドアンビルセ
ル (DAC) の使用が不可欠となるがそこでの磁気測定は
大きく電磁誘導を利用した測定方法と超伝導量子干渉素子
(SQUID) を用いた測定方法に分けられる本研究で採用す
る VCM (Vibrating-Coil-Magnetometer) 法は検出コイル
を DAC中の試料周辺で振動させSQUIDにより磁束を検出
する [1]
巨大ひずみが初期導入された V の超伝導転移温度 TC
を追跡すべくSQUIDminusVCM 法による磁気測定を行った
図 1に 32 GPaまでの圧力下での直流磁化率の温度依存性
を示す当日は SQUIDminusVCMの詳細を説明する
[1] MIshizuka et al Rev Sci Instrum 66 3307 (1995)
4 5 6 7 8 9 10 11 12
0GPa88GPa157GPa320GPa
0001 VOe
VV
CM
H
DC [
Vo
e]
T [K]
図1 SQUID-VCM法によるVの各圧力下での直流磁化率の温度依存性
times2times045times180
A-13 強磁性常磁性二層膜構造における高圧下でのスピン依存型熱伝導現象
九大理 A 松友寛太A 有木大晟 A 木村崇 A 光田暁弘 A
強磁性常磁性重金属の界面では強磁性近接効果スピ
ンホール効果スピンポンピングジャロシンスキー守谷相互
作用などの数多くの興味深い現象が期待されており近年ス
ピン流を用いてそれらの物性を評価する研究が活発化してい
る一方で実際の実験において観測される物理量は巨視的
な量であり上記の現象の複数が絡み合って観測されるため
実験結果から微視的な起源を特定するのが困難になっている
もし何らかの手法で界面状態を調整しその上で系統的
な物性実験を行えれば各種起源の解明に極めて有効になる
と期待できるそこで本研究ではCoFeBPt 二層膜にお
ける圧力効果を実験的に調べた 二層膜のスピン流に起因
現象に特有の電気伝導特性及び熱伝導特性を圧力をパラ
メータにして系統的に測定し各種信号の起源を解明する
8338
8339
834
8341
8342
8343
8344
8345
8346
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
電圧
(μV
)
磁場(mT)
P=05GPaでの磁気抵抗効果
8
A-14 横型スピンバルブを用いたスピンネルンスト効果の観測
九大理 A 九大スピンセ B 松田亮A 須小遼河 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A NagarjunaAsamA 木村崇 AB
スピントロニクス分野の発展に伴いスピン流と熱の相互
作用に起因する各種現象が注目されている一方で熱流と
磁化の相互作用に起因する磁気熱電効果も存在し両者は
極めて類似の現象を引き起こすため実験的に観測された信
号の真の起源を見分けることは容易ではない我々は極
めて最近に観測され始めているスピンネルンスト効果に着
目し横型スピンバルブを用いた新奇な測定法を考案したの
で報告する試料は電子線描画装置による微細加工と真空
蒸着法スパッタリング法を用いて作成した PtCoFeAlCu
の細線で構成される素子である作製した素子の電子顕微
鏡写真を右図に示す発表では同素子を用いたスピンネル
ンスト効果スピンホール効果の実験等の結果を報告する
CuCu
Cu Cu
Cu
Cu
CoFeAlPt
Cu
作成したPtCoFeAlCuの細線素子のSEM画像
A-15 スピン依存ペルチェ - ゼーベック効果の相関関係の実験的評価
九大理 A 九大スピンセ B 須小遼河A 松田亮 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A 大西紘平 AB 木村崇 AB
異なる金属接合に電流を流すことで熱流が発生するペル
チェ効果は広く知られているが近年同様の効果がスピ
ン流を流すことでも発生することが知られているこの
スピン依存ペルチェ効果の観測は熱流の制御が困難な
ため容易ではなく明瞭な実験結果は報告されていない
今回我々はスピン依存ゼーベック係数が大きな物質で
はスピン依存ペルチェ係数が大きくなることに着目し
CoFeAlCu 横型スピンバルブを用いてスピン依存ペル
チェ効果の観測を試みたので報告する作製した素子の電
子顕微鏡写真を図に示す本素子において左側接合にお
ける非局所スピン注入法により純スピン流を生成しそれ
を右側接合を介してCoFeAl 電圧端子に吸収させスピン
バルブ信号及びスピン依存ペルチェ信号の観測を試みた
9
A-16 MnNiGe-CoNiGe系の輸送特性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学教育センター B 東京大学 ISSPC 恩田圭二朗A 佐藤裕汰 A 廣
井政彦 A 真中浩貴 A 寺田教男 A 近藤晃弘 C 金道弘一 C 伊藤昌和 B
近年環境に優しい冷凍技術として磁気冷凍の研究がすす
められているその中でMnNiGe-CoNiGeの系は一次磁気
相転移を起こし巨大磁気熱量効果を引き起こす材料として
注目が集まっているこの系は Ni2In 型の常磁性六方晶か
らTiNiSi 型の反強磁性斜方晶へと磁気相転移とマルテン
サイト変態を起こし両相転移のカップリングが磁気冷凍に
は重要とされているまたこの系の置換量を増やしていく
ことでスピングラスのような振舞も観測される今回我々は
この系におけるスピングラスのような振舞を磁性的な視点か
ら明らかにする図に Mn1minusxCoxNiGe(x = 02) における
磁化の温度依存性を示す強磁性的な曲線から常磁性的な曲
線への相転移が観測されると同時に低温側でゼロ磁場中冷
却 (ZFC)と磁場中冷却 (FC)に明らかなヒステリシスも観測
されるすなわちこの組成域においてスピングラスのよう
な振舞が観測できると考えられる講演ではx ge 02 にお
ける磁化の温度依存性および磁場依存性について議論する
A-17 強磁性薄膜におけるパルス磁場励起ダイナミクスの数値シミュレーション
九大理 A 谷脇俊介A 今野克洋 A 松本慧大 A 佐藤琢哉 A
磁性体中に励起される磁化の運動はマグノニクスという新しい分野で盛んに研究されている磁場パルスによって励起される
磁化の運動は円運動をしながら徐々に減衰していることが知られており最近磁化の運動の理論式が提案された [1]しかし
ながら具体的な計算によるその理論式の検証はなされていなかったそこで我々は磁性体薄膜において磁化を短時間の磁場パ
ルスによって励起した磁化の運動の様子をGPU ベースのマイクロマグネティックシミュレーションソフトである mumax3
を用いて計算した講演ではその結果を解析し提案された磁場の強さと時間幅の 2次に比例する理論式と一致したことを報
告する
[1] Kozhaev Mikhail AAU et al Scientific Reports 8 11435 (2018)
10
A-19 層間結合した強磁性多層膜における非線形スピンダイナミクスの観測
九大理 A 九大スピンセ B 屋冨祖稔A 宮崎圭司 A TowfiqHossainTaskA 木村崇 B
複数の磁性層を持つ磁性多層膜においてマイクロ波を照
射すると各磁性層の状態に合わせた強磁性共鳴が励起され
る異なる磁性層の共鳴条件が近い場合共鳴振動は結合し
同期共鳴による位相ロックモードあるいは反交差モードな
どの特殊状態の観測が期待できる一方でそのような同時
共鳴状態からずれた状況においても各種の層間相互作用が
存在するため磁性層の共鳴モードは単層膜のそれらから
変調されると期待できるそのような多層膜の多重共鳴を観
測するために今回CoFeAlCuPy多層膜を作成しその
共鳴特性を微分強磁性共鳴法及びホモダイン検波法を用
いて評価した講演ではマイクロ波パワー強度の増大に伴
う共鳴状態の変化やスピントルクの影響について考察する
A-20 CrAlGeの磁性と熱物性
鹿児島大学大学院理工学研究科 A 鹿児島大教育センター B 白濱透A 恩田圭二朗 A 増満勇人 A 三井好
古 A 小山佳一 A 藤井伸平 A 伊藤昌和 B
Cr 基三元化合物 CrAlGe は斜方晶系 TiSi ₂型結晶構造を取り強磁性転移温度 TC = 80K を持つ弱い遍歴電子強磁性
体であることが報告されている 1)一方で交流磁化率の詳細な解析からT cで見られる磁化異常の原因は長距離秩序
を持たない強磁性クラスターグラスによる可能性が最近指摘された 2)今回我々はこの物質の基底状態を調べるため熱
測定を行った図に CrAlGe の比熱CpT の温度依存性を示す磁化の温度依存性では TC以下で強磁性的な振る舞いが
みられるにも関わらず比熱には長距離秩序を示すような異常は見られなかった一般的にグラス転移では比熱の異常は
現れないことが知られているこのことからCrAlGe の基底状態はグラス的なものと考えられる講演ではこの系のゼー
ベック係数抵抗率熱伝導率についても報告する参考文献)1)SY oshinaga etalPhysProcedia 75(2015)9182
)MUKhan etalPhysRevMaterials1(2017)034402
11
会場 B
領域 6 8
B-1 液体金属の微視的破壊の解明多変量解析の応用
大分大 A 山田爽水A 岩下拓哉 A
液体は身近なものであり産業的にも多く利用されるも
のではあるがその基本的な物性の理論的枠組みは完成し
ていないそこで液体の動的な構造の時空間相関を把握
することが重要であるが実際液体の構造がいつどこ
で励起するのか明確な基準が確立されていない課題があ
る本研究では液体の粒子の運動を追跡し液体の微視
的破壊の起源を曖昧なく特定することを目的とする本講
演では二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュ
レーションと多変量解析を融合し液体のダイナミクス
の素過程を検出する試みを紹介する図のような原子
あたりの機械的特性 (局所応力や弾性率) の多変量時系列
データから異常検知などで使用されるマハラノビス距離を
計算しその外れ値を検出したまたこの原子あたりの
異常度と液体の局所構造変化の関係性について議論する 0
05
1
15
2
25
3
35
4
45
5
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
Binfin
Ginfin
σxx
σyy
σzz
σxy
σyz
σzx
evAring3
t(fs)
12
B-2 液体金属の不均一な局所応力緩和
大分大 A 古賀遼生A 岩下拓哉 A
液体の輸送特性である粘度の微視的解明は物性科学の重
要な課題である高温液体を急冷すると融点以下となって
も結晶化せず準安定な過冷却液体となり最終的に系の構造
緩和時間が観測時間を越え実質上固化するというガラス転
移現象を示すこのとき液体の粘性率が数十桁の増大を示
すがその物理的機構は曖昧なままである本研究の目的は
二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュレーション
を用いて液体の粘性率と局所構造の関係性を明らかにする
ことである液体の局所応力と局所構造パラメタである配位
数に着目し高温から低温へと温度を下げていく過程でどの
ように粘度へ寄与するのか解析を行った図は局所応力の
緩和時間の配位数依存性であり低温になるにつれて高い配
位数依存を示し系が不均一になっていくことがわかった
B-4 超伝導デバイス応用に向けたMoRe薄膜の作製と評価
熊本大学院自然科学研究科理学専攻 A 産業技術総合研究所 B 九州大学理学部 C 熊本大学理学部 D
澤田元気A 溝上裕也 A 藤野洋平 A 野上達也 A 前田翔 A 牧瀬圭正 B 篠崎文重 C 市川聡夫 D
超伝導デバイスの評価方法を開発するため超伝導薄膜の
諸特性を定量的に調べているこれまで研究した Mo 系の
MoNMoRuに加えて今回はMoRe薄膜に対して超伝
導-絶縁体 (S-I) 転移の臨界面抵抗臨界温度対破壊パラ
メータ等を測定し求めた質量比 7525のMoReをターゲッ
トによる RF スパッタリング装置を用いて試料を作製した
今回は膜厚を変化させて薄膜を成膜した温度範囲 2 K sim300 K磁場minus7 T sim 7Tの範囲において抵抗やHall抵抗を測
定した測定の結果膜厚 25 nm sim 52 nmで膜厚誘起 SI転
移を示し膜厚 57 nmで磁場誘起 SI転移を示したRNsq と
Tc の関係は Finkelrsquostein 理論式で説明できた図に示すよ
うに臨界面抵抗の値は約 15 kΩと見積もる事ができるまた
熱的ゆらぎによる Cooper対の生成と消滅による過剰伝導 σrsquo
の解析から対破壊パラメータ δfluc を見積もり非弾性散乱
時間 τin を見積もったしかしフィッティングがうまくあわ
ない試料もでてきたこれは膜の不均一や δfluc の温度依存
性が大きいことに依るものではないかと考えられるデバイ
ス応用を視野に入れると面抵抗の大きな薄膜も必要となる
現在窒素ガスを導入してMoRe-N薄膜の作製を試みている
$
Tc
(K
)
amp amp
RsqN (Ω)
Tc0 = 827 K
τ = 39 times 10-17
s
13
B-5 低温水素吸蔵を利用した PdHx及び PdDxの磁化測定による超伝導転移の観測
九大工 A 九大院工 B 廣田壮平A 司文 B 川崎洋輔 B 高田弘樹 B 稲垣祐次 B 河江達也 B
PdHxは水素濃度 x(x=HPd)が 075以上になると超伝導
が出現することが1970年代の初めに報告されているその
後水素濃度の増加とともに転移温度が高くなりPdHでは
約 10K 近くにまで上昇することが明らかになっている一
方同じ濃度の水素化物と重水素化物を比較すると重水素の
方が転移温度が高いという「逆同位体効果」などBCS理論で
は説明できない特徴も報告されている以上のように PdHx
の超伝導は発見から長く時間が経過するにも関わらずその物
性は十分解明されたとは言い難いその研究の進展を阻害す
る原因の 1つとしてPdHxサンプルのldquo品質維持の困難さrdquo
があるサンプル作製後実験装置に移し替える際に水素が
抜け出てしまったりサンプル内の水素分布が不均一になっ
たりするそこでこの問題を解決するため温度 200 Kで
Pdへの水素吸蔵を行いその後急冷し水素の離脱を抑制した
上で超伝導転移の観測を試みたその結果図に示すように
超伝導転移を観測することが出来た講演当日はそれらサ
ンプル作製法や測定法得られた測定結果の詳細を報告する
図 外部磁場に対する PdHx超伝導体の磁化変化
B-6 Resistivity Measurement of Superconducting PdHx Prepared by Low Temperature
Absorption
九大院工 A 九大院理 B 司文A 廣田壮平 A 伊藤大樹 B 稲垣佑次 A 木村崇 B 河江達也 A
Hydride alloy has drawn many attentions recently because of the discovery of the high temperature superconductivity
in hydride sulfide We focus on the superconductivity in palladium hydride (PdHx) where the transition temperature
varies from 1K to 10K with increasing the hydrogen ratio x higher than 07 We report that the PdHx powder samples
prepared with a new method using the low-temperature absorption show the superconductivity from the magnetization
measurements [1] To demonstrate the efficacy of the low-temperature absorption method we try to measure the
resistivity of PdHx wire and film samples The results will be shown in the presentation [1] Y Inagaki S Wen et al J
Phys Soc Jpn 87 123701 (2018)
14
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
A-8 熱起因現象を意識したCoFeBPt 二層系におけるスピンダイナミクスの評価
九大理 A 九大スピンセ B 宮崎圭司A 屋冨祖稔 A 金晨東 A 鄭剛 A 木村崇 B
強磁性常磁性二層構造におけるスピンダイナミクスはス
ピントルクによるホモダイン磁気抵抗信号とスピン注入によ
る逆スピンホール信号が混在する複雑な系である更に近
年我々は強磁性共鳴時に強磁性体が発熱することを確認
しておりそれによって形成される熱スピン注入の重要性
を指摘しているしかしながら実験で観測される信号の起
源を特定するためにはスピン流が熱の流れを変化させた
実験が必要となるそこで今回我々はPtCoFeBFzSi
と CoFeBPtFzSi の2つの試料を用意し素子中の高周波
電流によって誘起されるスピンダイナミクスを比較するこ
とで各種信号変化の起源を考察した本素子構造において
は高周波電流によるジュール熱が Pt 層からまた強磁
性共鳴に伴う発熱がCoFeB から発生する前述の二種類
の膜では熱の方向が反転するため各種信号の起源の解
明に極めて有効である講演では各種のスペクトルの磁
場依存性やパワー依存性を紹介し詳細な起源解明を行う
A-9 LiTaO3におけるラマン散乱分光とフォノンの第一原理計算
九大理 A 河野輝A 徐維宏 A 吉瀬みのり A 佐藤琢哉 A
結晶内の格子振動(フォノン)は物質の対称性を反映するとともにその多くの物性に影響を与えるフォノンを光学的に観測
する手段としてラマン散乱分光法が挙げられる光の偏光自由度を制御することで検出されるフォノンの対称性(モード)
を特定することができる一方結晶内のフォノンとミクロな原子変位とを対応させて考察したい場合フォノンの第一原理計
算が有用である
我々は強誘電酸化物 LiTaO3 (0001) を対象としてラマン測定を行いフォノンの検出とそのモードの特定を行ったま
た密度汎関数摂動論(DFPT)に基づいたフォノンの第一原理計算を行った誘電体物質ではフォノンと分極電場が結合
しLO minus TO 分裂が生じる旧来の計算 [1] では分極を考慮できず TO フォノンの計算しか扱えなかったが我々は近年
の DFPTの実装を用いて TOフォノンだけでなく LOフォノンも取り扱いフォノン振動数において LOminus TO分裂を確認し
た
LiTaO3 (0001) に垂直な入射散乱光によって検出されるフォノンは群論を用いた解析によって A1 (LO) モードおよ
び E (TO)モードの2つと予測できるラマン測定の結果から特定されたフォノンと計算結果との比較を行ったE (TO)モ
ードについては実験と計算のフォノン振動数は一致するがA1 (LO)モードの場合はしない一方でA1 (TO)モードについ
ては [1]で実測された振動数と我々の計算は一致するこのことから我々の計算において LOフォノンの取り扱いに改善すべき
点があると考えられる講演ではそれらの定量的な整合性と考察を報告する
[1] S Sanna et al Phys Rev B 91 (2015) 224302
6
A-10 非周期構造を有する超格子ポテンシャルに入射するGraphene中の電子の透過特性
九大総理工 A 小川名太一A 坂口英継 A
本研究はフラクタル構造に代表されるCantor 構造を
有した超格子ポテンシャルにグラフェンの電子が入射した
場合の波動関数の透過率及びコンダクタンスを計算した
Cantor 型構造はスケール因子 a と分割数 N で特徴づけ
られる一般化された Cantor 構造を用いておりそのフラ
クタル次元は ln(N) ln(a) であるCantor 型超格子ポテン
シャルの幅を L高さを U0 とするとポテンシャルの世
代 n における波動関数の透過率は第 2 種 Chebyshev 多項式
uj(tj) (j = 0 middot middot middot nminus 1)を用いて厳密に
T =
1 + |g(k θ)|2 sin2 (qxLan)nminus1prodj=0
u2j (tj)
minus1
(1)
と表せることが分かったここで g(k θ) はポテンシャ
ルを透過するグラフェン電子の特性を示す関数であり
tj (j = 0 n minus 1) は世代 j 番目の Cantor 型構造の情報を
含む関数である(1) の特徴として電子がポテンシャルに
垂直入射しない場合の透過率に自己相似なパターンが対数
周期的に出現することであるがこの原因は第 2 種 Cheby-
shev 多項式の有限乗積によるものである又透過率の自
己相似性はこの系に磁場を印加した際のコンダクタンスに
現れ自己相似な構造を持つ振動を有することも報告する
A-11 酸素分子ナノロッドの固体相の温度-圧力相図
九工大院工 A 福大理 B 北村雄一郎A 美藤正樹 A 針尾健介 A 田尻恭之 B
酸素分子は磁気活性な等核二原子分子であり常温常圧で
磁性を持つ数少ない気体分子である高圧下での酸素分子の
研究は磁気測定X線回折光学測定中性子回折ラマン
分光法赤外線吸収電気抵抗測定などの様々な測定方法で
行われている本研究ではメソ多孔質構造 SBA-15中で一
次元ロッド状に酸素分子を凝集させた「酸素分子ナノロッド」
の固体相の温度圧力相図をバルク固体酸素分子のそれと比
較検討する
図 1は直径 85 nm 及び 24 nmの酸素分子ナノロッドにお
ける固体相の温度圧力相図であるバルク状態の固体相と
比較すると酸素分子ナノロッド固体相の相転移温度は低温
側にシフトしており個体数効果が要因であると考えられる
85 nm (βminusγ) 85 nm (αminusβ)
24 nm (αminusβ) 24 nm (βminusγ)
図1酸素分子ナノロッドの固体相の温度圧力相図
0
50
100
150
200
250
300
0 1 2 3 4 5
T (K
)
P (GPa)
Bulk (liquidminusγ )
Bulk (βminusγ )
Bulk (αminusβ )
7
A-12 超高圧実験仕様に開発されたコイル振動型 SQUID磁束計
九工大院工 A 阪大リノベ B 近藤広隆A 柴山慶介 A 入江邦彦 A 高木精志 A 美藤正樹 A 石塚守 B
10 GPa を超える高圧力下ではダイヤモンドアンビルセ
ル (DAC) の使用が不可欠となるがそこでの磁気測定は
大きく電磁誘導を利用した測定方法と超伝導量子干渉素子
(SQUID) を用いた測定方法に分けられる本研究で採用す
る VCM (Vibrating-Coil-Magnetometer) 法は検出コイル
を DAC中の試料周辺で振動させSQUIDにより磁束を検出
する [1]
巨大ひずみが初期導入された V の超伝導転移温度 TC
を追跡すべくSQUIDminusVCM 法による磁気測定を行った
図 1に 32 GPaまでの圧力下での直流磁化率の温度依存性
を示す当日は SQUIDminusVCMの詳細を説明する
[1] MIshizuka et al Rev Sci Instrum 66 3307 (1995)
4 5 6 7 8 9 10 11 12
0GPa88GPa157GPa320GPa
0001 VOe
VV
CM
H
DC [
Vo
e]
T [K]
図1 SQUID-VCM法によるVの各圧力下での直流磁化率の温度依存性
times2times045times180
A-13 強磁性常磁性二層膜構造における高圧下でのスピン依存型熱伝導現象
九大理 A 松友寛太A 有木大晟 A 木村崇 A 光田暁弘 A
強磁性常磁性重金属の界面では強磁性近接効果スピ
ンホール効果スピンポンピングジャロシンスキー守谷相互
作用などの数多くの興味深い現象が期待されており近年ス
ピン流を用いてそれらの物性を評価する研究が活発化してい
る一方で実際の実験において観測される物理量は巨視的
な量であり上記の現象の複数が絡み合って観測されるため
実験結果から微視的な起源を特定するのが困難になっている
もし何らかの手法で界面状態を調整しその上で系統的
な物性実験を行えれば各種起源の解明に極めて有効になる
と期待できるそこで本研究ではCoFeBPt 二層膜にお
ける圧力効果を実験的に調べた 二層膜のスピン流に起因
現象に特有の電気伝導特性及び熱伝導特性を圧力をパラ
メータにして系統的に測定し各種信号の起源を解明する
8338
8339
834
8341
8342
8343
8344
8345
8346
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
電圧
(μV
)
磁場(mT)
P=05GPaでの磁気抵抗効果
8
A-14 横型スピンバルブを用いたスピンネルンスト効果の観測
九大理 A 九大スピンセ B 松田亮A 須小遼河 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A NagarjunaAsamA 木村崇 AB
スピントロニクス分野の発展に伴いスピン流と熱の相互
作用に起因する各種現象が注目されている一方で熱流と
磁化の相互作用に起因する磁気熱電効果も存在し両者は
極めて類似の現象を引き起こすため実験的に観測された信
号の真の起源を見分けることは容易ではない我々は極
めて最近に観測され始めているスピンネルンスト効果に着
目し横型スピンバルブを用いた新奇な測定法を考案したの
で報告する試料は電子線描画装置による微細加工と真空
蒸着法スパッタリング法を用いて作成した PtCoFeAlCu
の細線で構成される素子である作製した素子の電子顕微
鏡写真を右図に示す発表では同素子を用いたスピンネル
ンスト効果スピンホール効果の実験等の結果を報告する
CuCu
Cu Cu
Cu
Cu
CoFeAlPt
Cu
作成したPtCoFeAlCuの細線素子のSEM画像
A-15 スピン依存ペルチェ - ゼーベック効果の相関関係の実験的評価
九大理 A 九大スピンセ B 須小遼河A 松田亮 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A 大西紘平 AB 木村崇 AB
異なる金属接合に電流を流すことで熱流が発生するペル
チェ効果は広く知られているが近年同様の効果がスピ
ン流を流すことでも発生することが知られているこの
スピン依存ペルチェ効果の観測は熱流の制御が困難な
ため容易ではなく明瞭な実験結果は報告されていない
今回我々はスピン依存ゼーベック係数が大きな物質で
はスピン依存ペルチェ係数が大きくなることに着目し
CoFeAlCu 横型スピンバルブを用いてスピン依存ペル
チェ効果の観測を試みたので報告する作製した素子の電
子顕微鏡写真を図に示す本素子において左側接合にお
ける非局所スピン注入法により純スピン流を生成しそれ
を右側接合を介してCoFeAl 電圧端子に吸収させスピン
バルブ信号及びスピン依存ペルチェ信号の観測を試みた
9
A-16 MnNiGe-CoNiGe系の輸送特性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学教育センター B 東京大学 ISSPC 恩田圭二朗A 佐藤裕汰 A 廣
井政彦 A 真中浩貴 A 寺田教男 A 近藤晃弘 C 金道弘一 C 伊藤昌和 B
近年環境に優しい冷凍技術として磁気冷凍の研究がすす
められているその中でMnNiGe-CoNiGeの系は一次磁気
相転移を起こし巨大磁気熱量効果を引き起こす材料として
注目が集まっているこの系は Ni2In 型の常磁性六方晶か
らTiNiSi 型の反強磁性斜方晶へと磁気相転移とマルテン
サイト変態を起こし両相転移のカップリングが磁気冷凍に
は重要とされているまたこの系の置換量を増やしていく
ことでスピングラスのような振舞も観測される今回我々は
この系におけるスピングラスのような振舞を磁性的な視点か
ら明らかにする図に Mn1minusxCoxNiGe(x = 02) における
磁化の温度依存性を示す強磁性的な曲線から常磁性的な曲
線への相転移が観測されると同時に低温側でゼロ磁場中冷
却 (ZFC)と磁場中冷却 (FC)に明らかなヒステリシスも観測
されるすなわちこの組成域においてスピングラスのよう
な振舞が観測できると考えられる講演ではx ge 02 にお
ける磁化の温度依存性および磁場依存性について議論する
A-17 強磁性薄膜におけるパルス磁場励起ダイナミクスの数値シミュレーション
九大理 A 谷脇俊介A 今野克洋 A 松本慧大 A 佐藤琢哉 A
磁性体中に励起される磁化の運動はマグノニクスという新しい分野で盛んに研究されている磁場パルスによって励起される
磁化の運動は円運動をしながら徐々に減衰していることが知られており最近磁化の運動の理論式が提案された [1]しかし
ながら具体的な計算によるその理論式の検証はなされていなかったそこで我々は磁性体薄膜において磁化を短時間の磁場パ
ルスによって励起した磁化の運動の様子をGPU ベースのマイクロマグネティックシミュレーションソフトである mumax3
を用いて計算した講演ではその結果を解析し提案された磁場の強さと時間幅の 2次に比例する理論式と一致したことを報
告する
[1] Kozhaev Mikhail AAU et al Scientific Reports 8 11435 (2018)
10
A-19 層間結合した強磁性多層膜における非線形スピンダイナミクスの観測
九大理 A 九大スピンセ B 屋冨祖稔A 宮崎圭司 A TowfiqHossainTaskA 木村崇 B
複数の磁性層を持つ磁性多層膜においてマイクロ波を照
射すると各磁性層の状態に合わせた強磁性共鳴が励起され
る異なる磁性層の共鳴条件が近い場合共鳴振動は結合し
同期共鳴による位相ロックモードあるいは反交差モードな
どの特殊状態の観測が期待できる一方でそのような同時
共鳴状態からずれた状況においても各種の層間相互作用が
存在するため磁性層の共鳴モードは単層膜のそれらから
変調されると期待できるそのような多層膜の多重共鳴を観
測するために今回CoFeAlCuPy多層膜を作成しその
共鳴特性を微分強磁性共鳴法及びホモダイン検波法を用
いて評価した講演ではマイクロ波パワー強度の増大に伴
う共鳴状態の変化やスピントルクの影響について考察する
A-20 CrAlGeの磁性と熱物性
鹿児島大学大学院理工学研究科 A 鹿児島大教育センター B 白濱透A 恩田圭二朗 A 増満勇人 A 三井好
古 A 小山佳一 A 藤井伸平 A 伊藤昌和 B
Cr 基三元化合物 CrAlGe は斜方晶系 TiSi ₂型結晶構造を取り強磁性転移温度 TC = 80K を持つ弱い遍歴電子強磁性
体であることが報告されている 1)一方で交流磁化率の詳細な解析からT cで見られる磁化異常の原因は長距離秩序
を持たない強磁性クラスターグラスによる可能性が最近指摘された 2)今回我々はこの物質の基底状態を調べるため熱
測定を行った図に CrAlGe の比熱CpT の温度依存性を示す磁化の温度依存性では TC以下で強磁性的な振る舞いが
みられるにも関わらず比熱には長距離秩序を示すような異常は見られなかった一般的にグラス転移では比熱の異常は
