2009/11/18 日比谷パーク法律事務所 弁護士・弁理 …3...

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GPLv3GPLv3の要点解説の要点解説 ── v3v3からからv2v2を考えるを考える ──

2009/11/182009/11/18日比谷パーク法律事務所日比谷パーク法律事務所弁護士・弁理士弁護士・弁理士 上上 山山 浩浩

2

自己紹介

1981京都大学理学部(素粒子物理学専攻)卒業

1981富士通㈱ 入社

(大型汎用機用OSの企画・設計等に携わる)

2000弁護士・弁理士 登録

2003日比谷パーク法律事務所 入所

2006~IPAオープンソフトウェア・センターリーガル

タスクグループ

(GPLv3の策定期間中,New YorkのSFLCにてMoglen教授と意見交換

する等,リーガル・タスクグループのメンバーとして検討に参画)

3

特許のライセンスに関する規定(§11)

特許の非係争義務(NAP)の明文化(§10)

インストール用情報の開示義務(§6)

DRM への対処(§3)

その他

他のライセンスとの両立性の向上(§7)

用語(convey, propagate等)の国際化(中立化)

特許のライセンスに関する規定(§11)

特許の非係争義務(NAP)の明文化(§10)

インストール用情報の開示義務(§6)

DRM への対処(§3)

その他

他のライセンスとの両立性の向上(§7)

用語(convey, propagate等)の国際化(中立化)

GPLv3GPLv3ののv2v2からの主な変更点からの主な変更点

4

conveyconvey(コンベイ)(コンベイ)ととpropagatepropagate(プロパゲート)(プロパゲート)

propagate著作権者の許諾を要する行為

・ 複製等の支分権に該当する行為

(ただし,プログラムの実行と内部的な改変行為は含まない)

convey・ 第三者による複製を可能にすること・ 第三者による複製物の受領を可能にすること

・ WebアプリやSaaSなどでの使用 (複製)

・ WebアプリやSaaSなどでの使用 (複製)

・ サーバ上でのソースコードの公開 (公衆送信可能化)

・ 組込機器の販売 (譲渡)

・ サーバ上でのソースコードの公開 (公衆送信可能化)

・ 組込機器の販売 (譲渡)

5

GPLv2では,プログラムを配布した者が下流の受領者に

対して特許権を行使できるか否かについて,明確な規定

がなかった。

GPLv2では,プログラムを配布した者が下流の受領者に

対して特許権を行使できるか否かについて,明確な規定

がなかった。

特許ライセンスの明文化(特許ライセンスの明文化(§§1111))

プログラムa

Aの保有する特許αに抵

convey

B

プログラムa

convey/使用

C

プログラムa

使用

A

特許αを行使可能(侵害)?

6

下流の受領者に対する必須特許の無償ライセンスを明記

(第1~3パラグラフ)

下流の受領者に対する必須特許の無償ライセンスを明記

(第1~3パラグラフ)

プログラムa

convey

B

プログラムa

convey/使用

C

プログラムa

使用

A

必須特許αをライセンス

特許ライセンスの明文化(特許ライセンスの明文化(§§1111))

Aの保有する特許αに抵

7

ライセンスの対象・範囲

必須特許クレーム:コントリビュータのコントリビュータ・

バージョンを作成,使用又は販売した場合に侵害することとな

る特許クレームのすべて。

必須特許クレームは,取得済みのものだけでなく,将来取得す

るものを含む。

ただし,コントリビュータ・バージョンを他者が改変した結果,

侵害されることとなる特許クレームは含まない。

ライセンシーは下流の受領者。

ライセンスの対象・範囲

必須特許クレーム:コントリビュータのコントリビュータ・

バージョンを作成,使用又は販売した場合に侵害することとな

る特許クレームのすべて。

必須特許クレームは,取得済みのものだけでなく,将来取得す

るものを含む。

ただし,コントリビュータ・バージョンを他者が改変した結果,

侵害されることとなる特許クレームは含まない。

ライセンシーは下流の受領者。

特許ライセンスの明文化(特許ライセンスの明文化(§§1111))

8

必須特許クレーム

GPLv3: 特許A・B・Cのすべてが「必須特許クレーム」

Apache: 「機能αを含むコントリビューション単独」

または「コントリビューションがなされた対象の著作物との組

合せ」によって侵害される特許

必須特許クレーム

GPLv3: 特許A・B・Cのすべてが「必須特許クレーム」

Apache: 「機能αを含むコントリビューション単独」

または「コントリビューションがなされた対象の著作物との組

合せ」によって侵害される特許

特許ライセンスの明文化(特許ライセンスの明文化(§§1111))

