『平成30年度中国地域中小企業 (地域資源・食品分野)の海外展開に係る...

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『平成30年度中国地域中小企業

(地域資源・食品分野)の海外展開に係る

ブランド構築支援事業』

報告書

平成 31 年 2 月

経済産業省中国経済産業局

【報告書本編】

目次 第1章 事業の実施方針 ....................................................................................................... 1

1. 事業実施の基本方針等

(1)事業の趣旨と目的 ................................................................................................ 1

(2)事業実施の基本方針 ............................................................................................ 2

(3)事業展開フロー ................................................................................................... 3

第2章 海外市場におけるマーケティング調査 ................................................................... 4

1. 海外市場におけるマーケティング調査の実施概要

(1)マーケティング調査の目的.................................................................................. 4

(2)マーケティング調査の概要.................................................................................. 4

(3)マーケティング調査を実施する商品の募集 ......................................................... 5

(4)マーケティング調査を実施する商品の選定 ......................................................... 6

(5)マーケティング調査の実施................................................................................ 11

(6)マーケティング調査結果 ................................................................................... 12

第3章 セミナー開催 ........................................................................................................ 19

1. セミナーの開催概要

(1)セミナー開催の目的 .......................................................................................... 19

(2)セミナーの概要 ................................................................................................. 19

2. セミナー開催の広報展開

(1)広報展開 ............................................................................................................ 23

3. セミナー開催結果

(1)セミナー開催結果 .............................................................................................. 30

第4章 個別企業訪問指導 ................................................................................................. 41

1. 個別企業訪問指導の概要

(1)個別企業訪問指導の目的 ................................................................................... 41

(2)個別企業訪問指導の概要 ................................................................................... 41

(3)個別企業訪問指導の体制 ................................................................................... 41

2. 企業訪問対象企業の選定

(1)企業訪問対象企業と選定理由 ............................................................................ 42

3. 個別企業訪問指導の実施

(1)第 1 回訪問の実施概要 ...................................................................................... 45

(2)第 2 回訪問の実施概要 ...................................................................................... 51

第5章 本事業のまとめ ..................................................................................................... 61

(1)海外市場マーケティング調査(再掲) .............................................................. 61

(2)セミナー開催を通じた参加者への意識啓発(再掲) ......................................... 64

(3)海外展開を希望する事業者(3 社)の商品ブラッシュアップ機会への知的財産活

用促進 .......................................................................................................................... 67

1

第1章 事業の実施方針

1. 事業実施の基本方針等

(1)事業の趣旨と目的

①本事業の背景

日本政府は欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉の妥結の確認後、平成 30 年7

月に署名し、平成 31 年 2 月 1 日に発効した。本協定では、地理的表示(GI)を認め合う仕

組みが合意されるなど、ブランドを保護することで地域産品の評価を高め日本から EU への

輸出に弾みがつくことが期待される。このように、ブランドの重要性が改めて認識される中、

中小企業がブランド構築を実現し、海外販路開拓を行うための支援が求められている。

中国地域においては、伝統工芸品等の地場産業や農林水産物等を活用した食品産業が数多

く存在していることから、中国経済産業局としても地域資源や食品分野への支援、具体的に

は、地域産品(伝統工芸品、食品等)の付加価値向上を図るとともに、知的財産制度による

権利保護等の知的財産活用を通じた普及啓発を積極的に行っているところである。

②本事業の目的と業務

本事業は、こうした政策的背景を踏まえ、ブランド構築の専門家を講師としたセミナー開

催や個別指導を行い、知的財産活用を意識したブランド構築による付加価値向上への理解を

促し、海外販路開拓・拡大を図ることを目的として実施した。

なお、地域知財活性化行動計画「都道府県の特色を踏まえた平成 31 年度までの目標」の

うち、広島県においては、「海外での知財取得の重要性とリスク、販路拡大のための事前準備

等のセミナー」開催について明記されていることから、本事業のセミナーを広島市にて開催

した。

■事業の趣旨と目的

2

(2)事業実施の基本方針

①本事業の基本方針

本事業の実施にあたっては、【中国地域の地域産品製造中小企業】を対象に、【地域資源活

用型商品】の海外展開に向けたブランド化を図るため、「①海外展開に向けた知的財産を活か

したブランド価値向上」及び「②中国地域商品の地域特性・企業技術等を活かしたブランド

化ブラッシュアップ」を重視して事業を実施した。

その上で、上記2つの方針を具体的に展開する上での知見やネットワークを有する専門家

の指導を仰ぐこととした。

②基本方針の事業への展開ポイント

本事業の基本方針に基づき、以下のとおり事業への展開ポイントを設定した。

【事業への展開ポイント】

⚫ 海外市場におけるマーケティング調査

➢ エントリー企業の知的財産活用を見据えたブランド化の取り組み

➢ EU(パリ・ローマ)における知的財産を活かしたブランド化の可能性把握

⚫ セミナー開催

➢ 知的財産活用による海外展開戦略についてのレクチャー

➢ EU(パリ・ローマ)における知的財産を活かしたブランド化の可能性の報告

⚫ セミナー開催

➢ ブラッシュアップ・カフェでの企業プレゼンテーション及び参加者意見交換

➢ 専門家による知的財産活用及び海外展開に向けたパッケージデザイン方向性指導

⚫ 個別企業訪問指導

➢ デザイン専門家によるブラッシュアップ(デザインラフ案の提示)

① 海外展開に向けた知的財産を活かしたブランド価値向上

② 中国地域商品の地域特性・企業技術等を活かしたブランド化ブラッシュアップ

3

(3)事業展開フロー

調査実施の基本方針に基づき下記の事業を実施した。なお、事業ごとに基本方針を反映さ

せるため、表のとおりの反映ポイントを設定した。

4

第2章 海外市場におけるマーケティング調査

1. 海外市場におけるマーケティング調査の実施概要

(1)マーケティング調査の目的

EU 地域内のバイヤーやジャーナリスト等から、現地に持ち込む商品(内容・パッケージ

デザイン等)について意見をヒアリングし、中国地域内事業者にフィードバックすることで、

EU 地域内への販路開拓・拡大の実現可能性を検証すること、及び EU ではどのような日本

商品がすでに人気で受け入れられているのかを調査することを目的として実施した。

(2)マーケティング調査の概要

実施日程 2018 年 11 月 18 日~11 月 23 日

実施場所 フランス・パリ

イタリア・ローマ

実施者

平田務 経済産業省 中国経済産業局 産業部 国際課 通商係長

手島麻紀子 株式会社彩食絢美 代表取締役社長

谷口涼 株式会社シーズ総合政策研究所 ディレクター

対象者

(パリ)

1 ジャーナリスト/ガストロノミ―評論家

2 UMAMI (日本食材商社・ショップ&カフェ)バイヤー担当

3 株式会社パソナ農援隊(パリ) (日本食材プロモーター)

(ローマ)

4 Bar Portoghese (飲食店・バール)経営者・店長

5 Sushi Sushi Store (日本食材セレクトショップ)CIPRO 店 店長

6 GOURMET LINE (日本食材商社)副社長・マーケティング部長

スケジュー

1 主催者挨拶・趣旨説明

2 アイスブレイク(自己紹介)

3 スケジュールの説明

4 ヒアリング調査

5 持ち帰り商品(へるしいたけ・玄米麺)の意見フィードバック依頼

5

(3)マーケティング調査を実施する商品の募集

募集期間 2018 年 9 月 5 日~9 月 28 日

募集方法

チラシの配布の他、関係団体等への声かけ依頼し、メール・Fax で応募を受

け付けた。

(チラシは以下のとおり)

募集結果 26 事業者からの応募があった。

6

(4)マーケティング調査を実施する商品の選定

商品の選定にあたっては、以下の前提で行った。

⚫ 中国地域 5 県からそれぞれ 1 商品以上、全 10 商品程度を選定

⚫ ヒアリングで効果的に意見を得られるバランスのよい商品ラインアップ(類似商品との

比較可能性等を配慮)

⚫ 欧州への輸出に関する専門家の知見を踏まえた絞り込み

そのうえで、以下の考え方で総合的に評価を行い、商品の選定を行った。

⚫ 「海外(EU)への販路開拓・拡大が見込める(食品分野の)商品」であることから、す

でに海外展開を進めている商品であること

⚫ 「知的財産活用を意識したブランド構築による付加価値向上」に意識した商品設計をし

ていること(ミクロ的視点)

➢ 「知的財産権(特許権(物・方法・物の生産方法)、実用新案権、意匠権、知的財産

権、著作権)」を取得・出願・検討している商品

⚫ 現時点で販売実績があるわけではないが、専門家の知見から現地への販売可能性が比較

的高いと思われる商品と生産・輸出体制(総合的視点)

➢ 地域で一貫した生産体制整っている

➢ 商品コンセプトがわかりやすく、ストーリーがある

➢ 海外展開を進められる組織体制と基盤が整っている

➢ その他(総合的な知見、海外デザインとして評価など)

7

以上の考え方のもと選定を行った結果、26 事業者からの応募商品の中から 12 事業者の商

品を選定した。選定した商品は以下の通り。

【酒】

合同会社清水川(鳥取県南部町)

<事業者概要>

設立年:2018 年

代表者:代表社員 庄倉 三保子

事業内容:主食用米と飼料用米の生産販売

従業員:8 名

<商品の特徴>

出雲大社主祭神「大国主命」の復活蘇生伝説のある「清

水井」の水で栽培した古代米(黒米・サヨムラサキ)を使

用。淡いピンク色が特徴で、女性好みのフルーティーな味

わい。

「比賣神乃雫」

室町酒造㈱(岡山県赤磐市)

<事業者概要>

設立年:1688 年

代表者:代表取締役 花房 満

事業内容:清酒及び焼酎・リキュールの製造、販売

従業員:10 名

<商品の特徴>

日本で最も高価な酒米の原型種「雄町米」と日本の名水

百選「雄町の冷泉」で醸した酒。白ワインのような甘い香

りと豊かな味わい。

2014 年ロサンゼルス国際酒類コンテストで金賞。

「櫻室町純米吟醸左近レアル」

㈱今田酒造本店(広島県東広島市)

<事業者概要>

設立年:1868 年

代表者:代表取締役 今田 美穂

事業内容:清酒の醸造と販売

従業員:9 名

<商品の特徴>

100 年以上栽培されていなかった広島県最古の酒米「八

反草」を復活栽培した、広島らしい吟醸酒。旨みたっぷり

であるが、見事なまでにスカッと切れるあと口が特徴。

2018 年フランス KURA MASTER 最高位プラチナ賞。

「富久長 純米吟醸八反草」

8

【茶】

㈱田頭茶店(広島県呉市)

<事業者概要>

設立年:1930 年

代表者:代表取締役 吉長 邑彩

事業内容:日本茶の製造、販売、茶道具販売

従業員:20 名

<商品の特徴>

広島県三原市産のハトムギを使用。ハトムギに含まれる

成分ヨクイニンは美肌効果等がある古くから使用される

漢方薬。深蒸し茶ならではの芳醇な香りと深緑な色があ

り、コクのある味が特徴。

「はと麦茶」

㈲セカンドグリッド(広島県尾道市)

<事業者概要>

設立年:1975 年

代表者:代表取締役 溝口 義揮

事業内容:日本茶・健康茶等の卸・小売

従業員:2 名

<商品の特徴>

古くから不老長寿の漢方薬として使用され、完全無農薬

栽培された瀬戸内産の杜仲の葉(村上海賊の想いを受け継

ぐ尾道因島の造船マンにより栽培開始)を加工したカフェ

インフリーの日本茶。年中穏やかな潮風に育まれ、ほのか

な甘みが特徴。

「日本茶」(杜仲茶)

