役に立つ遺伝子資源を求め、 「量子ビーム」で『宝探し』 ·...

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こんなプロジェクトの仲間です

微生物から植物まで様々な生物種を扱うので、良い成果を得るためには、それぞれの生物種を専門としている方との協力が欠かせません。

生物を扱う実験は、成果が出るまでに時間がかかったり、些細な条件の変化で結果が大きく変わってしまったりと苦労が多いです。

それでも新しい品種の報告が新聞に載ったり、発見した遺伝子についての論文を発表できたときは、それまでのつらさを忘れてしまいます。(大野豊記)

プロジェクト「イオンビーム変異誘発研究」の横顔

(一般向け資料)

役に立つ遺伝子資源を求め、「量子ビーム」で『宝探し』

どんな研究をしているのですか?

私たちのプロジェクトは、量子ビーム(イオンビームやガンマ線)を植物や微生物に当てるとどのような突然変異が起こるのかを調べています。また突然変異を起こさせることにより新しい品種の開発や役に立つ遺伝子を探し出す研究もしています。さらに、突然変異の起こり方に影響を及ぼす因子を調べたりもしています。

私たち人類は、昔からいろいろな花を愛でたり、植物を食して生きてきました。これらは、掛け合わせや自然界で起こった突然変異などにより長い時間をかけて品種改良を進めてきたものです。品種改良のおかげで、美しい花を愛でたりおいしい穀物・果物を食べることができるようになったのです。しかし、品種改良には時間がかかります。品種改良に必要な時間を節約できれば、もっと効率的に美しい花や役に立つ穀物を創れます。

品種改良の時間を大幅に節約する方法のひとつに量子ビームを使う方法があります。量子ビームを照射すると突然変異が起きる確率が高くなります。この中から役に立つ新種や遺伝子を宝探しのように探すのです。

また、この宝探しの効率を上げるようにするにはどうしたらよいかも重要な研究テーマです。そのために突然変異の起こり方について研究しています。

(ちょっとお勉強コーナー) 「突然変異」ってなぁに?なにかの原因により遺伝に関わるDNAに傷が発生すると細胞はDNAを修復し、大部分は

元に戻ります。しかし、まれに一部のDNAはもとに戻らず、変異遺伝子ができ、新しい品種が生まれることがあります。このような現象を突然変異といいます。突然変異の頻度は、普通低いのですが、量子ビームを利用すると人工的に頻度を高くすることができます。このような方法で新しい品種を創り、いいものを選別することにより、次頁のような商品

の開発にも成功しています。

おやっ!

量子科学技術研究開発機構

シロイヌナズナ

・芽かき作業が2割省力化。・栽培しやすい切り花用のキク。・冠婚葬祭でよく使われています。

・吟醸酒用の新しい酵母を作出。・甘い香りがします。・群馬県の地域のお酒として販売中。

・今年の施設公開で来場された皆様に配布させていただきました。

・上品な色彩は、ずばり、好評でした。・町の花屋さんでも売っています。

・車の排気ガスなどに含まれる二酸化窒素の吸収能力が高い。

・壁面緑化植物として商品化。・吸収能力は既存種の1.4~1.8倍。

―量子ビームを利用して高崎量子応用研究所で創られました―

(一般向け資料)

○新神(アラジン)

○お酒の酵母

○新花色のオステオスペルマム

○高環境浄化能オオイタビ(KNOX)

(タイトルの写真について)シロイヌナズナ:植物の遺伝子研究によく使われます。白いかわいい花が咲きます。菜の花と同じアブラナ科です。

ー私たちの実験の様子をちょっと紹介しますー

イネを掛け合わせて、イオンビーム照射で変化した遺伝子について調べているところです。だんだん細かい作業がしんどくなりますね。

学生の人材育成も行っています。施設を使ってもらい実験指導もしています。H君シロイヌナズナの研究論文がんばってね!

役に立つ微生物の研究もしてます。いつも一緒にいると微生物もかわいくなりますよ。

(一般向け資料)

実験では、手がいくつあっても足りません!

今後はどんな研究にチャレンジするのですか

イオンビームをはじめとする量子ビームと突然変異の関係を詳しく調べ、どのような照射条件の時にDNAのどのような場所にどのようなタイプの変異が生じやすいのかを明らかにしていきたいと考えています。そのようなデータをたくさん集めることにより、量子ビームによる変異誘発をコントロールし、望みの変異体を効率よく得られる技術を開発したいと考えています。変異は、ヒト組織の癌化や生物の進化とも密接に関係しています。量子ビームによる変異誘発を調べることで、育種だけでなく癌化や進化のメカニズム解明にも役に立つ知見が得られることを期待しています。

(一般向け資料)

高崎量子応用研究所の放射線高度利用施設の加速器で作られたイオンビームを左のような照射装置を用いて植物や微生物に照射します。イオンビームは赤い矢印で示した経路で垂直に降りてきます。ちょうど矢印の先端部に下の写真のような植物や微生物を入れた試料を置き照射します。

照射は、6cm四方の照射野においてイオンビームを縦方向、横方向にそれぞれスキャンして行います。左の写真は、照射時のイメージです。イオンビームの軌跡を蛍光プレートを用い可視化しています。

イオンビーム照射のようす

アントシアニン色素蓄積変異体を作出(上:元の種子、下:変異体)

アントシアニン色素蓄積遺伝子が作るタンパク質は細胞の液胞膜に局在

イオンビーム変異体解析によって、植物種皮のアントシアニン色素蓄積に必須の遺伝子を世界で初めて発見しました。アントシアニンには、抗酸化作用があることが知られていますので、本遺伝子の発見は、種子の成分改良による機能性食品の開発にも繋がると期待されています。

最近のトピック

イオンビーム

植物や微生物を入れた試料(照射準備の様子)

問い合わせ先:国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構量子ビーム科学研究部門 研究企画室

住所:〒370-1292 群馬県高崎市綿貫町1233℡:027-346-9444 Eメール:qubs-techoffice@qst.go.jp

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