2011年8月26日 東京都院内感染対策強化事業感染症の有無や病態に関わらず...

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病棟における 院内感染対策の視点

国立国際医療研究センター感染管理認定看護師

副看護師長

窪田

志穂

2011年8月26日東京都院内感染対策強化事業

病棟における感染対策を

実施するために

感染対策の実施・標準予防策・感染経路別

病棟 ICT、ICN

環境を整える

コンサルテーション

感染症発生状況の確認と対策の指示

サーベイランス

実施状況の確認ラウンド

教育・マニュアル

環境を整える

標準予防策(Standard Precautions :SP)

感染症の有無や病態に関わらず

すべての患者に適用される感染対策で、

①血液

②すべての体液, 汗を除く分泌物, 排泄物

③損傷した皮膚

④粘膜

感染の可能性があるとみなして対応する方法

感染あり!は氷山の一角

感染なし

感染あり

感染なし

感染あり

検査陽性

感染の有無にかかわらず

標準予防策を実施できる環境が必要

標準予防策の具体的内容 (アンダー線は2007年改訂時に追加された項目)

1.

手指衛生2.

個人防護具(PPE:

Personal Protective Equipment)

3.

呼吸器衛生/咳エチケット4.

環境整備

5.

リネンの取り扱い6.

患者に使用した器具の取り扱い

7.

患者配置8.

安全な注射手技

9.

硬膜外や脊椎穿刺時のマスク10.

職員の安全

参考:矢野

邦夫他訳、編.医療現場における隔離予防策のためのCDCガイドライン,メディカ出版,2007年

手指衛生

流水と石鹸による手洗い

速乾性手指消毒剤(サニサーラ)による手指消毒

手が目に見えて汚染している(血液・体液等)場合

アルコールに抵抗性のある微生物(CD・ノロウイルスなど)の場合

手が目に見えて汚染してない場合

殺菌効果が高い・保湿剤による皮膚保護効果手技が簡便

手指衛生のタイミング

• 患者に触れる前後(診察、バイタル測定など)

• 処置の前後(ガーゼ交換、ライン挿入、点滴ライン

作成時など)

• 同一患者でも不潔から清潔へ処置の内容変わるとき

(陰部洗浄→新しいオムツの装着

マウスケア→気管内吸引など)

• 防護具(手袋やエプロンなど)をはずした後

など

手指衛生実施の環境つくり

病室洗面台

点滴準備台

病室入口

携帯用

その他、移動用パソコンワゴン、汚物室など手指衛生が必要な場所に手指消毒剤等を設置

ナースステーション入口

洗面台

手指衛生 手袋 サージカルマスク ゴーグル

ビニールエプロン

または

ガウン

個人防護具 (PPE:

PersonalProtectiveEquipment)

PPE選択の考え方

目、口腔粘膜が汚れそうな時

手が汚れそうな時

皮膚、衣服が汚れそうな時

手指衛生

手袋

ビニールエプロンガウン

マスクゴーグル

触れた時

<対象 物>

血液体液

排泄物喀痰

浸出液粘膜

損傷した皮膚

防護具の選択内容例

○必ず使用

△飛散の範囲に応じて使用

処置 手袋サージカルマスク

N95 エプロンガウ

ンゴーグ

ルキャップ

検温 × × × × × × ×

口腔ケア ○ ○ ○ △

陰部洗浄 ○ ○ △

尿廃棄 ○ ○ △

気管内吸引 ○ ○ ○ ○ ○

採血 ○

気管内挿管 ○ ○△

*1△ ○ ○

CV挿入○

滅菌○ × ×

○滅菌

× ○

腰椎穿刺 ○ ○ ○ ○ △

器材の洗浄

○ ○ ○ ○○

中材○

中材

*1

結核が疑われる場合に使用

防護具の使用

防護用具用の収納スペース

洗面台周囲は濡れ防護具が汚染するため

直におかない

接触感染予防の目的で防護具を使用す

る場合は病室カーテン内に入る前に着用し病室カーテン外に出る前に脱ぐ

防護具を脱ぐ順番

• 汚染度の高いものから脱ぐ

①手袋→②ガウン→③ゴーグル→④マスク

• 汚染部位(前面)を

触らないように脱ぐ

• 脱いだ後は手指衛生

環境整備:ベッド周囲

●清掃を行いやすくするためにも不要なものは片付け整理整頓

●防護具は汚染しない位置に置く

環境整備

●手の高頻度接触面(床頭台・オーバーテーブル・ベッド柵・ドアノブ・蛇口の取手・ナースコール・リモコン等)は、1日1回以上、水また

は洗浄剤を使用して拭き取り清掃する.●ただし、耐性菌患者(MRSA・多剤耐性緑

膿菌・VREなど)は、ショードックで拭き取り

消毒する.

●ベッド上の汚れは、粘着クリーナーなどで埃を舞い上げないように清掃する.

●床清掃の妨げにならないよう床に不要なものを置かない.