機能α

機能β

機能γオリジナルコード

特許権者が利用した改変

特許権者による改変(コントリビューション)

特許Cに抵触

特許Bに抵触

特許Aに抵触

9

GPLv3の検討中に,ノベルがマイクロソフトとの間で,

ノベルのディストリビューションであるSUSE Linuxに対して特許を行使しないことを内容とする契約を締結し

たことが明らかになった。

GPLv3の検討中に,ノベルがマイクロソフトとの間で,

ノベルのディストリビューションであるSUSE Linuxに対して特許を行使しないことを内容とする契約を締結し

たことが明らかになった。

ノベル/マイクロソフト事件((§§1111))

convey

B

convey/使用

X

A

convey

D

convey/使用

C Aと特許ライセンス

契約締結特許権を行使可能・差止・損害賠償請求

BはAX間の特許ライセンスにより

保護される

10

著作物をconvey/propagateする際,契約で,受領者の一

部に対してのみ特許ライセンスを許諾したとしても,特

許ライセンスは,当該著作物及び当該著作物に基づく著

作物の受領者のすべてに対して,自動的に拡大される。

…Novell/MS対策

ライセンス対象特許は,必須特許クレームに限定されない。

拡大されるライセンシーの範囲は,下流の受領者に限定されな

い。

著作物をconvey/propagateする際,契約で,受領者の一

部に対してのみ特許ライセンスを許諾したとしても,特

許ライセンスは,当該著作物及び当該著作物に基づく著

作物の受領者のすべてに対して,自動的に拡大される。

…Novell/MS対策

ライセンス対象特許は,必須特許クレームに限定されない。

拡大されるライセンシーの範囲は,下流の受領者に限定されな

い。

ライセンシ-の範囲の自動的拡大(ライセンシ-の範囲の自動的拡大(§§1111))

11

以下の場合,著作物のconveyは許されない…Novell/MS対策

著作物のconveyに基づいて,「あなた」が特許権者に対価を支

払うこと

「あなた」の下流の受領者に対して「差別的」な特許ライセン

スを供与していること

ただし, 2007年3月28日以前に締結された契約は対象外

以下の場合,著作物のconveyは許されない…Novell/MS対策

著作物のconveyに基づいて,「あなた」が特許権者に対価を支

払うこと

「あなた」の下流の受領者に対して「差別的」な特許ライセン

スを供与していること

ただし, 2007年3月28日以前に締結された契約は対象外

差別的特許ライセンスの下での差別的特許ライセンスの下でのconveyconveyの禁止の禁止((§§1111))

convey

B

XA特許権者

特許権の行使が可能プログラム

a

C

差別的ライセンス

契約

12

「本プログラム」(the Program)の作成,使用,譲渡

の行為に対して,特許侵害訴訟の提起が禁止されている。

すなわち,GPLv3を遵守する限り,the Programについ

て無償の特許ライセンスを供与することを意味する。

“The Program” refers to any copyrightable work licensed under this License.(ただし,「あなた」がconvey

したプログラムに限られる)

「本プログラム」(the Program)の作成,使用,譲渡

の行為に対して,特許侵害訴訟の提起が禁止されている。

すなわち,GPLv3を遵守する限り,the Programについ

て無償の特許ライセンスを供与することを意味する。

“The Program” refers to any copyrightable work licensed under this License.(ただし,「あなた」がconvey

したプログラムに限られる)

特許の非係争義務(特許の非係争義務(NAPNAP)の明文化()の明文化(§§1010))

13

米国デジタルミレニアム著作権法や我が国の著作権法

などにより,技術的保護手段(コンテンツの暗号化な

ど,)が法的に保護されている(保護手段の回避が禁

止されている)。 cf. WIPO §11

しかし,DRMは,従来認められてきたユーザの権利を

制限し,ソフトウェアに関するユーザの自由を制限す

る面があるため,フリーソフトウェアの思想と相容れ

ない。

そこで,GPLv3は,DRMに関する規定を新設した。

米国デジタルミレニアム著作権法や我が国の著作権法

などにより,技術的保護手段(コンテンツの暗号化な

ど,)が法的に保護されている(保護手段の回避が禁

止されている)。 cf. WIPO §11

しかし,DRMは,従来認められてきたユーザの権利を

制限し,ソフトウェアに関するユーザの自由を制限す

る面があるため,フリーソフトウェアの思想と相容れ

ない。

そこで,GPLv3は,DRMに関する規定を新設した。

DRMDRM ((Digital Rights ManagementDigital Rights Management) ) への対処(への対処(§§33))