【その他食品】

合同会社宮内舎(島根県雲南市)

<事業者概要>

設立年:2016 年

代表者:代表社員 小倉 健太郎

事業内容:農産品の販売、農園の委託生産、

商品企画・開発、レシピ開発など

従業員:3 名

<商品の特徴>

島根県雲南市の山から注ぎ込むミネラルたっぷりの水

で育てられたお米を使用した、焙煎玄米の麺。小麦を全く

使用しないグルテンフリーの麺で、小麦アレルギーの方も

食べられる。

「玄米麺」

9

㈲イタリー亭(広島県広島市)

<事業者概要>

設立年:1974 年

代表者:代表取締役 大門 洋三

事業内容:洋菓子製造販売、イタリアンレストラン経営

従業員:40 名

<商品の特徴>

防カビ剤・ワックス未使用のため皮も安心して食べられ

る、広島県瀬戸田町産エコレモンのみを使用したケーキ。

日本一の生産量を誇る瀬戸田町のレモンの美味しさを丸

ごと楽しめる。

第 26 回全国菓子大博覧会・広島にて中小企業庁長官賞。

「またきて四角」

㈲土井酒店(広島県呉市)

<事業者概要>

設立年:1984 年

代表者:代表取締役 土井 保

事業内容:酒類販売、水産物加工、工芸農作物

農業、菓子製造

従業員:9 名

<商品の特徴>

瀬戸内沿岸地域では、昔から精進料理に海藻が使用され

ていたことから開発。添加物・砂糖不使用で離乳・妊産婦

に好評を博し、オーガニック市場でも人気。

「添加物と砂糖を使わない海藻

ゼリー」

菌興椎茸協同組合(鳥取県鳥取市)

<事業者概要>

設立年:1952 年

代表者:代表理事 組合長 下田 秀一

事業内容:原木栽培しいたけの生産・商品開発

従業員:95 名

<商品の特徴>

日本の出汁文化において、かつお節や昆布と共に三代旨

味成分の 1つとなる食材。鳥取県産しいたけのみを使用し、

安心・安全にこだわっている。

「へるしいたけ」

ふるさと萩食品協同組合(山口県萩市)

<事業者概要>

設立年:1999 年

代表者:代表理事 大嶋 正之

事業内容:食品販売共同店舗の運営、食品小売

従業員:17 名

<商品の特徴>

山口県萩産の小イカをキャノーラ油、ブランデー、フラ

イドオニオンと唐辛子等で調味。お酒、パスタやサラダに

合うピリ辛の濃厚な味。

2012 年水産庁ファストフィッシュ認定。

「いかたっぷり XO 醤」

10

【食品以外】

MOMONO TRADING(岡山県岡山市)

<事業者概要>

設立年:2016 年

代表者:代表 東山 裕子

事業内容:い草のコースター、ランチョンマット、

備前焼の製造・販売

従業員:1 名

<商品の特徴>

伝統素材のい草を用い、カラフルでモダンなデザイン性

と機能性を兼ねた日用商品。目が細かく滑らかな手触りが

特徴。

「IGUSA PRODUCTS」

コンテンツ㈱(岡山県岡山市)

<事業者概要>

設立年:1998 年

代表者:代表取締役 小野 博

事業内容:博物館・美術館・図書館等の所蔵品の

研究用高精細デジタル画像データの作成、印刷

従業員:6 名

<商品の特徴>

文化財(絵図や屏風等)を柄としてデジタルに変更した

アーカイブデータを、純国産のシルククレープ生地(絹

100%)に出力。

「風神雷神図ストール」

11

(5)マーケティング調査の実施

現地でのマーケティング調査では、バイヤーやインフルエンサー、消費者等へのヒアリン

グのほか、現地で日本関連商品を扱う商店等の販売状況調査を行った。スケジュールは以下

の通り。

日程 調査スケジュール

11 月 18 日

(日)

日本→パリへ移動

11 月 19 日

(月)

マーケティング調査(UMAMI バイヤー担当)

販売状況調査 @Maison Plisson(食材のセレクトショップ)

マーケティング調査(ジャーナリスト)

販売状況調査 @Maison Wa(日本商品の委託販売ショップ)

@Discover Japan(日本各地の企画展等の開催拠点)

@Izakaya Isse(日本食料理店)

11 月 20 日

(火)

販売状況調査 @UMAMI Matcha Café(日本食材のショップ&カフェ)

マーケティング調査(株式会社パソナ農援隊(パリ))

パリ→ローマへ移動

11 月 21 日

(水)

販売状況調査 @Sushi Sushi Store CIPRO 店(日本食材セレクトショップ)

マーケティング調査(Bar Portoghese 経営者・店長)

(Sushi Sushi Store 店長)

販売状況調査 @Antichi Kimono(日本インスパイア―ドショップ)

@Te e Teiere(日本茶や茶器を扱うお茶セレクトショップ)

@Castroni(食材のセレクトショップ)

@Tora(日本食料理店)

11 月 22 日

(木)

販売状況調査 @三越ローマ店(日本資本のデパート)

マーケティング調査(GOURMET LINE)

ローマ→日本へ移動

11 月 23 日

(金)

日本到着

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(6)マーケティング調査結果

調査においては、主に「商品について」「パッケージについて」「価格について」「その他」

の観点でヒアリングを実施した。各商品に関する主な調査結果は以下の通りである。

【酒に関する調査結果】

(合同会社清水川「比賣神乃雫」、室町酒造株式会社「櫻室町純米吟醸左近レアル」、株式会

社今田酒造本店「富久長 純米吟醸八反草」)

⚫ 商品について

➢ (パリ)まずは味が良いことが重要で、ストーリーはその次にくる。その一方で、

ストーリーがあるとソムリエが話をふくらませやすいため、より興味を持たれるか

もしれないし、プロモーションの際にはメリットになる。

➢ (パリ)米にこだわっても、日本酒を選ぶ際に米の種類は意識しないし、そもそも

知らない。米の種類による違いは食のジャーナリストでもわかりづらい

⚫ パッケージについて

➢ (パリ)日本酒は男性が買うことが多いので、女性的なパッケージは現時点ではマ

イナスイメージとなる。

➢ (ローマ)女性なパッケージであることはマイナスにはならない。

➢ (ローマ)一般的な 180ML 瓶は、イタリアでは 80 年代にあった劣悪な酒の形に見

えるので、あまりほしいとは思わない。

➢ (パリ・ローマ)読めなくても書(墨文字)が受ける。書体でも金色で書くと中国

酒に見えるので要注意。日本は自然の雰囲気を持っているので、そのような色味の

方が良い。

⚫ 価格について

➢ (パリ)720ML 瓶だと仕入れ価格が 1000 円を切るものが一般的。

➢ (パリ)300ML 瓶が小売りでは一番よく売れる。

➢ (パリ)180ML 瓶の商品も 1 種類仕入れていて、小売店ではよく売れる。

➢ (パリ)輸入コストが乗った価格(小売りの場合日本の小売り価格の 3 倍程度)で

売られる商品を選ぶ際に、その価格帯で買えるワインをイメージして比較する。

⚫ その他

➢ (パリ)日本酒はすでに流通しているので、レストランに卸す際に、既に入ってい

るものと置き換えるレベルの個性がないと難しい。その判断基準はソムリエの好み

による。

➢ (パリ)岩手の日本酒 AKABU(赤武)は武士の絵が印字されており、インパクト

が残るラベル。パリのメゾンドサケで、赤いボトルもクリスマス商戦の時期にもマ

ッチして、プレゼント用として売れた。

➢ (ローマ)日本好きな人へプレゼントや、お寿司パーティーなどの用途・場面で購

入している。

➢ (ローマ)売り方がいちばん重要で、日本酒の知識を持ち、売れる・勧める人材が

必要。一般に現地の日本食レストランは中国人が経営しており日本酒の知識があま

りないので、日本酒について説明できないといけない。

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【茶に関する調査結果】

(株式会社田頭茶店「はと麦茶」、有限会社セカンドグリッド「日本茶(杜仲茶)」)

⚫ 商品について

➢ (パリ)すでにかなり多品目のお茶が入ってきているが、ハト麦茶・杜仲茶などは

まだあまり取り扱われていない。

➢ (パリ)日本のハーブティーとして、ノンカフェとして紹介できるが、インパクト

がない。抹茶のように飲む以外の用途があるほうが広がると思う。

➢ (ローマ)はと麦茶は子供のときに飲まさせられた「オルゾコーヒー」(麦コーヒー)

に似ており、イタリア人にはあまりうけない。馴染みもないので敬遠してしまう。

➢ (ローマ)売るのであれば、「BIO 商品」として、普通のお茶とは違う売り方が必

要。

⚫ パッケージについて

➢ (パリ・ローマ)はと麦茶は、お茶の効果(美肌など)があるのであれば、しっか

りとわかりやすくパッケージで伝える必要がある。杜仲茶はカフェインフリーであ

ることがパッケージでわかるようにするとよい。

➢ (パリ・ローマ)日本らしさがあるとよい。

➢ (パリ)ティーバッグがネットのものを使用しているが漂泊していない紙の方がよ

い。フランス人は素材、人工的なものを気にする。

⚫ 価格について

➢ (パリ・ローマ)同じ商品でも、パリで「安い、検討可能」という商品の価格帯で

も、ローマでは「現地価格を考えると高い」ということもある。

➢ (ローマ)高価格帯の商品でも、ティーショップのような専門店で売れば可能性が

ある。

⚫ その他

➢ (パリ)いちばんよく売れるのは抹茶、次に玄米茶。

➢ (パリ・ローマ)賞味期限 1 年では短い。注文してから届くまで 2~3 か月かかり、

その後 EU の他の国に輸出するとさらに時間がかかる。卸業者は残り 6 か月ないと

買わない。賞味期限は 18 か月~2 年あればよい。賞味期限が 1 年のものもあるが、

18 か月から 2 年のものが大半。

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【その他食品に関する調査結果】

(合同会社宮内舎「玄米麺」、有限会社イタリー亭「またきて四角」、有限会社土井酒店「添

加物と砂糖を使わない海藻ゼリー」、菌興椎茸協同組合「へるしいたけ」、ふるさと萩食品協

同組合「いかたっぷり XO 醤」)

