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高品質な製品の生産,市場投入期間の短縮,設計プロセス早期での製品の不具合削減は,製造分野でよく聞かれるニーズですが,こうしたニーズは,製品ライフサイクルの早期にハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)シミュレーションを導入することで満たすことができます.米国だけで 30 万社以上の中規模の製造企業(SME)が存在し,その多くが日常的な CAE 設計・開発業務にデスクトップワークステーションを利用しています.U.S. Council on Competitiveness [1,2] によれば,こうした SME の半数以上がより強力な計算能力を必要としているとのことです.

シミュレーション能力を強化したいと考え,デスクトップなどの社内ハードウェアソリューションに代わる魅力的な選択肢として,クラウドベースのシミュレーションプラットフォームを検討している企業が増えています.クラウドを利用すれば,SME の日常的な設計ニーズを満たすだけでなく,大規模なモデルや,より広範な最適化設計を行うような特別な場合にも大規模なハードウェアインフラストラクチャーを購入する

クラウドコンピューティング

CLOUD SEEDS SIMULATION FOR SMES

中規模の製造企業が競争力を維持するには,設計サイクルでシミュレーションを経済的に利用できなければ

なりません.そのためには,こうした企業がクラウドコンピューティングリソースで高精度なモデリング

ツールの利用を拡大することを容易にするソフトウェアスタックが必要になります.

Departments

UberCloudtheubercloud.com

Wolfgang Gentzsch(米国 ロスアルトス,TheUberCloud, Inc.,社長), Burak Yenier (米国 ロスアルトス, TheUberCloud, Inc.,CEO)

中規模の製造企業のシミュレーションに 不可欠なクラウド

© 2017 ANSYS, INC. ANSYS ADVANTAGE 53

ことなく,シミュレーションをサポートできます.オンプレミスのワークステーションやサーバーハードウェアは,将来のシミュレーションニーズに対応できないばかりか,十分に活用できないと,保守とサポートの費用が重くなる可能性があります.クラウドベースのハードウェアリソースには,企業が必要に応じてシミュレーションの利用を拡大または縮小できるというメリットがあります.また,必要に応じて計算能力を確保できるため,製品設計者は,短時間で,多様な製品を解析するとともに,多くのパラメトリック解析を実施し,製品の品質向上と市場投入期間の短縮を図ることができます.

HPC Cloud Experimentオンラインコミュニティであり,マーケットプレイ

スでもある UberCloud は,クラウドソーシング手法を用いてクラウドコンピューティングのボトルネックを把握し解消する取り組みの一環として構築されたものです.UberCloud HPC Experiment は,ANSYS,Intel社,Hewlett-Packard Enterprise 社,Microsoft Azure 社の後援のもと 2012 年に始動しました.UberCloud HPC Experiment の目的は,クラウドベースシミュレーションの課題に大規模に対処できるように,エンジニア,HPC専門家,独立系ソフトウェアベンダー(ISV),クラウドサービスプロバイダー間のコラボレーションを促進するとともに,多くの SME がデジタル製造を導入できるようにすることにあります.このHPC Experimentにはこれまで,業界のエンドユーザー,シミュレーションソフトウェアプロバイダー,クラウドプロバイダーから成る 200 以上のエンジニアリングチームが参加しています.クラウドコンピューティングは,SME が早期のシミュレーションを行って,市場投入期間の短縮,コスト削減,製品イノベーションの強化を図れるかどうかを左右する重要な要素です.

このため,UberCloud は,適切なシミュレーションツールと,エンジニアがクラウドハードウェア上で解析を簡単に行うために必要なユーティリティがパッケージ化された HPC ソフトウェアコンテナを開発しました.このコンテナでは,パーティショニング,セキュリティ,バックアップ,データ可視化などの作業を,エンジニアが使用しているワークステーションとほぼ同様に,ブラウザに似た操作で行うことができます.また,ANSYS のソフトウェアは,コンテナにプリインストールされ,社内の専用ハードウェア上で動作していても,リモートデータセンター内のハードウェア上で動作していても同様のパフォーマンスを発揮するように構成され,テストされています.

エンドユーザーのアプリケーションに携わる各チームは,要件を定義してから,クラウドで HPC を利用してアプリケーションを実装し,シミュレーションジョブを実行・監視して,その結果をリモート表示してから,シミュレーションデータをエンドユーザーに戻します.その後,各チームは,シミュレーション結果,使用体験,主な知見をケーススタディにまとめます.これらのケーススタディには,様々なメッシュ密度や CPU コア数の調査なども含まれます.ANSYS のシミュレーションソフトウェアを使用した 18 件のケーススタディ [3] の中から,医療用吸入器とエネルギープラントにおける二相流の解析事例を以下に紹介します.このような事例は,SME が現在,より広範な CAE 作業をクラウドで行うようになっており,Intel 社が言う「ハイパフォーマンスコンピューティングの民主化」の恩恵を享受していることを示しています.

