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ところで、レポートの締め切りが近づいてきましたが、準備していますか。
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1. 複数の参考文献を読んだ。
2. 少なくとも1冊は文献を読んだ。
3. 文献は読んでいないがウェブ情報は集めている。
4. 何の準備もしていない。
5. 自分なりに考えたことを書くので、何かを調べるつもりはない。
ナチスと優生思想(今井先生)
• 消極的優生学(Negative Eugenics)と積極的優生学(Positive Eugenics)。
• ナチスは「ドイツ民族の改良」のために抑制的優生学に加えて、積極的な優生学を実践した。
–消極的優生学:精神病患者・同性愛者・ユダヤ人の虐殺。
–積極的優生学:ナチス親衛隊「レーベンス・ボルン(命の泉協会)」の活動など。
⇒ナチスの政策は、アメリカ・カリフォルニア州の優生法を参考にしていた。
生物学から見た優生学(渡部先生)
1.人種分類の科学的背景
1-1.「人種」とは
1-2.進化論と人種主義
2.遺伝子操作と生殖補助技術
2-1.遺伝子・遺伝子操作
2-2.生殖細胞の形成・受精・発生
2-3.生殖補助技術
2-4.出生前診断
2-5.救世主兄弟(Savior Sibling) ⇒今日の話:生殖補助医療、出生前診断から
遺伝子改造へ。
②を選んだ人へ:「遺伝病の範囲」は、
必ずしも明確ではない。
• ハンチントン病、のう胞繊維症、鎌型赤血球貧血症など、原因遺伝子も分かっていて、その遺伝子があればほぼ必ずなる、という病気もあるが、比較的まれである。
• アルツハイマー病、糖尿病、ガンなどは遺伝と関係があることは分かっているが、環境要因の影響も大きい。
• 「肥満」も遺伝と環境の影響があるが、そもそも「病気」なのか?
→「肥満にならない改造」は「治療」なのか「能力強化」なのか?
これまでの授業に対するコメント
• 日本では考えられないような話だった。
• 日本でも同じようなことが行われていたのではないかと気になった。
• 高校の時にハンセン病施設について学んだことを思い出した。
• 「優生」という言葉を調べていて、関連項目として日本にも「優生保護法」というものがあったと知った。
第三条 (医師の認定による優生手術)
1 .医師は、左の各号の一に該当する者に対して、本人の同意並びに配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様な事情にある者を含む。以下同じ。)があるときはその同意
を得て、優生手術を行うことができる。(不妊手術=断種手術のこと。)
但し、未成年者、精神病者又は精神薄弱者については、この限りでない。 (・・・つまり、本人の同意なしでやってもいいということ)
優生思想や断種を定めた日本の「優生保護法」が制定されたのはいつか?
4%
34%
29%
21%
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1. 1910年(カリフォルニア州断種法の直後)
2. 1940年(ナチス断種法のあと)
3. 1948年(第二次大戦後、アメリカ占領下)
4. 1996年(みなさんの大部分が生まれたころ)
5. 2006年(第一次安倍内閣)
優生思想や断種を定めた日本の「優生保護法」が改正されたのはいつか?