⚫ 商品について

➢ (パリ)「玄米麺」について、日本の麺はラーメンやうどんなどが認知されており、

親近感を持たれている。

➢ (パリ)グルテンフリーははやりなので売りになるが、かなり輸入されているのも

事実。

➢ (パリ・ローマ)「またきて四角」は、現地で類似品がたくさんあり、パティシエも

沢山いるので、わざわざ日本から買うことにはならない。その一方で、スイーツで

も日本商品の軽やかさを演出し、フィンガーフードのようなつまめるスイーツにで

きると日本らしさが出る。

➢ (パリ・ローマ)「添加物と砂糖を使わない海藻ゼリー」は、現地ではコンポートが

流通しているし、シェフは自前で作ってしまうため、なかなか扱いづらい。

➢ (パリ・ローマ)出汁用の干椎茸について、シェフからの要望で仕入れている。植

物性のダシのニーズがある。その一方で、昆布ダシに比べると、需要が少ない。

➢ (パリ・ローマ)「いかたっぷり XO 醤」などの水産加工物については、商品の形状

によってできることもあるが、EU 輸入は非常に厳しいのが実情。日本語で書かれ

ていても中国製の練り物だったり、ベトナム製だったりする。

➢ (パリ・ローマ)全商品について、賞味期限 1 年未満では短すぎる。注文してから

届くまで 2~3 か月かかり、その後 EU の他の国に輸出するとさらに時間がかかる。

卸業者は残り 6 か月ないと買わない。賞味期限は 18 か月~2 年あればよい。賞味期

限が 1 年のものもあるが、18 か月から 2 年のものが大半。

➢ (ローマ)日本産の卵や乳製品などを利用していると EU 規定で輸入できない。日

本メーカーのマヨネーズを輸入する際には、アメリカ産の卵を使用した商品を輸入

している。

➢ (ローマ)消費者が日本食材店で日本のお菓子を選ぶ際には日本らしいもの(大福

等)を選ぶので、バイヤー目線では手を出せない。

⚫ パッケージについて

➢ (パリ・ローマ)全商品について、商品の特徴・売りになる要素(例えばグルテン

フリーや非動物性、健康配慮食品など)は明記しないと見分けられないのでそれを

記載したほうが良い。

➢ (ローマ)現地の比較対象となる商品と比べ高価格帯になるものは、小売店で販売

する場合は、ビニール袋だと安く見えるので、紙などの箱にするとよい。

➢ (パリ)海外向けのパッケージ商品を扱っていないので、日本で流通しているまま

で問題ない。後ろの商品説明ラベルをフランス語版にして張り替えている。下手に

英語表記にしない方がよい。

➢ (パリ・ローマ)全商品について、日本的なロゴ・ラベルはそのままの方がよい。

⚫ 価格について

➢ (パリ・ローマ)全商品について、類似の現地商品や中国商品があり価格差がある

場合、値段の違いは何なのかをアピールする要素がなければ難しい。

⚫ その他

➢ (ローマ)食品については、日本食品の商社の日本からの仕入れのほとんどがシェ

フからの問い合わせで注文に至ったもので、確実な出口・需要があるものである。

15

そのため、完成している商品は、普段どのように販売するかなかなかイメージでき

ない。

➢ (パリ・ローマ)日本食材ではユズが非常に人気である。

【食品以外の商品に関する調査結果】

(MOMONO TRADING 「IGUSA PRODUCTS」、コンテンツ株式会社 「風神雷神図ス

トール」)

⚫ 商品について

「IGUSA PRODUCTS」について

➢ (パリ・ローマ)類似商品が現地にあると売れづらい。いくらよい自然素材のもの

であっても、一般消費者にそうでないものとの違いを見分けられない。

➢ (ローマ)よい作り方をしているのであれば、その作り方は紹介したほうがよい。

➢ (ローマ)一部の消費者がほしいと思う商品であっても、仕入れる立場のバイヤー

は別の見方をすることもある。

「風神雷神図ストール」について

➢ (パリ・ローマ)ストールとして作った商品でも、「室内の装飾品」としてニーズの

方が高かった。

➢ (パリ・ローマ)日本商品が他のアジア商品のように見えてしまう差は紙一重であ

る。そうさせないための一工夫が必要である。

➢ (パリ・ローマ)日本らしさが出すぎてしまうと身に着けるものとしては使いづら

くなる。

⚫ パッケージについて

➢ (パリ・ローマ)類似商品のアジア製品が出回っている場合、商品そのものが日本

製と分からないので、パッケージは日本を感じられるデザインにするとよい。

⚫ 価格について

➢ (パリ・ローマ)職人が作り上げるよい商品であっても、現地で流通している他の

アジア製の安い類似品との価格差や価値の差がわかる現地人はあまりいない。

16

【マーケティング調査・販売状況調査の様子】

(11 月 19 日(月))

UMAMI でのバイヤー担当者へのヒアリン

グ。

現地の食材セレクトショップ「Maison

Plisson」の一画では UMAMI の日本食材が

取り扱われていた。

ガストロノミージャーナリストへのヒアリン

グ。

日本商品の委託販売が行われる「Maison

Wa」では、全国各地から商品が出展されてい

た。

「Discover Japan」が手掛けるイベントスペ

ースでは、秋田県の民芸品の企画展が開催中

だった。

「Izakaya Isse」では、非常に多種の日本酒

を揃えていた。

17

(11 月 20 日(火))

「UMAMI MATCHA CAFÉ」はパリの現地

人が気軽に立ち寄るカフェ併設のショップ。

株式会社パソナ農援隊(パリ)として活動す

る日本食プロモーターへのヒアリング。

(11 月 21 日(水))

日本食材を求める日本人と現地人が来店する

「Sushi Sushi Store CIPRO 店」。

現地のバール「Bar Portoghese」経営者と

「Sushi Sushi Store CIPRO 店」の店長への

合同ヒアリング。

現地のジュエリーデザイナーが経営する日本

のインスパイア-ドショップ「Antichi

Kimono」では日本製の衣類を販売。

お茶のセレクトショップ「Te e Teiere」では

日本茶や日本の茶器が多くそろう。

18

食材セレクトショップ「Castroni」では日本

食材も多く取り扱うが、日本酒などは製造か

ら 2 年近く経つものも目立った。

元在ローマ日本大使館シェフが独立し運営す

る日本食レストラン「Tora」では、回転ずし

のベルトコンベアがあり寿司類に力を入れて

いるほか、日本食の家庭料理も多数提供。

(11 月 22 日(木))

「三越ローマ店」は日本語が通じる店内では

あったが、日本商品はほとんど見当たらなか

った。

日本食材の輸入卸販売に取り組む「Gourmet

Line」の副社長およびマーケティング部長へ

のヒアリング。

19

第3章 セミナー開催

1. セミナーの開催概要

(1)セミナー開催の目的

海外への販路開拓・拡大に必要なブランド構築(パッケージデザインやラベル等)や知的

財産活用の重要性を地域資源・食品分野の地域企業に幅広く認識してもらうためのセミナー

を開催した。対象は、海外に向け販路を開拓・拡大したい具体的商品を持つ中小企業やとし、

講師は、知的財産専門家*1、海外マーケティング専門家*2、海外展開を支援するデザイ

ナー*3とした。

*1「知的財産専門家」

国内の弁理士等で模倣品対策も含めた知的財産活用について助言を行う者。

*2「海外マーケティング専門家」

国内の中小企業等の海外展開に向けた実務に精通し、実際の海外展開支援経験を活かした助

言、指導を行う者。

*3「海外展開を支援するデザイナー」

海外での企業向けデザイン製作等の経験を有し、海外の消費者意識を踏まえたパッケージデ

ザインについて助言、指導を行うとともに、対象商品パッケージのデザインラフ案を提案す

る者。

(2)セミナーの概要

①開催の基礎条件

海外への販路開拓・拡大に必要なブランド構築(パッケージデザインやラベル等)や知

的財産活用の重要性を地域資源・食品分野の中小企業に幅広く認識してもらうために、

中国地域において、セミナー(3 時間)を広島市内で開催した。

セミナーでは、知的財産専門家による海外での出願等の重要性を伝えるとともに、海外

マーケティング専門家による販売戦略の構築方法、海外展開を支援するデザイナーから

のデザインによるブランド構築の必要性について説明し、中小企業に対する普及啓発を

図った。

対象は、海外に向け販路を開拓・拡大したい具体的商品を持つ中小企業および自治体や

金融機関、コンサルタントなどの海外輸出の支援団体とし、対象人数は各会場とも30

名程度とした。

参加中小企業者のうち、海外に向け販路を開拓・拡大したい具体的商品を持つ者は持参

することとし、海外マーケティング専門家や知的財産専門家、海外展開を支援するデザ

イナーによる当該商品に対するアドバイスを「ブラッシュアップ・カフェ」として実施

した。

開催するセミナーの構成イメージは以下のとおり。

① 知的財産の専門家による海外における知的財産活用等に関する講演

② 海外マーケティング専門家による、パリ・ローマでのマーケティング調査に基づく

EU 進出に必要なノウハウ等に関する講演

20

③ 海外展開を支援するデザイナーによる具体的商品に対するアドバイス

④ その他、中国四国農政局や一般社団法人広島県発明協会からの支援制度の紹介

上記③はブラッシュアップ・カフェ*として開催。

*ブラッシュアップ・カフェ

事業者が持参した海外に向け販路を開拓・拡大したい商品を対象に、講師及び参加者が意見

交換しながら、強みと課題の意見を集約し、可視化するワークショップ。

②セミナータイトル

セミナータイトル及びサブタイトルは以下のとおり設定した。

地域商品の海外向けブランド化支援セミナー

~海外向けパッケージデザインをご提案します~

③講演テーマ及び講師の選定

本セミナーの講演テーマと講師の選定は以下のとおり設定した。

◎「知的財産専門家」講師と選定理由

≪講師≫

柳生 一史氏

(独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)海外知的財産プロデューサー)

≪選定理由≫

大手食品企業で長年海外での知的財産保護に関する実務経験があり、多様な事業形態・規模

と海外展開に即した知的財産戦略に知見がある専門家であるため。

◎「海外マーケティング専門家」講師と選定理由

≪講師≫

手島 麻記子氏(株式会社彩食絢美 代表取締役社長)

≪選定理由≫

フランス・イタリアにおける食品の輸出入に関する長い実績を持つとともに、現地のバイヤ

ー等との人脈も有するため、現地マーケティング調査にアドバイザーとして参加頂くととも

に、その情報を参加者に還元できる専門家であるため。

◎「海外展開を支援するデザイナー」講師と選定理由

≪講師≫

桑原 宏幸氏(株式会社益田工房 代表取締役 CDO)

≪選定理由≫

海外での WEB デザインアウォードなどで受賞経験を有し、海外(オーストラリア)と国

内(島根県益田市:本社、松江市、東京都内)を拠点に、ローカル商品をグローバルな観点

からデザインにあたる専門家であるため。

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■講師の経歴

柳生 一史氏 (独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)

海外知的財産プロデューサー)

国内食品・バイオ製造業で 36 年間勤務し、定年退職。

知的財産部門で、出願/権利化、ライセンス契約、訴訟、模倣品対策か

ら関係会社の知的財産管理まで、20 年以上の実務と指揮監督の経験を

有する。

この間、米国に 2 年間駐在、ロシア関係会社の知的財産機能立ち上げ

にも従事。

多様な事業形態/規模と海外展開に即した知的財産戦略を実践した。

手島 麻記子氏 (株式会社彩食絢美 代表取締役社長)

日本酒造組合中央会認定・日本酒スタイリスト・日本ソムリエ協会認

定・ワインアドバイザー。農林水産省認定 六次産業化プランナー。復

興庁認定 集中支援専門家。日本醸造協会理事/ 国税審議会委員。広告

電通賞審議会選考委員。2015 年ミラノ国際博覧会日本館サポーター。

「日本酒のある豊かな暮らし」をテーマに、全国各地の日本酒とイタ

リアンをはじめとした西欧料理とのペアリング(食べ合わせ)や「ラ

イフスタイルとしての日本酒」の新しい楽しみ方を、国内外で広く発

信している。

桑原 宏幸氏(株式会社益田工房 代表取締役 CDO)

グラフィックデザインを専門とし、ポスターやパンフレット、商品パ

ッケージデザイン、HP 作成、写真動画編集等の制作実績を多数有す

る。現在、デザイン会社の代表取締役に就任し、島根県石見地域を中

心にデザインやディレクション業務を行っている。

22

④ブラッシュアップ・カフェの概要

海外展開をめざす商品や開発中サンプル品への講師からの助言を希望する参加事業者に、

該当商品等の持参を依頼し、講師及び参加者が意見を交わし、さまざまな層の声を活かした

商品ブラッシュアップ(磨き上げ)を行うことを目的に実施した。

講師と参加者がすべての対象商品 6 品を全体で意見交換を行う形式で実施した。

1)持参企業による商品説明

商品を持参した企業担当者が、海外ブランド化に向けての商品説明、狙いをプレゼンテー

ションした。

≪プレゼンポイント≫

⚫ 商品名(海外向けのネーミングアイデアがあればあわせて紹介)

