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FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 1
第4章多重化とマルチアクセス
電気・通信工学専攻
安達文幸
「応用電気通信工学」
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 2
目次
4.1 マルチアクセスの目的
4.2 マルチアクセスの分類
4.3 デマンドアサインに基づくマルチアクセス
4.3.1 FDMA4.3.2 TDMA4.3.3 CDMA4.3.4 デュープレックス
4.3.5 周波数利用効率
4.4 ランダムアクセス
4.4.1 ALOHA4.4.2 CSMA4.4.3 ISMA4.4.4 予約ランダムアクセス
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 3
4.1 マルチアクセスの目的
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 4
マルチアクセス
マルチアクセスとは,多数の送信者が1つの通信路を共有して送信することを言う.受信点は1つである.
携帯電話が良い例である.
基地局
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 5
移動通信システム
十分な数のチャネルがあれば,通信ユーザ一人一人に異なるチャネルを割り当てることができる.
しかし,これでは周波数利用効率が低い.
ユーザ数よりはるかに少ない数のチャネルを用いて通信できるようにする技術が,マルチアクセス技術である. も良い例が移動通信システムである.
上りリンクと下りリンク
上りリンク(端末から基地局へのリンク):multipoint-to-point 通信であり,マルチアクセス技術(multiple access technique)を用いている.
下りリンク(基地局から端末へのリンク):point-to-multipoint通信であるので,ユーザ間の調整は不必要であり,多重技術(multiplexingtechnique)が用いられる.
しかし, 近では,下りリンクの場合にも多くのユーザの中から少数のユーザを選択してパケットを送信するスケジューリングが用いられるようになったことから,下りリンクでもマルチアクセスという用語が用いられるようになった.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 6
制御チャネル
通信チャネル
(a)チャネル構造
基地局移動局
(b) 移動局の状態遷移
基地局
移動局
チャネル割当
チャネル要求
チャネル設定
通信
通信
チャネル放棄
チャネル放棄
FDMATDMACDMA
ALOHAICMA
アイドル(idle)
チャネル捕捉 通信状態
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 7
4.2 マルチアクセスの分類
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 8
デマンドアサインに基づくマルチアクセス技術
連続でかつ伝送遅延が短いことが要求される通信(例えば音声通信)で用いられる.
ランダムアクセス技術
パケット伝送のような通信に用いられる.
ランダム
デマンドアサイン
周波数分割マルチアクセス(FDMA)
時間分割マルチアクセス(TDMA)
符号分割マルチアクセス(CDMA)マルチアクセス技術 ALOHA
CSMAICMA
予約ランダム
純粋ランダム
予約ALOHA
PRMA
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 9
4.3 デマンドアサインに基づくマルチアクセス技術
4.3.1 FDMA4.3.2 TDMA4.3.3 CDMA4.3.4 デュープレックス
4.3.5 周波数利用効率
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 10
周波数分割マルチアクセス(FDMA):割り当てられた帯域を複数の帯域に分割し,各帯域をユーザに割り当てる
時間分割マルチアクセス(TDMA):時間をスロットに分割し,各スロットにユーザを割り当てる
符号分割マルチアクセス(CDMA):全てのユーザが全帯域と時間を共有する.ユーザ識別には拡散符号を用いる
周波
数
時間
FDMA TDMA CDMA
拡散符号
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 11
FDMAとTDMAチャネルに重なりがなく完全直交しているので,干渉が発生しない.
CDMA拡散符号を用いてチャネルを形成する.
上りリンクではユーザ位置が異なるので,時間同期が難しい.
異なるユーザに割り当てられた拡散符号間の相互相関がゼロでないので,これが干渉になる.
単一無線セルの移動通信では,CDMAの周波数利用効率(ユーザ数/総チャネル数)はFDMAやTDMAより小さい.しかし,多数の無線セルを用いて広いサービスエリアをカバーする携帯電話方式などではこれが逆転する.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 12
FDMA動作
周波数利用効率を高くするため,1チャネルあたりの帯域幅を狭くしている.このために用いられるのが,低ビットレート音声符号化や線形多値ディジタル変調(ナイキストフィルタで帯域制限したPSKやQAM)技術である.
送信情報(音声など)を10~20ms毎のデータ系列に分割し(フレーム化),誤り訂正符号化したあと,狭帯域変調する.
高安定な周波数シンセサイザとチャネル選択フィルタが必要である.
設計例 音声符号化:8kbps 誤り訂正符号化:符号化率0.5の畳み込み
変調:4PSK,ロールオフ率0.5のナイキストフィルタ
チャネル帯域幅:8×2/2×1.5=12kHz
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 13
送受信機と送受信タイミング周波数変換
音声符復号器
チャネル符復号
器 復調器
データ変調器
~シンセサイザ
フィルタ
フィルタ
(a) 送受信機構成
(b) 送受信タイミング
下りリンク (FDM) フレーム(10~20ms)
時間
上りリンク(FDMA)
チャネル #0 (周波数 #i)チャネル#1 (周波数 #j)
チャネル#0 (周波数 #p)チャネル#1 (周波数 #q)
時間
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 14
例題4.1(問)8kbps音声符号化,符号化率0.5の畳み込み誤り訂
正符号化,ロールオフ率0.5のナイキストフィルタで帯域制限した4PSK変調を用いるFDMAのチャネル帯域幅を求めよ.