14

GPLv3適用プログラムは,仮に技術的保護手段として

機能するものであっても,技術的保護手段とは見なさ

れないものとする。

回避を禁止する法的権利を放棄するものとする。

回避を制限する手段として,プログラムの動作や改変

を制限しないものとする。

なお,LGPLv3を適用すれば,DRMに関する上記規定は

適用されない( LGPLv3 §1)。

GPLv3適用プログラムは,仮に技術的保護手段として

機能するものであっても,技術的保護手段とは見なさ

れないものとする。

回避を禁止する法的権利を放棄するものとする。

回避を制限する手段として,プログラムの動作や改変

を制限しないものとする。

なお,LGPLv3を適用すれば,DRMに関する上記規定は

適用されない( LGPLv3 §1)。

DRMDRM ((Digital Rights ManagementDigital Rights Management) ) への対処(への対処(§§33))

15

Tivoizationへの対抗策

Tivoization ……STB等の組込機器において,プログラムの改変

自体は可能だが,改変したプログラムの実行には認証キー等が

要求され,このキーなくしては改変ログラムをその機器で実行

できないような仕組み

プログラムをconveyした者が有するのと同等の権利を

受領者にも認めるべきとする思想と相容れないため,

GPLv3で対抗策が規定された。

Tivoizationへの対抗策

Tivoization ……STB等の組込機器において,プログラムの改変

自体は可能だが,改変したプログラムの実行には認証キー等が

要求され,このキーなくしては改変ログラムをその機器で実行

できないような仕組み

プログラムをconveyした者が有するのと同等の権利を

受領者にも認めるべきとする思想と相容れないため,

GPLv3で対抗策が規定された。

インストール用情報の開示義務(インストール用情報の開示義務(§§66))

16

GPLv3が適用されるプログラムを組み込んだユーザ製品を

譲渡(販売)する場合は,ソースコードだけでなく,イン

ストール用情報も開示しなければならない。

ユーザ製品は,個人用途の製品やセキュリティシステムな

どの住居用製品である(疑わしきは,ユーザ製品とみな

す)。

インストール用情報は,改変バージョンのインストール&

実行に必要な手法,手順,認証キー及びその他の情報のす

べてをいう。

GPLv3が適用されるプログラムを組み込んだユーザ製品を

譲渡(販売)する場合は,ソースコードだけでなく,イン

ストール用情報も開示しなければならない。

ユーザ製品は,個人用途の製品やセキュリティシステムな

どの住居用製品である(疑わしきは,ユーザ製品とみな

す)。

インストール用情報は,改変バージョンのインストール&

実行に必要な手法,手順,認証キー及びその他の情報のす

べてをいう。

インストール用情報の開示義務(インストール用情報の開示義務(§§66))

17

メーカ自身が修正版をインストールできないような場合

は,インストール用情報の開示は不要。(e.g. ROM)

改変された機器に対して,保証やアップデートを提供す

ることは不要。

改変自体がネットワークに重大な悪影響をもたらすなど

の場合には,ネットワークアクセスを拒否することが認

められる。

メーカ自身が修正版をインストールできないような場合

は,インストール用情報の開示は不要。(e.g. ROM)

改変された機器に対して,保証やアップデートを提供す

ることは不要。

改変自体がネットワークに重大な悪影響をもたらすなど

の場合には,ネットワークアクセスを拒否することが認

められる。

インストール用情報の開示義務(インストール用情報の開示義務(§§66))

18

ただし,安全性の観点からユーザが改変可能な仕様とする

ことに問題のある製品か否かという事情(cf. ガス湯沸器

の改造事件)は,考慮されない(そのような場合でも,イ

ンストール用情報の開示は必要)。

デジタルTV・携帯電話のように,電波等を用いて組込ソフ

トのアップデートを行う場合は?

インストールの手順を平易に解説することまで要求され

る?

クロスコンパイラのような特殊なツール・機材の提供も必

要?

ただし,安全性の観点からユーザが改変可能な仕様とする

ことに問題のある製品か否かという事情(cf. ガス湯沸器

の改造事件)は,考慮されない(そのような場合でも,イ

ンストール用情報の開示は必要)。

デジタルTV・携帯電話のように,電波等を用いて組込ソフ

トのアップデートを行う場合は?

インストールの手順を平易に解説することまで要求され

る?

クロスコンパイラのような特殊なツール・機材の提供も必

要?

インストール用情報の開示義務(インストール用情報の開示義務(§§66))

19

End

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