⚫ 価格帯(国内・海外展開での想定価格)

⚫ 商品の特徴(特に海外展開で PR したい点)

⚫ 対象層(輸出想定国があれば国や地域名称、消費ターゲット層など)

⚫ 来場者の意見がほしいポイント

⚫ 講師の助言希望ポイント

2)参加者意見の書き出し

参加者は以下のような意見を付箋に書き出した。

1)商品に「いいね!」と共感する点

2)商品等について質問したいこと

3)そのほかのこと

3)参加者意見に基づく意見交換

模造紙に貼り出した上で、意見が記入された付箋をもとに意見交換を行った。

4)講師助言

企業からの「講師の助言希望ポイント」と参加者意見をもとに、ブラッシュアップ・アド

バイスを行った。

23

2. セミナー開催の広報展開

(1)広報展開

①告知チラシによる周知

開催にあたっては、経済産業省中国経済産業局、農林水産省中国四国農政局の主催とし、

広島国税局、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)貿易情報センター(鳥取、松江、

岡山、広島、山口)、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中国本部 の共催として開催した。

24

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28

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②フェイスブックページによる周知

告知ツールとしてフェイスブックページを開設し、広報を実施した。

③その他

上記①②のほか、中国経済産業局のホームページ、同局産業部国際課メルマガ等を活用し

た広報を実施した。

30

3. セミナー開催結果

(1)セミナー開催結果

①開催概要

■開催日時 2018 年 12 月 7 日(金)

■会場 広島合同庁舎 2 号館 2F 第 1 会議室(広島市中区上八丁堀 6 番 30 号)

■参加者数 25 名

■タイムテーブル

第 1 部

14 時~

15 時 20 分

開会あいさつ

海外進出における知的財産の留意点 ~中堅・中小企業の円滑な海外ビジネ

スのために~

●柳生 一史氏

中国地域発!EU 市場における販路開拓・拡大、成功の秘訣!

●手島 麻記子氏

質疑応答

休憩

第 2 部

15 時 30 分~

17 時 30 分

ブラッシュアップ・カフェ

●桑原 宏幸氏、 手島 麻紀子氏、 柳生 一史氏

関連施策のご紹介

●中国四国農政局

●一般社団法人広島県発明協会

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②講演概要

1)柳生 一史氏(独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)海外知的財産プロデュ

ーサー)

【海外進出における知的財産の留意点 ~中堅・中小企業の円滑な海外ビジネスのために~】

■講演のサマリー

『ビジネスと知的財産の係わり』

日本企業が海外進出をした際に、過去に多くの国や地域で模倣被害を受けている。それ

によって経済的な被害だけでなく、ブランドイメージの定価、消費者からのクレーム、

消費者の自己、取引先とのトラブル、技術流出、海外展開の遅延などの被害が発生して

いる。

そのために、海外ビジネスでは知的財産戦略・戦術が重要となる。進出商品や進出先の

位置づけに応じて検討が必要。

知的財産をつける際にはその国の言語での意味に問題がないかなども確認する必要があ

る。

技術などは盗用などに注意するための契約が必要。

『知的財産にかかわる体制・活動の在り方』

情報管理は非常に重要である。情報の重要性ごとにしっかりと自社で管理する。

『知的財産に関わる国際契約での留意事項』

契約書の重要性・意義を理解する。

32

2)手島 麻記子氏(株式会社彩食絢美 代表取締役社長 )

【中国地域発!EU 市場における販路開拓・拡大、成功の秘訣!】

『PR ポイントがわかりやすいパッケージ』

日本商品の輸出にあたっては、「日本らしさ」が PR ポイントとなる。

「無農薬」「グルテンフリー」などのキーワードもわかりやすくする。

『売る相手の必要な情報と合わせた営業・販売』

現地のユーザーが商品の使い方が分からないので、その商品がどのように使えるのかな

どを伝授することが重要。

『現地マーケットの実情にあった商品づくり』

「EU」と一言でくくっても、都市によって様相が大きく異なる。パリで受け入れられる

商品がそのままローマで受け入れられるとは限らない。

日本で売れているものが EU でそのまま受け入れられるとも限らない。例えば日本酒は

日本では四合瓶や一升瓶の流通が一般的だが、パリ・ローマの小売店では 300ML 瓶や

180ML 瓶の方がよく売れる。

現地で類似商品が流通している場合、日本と同じ規格では難しい。いかに違いを説明で

きるかがポイントとなる。

『ストーリー展開』

商品ひとつひとつが日本文化を伝えるメディアであると考えて商品開発する必要がある。

そのうえで、日本らしさとして「自然との共生」「神道、禅、侍などに通じる精神性」「細

やかさ」などをストーリーとして伝える商品・パッケージデザインが必要である。

33

③ブラッシュアップ・カフェの概要

参加事業者と商品は以下のとおり。

株式会社ティエスピー(鳥取県鳥取市) 「因州和紙アクセサリー」

コンテンツ株式会社(岡山県岡山市) 「風神雷神図ストール」

MOMONO TRADING(岡山県岡山市) 「IGUSA PRODUCTS」

うべる市民まちづくり株式会社(山口県宇部市)「うっぽくたけのこ」

株式会社サンラヴィアン(岡山県浅口郡里庄町) 「さくら製菓」ブランド商品

(「岡山白桃カステラ」「咲ワッフル瀬戸内レモン」等)

■ブラッシュアップ・カフェの様子

各社の商品を実際に確認

手島氏よりマーケティング視点でのコメント

柳生氏より知財視点でのコメント

桑原氏よりデザイン視点でのコメント

34

④各商品への意見

1)株式会社ティエスピー 「因州和紙アクセサリー」

https://www.yoboty.com/

(参加者から寄せられた主な意見)

和紙でアクセサリーをつくる発想が面白い。

日本製でこのようなものをつくることに価値がある。

アクセサリーとしてだけでなくディスプレイとしても魅力的である。

価格を知りたい。一般的なアクセサリーと比べてどうか。

和紙で軽さはポイントになると思うが、形状が壊れてしまうことはないか。

水への耐性は大丈夫か。

日本柄として、十二支や桜などもよいと思った。

(講師からの講評・助言)

装着してすぐに落ちてしまうとユーザーの満足度が上がらないので付け心地等は気をつ

けてほしい。

輸出コストを上積みすると価格が中途半端に感じる。パッケージもこだわっているので

値上げをして高級路線にしても良いと思うし、数を売りたいなら安くする必要がある。

価格設定が難しい商品だと思う。

商標保護の観点から、商品のデザインはしっかりしているので、造語のブランド名

「YOBOTY」が輸出先の現地で変な意味がないかを確認する必要がある。

商品の特徴をより明確に伝えるキャッチコピー・説明文を入れた方がより良い。

イヤリング

35

2)コンテンツ株式会社 「風神雷神図ストール」

(参加者から寄せられた主な意見)

商品に品があってとても美しい。

傘にできるとよい。

(講師からの講評・助言)

文化財そのものを知っているかがポイントとなる。パリ・ローマでは、現地の方々の予

備知識がないため、風神雷神の図柄でも「タイやラオスの図柄に見える」という意見も

聞かれた。

パリ・ローマではストールではなくタペストリーとして使いたいという意見もあった。

ローマでは、「絹製品が輸入規定に引っかかるのではないか」という意見もあった。EU

規定の他に各国規定もあるので、輸出を検討している国の規則を確認する必要がある。

知的財産保護の観点から、印刷技術がとても素晴らしいが、このような商品は偽物が非

常にでやすいものでもある。技術をしっかりと保護してブランド構築する必要がある。

高級感のある桐箱はとてもよいが、社名のロゴマークを焼き印で箱に小さく入れてブラ

ンディングできるとなおよいと思う。

36

3)MOMONO TRADING 「IGUSA PRODUCTS」

(参加者から寄せられた主な意見)

禅マットは外国人が好きそう。

アメリカから始めたことがすばらしい。

イグサの効果を伝える工夫が知りたい。

(講師からの講評・助言)

禅マットという名前がよい。

海外で商品をバイヤーに紹介する際には、一つ一つの商品を紹介する時間が非常に限ら

れているため、パッケージでしっかりと訴求できるとよい。

商標保護の観点から、「イグサ=IGUSA」や「禅マット」など、ブランド名称を決めて、

しっかりとブランディングに気をつけていただきたい。

今のものもシンプルでよいが、よりクラフト感のあるパッケージにできるとよい。

37

4)うべる市民まちづくり株式会社「うっぽくたけのこ」

http://www.city.ube.yamaguchi.jp/machizukuri/brand/seihin/ninsyou9/uppoku.html

(参加者から寄せられた主な意見)

発電バイオマスにつなげられているストーリーが印象的である。

海外輸出するうえでは賞味期限が気になる。

(講師からの講評・助言)

EU で出回っている廉価な中国産のタケノコと、どう違うのか、しっかりと伝える必要

がある。今年度の調査では、干椎茸についてのヒアリングをした際には実際に水で戻し

たダシを味わってもらい、ダシの旨味を感じてもらったが、そのような伝え方ができる

とよい。バイオマスでの一連のストーリーもよいが、使ってもらうためには使い方や中

国産との違いを伝えることが重要。

知的財産保護の観点から、食品であれば社名やブランド名をしっかりと保護して、ブラ

ンディングしていくことが重要。

文字情報が充実しており、パッケージのデザイン性は非常に優れている。

38

5) 株式会社サンラヴィアン 「さくら製菓」ブランド商品

(「岡山白桃カステラ」「咲ワッフル瀬戸内レモン」等)

http://h-food-ent.co.jp/?page_id=335

(主な意見)

すでにさくら製菓ブランドの商品を海外に輸出されているが、海外からデザインのダメ

出しがあったことについて知りたい。

海外での知財の申請について詳細を知りたい。

(講師からの講評・助言)

賞味期限の問題もあるので、商品カスタマイズの仕様を細かく決めることが重要。

EU に輸出する際に、商品の出口をしっかりと見つけることが重要。

パッケージはビニール袋があまり好まれないので、素材感が感じられるものを考えたほ

うが良い。

知的財産保護の観点から、すでにたくさんの商標の出願をされていてさすがである。

デザイン・知的財産保護の両方の観点で、ロゴデザインにロゴ・ひらがな・漢字・アル

ファベットをまぜるのは参考になる。

ロゴが非常に良いので、それをもっと目立たせることでブランド化をはかるとよいので

はないか。

39

⑤参加者アンケート結果

アンケート結果は以下の通りであった。

問 1 研修の満足度はいかがでしたか?

全回答者が「満足した」または「まあ満足した」と回答した。

「満足した」や「まあ満足した」と回答した理由は以下の通りである。(以下全回答)

【全体について】

・ 初めてことばかりで、入り口がわかった感じがしています。

・ 見方が変わり、発想に幅が増えた。

・ 現状の課題の理解と今後の指針が把握できたため。

【知財について】

・ 知財(知的財産)についての見方(デザインから見たり等)新しい発見がありました。

・ 知的財産についてもあわせて理解できたのでありがたかったです。講師の方々の話が実

践的なもので、すぐに役立つものだったので聞きごたえがありました。

【マーケティングについて】

・ 細やかな輸出先のマーケティングの重要性を学べた。

・ EU 市場の話をもっと聞きたかったです。

【ブラッシュアップ・カフェについて】

・ 実際の企業様商品を事例に具体的な話が聞けて良かったです。

・ 当社におきましてもヨーロッパへの販路拡大を目指しており、本日の研修により、様々

な点の気づきを得ることができました。また、日本の伝統的技術で海外進出を図る企業

のプレゼンテーションを拝見させていただき、同様の立場である当社にとっても大きな

刺激となりました。ありがとうございました。

・ アドバイスが的確

・ 他業種の方の取組や意見が参考になった。

・ ブラッシュアップは有意義

満足した,

62.5%まあ満足した,

37.5%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

N=16

40

問 2 下記の項目について、理解は、参加前と比較して深まりましたか?