(解)チャネル帯域幅:8×2/2×1.5=12kHz
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 15
TDMAフレーム構造
時間をフレームに分割し,各フレームを更に時間スロットに分割する.
チャネル
フレーム内の1つの時間スロットが1つのチャネルになる.すなわち,周期的(フレーム時間毎)に1つの時間スロットが割り当てられる.この割当は固定されている.
ユーザの伝送速度の要求に応じて,1つまたはそれ以上の時間スロットがユーザに割り当てられる.
同期符号
制御データ
ユーザデータガード時間
時間スロット
時間
フレーム(10~20ms)
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 16
マルチアクセス通信中の各ユーザは割り当てられた時間スロット位置で信号を送信する.送信時間がお互いに分けられているので,理想的な場合,干渉がない.
TDMAはFDMAと組み合わせて使われるのが一般的である.すなわち,周波数帯域を複数のTDMA帯域に分け,各TDMA帯域はTDMAとして使われるというもの.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 17
送受信機と送受信タイミング
(a) 基地局送受信機(NチャネルTDMA)
シンセサイザ
周波数変換
復調
データ変調
フィルタ
フィルタ時間分離
~音声符復号
チャネル符復号
(b) 送受信タイミング
時間
フレーム(N個の時間スロット)
0 1 2 0 1 2 0 1 2
0 0 0
1 1 1
2 2 2
チャネル#0
チャネル#1
チャネル#2
下りリンク
上りリンク
N-1
N-1
N-1
時間多重
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 18
往復遅延とガード゙時間各ユーザは下りリンクの時間タイミングに同期して送信
するので,全てのユーザは時間同期しているように見えるが,各ユーザは異なる位置にいるので伝搬時間が異なり,各ユーザの送信タイミングは厳密には一致していない.更に,各ユーザが送信したバースト信号は異なる伝搬時間だけ過ぎてから基地局に到達する.結局,往復遅延(ラウンドトリップ遅延)は=2d/c となる.ここで,dは基地局とユーザ間の距離,cは光速(3×108m/s)である.衝突が発生しないよう往復遅延に等しいガード時間が必要である. 時間スロット 時間スロット
ユーザデータ
=2d/c
ユーザデータ
基地局送信
受信
ガード移動局送信
時間ガード
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 19
TDMA方式の 大通信可能距離ガード時間が 大往復遅延より短いと,基地局で受信されるユーザのバースト信号はお互いに衝突して正しく受信されない場合がある.送信タイミング制御衝突を避けるためガード時間を増加すると,周波数利用効率が低下する.すなわち,一定の情報伝送速度とスロット長を確保するためには,伝送速度を高くしないといけないが,こうするとTDMA帯域幅が広がってしまう.ガード時間を少なくするため,移動局の送信タイミングを早めたり遅らせたりするコマンドを基地局から送信している.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 20
例題4.2(問)8チャネルTDMAの帯域幅を,下記の条件の下で求め
よ. 音声符号化:8kbps 誤り訂正符号:符号化率0.5の畳み込み 変調:4PSK,ロールオフ率0.5のナイキストフィルタ フレーム長:20ミリ秒 スロット長:20/8ミリ秒 ガード時間: 大通信可能距離5kmとすると33マイクロ秒
(解) 帯域幅:8×2×1/2×1.5×20/(20/8-0.033) =97.28kHz 1チャネル当たりの帯域幅:97.28/8=12.16kHz
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 21
TDMA携帯電話(日本標準PDC方式)フルレート:同時に3ユーザが通信できる3チャネルTDMAである.20ミリ秒(ms)に一回送信する.ハーフレート:同時に6ユーザが通信できる6チャネルTDMAである.40ミリ秒(ms)に一回送信する.現在は殆ど,6チャネルTDMAが使われている.
固定網へ
移動機#0移動機#2
下りTDM
上りTDMA
交換局
移動機#1
20ms
フルレートトTDMA(3ch)
基地局
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 22
PDCとPHS PDC PHS 周波数帯 800, 1500MHz 1900MHz
搬送波周波数間
隔 25kHz インターリー
ブ 300kHz
無線伝送速度 42kbps 384kbps マルチアクセス TDMA-FDD TDMA-TDD 1 搬送波当たり
のチャネル数 6 (ハーフレート) 4
変調方式 /4-QPSK /4-QPSK 音声符号化 5.6kbpsPSI-CELP 32kbps ADPCM
下り
上り
基地局
移動局
2 3 ch0 1 2 3ch0 15ms
PDCハーフレート
PHS
ch0 1 2 3 4 5 0 1 2 3 4 5
40ms
ch0 1 2 3 4 5 ch0 1 2 34 5
下り
上り
時間
下り 上り
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 23
CDMA全ユーザが同一の周波数帯域を共有するのがCDMAである.拡散符号系列によってチャネルが生成される.CDMAには次の2つがある. 直接拡散CDMA (DS-CDMA) 周波数ホッピングCDMA (FH-CDMA)
1.25MHzや5MHzの拡散帯域を持つDS-CDMAは第3世代携帯電話方式で採用されている.一方,FH-CDMAは携帯端末と周辺機器を接続する無線リンクで採用されている(Bluetooth).
