素粒子実験Belle II...素粒子実験Belle II 早坂 圭司(理学部物理学科)...

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素粒子実験Belle II早坂 圭司(理学部物理学科)

日本で2017年秋から開始予定の電子陽電子衝突型素粒子実験 Belle IIについて簡単に紹介します。Belle II 実験は、フレーバーファクトリー実験と呼ばれる実験の1つで、 B中間子、 D中間子、 タウレプトンなどを大量に生成し、それらの関わる素粒子現象の測定や未知の現象の探索を通して、この世界の成り立ちを解明していきます。

現代素粒子物理学と素粒子実験現代素粒子物理学では、素粒子は、物質を構成する粒子(クォーク・レプトン)、力を媒介する粒子(ゲージ粒子)、質量を与える粒子(ヒッグス粒子)からなり、素粒子標準模型と呼ばれる理論により非常に多くの素粒子現象を非常によい精度で説明可能です。

電子

陽電子対消滅

では、素粒子物理学は、もうおしまい?⇒素粒子標準模型にも欠点があります。近年、宇宙の精密観測で存在が明らかにされた暗黒物質(ダークマター)や暗黒エネルギー(ダークエネルギー)、さらには、最近発見されたニュートリノ振動現象が説明できません。また、世界の根源を説明する理論としては登場人物が多すぎます。

電子陽電子衝突型素粒子実験では、電子と陽電子をぶつけて対消滅さえることにより真空にエネルギーを与え、通常存在しない素粒子を作り出すことができます。(E=mc2) ここで、素粒子標準模型を超える新しい物理を研究する1つの方法はこのエネルギーをどんどん上げていき、未知の粒子が出現するまで頑張る方法です。もう1つの方法は既知の素粒子現象を非常に精密に測定し、素粒子標準模型との差異を見つけることです。残念ながら素粒子現象は量子力学的現象、即ち、確率的現象で、全く同じ条件で電子・陽電子衝突を試みても毎回違う結果となります。そのため、どちらの方法を採るにしても、非常に多くの回数の衝突を行い、そのなかで興味ある素粒子事象を探す必要があります。

精密測定を利用した発見の身近な例は、惑星の発見です。土星より外側の惑星は、その外に惑星がないと仮定した軌道と観測の「ずれ」により次々と発見されていきました。

国際共同素粒子実験Belle II2008年小林・益川ノーベル賞受賞に大きく貢献したBelle実験の後継実験となります。現在世界最高実験データを有するBelle実験の50倍のデータ取得を目指します。(約200PB)現在、23か国(地域)約100研究組織、約700名の共同研究者が居ます。非常に多くの素粒子を生成できることからフレーバーファクトリー実験とも呼ばれます。(フレーバー=素粒子の種類)

素粒子測定装置は全て自前で設計・建設を行います。データ解析には計算機を用いますが、最近は世界中の計算機資源を統合しないと要求計算量に追いつけません。そのため、実験結果を出すためには、データマイニングなどの実験データ解析技術の他にエレクトロニクス、信号処理、分散コンピューティング技術が要求されます。

Belle II実験は2017年秋稼働開始で、B,D中間子、タウレプトン等の崩壊事象を通じて新物理の探索を行います。また、日本が中心となる広域分散コンピューティングシステムを初めて稼働させ、実験データ解析を遂行します。

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