現れないことが知られているこのことからCrAlGe の基底状態はグラス的なものと考えられる講演ではこの系のゼー
ベック係数抵抗率熱伝導率についても報告する参考文献)1)SY oshinaga etalPhysProcedia 75(2015)9182
)MUKhan etalPhysRevMaterials1(2017)034402
11
会場 B
領域 6 8
B-1 液体金属の微視的破壊の解明多変量解析の応用
大分大 A 山田爽水A 岩下拓哉 A
液体は身近なものであり産業的にも多く利用されるも
のではあるがその基本的な物性の理論的枠組みは完成し
ていないそこで液体の動的な構造の時空間相関を把握
することが重要であるが実際液体の構造がいつどこ
で励起するのか明確な基準が確立されていない課題があ
る本研究では液体の粒子の運動を追跡し液体の微視
的破壊の起源を曖昧なく特定することを目的とする本講
演では二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュ
レーションと多変量解析を融合し液体のダイナミクス
の素過程を検出する試みを紹介する図のような原子
あたりの機械的特性 (局所応力や弾性率) の多変量時系列
データから異常検知などで使用されるマハラノビス距離を
計算しその外れ値を検出したまたこの原子あたりの
異常度と液体の局所構造変化の関係性について議論する 0
05
1
15
2
25
3
35
4
45
5
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
Binfin
Ginfin
σxx
σyy
σzz
σxy
σyz
σzx
evAring3
t(fs)
12
B-2 液体金属の不均一な局所応力緩和
大分大 A 古賀遼生A 岩下拓哉 A
液体の輸送特性である粘度の微視的解明は物性科学の重
要な課題である高温液体を急冷すると融点以下となって
も結晶化せず準安定な過冷却液体となり最終的に系の構造
緩和時間が観測時間を越え実質上固化するというガラス転
移現象を示すこのとき液体の粘性率が数十桁の増大を示
すがその物理的機構は曖昧なままである本研究の目的は
二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュレーション
を用いて液体の粘性率と局所構造の関係性を明らかにする
ことである液体の局所応力と局所構造パラメタである配位
数に着目し高温から低温へと温度を下げていく過程でどの
ように粘度へ寄与するのか解析を行った図は局所応力の
緩和時間の配位数依存性であり低温になるにつれて高い配
位数依存を示し系が不均一になっていくことがわかった
B-4 超伝導デバイス応用に向けたMoRe薄膜の作製と評価
熊本大学院自然科学研究科理学専攻 A 産業技術総合研究所 B 九州大学理学部 C 熊本大学理学部 D
澤田元気A 溝上裕也 A 藤野洋平 A 野上達也 A 前田翔 A 牧瀬圭正 B 篠崎文重 C 市川聡夫 D
超伝導デバイスの評価方法を開発するため超伝導薄膜の
諸特性を定量的に調べているこれまで研究した Mo 系の
MoNMoRuに加えて今回はMoRe薄膜に対して超伝
導-絶縁体 (S-I) 転移の臨界面抵抗臨界温度対破壊パラ
メータ等を測定し求めた質量比 7525のMoReをターゲッ
トによる RF スパッタリング装置を用いて試料を作製した
今回は膜厚を変化させて薄膜を成膜した温度範囲 2 K sim300 K磁場minus7 T sim 7Tの範囲において抵抗やHall抵抗を測
定した測定の結果膜厚 25 nm sim 52 nmで膜厚誘起 SI転
移を示し膜厚 57 nmで磁場誘起 SI転移を示したRNsq と
Tc の関係は Finkelrsquostein 理論式で説明できた図に示すよ
うに臨界面抵抗の値は約 15 kΩと見積もる事ができるまた
熱的ゆらぎによる Cooper対の生成と消滅による過剰伝導 σrsquo
の解析から対破壊パラメータ δfluc を見積もり非弾性散乱
時間 τin を見積もったしかしフィッティングがうまくあわ
ない試料もでてきたこれは膜の不均一や δfluc の温度依存
性が大きいことに依るものではないかと考えられるデバイ
ス応用を視野に入れると面抵抗の大きな薄膜も必要となる
現在窒素ガスを導入してMoRe-N薄膜の作製を試みている
$
Tc
(K
)
amp amp
RsqN (Ω)
Tc0 = 827 K
τ = 39 times 10-17
s
13
B-5 低温水素吸蔵を利用した PdHx及び PdDxの磁化測定による超伝導転移の観測
九大工 A 九大院工 B 廣田壮平A 司文 B 川崎洋輔 B 高田弘樹 B 稲垣祐次 B 河江達也 B
PdHxは水素濃度 x(x=HPd)が 075以上になると超伝導
が出現することが1970年代の初めに報告されているその
後水素濃度の増加とともに転移温度が高くなりPdHでは
約 10K 近くにまで上昇することが明らかになっている一
方同じ濃度の水素化物と重水素化物を比較すると重水素の
方が転移温度が高いという「逆同位体効果」などBCS理論で
は説明できない特徴も報告されている以上のように PdHx
の超伝導は発見から長く時間が経過するにも関わらずその物
性は十分解明されたとは言い難いその研究の進展を阻害す
る原因の 1つとしてPdHxサンプルのldquo品質維持の困難さrdquo
があるサンプル作製後実験装置に移し替える際に水素が
抜け出てしまったりサンプル内の水素分布が不均一になっ
たりするそこでこの問題を解決するため温度 200 Kで
Pdへの水素吸蔵を行いその後急冷し水素の離脱を抑制した
上で超伝導転移の観測を試みたその結果図に示すように
超伝導転移を観測することが出来た講演当日はそれらサ
ンプル作製法や測定法得られた測定結果の詳細を報告する
図 外部磁場に対する PdHx超伝導体の磁化変化
B-6 Resistivity Measurement of Superconducting PdHx Prepared by Low Temperature
Absorption
九大院工 A 九大院理 B 司文A 廣田壮平 A 伊藤大樹 B 稲垣佑次 A 木村崇 B 河江達也 A
Hydride alloy has drawn many attentions recently because of the discovery of the high temperature superconductivity
in hydride sulfide We focus on the superconductivity in palladium hydride (PdHx) where the transition temperature
varies from 1K to 10K with increasing the hydrogen ratio x higher than 07 We report that the PdHx powder samples
prepared with a new method using the low-temperature absorption show the superconductivity from the magnetization
measurements [1] To demonstrate the efficacy of the low-temperature absorption method we try to measure the
resistivity of PdHx wire and film samples The results will be shown in the presentation [1] Y Inagaki S Wen et al J
Phys Soc Jpn 87 123701 (2018)
14
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
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D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
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D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
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D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
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会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
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E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
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E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
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E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
A-10 非周期構造を有する超格子ポテンシャルに入射するGraphene中の電子の透過特性
九大総理工 A 小川名太一A 坂口英継 A
本研究はフラクタル構造に代表されるCantor 構造を
有した超格子ポテンシャルにグラフェンの電子が入射した
場合の波動関数の透過率及びコンダクタンスを計算した
Cantor 型構造はスケール因子 a と分割数 N で特徴づけ
られる一般化された Cantor 構造を用いておりそのフラ
クタル次元は ln(N) ln(a) であるCantor 型超格子ポテン
シャルの幅を L高さを U0 とするとポテンシャルの世
代 n における波動関数の透過率は第 2 種 Chebyshev 多項式
uj(tj) (j = 0 middot middot middot nminus 1)を用いて厳密に
T =
1 + |g(k θ)|2 sin2 (qxLan)nminus1prodj=0
u2j (tj)
minus1
(1)
と表せることが分かったここで g(k θ) はポテンシャ
ルを透過するグラフェン電子の特性を示す関数であり
tj (j = 0 n minus 1) は世代 j 番目の Cantor 型構造の情報を
含む関数である(1) の特徴として電子がポテンシャルに
垂直入射しない場合の透過率に自己相似なパターンが対数
周期的に出現することであるがこの原因は第 2 種 Cheby-
shev 多項式の有限乗積によるものである又透過率の自
己相似性はこの系に磁場を印加した際のコンダクタンスに
現れ自己相似な構造を持つ振動を有することも報告する
A-11 酸素分子ナノロッドの固体相の温度-圧力相図
九工大院工 A 福大理 B 北村雄一郎A 美藤正樹 A 針尾健介 A 田尻恭之 B
酸素分子は磁気活性な等核二原子分子であり常温常圧で
磁性を持つ数少ない気体分子である高圧下での酸素分子の
研究は磁気測定X線回折光学測定中性子回折ラマン
分光法赤外線吸収電気抵抗測定などの様々な測定方法で
行われている本研究ではメソ多孔質構造 SBA-15中で一
次元ロッド状に酸素分子を凝集させた「酸素分子ナノロッド」
の固体相の温度圧力相図をバルク固体酸素分子のそれと比
較検討する
図 1は直径 85 nm 及び 24 nmの酸素分子ナノロッドにお
ける固体相の温度圧力相図であるバルク状態の固体相と
比較すると酸素分子ナノロッド固体相の相転移温度は低温
側にシフトしており個体数効果が要因であると考えられる
85 nm (βminusγ) 85 nm (αminusβ)
24 nm (αminusβ) 24 nm (βminusγ)
図1酸素分子ナノロッドの固体相の温度圧力相図
0
50
100
150
200
250
300
0 1 2 3 4 5
T (K
)
P (GPa)
Bulk (liquidminusγ )
Bulk (βminusγ )
Bulk (αminusβ )
7
A-12 超高圧実験仕様に開発されたコイル振動型 SQUID磁束計
九工大院工 A 阪大リノベ B 近藤広隆A 柴山慶介 A 入江邦彦 A 高木精志 A 美藤正樹 A 石塚守 B
10 GPa を超える高圧力下ではダイヤモンドアンビルセ
ル (DAC) の使用が不可欠となるがそこでの磁気測定は
大きく電磁誘導を利用した測定方法と超伝導量子干渉素子
(SQUID) を用いた測定方法に分けられる本研究で採用す
る VCM (Vibrating-Coil-Magnetometer) 法は検出コイル
を DAC中の試料周辺で振動させSQUIDにより磁束を検出
する [1]
巨大ひずみが初期導入された V の超伝導転移温度 TC
を追跡すべくSQUIDminusVCM 法による磁気測定を行った
図 1に 32 GPaまでの圧力下での直流磁化率の温度依存性
を示す当日は SQUIDminusVCMの詳細を説明する
[1] MIshizuka et al Rev Sci Instrum 66 3307 (1995)
4 5 6 7 8 9 10 11 12
0GPa88GPa157GPa320GPa
0001 VOe
VV
CM
H
DC [
Vo
e]
T [K]
図1 SQUID-VCM法によるVの各圧力下での直流磁化率の温度依存性
times2times045times180
A-13 強磁性常磁性二層膜構造における高圧下でのスピン依存型熱伝導現象
九大理 A 松友寛太A 有木大晟 A 木村崇 A 光田暁弘 A
強磁性常磁性重金属の界面では強磁性近接効果スピ
ンホール効果スピンポンピングジャロシンスキー守谷相互
作用などの数多くの興味深い現象が期待されており近年ス
ピン流を用いてそれらの物性を評価する研究が活発化してい
る一方で実際の実験において観測される物理量は巨視的
な量であり上記の現象の複数が絡み合って観測されるため
実験結果から微視的な起源を特定するのが困難になっている
もし何らかの手法で界面状態を調整しその上で系統的
な物性実験を行えれば各種起源の解明に極めて有効になる
と期待できるそこで本研究ではCoFeBPt 二層膜にお
ける圧力効果を実験的に調べた 二層膜のスピン流に起因
現象に特有の電気伝導特性及び熱伝導特性を圧力をパラ
メータにして系統的に測定し各種信号の起源を解明する
8338
8339
834
8341
8342
8343
8344
8345
8346
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
電圧
(μV
)
磁場(mT)
P=05GPaでの磁気抵抗効果
8
A-14 横型スピンバルブを用いたスピンネルンスト効果の観測
九大理 A 九大スピンセ B 松田亮A 須小遼河 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A NagarjunaAsamA 木村崇 AB
スピントロニクス分野の発展に伴いスピン流と熱の相互
作用に起因する各種現象が注目されている一方で熱流と
磁化の相互作用に起因する磁気熱電効果も存在し両者は
極めて類似の現象を引き起こすため実験的に観測された信
号の真の起源を見分けることは容易ではない我々は極
めて最近に観測され始めているスピンネルンスト効果に着
目し横型スピンバルブを用いた新奇な測定法を考案したの
で報告する試料は電子線描画装置による微細加工と真空
蒸着法スパッタリング法を用いて作成した PtCoFeAlCu
の細線で構成される素子である作製した素子の電子顕微
鏡写真を右図に示す発表では同素子を用いたスピンネル
ンスト効果スピンホール効果の実験等の結果を報告する
CuCu
Cu Cu
Cu
Cu
CoFeAlPt
Cu
作成したPtCoFeAlCuの細線素子のSEM画像
A-15 スピン依存ペルチェ - ゼーベック効果の相関関係の実験的評価
九大理 A 九大スピンセ B 須小遼河A 松田亮 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A 大西紘平 AB 木村崇 AB
異なる金属接合に電流を流すことで熱流が発生するペル
チェ効果は広く知られているが近年同様の効果がスピ
ン流を流すことでも発生することが知られているこの
スピン依存ペルチェ効果の観測は熱流の制御が困難な
ため容易ではなく明瞭な実験結果は報告されていない
今回我々はスピン依存ゼーベック係数が大きな物質で
はスピン依存ペルチェ係数が大きくなることに着目し
CoFeAlCu 横型スピンバルブを用いてスピン依存ペル
チェ効果の観測を試みたので報告する作製した素子の電
子顕微鏡写真を図に示す本素子において左側接合にお
ける非局所スピン注入法により純スピン流を生成しそれ
を右側接合を介してCoFeAl 電圧端子に吸収させスピン
バルブ信号及びスピン依存ペルチェ信号の観測を試みた
9
A-16 MnNiGe-CoNiGe系の輸送特性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学教育センター B 東京大学 ISSPC 恩田圭二朗A 佐藤裕汰 A 廣
井政彦 A 真中浩貴 A 寺田教男 A 近藤晃弘 C 金道弘一 C 伊藤昌和 B
近年環境に優しい冷凍技術として磁気冷凍の研究がすす
められているその中でMnNiGe-CoNiGeの系は一次磁気
相転移を起こし巨大磁気熱量効果を引き起こす材料として
注目が集まっているこの系は Ni2In 型の常磁性六方晶か
らTiNiSi 型の反強磁性斜方晶へと磁気相転移とマルテン
サイト変態を起こし両相転移のカップリングが磁気冷凍に
は重要とされているまたこの系の置換量を増やしていく
ことでスピングラスのような振舞も観測される今回我々は
この系におけるスピングラスのような振舞を磁性的な視点か
ら明らかにする図に Mn1minusxCoxNiGe(x = 02) における
磁化の温度依存性を示す強磁性的な曲線から常磁性的な曲
線への相転移が観測されると同時に低温側でゼロ磁場中冷
却 (ZFC)と磁場中冷却 (FC)に明らかなヒステリシスも観測
されるすなわちこの組成域においてスピングラスのよう
な振舞が観測できると考えられる講演ではx ge 02 にお
ける磁化の温度依存性および磁場依存性について議論する
A-17 強磁性薄膜におけるパルス磁場励起ダイナミクスの数値シミュレーション
九大理 A 谷脇俊介A 今野克洋 A 松本慧大 A 佐藤琢哉 A
磁性体中に励起される磁化の運動はマグノニクスという新しい分野で盛んに研究されている磁場パルスによって励起される
磁化の運動は円運動をしながら徐々に減衰していることが知られており最近磁化の運動の理論式が提案された [1]しかし
ながら具体的な計算によるその理論式の検証はなされていなかったそこで我々は磁性体薄膜において磁化を短時間の磁場パ
ルスによって励起した磁化の運動の様子をGPU ベースのマイクロマグネティックシミュレーションソフトである mumax3
を用いて計算した講演ではその結果を解析し提案された磁場の強さと時間幅の 2次に比例する理論式と一致したことを報
告する
[1] Kozhaev Mikhail AAU et al Scientific Reports 8 11435 (2018)
10
A-19 層間結合した強磁性多層膜における非線形スピンダイナミクスの観測
九大理 A 九大スピンセ B 屋冨祖稔A 宮崎圭司 A TowfiqHossainTaskA 木村崇 B
複数の磁性層を持つ磁性多層膜においてマイクロ波を照
射すると各磁性層の状態に合わせた強磁性共鳴が励起され
る異なる磁性層の共鳴条件が近い場合共鳴振動は結合し
同期共鳴による位相ロックモードあるいは反交差モードな
どの特殊状態の観測が期待できる一方でそのような同時
共鳴状態からずれた状況においても各種の層間相互作用が
存在するため磁性層の共鳴モードは単層膜のそれらから
変調されると期待できるそのような多層膜の多重共鳴を観
測するために今回CoFeAlCuPy多層膜を作成しその
共鳴特性を微分強磁性共鳴法及びホモダイン検波法を用
いて評価した講演ではマイクロ波パワー強度の増大に伴
う共鳴状態の変化やスピントルクの影響について考察する
A-20 CrAlGeの磁性と熱物性
鹿児島大学大学院理工学研究科 A 鹿児島大教育センター B 白濱透A 恩田圭二朗 A 増満勇人 A 三井好
古 A 小山佳一 A 藤井伸平 A 伊藤昌和 B
Cr 基三元化合物 CrAlGe は斜方晶系 TiSi ₂型結晶構造を取り強磁性転移温度 TC = 80K を持つ弱い遍歴電子強磁性
体であることが報告されている 1)一方で交流磁化率の詳細な解析からT cで見られる磁化異常の原因は長距離秩序
を持たない強磁性クラスターグラスによる可能性が最近指摘された 2)今回我々はこの物質の基底状態を調べるため熱
測定を行った図に CrAlGe の比熱CpT の温度依存性を示す磁化の温度依存性では TC以下で強磁性的な振る舞いが
みられるにも関わらず比熱には長距離秩序を示すような異常は見られなかった一般的にグラス転移では比熱の異常は
現れないことが知られているこのことからCrAlGe の基底状態はグラス的なものと考えられる講演ではこの系のゼー
ベック係数抵抗率熱伝導率についても報告する参考文献)1)SY oshinaga etalPhysProcedia 75(2015)9182
)MUKhan etalPhysRevMaterials1(2017)034402
11
会場 B
領域 6 8
B-1 液体金属の微視的破壊の解明多変量解析の応用
大分大 A 山田爽水A 岩下拓哉 A
液体は身近なものであり産業的にも多く利用されるも
のではあるがその基本的な物性の理論的枠組みは完成し
ていないそこで液体の動的な構造の時空間相関を把握
することが重要であるが実際液体の構造がいつどこ
で励起するのか明確な基準が確立されていない課題があ
る本研究では液体の粒子の運動を追跡し液体の微視
的破壊の起源を曖昧なく特定することを目的とする本講
演では二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュ
レーションと多変量解析を融合し液体のダイナミクス
の素過程を検出する試みを紹介する図のような原子
あたりの機械的特性 (局所応力や弾性率) の多変量時系列
データから異常検知などで使用されるマハラノビス距離を
計算しその外れ値を検出したまたこの原子あたりの
異常度と液体の局所構造変化の関係性について議論する 0
05
1
15
2
25
3
35
4
45
5
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
Binfin
Ginfin
σxx
σyy
σzz
σxy
σyz
σzx
evAring3
t(fs)
12
B-2 液体金属の不均一な局所応力緩和
大分大 A 古賀遼生A 岩下拓哉 A
液体の輸送特性である粘度の微視的解明は物性科学の重
要な課題である高温液体を急冷すると融点以下となって
も結晶化せず準安定な過冷却液体となり最終的に系の構造
緩和時間が観測時間を越え実質上固化するというガラス転
移現象を示すこのとき液体の粘性率が数十桁の増大を示
すがその物理的機構は曖昧なままである本研究の目的は
二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュレーション
を用いて液体の粘性率と局所構造の関係性を明らかにする
ことである液体の局所応力と局所構造パラメタである配位
数に着目し高温から低温へと温度を下げていく過程でどの
ように粘度へ寄与するのか解析を行った図は局所応力の
緩和時間の配位数依存性であり低温になるにつれて高い配
位数依存を示し系が不均一になっていくことがわかった
B-4 超伝導デバイス応用に向けたMoRe薄膜の作製と評価
熊本大学院自然科学研究科理学専攻 A 産業技術総合研究所 B 九州大学理学部 C 熊本大学理学部 D
澤田元気A 溝上裕也 A 藤野洋平 A 野上達也 A 前田翔 A 牧瀬圭正 B 篠崎文重 C 市川聡夫 D
超伝導デバイスの評価方法を開発するため超伝導薄膜の
諸特性を定量的に調べているこれまで研究した Mo 系の
MoNMoRuに加えて今回はMoRe薄膜に対して超伝
導-絶縁体 (S-I) 転移の臨界面抵抗臨界温度対破壊パラ
メータ等を測定し求めた質量比 7525のMoReをターゲッ
トによる RF スパッタリング装置を用いて試料を作製した
今回は膜厚を変化させて薄膜を成膜した温度範囲 2 K sim300 K磁場minus7 T sim 7Tの範囲において抵抗やHall抵抗を測
定した測定の結果膜厚 25 nm sim 52 nmで膜厚誘起 SI転
移を示し膜厚 57 nmで磁場誘起 SI転移を示したRNsq と
Tc の関係は Finkelrsquostein 理論式で説明できた図に示すよ
うに臨界面抵抗の値は約 15 kΩと見積もる事ができるまた
熱的ゆらぎによる Cooper対の生成と消滅による過剰伝導 σrsquo
の解析から対破壊パラメータ δfluc を見積もり非弾性散乱
時間 τin を見積もったしかしフィッティングがうまくあわ
ない試料もでてきたこれは膜の不均一や δfluc の温度依存
性が大きいことに依るものではないかと考えられるデバイ
ス応用を視野に入れると面抵抗の大きな薄膜も必要となる
現在窒素ガスを導入してMoRe-N薄膜の作製を試みている
$
Tc
(K
)
amp amp
RsqN (Ω)
Tc0 = 827 K
τ = 39 times 10-17
s
13
B-5 低温水素吸蔵を利用した PdHx及び PdDxの磁化測定による超伝導転移の観測
九大工 A 九大院工 B 廣田壮平A 司文 B 川崎洋輔 B 高田弘樹 B 稲垣祐次 B 河江達也 B
PdHxは水素濃度 x(x=HPd)が 075以上になると超伝導
が出現することが1970年代の初めに報告されているその
後水素濃度の増加とともに転移温度が高くなりPdHでは
約 10K 近くにまで上昇することが明らかになっている一
方同じ濃度の水素化物と重水素化物を比較すると重水素の
方が転移温度が高いという「逆同位体効果」などBCS理論で
は説明できない特徴も報告されている以上のように PdHx
の超伝導は発見から長く時間が経過するにも関わらずその物
性は十分解明されたとは言い難いその研究の進展を阻害す
る原因の 1つとしてPdHxサンプルのldquo品質維持の困難さrdquo
があるサンプル作製後実験装置に移し替える際に水素が
抜け出てしまったりサンプル内の水素分布が不均一になっ
たりするそこでこの問題を解決するため温度 200 Kで
Pdへの水素吸蔵を行いその後急冷し水素の離脱を抑制した
上で超伝導転移の観測を試みたその結果図に示すように
超伝導転移を観測することが出来た講演当日はそれらサ
ンプル作製法や測定法得られた測定結果の詳細を報告する
図 外部磁場に対する PdHx超伝導体の磁化変化
B-6 Resistivity Measurement of Superconducting PdHx Prepared by Low Temperature
Absorption
九大院工 A 九大院理 B 司文A 廣田壮平 A 伊藤大樹 B 稲垣佑次 A 木村崇 B 河江達也 A
Hydride alloy has drawn many attentions recently because of the discovery of the high temperature superconductivity
in hydride sulfide We focus on the superconductivity in palladium hydride (PdHx) where the transition temperature
varies from 1K to 10K with increasing the hydrogen ratio x higher than 07 We report that the PdHx powder samples
prepared with a new method using the low-temperature absorption show the superconductivity from the magnetization
measurements [1] To demonstrate the efficacy of the low-temperature absorption method we try to measure the
resistivity of PdHx wire and film samples The results will be shown in the presentation [1] Y Inagaki S Wen et al J
Phys Soc Jpn 87 123701 (2018)
14
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
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F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
A-12 超高圧実験仕様に開発されたコイル振動型 SQUID磁束計
九工大院工 A 阪大リノベ B 近藤広隆A 柴山慶介 A 入江邦彦 A 高木精志 A 美藤正樹 A 石塚守 B
10 GPa を超える高圧力下ではダイヤモンドアンビルセ
ル (DAC) の使用が不可欠となるがそこでの磁気測定は
大きく電磁誘導を利用した測定方法と超伝導量子干渉素子
(SQUID) を用いた測定方法に分けられる本研究で採用す
る VCM (Vibrating-Coil-Magnetometer) 法は検出コイル
を DAC中の試料周辺で振動させSQUIDにより磁束を検出
する [1]
巨大ひずみが初期導入された V の超伝導転移温度 TC
を追跡すべくSQUIDminusVCM 法による磁気測定を行った
図 1に 32 GPaまでの圧力下での直流磁化率の温度依存性
を示す当日は SQUIDminusVCMの詳細を説明する
[1] MIshizuka et al Rev Sci Instrum 66 3307 (1995)
4 5 6 7 8 9 10 11 12
0GPa88GPa157GPa320GPa
0001 VOe
VV
CM
H
DC [
Vo
e]
T [K]
図1 SQUID-VCM法によるVの各圧力下での直流磁化率の温度依存性
times2times045times180
A-13 強磁性常磁性二層膜構造における高圧下でのスピン依存型熱伝導現象
九大理 A 松友寛太A 有木大晟 A 木村崇 A 光田暁弘 A
強磁性常磁性重金属の界面では強磁性近接効果スピ
ンホール効果スピンポンピングジャロシンスキー守谷相互
作用などの数多くの興味深い現象が期待されており近年ス
ピン流を用いてそれらの物性を評価する研究が活発化してい
る一方で実際の実験において観測される物理量は巨視的
な量であり上記の現象の複数が絡み合って観測されるため