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 24
直接拡散CDMA(DS-CDMA)データ速度より高速の拡散符号系列を,変調信号に乗積することにより広い帯域幅の信号に変換する.データ変調2値送信データ系列(例えば音声符号化器出力)を誤り訂正符号化し,データ変調シンボル系列に変換する.拡散変調データ変調シンボル系列を拡散符号系列と乗積する.拡散符号系列はチップ系列とも言われ,ほとんどの場合,+1 または-1 の2値系列である.逆拡散受信側では,送信と同じ拡散符号系列を受信信号に乗積し相関がとられる.これにより送信されたデータ変調シンボル系列が得られる.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 25
送受信機と送受信タイミング
フレーム(10~20ms)下りリンク
時間
上りリンク
(b) 送受信タイミング
チャネル#0 (符号 #i)チャネル#1 (符号 #j)
チャネル#0 (符号#p)チャネル#1 (符号#q)
(a)基地局送受信機の構成
Voice codec
Channel codec
Spreader/despreade
rDemo-dulatorVoice
codecChannel
codecSpreader/despreade
rDemo-dulator 搬送波
音声符復号
チャネル符復号
拡散・逆拡散
変調・復調
周波数変換
+
~
フィルタ
フィルタ
チャネル
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 26
下りリンク全チャネルは時間同期しているので,直交拡散符号系列を用いることができる(すなわち,干渉が発生しない).上りリンク通信中の各ユーザは割り当てられた拡散符号を用いて送信信号を拡散する.TDMAのときと同じように,各ユーザの送信タイミングは同期していないので,直交符号を用いて干渉をなくすことができない.そこで,擬似雑音系列(PN: pseudo noise sequence)のような擬似直交符号系列が用いられる.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 27
拡散と逆拡散
B fW/R
f
データ変調
拡散符号生成
符号化データ
拡散された信号
拡散(a) 送信機
(b) 受信機
データ復調
拡散符号生成
符号化データ拡散され
た信号
逆拡散
f
フィルタ
f干渉
f
フィルタ
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 28
拡散過程
拡散率(SF: spreading factor)が4で,データ変調と拡散変調ともに2PSKの場合の例を下図に示す.
データ変調(2PSK)
“1” “0”
搬送波cos(2fct)
拡散符号系列
拡散された信号
1 0 0 1 0 1 0 1
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 29
データ変調波の帯域幅
情報データレートをW bits/sec (bps),誤り訂正符号化の符号化率をR(<1)とする.データ変調に2PSKを用いるとき,データ変調波の帯域幅はW/R Hzとなる.
拡散率と処理利得
拡散帯域幅をB Hzとする(一般的にはB>>W).拡散帯域幅とデータ変調帯域幅との比SF=B/(W/R)は拡散率と呼ばれる.一方,拡散帯域幅と情報データレートとの比B/Wは処理利得Gpと呼ばれる.
拡散された信号の電力スペクトル密度
データ変調信号のそれの1/SFになる.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 30
拡散前と拡散後の電力スペクトル密度
白色雑音電力スペクトル密度N0
1ユーザ当たりの電力スペクトル密度=S/Bfc f
拡散帯域幅B
拡散前の帯域幅W/R
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 31
逆拡散
相互相関の低い拡散符号を用いれば,ユーザを識別できる.受信したいユーザの拡散符号に同期した拡散符号を発生させて受信信号に乗積し積分すれば(相関),そのユーザのデータ変調波を得ることができる.
他ユーザの電力スペクトル密度
他ユーザの信号は帯域幅Bに拡散されたままであるので,希望ユーザの変調波のそれの1/SFである.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 32
遠近問題と送信電力制御(TPC:transmit power control)
上りリンクの拡散符号はPN符号である.PN符号間の相互相関は零ではないので,他ユーザの信号からの干渉を受ける.基地局に近いユーザの信号は強く,遠くのユーザの信号は弱い.このため,基地局に近いユーザの信号は遠くのユーザの信号に大きな干渉を与えることになる.これが遠近問題である.全てのユーザの信号が同一電力で受信されるように,移動局の送信電力を制御することが必要になる.
高速送信電力制御(高速TPC)移動通信では,ユーザの移動につれて受信電力が激しく変動する.これをマルチパスフェージングと言う.