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19%
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1. 1964年(アメリカ公民権法と同じ年)
2. 1973年(アメリカで中絶禁止に違憲判決が出た年)
3. 1986年(男女雇用機会均等法と同じ年)
4. 1996年(みなさんが生まれたころ)。
5. いまでもある
なお、1940年は「国民優生法」制定
• 第一条 本法ハ悪質ナル遺伝性疾患ノ素質ヲ有スル者ノ増加ヲ防遏スルト共ニ健全ナル素質ヲ有スル者ノ増加ヲ図リ以テ国民素質ノ向上ヲ期スルコトヲ目的トス
• ナチス断種法をモデルに制定された。
• 戦後1948年に改正され、本人の同意に基づかない「強制断種」が可能となった。
どんなときに断種を行うのか?(続き)
一 .本人若しくは配偶者が遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患若しくは遺伝性奇形を有し、又は配偶者が精神病若しくは精神薄弱を有しているもの
以上は「国民優生法」と同様。
二 .本人又は配偶者の四親等以内の血族関係にある者が、遺伝性精神病、遺伝性精神薄弱、遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患又は遺伝性畸形を有しているもの
三 . 本人又は配偶者が、癩疾患に罹り、且つ子孫にこれが伝染する虞れのあるもの
→「らい予防法」(1907~1996)についても調べてみよう。昨年の授業では取り上げたが、今年は時間の都合で取り上げません。
四 .妊娠又は分娩が、母体の生命に危険を及ぼす虞れのあるもの
五 .現に数人の子を有し、且つ、分娩ごとに、母体の健康度を著しく低下する虞れのあるもの
ちなみにこれは、 • 1996年までの日本における「人工妊娠中絶」の要件とほぼ同じ。
• 同じ優生保護法が中絶も規定していた。
⇒だから1996年まで残っていた。
「国民優生法」改正の理由: • 第十六条 第十三条ノ規定ニ依ル場合ヲ除クノ外医師生殖ヲ不能ナラシムル手術若ハ放射線照射又ハ妊娠中絶ヲ行ハントスルトキハ予メ其ノ要否ニ関スル他ノ医師ノ意見ヲ聴取シ且命令ノ定ムル所ニ依リ予メ行政官庁ニ届出ヅベシ但シ特ニ急施ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
1996年「母体保護法」による
人工妊娠中絶の規定
現在は以下の二つの要件のみ。
• 四 .妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
• 五 .暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
☆胎児の「異常」を理由に中絶はできない。
第四条 (審査を要件とする
優生手術の申請)
医師は、診断の結果、別表に掲げる疾患に罹つていることを確認した場合において、その者に対し、その疾患の遺伝を防止するた
め優生手術を行うことが公益上必要であると認めるときは、都道府県優生保護審査会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請しなければならない。
別表 一 遺伝性精神病:精神分裂病・そううつ病・てんかん
二 遺伝性精神薄弱
三 顕著な遺伝性精神病質:顕著な性慾異常・顕著な犯罪傾向
四 顕著な遺伝性身体疾患:ハンチントン氏舞踏病・遺伝性脊髄性運動失調症(…以下略)
五 強度な遺伝性奇形:裂手、裂足・先天性骨欠損症
→1949~94年に、約16,000人が強制断種手術の対象となったといわれる。
子供の遺伝子改造について、
• アメリカでは、「個人の自由でやるんだから、干渉すべきでない」という考え方が、強まってきています。
• たとえばカプランは、以下のように論じる。
「もしレーザー手術医院にいって眼球を微調整し、自然な視力以上の視力を得たとしたら、私は道徳的な悪をなしたことになるのか。(中略)他の人々が治療を受けない、あるいは受けられないとしたら、それは不平等なのか。」
「私たちが私たち自身を変えるべきでないという原理的な理由を、私はまったく見出すことができない。より強く、速く、賢くなりたいというのは虚栄であるといわれても、私には説得力が感じられない。自分を改善してみようではないか。」
「農業もそういうものだ。配管工事もそういうものだ。衣服もそういうものだ。交通機関もそういうものだ。これらはみな、私たち自身の性質を超えようとする、私たちの試みなのだ。こういうものが、私たちを非人間的にしただろうか。」
「変化を望み変化をもたらすという考えそのものが、進歩するのだ。多分これが真実だ。これが真実なら、私たちは変化を望むという考えを、私は受け入れたい。」
「もし私たちが、反改良主義者たちが示唆するような方法で、私たち自身に制限を加えれば、私たちや私たちの子孫には、生物学的進化がもたらす、最もわくわくする可能性のいくつかが閉ざされてしまうことになるだろう。」
(カプラン「人間性を改善してはいけないのか?」、『エンハンスメント論争』社会評論社, 2008所収)
⇒遺伝子改造は、「よくないこと」だろうか?それはなぜ?
• 「個人の責任とリスクにおいて漸進的な遺伝子改良を行うようになるという全体的な趨勢を、決定的なやり
方で食い止めるだけの論理がないのだ」(金森修『遺伝子改造』勁草書房,
2005, pp.29-30)。
ここで引用した『エンハンスメント論争』、『遺伝子改造』は山口がレポート課題の説明の時に挙げた参考文献です。
2%1% 9%
38%
50%
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1. 少なくとも1冊は既に読んだ。(読みつつある)
2. 少なくとも1冊は入手した。(購入or図書館)
3. 図書館で検索はした。
4. 何もしていない。
5. 読むつもりはない(山口の課題は選択しない。)
「やめさせる論理」
• 現代自由主義社会の基本的なスタンスは、「他人に危害を加えないことはやってもよい」。
• 生命倫理学の「倫理原則」
–自律性尊重
–無危害
–恩恵(Beneficence:利益を与える)
–正義(Justice:配分の公正さ)
ビーチャム&チルドレス『生命医学倫理』成文堂, 1997, 原著第3版, 1989.