実験結果から微視的な起源を特定するのが困難になっている
もし何らかの手法で界面状態を調整しその上で系統的
な物性実験を行えれば各種起源の解明に極めて有効になる
と期待できるそこで本研究ではCoFeBPt 二層膜にお
ける圧力効果を実験的に調べた 二層膜のスピン流に起因
現象に特有の電気伝導特性及び熱伝導特性を圧力をパラ
メータにして系統的に測定し各種信号の起源を解明する
8338
8339
834
8341
8342
8343
8344
8345
8346
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
電圧
(μV
)
磁場(mT)
P=05GPaでの磁気抵抗効果
8
A-14 横型スピンバルブを用いたスピンネルンスト効果の観測
九大理 A 九大スピンセ B 松田亮A 須小遼河 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A NagarjunaAsamA 木村崇 AB
スピントロニクス分野の発展に伴いスピン流と熱の相互
作用に起因する各種現象が注目されている一方で熱流と
磁化の相互作用に起因する磁気熱電効果も存在し両者は
極めて類似の現象を引き起こすため実験的に観測された信
号の真の起源を見分けることは容易ではない我々は極
めて最近に観測され始めているスピンネルンスト効果に着
目し横型スピンバルブを用いた新奇な測定法を考案したの
で報告する試料は電子線描画装置による微細加工と真空
蒸着法スパッタリング法を用いて作成した PtCoFeAlCu
の細線で構成される素子である作製した素子の電子顕微
鏡写真を右図に示す発表では同素子を用いたスピンネル
ンスト効果スピンホール効果の実験等の結果を報告する
CuCu
Cu Cu
Cu
Cu
CoFeAlPt
Cu
作成したPtCoFeAlCuの細線素子のSEM画像
A-15 スピン依存ペルチェ - ゼーベック効果の相関関係の実験的評価
九大理 A 九大スピンセ B 須小遼河A 松田亮 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A 大西紘平 AB 木村崇 AB
異なる金属接合に電流を流すことで熱流が発生するペル
チェ効果は広く知られているが近年同様の効果がスピ
ン流を流すことでも発生することが知られているこの
スピン依存ペルチェ効果の観測は熱流の制御が困難な
ため容易ではなく明瞭な実験結果は報告されていない
今回我々はスピン依存ゼーベック係数が大きな物質で
はスピン依存ペルチェ係数が大きくなることに着目し
CoFeAlCu 横型スピンバルブを用いてスピン依存ペル
チェ効果の観測を試みたので報告する作製した素子の電
子顕微鏡写真を図に示す本素子において左側接合にお
ける非局所スピン注入法により純スピン流を生成しそれ
を右側接合を介してCoFeAl 電圧端子に吸収させスピン
バルブ信号及びスピン依存ペルチェ信号の観測を試みた
9
A-16 MnNiGe-CoNiGe系の輸送特性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学教育センター B 東京大学 ISSPC 恩田圭二朗A 佐藤裕汰 A 廣
井政彦 A 真中浩貴 A 寺田教男 A 近藤晃弘 C 金道弘一 C 伊藤昌和 B
近年環境に優しい冷凍技術として磁気冷凍の研究がすす
められているその中でMnNiGe-CoNiGeの系は一次磁気
相転移を起こし巨大磁気熱量効果を引き起こす材料として
注目が集まっているこの系は Ni2In 型の常磁性六方晶か
らTiNiSi 型の反強磁性斜方晶へと磁気相転移とマルテン
サイト変態を起こし両相転移のカップリングが磁気冷凍に
は重要とされているまたこの系の置換量を増やしていく
ことでスピングラスのような振舞も観測される今回我々は
この系におけるスピングラスのような振舞を磁性的な視点か
ら明らかにする図に Mn1minusxCoxNiGe(x = 02) における
磁化の温度依存性を示す強磁性的な曲線から常磁性的な曲
線への相転移が観測されると同時に低温側でゼロ磁場中冷
却 (ZFC)と磁場中冷却 (FC)に明らかなヒステリシスも観測
されるすなわちこの組成域においてスピングラスのよう
な振舞が観測できると考えられる講演ではx ge 02 にお
ける磁化の温度依存性および磁場依存性について議論する
A-17 強磁性薄膜におけるパルス磁場励起ダイナミクスの数値シミュレーション
九大理 A 谷脇俊介A 今野克洋 A 松本慧大 A 佐藤琢哉 A
磁性体中に励起される磁化の運動はマグノニクスという新しい分野で盛んに研究されている磁場パルスによって励起される
磁化の運動は円運動をしながら徐々に減衰していることが知られており最近磁化の運動の理論式が提案された [1]しかし
ながら具体的な計算によるその理論式の検証はなされていなかったそこで我々は磁性体薄膜において磁化を短時間の磁場パ
ルスによって励起した磁化の運動の様子をGPU ベースのマイクロマグネティックシミュレーションソフトである mumax3
を用いて計算した講演ではその結果を解析し提案された磁場の強さと時間幅の 2次に比例する理論式と一致したことを報
告する
[1] Kozhaev Mikhail AAU et al Scientific Reports 8 11435 (2018)
10
A-19 層間結合した強磁性多層膜における非線形スピンダイナミクスの観測
九大理 A 九大スピンセ B 屋冨祖稔A 宮崎圭司 A TowfiqHossainTaskA 木村崇 B
複数の磁性層を持つ磁性多層膜においてマイクロ波を照
射すると各磁性層の状態に合わせた強磁性共鳴が励起され
る異なる磁性層の共鳴条件が近い場合共鳴振動は結合し
同期共鳴による位相ロックモードあるいは反交差モードな
どの特殊状態の観測が期待できる一方でそのような同時
共鳴状態からずれた状況においても各種の層間相互作用が
存在するため磁性層の共鳴モードは単層膜のそれらから
変調されると期待できるそのような多層膜の多重共鳴を観
測するために今回CoFeAlCuPy多層膜を作成しその
共鳴特性を微分強磁性共鳴法及びホモダイン検波法を用
いて評価した講演ではマイクロ波パワー強度の増大に伴
う共鳴状態の変化やスピントルクの影響について考察する
A-20 CrAlGeの磁性と熱物性
鹿児島大学大学院理工学研究科 A 鹿児島大教育センター B 白濱透A 恩田圭二朗 A 増満勇人 A 三井好
古 A 小山佳一 A 藤井伸平 A 伊藤昌和 B
Cr 基三元化合物 CrAlGe は斜方晶系 TiSi ₂型結晶構造を取り強磁性転移温度 TC = 80K を持つ弱い遍歴電子強磁性
体であることが報告されている 1)一方で交流磁化率の詳細な解析からT cで見られる磁化異常の原因は長距離秩序
を持たない強磁性クラスターグラスによる可能性が最近指摘された 2)今回我々はこの物質の基底状態を調べるため熱
測定を行った図に CrAlGe の比熱CpT の温度依存性を示す磁化の温度依存性では TC以下で強磁性的な振る舞いが
みられるにも関わらず比熱には長距離秩序を示すような異常は見られなかった一般的にグラス転移では比熱の異常は
現れないことが知られているこのことからCrAlGe の基底状態はグラス的なものと考えられる講演ではこの系のゼー
ベック係数抵抗率熱伝導率についても報告する参考文献)1)SY oshinaga etalPhysProcedia 75(2015)9182
)MUKhan etalPhysRevMaterials1(2017)034402
11
会場 B
領域 6 8
B-1 液体金属の微視的破壊の解明多変量解析の応用
大分大 A 山田爽水A 岩下拓哉 A
液体は身近なものであり産業的にも多く利用されるも
のではあるがその基本的な物性の理論的枠組みは完成し
ていないそこで液体の動的な構造の時空間相関を把握
することが重要であるが実際液体の構造がいつどこ
で励起するのか明確な基準が確立されていない課題があ
る本研究では液体の粒子の運動を追跡し液体の微視
的破壊の起源を曖昧なく特定することを目的とする本講
演では二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュ
レーションと多変量解析を融合し液体のダイナミクス
の素過程を検出する試みを紹介する図のような原子
あたりの機械的特性 (局所応力や弾性率) の多変量時系列
データから異常検知などで使用されるマハラノビス距離を
計算しその外れ値を検出したまたこの原子あたりの
異常度と液体の局所構造変化の関係性について議論する 0
05
1
15
2
25
3
35
4
45
5
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
Binfin
Ginfin
σxx
σyy
σzz
σxy
σyz
σzx
evAring3
t(fs)
12
B-2 液体金属の不均一な局所応力緩和
大分大 A 古賀遼生A 岩下拓哉 A
液体の輸送特性である粘度の微視的解明は物性科学の重
要な課題である高温液体を急冷すると融点以下となって
も結晶化せず準安定な過冷却液体となり最終的に系の構造
緩和時間が観測時間を越え実質上固化するというガラス転
移現象を示すこのとき液体の粘性率が数十桁の増大を示
すがその物理的機構は曖昧なままである本研究の目的は
二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュレーション
を用いて液体の粘性率と局所構造の関係性を明らかにする
ことである液体の局所応力と局所構造パラメタである配位
数に着目し高温から低温へと温度を下げていく過程でどの
ように粘度へ寄与するのか解析を行った図は局所応力の
緩和時間の配位数依存性であり低温になるにつれて高い配
位数依存を示し系が不均一になっていくことがわかった
B-4 超伝導デバイス応用に向けたMoRe薄膜の作製と評価
熊本大学院自然科学研究科理学専攻 A 産業技術総合研究所 B 九州大学理学部 C 熊本大学理学部 D
澤田元気A 溝上裕也 A 藤野洋平 A 野上達也 A 前田翔 A 牧瀬圭正 B 篠崎文重 C 市川聡夫 D
超伝導デバイスの評価方法を開発するため超伝導薄膜の
諸特性を定量的に調べているこれまで研究した Mo 系の
MoNMoRuに加えて今回はMoRe薄膜に対して超伝
導-絶縁体 (S-I) 転移の臨界面抵抗臨界温度対破壊パラ
メータ等を測定し求めた質量比 7525のMoReをターゲッ
トによる RF スパッタリング装置を用いて試料を作製した
今回は膜厚を変化させて薄膜を成膜した温度範囲 2 K sim300 K磁場minus7 T sim 7Tの範囲において抵抗やHall抵抗を測
定した測定の結果膜厚 25 nm sim 52 nmで膜厚誘起 SI転
移を示し膜厚 57 nmで磁場誘起 SI転移を示したRNsq と
Tc の関係は Finkelrsquostein 理論式で説明できた図に示すよ
うに臨界面抵抗の値は約 15 kΩと見積もる事ができるまた
熱的ゆらぎによる Cooper対の生成と消滅による過剰伝導 σrsquo
の解析から対破壊パラメータ δfluc を見積もり非弾性散乱
時間 τin を見積もったしかしフィッティングがうまくあわ
ない試料もでてきたこれは膜の不均一や δfluc の温度依存
性が大きいことに依るものではないかと考えられるデバイ
ス応用を視野に入れると面抵抗の大きな薄膜も必要となる
現在窒素ガスを導入してMoRe-N薄膜の作製を試みている
$
Tc
(K
)
amp amp
RsqN (Ω)
Tc0 = 827 K
τ = 39 times 10-17
s
13
B-5 低温水素吸蔵を利用した PdHx及び PdDxの磁化測定による超伝導転移の観測
九大工 A 九大院工 B 廣田壮平A 司文 B 川崎洋輔 B 高田弘樹 B 稲垣祐次 B 河江達也 B
PdHxは水素濃度 x(x=HPd)が 075以上になると超伝導
が出現することが1970年代の初めに報告されているその
後水素濃度の増加とともに転移温度が高くなりPdHでは
約 10K 近くにまで上昇することが明らかになっている一
方同じ濃度の水素化物と重水素化物を比較すると重水素の
方が転移温度が高いという「逆同位体効果」などBCS理論で
は説明できない特徴も報告されている以上のように PdHx
の超伝導は発見から長く時間が経過するにも関わらずその物
性は十分解明されたとは言い難いその研究の進展を阻害す
る原因の 1つとしてPdHxサンプルのldquo品質維持の困難さrdquo
があるサンプル作製後実験装置に移し替える際に水素が
抜け出てしまったりサンプル内の水素分布が不均一になっ
たりするそこでこの問題を解決するため温度 200 Kで
Pdへの水素吸蔵を行いその後急冷し水素の離脱を抑制した
上で超伝導転移の観測を試みたその結果図に示すように
超伝導転移を観測することが出来た講演当日はそれらサ
ンプル作製法や測定法得られた測定結果の詳細を報告する
図 外部磁場に対する PdHx超伝導体の磁化変化
B-6 Resistivity Measurement of Superconducting PdHx Prepared by Low Temperature
Absorption
九大院工 A 九大院理 B 司文A 廣田壮平 A 伊藤大樹 B 稲垣佑次 A 木村崇 B 河江達也 A
Hydride alloy has drawn many attentions recently because of the discovery of the high temperature superconductivity
in hydride sulfide We focus on the superconductivity in palladium hydride (PdHx) where the transition temperature
varies from 1K to 10K with increasing the hydrogen ratio x higher than 07 We report that the PdHx powder samples
prepared with a new method using the low-temperature absorption show the superconductivity from the magnetization
measurements [1] To demonstrate the efficacy of the low-temperature absorption method we try to measure the
resistivity of PdHx wire and film samples The results will be shown in the presentation [1] Y Inagaki S Wen et al J
Phys Soc Jpn 87 123701 (2018)
14
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
A-14 横型スピンバルブを用いたスピンネルンスト効果の観測
九大理 A 九大スピンセ B 松田亮A 須小遼河 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A NagarjunaAsamA 木村崇 AB
スピントロニクス分野の発展に伴いスピン流と熱の相互
作用に起因する各種現象が注目されている一方で熱流と
磁化の相互作用に起因する磁気熱電効果も存在し両者は
極めて類似の現象を引き起こすため実験的に観測された信
号の真の起源を見分けることは容易ではない我々は極
めて最近に観測され始めているスピンネルンスト効果に着
目し横型スピンバルブを用いた新奇な測定法を考案したの
で報告する試料は電子線描画装置による微細加工と真空
蒸着法スパッタリング法を用いて作成した PtCoFeAlCu
の細線で構成される素子である作製した素子の電子顕微
鏡写真を右図に示す発表では同素子を用いたスピンネル
ンスト効果スピンホール効果の実験等の結果を報告する
CuCu
Cu Cu
Cu
Cu
CoFeAlPt
Cu
作成したPtCoFeAlCuの細線素子のSEM画像
A-15 スピン依存ペルチェ - ゼーベック効果の相関関係の実験的評価
九大理 A 九大スピンセ B 須小遼河A 松田亮 A 伊藤大樹 A 有木大晟 A 大西紘平 AB 木村崇 AB
異なる金属接合に電流を流すことで熱流が発生するペル
チェ効果は広く知られているが近年同様の効果がスピ
ン流を流すことでも発生することが知られているこの
スピン依存ペルチェ効果の観測は熱流の制御が困難な
ため容易ではなく明瞭な実験結果は報告されていない
今回我々はスピン依存ゼーベック係数が大きな物質で
はスピン依存ペルチェ係数が大きくなることに着目し
CoFeAlCu 横型スピンバルブを用いてスピン依存ペル
チェ効果の観測を試みたので報告する作製した素子の電
子顕微鏡写真を図に示す本素子において左側接合にお
ける非局所スピン注入法により純スピン流を生成しそれ
を右側接合を介してCoFeAl 電圧端子に吸収させスピン
バルブ信号及びスピン依存ペルチェ信号の観測を試みた
9
A-16 MnNiGe-CoNiGe系の輸送特性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学教育センター B 東京大学 ISSPC 恩田圭二朗A 佐藤裕汰 A 廣
井政彦 A 真中浩貴 A 寺田教男 A 近藤晃弘 C 金道弘一 C 伊藤昌和 B
近年環境に優しい冷凍技術として磁気冷凍の研究がすす
められているその中でMnNiGe-CoNiGeの系は一次磁気
相転移を起こし巨大磁気熱量効果を引き起こす材料として
注目が集まっているこの系は Ni2In 型の常磁性六方晶か
らTiNiSi 型の反強磁性斜方晶へと磁気相転移とマルテン
サイト変態を起こし両相転移のカップリングが磁気冷凍に
は重要とされているまたこの系の置換量を増やしていく
ことでスピングラスのような振舞も観測される今回我々は
この系におけるスピングラスのような振舞を磁性的な視点か
ら明らかにする図に Mn1minusxCoxNiGe(x = 02) における
磁化の温度依存性を示す強磁性的な曲線から常磁性的な曲
線への相転移が観測されると同時に低温側でゼロ磁場中冷
却 (ZFC)と磁場中冷却 (FC)に明らかなヒステリシスも観測
されるすなわちこの組成域においてスピングラスのよう
な振舞が観測できると考えられる講演ではx ge 02 にお
ける磁化の温度依存性および磁場依存性について議論する
A-17 強磁性薄膜におけるパルス磁場励起ダイナミクスの数値シミュレーション
九大理 A 谷脇俊介A 今野克洋 A 松本慧大 A 佐藤琢哉 A
磁性体中に励起される磁化の運動はマグノニクスという新しい分野で盛んに研究されている磁場パルスによって励起される
磁化の運動は円運動をしながら徐々に減衰していることが知られており最近磁化の運動の理論式が提案された [1]しかし
ながら具体的な計算によるその理論式の検証はなされていなかったそこで我々は磁性体薄膜において磁化を短時間の磁場パ
ルスによって励起した磁化の運動の様子をGPU ベースのマイクロマグネティックシミュレーションソフトである mumax3
を用いて計算した講演ではその結果を解析し提案された磁場の強さと時間幅の 2次に比例する理論式と一致したことを報
告する
[1] Kozhaev Mikhail AAU et al Scientific Reports 8 11435 (2018)
10
A-19 層間結合した強磁性多層膜における非線形スピンダイナミクスの観測
九大理 A 九大スピンセ B 屋冨祖稔A 宮崎圭司 A TowfiqHossainTaskA 木村崇 B
複数の磁性層を持つ磁性多層膜においてマイクロ波を照
射すると各磁性層の状態に合わせた強磁性共鳴が励起され
る異なる磁性層の共鳴条件が近い場合共鳴振動は結合し
同期共鳴による位相ロックモードあるいは反交差モードな
どの特殊状態の観測が期待できる一方でそのような同時
共鳴状態からずれた状況においても各種の層間相互作用が
存在するため磁性層の共鳴モードは単層膜のそれらから
変調されると期待できるそのような多層膜の多重共鳴を観
測するために今回CoFeAlCuPy多層膜を作成しその
共鳴特性を微分強磁性共鳴法及びホモダイン検波法を用
いて評価した講演ではマイクロ波パワー強度の増大に伴
う共鳴状態の変化やスピントルクの影響について考察する
A-20 CrAlGeの磁性と熱物性
鹿児島大学大学院理工学研究科 A 鹿児島大教育センター B 白濱透A 恩田圭二朗 A 増満勇人 A 三井好
古 A 小山佳一 A 藤井伸平 A 伊藤昌和 B
Cr 基三元化合物 CrAlGe は斜方晶系 TiSi ₂型結晶構造を取り強磁性転移温度 TC = 80K を持つ弱い遍歴電子強磁性
体であることが報告されている 1)一方で交流磁化率の詳細な解析からT cで見られる磁化異常の原因は長距離秩序
を持たない強磁性クラスターグラスによる可能性が最近指摘された 2)今回我々はこの物質の基底状態を調べるため熱
測定を行った図に CrAlGe の比熱CpT の温度依存性を示す磁化の温度依存性では TC以下で強磁性的な振る舞いが
みられるにも関わらず比熱には長距離秩序を示すような異常は見られなかった一般的にグラス転移では比熱の異常は
現れないことが知られているこのことからCrAlGe の基底状態はグラス的なものと考えられる講演ではこの系のゼー
ベック係数抵抗率熱伝導率についても報告する参考文献)1)SY oshinaga etalPhysProcedia 75(2015)9182
)MUKhan etalPhysRevMaterials1(2017)034402
11
会場 B
領域 6 8
B-1 液体金属の微視的破壊の解明多変量解析の応用
大分大 A 山田爽水A 岩下拓哉 A
液体は身近なものであり産業的にも多く利用されるも
のではあるがその基本的な物性の理論的枠組みは完成し
ていないそこで液体の動的な構造の時空間相関を把握
することが重要であるが実際液体の構造がいつどこ
で励起するのか明確な基準が確立されていない課題があ
る本研究では液体の粒子の運動を追跡し液体の微視
的破壊の起源を曖昧なく特定することを目的とする本講
演では二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュ
レーションと多変量解析を融合し液体のダイナミクス
の素過程を検出する試みを紹介する図のような原子
あたりの機械的特性 (局所応力や弾性率) の多変量時系列
データから異常検知などで使用されるマハラノビス距離を
計算しその外れ値を検出したまたこの原子あたりの
異常度と液体の局所構造変化の関係性について議論する 0
05
1
15
2
25
3
35
4
45
5
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
Binfin
Ginfin
σxx
σyy
σzz
σxy
σyz
σzx
evAring3
t(fs)
12
B-2 液体金属の不均一な局所応力緩和
大分大 A 古賀遼生A 岩下拓哉 A
液体の輸送特性である粘度の微視的解明は物性科学の重
要な課題である高温液体を急冷すると融点以下となって
も結晶化せず準安定な過冷却液体となり最終的に系の構造
緩和時間が観測時間を越え実質上固化するというガラス転
移現象を示すこのとき液体の粘性率が数十桁の増大を示
すがその物理的機構は曖昧なままである本研究の目的は
二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュレーション
を用いて液体の粘性率と局所構造の関係性を明らかにする
ことである液体の局所応力と局所構造パラメタである配位
数に着目し高温から低温へと温度を下げていく過程でどの
ように粘度へ寄与するのか解析を行った図は局所応力の
緩和時間の配位数依存性であり低温になるにつれて高い配
位数依存を示し系が不均一になっていくことがわかった
B-4 超伝導デバイス応用に向けたMoRe薄膜の作製と評価
熊本大学院自然科学研究科理学専攻 A 産業技術総合研究所 B 九州大学理学部 C 熊本大学理学部 D
澤田元気A 溝上裕也 A 藤野洋平 A 野上達也 A 前田翔 A 牧瀬圭正 B 篠崎文重 C 市川聡夫 D
超伝導デバイスの評価方法を開発するため超伝導薄膜の
諸特性を定量的に調べているこれまで研究した Mo 系の
MoNMoRuに加えて今回はMoRe薄膜に対して超伝
導-絶縁体 (S-I) 転移の臨界面抵抗臨界温度対破壊パラ
メータ等を測定し求めた質量比 7525のMoReをターゲッ
トによる RF スパッタリング装置を用いて試料を作製した
今回は膜厚を変化させて薄膜を成膜した温度範囲 2 K sim300 K磁場minus7 T sim 7Tの範囲において抵抗やHall抵抗を測
定した測定の結果膜厚 25 nm sim 52 nmで膜厚誘起 SI転
移を示し膜厚 57 nmで磁場誘起 SI転移を示したRNsq と
Tc の関係は Finkelrsquostein 理論式で説明できた図に示すよ
うに臨界面抵抗の値は約 15 kΩと見積もる事ができるまた
熱的ゆらぎによる Cooper対の生成と消滅による過剰伝導 σrsquo
の解析から対破壊パラメータ δfluc を見積もり非弾性散乱
時間 τin を見積もったしかしフィッティングがうまくあわ
ない試料もでてきたこれは膜の不均一や δfluc の温度依存
性が大きいことに依るものではないかと考えられるデバイ
ス応用を視野に入れると面抵抗の大きな薄膜も必要となる
現在窒素ガスを導入してMoRe-N薄膜の作製を試みている
$
Tc
(K
)
amp amp
RsqN (Ω)
Tc0 = 827 K
τ = 39 times 10-17
s
13
B-5 低温水素吸蔵を利用した PdHx及び PdDxの磁化測定による超伝導転移の観測
九大工 A 九大院工 B 廣田壮平A 司文 B 川崎洋輔 B 高田弘樹 B 稲垣祐次 B 河江達也 B
PdHxは水素濃度 x(x=HPd)が 075以上になると超伝導
が出現することが1970年代の初めに報告されているその
後水素濃度の増加とともに転移温度が高くなりPdHでは
約 10K 近くにまで上昇することが明らかになっている一
方同じ濃度の水素化物と重水素化物を比較すると重水素の
方が転移温度が高いという「逆同位体効果」などBCS理論で
は説明できない特徴も報告されている以上のように PdHx
の超伝導は発見から長く時間が経過するにも関わらずその物
性は十分解明されたとは言い難いその研究の進展を阻害す
る原因の 1つとしてPdHxサンプルのldquo品質維持の困難さrdquo
があるサンプル作製後実験装置に移し替える際に水素が
抜け出てしまったりサンプル内の水素分布が不均一になっ
たりするそこでこの問題を解決するため温度 200 Kで
Pdへの水素吸蔵を行いその後急冷し水素の離脱を抑制した
上で超伝導転移の観測を試みたその結果図に示すように
超伝導転移を観測することが出来た講演当日はそれらサ
ンプル作製法や測定法得られた測定結果の詳細を報告する
図 外部磁場に対する PdHx超伝導体の磁化変化
B-6 Resistivity Measurement of Superconducting PdHx Prepared by Low Temperature
Absorption
九大院工 A 九大院理 B 司文A 廣田壮平 A 伊藤大樹 B 稲垣佑次 A 木村崇 B 河江達也 A
Hydride alloy has drawn many attentions recently because of the discovery of the high temperature superconductivity
in hydride sulfide We focus on the superconductivity in palladium hydride (PdHx) where the transition temperature
varies from 1K to 10K with increasing the hydrogen ratio x higher than 07 We report that the PdHx powder samples
prepared with a new method using the low-temperature absorption show the superconductivity from the magnetization
measurements [1] To demonstrate the efficacy of the low-temperature absorption method we try to measure the
resistivity of PdHx wire and film samples The results will be shown in the presentation [1] Y Inagaki S Wen et al J
Phys Soc Jpn 87 123701 (2018)
14
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
A-16 MnNiGe-CoNiGe系の輸送特性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学教育センター B 東京大学 ISSPC 恩田圭二朗A 佐藤裕汰 A 廣
井政彦 A 真中浩貴 A 寺田教男 A 近藤晃弘 C 金道弘一 C 伊藤昌和 B
近年環境に優しい冷凍技術として磁気冷凍の研究がすす
められているその中でMnNiGe-CoNiGeの系は一次磁気
相転移を起こし巨大磁気熱量効果を引き起こす材料として
注目が集まっているこの系は Ni2In 型の常磁性六方晶か
らTiNiSi 型の反強磁性斜方晶へと磁気相転移とマルテン
サイト変態を起こし両相転移のカップリングが磁気冷凍に
は重要とされているまたこの系の置換量を増やしていく
ことでスピングラスのような振舞も観測される今回我々は
この系におけるスピングラスのような振舞を磁性的な視点か
ら明らかにする図に Mn1minusxCoxNiGe(x = 02) における
磁化の温度依存性を示す強磁性的な曲線から常磁性的な曲
線への相転移が観測されると同時に低温側でゼロ磁場中冷
却 (ZFC)と磁場中冷却 (FC)に明らかなヒステリシスも観測
されるすなわちこの組成域においてスピングラスのよう
な振舞が観測できると考えられる講演ではx ge 02 にお
ける磁化の温度依存性および磁場依存性について議論する
A-17 強磁性薄膜におけるパルス磁場励起ダイナミクスの数値シミュレーション
九大理 A 谷脇俊介A 今野克洋 A 松本慧大 A 佐藤琢哉 A
磁性体中に励起される磁化の運動はマグノニクスという新しい分野で盛んに研究されている磁場パルスによって励起される
磁化の運動は円運動をしながら徐々に減衰していることが知られており最近磁化の運動の理論式が提案された [1]しかし
ながら具体的な計算によるその理論式の検証はなされていなかったそこで我々は磁性体薄膜において磁化を短時間の磁場パ
ルスによって励起した磁化の運動の様子をGPU ベースのマイクロマグネティックシミュレーションソフトである mumax3
を用いて計算した講演ではその結果を解析し提案された磁場の強さと時間幅の 2次に比例する理論式と一致したことを報
告する
[1] Kozhaev Mikhail AAU et al Scientific Reports 8 11435 (2018)