大ドップラー周波数fDはfD=v/で与えられる.ここで,vは移動速度(m/s)であり, は搬送波波長である.fc=2GHzでv=15m/s(54km/h)のとき,受信電力の変動の速さは100Hzにも達する.このような場合,遠近問題と同じような信号電力間の大小関係が発生する.常に一定の受信電力になるよう送信電力を制御するのが高速TPCである.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 33
受信
電力
時間FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 34
マ ル チ パ ス フ ェ ー ジ ン グ(fD=4Hz@v=0.6m/s(2.16km/h)および fc=2GHz)があるときの受信電力の瞬時変動.
RBW300 kHz
VBW300 kHz
SWP2.0 s
CENTER 1.990500000 GHz SPAN 0 Hz
0.4sec
10dB
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 35
閉ループ高速TPC
送信電力制御コマンド800~1500回/秒
コマンド
コマンド
FA/Tohoku U「応用電気通信工学」 36
閉ループ高速TPCの簡単なモデル 基地局で受信品質測定 目標品質との比較とTPCコマンド生成 下りリンクでTPCコマンドを移動局へ送信 移動局では送信電力を調整
目標値のとき受信品質
目標値のとき 受信品質
,dB )1( ,dB )1(
)(nPnP
nP
制御Ttpc
+上りリンク
移動局
品質測定
比較
目標品質
コマンド生成
下りリンク
基地局
送信電力P(n) dB
P(n-1)dB
dB
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 37
高速TPCのときの移動局送信電力の変動基地局受信電力を一定値にするため,移動局の送信電力は変動することになる.
RBW300 kHz
VBW300 kHz
SWP2.0 s
フェージング(fD=4Hz)
CENTER 1.990500000 GHz
0.4 sec
10 dB
300 kHz
300 kHz
フェージング(fD=4Hz)
RBW
VBW
SWP2.0 s
CENTER 1.990500000 GHz SPAN 0 MHz
0.4 sec
10 dB
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 38
高速TPCのときの受信電力受信電力の変動が消え,基地局受信電力はほとんど一定値になる.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 39
DS-CDMAの利点搬送波周波数(FDMA)や時間スロット(TDMA)の割当が不必要である,様々な速度のデータを自由に伝送できる.TDMAと同じようにDS-CDMAもFDMAと組み合わせて用いられる.通信可能なユーザ数(またはチャネル数)DS-CDMAでは通信可能なユーザ数(またはチャネル数)の導出は簡単ではない.周波数利用効率の節で詳細に述べる.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 40
例題4.3(問)DS-CDMAの処理利得GP,拡散率SF,拡散帯域幅Bおよび 大
チャネル数Cmaxを,下記の条件のもとで,求めよ.
音声符号化:8kbps 誤り訂正符号化:符号化率R=0.5の畳み込み
データ変調:2PSK(M=2) 拡散符号:チップレート1.024Mcps 拡散変調:2PSK,ロールオフ率=0.5のルート自乗余弦ナイキストフィ
ルタ
(解)拡散率SF:1024/16=64 chip/symbol大チャネル数Cmax=64チャネル
処理利得GP:1024/8 =128拡散帯域幅B:1.024×(1+ )=1.536MHz
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 41
周波数ホッピングCDMA周波数ホッピング(FH-CDMA)では搬送波周波数を周期的に変化させる.周波数変化のパターン(周波数ホッピングパターン)がFH-CDMAのチャネルを表す.周波数ホッピングパターンは符号系列によって生成される.搬送波周波数は周波数ホッピングパターンに従って周期的に変化させられる.受信側では,送信と同じ周波数ホッピングパターンに従って受信局部発信周波数を変化させ,常に一定のIF周波数の信号に周波数変換する.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 42
送受信機と送受信タイミング
(b) FH-CDMAとDS-CDMA
(a) 基地局送受信機
周波数
時間
ホッピング周
波数
帯域
拡散符号A
FH-CDMA DS-CDMA
拡散符号B
ホッピングパターンB
ホッピングパターンA
RF 周波数
周波数変換
~音声符復号
チャネル符復号
データ変調
復調 フィルタ
フィルタ
シンセサイザ
周波数ホッパ~
~
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 43
電力スペクトル密度DS-CDMAでは全帯域を占有する.FH-CDMAではある瞬間には全帯域の一部しか占有しない.しかし,占有周波数位置は時間と共に変化するから,長い時間で平均化すれば全帯域に一様に電力が分布する.
拡散帯域幅:ホッピング周波数の数に比例する.高速FH-CDMA(FFH-CDMA)と低速FH-CDMA(SFH-CDMA)
FFH-CDMA:ホッピングレートがデータ変調のシンボルレート(1シンボル時間の逆数)より速い.同じデータシンボルが異なる搬送周波数で送信される.SFH-CDMA:ホッピングレートがデータ変調のシンボルレートより遅い.複数のデータシンボルが同じ搬送波周波数で伝送される.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 44
デュープレックス
双方向通信では,デュープレックス技術(duplexingtechnique )が必要.