「海外展開における知的財産の重要性に関する知識」「EU 市場における販路開拓・拡大に

関する知識」「海外ブランド化に向けて商品デザイン等に関する知識」のすべてにおいて、理

解が「深まった」「どちらかといえば深まった」と回答する参加者の割合が大半だった。

問 3 ご意見・ご感想などございましたらご自由にお書きください。

(以下全回答)

・ 全く無知でしたので、困ったときに相談できる手掛かりがつかめた感じがしています。

・ まだまだ暗中模索の部分も多く、予算も限られるため、外部の支援(情報、補助金 etc)

を頂けますと幸いです。

・ ブラッシュアップ・カフェでの各社の話は、輸出希望国やパッケージがどういうものか、

など、いくつか共通の情報をお話しいただけるともう少しわかりやすかったように思い

ます。(自由度の高い発表だったので)勉強になりました。ありがとうございました。

・ ラベルデザイン(パッケージ)でもっと商品が売れればいいと思います。

64.3%

71.4%

50.0%

21.4%

28.6%

50.0%

14.3%

0% 50% 100%

(1)海外展開における知的財産の重要

性に関する知識

(2)EU市場における販路開拓・拡大に

関する知識

(3)海外ブランド化に向けて必要な商

品デザイン等に関する知識

①深まった ②どちらかといえば深まった

③あまり変わらない ④まったく変わらない

N=14

41

第4章 個別企業訪問指導

1. 個別企業訪問指導の概要

(1)個別企業訪問指導の目的

対象企業の選定商品について、EU 市場に合ったデザイン、中小企業における知的財産を

活用した海外展開におけるブランド構築を図るための商品パッケージデザイン案の製作を目

的として実施した。

(2)個別企業訪問指導の概要

海外展開を支援するデザイナーが、セミナーに参加した事業者のうち海外への販路開拓・

拡大が見込める商品を持つ中小企業で、専門家が選定した 3 社を各 2 回指導した。

指導にあたっては、当該商品の歴史、原材料、製造工程、事業者の海外展開における展開

意向等を把握した上で、EU 市場に合ったデザイン、中小企業における商標登録等知的財産

を活用したブランド構築に向けた意見交換や助言を実施した。

訪問後は、当該 3 社が海外展開をめざしている商品について、専門家の指導により、海外

展開に向けた具体的なパッケージデザインラフ案を考案した。

なお、2 回に分けての個別企業訪問指導は、それぞれ以下の目的による。

■第 1 回個別企業訪問指導の目的

実地において当該商品の歴史、原材料、製造工程、事業者の海外展開における展開意向等

を把握した上で、EU 市場に合ったデザイン、海外展開時における登録商標保護等の知的財

産活用に係る留意点の伝授等、中小企業における商標を活用したブランド構築を目的に実施

した。

■第 2 回個別企業訪問指導の目的

第1回に把握した当該商品の基礎情報をもとに、当該 3 社が海外展開をめざしている商品

について、具体的なパッケージデザインラフ案の提示を目的に実施した。

(3)個別企業訪問指導の体制

個別企業訪問指導にあたっては、海外展開を支援するデザイナーとしてパッケージデザイ

ンラフ案制作にあたった桑原宏幸氏(株式会社益田工房 グラフィック・デザイナー)、同社

クリエイティブ・ディレクター井上 望氏により実施した。

桑原氏、井上氏は、海外展開におけるデザイン製作についてチームで活動しており、いずれも

海外展開に向けたブランド化にかかる知見に基づく指導が可能であること、さらに、より精度の

高いパッケージ提案が可能になることを踏まえ、チームによる指導体制で実施した。

42

2. 企業訪問対象企業の選定

(1)企業訪問対象企業と選定理由

対象企業名 コンテンツ株式会社

住所 岡山県岡山市北区上中野 2-27-2

代表者 代表取締役 小野博

想定する商品 風神雷神図ストール

選定理由 ① EU(パリ・ローマ)における日本製品ニーズからみた可能性

【海外市場マーケティング調査対象品】

日本の美術品のデジタル化・服飾デザインへの利用を図る商品であり、

歴史に対する敬意と関心の高いヨーロッパの消費者に適合性が認めら

れる点が評価された。

一方、シルク製品であることから EU の輸入規制についての確認を行

うことを同社に求めることが指摘された。

② 知的財産活用からの視点

・ 版権利用可能な日本の著名な美術作品を活かし、海外市場に向けた商

品開発について積極的な展開例としての期待から評価された。

③ 地域特性・企業技術の視点

・ 同社が長年かかって独自に開発してきたデジタルアーカイブ技術を生

かし、日本文化の魅力を伝える商品の企画開発が可能になった点が評

価された。

想定商品画像

「風神雷神図ストール」

43

企業名 MOMONO TRADING

住所 岡山県倉敷市

代表者 代表 東山裕子

想定する商品 IGUSA PRODUCTS(岡山のいぐさを用いたランチョンマット等)

選定理由 ① EU(パリ・ローマ)における日本製品ニーズからみた可能性

【海外市場マーケティング調査対象品】

・ 価格面やほかの同種アジア商品との競争の点では課題が指摘された

が、「禅文化」などを取り込んだ商品企画、発想は、EU 諸国でも好感

される要素があることから評価された。

② 知的財産活用からの視点

・ 既に北米で展開しており、知的財産についての重要性も認識しており、

今後への期待という点で評価された。

③ 地域特性・企業技術の視点

・ 倉敷市の伝統工芸であるいぐさの加工技術とヨーロッパなどでの生活

シーンを想定した商品企画力が評価された。

想定商品画像

「IGUSA PRODUCTS(岡山のいぐさを用いたランチョンマット等)」

44

対象企業名 株式会社ティエスピー

住所 鳥取県鳥取市千代水 1-70-1

代表者 代表 諸吉 稔

想定する商品 因州和紙アクセサリー(ブランド名:YOBOTY)

選定理由 ① EU(パリ・ローマ)における日本製品ニーズからみた可能性

・ 海外市場マーケティング調査対象品ではなかったことから、商品への

現地の評価を受けていないものの、EU 諸国には和紙文化への需要が

あり、適合性が想定される。

② 知的財産活用からの視点

・ 知的財産については現状展開されておらず、今後の課題として指摘さ

れた。

③ 地域特性・企業技術の視点

・ 鳥取市の伝統工芸である因州和紙がカラーバリエーション豊富な展

開を図っていることなどの特徴を生かした展開を図っていることが

評価された。

想定商品画像

「因州和紙アクセサリー(ブランド名:YOBOTY)」

45

3. 個別企業訪問指導の実施

(1)第 1回訪問の実施概要

①コンテンツ株式会社

訪問日 平成 30 年 12 月 17 日(月)

①商品が生ま

れた背景

・ 同社は、創業当初より博物館・美術館の展示用レプリカを生業にとして

きた。レプリカ製作にあたり、原資料と同等の料紙を選択する必要があ

り、それによって、質感も含め、原資料に近いレプリカが生まれる。

・ 料紙とは、和紙(樹皮紙 100%のもの)、混合紙(主にパルプや藁を材

料にするもの)、絹本(精練する前の絹糸を予め織り込んだ和紙を補強

する為の材料)、絵絹(上等な絹を緻密に織って、研きをかけたもの)。

・ このうち、絵絹は、生糸が動物に由来するものであり、染料には馴染む

が、顔料のインクジェットインクでは定着・発色しない。

・ 顔料系絵具を使用する場合は、手書き型で染めるか、シルク印刷で定

着・発色する。

②特徴

製造工程

・ 蚕が口からはき出した繊維には、中心部分に空洞がある。この空洞があ

ることによって、品格のある輝きを得ることができる。

・ レーヨン・ポリエステルでは、この空洞が無い為、外見は同じような質

感でも、絹は、その上に絵具やインクで描くと独特の風合いを得ること

ができる。

・ しかし、顔料のインクジェットインクでは定着・発色しないので、使用

できなかった。そこで、風合いを損ねないように定着・発色する化学的

処理を施した。

③商品の特

徴、

こだわり

ポイント

・ 絹の歴史は 2200 年以上もあり、人類にとってなくてはならない素材で

あった。

・ しかし、非常に高価なものであり、特に近年は化学繊維に押され、その

生産量は、レーヨン、ポリエステルの1%にも満たない状態となってい

る。かなり危機的状況であり、従来の使い方とは異なる製品を開発する

必要があると考えた。

④現在の

デザイン

コンセプト

・ 現在、古文書や芸術作品などのデジタル化、アーカイブ制作が急速に進

むなか、重要美術品等も例外ではなく、平成30年の著作権法改正など

の法整備も進められてる。今後の大きな課題は、こうした文化的資産の

デジタルアーカイブ化による経済効果の創出である。

・ 同社は、国内外を問わず、博物館・美術館等で日本に由来する版権フリ

ーとなったデジタル資料を収集し、それを加工、商品化する一つのアイ

デアとして、当該技術を開発した。

⑤海外展開へ

の意欲

・ 「日本の文化を世界へ」の国の方針に基づき、ショール、スカーフ、マ

フラー、タペストリー、屏風、額装等を販売していきたい。

⑥対象国、

対象層

・ EU 諸国の富裕層

⑦想定価格帯

・ ショール(90×180 ㎝)、6 万円ぐらいで出荷できる。

・ タペストリー、額装等は、使用する正絹生地の種類、商品のサイズや仕

立て方法によって、価格は異なる。

⑧知的財産活

用にかかる指

・ 自社が開発・保有している印刷技術とこれを活かした製品であることに

ついて仕向け先国での商標取得など、知的財産の観点から模倣品対策を

講じるための取り組みを行うことが必要である。

46

⑨益田工房

からの意見

・ まず商品名を明確にすべき。商品インパクトは強いが、名称があいまい

なので、商品としての流通性が弱い。今回のデザインを考える上で EU

市場での訴求力を考慮してネーミング案も一体的にご提案してみる。た

だし、パッケージデザインに名称を入れるかはよく考えてみたい。

・ 商品に狩野派、若冲、北斎などの図案があるが、それをパッケージにい

れるのは慎重に考えたほうがいい。今後も含めて図案バリエーションが

増えても共通パッケージとして商品認識してもらえることのほうが重

要ではないか。

・ 商品が大きいので、折りたたみによりパッケージは A4 サイズを基本に

考えてみる。

・ 箱も含めた提案を行うことになると思う。

47

②MOMONO TRADING

訪問日 平成 30 年 12 月 27 日(水)