Cloud Seeds Simulation for SMEs (続き)

エネルギープラントのガス巻き込みエンジニアリング業界をリードする日本企業である千代田化

工建設株式会社は,エネルギー事業をグローバルに展開する顧客が直面している様々なエンジニアリング上の課題に取り組むため,

ANSYS Fluent を利用しています.千代田化工建設が顧客のニーズを満たすには,非常に大規模なシミュレーションを短期間で行う必要

がありましたが,同社の IT インフラストラクチャーは過負荷状態にあり,計算能力を継続的に強化できる柔軟な手法が必要でした.たと

えば,同社のエンジニアは ANSYS Fluent を用いて,エネルギープラントのガス巻き込みにおける気液二相流をシミュレーションしなければな

りませんでした.千代田化工建設は,ANSYS HPC Pack ライセンスを最大限に活用すると同時に,計算能力を強化して利用するため,富士通およ

び UberCloud コラボレーションプラットフォームと連携しました.現在では,富士通のテクニカルコンピューティングクラウドで 32 並列コアを使用しているため,千代田化工建設社内の IT 環境でシミュレーションを行った場合に比べて処理速度が 2 倍に向上しています.

ANSYSのクラウドホスティングパートナーansys.com/cloud-partners

クラウドコンピューティングのベストプラクティスを活用したエンジニアリングシミュレーションansys.com/cloud-best-practices

^ ガス巻き込みに関わる液体と気体の流路および体積分率 資料提供:千代田化工建設株式会社

54 ANSYS ADVANTAGE ISSUE 2 | 2017

吸入器の噴霧のモデリング加圧式定量噴霧吸入器(PMDI)は,エアロゾル化薬剤を肺に送るために広く利用され

ている医療機器であり,喘息などの慢性呼吸器疾患の症状の治療に最もよく使われます.医療機器業界では,気道内ならびに PMDI およびその付属品内における噴霧粒子の流れと堆

積を予測するのにシミュレーションが用いられることが増えていますが,こうしたシミュレーションを行うには,PMDI のノズルから出る噴霧に関する詳細な情報を明らかにして,下流の結果の妥当性を保証する必要があります.独立系コンサルタントの Praveen Bath 氏の指揮のもとで UberCloud

Team 184 が実施したプロジェクトの目的は,一般に円錐形の噴霧を吐出する PMDI から出る流体粒子を的確に把握することにありました.このチームは,Microsoft Azure クラウドプラットフォーム [4] と統合されている UberCloud HPC コンテナで ANSYS Workbench と ANSYS CFXを使用し,ノズルから出て標準大気圧の空気の円柱領域を通る噴霧の予測,評価を行いました.解像度を徐々に細かくして 5 種類のボリュームメッシュを生成し,メッシュ精細化調査を行ってから,複数の CPU コアで ANSYS

CFX の HPC 性能をベンチマークしました.Microsoft Azure クラウドプラットフォーム全体とその機能の使い方を習得するのに時間がかかりまし

たが,UberCloud HPC コンテナによって,メッシュ生成,ソルバー処理,結果のポスト処理 / リモート表示にかかる時間を劇的に短縮し,Workbench と CFX によるモデル作成プロセスを大幅に簡略化することが

できました.結局,エンジニアは約 10 時間かけてモデルを作成し,約 500CPU コア時間相当の時間を費やして解を生成しましたが,HPC のメリットを活用

したことで,最も精細なメッシュ(120 万セル)を8CPU コアで解析する作業を約 5 分で終わらせるこ

とができました.さらに,UberCloud コンテナの自動アップデート電子メールモジュールを利用し

たことで,サーバーにログインして状況をチェックすることなく,シミュレーション作業を監視し

続けることができました.こうしたコンテナ機能により,このチームは,複雑な物理特性を持つ適

用事例に必要なクラウドサーバーリソースに簡単にアクセスできるようになり,プロジェクトをよ

りスムーズに進めることができました.

ANSYS クラウドパートナーソリューションANSYS は,当社のお客様がパートナー向けクラウドソリューションのエンドツーエンドプロセスを

体験してシミュレーションの負荷軽減を検討できるように,UberCloud HPC Experiment に参加しました.これは,ANSYS がクラウドコンピューティングのベストプラクティスを開

発したり,当社のクラウドパートナーエコシステムを構築したりし,お客様が自社のニーズに最も合致するクラウドコンピューティングソリューションを選

択できる機会を提供するのにも役立っています.現在,UberCloud は当社のクラウドホスティングパートナーの 1 社です.– Wim Slagter(HPC およびクラウドアライアンス担当ディレクター)

References:[1] Reveal: Council on Competitiveness and USC-ISI Broad Study of Desktop Technical Computing End Users and

HPC. compete.org/reports/all/420-reveal[2] Reflect: Council on Competitiveness and USC-ISI In-Depth Study of Technical Computing End Users and HPC.

compete.org/reports/all/421-reflect

18001600140012001000

800600400200

0

Solu

tion

times

(sec

)

No. of CPU Cores

55K262K428K816K1.29M

1 2 4 8

[3] UberCloud and ANSYS. theubercloud.com/ANSYS[4] ANSYS 17.2 Fluids and Structures: UberCloud. azuremarketplace.microsoft.com/en-us/marketplace/apps/

ubercloud.ansys-17-2-fluids-structures

^ 様々なCPUコア構成とメッシュ密度で行った計算に要した時間の比較

© 2017 ANSYS, INC. ANSYS ADVANTAGE 55

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