周波数分割デュープレックス(FDD) 上りと下りリンクは異なる搬送波周波数を用いる.
下りリンクの全てのチャネルは時間タイミングが同期している.上りリンクの時間タイミングを下りリンクの時間タイミングに同期させることで,擬似的に全てのユーザの上りリンクの時間タイミングを同期させることができる.
時間分割デュープレックス(TDD) 上りと下りリンクで同一の搬送波周波数を用いる.
1フレームの時間の一部を下りリンクとして,残りを上りリンクとして使用する.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 45
FDD
TDD
FDMA
TDMA
CDMA
下りリンク
上りリンク
FDD
TDD
フレーム
切り替えポイント
時間
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 46
周波数利用効率
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 47
比較条件
情報速度:W bps誤り訂正符号化率:R(<1)オーバーヘッド(フレームヘッダー,ガード時間,ガード帯域)なし2PSK(M=2):データ変調された信号の帯域幅はW/RHzつまり,ロールオフ率=0の送信フィルタを仮定全帯域幅:B Hz
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 48
FDMAとTDMAのユーザ数
同時通信可能な 大ユーザ数Cは,nチャネルTDMAの搬送波の個数はFDMAの1/nであることから,FDMAとTDMAで等しい.次式で与えられる.
RGWBRWRBCC pTDMAFDMA )/()/( 1
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 49
DS-CDMAのユーザ数
下りリンク直交拡散符号系列を用いることができるので,収容可能な 大ユーザ数CはFDMAやTDMAと同じである.上りリンク擬似雑音系列を拡散符号に用いるので,拡散符号間の相関のために干渉が発生する.このため,収容可能なユーザ数は下りリンクより少ない.同時通信可能なユーザ数の導出は簡単ではない.以下では,簡単な近似式を求める.
帯域幅W/R[Hz]のBPSK信号が拡散符号系列により帯域幅Bへ拡散される.拡散された信号の電力スペクトル密度は,S/B [Hz]となる.拡散率SFは次式で与えられる.
ここで,Gpは処理利得である.
RGWBR
WRBSF p
1
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 50
Sf
W
S f
W/R
S f
B
(a)符号化前の信号
(b)符号化後の信号
(c)拡散後の信号
S/W
S/(W/R)
S/B
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 51
拡散前と拡散後の電力スペクトル密度
白色雑音電力スペクトル密度N0
1ユーザ当たりの電力スペクトル密度=S/Bfc f
拡散帯域幅B
拡散前の帯域幅W/R
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 52
希望ユーザの信号は逆拡散によりもとの符号化BPSK信号に戻される.その帯域幅はW/R [Hz]である.一方,他のユーザ(すなわち干渉ユーザ)の帯域幅は逆拡散によっても変化せずB [Hz]のままである.干渉+雑音の電力スペクトル密度を0で表すものとする.情報1ビットあたりの信号エネルギー対(干渉+雑音)電力スペクトル密度比は次式のようになる.
10
000
00
)/(/)1(1
)//(/)1(1
/)1(/
/)1(,/
NEGC
WSNBWCNBSCWSE
NBSCWSE
bp
b
b
であることから ここで,
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 53
0
0
0
0
0
0
0
0000
0
0
00
0
0
1)/(
1)/(
1
)/(1
1/
1//1
/1
NE
GC
NE
GC
E
INI
NE
GNE
EE
GC
C
codedb
pCDMA
codedb
pCDMA
codedb
b
p
b
b
b
p
以上より
れよりで表すものとする.こを電力スペクトル密度比音)ネルギー対(干渉+雑ビット当たりの信号エために必要な情報
誤り率を確保するいているときに,ある 誤り訂正符号化を用.スペクトル密度である
渉電力は他ユーザからの総干で,ここで,
はユーザ数これより,通信可能な
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 54
codedb
pCDMA
codedb
p
codedb
pCDMA
EG
C
NINI
IN
EGN
EG
C
NI
)/(
/
1)/(
1)/(
0
00
00
1
0
0
00
0
0
000
に近づく.
式), 大ユーザ数は次まり大きくなるにつれ(つ
より密度が雑音電力スペクトル度干渉電力スペクトル密
であるからここで,
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 55
誤り訂正符号化の効果
FDMAとTDMAユーザ数は所要誤り率には依存しない.符号化率Rだけに比例するので,符号化率の高い(Rが1に近い)誤り訂正符号が望まれる.
CDMA他ユーザからの干渉があるので,ユーザ数は所要誤り率に依存する.従って,ユーザ数は所要誤り率を確保するために必要な復号後のEb/0に依存することになる.ユーザ数は復号後の所要Eb/0に反比例するので,大きい符号化利得Gcodingが得られる低符号率(Rが0に近い)の誤り訂正符号を用いるのがよい.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 56
る.ンク容量を大きくでき用いればより大きなリーボ符号化)をい符号化(たとえばタでは符号化利得の大き
てに比例する.したがっ利得のリンク容量は符号化つまり,
を書き直すとを用いて
符号化利得
次式で計算できる.ザ数はの同時通信可能なユー符号化を用いる時の
CDMACDMA
1)/(
)/()/(
1)/(
CDMA-DS
0
0
_0
0
_0
0
0
0
c
codedunb
pcCDMA
CDMA
codedb
codedunbc
codedb
pCDMA
G
NE
GGC
CE
EG
NE
GC
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 57
例題4.4(問)下記の条件のもとでFDMA,TDMAとCDMAの 大ユーザ数を求めよ.