①商品が生ま

れた背景

・ 岡山県はい草の発祥の地として長い歴史があり、東山氏の祖父母も倉敷

で、い草で茣蓙を織る工場を営んでいた。

・ 自身は海外生活のなかで、あらためて日本の伝文化や伝統工芸の素晴ら

しさを再認識した。岡山県産の上質ない草と、職人が継承してきた織技

術がテーブル雑貨などの日用品として、海外の人に身近なアイテムとし

て生活に取り入れていただくことで、日本の伝統工芸の素晴らしさを広

めるだけでなく、畳やい草などに馴染みのない国内の若い人にも目を向

けてもらいたいと考えた。

②特徴

製造工程

・ 岡山県で植え付けから刈り取りまで一貫して育て上げられた丈夫な国

産い草 100%使用。

・ 天日干しと乾燥機では品質が異なり、乾燥機干しの場合、茎の芯までの

完全乾燥が難しい。高梁川の堤ののり面の草の上に並べて乾燥させるの

が一番。下と上から風がとおる。かつてはこの光景は倉敷の夏の風物詩

だった。

③商品の特

徴、

こだわり

ポイント

・ テーブルウェア商品:ナチュラルない草の色を生かしたシンプルなデザ

インから、カラフル、モダンなデザインまで取り揃える。

・ Zen mat (床にひくリラクゼーションマット):きめが細かい折り目で肌

触りが良い。畳縁がカスタムできる。

・ 祖父母がイグサ加工製造工場を営んでいた。アメリカ州デンバーから帰

国してそのことを思い出いし、一気に展開をしようと考えた。

・ 現在、玉島の綿花が世界遺産登録されており、いぐさも申請を検討して

いる状況。(経糸が綿であることからの関連による)。

④現在の

デザイン

コンセプト

・ パッケージは現在無し。原材料や使用注意点などは白紙の帯に印刷して

巻くなどで対応。軽くて丈夫ない草は輸送上のメリットがあり、それを

生かしたデザインが希望。

⑤海外展開へ

の意欲

・ 現在、海外向けオンラインショップで販売しているが、今後、EU 方面、

特に海外への小売店への卸販売へ拡大していきたい。

・ 備前焼とのセットでコーディネートも行いながらアメリカのオンライ

ンショップで販売開始。

・ アメリカへの飛行機輸出コストは、「ランチョンマット 8 枚 1300 円」「コ

ースター1 セット 630 円」。

・ お客様の 8 割はアメリカ人、ほかはイギリス、カナダ、オーストラリア

など英語圏。アメリカは柄物好き、ヨーロッパは無地を好む傾向がある。

⑥対象国、

対象層

・ EU 諸国。ほかに米国、オセアニア、カナダ等。

・ 30-60 代女性、クオリティが高くユニークな商品やギフト商品を探して

いる人。日本文化に興味がある方や化繊ではなくナチュラルな素材に価

値を感じる人。

・ 現在の主要市場であるアメリカでは、職人の手間をかけてつくるものづ

くりを支えようという意識をもつ人、こだわりのプレゼントを探してい

る人など知的レベルの高い方が多い。

⑦想定価格帯

・ ランチョンマットの販売価格

・ 1,400 円(国内、海外 B to C の場合)

・ 23 ユーロ(海外小売店での販売想定価格)

*小売店への卸値は国別に交渉

48

⑧知的財産活

用にかかる指

・ 「IGUSA」のような原料名称をそのまま商品名することは日本国内で

は商標登録の対象外となる。知的財産にかかる法律や制度は国ごとに定

められているため、対象国での知的財産を取得する必要がある。ネーミ

ングについては仕向け先の商標など知的財産に関する情報収集を十分

行うとともに、専門家への早めの相談をお勧めする。

⑨益田工房

からの意見

・ 海外市場マーティング調査結果では、「他国製の類似クラフト加工品が

多いなか、日本製品であることがわかりづらい」という指摘があった。

プロモーション展開としては、日本の伝統工芸と現代デザインの調和を

全面に押し出したい。商品名も「イグサプロジェクト」に和テイストの

名称を加味して提案したい。

・ ZEN(禅)をキーワードに考えてみたい。

・ い草は軽いのが輸出メリットということなので、パッケージも軽量な素

材で考える。

・ 「ランチョンマット(4 枚セット)」を商品パッケージとする。

49

③株式会社ティエスピー

訪問日 平成 30 年 12 月 28 日(木)

①商品が生ま

れた背景

・ 本業の印刷の部分で和紙にプリントすることもあり、和紙の軽さ、カタ

チが簡単に切る、貼る事でデザインできる加工の良さを生かせると考え

ていた。

・ 因州和紙は、和紙と思えない存在感があることが魅力で、和紙のアクセ

サリーは競合がすくない点も魅力だった。

・ さらに、日本独特の伝統工芸品を自然に身につけられ、全て自社製品で

製造できるため、仕入れ在庫も持たなくて低コストで商品開発が出来

る。

・ 開発コストが低いのでオリジナル商品が1品から対応できる。

②特徴

製造工程

・ 因州和紙を買付、プリントや染紙を使い一点ものに仕上げている。カッ

ターの刃で精密に切り、手作業で金具を組み立てる。

③商品の特

徴、

こだわり

ポイント

・ 和紙のやさしい風合いを保ちながら、色合いやデザインの繊細さをアピ

ール。

・ 和紙だから香りがつけられたり、自信で曲げたり折ったりアレンジがで

きる。金属に比べてかなり軽く、耳への負担も少ない。

・ 「大人かわいい」がコンセプト。

➢ 2017 年 OMOTENASHI セレクション選定

➢ 2018 年ソーシャルプロダクツ受賞

(一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及協会)

④現在の

デザイン

コンセプト

・ YOBOTY のアイディティカラーを黒と白としている。商品がよく見え

て、高級感が感じられるようなデザインを重視し、パッケージもディス

プレイ活用できるように設計している。

⑤海外展開へ

の意欲

・ EU エリアの展開を希望。来月にはパリは商談に渡仏し、セレクトショ

ップに商品を置く予定。

■現在の海外展開パッケージ

・ 現在のパッケージは黒の紙製パッケージ。当初はガラス製パッケージだ

ったが、割れリスクがあり変更。

・ 商談会や展示会でも映えるような什器の視点も加えてパッケージデザ

イン製作を行っている。パッケージデザインは自身。加工は自社。

・ 高価格帯の 8 千円(国内販売価格)の商品のパッケージは、紙パッケー

ジを薄くして、そのまま郵送できるような工夫もした。ただ、輸出とな

ると輸送上の耐久性には懸念がある。

・ パッケージの色は「黒」と「白」。「黒」は商品が目立つこともあり好評。

「白」を選んだのはミラーコートの光沢を強調したかったためで、プレ

ゼント用にも使えるよう工夫している。

・ 輸出の際の耐久性は個包装単位でなく別の梱包を行っているので現状

でも問題ない。

⑥対象国、

対象層

・ フランス・パリ。服飾へのこだわりのある方、人と違うものを身につけ

たい方。お洒落に敏感な方。

⑦想定価格帯 ・ 6000 円~。

⑧知的財産活

用にかかる指

・ ブランド名「YOBOTY」は独自の言葉ということで類似名称の懸念は

少ないが、近年、仕向け先の「宗教」「人種・民族」「固有文化」などの

背景への配慮が足りず、事業者の意図とは別に、商品名や意匠が仕向け

先の文化にあわず、人々に不快を与えてしまったケースも発生してい

る。商品のネーミングや意匠の製作にあたっては、文化的背景として受

50

容しにくい「ことば(綴り、音)」「図案」と誤解されないよう留意すべ

きである。

⑨益田工房

からの意見

・ 商品アイテムをみせるアイデアはすばらしい。このアイデアは国内外問

わず通用すると思う。パッケージの仕組みはそのままにビジュアル面で

提案する方向で考えたい。商品は満を持して打って出るだけの強さがあ

ると思う。

・ カジュアルなデザインよりも大人向けのデザインのほうが海外の若い

人にも受けると思う。日本よりも欧米の若者は完成が成熟している。商

品資料を PDF で送ってほしい。

・ 基本サイズとしては、1 パッケージは 2 個 1 セットで。パッケージの窓

の形状は変えるかもしれない。

・ 高級なジャパニーズデザインを考えたい。手島先生の調査で何がパリで

受けるかはある程度答えは出ていると感じている。それをいかに貴社商

品の個性に落とし込んでいくことを考えたい。

・ ユニセックスな展開があっていいように思う。

■個別訪問時の様子

51

(2)第 2回訪問の実施概要

第 2 回訪問では、第 1 回企業訪問での現況把握及びその後、専門家による海外市場での展

開に向けたコンセプト設定を踏まえて製作した商品パッケージデザインラフ案(一部ネーミ

ング案を含む)のプレゼンテーションを行った。

≪海外向け商品パッケージ製作体制≫

〇グラフィック・デザイナー 桑原 宏幸氏(株式会社益田工房 代表取締役 CDO)

〇クリエイティブ・ディレクター 井上 望氏 (株式会社益田工房)

①コンテンツ株式会社「風神雷神図ストール」

■訪問の様子

1)海外向け商品のコンセプト

格調高い「日本の美」を伝える高級感あるパッケージ

2)海外向け商品ネーミング案

未定(自社での検討を希望)