●医療機器のコード類なども整理し、なるべく床を這わないようにする.

病室洗面台

洗面台周囲は湿潤しており緑膿菌などが繁殖しやすい

洗面台周囲には不必要なものは置かず清掃や乾燥をしやすいように整理する

環境整備:汚物室

洗浄後

ベッドパンウォッシャー:85度1

尿器の下に

防護具などの

清潔物品を

置かない

高頻度接触面は

定期的に清掃

スポンジはシンクと器材用を区別定期的に交換(最長1回/2W)

清潔、不潔の区分け

• 交差感染の要因となるため

ワゴンは清潔・不潔のものを混在させない

上段清潔⇒

下段不潔⇒×

清潔、不潔エリアの区分け(ゾーニング)

準備作業室:清潔エリア患者に使用した物は

持ち込まない

処置室、汚物室:不潔エリア患者に使用した物を

廃棄する場所

エリアの区分けを行い

清潔エリアの汚染と交差感染を防ぐ

使用済みリネンや器材の取り扱い

持ち運ばず使用後速やかにカートへ入れる

(80℃

10分で洗濯)

清潔リネン

職員の曝露等を予防するためにも病棟での一次消毒は行わず中央材料室

使用済みの器材

実施状況の確認 ラウンド

病棟ラウンド(環境調査・行動調査)

・交差感染の原因とならないよう院内の環境を整える

・定期的にラウンドすることで、環境を維持する

・スタッフの感染管理への認識を高める

・院内感染防止策(院内感染対策ハンドブック・手順書等の マニュアル)の浸透と遵守状況の確認

・各部署の問題点の明確化および改善策の提示を行う

目的目的

ICTラウンドチェックリスト《部署:

》【 チェック5段階評価:評価表を参照】Ⅰ.院内の環境(基準:交差感染の原因とならないよう整備されている)

《実施日》H

《評価担当者》

1.ナースステーション チェック 理由・備考

1 室内が整理整頓され、清掃がいきとどいている*清掃の邪魔になる物品が置かれていない*埃など目に見える汚れがない

2 手洗い場に液体洗剤・ペーパータオルが設置されている*液体洗剤に開封日が記載されている

3 手洗い場・シンク周りが汚れていない*不要なものが置かれていない・目に見える汚れがない*シンク周りに清潔なものを放置していない

4 点滴準備台の上が汚れていない*不要なものが置かれていない・目に見える汚れがない*点滴準備台上部に埃がない*点滴混注作業の前にショードックで拭き取りしている*点滴準備台に設置されている針ボックスは、点滴混注専用である(患者使用後の針が入ったものは不潔なため設置場所を検討する)

病棟ラウンドチェックリスト (環境調査Ⅰ~Ⅳ・行動調査Ⅴ)

感染症発生状況の確認 ・サーベイランス ・対策の指示

報告体制と対応耐性菌等の発生

<報告対象例>

MRSA、VRSA、PRSP(PISP)、

VRE、ESBL

多剤耐性緑膿菌(2剤以上)

メタロβラクタマーゼ産生グラ

ム陰性桿菌、

セラチア、レジオネラ

クロストリジウムディフィシル

など

報告方法 対応

①医師が報告書を記載

②リンクナース(師長)を通じ

ICNへ報告書を提出する

ICN(必要時ICD)が

病棟へラウンドし

管理状況の確認と対策の指示を行う

報告書類

院内感染関連報告書

(院内感染対策ハンドブック)

一般病棟で結核の発生

報告方法 対応

「結核(疑い)患者発生」

チャート参照必要時接触者調査

報告書類

結核患者発生報告書

(院内感染対策ハンドブック)

院内で隔離が必要な感染症患者(疑い患者を含む)が 発生した場合の個室等使用指針

2010.8.14

感染経路別疾患例(疑い患者を含む) 新病棟での基準

空気感染麻疹,水痘(播種性帯状疱疹を含む)

肺結核は別紙

1.

6階東(小児),8および9階東西病棟

(成人)の陰圧個室2.

発生病棟の陽圧でない個室

飛沫感染インフルエンザ,ムンプスなど

1.

発生病棟の陽圧でない個室

2.

発生病棟でのコホート(集団隔離)

接触感染ウイルス性胃腸炎,抗菌薬耐性菌など

1.

発生病棟の個室

2.

発生病棟でのコホート(集団隔離)

数字は優先順位を示す.