Gp =128 CDMAでは(Eb/0)un_coded=6.8dB@BER=0.001,符号化利得Gc=3.6dB及
びI0/N0→∝を仮定する.
符号化率R = ½(解)
CCDMA = 61
符号化率R = ½であるので,CFDMA = CTDMA = 64
61
)/(
/
_0
00000
CDMA
codedunb
pcCDMA
C
EG
GC
NINI
より
大になり
のときユーザ数がより,
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 58
符号化を用いたときのBER特性(計算機シミュレーション, AWGNチャネル)
0.0001
0.001
0.01
0.1
1
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Eb/N0 [dB]
BER
Pb(γ)AWGN
(23, 35) CC
(13, 15) turbo
符号化率R=0.5(23, 35) 畳み込み符号符号化利得Gcoding = 3.6dB@BER=10-3
(13, 15)ターボ符号符号化利得Gcoding= 5.5dB@BER=10-3
Eb/0 [dB]
G0=13G1=15
D D D
D D D
uk pk
(1)
pk(2)
uk
Inter-leaver Pu
nctu
rer
組織符号(情報ビット)
パリティ符号1
パリティ符号2
FA/Tohoku U「応用電気通信工学」 59
基地局セクタ化の効果
干渉を低減することができればCDMAユーザ数を増加できる.
以下の方法が用いられている.
移動局:音声駆動送信を用いることで他ユーザに与える干渉を低減できる.音声アクティビティファクタをとする.
基地局:指向性アンテナの採用により受信される干渉電力を低減できる.指向性ビーム数をNaとする.
ユーザ数
120度指向性アンテナ
Na=3の例
1
0
0
0
1)/(
acodedb
pCDMA NN
EG
C
FA/Tohoku U「応用電気通信工学」 60
情報1ビットあたりの信号エネルギー対(干渉+雑音)電力スペクトル密度比は次式のようになる.
1
0
0
0
0
0
0
10
00
00
1/
1/
1
)/(/)1)(/(1/)1)(/(
//)1)(/()/(
ab
p
b
pa
bpa
a
b
aa
NNE
G
NE
GNC
C
NEGCN
NBSCNWSE
NBSCNN
はユーザ数これより,通信可能な
となり倍になるから,干渉電力は
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 61
倍になる.
のときの数は,を用いるときのユーザ
セクタアンテナ.したがってであるはおよそ●
に反比例する.クタ声アクティビティファに比例する.また,音
はアンテナセクタ数可能なユーザ数● つまり,同時通信
となる.
とするとペクトル密度比を(干渉+雑音)電力ス
ネルギー対ビット当たりの信号エ情報確保するために必要な
る誤り率を用いているときに,あ● 誤り訂正符号化を
劣化する.
送品質がザ数が多くなるが,伝を小さくすれば,ユー●
81,1)3(
3]1991Gilhousen,[8/3
1)/(
)/(1
/
1
0
0
0
0
0
aa
aCDMA
acodedb
pCDMA
codedb
b
NN
NC
NNE
GC
E
E
K.S. GIlhousen, et al, “On the capacity of a cellular CDMA system,” IEEE Trans. Veh. Technol., Vol. 40, No. 2, pp. 303-312, May 1991.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 62
4.4 ランダムアクセス
4.4.1 ALOHA4.4.2 CSMA4.4.3 ISMA4.4.4 予約ランダムアクセス
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 63
デマンド・アサインに基づくマルチアクセス●FDMA,TDMAやCDMAなどでは,通信の始めにチャネル割当
があり,そのチャネルは通信の終了まで保持される.
●しかし,このアクセス法では,バースト的なパケットデータ通信に対しては効率が低い.パケットデータが無い時もチャネルを保持しているからである.
ランダムアクセス●パケットデータ通信に用いられるのがランダムアクセス.
●FDMA,TDMAやCDMAにおけるチャネル要求時に用いられる
●ランダムアクセスでは,1つのチャネルを多数のユーザが共有し,多 数 の ユ ー ザ の パ ケ ッ ト の 統 計 多 重 (statisticalmultiplexing)により高い周波数利用効率が得られる.
●ランダムにパケットを送信するとパケット衝突が発生する.衝突の後,直ちに再送すると再び衝突が発生する可能性が高い.これを避けるため,再送調整(retransmission scheduling) が用いられる.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 64
ALOHAもポピュラーなランダムアクセスで,純ALOHA (pure
ALOHA)とスロットALOHA(slotted ALOHA)の 2つがある.純ALOHA送信すべきパケットが発生したら直ちにパケットを送信する.2つ以上のパケットが時間的に重なると衝突が発生する.従って,パケットが正しく相手に受信されるのは,パケット長をTとすると送信パケットの始点の前後T以内(すなわち合計で2T)に他のパケットが送信されない場合のみである.衝突確率を減少させるには何らかの調整(coordination)が必要になる.