52

3)海外向け商品パッケージデザインラフ案

箱天面に焼印でロゴマーク「吉原(仮商品名)」を押印。

組み紐(真田紐)を用いて高級感を演出。

53

4)海外向け商品パッケージデザインラフ案の特徴

マーケティングから、フランスを対象とした場合、わびさび、禅など、日本古来のイメ

ージ、丁寧な手仕事のイメージを出すことを意識した。

現在も使用されている桐箱をベースとしてブラッシュアップした。

高級感と日本テイストを表現するため、茶道具等を入れる箱の結びに使われる組み紐で

ある「真田紐(真田結び)」を採用した。

箱には商品ロゴとして、シリーズ展開の名称を焼印で入れる(提案では「吉原」をシリ

ーズ名に想定している)。

高級感を重視し、シンプルな装丁にしたことで、箱の中の商品の華やかさが際立つよう

にした。

5)企業からの意見

<桐箱について>

シンプルでよいデザインだと思う。

サイズは日本古来のサイズである B 版がよいと思う。

<真田紐、真田結びについて>

真田結びは日本人でも難しい結び方。結び目を解かず裏で留める仕掛けや、紐の場合結

び方の説明書等が必要になる。裏で留める場合は、底にくぼみやきりかきが必要になる。

結び目の輪の向きでも決まりがある。

*説明動画にリンクできる QR コードを添付してはどうかとの意見あり。

<ロゴについて>

焼印は費用がかかるため、インクジェットプリントで代用できると思う。

インクジェットプリントなら内容物の柄を印刷することもできるのでバリエーションが

広がると思う。

<その他>

〇材料の調達について

桐箱

➢ 岡山市内の関係者に相談して調達したい。

真田紐・真田結び

➢ 対応できる事業者を探したい(その後、倉敷市内で対応可能な事業者がみつかった。)。

〇販売・販売ルートについて

作品は多数あるため、ヨーロッパの方が好みそうな作品を選んで展開していきたい。

海外展開のほか、海外からの外国人観光客向けの販売も検討。外国人観光客が美術館・

博物館に来ても日本らしいお土産がなく買って帰れないというニーズがあると取引のあ

る大規模博物館の声を聞いている。

■事業後の事業者の反応

パッケージデザインラフ案は商品イメージをよく理解した上で、コンセプトを立て、企

画・デザインされており、大変満足している。

箱をシンプルにし、焼印と組紐で「日本の美」を表現していて、歴史好きな欧州の消費

者の興味を引きそう。

名称は自社で決定し、岡山市内の製箱メーカー、倉敷市内の組紐メーカーにもこのデザ

インでの提供について照会を行っている。

54

■今後の展開に向けた専門家からの指導・助言

商品のイメージが美術作品としてのインパクトが強いため、逆に商品としての認知を上

げることが重要と感じた。

このため、商品群を表現・伝えることが大事と考え、焼印でシリーズ名称をロゴ化する

ところに力を入れた。

ブランド化には商品群としてのプロモーション展開が重要になると考える。

模倣品対策に万全を期すため、仕向け先での商標登録取得に向けた取り組みを勧めたい。

海外市場マーケティング調査では、日本のアートとはわかりにくいとの評価もあったこ

とから、知的財産戦略を踏まえた商品のブランド化と認知度向上に取り組む必要がある。

55

②MOMONO TRADING「IGUSA PRODUCTS(岡山のいぐさを用いたランチョンマット等)」

■訪問の様子

1)海外向け商品のコンセプト

禅文化への関心が高い EU 消費者に訴求するパッケージ

2)海外向け商品ネーミング案

『禅膳』

3)海外向け商品パッケージ案

56

4)海外向け商品パッケージデザインラフ案の特徴

マーケティングから、フランスを対象とした場合、わびさび、禅など、日本古来のイメ

ージ、丁寧な手仕事のイメージを出すことを意識して製作した。

わびさびに象徴される日本の禅文化をイメージできる商品名として、「禅膳」のネーミン

グをご提案する。

い草の香り、においが移らないように、パックできるよう筒を提案している。

全て覆うことができるもの、半分が透明で中の柄が見える筒の2つを提案した。

素材感は、つるつるした手触りのものではなく、ざらっとした手触りのものがふさわし

い。

筒の上下を留めるシールはランチョンマットの柄を模した柄のシールを提案した。

「日本のランチョンマット」を意味したフランス語を表記している。

パッケージを全面紙で覆う場合、中の柄がわからない、使うイメージが持ちにくいため、

POP 等の工夫で、食卓において使う場面を見せられるとよい。またシールの柄を中の

柄・色にあわせてもよい。

57

5)企業からの意見

<ネーミングについて>

禅という言葉は既にイメージが固定化してるので、あまり使いたくない。また、禅だと

床に敷くイメージをもたれてしまう。食卓で使うものをネーミングで表現できれば。い

ろいろな色がある、使い方があるなど、「彩(いろどり)」を使ってもいいかと思う。

➢ 「彩膳(SAIZEN、AYAZEN)」という名称なども考えられる。

➢ いずれにしても商標登録を確認したほうがよい。

➢ また、漢字圏の国同士でも、国により同じ漢字の意味が変わってくることもあり、

この点も確認が必要。

<パッケージについて>

い草は蛍光灯や日の光で焼けて退色してしまう。そのため、透明だと見える部分だけ退

色して、クレームになってしまう。以前、柄が見えるように窓を設けたパッケージを使

ったことがあるが、窓の部分だけ色焼けができたことがある。そのため、できれば全体

を覆う方がよい。

いぐさは湿気を吸うため、ビニール・プラスチックのパッケージだと中に水滴がついて

しまうことがある。紙素材はその点よい。

➢ 現在、プラスチック廃棄による環境問題、生態系への悪影響などの問題は顕在化し、

世界的にプラスチック不使用への取り組みが動いている。こうした社会意識を踏ま

えても全面紙素材使用が適切だと思う。

輸出における輸送を考えて、できるだけ軽量にしたい。

➢ 表彰状を入れる筒くらいの重さを想定している。

フランス以外の展開を考えて、英語標記で Made in Japan や日本のランチョンマットを

意味する表記を行うなどの展開も考えたい。

➢ デザインラフ案の書体を使って英語標記にすることは可能。

■事業後の事業者の反応

商品コンセプトを理解して提示されたパッケージデザインラフ案には、意匠、機能性と

もに大変満足された。

ネーミングについては、企業の思いを踏まえ、別途自主的なかたちで桑原氏に相談して

いくことになった。

■今後の展開に向けた専門家からの指導・助言

ランチョンマットという商品そのものは、EU 諸国でも豊富なバリエーションがより廉

価で提供されており、販売先や消費者が「日本文化を表現した工芸品」という点に、価

格に見合う価値を感じることができるかが販売促進のポイントになる。

価値についての説明が必要な商品であることから、それをパッケージでどこまでビジュ

アルメッセージとして提示できるかにこだわった。

日用品として使う商品ではあるが、価値のわかる人へのギフト商品などでの展開も考え

られるようパッケージも含めて欲しくなるようなプロモーションが必要ではないか。

海外市場マーケティング調査でも、同種のアジア諸国製商品が輸出されているとの指摘

があった。輸出にあたってのブランド戦略を構築する上で、模倣品対策の観点から知的

財産戦略を十分反映した内容にすることが重要である。

58

③株式会社ティエスピー「因州和紙アクセサリー(ブランド名:YOBOTY))」

■訪問の様子

1)海外向け商品のコンセプト

『商品を引き立て、和を感じる海外のようなパッケージ』

2)海外向け商品ネーミング案

『優美 YUBI』

3)海外向け商品パッケージ案

59

4)海外向け商品パッケージデザインラフ案の特徴

現在の基調色の「白・黒」のパッケージデザイン(窓から商品が見える)を採用しつつ、

より商品の色が引き立つよう配色を変更した。

商品そのものに和テイストが希薄であるため、パッケージの色や柄で「和」を表現した。

色合いは和テイストを取り込み、商品の色とバッティングしないよう、夕焼け空と海の

2 色を採用している。

製作地の風土を表現する神話「因幡の白兎」から、うさぎをワンポイントで入れている

が、かわいさを強調しすぎる懸念もあるので、高級感を出す方向で行く場合、外したほ

うがよい。

展示会などでは、パッケージをそのままディスプレイ什器として使用されていることか

ら、絵画をイメージし、色をつけている。

5)企業からの意見

<パッケージについて>

高級ラインを表現するため、白と黒を採用し、コートタイプの表面がつるつるしたもの

を使っている。

➢ 高級感を出すためには、コート系より、ざらざらとした手触わり感のある素材が適

してる。

<商品展開について>

和紙は何色にも、どんな形にもできる。そのため、色展開や形状など迷いがある。

染めの工程で、必ず色のムラが出る。和紙の特徴でもある。そのムラのため、商品は1

点ものになる。

➢ ブランド、シリーズ、ラインがあるとよい。

➢ 日本の色の感覚を、藍や赤などのグラデーションで、日本の名前をつけてシリーズ

展開すると、ストーリーが分かりやすくなるのではないか。

➢ 色の展開によっては、商品が映えるように、パッケージを白の濃淡で統一したデザ

インでもよいかもしれない。白のトーンに薄い藍や灰色などで柄や文字を入れる。

60

■事業後の事業者の反応

商品がうまくひきたつようパッケージデザインラフ案を考えてもらった。前回お話しし

ていた神話のテイストも加味してもらったデザインでとても好感をもった。

また、ディスプレイでも使用できるように工夫した点を評価してもらい、今回の意匠、

機能性にも反映してもらい、満足している。

今後、イヤリングだけではなく、金具をつけ外しできるタイプにして、ネックレスとし

ても使えるような展開を考えており、桑原氏に別途相談に乗ってもらいたいと考えてい

る。

■今後の展開に向けた専門家からの指導・助言

因州和紙という地域資源を活かした商品であるものの、商品コンセプトとして和のテイ

ストへのこだわりは希薄であり、「日本文化」としてのメッセージ性に欠けると感じたこ

とから、パッケージデザインで和のメッセージを伝えることを考えた。

海外の展示会などに積極的に参加されており、ディスプレイにも活用できるパッケージ

を活かした、「身に着ける」だけでなく「和テイストを鑑賞する」アクセサリーとして訴

求していかれてはどうかと考える。

知的財産全般についての知識や情報を収集した上で、製作を行うことで、より効果的に

知的財産対策を商品や販売戦略に反映できることから、早めの相談を行ってほしい。

61

第5章 本事業のまとめ

本事業においては、主に下記の3つの取り組みにより、海外展開におけるブランド化に向

けた知的財産活用促進と意識啓発を行った。

① 海外市場マーケティング調査

② セミナー開催を通じた参加者への意識啓発

③ 海外展開を希望する事業者(3 社)の商品ブラッシュアップ機会への知的財産活用促進

上記 3 つの取り組みにかかる知的財産・知的財産活用に関する講義、助言等、それぞれの

実施内容とその実施成果については、以下のとおりであった。

(1)海外市場マーケティング調査(再掲)

パリ、ローマで実施した海外市場マーケティング調査においては、現地専門家から持参商

品についての現地展開可能性などについての意見聴取を行った。

それぞれの意見ポイントは下記のとおりであった。

【酒】

⚫ 商品について

➢ (パリ)まずは味が良いことが重要で、ストーリーはその次にくる。その一方で、

ストーリーがあるとソムリエが話をふくらませやすいため、より興味を持たれるか

もしれないし、プロモーションの際にはメリットになる。

➢ (パリ)米にこだわっても、日本酒を選ぶ際に米の種類は意識しないし、そもそも

知らない。米の種類による違いは食のジャーナリストでもわかりづらい

⚫ パッケージについて

➢ (パリ)日本酒は男性が買うことが多いので、女性的なパッケージは現時点ではマ

イナスイメージとなる。

➢ (ローマ)女性なパッケージであることはマイナスにはならない。

➢ (ローマ)一般的な 180ML 瓶は、イタリアでは 80 年代にあった劣悪な酒の形に見

えるので、あまりほしいとは思わない。

➢ (パリ・ローマ)読めなくても書(墨文字)が受ける。書体でも金色で書くと中国

酒に見えるので要注意。日本は自然の雰囲気を持っているので、そのような色味の

方が良い。

⚫ 価格について

➢ (パリ)720ML 瓶だと仕入れ価格が 1000 円を切るものが一般的。

➢ (パリ)300ML 瓶が小売りでは一番よく売れる。

➢ (パリ)180ML 瓶の商品も 1 種類仕入れていて、小売店ではよく売れる。

➢ (パリ)輸入コストが乗った価格(小売りの場合日本の小売り価格の 3 倍程度)で

売られる商品を選ぶ際に、その価格帯で買えるワインをイメージして比較する。

⚫ その他

➢ (パリ)日本酒はすでに流通しているので、レストランに卸す際に、既に入ってい

るものと置き換えるレベルの個性がないと難しい。その判断基準はソムリエの好み

による。

➢ (パリ)岩手の日本酒 AKABU(赤武)は武士の絵が印字されており、インパクト

が残るラベル。パリのメゾンドサケで、赤いボトルもクリスマス商戦の時期にもマ

62

ッチして、プレゼント用として売れた。

➢ (ローマ)日本好きな人へプレゼントや、お寿司パーティーなどの用途・場面で購

入している。

➢ (ローマ)売り方がいちばん重要で、日本酒の知識を持ち、売れる・勧める人材が

必要。一般に現地の日本食レストランは中国人が経営しており日本酒の知識があま

りないので、日本酒について説明できないといけない。

【茶】

⚫ 商品について

➢ (パリ)すでにかなり多品目のお茶が入ってきているが、ハト麦茶・杜仲茶などは

まだあまり取り扱われていない。

➢ (パリ)日本のハーブティーとして、ノンカフェとして紹介できるが、インパクト

がない。抹茶のように飲む以外の用途があるほうが広がると思う。

➢ (ローマ)はと麦茶は子供のときに飲まさせられた「オルゾコーヒー」(麦コーヒー)