10
A-19 層間結合した強磁性多層膜における非線形スピンダイナミクスの観測
九大理 A 九大スピンセ B 屋冨祖稔A 宮崎圭司 A TowfiqHossainTaskA 木村崇 B
複数の磁性層を持つ磁性多層膜においてマイクロ波を照
射すると各磁性層の状態に合わせた強磁性共鳴が励起され
る異なる磁性層の共鳴条件が近い場合共鳴振動は結合し
同期共鳴による位相ロックモードあるいは反交差モードな
どの特殊状態の観測が期待できる一方でそのような同時
共鳴状態からずれた状況においても各種の層間相互作用が
存在するため磁性層の共鳴モードは単層膜のそれらから
変調されると期待できるそのような多層膜の多重共鳴を観
測するために今回CoFeAlCuPy多層膜を作成しその
共鳴特性を微分強磁性共鳴法及びホモダイン検波法を用
いて評価した講演ではマイクロ波パワー強度の増大に伴
う共鳴状態の変化やスピントルクの影響について考察する
A-20 CrAlGeの磁性と熱物性
鹿児島大学大学院理工学研究科 A 鹿児島大教育センター B 白濱透A 恩田圭二朗 A 増満勇人 A 三井好
古 A 小山佳一 A 藤井伸平 A 伊藤昌和 B
Cr 基三元化合物 CrAlGe は斜方晶系 TiSi ₂型結晶構造を取り強磁性転移温度 TC = 80K を持つ弱い遍歴電子強磁性
体であることが報告されている 1)一方で交流磁化率の詳細な解析からT cで見られる磁化異常の原因は長距離秩序
を持たない強磁性クラスターグラスによる可能性が最近指摘された 2)今回我々はこの物質の基底状態を調べるため熱
測定を行った図に CrAlGe の比熱CpT の温度依存性を示す磁化の温度依存性では TC以下で強磁性的な振る舞いが
みられるにも関わらず比熱には長距離秩序を示すような異常は見られなかった一般的にグラス転移では比熱の異常は
現れないことが知られているこのことからCrAlGe の基底状態はグラス的なものと考えられる講演ではこの系のゼー
ベック係数抵抗率熱伝導率についても報告する参考文献)1)SY oshinaga etalPhysProcedia 75(2015)9182
)MUKhan etalPhysRevMaterials1(2017)034402
11
会場 B
領域 6 8
B-1 液体金属の微視的破壊の解明多変量解析の応用
大分大 A 山田爽水A 岩下拓哉 A
液体は身近なものであり産業的にも多く利用されるも
のではあるがその基本的な物性の理論的枠組みは完成し
ていないそこで液体の動的な構造の時空間相関を把握
することが重要であるが実際液体の構造がいつどこ
で励起するのか明確な基準が確立されていない課題があ
る本研究では液体の粒子の運動を追跡し液体の微視
的破壊の起源を曖昧なく特定することを目的とする本講
演では二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュ
レーションと多変量解析を融合し液体のダイナミクス
の素過程を検出する試みを紹介する図のような原子
あたりの機械的特性 (局所応力や弾性率) の多変量時系列
データから異常検知などで使用されるマハラノビス距離を
計算しその外れ値を検出したまたこの原子あたりの
異常度と液体の局所構造変化の関係性について議論する 0
05
1
15
2
25
3
35
4
45
5
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
Binfin
Ginfin
σxx
σyy
σzz
σxy
σyz
σzx
evAring3
t(fs)
12
B-2 液体金属の不均一な局所応力緩和
大分大 A 古賀遼生A 岩下拓哉 A
液体の輸送特性である粘度の微視的解明は物性科学の重
要な課題である高温液体を急冷すると融点以下となって
も結晶化せず準安定な過冷却液体となり最終的に系の構造
緩和時間が観測時間を越え実質上固化するというガラス転
移現象を示すこのとき液体の粘性率が数十桁の増大を示
すがその物理的機構は曖昧なままである本研究の目的は
二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュレーション
を用いて液体の粘性率と局所構造の関係性を明らかにする
ことである液体の局所応力と局所構造パラメタである配位
数に着目し高温から低温へと温度を下げていく過程でどの
ように粘度へ寄与するのか解析を行った図は局所応力の
緩和時間の配位数依存性であり低温になるにつれて高い配
位数依存を示し系が不均一になっていくことがわかった
B-4 超伝導デバイス応用に向けたMoRe薄膜の作製と評価
熊本大学院自然科学研究科理学専攻 A 産業技術総合研究所 B 九州大学理学部 C 熊本大学理学部 D
澤田元気A 溝上裕也 A 藤野洋平 A 野上達也 A 前田翔 A 牧瀬圭正 B 篠崎文重 C 市川聡夫 D
超伝導デバイスの評価方法を開発するため超伝導薄膜の
諸特性を定量的に調べているこれまで研究した Mo 系の
MoNMoRuに加えて今回はMoRe薄膜に対して超伝
導-絶縁体 (S-I) 転移の臨界面抵抗臨界温度対破壊パラ
メータ等を測定し求めた質量比 7525のMoReをターゲッ
トによる RF スパッタリング装置を用いて試料を作製した
今回は膜厚を変化させて薄膜を成膜した温度範囲 2 K sim300 K磁場minus7 T sim 7Tの範囲において抵抗やHall抵抗を測
定した測定の結果膜厚 25 nm sim 52 nmで膜厚誘起 SI転
移を示し膜厚 57 nmで磁場誘起 SI転移を示したRNsq と
Tc の関係は Finkelrsquostein 理論式で説明できた図に示すよ
うに臨界面抵抗の値は約 15 kΩと見積もる事ができるまた
熱的ゆらぎによる Cooper対の生成と消滅による過剰伝導 σrsquo
の解析から対破壊パラメータ δfluc を見積もり非弾性散乱
時間 τin を見積もったしかしフィッティングがうまくあわ
ない試料もでてきたこれは膜の不均一や δfluc の温度依存
性が大きいことに依るものではないかと考えられるデバイ
ス応用を視野に入れると面抵抗の大きな薄膜も必要となる
現在窒素ガスを導入してMoRe-N薄膜の作製を試みている
$
Tc
(K
)
amp amp
RsqN (Ω)
Tc0 = 827 K
τ = 39 times 10-17
s
13
B-5 低温水素吸蔵を利用した PdHx及び PdDxの磁化測定による超伝導転移の観測
九大工 A 九大院工 B 廣田壮平A 司文 B 川崎洋輔 B 高田弘樹 B 稲垣祐次 B 河江達也 B
PdHxは水素濃度 x(x=HPd)が 075以上になると超伝導
が出現することが1970年代の初めに報告されているその
後水素濃度の増加とともに転移温度が高くなりPdHでは
約 10K 近くにまで上昇することが明らかになっている一
方同じ濃度の水素化物と重水素化物を比較すると重水素の
方が転移温度が高いという「逆同位体効果」などBCS理論で
は説明できない特徴も報告されている以上のように PdHx
の超伝導は発見から長く時間が経過するにも関わらずその物
性は十分解明されたとは言い難いその研究の進展を阻害す
る原因の 1つとしてPdHxサンプルのldquo品質維持の困難さrdquo
があるサンプル作製後実験装置に移し替える際に水素が
抜け出てしまったりサンプル内の水素分布が不均一になっ
たりするそこでこの問題を解決するため温度 200 Kで
Pdへの水素吸蔵を行いその後急冷し水素の離脱を抑制した
上で超伝導転移の観測を試みたその結果図に示すように
超伝導転移を観測することが出来た講演当日はそれらサ
ンプル作製法や測定法得られた測定結果の詳細を報告する
図 外部磁場に対する PdHx超伝導体の磁化変化
B-6 Resistivity Measurement of Superconducting PdHx Prepared by Low Temperature
Absorption
九大院工 A 九大院理 B 司文A 廣田壮平 A 伊藤大樹 B 稲垣佑次 A 木村崇 B 河江達也 A
Hydride alloy has drawn many attentions recently because of the discovery of the high temperature superconductivity
in hydride sulfide We focus on the superconductivity in palladium hydride (PdHx) where the transition temperature
varies from 1K to 10K with increasing the hydrogen ratio x higher than 07 We report that the PdHx powder samples
prepared with a new method using the low-temperature absorption show the superconductivity from the magnetization
measurements [1] To demonstrate the efficacy of the low-temperature absorption method we try to measure the
resistivity of PdHx wire and film samples The results will be shown in the presentation [1] Y Inagaki S Wen et al J
Phys Soc Jpn 87 123701 (2018)
14
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
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会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
A-19 層間結合した強磁性多層膜における非線形スピンダイナミクスの観測
九大理 A 九大スピンセ B 屋冨祖稔A 宮崎圭司 A TowfiqHossainTaskA 木村崇 B
複数の磁性層を持つ磁性多層膜においてマイクロ波を照
射すると各磁性層の状態に合わせた強磁性共鳴が励起され
る異なる磁性層の共鳴条件が近い場合共鳴振動は結合し
同期共鳴による位相ロックモードあるいは反交差モードな
どの特殊状態の観測が期待できる一方でそのような同時
共鳴状態からずれた状況においても各種の層間相互作用が
存在するため磁性層の共鳴モードは単層膜のそれらから
変調されると期待できるそのような多層膜の多重共鳴を観
測するために今回CoFeAlCuPy多層膜を作成しその
共鳴特性を微分強磁性共鳴法及びホモダイン検波法を用
いて評価した講演ではマイクロ波パワー強度の増大に伴
う共鳴状態の変化やスピントルクの影響について考察する
A-20 CrAlGeの磁性と熱物性
鹿児島大学大学院理工学研究科 A 鹿児島大教育センター B 白濱透A 恩田圭二朗 A 増満勇人 A 三井好
古 A 小山佳一 A 藤井伸平 A 伊藤昌和 B
Cr 基三元化合物 CrAlGe は斜方晶系 TiSi ₂型結晶構造を取り強磁性転移温度 TC = 80K を持つ弱い遍歴電子強磁性
体であることが報告されている 1)一方で交流磁化率の詳細な解析からT cで見られる磁化異常の原因は長距離秩序
を持たない強磁性クラスターグラスによる可能性が最近指摘された 2)今回我々はこの物質の基底状態を調べるため熱
測定を行った図に CrAlGe の比熱CpT の温度依存性を示す磁化の温度依存性では TC以下で強磁性的な振る舞いが
みられるにも関わらず比熱には長距離秩序を示すような異常は見られなかった一般的にグラス転移では比熱の異常は
現れないことが知られているこのことからCrAlGe の基底状態はグラス的なものと考えられる講演ではこの系のゼー
ベック係数抵抗率熱伝導率についても報告する参考文献)1)SY oshinaga etalPhysProcedia 75(2015)9182
)MUKhan etalPhysRevMaterials1(2017)034402
11
会場 B
領域 6 8
B-1 液体金属の微視的破壊の解明多変量解析の応用
大分大 A 山田爽水A 岩下拓哉 A
液体は身近なものであり産業的にも多く利用されるも
のではあるがその基本的な物性の理論的枠組みは完成し
ていないそこで液体の動的な構造の時空間相関を把握
することが重要であるが実際液体の構造がいつどこ
で励起するのか明確な基準が確立されていない課題があ
る本研究では液体の粒子の運動を追跡し液体の微視
的破壊の起源を曖昧なく特定することを目的とする本講
演では二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュ
レーションと多変量解析を融合し液体のダイナミクス
の素過程を検出する試みを紹介する図のような原子
あたりの機械的特性 (局所応力や弾性率) の多変量時系列
データから異常検知などで使用されるマハラノビス距離を
計算しその外れ値を検出したまたこの原子あたりの
異常度と液体の局所構造変化の関係性について議論する 0
05
1
15
2
25
3
35
4
45
5
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
Binfin
Ginfin
σxx
σyy
σzz
σxy
σyz
σzx
evAring3
t(fs)
12
B-2 液体金属の不均一な局所応力緩和
大分大 A 古賀遼生A 岩下拓哉 A
液体の輸送特性である粘度の微視的解明は物性科学の重
要な課題である高温液体を急冷すると融点以下となって
も結晶化せず準安定な過冷却液体となり最終的に系の構造
緩和時間が観測時間を越え実質上固化するというガラス転
移現象を示すこのとき液体の粘性率が数十桁の増大を示
すがその物理的機構は曖昧なままである本研究の目的は
二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュレーション
を用いて液体の粘性率と局所構造の関係性を明らかにする
ことである液体の局所応力と局所構造パラメタである配位
数に着目し高温から低温へと温度を下げていく過程でどの
ように粘度へ寄与するのか解析を行った図は局所応力の
緩和時間の配位数依存性であり低温になるにつれて高い配
位数依存を示し系が不均一になっていくことがわかった
B-4 超伝導デバイス応用に向けたMoRe薄膜の作製と評価
熊本大学院自然科学研究科理学専攻 A 産業技術総合研究所 B 九州大学理学部 C 熊本大学理学部 D
澤田元気A 溝上裕也 A 藤野洋平 A 野上達也 A 前田翔 A 牧瀬圭正 B 篠崎文重 C 市川聡夫 D
超伝導デバイスの評価方法を開発するため超伝導薄膜の
諸特性を定量的に調べているこれまで研究した Mo 系の
MoNMoRuに加えて今回はMoRe薄膜に対して超伝
導-絶縁体 (S-I) 転移の臨界面抵抗臨界温度対破壊パラ
メータ等を測定し求めた質量比 7525のMoReをターゲッ
トによる RF スパッタリング装置を用いて試料を作製した
今回は膜厚を変化させて薄膜を成膜した温度範囲 2 K sim300 K磁場minus7 T sim 7Tの範囲において抵抗やHall抵抗を測
定した測定の結果膜厚 25 nm sim 52 nmで膜厚誘起 SI転
移を示し膜厚 57 nmで磁場誘起 SI転移を示したRNsq と
Tc の関係は Finkelrsquostein 理論式で説明できた図に示すよ
うに臨界面抵抗の値は約 15 kΩと見積もる事ができるまた
熱的ゆらぎによる Cooper対の生成と消滅による過剰伝導 σrsquo
の解析から対破壊パラメータ δfluc を見積もり非弾性散乱
時間 τin を見積もったしかしフィッティングがうまくあわ
ない試料もでてきたこれは膜の不均一や δfluc の温度依存
性が大きいことに依るものではないかと考えられるデバイ
ス応用を視野に入れると面抵抗の大きな薄膜も必要となる
現在窒素ガスを導入してMoRe-N薄膜の作製を試みている
$
Tc
(K
)
amp amp
RsqN (Ω)
Tc0 = 827 K
τ = 39 times 10-17
s
13
B-5 低温水素吸蔵を利用した PdHx及び PdDxの磁化測定による超伝導転移の観測
九大工 A 九大院工 B 廣田壮平A 司文 B 川崎洋輔 B 高田弘樹 B 稲垣祐次 B 河江達也 B
PdHxは水素濃度 x(x=HPd)が 075以上になると超伝導
が出現することが1970年代の初めに報告されているその
後水素濃度の増加とともに転移温度が高くなりPdHでは
約 10K 近くにまで上昇することが明らかになっている一
方同じ濃度の水素化物と重水素化物を比較すると重水素の
方が転移温度が高いという「逆同位体効果」などBCS理論で
は説明できない特徴も報告されている以上のように PdHx
の超伝導は発見から長く時間が経過するにも関わらずその物
性は十分解明されたとは言い難いその研究の進展を阻害す
る原因の 1つとしてPdHxサンプルのldquo品質維持の困難さrdquo
があるサンプル作製後実験装置に移し替える際に水素が
抜け出てしまったりサンプル内の水素分布が不均一になっ
たりするそこでこの問題を解決するため温度 200 Kで
Pdへの水素吸蔵を行いその後急冷し水素の離脱を抑制した
上で超伝導転移の観測を試みたその結果図に示すように
超伝導転移を観測することが出来た講演当日はそれらサ
ンプル作製法や測定法得られた測定結果の詳細を報告する
図 外部磁場に対する PdHx超伝導体の磁化変化
B-6 Resistivity Measurement of Superconducting PdHx Prepared by Low Temperature
Absorption
九大院工 A 九大院理 B 司文A 廣田壮平 A 伊藤大樹 B 稲垣佑次 A 木村崇 B 河江達也 A
Hydride alloy has drawn many attentions recently because of the discovery of the high temperature superconductivity
in hydride sulfide We focus on the superconductivity in palladium hydride (PdHx) where the transition temperature
varies from 1K to 10K with increasing the hydrogen ratio x higher than 07 We report that the PdHx powder samples
prepared with a new method using the low-temperature absorption show the superconductivity from the magnetization
measurements [1] To demonstrate the efficacy of the low-temperature absorption method we try to measure the
resistivity of PdHx wire and film samples The results will be shown in the presentation [1] Y Inagaki S Wen et al J
Phys Soc Jpn 87 123701 (2018)
14
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
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F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
会場 B
領域 6 8
B-1 液体金属の微視的破壊の解明多変量解析の応用
大分大 A 山田爽水A 岩下拓哉 A
液体は身近なものであり産業的にも多く利用されるも
のではあるがその基本的な物性の理論的枠組みは完成し
ていないそこで液体の動的な構造の時空間相関を把握
することが重要であるが実際液体の構造がいつどこ
で励起するのか明確な基準が確立されていない課題があ
る本研究では液体の粒子の運動を追跡し液体の微視
的破壊の起源を曖昧なく特定することを目的とする本講
演では二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュ
レーションと多変量解析を融合し液体のダイナミクス
の素過程を検出する試みを紹介する図のような原子
あたりの機械的特性 (局所応力や弾性率) の多変量時系列
データから異常検知などで使用されるマハラノビス距離を
計算しその外れ値を検出したまたこの原子あたりの
異常度と液体の局所構造変化の関係性について議論する 0
05
1
15
2
25
3
35
4
45
5
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
Binfin
Ginfin
σxx
σyy
σzz
σxy
σyz
σzx
evAring3
t(fs)
12
B-2 液体金属の不均一な局所応力緩和
大分大 A 古賀遼生A 岩下拓哉 A
液体の輸送特性である粘度の微視的解明は物性科学の重
要な課題である高温液体を急冷すると融点以下となって
も結晶化せず準安定な過冷却液体となり最終的に系の構造
緩和時間が観測時間を越え実質上固化するというガラス転
移現象を示すこのとき液体の粘性率が数十桁の増大を示
すがその物理的機構は曖昧なままである本研究の目的は
二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュレーション
を用いて液体の粘性率と局所構造の関係性を明らかにする
ことである液体の局所応力と局所構造パラメタである配位
数に着目し高温から低温へと温度を下げていく過程でどの
ように粘度へ寄与するのか解析を行った図は局所応力の
緩和時間の配位数依存性であり低温になるにつれて高い配
位数依存を示し系が不均一になっていくことがわかった
B-4 超伝導デバイス応用に向けたMoRe薄膜の作製と評価
熊本大学院自然科学研究科理学専攻 A 産業技術総合研究所 B 九州大学理学部 C 熊本大学理学部 D
澤田元気A 溝上裕也 A 藤野洋平 A 野上達也 A 前田翔 A 牧瀬圭正 B 篠崎文重 C 市川聡夫 D
超伝導デバイスの評価方法を開発するため超伝導薄膜の
諸特性を定量的に調べているこれまで研究した Mo 系の
MoNMoRuに加えて今回はMoRe薄膜に対して超伝
導-絶縁体 (S-I) 転移の臨界面抵抗臨界温度対破壊パラ
メータ等を測定し求めた質量比 7525のMoReをターゲッ
トによる RF スパッタリング装置を用いて試料を作製した
今回は膜厚を変化させて薄膜を成膜した温度範囲 2 K sim300 K磁場minus7 T sim 7Tの範囲において抵抗やHall抵抗を測
定した測定の結果膜厚 25 nm sim 52 nmで膜厚誘起 SI転
移を示し膜厚 57 nmで磁場誘起 SI転移を示したRNsq と
Tc の関係は Finkelrsquostein 理論式で説明できた図に示すよ
うに臨界面抵抗の値は約 15 kΩと見積もる事ができるまた
熱的ゆらぎによる Cooper対の生成と消滅による過剰伝導 σrsquo
の解析から対破壊パラメータ δfluc を見積もり非弾性散乱
時間 τin を見積もったしかしフィッティングがうまくあわ
ない試料もでてきたこれは膜の不均一や δfluc の温度依存
性が大きいことに依るものではないかと考えられるデバイ
ス応用を視野に入れると面抵抗の大きな薄膜も必要となる
現在窒素ガスを導入してMoRe-N薄膜の作製を試みている
$
Tc
(K
)
amp amp
RsqN (Ω)
Tc0 = 827 K
τ = 39 times 10-17
s
13
B-5 低温水素吸蔵を利用した PdHx及び PdDxの磁化測定による超伝導転移の観測
九大工 A 九大院工 B 廣田壮平A 司文 B 川崎洋輔 B 高田弘樹 B 稲垣祐次 B 河江達也 B
PdHxは水素濃度 x(x=HPd)が 075以上になると超伝導
が出現することが1970年代の初めに報告されているその
後水素濃度の増加とともに転移温度が高くなりPdHでは
約 10K 近くにまで上昇することが明らかになっている一
方同じ濃度の水素化物と重水素化物を比較すると重水素の
方が転移温度が高いという「逆同位体効果」などBCS理論で
は説明できない特徴も報告されている以上のように PdHx
の超伝導は発見から長く時間が経過するにも関わらずその物
性は十分解明されたとは言い難いその研究の進展を阻害す
る原因の 1つとしてPdHxサンプルのldquo品質維持の困難さrdquo
があるサンプル作製後実験装置に移し替える際に水素が
抜け出てしまったりサンプル内の水素分布が不均一になっ
たりするそこでこの問題を解決するため温度 200 Kで
Pdへの水素吸蔵を行いその後急冷し水素の離脱を抑制した
上で超伝導転移の観測を試みたその結果図に示すように
超伝導転移を観測することが出来た講演当日はそれらサ
ンプル作製法や測定法得られた測定結果の詳細を報告する
図 外部磁場に対する PdHx超伝導体の磁化変化
B-6 Resistivity Measurement of Superconducting PdHx Prepared by Low Temperature
Absorption
九大院工 A 九大院理 B 司文A 廣田壮平 A 伊藤大樹 B 稲垣佑次 A 木村崇 B 河江達也 A
Hydride alloy has drawn many attentions recently because of the discovery of the high temperature superconductivity
in hydride sulfide We focus on the superconductivity in palladium hydride (PdHx) where the transition temperature
varies from 1K to 10K with increasing the hydrogen ratio x higher than 07 We report that the PdHx powder samples
prepared with a new method using the low-temperature absorption show the superconductivity from the magnetization
measurements [1] To demonstrate the efficacy of the low-temperature absorption method we try to measure the
resistivity of PdHx wire and film samples The results will be shown in the presentation [1] Y Inagaki S Wen et al J
Phys Soc Jpn 87 123701 (2018)
14
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
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会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
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F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
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F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
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F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
B-2 液体金属の不均一な局所応力緩和
大分大 A 古賀遼生A 岩下拓哉 A
液体の輸送特性である粘度の微視的解明は物性科学の重
要な課題である高温液体を急冷すると融点以下となって
も結晶化せず準安定な過冷却液体となり最終的に系の構造
緩和時間が観測時間を越え実質上固化するというガラス転
移現象を示すこのとき液体の粘性率が数十桁の増大を示
すがその物理的機構は曖昧なままである本研究の目的は
二成分液体金属 (Cu50Zr50) の分子動力学シミュレーション
を用いて液体の粘性率と局所構造の関係性を明らかにする
ことである液体の局所応力と局所構造パラメタである配位
数に着目し高温から低温へと温度を下げていく過程でどの
ように粘度へ寄与するのか解析を行った図は局所応力の
緩和時間の配位数依存性であり低温になるにつれて高い配
位数依存を示し系が不均一になっていくことがわかった
B-4 超伝導デバイス応用に向けたMoRe薄膜の作製と評価
熊本大学院自然科学研究科理学専攻 A 産業技術総合研究所 B 九州大学理学部 C 熊本大学理学部 D
澤田元気A 溝上裕也 A 藤野洋平 A 野上達也 A 前田翔 A 牧瀬圭正 B 篠崎文重 C 市川聡夫 D
超伝導デバイスの評価方法を開発するため超伝導薄膜の
諸特性を定量的に調べているこれまで研究した Mo 系の
MoNMoRuに加えて今回はMoRe薄膜に対して超伝
導-絶縁体 (S-I) 転移の臨界面抵抗臨界温度対破壊パラ
メータ等を測定し求めた質量比 7525のMoReをターゲッ
トによる RF スパッタリング装置を用いて試料を作製した
今回は膜厚を変化させて薄膜を成膜した温度範囲 2 K sim300 K磁場minus7 T sim 7Tの範囲において抵抗やHall抵抗を測
定した測定の結果膜厚 25 nm sim 52 nmで膜厚誘起 SI転
移を示し膜厚 57 nmで磁場誘起 SI転移を示したRNsq と
Tc の関係は Finkelrsquostein 理論式で説明できた図に示すよ
うに臨界面抵抗の値は約 15 kΩと見積もる事ができるまた
熱的ゆらぎによる Cooper対の生成と消滅による過剰伝導 σrsquo
の解析から対破壊パラメータ δfluc を見積もり非弾性散乱
時間 τin を見積もったしかしフィッティングがうまくあわ
ない試料もでてきたこれは膜の不均一や δfluc の温度依存
性が大きいことに依るものではないかと考えられるデバイ
ス応用を視野に入れると面抵抗の大きな薄膜も必要となる
現在窒素ガスを導入してMoRe-N薄膜の作製を試みている
$
Tc
(K
)
amp amp
RsqN (Ω)
Tc0 = 827 K
τ = 39 times 10-17
s
13
B-5 低温水素吸蔵を利用した PdHx及び PdDxの磁化測定による超伝導転移の観測
九大工 A 九大院工 B 廣田壮平A 司文 B 川崎洋輔 B 高田弘樹 B 稲垣祐次 B 河江達也 B
PdHxは水素濃度 x(x=HPd)が 075以上になると超伝導
が出現することが1970年代の初めに報告されているその
後水素濃度の増加とともに転移温度が高くなりPdHでは