院内感染防止委員会

感染経路別予防策の具体策感染経路 防護用具 主な対象疾患(病原体)

空気感染予防策

飛沫核を空気中を漂い伝播する

N95マスク(麻疹、水痘は免疫の

ない場合)

*陰圧個室へ隔離が

必要

結核、麻疹、水痘

飛沫感染予防策咳、くしゃみなど

で飛沫が伝播

サージカルマスクゴーグル

*個室が望ましい* ベ ッ ド 間 を 1 m 離 し

カーテン隔離

インフルエンザ、風疹ムンプス、アデノウイルス

百日咳、髄膜菌など

接触感染予防策

直接、間接接触

で伝播

手袋ガウンビニールエプロン

*個室が望ましい

多剤耐性菌(MRSA,MDRP、VRE、ESBLなど)

クロストリジウムディフィシルノロウイルス、帯状疱疹など

サーベイランス結果から 介入した事例

MRSAアウトブレイクへの介入~サーベイランスデータを用いて~

A病棟 MRSA月別検出数

0

1

2

3

4

5

6

7

8

4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5

2009 2010

新規 合計

A病棟から分離されたMRSAの遺伝子解析 結果報告

平成22年5月25日ICT報告

感染症制御研究部

M 1 2 3 4 5 6 M

患者 検体採取日

1,5 A 2010/×/×,

2010/×/○

3 C 2010/×/×

6 E 2010/×/×

4 D 2010/×/×

2 B 2010/5/×

97%

ID 患者

検体採取日

検体1 A 2010/X/X 吸引誘発痰2 B 2010/X/X 喀出痰3 C 2010/X/X 喀出痰4 D 2010/X/X 創傷部開放膿5 A 2010/×/○

吸引誘発痰6 E 2010/X/X 吸引誘発痰

検体 科 年齢 性別 看護 吸引 ネブ 尿カ

テオム

ツ経管

栄養

MRS A薬

1 痰 腎 88 M A ○ ○ ○ ○ ○ ×

2 痰 腎 81 M A ○ ○ × ○ ○ ○

3 痰 循 94 M A ○ ○ ○ ○ × ×

4 便 消 97 F A ○ ○ ○ ○ × ×

5 便 心外 83 M A × × ○ ○ × ×

6 便 腎 89 F A ○ ○ ○ ○ ○ ○

7 痰 外科 86 M A ○ ○ × × × ×

8

対照

腎 78 F B × × × ○ ×

9 腎 74 F B × × × × ×

10 腎 68 M B × × × × ×

11 腎 82 F B × × × ○ ×

12 腎 81 F B × × × ○ ×

13 腎 85 M B × × ○ ○ ×

MRSA

Case-Control

ケア要因

対策

対策

接触予防策・手指消毒の徹底

ネブライザー使用の制限

環境整備

手指消毒剤使用量サーベイランス

1人の患者に1日に行われた手指消毒の回数

期間中の使用量

÷

1ml

期間中の延べ患者数

(サニサーラの

適正使用量)

手指衛生キャンペーン

マニュアル 教育

●施設の状況に合わせて作成

●改訂

ガイドライン等最新情報や

サーベイランスやラウンド結果などで

対策の評価を行い

改訂へ繋げる

感染対策マニュアルの作成と改訂

感染対策マニュアル

使用前

使用後

【防護具】

手袋、ビニールエプロンまたはガウン【手袋交換のタイミング】新しいおむつに触れる前【陰部洗浄のポイント】●陰部洗浄ボトルなどの物品は患者一人ごとに使用する.●大腸菌などによる尿路感染を防ぐために,陰部は前部

から後部に向けて洗浄する.(拭き取る時も同様)●石けんの残留は,皮膚の自浄作用を低下させるおそれ

があるため,充分に洗い流す.●使用した洗浄ボトルは外側が汚染されている場合があ

るため,オーバーテーブルや床頭台,ベッド上には置かずワゴンに下段に置く.

●汚染した紙おむつは,直ちにビニール袋に入れるなどをして他を汚染しないよう所定の場所まで持ち運び捨てる.

●使用した陰部洗浄ボトルは耐性菌(MRSA・多剤耐性緑膿菌・CD)対策のため,ベッドパンウォッシャーにかける.

●使用後のワゴンはショードックで拭く.

陰部洗浄

イントラネットを活用した情報提供

開催日 演題名

平成23年

7月11、19、25日適切な感染症診療から抗菌薬適正使用へ

平成23年11月 院内の耐性菌検出状況と対策

平成23年4月19日

スタンダードプリコーション

職務感染防止(針刺し・ワクチン接種・結核対策)

5月17日● 耐性菌

(MRSA・MDRP・Clostridium difficile)の感染対策

● 環境整備

6月21日 ●

血管内カテーテル留置時の感染防止技術

9月20日 ●

尿路カテーテル留置時の感染防止技術

10月18日●

感染性胃腸炎(ノロ・ロタウイルス)対策

インフルエンザ対策

7月22日●

人工呼吸器関連肺炎の感染防止技術

(重症ケア認定と合同開催)

全職員対象:感染対策研修

看護師対象:感染管理勉強会

病棟における感染対策を

実施するために

感染対策の実施・標準予防策・感染経路別

病棟 ICT、ICN

環境を整える

コンサルテーション

感染症発生状況の確認と対策の指示

サーベイランス

実施状況の確認ラウンド

教育・マニュアル

継続して実施する環境や体制が必要

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