スロットALOHA時間はT毎のスロットに区切られ,パケットの送信はスロットの開始点のみ.このようにすれば, 1つ前のスロット時間内に他のパケットが1つも発生しなければパケット衝突が起きない.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 65
パケット
衝突発生区間=2T
T
他ユーザのパケット
(a) 純ALOHA
衝突
他ユーザのパケット
衝突
Timeパケット
(b) スロットALOHA
送信開始タイミング
他ユーザのパケット
衝突
衝突発生区間=T
パケット発生
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 66
スループットスループットはランダムアクセスの重要な性能指標であり,単位時間あたりの成功パケットの数で定義される.再送パケットも含めて全てのパケットの生起が不規則であるものとすると,時間幅の間にk個のパケットが生起する確率は次式で与えられる.
ここでは単位時間あたりに生起する総パケット数である.従って,パケットトラフィックをG=Tとすると,スループットは次式のようになる.
大スループットは,純ALOHAでS=0.184,スロットALOHAでS=0.368となる.
)exp(!)()(
kP
k
k
ALOHA , )exp()(ALOHA , )2exp()2(
0
0
スロット
純
GGTGPGGTGP
Sk
k
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CSMAもし既に送信されたパケットがあることを知ることができれば,パケット衝突を避けることができる.そこで,パケット送信前にチャネルを検知するようにしたのがキャリア検出マルチアクセス (CSMA: carriersense multiple access)である.チャネルが空き(アイドル)状態(他のパケットが送信されていない)と分かったときのみパケットを送信する.そうでなければ(他のパケットが送信中である),チャネルが空き状態になるまで待ちつづける.次 の3つのタイプがある. 1-persistent CSMA non-persistent CSMA p-persistent CSMA
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 68
1-persistent CSMAもしチャネルがビジーであると検知されればチャネルが空き状態になるまで待ちつづけ,チャネルが空きになるや否やパケットを確率1で送信する.この方法では,ビジーに自端末を含め2つ以上の端末でパケットが発生して累積していれば衝突になる.non-persistent CSMAもしチャネルがビジーであると検知されれば, ランダムな待ち時間の後,再びチャネルを検知する.端末毎に待ち時間が異なるので,衝突確率が少ない.p-persistent CSMA
大伝播時間のスロット毎に時間が区切られる.チャネルがアイドルであると検知されたとき,確率pでパケットを送信し,確率(1-p)で次のスロットにおいて再びチャネルを検知する. 1-persistent CSMAは p-persistentCSMAのp=1とする場合である.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 69
伝播遅延があるから理想的なチャネル検知は行えない
これは,パケット送信開始から伝播時間だけ経ってからパケットが送信されたと観測できるからである.
すなわち,チャネルがアイドルだと検知されたとしても,他の端末からパケットが送信されている可能性がある.もしそうならパケット衝突が発生してしまう.
パケット
T
衝突
時間
aT
パケット
伝搬遅延
パケット送信開始時間
チャネル状態 空き 使用中
希望端末
他の端末
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 70
スロットCSMAのスループット
次式で与えられる.ここでaはパケット長Tで正規化した伝播遅延である.
CSMA slotted persistent-1for
, )1(exp)exp(1)1()exp(1)1(exp
CSMA slotted persistent-nonfor
, )exp(1
)exp(
GaaaGaaGaaGG
aaGaGaG
S
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 71
スループット比較
(b) a=0.1
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0 1 2 3 4 5
Pure ALOHASlotted ALOHANon-persistent slotted C SM A (a=0)1-persistent slotted CSM A (a=0)
G
(a) a=0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0 1 2 3 4 5
Pure ALOHASlotted ALOHANon-p ersistent slotted CSMA (a=0.1)1-p ersistent slotted CSMA (a=0.1)
G
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 72
(d) a=0.4(c) a=0.2
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0 1 2 3 4 5
Pure ALOHASlotted ALOHANon-persistent slotted CSMA (a=0.2)1-persistent slotted CSMA (a=0.2)
G
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0 1 2 3 4 5
Pure ALOHASlotted ALOHANon-persistent slotted CSMA (a=0.4)1-persistent slotted CSMA (a=0.4)
G
衝突検出CSMA(CSMA/CD:collision detection)
CSMAで衝突が起こるのは,パケット送信開始から伝播遅延時間以内にパケット送信する場合である.
ほとんどの場合,a<<1であるから,衝突が検知されたら送信を止めるようにすればスループットを向上できる.