約 10K 近くにまで上昇することが明らかになっている一
方同じ濃度の水素化物と重水素化物を比較すると重水素の
方が転移温度が高いという「逆同位体効果」などBCS理論で
は説明できない特徴も報告されている以上のように PdHx
の超伝導は発見から長く時間が経過するにも関わらずその物
性は十分解明されたとは言い難いその研究の進展を阻害す
る原因の 1つとしてPdHxサンプルのldquo品質維持の困難さrdquo
があるサンプル作製後実験装置に移し替える際に水素が
抜け出てしまったりサンプル内の水素分布が不均一になっ
たりするそこでこの問題を解決するため温度 200 Kで
Pdへの水素吸蔵を行いその後急冷し水素の離脱を抑制した
上で超伝導転移の観測を試みたその結果図に示すように
超伝導転移を観測することが出来た講演当日はそれらサ
ンプル作製法や測定法得られた測定結果の詳細を報告する
図 外部磁場に対する PdHx超伝導体の磁化変化
B-6 Resistivity Measurement of Superconducting PdHx Prepared by Low Temperature
Absorption
九大院工 A 九大院理 B 司文A 廣田壮平 A 伊藤大樹 B 稲垣佑次 A 木村崇 B 河江達也 A
Hydride alloy has drawn many attentions recently because of the discovery of the high temperature superconductivity
in hydride sulfide We focus on the superconductivity in palladium hydride (PdHx) where the transition temperature
varies from 1K to 10K with increasing the hydrogen ratio x higher than 07 We report that the PdHx powder samples
prepared with a new method using the low-temperature absorption show the superconductivity from the magnetization
measurements [1] To demonstrate the efficacy of the low-temperature absorption method we try to measure the
resistivity of PdHx wire and film samples The results will be shown in the presentation [1] Y Inagaki S Wen et al J
Phys Soc Jpn 87 123701 (2018)
14
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
B-5 低温水素吸蔵を利用した PdHx及び PdDxの磁化測定による超伝導転移の観測
九大工 A 九大院工 B 廣田壮平A 司文 B 川崎洋輔 B 高田弘樹 B 稲垣祐次 B 河江達也 B
PdHxは水素濃度 x(x=HPd)が 075以上になると超伝導
が出現することが1970年代の初めに報告されているその
後水素濃度の増加とともに転移温度が高くなりPdHでは
約 10K 近くにまで上昇することが明らかになっている一
方同じ濃度の水素化物と重水素化物を比較すると重水素の
方が転移温度が高いという「逆同位体効果」などBCS理論で
は説明できない特徴も報告されている以上のように PdHx
の超伝導は発見から長く時間が経過するにも関わらずその物
性は十分解明されたとは言い難いその研究の進展を阻害す
る原因の 1つとしてPdHxサンプルのldquo品質維持の困難さrdquo
があるサンプル作製後実験装置に移し替える際に水素が
抜け出てしまったりサンプル内の水素分布が不均一になっ
たりするそこでこの問題を解決するため温度 200 Kで
Pdへの水素吸蔵を行いその後急冷し水素の離脱を抑制した
上で超伝導転移の観測を試みたその結果図に示すように
超伝導転移を観測することが出来た講演当日はそれらサ
ンプル作製法や測定法得られた測定結果の詳細を報告する
図 外部磁場に対する PdHx超伝導体の磁化変化
B-6 Resistivity Measurement of Superconducting PdHx Prepared by Low Temperature
Absorption
九大院工 A 九大院理 B 司文A 廣田壮平 A 伊藤大樹 B 稲垣佑次 A 木村崇 B 河江達也 A
Hydride alloy has drawn many attentions recently because of the discovery of the high temperature superconductivity
in hydride sulfide We focus on the superconductivity in palladium hydride (PdHx) where the transition temperature
varies from 1K to 10K with increasing the hydrogen ratio x higher than 07 We report that the PdHx powder samples
prepared with a new method using the low-temperature absorption show the superconductivity from the magnetization
measurements [1] To demonstrate the efficacy of the low-temperature absorption method we try to measure the
resistivity of PdHx wire and film samples The results will be shown in the presentation [1] Y Inagaki S Wen et al J
Phys Soc Jpn 87 123701 (2018)
14
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
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E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
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会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
B-7 巨大せん断ひずみを初期導入したタンタルにおける超伝導転移の静水圧縮効果
九工大工 A 九産大理工 B 九大院工 C 重岡駿A 野海のぞみ A 北村雄一郎 A 美藤正樹 A 西嵜照和 B
KavehEdalatiC 堀田善治 C
常圧下で 448 Kの超伝導転移温度 T c を示す Taでは静
水圧力印加によって Tc は降下し45 GPaで 45 Kに上昇す
ると報告されている [1]一般にTc はグレイン間のジョセ
フソン接合の強度とグレイン内の結晶構造の歪みによって決
まるTc の効果的上昇方法を探索する本研究ではTa 試料
に高圧ねじり (HPT) 加工処理を行うことでせん断歪みを加
えグレイン組織の微細化と結晶構造への歪チューニングを
施しそこを出発点に静水圧力効果を追跡した
図1に 6 GPaで HPT加工した試料での Tc の圧力依存性
を示す回転数 N = 0の Tc は加圧によって一度わずかに上
昇するがその後先行研究同様に Tc は減少するまたN
= 5ではジグザグな変化をした後減少傾向に移る初期状
態のせん断ひずみ挿入の程度の違いが Tc の圧力依存性に現
れでる
[1] V V Struzhkin et al Phys RevLett 79 4262
(1997) [2] D Kohnlein Z Phys 208 150 (1968)
425
43
435
44
445
0 1 2 3 4 5 6 7
Tc(
K)
Pressure(GPa)
N = 0
N = 5 ref[1][2]
図1 HPT_Ta(N = 05)のTcの圧力依存性
B-8 3He-4He混合ガスからの高純度 3Heガス精製装置の開発
九大院工 A 植嶋玄A 岩波舜也 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
3Heガスは量子コンピュータ用の量子素子の冷却寒剤や
超高感度の中性子検出器として使用されるなど他元素では
代替できない重要な特性を持つ現在 3Heガスの入手が非常
に困難な状況にあり3Heガスの安定した供給手法の開発が
求められている
我々は極低温技術を基礎にして 3He と 4He ガスの蒸気
圧差を利用した 3He精製装置を製作した図 1にこの装置の
模式図を示す3Heと 4Heガスの蒸気圧は温度低下にともな
い指数関数に近い形で減少するため低温になるほど両者
の差は顕著になるT = 1 Kまで温度が下がると3Heが約
1000 Paに対して 4Heは約 10 Paとなり 100倍の差となる
つまり 3He - 4He 混合液を T = 1 K より十分に低い温度
域で排気していけば3Heをほぼ選択的に蒸発させることが
できるため高純度 3Heの回収が可能になるそこで3He
potを設置して 3Heの排気循環機構を取り付けたこれに
より混合液 pot温度が 07 K以下に保たれ両ガス間に 3
桁の蒸気圧差が常に維持できるようになる
実際に 3Heガスの精製を行い当日はその結果を交えて
詳細に報告する予定である
3He 排気高純度3He 排気
4He 排気
混合液pot
T = 07K
精製用熱交換器
1K pot
T =14K
3He pot
T = 07K
図1高純度3He精製装置の模式図
15
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
B-9 NbN 超伝導細線の上部臨界磁場Hc2(T)
九州大学 A 産総研 B 福井大学 C 篠崎文重A 牧瀬圭正 B 浅野貴行 C
MgO 基板上にエピタキシャル成長させた NbN 薄膜を
Nano-wire(NW) 化した擬 1 次元超伝度体の R(TH) 特性を
調べこれまでに以下を報告したi) R (T ) 特性は 23 次
元系が示さない broad な転移を示すii) 特異な負の磁気抵
抗や抵抗の振動現象を示す前回は iii) 格子不整合による乱
れをより抑えると期待される立方晶炭化シリコン (3C-SiC)
基板上に NWを作製しその輸送特性を調べ磁場下 Tc近
傍で 2-3 桁にも及ぶ負の磁気抵抗更に「温度が減少する
と抵抗は再び増加に転じる」quasi-reentrant 現象を報告し
た今回上部臨界磁場 Hc2(T) を詳しく調べた図に線幅
w = 20nm 膜厚 d=10nm 電圧端子間距離 Lv-v=600nmの
細線試料における垂直磁場下での Hc2 (T )を示す()は実
験値で2次元面直磁場下での振る舞いHc2 prop (1minus TTc)と
は異なりHc2 (T ) asymp Φ0[2πξGL (T )times w]prop (1minus TTc)12
で与えられる 1 次元系臨界磁場の振る舞いを示すここで
ξGL (t = TTc) = 085 timesradicξ0ℓ(1minus t)
minus12 は GL coherence
length であるξ0 = 018hvF kBTc0及び 2 次元膜の実
験結果から得られる diffusion constant D=vF ℓ3 を用いた
計算結果Hc2cal (T ) を実線で示す実験計算値には大き
なずれがありPauli limit Hp (0) = 186 times Tco asymp 25 T
を大きく上回る可能性がある講演で詳しく議論する
B-10 Nb系超伝導細線における電荷不均衡と交差アンドレーエフ反射
九大理 A 九大スピンセ B 矢野大吾A 大西紘平 AB 木村崇 AB
超伝導常伝導体界面における電気伝導は電荷不均衡や
アンドレーフ反射などの特有の現象が観られるが素子を多端
子化することで準粒子緩和長の評価や交差アンドレーフ反射
の観測も可能となる興味深いのはこれらの現象にスピン
の特性が関係している点であり近年のスピン流制御技術と融
合することで新奇な超伝導物性創出への展開が期待される
そこで本研究では図のように細線化したNb系超伝導体を
含む多端子面内素子構造を作製し超伝導状態における準粒子
緩和長及びクーパー対のコヒーレンス長を見積もった具体
的にはCu 細線間に発生する非局所電圧の距離依存性から
各種特性長の見積もりが可能となる発表ではこれら二つ
の特性長の温度依存性及び磁場依存性を詳細に調べた結果に
ついて報告しスピンデバイスによる制御可能性を言及する
16
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
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E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
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E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
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E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
B-11 希土類六ホウ化物DyB6の高圧下X線回折法を用いた圧縮曲線の異常
久留米工業大学 A 有明高専 B 東京大学物性研 C 東北大学理 D 江藤徹二郎A 巨海玄道 A 酒井健 B 上
床美也 C 國井暁 D
希土類六ホウ化物 RB6(R希土類元素)は立方晶 CaB6
型の結晶構造をもちR原子の 4f電子状態によって高濃度近
藤系価数揺動あるいは反強磁性などの多彩な物性を示す
その中でも DyB6 は 30 K(= TQ)での四重極秩序転移25
K(= TN)での反強磁性転移また磁場中におけるメタ磁性
転移などの興味深い振る舞いを示すがこの物質の電子状態
や相転移の機構について十分な理解はできていない本研究
では主に結晶構造弾性特性およびと各相転移との関わ
りについて知見を得るため高圧下での X線回折測定を行っ
た線源には回転対陰極型 X 線発生装置(MoKα)圧力発
生にはダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し多結晶
試料を約 14 GPaまで加圧した
図には DyB6 に加えて参照物質として測定した LaB6
の圧縮特性(VV0 vs P)を示す圧力範囲全体では LaB6
の圧縮率が大きくなっているが0~2 GPa の範囲に限定
すると DyB6 の圧縮率が大きいMurnaghan の状態方程式
(図中の実線)から体積弾性率 B0 を求めるとLaB6 では
B0 = 220 GPa(0 sim 15 GPa)を得た一方DyB6 では 1
つの状態方程式での見積もりが困難なため 2つの領域に分け
てフィッティングを行いB0 = 132 GPa(0 sim 2 GPa)と
B0 = 215 GPa(2 sim 14 GPa)の値を得た過去の高圧下物性
測定の結果を踏まえて考察した内容も含め詳細を報告する
B-12 点接合分光法を利用した EuNi2P2の混成ギャップの観測
九大院工 A 九大工 B 九大院理 C 沖村健吾A 志賀雅亘 A 原田琢良 B 光田暁弘 C 和田裕文 C 稲垣祐
次 A 河江達也 A
希土類元素を含む化合物では近藤効果などの現象が現れ
るため長年研究されている特に Eu 化合物では価数が 2
価と 3価を熱的に揺らぐことによってその中間価数状態が
実現することが知られているさらに近年EuNi2P2 の光
学伝導度を測定することでf 電子と伝導電子の混成による
ギャップがEuNi2P2における重い電子の形成過程を考える
上で重要な役割を担っていることが報告された [1]今回我々
は EuNi2P2 における f 電子と伝導電子の混成の影響を明ら
かにするため点接合分光法を用いた EuNi2P2 の電子状態
測定を行った
図 1は 42 Kにおける EuNi2P2の微分伝導度 dIfrasl dVを
示す実験の結果重い電子系物質 UPd2Al3 の先行研究で
報告されているような非対称のピーク構造が現れることが
分かったこの非対称なピークはf電子と伝導電子の混成に
起因する混成ギャップに起因するものであると結論付けられ
ている [2]またこの混成ギャップは温度上昇とともに閉じ
ていくことが確認できた当日はより詳細な温度依存性やコ
ンタクトサイズ依存性の結果を報告する
[1] V Guritanu et al Phys Rev Lett 109 247207
(2012)
[2] N K Jaggi et al Phys Rev B 95 165123 (2017)
図1 EuNi2P2W界面での微分伝導度(119879 = 42 K)
17
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
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F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
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F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
B-13 YBCO(Y123系)超伝導セラミクスにおけるグレイン間相転移の磁場依存性
九工大工 A 徳島大理工 B 京都工繊大工芸 C 加藤優祈A 出口博之 A 美藤正樹 A 岡田侑己 B 小山晋
之 B 萩原亮 C
前回の支部例会で我々は YBa2Cu4O8(Y124 系) のセラミ
クス試料について磁気測定および電気抵抗測定を行いグレ
イン間グラス(カイラルグラス)転移点 (Tc2) およびグレイ
ン間超伝導転移点 (Tc3) の磁場依存より磁場-温度相図を明
らかにしたその結果非常に狭い磁場温度領域でカイラル
グラス相が存在することを確認したd 波超伝導体のセラミ
クスにおいてこのような相図が普遍的かどうかを検証する
ため今回は YBa2Cu3O7(Y123 系)のセラミクス試料に
ついて Tc2 および Tc3 の磁場依存を調べたので報告するH
= 05 Oe におけるゼロ磁場冷却磁場中冷却磁化の Tc2 で
の分岐および H=0 での非線形磁化率の Tc2 = 630 K での
ピーク等の振る舞いはY124 系と同様であった非線形磁
化率のピーク温度から求めた Tc2 の磁場依存を前回の Y124
系(H = 0で Tc2 = 569 K)と比較して図1に示すY124
系では低磁場 (H iexcl 30 Oe) では磁場印加に伴い Tc2 は高温
にシフトしたがY123 系ではそれとは異なり磁場印加に
より単調に低温にシフトしまた磁場依存性も大きいTc3
の磁場依存も併せて報告しY124 系との比較検討を行う
50 600
100
200
300
Y123
Y124
転移温度Tc2(K)
磁場
H(O
e)
図1 Y123 系および Y124 系セラミクスの Tc2の磁場依存
性
転移温度 Tc2 (K)
B-14 点接合分光法を用いたYbPdの電子状態測定
九大院工 A 九大院理 B 志賀雅亘A 沖村健吾 A 光田暁弘 B 和田裕文 B 稲垣祐次 A 河江達也 A
YbPdは立方晶 CsCl-typeの結晶構造を持つ価数揺動物質
である近年X線回折測定や X線共鳴回折測定を行うこと
で低温(T ≦ 105 K)で 3価と 26価の Ybイオンが交互
に並ぶ(価数秩序)状態が実現していることが明らかになっ
た [12]今回我々は低温(T ≦ 105 K)での YbPdの電子
状態についてミクロに理解することを目的に点接合分光法
を用いた微分伝導測定を行った
図1に Ptと YbPdの界面で得られた微分伝導信号の温
度変化を示す図からわかるように全ての信号がバイアス電
圧の正側と負側で非対称になっているがこの様な特徴は重
い電子物質と一般金属の点接合実験で広く見られているま
たゼロバイアス付近のディップ構造については2 準位系
と伝導電子の散乱を仮定したモデルによってよく再現でき
る当日は解析モデルなども含めて詳細を報告する[1] A
Mitsuda et al J Phys Soc Jpn 82 084712 (2013) [2]
R Takahashi et al Phys Rev Lett 88 054109 (2013)
18
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
B-15 トポロジカル絶縁体候補物質 SmB6の点接合分光実験
九大工 A 九大院工 B 茨城大理 C 原田琢良A 志賀雅亘 B 沖村健吾 B 稲垣祐次 B 伊賀文俊 C 河江達
也 B
トポロジカル絶縁体とはバルクは非磁性絶縁体だが表
面では金属的な性質を持ち表面でのみ電流を流すことが
できる全く新しい物質のことである近藤絶縁体の1つと
して知られている SmB6 は近年トポロジカル絶縁体でも
あると言われておりそれを証明すべく様々な研究が行わ
れているその中にはソフトポイントコンタクト実験 [1] な
どを始めSmB6 をトポロジカル絶縁体であると結論づけ
ている研究もあるこのような背景より我々は SmB6 に
ついて点接合分光実験を行いフェルミ面電子状態の測定
を試みた用いた実験装置は探針と試料の接触点を固定
していないため接触径を連続的に変化させながら測定す
ることが可能である図1は SmB6Pt 界面での微分伝導
度を示しており接触径の変化により信号が変化している
ことが確認できる当日はより詳細なデータと共に超伝
導探針を使用した場合の信号なども報告する予定である
[1]Xiaohang Zhang et al Phys Rev X 3 011011 (2013)
図1 SmB6Pt界面の微分伝導度
Ω
Ω
T=47K
B-16 電気二重層トランジスタを用いたCa2RuO4の金属化
久留米工業大学 A 東北大金研 B 酒見龍裕A 大内拓 B 中村理央 A 井野明洋 A 野島勉 B 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 (CRO) は357 K で構造変化を
伴って金属転移する我々はこの相転移が 40 Vcmの電場
印加でも誘起されることを明らかにした [1]また電場印加
下で金属化した CRO に電流を流し続けることでこの金属
状態を低温まで維持できる通常金属電極による電場効果の
実験では電場印加と同時に電流も誘起されるため電場効果
なのか電流効果なのかの分離が困難であるそこで本研究で
は電気二重層トランジスタにイオン液体で電場を印加(電
荷を高濃度に注入)した効果を調べたこの方法では試料に
電流が流れないので電流効果を分離することできる図に
260 Kでの電気抵抗の時間依存性を示すイオン液体による
印加電圧が 3 V に達すると抵抗値が急激に低下しはじめ4
V印加するとさらに減少率が増加したまた電圧を 4 V印
加し約 10時間経過すると抵抗値が 30以上減少したさら
に電圧を 4 Vから徐々に 0 Vまで下げると元の抵抗値に同
じ時間をかけて戻ったこの可逆的な抵抗の変化は酸素放
出などの化学反応のような不可逆効果ではないと考えられる
またこのような大きな抵抗の減少は表面電荷の効果でも
説明できない以上のことからこの抵抗の減少は長時間
で変化することから構造変化と関係したバルクの現象である
と考えられる
[1] F Nakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
3 V
4 V
CRO 260 KE c
35 V
19
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
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F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
B-17 酸素制御したモット絶縁体Ca2RuO4の単結晶育成とその物性
久留米工業大学 A 伊藤洋敏A 上久保直紀 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
モット絶縁体 Ca2RuO4 はわずかな外場で様々な新奇現
象が誘起される興味ある物質系として注目されている [1]こ
れまでの研究はおもにストイキオメトリックな組成を持つ
Ca2RuO4 単結晶で行われてきた一方酸化物では酸素量
のストイキオメトリからずれを無視して物理を議論できない
例えばCa2RuO4 多結晶体で巨大な負熱膨張 [2]や 96 Kの
超伝導 [3] などが報告されている酸素制御されていない多
結晶体で発見されたこれらの現象は酸素過剰や欠損が誘起
した可能性が大きいがこれまで Ca2RuO4 での酸素過剰欠
損の効果はあまり議論されてこなかったそこで我々は酸
素制御された単結晶を用いて酸素欠損過剰が Ca2RuO4 の
物性に与える影響を調べた酸素量の制御は単結晶育成時の
雰囲気ガス(Ar+O210気圧)の酸素分圧を 0から 10気圧
まで変化させて行ったその結果を表1に示す酸素が欠損
した単結晶の育成は多結晶原料棒の溶融自体が困難で育成
ができなかった一方酸素過剰の単結晶は原料棒自体の溶
融は容易だが酸素分圧の増加と共に Ru の蒸発量が増加し
長時間の安定育成が難しくなる酸素制御した Ca2RuO4 の
単結晶育成の可否と育成した単結晶の物性について報告する
[1] FNakamura et al Sci Rep 3 2536 (2013)
[2] K Takenaka et al Nat Commun 8 1 (2017)
[3] Hiroyoshi Nobukane et al arXiv170309459
表1 CRO の酸素過剰欠損による育成結果
酸素過剰 酸素欠損
O₂Ar+O₂(atm) 510 3 10 25 10 2 10 1 10 025 10 0 10
溶融電圧(V) 76 78 79 78 74 73 over 85
育成可能時間(分) 20 60 30 150 150 30 times
単結晶育成の可否 times
B-18 通電下モット絶縁体Ca2RuO4の比熱測定の試み
久留米工業大学 A 上久保直紀A 伊藤洋敏 A 酒見龍裕 A 中村理央 A 井野明洋 A 中村文彦 A
Mott絶縁体 Ca2RuO4 は356 K以上の温度で大きな構造変化を伴って金属に転移する我々のこれまでの潜熱や比熱の測定
から「Ca2RuO4 の相転移は低温相で体積が膨張する「負の熱膨張」や 357 sim 200 Kの温度範囲でみられるエントロピー増
大など興味ある熱力学現象を含んでいる」ことが明らかになった一方同様な金属転移はわずかな電場印加でも誘起され
る室温で乾電池半分程度の電圧しきい電場にしてわずか 40 Vcmの電場を Ca2RuO4 に印加すると 1 sim 2 もの体積の
収縮を伴って金属化するこの電場誘起相転移を熱力学的に理解したいまたこの Ca2RuO4 の電場誘起金属相は電流をわ
ずかに流し続けることで低温まで維持できるこの金属状態の熱力学的理解はできていないなぜならばこのような定常電流
下の金属状態=「非平衡定常状態」の熱力学現象では「熱」や「エントロピー」などの熱力学量は流れがあるためベクトル量と
して理解すべきだからであるこのような Ca2RuO4 の相転移を熱力学的に理解するため電場定常電流下での Ca2RuO4 の
比熱測定を試みている比熱測定には 200 sim 400 Kの温度域で比熱の絶対値を精確に測定できる(1次相転移の比熱を測定す
るため)示差走査熱量計 DSC(島津製作所 DSC-60plus)を用いた通常 DSC-60plusではアルミ製セルを用いるがこれを電
気的絶縁性と熱伝導性に優れたアルミナ製セルに変更したそこに金電極を蒸着した単結晶試料(2times1times04 mm3 程度)に電場
を印加しながら比熱を測定している装置及びセルの詳細と Ca2RuO4 の電場電流下相転移の比熱測定の結果を報告する
20
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
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F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
B-19 磁性不純物をドープしたルチル型酸化物TiO2の物性
鹿児島大学 理工学研究科 A 鹿児島大学 工学部 B 米田智尭A 國守大也 A 永田勇平 B 奥田哲治 A
新たな n 型熱電材料として重い有効質量を持つルチル
型 TiO2 に着目した母体物質のルチル型 TiO2 の Ti サイ
トの一部を磁性原子(VCrMnFeCoNi)に置換し
さらに Ti サイトの Nb 置換と酸素欠陥により電子ドーピ
ングすることで磁性と伝導電子との相互作用による熱電特
性の向上を目指した本研究では現在までフローティン
グゾーン (FZ) 法により単結晶育成しその輸送特性を測
定したその結果得られた試料は全て Nb 置換酸素欠
損により電気抵抗率は大きく下がったが最低温では発散
する半導体的な振舞いを示したまた置換する磁性不純
物によっては伝導電子の有無で磁気特性が異なることを
見出した本発表では輸送特性と磁性の詳細を報告する
10-2
10-1
100
101
102
103
104
105
0 100 200 300
ρ (Ω
cm)
T (K)
V 1
Mn 1 Ni 1
TiO2-δ
Ti1-x
TMxO
2-δ
Fe 1
Ni 3Ti
097Nb
003O
2
Co 1
(TM V Cr Mn Fe Co Ni)
B-20 擬ブルッカイト型酸化物Al1-xTi2+xO5の物性
鹿児島大学理工学研究科 A 鹿児島大学工学部電気電子工学科 B 高浜隆成A 石井透依 B 奥田哲治 A
新たな熱電材料として擬ブルッカイト構造を持つ AlTi2O5
に着目した本物質はチタンの形式価数が 35 価である
のにも係わらず金属ではなく絶縁体となっており強相
関系の可能性が示唆されているそこで類縁擬ブルッカ
イト構造を持つ Ti3O5 が存在するためAl1minusxTi2+xO5 を
合成できると考えその熱電特性における過剰 Ti ドーピン
グの効果を調査したFZ 法による単結晶の育成を試みたと
ころ0lexle1 の範囲で結晶育成に成功した構造解析によ
り実際にはAl と Ti はそれぞれのサイトにランダムに
分布することが判明しまた右図に示すように高温におい
て x sim 08付近で高いゼーベック係数を維持しながら電気抵
抗率が大きく下がり熱電特性が改善されることが判った
本発表では構造熱電特性磁性の詳細について報告する