に似ており、イタリア人にはあまりうけない。馴染みもないので敬遠してしまう。

➢ (ローマ)売るのであれば、「BIO 商品」として、普通のお茶とは違う売り方が必

要。

⚫ パッケージについて

➢ (パリ・ローマ)はと麦茶は、お茶の効果(美肌など)があるのであれば、しっか

りとわかりやすくパッケージで伝える必要がある。杜仲茶はカフェインフリーであ

ることがパッケージでわかるようにするとよい。

➢ (パリ・ローマ)日本らしさがあるとよい。

➢ (パリ)ティーバッグがネットのものを使用しているが漂泊していない紙の方がよ

い。フランス人は素材、人工的なものを気にする。

⚫ 価格について

➢ (パリ・ローマ)同じ商品でも、パリで「安い、検討可能」という商品の価格帯で

も、ローマでは「現地価格を考えると高い」ということもある。

➢ (ローマ)高価格帯の商品でも、ティーショップのような専門店で売れば可能性が

ある。

⚫ その他

➢ (パリ)いちばんよく売れるのは抹茶、次に玄米茶。

➢ (パリ・ローマ)賞味期限 1 年では短い。注文してから届くまで 2~3 か月かかり、

その後 EU の他の国に輸出するとさらに時間がかかる。卸業者は残り 6 か月ないと

買わない。賞味期限は 18 か月~2 年あればよい。賞味期限が 1 年のものもあるが、

18 か月から 2 年のものが大半。

【その他の食品】

⚫ 商品について

➢ (パリ)「玄米麺」について、日本の麺はラーメンやうどんなどが認知されており、

親近感を持たれている。

➢ (パリ)グルテンフリーははやりなので売りになるが、かなり輸入されているのも

事実。

➢ (パリ・ローマ)「またきて四角」は、現地で類似品がたくさんあり、パティシエも

63

沢山いるので、わざわざ日本から買うことにはならない。その一方で、スイーツで

も日本商品の軽やかさを演出し、フィンガーフードのようなつまめるスイーツにで

きると日本らしさが出る。

➢ (パリ・ローマ)「添加物と砂糖を使わない海藻ゼリー」は、現地ではコンポートが

流通しているし、シェフは自前で作ってしまうため、なかなか扱いづらい。

➢ (パリ・ローマ)出汁用の干椎茸について、シェフからの要望で仕入れている。植

物性のダシのニーズがある。その一方で、昆布ダシに比べると、需要が少ない。

➢ (パリ・ローマ)「いかたっぷり XO 醤」などの水産加工物については、商品の形状

によってできることもあるが、EU 輸入は非常に厳しいのが実情。日本語で書かれ

ていても中国製の練り物だったり、ベトナム製だったりする。

➢ (パリ・ローマ)全商品について、賞味期限 1 年未満では短すぎる。注文してから

届くまで 2~3 か月かかり、その後 EU の他の国に輸出するとさらに時間がかかる。

卸業者は残り 6 か月ないと買わない。賞味期限は 18 か月~2 年あればよい。賞味期

限が 1 年のものもあるが、18 か月から 2 年のものが大半。

➢ (ローマ)日本産の卵や乳製品などを利用していると EU 規定で輸入できない。日

本メーカーのマヨネーズを輸入する際には、アメリカ産の卵を使用した商品を輸入

している。

➢ (ローマ)消費者が日本食材店で日本のお菓子を選ぶ際には日本らしいもの(大福

等)を選ぶので、バイヤー目線では手を出せない。

⚫ パッケージについて

➢ (パリ・ローマ)全商品について、商品の特徴・売りになる要素(例えばグルテン

フリーや非動物性、健康配慮食品など)は明記しないと見分けられないのでそれを

記載したほうが良い。

➢ (ローマ)現地の比較対象となる商品と比べ高価格帯になるものは、小売店で販売

する場合は、ビニール袋だと安く見えるので、紙などの箱にするとよい。

➢ (パリ)海外向けのパッケージ商品を扱っていないので、日本で流通しているまま

で問題ない。後ろの商品説明ラベルをフランス語版にして張り替えている。下手に

英語表記にしない方がよい。

➢ (パリ・ローマ)全商品について、日本的なロゴ・ラベルはそのままの方がよい。

⚫ 価格について

➢ (パリ・ローマ)全商品について、類似の現地商品や中国商品があり価格差がある

場合、値段の違いは何なのかをアピールする要素がなければ難しい。

⚫ その他

➢ (ローマ)食品については、日本食品の商社の日本からの仕入れのほとんどがシェ

フからの問い合わせで注文に至ったもので、確実な出口・需要があるものである。

そのため、完成している商品は、普段どのように販売するかなかなかイメージでき

ない。

➢ (パリ・ローマ)日本食材ではユズが非常に人気である。

【食品以外の商品】

⚫ 商品について

「IGUSA PRODUCTS」について

➢ (パリ・ローマ)類似商品が現地にあると売れづらい。いくらよい自然素材のもの

であっても、一般消費者にそうでないものとの違いを見分けられない。

64

➢ (ローマ)よい作り方をしているのであれば、その作り方は紹介したほうがよい。

➢ (ローマ)一部の消費者がほしいと思う商品であっても、仕入れる立場のバイヤー

は別の見方をすることもある。

「風神雷神図ストール」について

➢ (パリ・ローマ)ストールとして作った商品でも、「室内の装飾品」としてニーズの

方が高かった。

➢ (パリ・ローマ)日本商品が他のアジア商品のように見えてしまう差は紙一重であ

る。そうさせないための一工夫が必要である。

➢ (パリ・ローマ)日本らしさが出すぎてしまうと身に着けるものとしては使いづら

くなる。

⚫ パッケージについて

➢ (パリ・ローマ)類似商品のアジア製品が出回っている場合、商品そのものが日本

製と分からないので、パッケージは日本を感じられるデザインにするとよい。

⚫ 価格について

➢ (パリ・ローマ)職人が作り上げるよい商品であっても、現地で流通している他の

アジア製の安い類似品との価格差や価値の差がわかる現地人はあまりいない。

(2)セミナー開催を通じた参加者への意識啓発(再掲)

①実施内容

セミナーにおいては、2 人の講師が、a「海外展開における知的財産活用戦略」、b「パリ・

ローマ海外市場マーケティング調査結果に基づく EU 市場における日本の地域産品マーケテ

ィング」の専門領域から、講演を行った。

それぞれの講演における指導ポイントは下記のとおりであった。

N

O

講師名 専門領域 指導ポイント

a 柳生 一史氏

独立行政法人

工業所有権情

報・研修館

(INPIT)

海外知的財産

プロデューサー

海外展開に

おける

知的財産

活用戦略

◼ ビジネスと知的財産の係わり

・日本企業が海外進出をした際に、過去に多くの国や地

域で模倣被害を受け、経済的被害、ブランドイメージ

低下、消費者からのクレーム、取引先とのトラブル、

技術流出、海外展開の遅延などの被害が発生している。

・海外ビジネスではこうした被害を防止する上から知的

財産戦略・戦術が重要となる。進出商品や進出先の位

置づけに応じて検討が必要。

・知的財産登録にあたっては、仕向先の言語での意味に

問題がないかなども確認する必要がある。

・技術などは盗用などに注意するための契約が必要。

◼ 知的財産にかかわる体制・活動の在り方

・情報管理は非常に重要である。情報の重要性ごとにし

っかりと自社で管理する。

◼ 知的財産に関わる国際契約での留意事項

契約書の重要性・意義を理解することが必要。

65

b 手島 麻記子

株式会社

彩食健美

代表

パリ・ローマ

海外市場

マーケティン

グ調査結果に

基づく

EU 市場での

日本の

地域産品

マーケ

ティング

◼ PR ポイントがわかりやすいパッケージ

・日本商品の輸出にあたっては、「日本らしさ」が PR ポ

イントとなる。

・「無農薬」「グルテンフリー」などのキーワードもわか

りやすくする。

◼ 売る相手の必要な情報と合わせた営業・販売

・現地のユーザーが商品の使い方が分からないので、そ

の商品がどのように使えるのかなどを伝授することが

重要。

◼ 現地マーケットの実情にあった商品づくり

・「EU」と一言でくくっても、都市によって様相が大き

く異なる。パリで受け入れられる商品がそのままロー

マで受け入れられるとは限らない。

・日本で売れているものが EU でそのまま受け入れられ

るとも限らない。例えば日本酒は日本では四合瓶や一

升瓶の流通が一般的だが、パリ・ローマの小売店では

300ML 瓶や 180ML 瓶の方がよく売れる。

・現地で類似商品が流通している場合、日本と同じ規格

では難しい。いかに違いを説明できるかがポイントと

なる。

◼ ストーリー展開

・商品ひとつひとつが日本文化を伝えるメディアである

と考えて商品開発する必要がある。そのうえで、日本

らしさとして「自然との共生」「神道、禅、侍などに通

じる精神性」「細やかさ」などをストーリーとして伝え

る商品・パッケージデザインが必要である。

②参加者にとっての効果(抜粋して再掲)

■本セミナー受講生にとっての受講効果(満足要因)

【参加により受講前に比べて理解が深まったと回答した参加者の割合】

*(「深まった」+「どちらかというと深まった」)

・「海外展開における知的財産の重要性に関する知識」:85.7%

・「EU 市場における販路開拓・拡大に関する知識」:100%

・「海外ブランド化に向けて商品デザイン等に関する知識」:100%

【知的財産活用に関する満足要因】

・知的財産活用についての理解が深まり、パッケージデザインを知的財産戦略の視点から発

想することなど、新しい知見を得ることができた点。

【EU 市場におけるマーケティング知識に関する満足要因】

・細やかな輸出先のマーケティングの重要性をわかりやすく学ぶことができた点。

66

【デザインを含む総合的な満足要因】

・「知的財産」「マーケティング」「デザイン」が、相互に作用することで成果を生むことにつ

いて、専門家が実践的な視点から指導を行った点。

67

(3)海外展開を希望する事業者(3 社)の商品ブラッシュアップ機会への知的財産活用促

①対象事業者にとっての成果

対象事業者への商品パッケージの改善指導については、以下のような成果と今後に向けた

課題を整理した。

成果 課題

⚫ EU 市場に向けて必要となるマーケテ

ィングの基礎的な知識と情報、デザイン

の重要性について、講師の知見を具体的

に得ることができた

⚫ EU における日本の地域商品の市場性

を踏まえた自社商品の強みと現地にお

いて優位力となる日本の「文化性」や「高

品質性」をパッケージデザインに表現で

きた。

⚫ 輸出コストを抑制でき安全に輸出する

ための「パッケージの素材選定」「機能

性の確保」。

⚫ 知的財産を含めた表記の重要性につい

ての認識の醸成。

⚫ 商品のメッセージを明確に表現した、非

言語コミュニケーションツールとして

のパッケージ戦略。

【最後に】

新たに EU 市場での販路開拓を図る事業者にとっての事業効果

本事業に参加した中国地域の中小事業者は、海外展開の初期段階にある事業者で、EU 市

場にあっては、本格的な市場参入前の段階であった。

個別訪問指導を受けた3事業者は、これまでの海外展開の経緯のなかで、それぞれ商品及

びパッケージ等に課題を認識し、改善を図る取り組みも進めており、商品については海外展

開に向けて一定の手応えを有していた。しかしながら、パッケージについては、デザイン性、

機能性、輸出における安全性確保、コスト低減といった視点に集中した発想となっていた。

それが、本事業への参加を通じて、商品開発、デザインなどにも仕向先における知的財産

活用の視点から、妥当性、適合性などをチェックすることの重要性を学ぶ機会となった。

以上のように、商品のブランド化を図るには、知的財産活用の重要性を理解した上で、ブ

ランド戦略はじめ商品製造、パッケージデザインなどに的確に反映させていくことの重要性

が明らかになったことは、今後、EU 市場での販路開拓を図る中小企業にとって非常に有意

義であり、今後も中小企業者にとって効果的な海外展開を支援していく。

平成30年度

『30年度中国地域中小企業 (地域資源・食品分野)の海外展開に係る

ブランド構築支援事業』報告書

平成 31年 2月

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広島合同庁舎 2号館

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