CSMA/CDは もポピュラーなランダムアクセスであり,LANのメディアアクセス制御(MAC)として利用されている
.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 73 FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 74
ISMA伝搬遅延時間が十分小さければ,CSMAはALOHAに比べて格段に優れた性能をもつから,無線パケットネットワークにおける理想的なランダムアクセスであると言える.しかし,全ての端末の送信パケットを検知できるとは限らない.すなわち,障害物によってある端末の送信パケットを検知できない場合がある.これは隠れ端末問題(hidden terminal problem)として知られ,CSMAのスループットを著しく低下させる原因になる.これを解決するのがbusy tone multiple access(BTMA) や idle signal casting multiple access(ICMA or ISMA) である.
A C
B
障害物
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 75
BTMAパケット送信を検知した端末は,通信チャネルとは別のチャネルでビジートーンを送信する.お互いに隠れ端末関係にある端末は,それ以外の端末から送信されたビジートーンを受信することによって間接的に相手の送信を知ることが可能である.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 76
ICMA基地局から下りチャネルを用いて,上りチャネルの状態(アイドルかビジーかの状態)を報知する.基地局は,パケットの受信中,他の端末の送信を中止させるためビジー信号を下りチャネルで報知する.それ以外のときはアイドル信号を送信する.
ICMAとCSMAは基本的には同じである.CSMAでは各端末がお互いにチャネルを検知することが必要であるが,ICMAでは,基地局から各端末へチャネルの状態(すなわち,他の端末が送信中であるかどうか)を報知する.CSMAと同様にnon-persistent ICMAと1-persistentICMA とがある.
上りリンク
下りリンク
パケット
空き使用中
空き 時間
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 77
予約ランダムアクセス
バースト的であるが,連続するデータパケットが発生するときがある.このようなとき,パケット1個1個を純粋ランダムアクセスで送信しようとすると,全部のパケットを正しく送信し終えるまで長い時間がかかることがある.これは衝突があるからである.
これを避けるため, 初のパケット(予約パケット)のみランダムアクセスで送信し,引き続くデータパケットの送信のためにチャネルを予約する.こうすれば衝突なしに残りのデータパケットを送信できる.パケット送信を終了したときに予約を解除する.予約パケットの送信にはスロットALOHAが使われる.
データパケット
データパケット
データパケット予約要求
パケット
後データパケット
基地局
端末
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デマンドアサイン・マルチアクセスを用いるシステムでは,チャネル要求のための専用の制御チャネルが設けられ,チャネル要求パケットをランダムアクセスを用いて送信している.
予約ランダムアクセスでは予約とデータの両方のパケットを同じチャネルで伝送する.しかし,多くの端末(ユーザ)を収容するときには多くのチャネルを必要とするから,予約パケット用とデータパケット用のチャネルに分離したほうが効率的である.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 79
参考文献
[1] J. G. Proakis, Digital communications, McGraw-Hill,1989.
[2] A. J. Viterbi, CDMA: Principles of spread spectrumcommunication, Addison-Wesley, 1995.
[3] D. J. Goodman, R. A. Valenzuela, K. T. Gayliard, and B.Ramamurthi, “Packet reservation multiple access forlocal wireless communications,” IEEE Trans. Commun.,vol. COM-37, pp. 885-890, Aug. 1989.
[4] D. J. Goodman and A. A. M. Saleh, “Near/far effect inlocal ALOHA radio communications,” IEEE Trans. Veh.Technol., vol. VT-3, pp. 19-27, Feb. 1987.
[5] J. C. Arnbak and W. van Blitterswijk, “Capacity ofslotted ALOHA in Rayleigh-fading channels,” IEEE J.Selected Areas Commun., vol. SAC-5, pp. 261-269, Feb.1987.
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 80
演習問題
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 81
演習問題4.1FDMA,TDMAとDS-CDMAの所要帯域幅を求めよ.設計条件は以下の通り. シングルセル方式
同時接続ユーザ数:C=16 1ユーザ当たりの情報速度:64kbps 誤り訂正符号化:符号化率R=0.5の畳み込み符号
データ変調:4PSK(QPSK) 帯域制限フィルタ:ロールオフ率=0.5のナイキスト自乗余弦フィルタ(CDMAの
ときは拡散後に用いる送信フィルタであることに注意)
フレーム長:10ミリ秒(TDMAの場合)
大通信可能距離:5km (TDMAの場合)
(補足)TDMAの場合,16チャネルTDMAになることに注意
DS-CDMAでは理想的な送信電力制御を仮定する.また,(23, 35)畳み込み符号を用いるものとし(Eb/0)coded=3.2dB@BER=0.001及びI0/N0→∞(熱雑音の影響を無視)を仮定する.
DS-CDMAの場合,基地局セクタ化も考え,その効果を考察せよ.ただし,送信アクティビティファクタは1である(常に送信している).
FA/Tohoku_U「応用電気通信工学」 82
演習問題4.2限られた数のチャネルを多数のユーザで共有して使用するときのマルチアクセス技術を列記し,それぞれの特徴を述べよ.また,同時双方向通信技術についても述べよ.
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