10-3
10-1
101
103
105
0 200 400 600 800 1000 1200
ρ (Ω
cm)
T (K)
Ti3O
5
025050x =
Al1-x
Ti2+x
O5
x = 075
AlTi2O
5
21
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
会場 C
領域 9 10 11 13
C-4 8年間の県事業による子ども科学実験教室
元大分大教育 A 大分県教委 B 大分市教委 C 株式会社リブネット D 軸丸勇士A 長野雄一郎 B 栗田
博之 C 今泉純子 D
概要 大分県には科学館や科学等に関する博物館がない
その様な状況のなか県は理科好きを増やし科学や技術への
関心を育てることを目的に平成 22(2010)年7月~平成 30
(2019)年2月までの9年にわたり大分独自の予算を計上し
「子ども科学実験教室(O-Laboと呼ぶ)」を実施してきたそ
の開室日は毎年7月~翌年の2月までの土日曜日祝祭日と
夏休みで年間 100日を目途に開催される O-Laboへの
参加者は初年度こそ児童生徒保護者合わせて 2000人に満
たなかったが講師事務局マスコミ口コミ等により科学
の不思議さ面白さや楽しさが認知され参加者は年々増加し
てきた平成 26(2014)年度の参加者は児童生徒と保護者を
合わせると 4000人を越え平成 29(2017)年度には 5403人
にもなったその結果8年間の累計参加数は 30163人(そ
のうち子どもは 61)に達する この実験教室は毎年単年
度の大分県予算として計上し県議会の議を経て委託事業と
して実施されてきた平成 30(2018)年も県予算がつき更な
る理科好きを増やすためその効果が期待されているここ
では平成 22(2010)年7月~30(2018)年 10月末日までの8
年余にわたる子ども科学実験教室「O-Labo」について述べる
22
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
C-5 金属パイプ中の落下磁石の運動に対する教材研究
熊本大学教育 A 広島大学先端物質科学研究科 B 内村吉男A 築出啓太 A 河野隆盛 A 馬場理菜子 A 岸
木敬太 A 板橋克美 B
金属パイプ中にネオジウム磁石などの強力な磁石を落下させると磁石は次第にゆっくり落下するこの現象は電磁誘導によ
り金属パイプに渦電流が生じ渦電流から発生する磁場によって磁石に反発する力がはたらくことが原因である十分時間が経
つと位置エネルギーによる利得がジュール熱によって失われ磁石はゆっくりとした等速運動をするこの現象は非常に印象
的であるためオープンキャンパスなどの演示実験として活用されておりローレンツ力を用いた運動の解析も最近行われてい
る [1]
本研究の目的はエネルギーの観点から落下運動を解析し磁石の落下速度から銅とアルミニウムの抵抗率 [23]の比を評価
しジュール熱や電磁誘導の式の理解を深める教材を開発することである
金属パイプを N 回巻きのコイルと仮定する磁石が等速 v で落下しているときには磁石の位置エネルギーがパイプ内で
ジュール熱としてすべて消費されると考えるこの場合コイルの抵抗を Rとすると誘導起電力の法則より R = αv を導く
αは磁石に固有の値であるこの式は金属パイプ中を落下する磁石の速度が抵抗に比例することを意味する
実験では同じ形状の銅とアルミニウムの金属パイプを使うその場合銅とアルミニウムの抵抗率を ρCu ρAl とすると磁
石の速度と抵抗率の比にはρCuρAl = vCuvAl の関係があることが理論モデルから予想される実験値と比較した結果を報
告する
参考文献
[1] 大山光晴物理教育 55-3(2007) 219
[2] 国立天文学編理科年表平成 30年度版丸善株式会社
C-6 S=12ボンド交代XXZ鎖の y軸ひねり境界条件
九州大学理学研究院物理学部門 A 守屋俊志A 野村清英 A
本研究では S = 12 ボンド交代 XXZ鎖扱うハミルトニア
ンは以下で与えられる
H =sum
j
[1 + (minus1)jδ
] [Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
]このモデルは ∆ gt 1 の領域で基底状態として Dimer 状態
か Neel状態を持ちその 2つの基底状態間の相転移は Ising
universality class に属することが知られている [1]本研究
では厳密対角化法を用いて臨界指数を数値的に計算するこ
とによりy軸ひねり境界条件 (SyL+1 = Sy
1 SxzL+1 = minusSxz
1 )
での相転移は反周期境界条件の Ising universality classに
属することを確認した
MKohmotoMden Nijsand LPKadanoffPhysRevB245229(1981)
0
02
04
06
08
1
12
10 12 14 16 18 20 22 24
scalin
g d
imensi
on (Δ
=2
0)
size L
antiperiodic Ising
23
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
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E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
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E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
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E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
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E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
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E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
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会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
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F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
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F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
C-7 量子スピン系における磁化率の異常性
九大院理 A 相場信孝A 野村清英 A
量子スピン系において エネルギーギャップは重要である
なぜならその有無により系の挙動を変化させるためだ一
般にエネルギーギャップの有無を確認する際に磁化と磁場
の曲線を描くしかしその曲線では系の変化に対しエネル
ギーギャップの変化が極小のため エネルギーギャップの有
無を判別できない場合が存在するこれは2 次元系におい
て磁化率 χを導入した数値対角化を用いることで判別が可能
であると報告された [1]この報告で磁化 0付近の磁化率は
相転移を伴う異常性-発散-を持つことを確認したこの現象
が他の次元で起こるかは不明である
この先行研究を受け本研究では S = 121次元系での磁化
率とエネルギーの 4 階微分 A について異常性の有無を調べ
た数値計算には以下のハミルトニアンを用いた
H =sumN
j=1
(Sxj S
xj+1 + Sy
j Syj+1 +∆Sz
j Szj+1
)
その結果1次元系においても χAの異常性を確認したそ
の異常性は ∆の増加に伴い強く現れるまた χより Aの方
が強い異常性が現れることが明らかになった
[1]HNakanoT Sakai JPhysConfSeries 868012006(2017)
C-8 Lieb格子上に配置した元素の第一原理計算
福岡工大 A 中川朋奈A 丸山勲 A 高崎真琴 A 平川稜 A
Lieb 格子は光格子において実現されており2 次元強束
縛模型を用いるとフラットバンドが現れる格子として知ら
れている単一の元素を Lieb 格子上に配置した場合に
密度汎関数法により求まるバンド構造にフラットバンド
が現れるかは次近接のホッピングや電子間相互作用により
単純ではなくなる本研究ではこの問題に取り組みフ
ラットバンドが現れる格子定数を調べることにした図 1
は Lieb 格子上に Li 元素を配置し第一原理計算ソフトの
Abinit により求めたバンド図である格子定数を 5114 Å
とし全エネルギーの許容誤差を 10 times 10minus10eV とした
バンドの最大値と最小値の差の絶対値を W とし真ん中
のバンドの最大値と最小値の差の絶対値を w とするとフ
ラットバンド率 wW が 50 times 10minus2 以下となる発表で
はAbinit により求めた Li 以外の結果について議論する
Γ ΓX M
図1 Li 1s軌道のバンド図
24
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
C-10 Cu(111)表面上のグラフェンの相互回転角の理論
福教大 物理 A 三谷尚A 向井隆浩 A 村吉翔一 A
HAgo等によるCVD法によって得られたCu(111)表面上に成長したグラフェンでは両者の格子定数の比率 (grapheneCu=)
1 104に起因するモアレパターンと共に結晶方位について 35degの相互回転が観測された本研究ではこれまでに①モアレ
パターンと LEED像における Cuピーク周りのサテライトの関係加えて②モアレのドメイン間距離と相互回転角の依存性に
ついて明らかにしたなおグラフェンの堅固さと銅の柔軟さを考慮し「Cu がグラフェンを下地ポテンシャルとして感じる」
描像を取った並行して計算観察を容易に行うため上記の比率を 78 とした計算も併せて実施してきたこの相互回転角
の説明は③ 1つの Cu原子がグラフェンポテンシャルの中央にあり(隣接するグラフェンヘキサゴンに位置する)別な Cu
原子の同ポテンシャル上の変調 (modulation)ラインがヘキサゴンの中心とヘキサゴンの一辺の中点を結ぶ線上 (Brarr A)に
あればグラフェンと銅の格子定数比 (OAOB)= 1 104 と併せて回転角 θ=35deg が結論される(比率 78 では角度
は 105degとなる)これらから Cu原子が感じるグラフェンヘキサゴン内のポテンシャルにおいてヘキサゴン頂点付近には
ポテンシャルの山が炭素 2pz軌道に起因して予想され同時にヘキサゴンの中心から各辺の中点に延びる6回対称のの溝が存
在しこのためグラフェンポテンシャルは最安定点近傍でV6(r θ) = V60cos(6θ) であるなお我々が旧来から使用して
きたポテンシャルVG(r) = VG0(cos(G1 middot r) + cos(G2 middot r) + cos(G3 middot r)) その最安定点近傍は円対称に近くこれによるモンテカルロシミュレーションでは相互回転は見いだせなかった当発表ではV6(r θ) = V60cos(6θ) を反映した6回回転対称
性の深い溝を持ったポテンシャルでシミュレーション(目下格子定数比 78 のみ)を実行し構造因子像における Cuピーク
のグラフェンピークを用いて回転を観察した結果はCu系が初期角度 0degから期待する回転角に向かうことは無理であった
が隣接 Cu原子を回転角によるポテンシャル曲線に即して与えた各初期角度から左右どちらに回転するかの定性的傾向に従
うことが示せた期待される角度 105degは弱い停留位置となった以上はモデルポテンシャルによる計算であったが分子計
算ソフト Gaussian によるエネルギー計算によってポテンシャルのエネルギー値の評価を進めている
C-11 低温水素吸蔵に伴うイットリウムナノコンタクトの電気伝導特性変化
九大院工 A 宮川一慶A 高田弘樹 A 稲垣祐次 A 河江達也 A
我々はこれまでに金属ナノコンタクトを液体水素中 (T
lt 20K) に浸すことで低温でも金属への水素吸蔵が生じる
のかに注目して研究を行ってきたこれまでの実験からナ
ノコンタクトの両端へ電圧を印加すれば低温でも水素吸蔵が
誘起されることが分かっている [1]この結果は本手法によ
り低温下で金属水素化物を生成できることを示しているそ
こで我々は水素化により金属-絶縁体転移が起きることが知
られているイットリウム (Y)に着目しその液体水素中での
電子輸送特性を追跡することで水素化物形成と電圧の関係性
を調べた図 1の赤線は真空中で測定した Yナノコンタクト
の dIdVスペクトルである上に凸の形状をしており他の
金属ナノコンタクトでのスペクトルと一致している一方
Yナノコンタクトを液体水素に浸した状態で約 350 mVの電
圧を印加するとスペクトルが V字型へと変化する (図 1青
線)この変化はコンタクト部が水素化し絶縁体へと転移し
たことに起因していると考えられる本講演ではこれらの結
果について報告する
[1] KIenaga et al ApplPhysLett 106 021605 (2015)
380
390
400
410
420
-60 -30 0 30 60
dI
dV
[G
0]
V [mV]
T ~ 16 K
G(0mV) ~ 400 G0
Y in LH2
Y in Vacuum
図1 真空中(赤線)および液体水素中で水素吸蔵させた
後(青線)で測定した Y ナノコンタクトにおける
dIdVスペクトル
25
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
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E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
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E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
C-12 超伝導金属ナノコンタクトへの水素吸着吸蔵による電気伝導特性異常
九大院 A 金沢大教育 B 高田弘樹A 宮川一慶 A 稲垣祐次 A 辻井宏之 B 河江達也 A
金属中の水素原子は低温で量子的な振る舞いを示すこ
とが知られている我々はこれまでこの低温における金
属中水素の拡散現象に注目し低温で水素雰囲気中に曝し
た金属ナノコンタクトの微分伝導特性変化の測定を行って
きた [1]これまでの実験ではナノコンタクトへと 10mV
以上の電圧を印加すると金属中にフォノンが励起されるが
このフォノンが水素の拡散を誘起していることが分かって
いるそこで今回フォノンによらない低温での水素拡散
の検出を目指して水素の吸着した超伝導ニオブナノコン
タクトの特性評価を行ったその結果dIdV 信号には特
異なピーク構造が観測された(図1)このそれぞれのピー
クは V = 01meV 程度の狭い間隔で現れておりまた温度
変化によってそのピークの出現電圧値は変化しない現状
この異常の詳細な起源は不明であるが水素の影響によって
出現している可能性が高い本講演ではこれら観測されて
いる振る舞いについて報告する[1] K Ienaga H Takata
Y Onishi et al Appl Phys Lett 106 021605 (2015)
図1NbコンタクトをT ~ 15KでH2ガス中(P ~
002MPa)に曝しその後にT ~ 45Kへと冷却して測定することで得られたdIdV信号
C-13 変形下における金属ガラスの構造異方性と弾性不均一
大分大 A 村上祐太A 岩下拓哉 A
ガラスとは無秩序な構造をもつ固体状態のことを指し一般に液体を急冷することにより作成することができる しかしなが
ら弾性率のようなガラスの機械的特性の微視的理解は十分には進んでいないこの問題克服の鍵は原子構造の「無秩序さ」
の物理学な役割を明らかにすることであり その構造とガラスの巨視的物性とを直接関係付けることが重要である 本研究で
は変形下の二成分金属ガラス (Cu50Zr50)の分子動力学シミュレーションを用いて金属ガラスの内部構造の異方性を球面調和
関数により抽出し構造の異方性を動径分布関数により特徴づけた結果ガラスの力学的応答は空間的に不均一であること
がわかったまたガラスの応力緩和と弾性率の関係性について議論する
26
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
C-14 回転円筒容器内の粉粒体の流れ場測定
九大院理 A 内海脩帆A 稲垣紫緒 A
回転ドラムによる粉粒体の分離現象とは水平に置いた円
筒容器に 2 種のサイズの異なる混合粒子を入れ回転させた
とき軸方向に粒子が分離し縞模様のバンドが形成される現象
であるこの分離現象は容器に対する粒子の充填率回転速
度によりバンドの振る舞いが変化し充填率が低いときでは
バンドが時間経過に対し結合し減少しいく一方充填率が
高いときにはドラムの中心付近で新しいバンドが形成され壁
で消滅する様子が連続的に繰り返されることが知られている
[1]しかしバンドが軸方向に動く駆動力の起源については
不明な点が多い相分離が起こることによってバンドが軸方
向に駆動されるのかそれとも円筒容器の回転から受ける駆
動によって単種の粉粒体でも軸方向に運動が生じうるのか
を明らかにするためにまずは単種の粒子を円筒容器に入れ
回転ドラム内の粒子の表面流の速度分布の測定を行った今
発表では粒子画像流速測定法 (PIV) を用いて流動化し
ている表面の流速分布を測定した結果について報告したい
[1] S Inagaki and K Yoshikawa Phys Rev Lett 105
118001 (2010)
C-15 回転ドラムにおける動径方向の分離現象について
九大院理 A 近堂くるみA 稲垣紫緒 A
粉粒体は外部から揺動を加えると分離しやすい性質
がある水平に置いた円筒容器に混合させた二種類の粉
粒体を入れ回転させるとそれは三パターンの終状態を
取り得る一つ目は混合状態二つ目は回転軸に沿ってコ
アの部分に小さい粒子が集まりその周りを大きい粒子
が覆う radial segregation三つ目が回転軸に対して垂直
に縞々のパターンが現れる axial segregation である [1]
Axial segregation は必ず radial segregation を経由してか
ら形成されることがこれまでの実験で知られている本
発表では混合する粒子のサイズと比重を系統的に変化
させることで混合粒子のサイズと比重に依存してどのよ
うに終状態が選ばれているのかについて研究を行なった
発表ではその実験結果について報告する[1] JMOttino
and DVKhakharAnnuRevFluid Mech3255(2000)Diameter ( glass ) [mm]
4
2
1
08
04
06
図 回転開始から10分後の上横からの様子アルミナのサイズは2mmに固定ガラスとアルミナの比重はそれぞれ 25 と 36
1198921198881198983である
27
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
C-16 複数金融時系列に対するエントロピーによる分析
福岡県立大学人間社会学部 A 鹿児島大学名誉教授 B 石崎龍二A 井上政義 B
不規則な変動を示す金融時系列の研究では確率論を用い
た理論解析が行われる一方でランダムウォークからの逸脱
も多数報告されている例えば金融時系列は金融危機の
期間中に急激な変化を示す
私たちは外国為替レートの時系列の時間的に局所的な変
動に着目しエントロピーを使った分析を進めてきた([1]
[2])複数の外国為替レートの時系列からパターンエント
ロピーを構成すると大域的な変動の複雑さを見ることがで
きる(図は 7種類の通貨ペアの外国為替レートの日次データ
から構成したパターンエントロピー)パターンエントロ
ピーが高い値が続く期間では複数の為替レートの変動が大
域的に不安定になっており低い値が続く期間では複数の
為替レートの変動が大域的に安定であると考えられる
講演では外国為替レートの大域的な変動の複雑さに加え
て外国為替レート間の相関を種々のエントロピー相関
係数等により分析した結果を報告する([3][4])
参考文献
[1]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of foreign ex-
change rates using time-dependent pattern entropy Phys-
ica A 392 2013 pp3344-3350
[2]石崎龍二統計数理研究所共同研究リポート「経済物理と
その周辺 (10)」第 311巻2014 pp73-81
[3]石崎龍二 井上政義統計数理研究所共同研究リポート「経
済物理とその周辺 (13)」第 378巻2017 pp11-17
[4]R Ishizaki M Inoue Time-series analysis of mul-
tiple foreign exchange rates using time-dependent pat-
tern entropy Physica A 490 2018 pp967-974
1 9 9 9 0 7 0 9 2 0 0 5 0 7 0 9 2 0 1 1 0 7 0 9 2 0 1 7 0 7 0 90 0
0 2
0 4
0 6
0 8
S(712
8 m
t)
t i m e [ d a y ]
C-17 Nambu-Goldstoneモードによって誘起される弱い乱流における Superdiffusion
九大工 A 阪府大工 B 衞藤亮治A 松尾岬 B 及川典子 B 河野真也 A 岡部弘高 A 原一広 A 日高芳樹 A
ホメオトロピック系の液晶電気対流では液晶配向が
Nambu-Goldstone(NG) モードとして振る舞い対流と相
互作用することによりソフトモード乱流 (SMT)(図 1)とい
う弱い乱流(時空カオス)が生じるSMT中の微粒子の拡散
は粒子が対流ロールにトラップされるために subdiffusion
になると予想されたが実際は弾道的な superdiffusion が
起こるこのメカニズムを解明するのが本研究の目的であ
るこの superdiffusion は粒子がロールにトラップされた
ままロール自体が運動することによって生じていると考えら
れるそこでSMT のパターン画像に PIV(Particle Image
Velocimetry) の技術を応用してロールの大局的な動きを調
べた(図 2)さらに磁場を印加することにより NG モー
ドを抑えた系のパターンに対して同様の解析を行いこの
superdiffusion に対する NG モードの役割を明らかにする
図1ソフトモード乱流 図2PIVによって得られた 対流ロールの運動
28
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
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会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
C-18 最速降下問題への微分幾何的アプローチ
沖縄高専 A 森田正亮A
一様な重力場中にある粒子が二点間を滑らかな曲線に沿って運動するときに「かかる時間が最短となるのはどのような経路
をとるときか」といういわゆる「最速降下問題」について再考する変分法によりその解がサイクロイドとなることはよ
く知られているが一様な重力場に限らず一般的なポテンシャル中での運動を幾何学的な視点でとらえ直しそのような一般
的な意味での「最速降下曲線」を曲面上の測地線と見なすことはできるか という問題について考察する共形平坦な計量を持
つ 2次元リーマン多様体での測地線と見なせることは直ちに分かるがその多様体を 3次元空間 R3 に埋め込むことができる
かどうかは自明でないそこで回転面という条件の下で曲面を構成することを試みポテンシャルと構成された曲面の関係を
明らかにするまた曲面の平均曲率がゼロである「極小曲面」の場合および「平均曲率一定面」の場合に埋め込み可能であ
るための条件について議論する
C-19 ボーア半径の内側
日本文理大学 A 日本文理大学工学部機械電気工学科 B 竹本義夫A 島元世秀 B
1 ボーア共鳴 (水素原子)エネルギー関数 F (r)(= mecC0) =mec
2radic1minus k0e2
mec2r
eminus k0e2
mec2r
放物線からのシフトエネルギー ∆E[kgm2s2] = mec2 minus mec
2radic1minus( v
c )2eminus
R0r
(=middot12mev
2 = h[kgm2s]ν[s]) と ν = v2π(2r) =
12 (2r)v
π(2r)2 (周回振動数)よりν[s](光電子)
ν[s](at 2r) (=2πrmev[ms]
h[kgm2s]) = 1 2 3 4 middot middot middotで共鳴する
(i)ν[s]
ν[s]= 1のとき ν1 = ν1r = h2
(2π)2mek0e2= 52923times 10minus11(= r1)はボーア半径
(ii)ν[s]
ν[s]= 2 3 4 middot middot middot nのとき νn = νn
n rn = (nh)2
(2π)2mek0e2(= n2r1)
2 (Maxwell方程式による)運動方程式
主方程式は
(dr
dcτ)2 = (
C0
ce
R0r )2 minus (
C
cr)2 minus 1 R0 =
keQ
mec2=middot 281795times 10minus15m
ここで C0 はエネルギー関数のスピード定数C は面積速度定数
3 花びら共鳴 (中性子)
軌道方程式はdr
dθ(=
dr
eminusR0r dΦ
) = minusr
radicminus1 + r2
C20
C2e
2R0r minus r2
c2
C2e
R0r
これを解いて花びら軌道を得る
詳しくはhttpwwwnbuacjpsimshimamotogenkohtml
29
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
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会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
会場 D
領域 7 12
D-6 細胞死に向かうHela細胞のマイクロレオロジー計測
九州大学理学部物理学科 A 九州大学大学院理学研究院 B 藤原誠A 永尾渉 B 池永匡宏 B 水野大介 B
細胞内部は各種の蛋白質や細胞小器官で混み合ってお
り健全な細胞の物理的性質はガラス的な混み合い状態が
代謝により駆動されたアクティブガラスとして理解される
他方で細胞死の過程では細胞の代謝や PH構造の変化とと
もにその力学的性質も多大な影響を受けるがそのメカニズ
ムは不明である 本研究ではヒト由来のガン細胞株であ
るHeLa細胞に抗がん剤 (パクリタキセル)を作用させ細胞
死を誘導させた細胞内部のマイクロレオロジー (MR)計測を
行ったMRでは細胞内に分散されたプローブ粒子の運動
から細胞質の力学的性質を求めるパクリタキセル投与 (0h)
後の細胞内粒子の揺らぎのパワースペクトルの時間変化を下
図に示すパクリタキセルは微小管の重合を阻害する抗がん
剤であるがむしろ細胞死の誘導とともに細胞質のガラス化
ゲル化が起こり力学特性の変化が生じている可能性がある
101
102
103
104
105
α
ωAcirc
szligacuteS
Dk
T (
mN
)
100
101
102
103
104
Frequency (Hz)
0h 2h 4h 6h 8h
30
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
D-7 半屈曲性高分子ゲルの局所力学応答のスケール可能性
九州大学 A 白木啓悟A
細胞内部では細胞骨格や細胞外繊維等の生体高分子がネットワークゲルを形成しているこれらのゲルは曲げに対する復元力を
示す半屈曲性の高分子からなり外力の印加によって硬化する強い非線形応答性を持つため細胞に力学的な安定性を与える
細胞内部の生理的現象の多くは細胞骨格が分子モーターの生成する局所的な力学場により駆動されて進行する従来生体高
分子ゲルの力学応答はマクロレオメーターを用いて観測されてきたがこの方法では局所的な力学場に対する応答を広い周波
数域で観測することができないそこで本研究では各種の細胞骨格ゲルに対して光捕捉力によってミクロスケールの力を印加
し周辺媒質の局所的な力学応答をマイクロレオロジー法により観測したマイクロレオロジー (MR) とはプローブとして
媒質に分散させたコロイド粒子の運動から周囲の媒質のメソスケール(nm~micro m)の力学物性を計測する手法のことである
任意の制御された捕捉力 (牽引力)をコロイド粒子に印加しつつその運動を多重のフィードバック制御により安定的に追跡し
たこれによりコロイド粒子を介して媒質に局所力学場が与えられるその結果印加する牽引力の増加とともにプローブ
粒子の熱ゆらぎが広い周波数範囲で減少する様子が観測された細胞骨格ゲルは外場の印加に対してまずスケール不変なア
ファイン変形を起こしたのち非アファイン性の遅い緩和を示す広帯域の観測が可能なマイクロレオロジーは初期のアファ
イン変形を含めた広い時間スケールの力学緩和挙動を観測できる本研究では細胞骨格ゲルのアファイン変形の数理モデルを
解析し実験結果と比較することでその非線形挙動にスケール不変性が存在する可能性を見出した
D-8 光捕捉による局所的な力印加に見る濃厚コロイド懸濁液のマイクロレオロジー
九州大学 A 江藤高宏A 林原就斗 A 水野大介 A
私たちの身の回りに存在するソフトマターは単純液体と
は異なり外力の印加により力学的性質が大きく変化して多
彩な流動挙動を示す剛体球コロイドの濃厚懸濁液はその
非線形流動のメカニズムを調べるための単純なモデル系とし
て用いられる従来市販のレオメーターを用いてマクロな
スケールの流動が広く研究されてきたしかしながら濃厚
コロイド系の流動挙動は構成粒子の相互作用に由来するため
微視的なレベルでの力学応答を観測することでその非線形
機構の理解に繋がる本研究ではコロイド懸濁液 (φ=053)
中に分散させたプローブ粒子に光捕捉により牽引力を加え
揺らぎと輸送特性を観測したストークス関係式から求めた
周囲媒質の局所粘性は粒子の輸送速度が増加するにつれ減
少した (thinning)しかしながらこの時の粒子揺らぎには
粘性減少から予測される程の増大は観測されなかった(図 1)
図1コロイド懸濁液の非ニュートン流動と揺らぎη 懸濁液の粘性率 η0 水の粘性率
σ2 懸濁液の揺らぎの分散 σ02 水中の揺らぎの分散
