0708月号 p8-11 特集 - 水資源機構œˆ号_p8-11_特集.indd Author prepress_ES07 Created Date...

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特集

8 ● 水とともに 水がささえる豊かな社会 特集 ● 9

あらためて知ってほしい「水路」のはたらき特集

近年では水路施設が整備され、蛇口をひねると、当たり前のように必要とする水を利用することができます。しかし、水路施設が整備される以前は、井戸や天水に頼った生活を送っていました。特に、農業では多量の用水が必要であるにもかかわらず、営農は降雨次第となる不安定なものであり、不足する用水の確保を人力で行ったり、わずかな水を有効に利用するため「かま植え※」を行ったりと、様々な苦労がありました。

先人の苦労を解消し、用水を安定的に供給するため、現在では河川の水が減少した時も補給できるよう、水源地にダムを造り用水を確保し、取水口より用水を安定取水し、不足する地域へ送るための水路を整備しました。ここでは水路の施設について紹介します。

・ライニング水路地盤を掘削または盛土した土水路に、流れによる浸食防止、耐久性の向上および表面を平滑にし、水が流れやすくするためにライニング(コンクリート等を表面に張りつけ)した水路です。

・擁壁型水路(フルーム)コの字型の鉄筋コンクリートで造られた水路です。水路側面が水路内の水圧や水路背面の地下水圧、土圧を支持する構造となっており、ライニング水路に比べて狭小な用地に設置することができます。

②トンネル水路が直線的に山岳や丘陵を通過する場合に用いられる工種です。山岳や丘陵を開水路で迂回すると大幅な費用の増加や水を流すため必

水路には「開水路形式」と「管水路形式」があります。「開水路形式」は、自由水面を持ち、水路底の勾配によって水が高い位置から低い位置へと重力によって流れる形式です。「管水路形式」は、管の中に水が充満した状態で、水にポンプ等の圧力が加えられることによって流れる形式です。

「開水路形式」には、水路を設置する路線上の地形および社会的条件等から、①開水路 ②トンネル ③暗渠 ④サイホン ⑤水路橋 ⑥落差工 ⑦管水路など多くの工種があります。

①開水路ライニング水路、無ライニング水路、擁壁型水路に分類されます。

あらためて知ってほしいあらためて知ってほしい「水路」のはたらき「水路」のはたらき

「水かけ論」、「我田引水」、「水に流す」など、私達は普段気にすることなく水に関する言葉を多く使っています。その背景としては、先人が古来より水に苦労し、水の確保の大変さや重要さを認識していた名残かもしれません。そのような重要な水を届ける水路の役割について説明します。

人力による水の運搬

かま植えの実施

開水路

管水路

ライニング水路

フルーム水路

※かま植え…渇水により田全面に水を張ることができないため、稲苗を植える箇所を突き棒により圃場に窪地を作り、その窪地にわずかな水を張ることにより田植えを行う手法

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あらためて知ってほしい「水路」のはたらき

⑥落差工落差工は、水路の路線選定の結果、地形条件

(台地から低地への接続が必要な場合)から、やむを得ず余分な落差が生じる場合に用います。落差工には水の勢いを低減させる減勢工が必要となります。

以上が開水路形式の主な工種になります。最後に、管水路形式の工種についても簡単に紹介します。

⑦管水路管水路はいわゆるパイプラインのことで、円形のパイプを繋げたものです。鋼製、強化プラスチック製、コンクリート製など様々な材質のものがあります。管水路は、河川から取水した後に揚水機場のポンプ等で圧力を掛けることにより、標高が高い場所に水を送ることができます。なお、送水時には、管内に圧力が掛るため、管には強度と水密性が必要になります。また、管水路は通常は地中に埋設されています

要な水路勾配が確保できない場合に用いられます。トンネルを採用するには、トンネル上部の地表に沈下等の影響がでないようにするため、地山の地質にもよりますが、数10m以上もしくはトンネル断面の直径の3倍以上の土かぶりが必要になります。

③暗あん

渠きょ

暗渠は、地下に埋設されたり蓋をかけられて外側から見えない状態になっている水路です。色々な形がありますが、四角い形のものが多いです。水路の上部を道路等として利用する場合に用います。また、開水路だと路線の地形、土地利用状況、地下水位などから適さず、トンネルでは土かぶりが小さく、地山が安定しない場合に用いられます。

④サイホンサイホン※は、河川・道路・鉄道など、移設するのが困難な構造物等の下部を横断する場合に用います。サイホン内は常時満水となり、常に水圧を受ける構造物であるため、高低差の大きいサイホンでは特に水密性と強度が重要になります。

⑤水路橋水路橋は、路線上に河川横断部があり、施工性や経済性を考慮し、橋で渡したほうが良い場所や、サイホンでは水を流すのに必要な高低差が確保できない場合に用います。

サイホン模式図

サイホン(道路横断部)

トンネル模式図

トンネル断面図

暗渠断面図(左から、正方形、二連方形、長方形)

水路橋

が、ポンプ急停止時の圧力を緩和するため管路途中にサージタンク※や調整水槽が必要となり、これらの付帯施設は地上で目にすることができます。

落差工模式図

落差工

調整水槽

※サイホン…正式には逆サイホンと呼ばれる形式。上下流の水位差により、ポンプ等の動力が無くても、低い場所(地中)を経由して水を流すことができる

※サージタンク…管水路の途中にある弁の開度調整時等、管内圧力の急激な上昇による圧力をタンク内で上方向に逃がし、管の損傷を防ぐための調整施設

管水路模式図

(ポンプ場)

揚水機場(ポンプ場)

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