31
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
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F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
D-9 光トラップを用いたコロイド粒子の交流電場応答測定
九大理 A 九大院理 B 村上幸輝A 壹岐晃平 B 木村康之 B
コロイド粒子の表面電荷はコロイド分散系の安定性を支
配する基本的かつ重要な物性量の一つである本研究では
光トラップした単一コロイド粒子の交流電場応答をレー
ザーインターフェロメトリ法を用いて直接測定し複素電気
泳動移動度の新しい測定法の開発を目指した本手法により
1Hzから数十 kHzにわたる広周波領域での単一コロイド粒子
の移動度の周波数依存性が少量のサンプルによって測定可
能となるさらにこれらの測定により粒子表面における電
荷のダイナミクスの理解また周囲の媒質の粘弾性スペクト
ル測定が可能となることが期待される
図 1 に直径 1microm のシリカ粒子の水中での見かけの
移動度microの実部と虚部の周波数依存性示す低周波では
トラップの効果によりmicroがゼロになっているそこでこ
の効果を除くためシリカ粒子の熱揺らぎから求めたコー
ナー周波数を用いて図 1 に対して補正を行った結果
を図 2 に示すこれらの結果から10Hz から 1kHz の
範囲で移動度に周波数依存性がないことが確認された
D-10 水の負の熱膨張の熱力学的機構
琉球大学理学部物質地球科学科 A 安富允A
通常の物質は温度に関係なく熱すると膨張して冷やすと収縮する(正の熱膨張)しかし水の場合はちょっと様子が違
う水は4以上では正の熱膨張をするがそれ以下の温度では負の熱膨張をするすなわち水は4以下では熱すると
収縮して冷やすと膨張する
真冬の寒冷地ではマイナス数十度まで気温が下がって湖川池などの水が凍ってしまうが氷が張るのは表面だけであ
る氷の下では水中生物が元気に泳ぎ回っているこれは水の負の熱膨張のお陰であるこのように地球上の生物が年中
元気で生きていけるのはこのような水の不思議な性質のお陰である
正の熱膨張の熱力学的機構についてはすでに解明されているが負の熱膨張については何世紀にもわたる大勢の研究者
の努力にもかかわらず謎のままであったその間に様々な説が提唱されてきたが何れも現象論的記述に留まっているか
そうであってほしいという願望を述べているだけであり現象の本質を捉えた説明はなされていない最近我々はこの謎を根
源的に解明した
ここで何を示せば熱力学的現象を根源的に解明したと言えるかについて論じてみたい周知のごとく物質の熱力学的性
質は粒子間相互作用に依って決まるが関連した諸々の物理量は熱力学の法則と統計力学の技法を使って導き出すことができ
るしたがって実験結果を再現する粒子間相互作用を決定し導かれた物理量と相互作用の関数形の間に成り立つ関係性を明
らかにして現象の背後にある熱力学的機構が明かされれば熱力学的現象の謎は根源的に解明できたと言える本講演は
その成果についての総合報告である
参考文献 [1] MYasutomi Front Phys 2 64 (2014) [2] MYasutomi Front Phys 3 8 (2015) [3] MYasutomi Front
Phys4 21 (2016) [4] MYasutomi Physics of liquid water (大学院生向け教科書出版予定)
32
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
D-11 せん断流動場におけるMBBA液晶の電気対流とレオロジー
大分大学 大学院 工学研究科 A 別府大学短期大学 B 津田洋介A 長屋智之 A 後藤義友 AB
電気流体対流 (EHC)の存在下でp-methoxybenzylidene-
p-rsquo-n-butylaniline (MBBA) の見かけの粘性は印加電圧が低
い領域では増加し高電圧領域では減少することが報告され
ている 1)これはMBBAの負の誘電率異方性に起因する負
の電気的応力により粘度計が感知するせん断応力が減少す
るためと考えられるさらに低周波高電圧領域の低せん
断領域では粘性が負になる現象が見られる一般に液晶電
気対流の振る舞いは印加電圧や周波数によって変化すること
が知られているそこで見かけの粘性が負になる領域で
せん断速度とせん断応力の関係の電圧周波数依存性を調
べたせん断速度を制御して電圧依存性を調べた結果を図1
(a)せん断応力を制御して電圧依存性調べた結果を図1 (b)
周波数依存性を調べた結果を図2に示すこれらの結果を
詳細に報告する(1) T Nagaya M NiuS NaraYang Ho
Na and H Orihara Phys Rev E87 012501-1-10(2013)
D-12 液晶電気対流の二値ノイズ印加による影響
大分大学 工学研究科 A 大分大学 工学研究科 B 別府大学 大分大学 C 野中祐輝A 長屋智之 B 後藤
善友 C
非平衡散逸系の研究では対流系がその典型的な対象とされており有名なものの一つに液晶電気対流 (Electro Convec-
tionEC)があるECは異方性流体である液晶にある閾値以上の電圧を印加すると電気流体力学的効果により起こる対流の
ことであるEC は電気制御現象であることから非平衡散逸系におけるノイズの応答性を調べる対象として研究されてきた
[1]最近九州工業大学の許らがECにおけるノイズの応答性を報告した [2]彼らの実験ではホワイトノイズをローパス
フィルタ (LPF)に通し有色ノイズにする有色ノイズのノイズ強度と LPFの遮断周波数を変化させることでウィリアムズド
メイン (WD)発生時の閾値電圧の変化を調べたその結果以前の研究ではホワイトノイズの強度が増加するに比例して閾値
電圧も増加していたが [1]遮断周波数を 2kHz以下の有色ノイズを印加することで閾値電圧が減少するという結果が観測され
た [2]有色ノイズの効果は許らによって詳細に調べられているが相関のあるノイズは他にもあり二値ノイズの効果はまだ
十分に調べられていないそこで本研究ではノイズの種類を二値ノイズにしノイズの相関時間と強度を変化させることで
WD 発生するときの閾値電圧の変化を調べたその結果ノイズの強度を上げることによってWD 発生時の閾値電圧が減少
することが観測された発表ではEC に対する二値ノイズの効果について詳細に報告する[1] S Kai T Kai M Takata
and K Hirakawa J Phys Soc Jpn 47 1379 (1979) H Brand and A Schenzle J Phys Soc Jpn 48 1382 (1980) T
Kawakubo A Yanagita and S Kabashima J Phys Soc Jpn 501451 (1981) [2] Jong-Hoon Huh and Shoichi Kai J
Phys Soc Jpn 83 063601 (2014)
33
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
D-13 コレステリック液晶のトポロジカル欠陥
九大理 A 九大院理 B 林和気A 木村康之 B
コレステリック液晶は分子配向にらせん構造(らせんピッ
チを pとする)を有する複雑液体であるこの液晶をセル表
面で分子が垂直配向するように表面処理したセル厚 dのセル
に閉じ込めるとp と d の大小によって様々な欠陥を伴った
配向構造を自発的に形成するさらに電場を印加によって
も構造が変化することが知られている
例えばp gt d であるセルでは図左に示すような縞状のパ
ターンが形成されるこのセルに低周波の高電場を印加した
のち電場を切ると図右上のような液滴が密充填した安定な
構造へと変化するさらにこの構造に高周波の高電場を印加
すると再び図右下のような縞状のパターンに戻る
本研究ではこれらの欠陥構造を局所的に発生させることを
目指しさまざまな方法を実験的に検討した結果を報告する
低周波電場を印加後電場を切る
図 垂直配向セル中でコレステリック液晶が形成するパターン
高周波電場を印加後電場を切る
初期状態
100mm
200mm
200mm
D-15 環状分子の固液転移
九大理 A 上戸美乃A 松井淳 A
円環状粒子で構成される系の巨視的な性質を調べるため
モンテカルロ法を用いた計算機シミュレーションを行った
異なる 2 つの円環状粒子の微小体積間には距離の 12 乗に反
比例する斥力相互作用
ϕ(r) = ϵ(σr
)12
がはたらくとして円環状粒子の間にはたらく斥力相互作用
はそれぞれの粒子の微小体積の間に生じる斥力の和となる
ここでσ は斥力が及ぶ距離スケールであり円環の半径は
5σ とした
高温では円環粒子の位置と向きは乱雑であるのに対して
低温では図に示すようなラメラ構造になることがわかった
34
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
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E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
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E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
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F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
D-16 界面不安定性による星形パターンの形成機構
福工大工 A 千葉大理 B 九大総理工 C 田中光貴A 下川倫子 A 北畑裕之 B 坂口英継 C
近年流体の流れと化学反応の 2つの要因によって促される
界面での不安定性に関する研究が注目されている二流体の
粘度や pHを変えることで特徴的なパターンが見える viscous
fingering がその例として挙げられる我々はコロイド溶液
(牛乳)に界面活性剤(2-メトキシメタノール)を 1滴滴下する
と二流体界面に星形パターン(図 1)が自発的に形成される
ことを発見した星形パターンのツノの数(波数)kはベース
溶液の粘度microと共に増加する(図 2)星形パターンの形成メ
カニズムは①酸性の界面活性剤と牛乳コロイドの凝集②凝
集したコロイドの掃き寄せ③コロイドの拡散といった 3つ
の要素によると考え数理モデルを提案した数理モデルが
与えるmicroと kの関係は実験が与えるものと近い傾向を示した
10mm図1 星形パターン
図2 粘度micro-波数kのグラフ
D-17 高濃度ペーストにおける亀裂の断面から見る記憶
福岡工業大学 A 九州大学 B 武藤靖弘A 吉岡拓馬 A 久藤祟晃 A 下川倫子 A 坂口英継 B
破壊とはものに何らかの力や影響が加わることにより
形状機能性質などが失われることである破損事故などの
再発を防ぐためには破損原因を解明しなければならないが
その破損解析の最も有力な手段の一つが破面の観察とその解
析である破断面には破損するに至った原因と破損の経過な
どが刻まれておりこれらが破損原因の解明に重要な手がか
りを与えてくれる我々は高濃度ペーストの乾燥時における
低速破壊の破断面に着目した図1は炭酸カルシウムペース
トの亀裂断面の乾燥後の写真である表面には羽毛状のよう
な模様が観察されたことから羽毛パターンを特徴づける角
度θを測定した (図 1)さらに高濃度ペーストにおける乾
燥破壊時の亀裂の進展速度 v を計測しθと v の関係を実
験で調べたところ比例関係を持つことが分かった (図 2)
35
D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
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F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
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F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
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D-18 過傾斜ディラックコーン系での量子振動の理論
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 岸木敬太A 長谷川泰正 B
グラフェンは 質量ゼロのディラック電子系であり ディラック点近傍でバンドはコーン形をしている [1] 一方 二次元有機導
体の α-(BEDT-TTF)2I3 も 質量ゼロのディラック電子系として知られている [23] この物質では グラフェンとは異なりコー
ンが傾くことが示されている [2]
我々は [4] y 軸方向の一軸圧力 (P )が P = 23 kbarのとき ディラックコーンが臨界的に傾き バンド交差点付近の分散が
三方向 (plusmnkx と minusky) に関しては線形 一方向 (ky) については二次曲線になっていることを見つけた これを 34 ディラック
コーン 新しい交差点を 34ディラック点と名付けたランダウ準位は (nH)45 に比例することも示した [45]
P le 30 kbarでは ホールポケットと電子ポケットのフェルミ面が共存する補償された金属になっている 伝導面に垂直磁場
を印加した場合 ランダウ量子化が起こり de Haas van Alphen (dHvA) 振動の出現が期待される 特に P sim 02 kbarでは
1つの電子ポケットが 2つの小さな電子ポケットに分裂し フェルミ面のトポロジーが変化する その変化は 磁気貫通現象に大
きな影響を与えていることが予想されるさらにそのトポロジー変化は Lifshitz転移 [6]にも関連している
しかしながら そのような系の dHvA振動はこれまで研究されていなかった電子ポケット間の鞍点でサイクロトロン振動
数が発散するので準古典論的な理解は困難になる本研究では 量子論的に Lifshitz転移近傍の dHvA振動について調べる
[1] K S Novoselov et al Science 306 666 (2004)
[2] S Katayama A Kobayashi and Y Suzumura J Phys Soc Jpn 75 054705 (2006)
[3] N Tajima S Sugawara M Tamura Y Nishio and K Kajita J Phys Soc Jpn 75 051010 (2006)
[4] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[5] Y Hasegawa and K Kishigi arxiv180902276
[6] I M Lifshitz Zh Eksp Teor Fiz 38 1569 (1960) [Sov Phys JETP 11 1130 (1960)]
D-19 静水圧力下の α-(BEDT-TTF)2I3の 34 ディラック
熊本大学教育 A 兵庫県立大物質理学 B 今福晴仁A 岸木敬太 A 長谷川泰正 B
二次元物質であるグラフェンは導電性や強靭性から様々な分野で注目されているこの物性はグラフェン中の π 軌道の電
子状態に起因しておりその電子は「質量のない Dirac電子」と呼ばれ フェルミエネルギー付近では四方向の分散が線形で
ありバンドはコーン形をしているそれはディラックコーンと呼ばれている「質量のない Dirac電子」を持つ代表的な物質
はグラフェンの他に二次元有機導体である αminus (BEDTminus TTF)2I3 がある [1]
αminus (BEDTminus TTF)2I3 の結晶軸の y 軸方向に一軸圧力を 30kbar以上与えた場合フェルミエネルギー付近の状態はグ
ラフェンと同じくゼロギャップ半導体になっているがディラックコーンはグラフェンとは異なり傾いているさらに一軸圧
力を 23kbar 与えたときには三方向の分散が線形であり一方向の分散が二次曲線である特徴的なバンドが確認され34
ディラックコーンと名付けられた [2]
本研究ではαminus (BEDTminusTTF)2I3 の静水圧力下での 34ディラックコーンの存在の可能性について拡張ヒュッケル法で
得られた飛び移り積分 [3] 用いてエネルギーバンド図を詳細に調べたその結果静水圧力が 75kbarのとき下から 3番目
と 4番目のバンドの接点付近で34ディラックコーンが存在することを明らかにした
参考文献
[1] K Kajita Y Nishio N Tajima Y Suzumura and A Kobayashi J Phys Soc Jpn 83 072002 (2014)
[2] K Kishigi and Y Hasegawa Phys Rev B 96 085430 (2017)
[3] R Kondo S Kagoshima N Tajima and R Kato J Phys Soc Jpn 78 114714 (2009)
36
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
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E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
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E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
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E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
会場 E
素粒子論 理論核物理
E-10 ディラック16元数とディラック方程式(カイラル表示)
宮嶋学術財団 A 那須俊一郎A
1日本文理大学の竹本義夫名誉教授は「4元ベクトル積」を使って電磁場にはスカラー電場E sが存在することを明らか
にし4元マクスウェル方程式の完全形を導いた
2ロシアのVミロノフは「時空16元数」と名付けたものを用いてクラインゴルドン方程式を導いているがここで
は後にディラック方程式を導くためにディラック行列 ρσ を使った16元数を用いることにするこれを「ディラッ
ク16元数」略して「D16元数」と呼ぶことにする
34元ポテンシャルWが従うクラインゴルドン方程式は特殊相対論で粒子が従うエネルギー運動量の関係式 E 2-(c
p)2-(mc 2)2=0 を量子演算子で置きかえた (1c 2part 2partt 2-nabla 2+(mcℏ)2)W=0であるこ
れをD16元数で書くと符号が対称的な積に分解できる(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)times(iρ
11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ 3mcℏ)W=0
4これからD16元数のディラック方程式はΨを4成分スピノルとすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla- iρ
3mcℏ)Ψ=0である内包されたディラック行列σを顕わにすると(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla- iρ 3m
cℏ)Ψ=0となるこれを通常のディラック方程式(カイラル表示)(iρ 11cpartpartt-ρ 2σnabla-mcℏ)
Ψ=0と比較するとD16元数のディラック方程式もカイラル表示であることがわかるしかし質量項が異なる
5クラインゴルドン方程式を導くときを考えると通常のディラック方程式では(i ρ 11cpartpartt-ρ 2 σ
nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt+ρ 2σnabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2とな
るが左辺の積の符号が対称的ではないまたσを内包してρだけのD16元数の積にしても(iρ 11cpartpartt-
ρ 2nabla-mcℏ)times(iρ 11cpartpartt-ρ 2nabla+mcℏ)=-1c 2part 2partt 2+nabla 2-(mcℏ)2と
なってやはり質量項の符号が対称的ではない
6これに比べD16元数のディラック方程式ではすでに述べたように左辺の積の符号が完全に対称的になっている
37
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
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E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
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会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
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F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
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F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
E-11 Z3対称性のある格子QCD計算と現象論模型
佐賀大理工 A 九大院理 B 河野宏明A 開田丈寛 B 管野淳平 B
量子色力学(QCD)における相図の研究は素粒子原子核物理学だけでなく宇宙論天体物理学においても重要な研究テー
マであるしかし高バリオン数密度状態では第1原理である格子 QCD計算は符号問題という問題があり信頼できる計
算がない格子QCDでは経路積分で書いた大分配関数をクォークの場について積分を行うと有限のバリオン数化学ポテン
シャルがある場合積分後の有効作用が複素数になり確率解釈を用いるインポータンスサンプリングが使えなくなるしか
し理論に Z3 対称性がある場合は有効作用の虚部が小さくなる [1]ここではこの問題を吟味し対称性のある格子 QCDの
計算について報告を行う
参考文献 [1] T Hirakida et al Phys Rev D 96 074031 (2017) arXiv170500665
E-12 トポロジカルな観点からの非閉じ込め相転移の研究
福岡工業大学 A 理化学研究所 B 柏浩司A 土居孝寛 B
近年トポロジカルな観点からの相転移の研究に注目が集まっている特に自発的対称性の破れが伴わない「トポロジカル秩
序 [1]」によって記述される相転移はその一例である本講演ではクォークグルーオン系の閉じ込め非閉じ込め相転移の
トポロジカルな観点からの研究の報告を行うすでにゼロ温度での「閉じ込め非閉じ込め状態」がトポロジカル秩序によって
分類できることが示されており [2]本研究はその有限温度への拡張を目指したものである特に物性系において有限温度の
トポロジカル秩序が Uhlmann位相によって分類可能であることが示唆されているため [3]この量のクォークグルーオン系
における計算を試みた
参考文献
[1] X G Wen Int J Mod Phys B4 (1990) 239
[2] M Sato Phys Rev D77 (2008) 045013
[3] O Viyuela A Rivas M Martin-Delgado Phys Rev Lett 112 (2014) 130401
38
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
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E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
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会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
E-13 Persistent homologyを用いた閉じ込め相と非閉じ込め相の解析
九大院理 A 福工大情 B 佐賀大理工 C 気象庁福岡管区気象台 D 開田丈寛A 柏浩司 B 河野宏明 C 管野
淳平 A 高橋純一 D 八尋正信 A
クォークとグルーオンは強い相互作用によって結びついておりクォークは低温でハドロン内に閉じ込められる閉じ込め相
高温で自由粒子のように振る舞える非閉じ込め相にあるこれは閉じ込め非閉じ込め相転移と呼ばれておりクォークを無視
した系では厳密に秩序変数を定義できるが動的クォークを考慮すると厳密に定義できなくなる一方物性物理の分野では
相転移現象についてパーシステントホモロジーを用いた解析が詳細に行われている本研究ではパーシステントホモロジーに
よる解析を閉じ込め非閉じ込め相転移に対して導入した [1]本講演では解析手法の詳細や解析結果について議論する[1]
T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
E-14 純ゲージ理論における Polyakov loopのパーシステントホモロジー解析
九州大学 理論核物理研究室 A 福岡工業大学 情報工学部 情報工学科 B 佐賀大学 理工学部 物理科学科 C
大野晃A 開田丈寛 A 管野淳平 A 柏浩司 B 河野宏明 C
閉じ込め相から非閉じ込め相への相転移を表すオーダーパラメーターとして Polyakov Loopというものがあるこれはクォー
クが存在しない系では厳密に定義できる一方で動的クォークが存在する系では厳密な定義はできない一方パーシステント
ホモロジーと呼ばれる解析手法がありタンパク質などの分子結晶構造の解析にも用いられているがこの手法を使って格子
QCDの有効模型に対して解析がなされている [1]これにより得られた結果から相転移によってクォークの配位がどのよう
に変化するのかを数値的に議論できるのではないかと期待される本研究ではこの手法を用いて純ゲージにおける格子 QCD
計算から算出した Polyakov Loopを解析した
[1]T Hirakida K Kashiwa J Sugano J Takahashi H Kouno and M Yahiro arXiv181007635
39
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
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F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
E-15 中性子星の冷却とその状態方程式依存性
九大理 A 九大基幹教育院 B 久留米工大 C 土肥明A 橋本正章 A 中里健一郎 B 松尾康秀 A 野田常雄 C
中性子星は質量が 1 minus 2M⊙半径約 10km中心密度が 1015g cmminus3 程度の高密度天体であるその構造は原子核密度を
超える高密度核物質の状態方程式(EoS)に大きく影響されるEoSは核力によって決まるが核力の計算手法は多数存在する
ため多くの EoSが作られておりパイオンやハイペロンなどのエキゾチックな粒子が現れる EoSも提案されている高密度
物質の EoSの実験的理論的制限はいくつかあるがこれまでに提案されてきた EoSを十分に棄却することはできていない
そこで様々な EoSを用いた中性子星の熱的進化に関する研究が盛んに行われている中性子星は主にニュートリノの放射に
よってその表面温度を下げてゆくそのため中性子星の冷却でニュートリノ放射過程が重要になるその中の重要な過程の1
つに direct URCA過程(DU過程)があるこの過程は放射率が非常に高いものの陽子の割合 Yp がある閾値よりも高くなら
なければ発生しない中性子星内部の Yp は EoSによって変わるためDU過程の発生の有無は EoSによって変化するまた
中性子星冷却では核子の超流動も重要となる中性子星はフェルミ温度と比べ十分に低温なので核子がペアを作り超流動状態
となることでニュートリノ放射が大きく抑制される(Yakovlev et al 2000)DU過程の発生の有無や超流動効果を考慮した
ニュートリノ放射率の大きさは EoSによって変化するため中性子星の冷却シミュレーションでは EoSの選択が重要である
そこで我々は現実的な2体力3体力ポテンシャルを基にして作られた有限温度の EoS である Togashi EoS(Togashi et
al 2017) を用いて冷却シミュレーションを行ったこの Togashi EoS は多くの実験観測的制限を満たすことが知られてい
るさらに比較のために高密度物質の EoSとしてよく知られた Shen EoS(Shen et al 19982011)も用いて冷却シミュ
レーションを行ったこの結果Shen EoSでは軽い星でも DU過程が起きる一方Togashi EoSでは DU過程が起きなかっ
たこれは高密度領域で Shen EoSは DU過程が起こるほど十分に Yp が高くなるのに対してTogashi EoSでは Yp が DU過
程を起こせるほど十分に高くならないことが原因である従ってTogashi EoSは超流動効果の有無に関わらず表面温度が比
較的低い観測値を説明することができないことが分かったよってTogashi EoSを用いて中性子星の表面温度の観測を再現
するためにはエキゾチックな粒子によるニュートリノ放射が必要であることがわかった
E-16 入射核分解効果を考慮した微視的光学ポテンシャルの 6He入射反応への応用
九大院理 A 小川翔也A 堀ノ内亮 A 豊川将一 A 松本琢磨 A
中性子ハロー核は芯核に 1 つまたは 2 つの中性子が弱く束縛した原子核である6He は 2 中性子ハロー核でありかつ4He+n+nの 3体系で初めて束縛状態となるボロミアン核と呼ばれ理論実験の両面から精力的に行われている6He-標的核
反応における断面積の解析には光学ポテンシャルが用いられるが不安定核である 6Heの場合は実験の難しさからポテンシャ
ルを現象論的に決定できないそのため2核子間相互作用から微視的に光学ポテンシャルを構築する必要があり畳み込み模
型や Glauber模型などが用いられる
Glauber 模型は不安定核を含む高エネルギー入射の原子核反応の解析に有用な模型として広く用いられているこの
Glauber模型を用いると原子核-原子核間の多段階効果を考慮した光学ポテンシャルが導出できる
今回は核子-核子間相互作用であるMelbourne G行列を畳み込んだポテンシャルを用いて Glauber模型から得られる光学
ポテンシャルを構成し6He-標的核反応における散乱断面積の計算と微視的なチャネル結合計算の結果を比較した本講演で
は解析より明らかとなったポテンシャルの有用性とその性質について述べる
40
E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
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F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
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E-17 12C散乱における 12C共鳴状態の解析
九大院理 A 山田悠真A 松本琢磨 A
炭素同位体ではクラスター構造が発達しα粒子のガス的状態とみなされる様々な励起共鳴状態が現れることが示唆されてい
る12Cの共鳴状態を探る実験は盛んに行われているが実験により得られたデータには共鳴状態だけでなく非共鳴状態が含
まれるため共鳴状態だけの情報を精密な解析から引き出す必要がある一方これまでの理論的な解析では共鳴状態のみを取
り入れた計算は行われているが非共鳴状態まで考慮しそれらが共鳴状態にどのような効果を及ぼすかまではまだ調べられて
いない
そこで本研究では12Cの共鳴非共鳴状態の効果を調べるために12Cを 3αクラスター構造とみなした 3体計算に複素ス
ケーリング法を適用することで共鳴非共鳴状態を求めそのような状態を含んだ計算を取り扱える連続状態離散化チャネル結
合法 (CDCC) を用いて核子-12C α-12C散乱の微分断面積分解断面積の計算を行った
本講演では計算した微分断面積と分解断面積から 12Cの共鳴非共鳴状態の効果について議論する予定である
E-18 量子散乱における仮想状態と共鳴状態の探索
九大院理 A 徳永航A 松本琢磨 A 山田悠真 A
原子核は自己束縛系を成しそれらの束縛が弱くなると粒子崩壊を起こすが崩壊した状態の中に準安定な共鳴状態が現れるこ
とがある共鳴状態は量子力学的散乱においては散乱の S行列の poleに対応しJost関数を用いて議論される共鳴状態と同
じく S行列の poleになる仮想状態も存在することが知られているこれらは特に原子核が弱束縛になる不安定核領域において
現れることから注目され精力的に研究が進められている
本研究では先行研究(Hiroshi Masui Shigeyoshi Aoyama Takayuki Myo Kiyoshi Kato Kiyomi IkedaStudy of virtual
states in 5He and 10Li with the Jost function method(2000))を参考に Jost関数を用いて共鳴状態と仮想状態の解析を行い
それらの相互作用依存性について議論する
41
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
E-19 複素スケーリング法による S行列の極と連続準位密度の関係
九大院理 A 青木宏平A 小川翔也 A 松本琢磨 A
原子核には安定な束縛状態だけでなく有限の寿命で崩壊する共鳴状態が存在し理論実験の両面から研究が進められてい
る共鳴状態は散乱の S行列の極と対応しまたS行列から導出される位相差の傾きと共鳴状態のエネルギーの位置に関係が
あることが知られている先行研究では5Heに対して複素スケーリング法 (CSM)を用いた連続準位密度 (CLD)の導出し
共鳴状態と位相差の比較が行われている本研究では 6Li11Be核に対しCSMを用いて共鳴状態と CLDを導出しS行列の
極や位相差と比較することでその関係性を議論する
Reference [1] R Suzuki T Myo and K Kato PTP113(rsquo05)1273
E-20 カラー超伝導状態のクォーク物質を考慮した中性子星の冷却
久留米工大 A 千葉工大 B 九大理 C JAEAD 京大理 E 野田常雄A 安武伸俊 B 橋本正章 C 松尾康
秀 C 丸山敏毅 D 巽敏隆 E
中性子星は非常に高密度な天体であり巨大な原子核と考えることができる中性子星内部ではその密度は原子核密度を超え
通常の原子核では出現しない様々な状態が考えられているハイペロンやメソン凝縮クォークの閉じ込め解放核子の様々な
超流動状態の出現等が考えられており非常に興味深い天体であるまた中性子星の温度はその密度に対して非常に低温であ
り地上実験での検証が困難な領域であるため観測値と理論計算とを比較することが有効な探求手法となる
中性子星は最初の発見から 50年が経過し以降様々な方法で観測が行われ内部状態への観測的制限を与えてきた近年の
重力波電磁波によるマルチメッセンジャー観測や2M⊙ の質量観測等重要な観測が行われてきたしかし依然として様々
な物質の状態の可能性は残り内部状態は確定していないこのような中性子星の内部状態の違いは内部における最大の熱エ
ネルギー放射機構であるニュートリノ放射に直接影響するそのため星全体の熱的進化の数値計算の結果と観測値とを比較
することで高密度物質の状態に制限を与えることが可能となる
本研究では中性子星内部にカラー超伝導状態 (CSC) のクォーク物質の核があると仮定しCSC の状態が中性子星全体の
熱的進化へ及ぼす影響について調査したCSC 状態はクォークの自由度によって複数のペアリングが考えられ本研究では
CFL状態と 2SC状態のどちらかが出現すると仮定したCSC状態のニュートリノ放射に及ぼす影響を考慮し星の熱的進化
計算を行った
42
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
会場 F
素粒子実験領域 実験核物理領域
F-6 複合核共鳴を用いた 113Cdの (nγ)反応における P波由来のγ線測定
九大理 A 名大理 B 東工大理 C 阪大 RCNPD JAEAE 牧瀬 壮A 高田秀佐 A 古賀淳 A 吉岡瑞樹 A
山本知樹 B 石崎貢平 B 遠藤駿典 B 佐藤匠 B 新實裕大 B 藤家拓大 B 清水裕彦 B 広田克也 B 北口雅
暁 B 谷結以花 C 藤岡宏之 C 吉川大幹 D 嶋達志 D 木村敦 E 酒井健二 E 奥平琢也 E
我々が観測しているこの宇宙は物質優勢で自然界の反物質の数は物質の数に比べ非常に少ないこれを説明するには物質と反
物質の生成消滅間の確率差即ち CP 対称性の破れ (CPT 不変性より時間反転対称性の破れと同等) の存在が必要である
CP対称性の破れは中性 K中間子や中性 B中間子の崩壊により既に観測されてはいるが物質優勢宇宙を説明するには未だ不
十分であり未知の CP非保存過程を探す必要があるそこで我々は複合核反応にて時間反転対称性の破れが増幅されること
が理論的に示唆されていることに着目した時間反転対称性の破れ探索を行うために我々はその実験感度の指標となるパラメ
タの測定を様々な核種に対して行なっている今回新たに J-PARC MLF BL04にて 113Cdの (n γ)反応を測定した本講
演ではその測定結果について報告を行う
43
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
44
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
F-8 ILCシリコン電磁カロリメータに用いるASICチップの選別
九大理 A 九大 RCAPPB 出口遊斗A 川越清以 A 吉岡瑞樹 B 末原大幹 A
国際リニアコライダー計画(ILC)に導入予定の ILD測定器ではタングステンを用いた吸収層とシリコンセンサーを用いた検
出層を重ねた電磁カロリメータを採用することが検討されているこのうちシリコンセンサーはParticle Flow Algorithm
と呼ばれるハドロンジェットの再構成法に対応するために細かいピクセルに分割されており各ピクセルからの信号を読み出
すために SKIROC2と呼ばれる ASICを用いる現在使用している ASICはフランスの IN3P3Omega グループが開発した
SKIROC2をアップデートした SKIROC2Aと呼ばれるバージョンのものでありこれを用いて検出層部分のプロトタイプの
開発を行っている本講演では検出層のプロトタイプを作成するにあたって行ったSKIROC2Aチップの性能評価と実装
を行うチップの選別についての報告を行う
F-9 PANDORA検出器を用いた 11Liにおけるガモフテラー遷移の研究
Center for Nuclear Study (CNS)A RIKEN Nishina CenterB Peking UniversityC Kyushu Univer-
sityD Horia Hulubei National Institute of PhysE LPC CAEN ENSICAENF Rikkyo UniversityG
Ewha Womans UniveH ATOMKI Institute for Nuclear Research I Toho UniversityJ KVI - Cen-
ter for Advanced Radiation TechK Tohoku UniversityL Tokyo Institute of TechnologyM Univer-
sity of TokyoN CEA Universit eacute Paris-SaclayO Stuhl LaszloA Sasano MasakiB Gao JianBC
Hirai YumaD Yako KentaroA Wakasa TomotsuguD Ahn Deuk SoonB Baba HidetadaB Chilug
AlexandraEB Franchoo SergeF Fujino YusukeG Fukuda NaokiB Gibelin JulienF Hahn InsikH
Halasz ZoltanI Harada TomoyaJB Harakeh MuhsinK Inomoto DaikiD Isobe TadaakiB Kasahara
HinaD Kim DaheeH Kiss GaborI Kobayashi ToshioLB Kondo YosukeM Korkulu ZerenB Koyama
ShunpeiN Kubota YukiB Kurihara AtsushiM Liu HongnaO Matsumoto MayukoM Michimasa
ShinichiroA Miki HareruM Miwa MidoriB Motobayashi TohruB Nakamura TakashiM Nishimura
MizukiB Otsu HideakiB Panin ValeriiB Su-yeon ParkH Saito AtusmiM
近年 RIビームの発達により不安定核の研究を行えるようになってきた不安定核では安定核で見られなかった性質を示
すことがあるその一つに中性子ハロー核というものがあるハローとは芯となる核の周りに中性子が雲のように広がってい
る状態であるそれゆえハロー核での反応は中性子物質に近い応答が期待される
一方中間エネルギー (200MeV 程度) の (p n) 反応は原子核の励起状態を調べるのに非常に有効な手段である特にガモ
フテラー (GT)遷移は角運動量を変えずスピンアイソスピンを変化させる最も単純な過程であるため核のスピンアイ
ソスピン励起の研究にしばしば用いられている
この二つを合わせた中性子ハロー核における (p n)反応は中性子物質に近い物質のスピンアイソスピン励起を調べること
ができる今回の実験では中性子ハロー核として知られる 11Liの RIビームを用いて逆運動学条件で実験を行なった
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F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
45
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
F-10 波形弁別による粒子識別と重陽子分解反応による中性子生成の研究
九大理 A 若狭智嗣 A 大城久典 A 後藤秀兵 A 密本晋治 A 猪野元大樹 A 笠原妃奈 A 平位勇磨 A
坂木重仁A 濱野友哉 A 東聖人 A
近年医療工業等の様々な分野において加速器を用いた (dn)反応による中性子ビームが盛んに利用されている陽子ス
トリッピング反応が主となるため必要な中性子エネルギーの約倍の重陽子ビームが必要となるが基礎となる断面積のデータ
は 50 MeV以上で不足している 我々のグループでは56 MeVの重陽子ビームを用いて (dn)反応を研究しているこれま
で有限角度での 2階微分散乱断面積が標的の幾何学的断面積に比例する事を明らかにしている今回断面積が最大となる 0
度の断面積を測定することにより共鳴状態等のエネルギー分布への寄与について明らかにするまたビームが止まる程度に
厚い標的のデータも併せて取得するこの場合単純には中性子の生成量は標的種に依存しない事が期待されるしかしなが
ら既存のデータは系統誤差が大きく標的依存性も相互に矛盾しているそこで我々は薄い標的と厚い標的を同一測定系で
測定することで系統誤差を抑え中性子生成量の標的種依存性も明らかにする実験は阪大 RCNPのサイクロトロン施設に
おいて行った(dn) 反応により生じる中性子は100 m の中性子飛行トンネル内に設置した一次元位置感応型中性子検出器
(PANDORA)により検出しその飛行時間からエネルギーを求めているさらに検出器からの信号波形の違いを用いて中性
子とガンマ線の識別も行っている 本発表では(dn)反応による中性子エネルギー分布の標的種(質量数)標的厚角度依
存性のデータを示すと共に反応のモデルと比較する
F-11 J-PARCBL05における中性子寿命測定実験現状とアップグレード
九大理 A 九大 RCAPPB 東大素セ C 東大理 D 名大理 E 名大 KMIF 京大化研 G JAEAH INFN-
GenevaI 高エ研 J 京大理 K 筑波大 L 阪大 RCNPM 東大総合文化 N 上原英晃A 広田克也 E 猪野
隆 J 岩下芳久 G 北口雅暁 F 三島賢二 J 長倉直樹 D 中野祐輔 E 生出秀行 I 岡部宏紀 E 音野瑛俊 B
關義親 H 清水裕彦 E 角直幸 A 竹谷薫 J 富田龍彦 A 山下了 C 吉岡瑞樹 B 家城斉 D 北原龍之介 K 古
賀淳 A 森下彩 A 関場大一郎 L 嶋達志 M 角野浩史 N 山田崇人 D 横橋麻美 K
中性子は原子核中では安定しているが自由な中性子は 900秒弱の寿命で陽子へとβ崩壊を起こすことが知られているこの
寿命の値はこれまで 2つの方法で測定されてきた一つが中性子を貯蔵し崩壊せずに残った中性子を数える貯蔵法もう一つが
中性子ビームを容器に入射し崩壊して生成された陽子を数えるビーム法であるしかしこれらの方法による結果の間には 84
秒 (40σ)の差異が生じているそこで我々は陽子ではなく電子を測定するビーム法による測定を J-PARC MLF BL05にて
行っている今回の講演では2014から 2017年に取得したデータについての結果を紹介するまたこの J-PARCでの中性
子寿命測定では現在もデータ取得を行っているが目標とする 1秒精度の結果に向けてアップグレードを行う必要があるその
一例として中性子ビーム大強度化と低ガス圧運転が挙げられるこれらのアップグレードについても講演を行う
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F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
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F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
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F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
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F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
F-12 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験宇宙線検出器のシミュレーションと製作
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 永野智也A 角直幸 A 上原英晃 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槇田康博 C
我々は中性子寿命の精密測定実験を行なっている中性子は原子核中ではほとんど崩壊しないが単独では 900秒弱で崩壊す
ることが知られているこれまで大きく分けて 2 つの方法で中性子の寿命が測定されてきた1つは中性子を容器に貯蔵し
一定時間後に崩壊せず残った数を数える貯蔵法もう 1つ中性子ビーム中の崩壊した陽子数を数えるビーム法であるしかし
2 つの実験結果には84秒 (40 σ)の乖離が生じているそこで我々はこれら 2 つとは違う電子を測定するビーム法の実験
を J-PARC MLF BL05 で行なっているこの手法では中性子由来のγ線が出した電子を背景事象として取り除く事が精度
向上のために最も重要な factor となっているこの事象はビーム軸上で起こるβ崩壊で生成される電子と異なり主に検出
器壁面で起こる効率的にこの事象を排除するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場をかけて新たな実験を行うことを検討
している実験の準備として現在は宇宙線 Veto Counter のシミュレーションと製作を行なっており本講演ではこの 2つ
について報告する
F-13 九州大学タンデム加速器におけるToF-ERDA法の開発
九州大学実験核物理研究室 A 坂東慶伍A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 庭瀬暁隆 A 齋藤尭夫 A
真部健太 A 末川慶英 A 白坂和也 A 森田浩介 A
超重元素探索実験では合成された超重元素とその他の粒子とを識別するために飛行時間測定検出器 (Time-of-FlightToF検出
器)が用いられているToF検出器は測定したい方向に対して二台設置し粒子が膜を通過した際に放出される二次電子をタ
イミングとして使用するその二台の時間差から速度の情報が得られる我々は九州大学で使用するための ToF検出器の開発
を行っているまたToF 検出器を用いた実験の応用例として物質の表面分析を行う ToF-ERDA(弾性反跳検出分析) があ
るこの手法では物質の深さ方向に対する元素組成を導出することが可能であり表面に付着した不純物などを分析することが
できる我々のグループでは九州大学タンデム加速器を用いToF-ERDA法の開発を行っている本講演では我々が製作した
ToF 検出器の原理やシミュレーションの結果を紹介し超伝導体 YBCO を標的にした ToF-ERDA 実験の結果について報告
する
46
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
F-14 7Li+51V反応系における光学ポテンシャルの実験的決定
九大理 A 真部健太A 坂口聡志 A 藤田訓裕 A 郷慎太郎 A 足立智 A 田中聖臣 A 鷲山 広平 A 齋藤尭
夫 A 坂東慶伍 A 白坂和也 A 末川慶英 A 内藤夏樹 A 平川貴啓 A 村上郁斗 A 森田浩介 A
我々九大実験核重元素グループは原子番号 119番以降の新元素合成を目指し原子核融合をメインテーマとした核反応機構の
研究をしている原子核融合反応には複数の反応過程が存在する融合過程における最初の段階が捕獲過程である捕獲過程に
は競合過程として準弾性散乱が存在している捕獲反応の断面積は準弾性散乱の断面積に比べて桁違いに小さくエネルギーに
非常に強い依存性を示すそのため最適なエネルギーの決定が重元素合成において非常に重要である入射エネルギーを決定
する重要な情報が融合障壁分布であるこれは準弾性散乱の測定結果から得られチャネル結合計算と比較するチャネル結合
計算には様々なパラメータを入力しこの中で重要なのが原子核間の相互作用を表す光学ポテンシャルであるが重元素分野に
おける光学ポテンシャルのパラメータは軽粒子領域からの経験則や外挿によってのみ決定されていた九州大学での先行研究
(7Li+51V反応系における融合障壁測定)においても光学ポテンシャルのパラメータも経験則に基づいたものであったそこ
で九州大学のタンデム加速器にて同じ系の準弾性散乱測定より実験的に光学ポテンシャルを決定するのが今回の目的である光
学ポテンシャルの実験的決定には準弾性散乱の角度分布が必要となる角度分布を得るにあたりビーム強度やプロファイルの
不安定性による系統誤差を軽減しまた測定時間を短縮するため複数角度を同時測定可能なシリコン検出器系を開発したこ
の検出器系はシリコン検出器を扇型に 10deg毎に9個配置し前方散乱後方散乱どちらの測定も可能になるように設計してあ
る今回の発表では7Li+51Vの光学ポテンシャル決定をするための検出器系実験の概要について紹介する
F-15 ヘリウム 3分解反応 (3Hen) の原子核依存性の研究
九大理 A 笠原妃奈A 若狭智嗣 A 坂口聡志 A 猪野元大樹 A 平位勇磨 A
本実験ではnatC~197Auの 6種の原子核標的に対し 87 MeVのヘリウム 3ビームを照射し(3He n)反応の二階微分断面積
を測定したヘリウム3分解反応における6標的の幾何学的断面積に対する反応断面積の依存性得られる中性子のピークエ
ネルギーの標的依存性および 3He内での中性子のエネルギー分布の影響を理解することを目的としたまた中性子の空気中
での減衰効果中性子検出効率の閾値依存性についてもシミュレーションと比較する実験は大阪大学核物理研究センター
(RCNP)の中性子実験室にてビームスインガーおよび 100 mの中性子飛行トンネルを用いて行った(3He n)反応により
放出された中性子は一次元位置感応型中性子検出器(プラスチックシンチレータ)により検出し飛行距離 60 mの飛行時間
測定法で中性子の運動エネルギーを求め二階微分断面積を測定したピーク断面積については標的の質量数 A1563 に比例す
る結果が得られたこれは本来観測されるはずの中性子が標的に吸収された可能性が考えられるピークエネルギーについて
は入射ヘリウム 3エネルギーのおよそ 13となることさらに質量数 A増加に伴い中性子のピークエネルギーが減少す
る結果が得られたこれはクーロン場によるヘリウム3の減速効果で定性的に理解された
47
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
F-16 ガス検出器とソレノイド磁石を用いた中性子寿命の精密測定実験検出器製作と性能評価
九大理 A 九大 RCAPPB 高エ研 C 角直幸A 上原英晃 A 永野智也 A 牧瀬壮 A 音野瑛俊 B 吉岡瑞
樹 B 三島賢二 C 槙田康博 C
中性子寿命 τ = 8802 plusmn 10 秒 (PDG2016) は素粒子原子核分野や宇宙論の幅広い分野において重要なパラメータであ
るこれまで大別して 2種類の方法で測定されてきたがそれらの間には 84 秒 (40σ)の乖離が見られている一方は中
性子を容器に溜め一定時間後に生き残った中性子を数える貯蔵法で他方は中性子ビーム中の崩壊頻度を陽子から数えるビーム
法であるそこでビーム法の中でも新たに J-PARCの物質生命科学実験施設の BL05で行っているこの手法では中性
子由来のγ線が電子を発生する背景事象の排除が精度向上にとって最も重要な要素となっているこれらはビーム軸から発生
するβ崩壊電子とは異なり主に壁面から発生するためビーム軸に沿ったソレノイド磁場を用いることで効率的に排除が可能で
あるソレノイドとして磁場強度や利用可能な内部空間の大きさの観点から宇宙線反粒子観測の BESS実験の予備機とし
て作製された超伝導磁石の利用を検討しているこの磁石をベースとして内側に設置する Time Projection Chamber 検出器
(TPC)を製作した高電圧印加試験と信号読み出し試験を行い製作した検出器の動作を確認した本公演では検出器製作と評
価試験について報告する
F-17 COMET実験の電磁カロリメータに用いる LYSO結晶の性能評価
九大理 A KEKB 阪大理 C 九大 RCAPPD 川島僚介A 上野一樹 B 大石航 A 川越清以 A 久野良孝 C
東城順治 A 西口創 B 橋下奨平 A 藤井裕樹 B 三原智 B 宮崎祐太 A 吉岡瑞樹 D
標準理論を超えた新物理の枠組みの中では荷電レプトンフレーバー保存則を破る過程が出現することが予想されておりその
過程の一つとしてミューオン-電子転換過程があるCOMET実験は J-PARCのハドロン実験施設で行う予定でありその過
程を第一段階では 10minus15第二段階では 10minus17 の一事象発見感度で探索する実験である本実験の電磁カロリメータは LYSO
結晶シンチレータと APDから構成されておりミューオン-電子転換過程によって現れる 105MeVの単色電子を 5以下のエ
ネルギー精度で検出しトリガーを生成する本検出器のプロトタイプ評価試験では 105MeVの電子に対して 42のエネル
ギー精度であることが確認されている
検出器に用いられる LYSO結晶のさらなる選定が現在進行中である新しい製品の分解能減衰時間及び光量に関して旧製
品との比較を行なっているまた反射材の巻き方による減衰長の変化の研究も行なっている本講演ではこれらの LYSO
結晶の性能評価と性能比較の研究結果について報告する
48
F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
49
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
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F-18 陽子ノックアウト (p2p)反応を用いた原子核の分光学的研究
九州大学大学院理学府物理学専攻 A 九州大学大学院理学研究院 B 東北大学大学院理学研究科 C 宮崎大
学工学教育研究部工学基礎教育センター D 密本晋治A 若狭智嗣 B 坂口聡志 B 関口仁子 C 前田幸重 D
大城久典 A 後藤秀兵 A
原子核内に存在する核子はそれぞれ固有の軌道スピン
角運動量を占めている占有状態は独立粒子殻模型(IPSM)
によって説明されるが現実には IPSM に取り込めてい
ない核内に働く力残留相互作用によって原子核内部は
複雑な相関を持つことが知られている我々は原子核の
内部構造を調査するための直接的方法の一つである核子
ノックアウト反応によって核構造を調べる実験を行った
40Ca と 16O を標的に196 MeV の偏極陽子による陽子
ノックアウト反応から核内陽子の占有状態を調べること
ができた本講演では実験の手法について説明し現段
階の解析によって得られた残留核スペクトル(添付図)の
離散ピークの微分断面積と偏極分解能を示しそれらの運
動量依存から示唆されるスピンパリティの報告を行う
Yield
Ex [MeV]
F-19 低エネルギー電子弾性散乱による陽子電荷半径測定実験のためのポリエチレン標的の作成
宮崎大学工学部 A 東北大学電子光理学研究センター B 野中光太郎A 前田幸重 A 清武修平 A 須田利
美 B 本多佑記 B 塚田暁 B
陽子の大きさ(電荷半径)は電子散乱や水素分光μ水素原子分光などの方法で測定されてきたがそれらの方法で決定され
た電荷半径は互いに一致せずその原因は未だ明らかになっていない我々の研究グループは東北大学電子光理学研究センター
の低エネルギー電子直線加速器を用いてその特徴を最大限に利用した電子陽子弾性散乱実験により電子散乱としては最も
信頼度の高い陽子電荷半径の決定を目指している今回その低エネルギー電子散乱実験において要求されている標的は厚さ約
100 μ m のシート状の高純度ポリエチレン(CH ₂)標的でありまたその CH ₂標的中の C と H の比が 01 の精度で
測定されている必要があるそこで我々はまず一般的に入手できる CH₂粉末中に不純物が含まれているかどうかを調べる
ためフーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)と CHN 元素分析装置を用いて CH ₂粉末の組成を測定したFTIR 測定と
CHN 測定では 01 には届かなかったが 03 の精度で C と H の重量比を測定することが出来たシート作成に関しては
加圧式冶具を用いてその CH₂粉末を 150程度の温度で溶解して加圧することで厚さ 100μmの CH₂シートの作成を試み
た当初作製した CH₂シートには気泡の発生や厚さが均一でないなどの問題が生じた為加熱温度スペーサーの厚さ等を
変えながら気泡のない厚さが一様な CH₂標的シートの作成を目指した加熱温度が 130のときは気泡が多く発生してい
たがより高熱量のリボンヒーターや断熱材等を用いて 150以上に加熱しさらにスペーサー厚を作成する標的の厚さの 12
以下に変えたことで気泡のない CH₂シートを作成することが出来た現段階では気泡のない厚さ約 1mmの CH₂標的シー
トの作成に成功している今後は 01の精度で Cと Hの比を測定する方法を模索すると共に今回得られた情報を元にさら
に薄い厚さの CH₂標的を作成し最終的には 100μ m厚の CH₂標的を目指す
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F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
F-20 ブラッグカーブ検出器の低エネルギー中重核に対する性能評価
九州大学 A 齋藤尭夫A 藤田訓裕 A 坂口聡志 A 郷慎太郎 A 坂東慶伍 A 真部健太 A 白坂和也 A 末川
慶英 A 森田浩介 A
現在理化学研究所において 119 番新元素の合成実験が精力的に行われている新元素合成の証明には合成した原子核 (合成
核)の原子番号の同定が必要であるこれまでは半導体検出器に埋め込んだ合成核のα崩壊チェインを順々に観測し崩壊特性
が既によく知られている原子核 (既知核)への到達を確認することで原子番号の同定が行われてきたしかし 119番を超える元
素の合成ではこのチェインが既知核に到達しない可能性がありその場合はこの方法が適用できないそこで当グループはこれ
に代わる方法として合成核のガス中における単位長さあたりのエネルギー損失(ブラッグカーブ)を測定する方法を考えてい
るブラッグカーブは元素の種類によって形が異なるのでこれを測定することで原子番号の同定が可能であると考えている
そこで我々のグループはブラッグカーブ検出器を開発しその性能評価を進めているこれまでに原子番号 Z=68などの比較
的軽い原子核を用いたテストを行っており十分な原子番号識別能力を確認しているそこでより重い原子核に対する性能を
評価するために九州大学タンデム加速器施設にて原子番号 Z=50-5579の原子核を用いたテスト実験を行った今回はその結果
について報告する
50
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