遺伝子改造は、
• 自分で決めている。
• 誰にも危害を加えない。
• 改造された子供は利益を得る。
• お金がかかるので、誰でもできるわけではない。
→正義(配分の公正)原理には抵触するかも。
・・・それなら、保険などを使えるように
すればよいだけでは。
• そもそも、子供に習い事や塾に行かせるのと、同じことではないのか?
=自律性尊重OK
=無危害OK
=恩恵OK
「新優生学」
• 個人の自由と自己責任において、子供の遺伝子を改良することを容認する立場。
*もちろん、「容認」と「推進」は違う。
• その結果、ある社会(ヒトの個体群)において特定の遺伝子が淘汰される(ヒトの遺伝的多様性が失われる)結果になってもかまわない、と考える。
*もちろん、「そうなってもやむをえない」と
「そうなるべきだ」は違う。
新優生学の思想について
8%
54%
38%
1 2 3
1. 賛成A(推進):人類の
進歩のために、子どもの遺伝子改変を行うべきである。
2. 賛成B(容認):子供の
遺伝子改変は個人の自由である。(やってもよい)
3. 反対:子供の遺伝子改造は禁止すべきだ。
• Eugenics←Eugene(ギリシア語「よい血統」)
• フランシス・ゴルトン(1822-1911)の造語(1882)。
• ダーウィン(1809-1882)の自然選択理論
をもとに、人類の遺伝的改良を目的とする「科学」。
*ちなみにダーウィンとゴルトンは、いとこ同士。
自然淘汰説
• ダーウィンは、家畜の品種改良(人為淘汰)からの類推で、自然淘汰理論を考え付いた。
• 優生学は、ダーウィン説の影響を受けて、人類の人為淘汰を構想した。
家畜の品種改良
→ダーウィン理論
→人類の品種改良
=人類は家畜!?
ちなみに、「自己家畜化論」
野生動物を家畜化するとは、
• 一定の範囲に閉じ込める。
• 餌を供給し、自然環境の変異から守る。
• 繁殖を管理する。
• 品種改良する。
生殖補助医療・少子化対策・・・
優生学!
自分は、
33%
13%17%
11%
26%
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1. 家畜じゃない!
2. どちらかというと家畜じゃないと思う。
3. どちらともいえない。
4. どちらかというと家畜だと思う。
5. 家畜だと思う。
「科学研究」としての優生学
• 1907:「優生教育協会」(会長ゴルトン)
• 1910:アメリカ・コールドスプリングハーバー研究所優生学記録局
• 1911:ロンドン大学優生学研究所(所長ピアソン)
• 1927:カイザー・ヴィルヘルム人類学・人類遺伝学・優生学研究所
→集団遺伝学、統計学の開発と発展
1912:第一回 国際優生学会議
• 会長:レオナルド・ダーウィン:チャールズの息子
• 副会長:チャーチル(当時イギリス内務大臣、のちの首相)
• アメリカ代表:グラハム・ベル(電話の発明者)
• 議題:
– 人種の改善や衰退についての研究成果の発表。
–優生法(断種法)の立法の検討。
– 世界の優生学者の協力体制の構築。
なぜ優生学は「正しい」思想だ
と考えられたか?
遺伝病、遺伝的精神病が減れば、
• 社会保障費が減少する。
• 各種産業の生産性があがる。
• 軍隊も優秀になる。
=社会・国家全体の観点から見ると、大きな利益が得られる。
・・・実は、今でもこういう考え方の人は多いのでは?
優生思想は、
5%6%
38%
22%
28%
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1. 正しい思想だと思う。
2. どちらかというと正しい思想だと思う。
3. どちらともいえない。
4. どちらかというと間違った思想だと思う。
5. 間違った思想だと思う。
ところであなたは社会にとって?
14%
14%
34%
16%
23%
1 2 3 4 5
1. 多大な貢献をしている優秀な人間だ。
2. そこそこ貢献できる。
3. 可もなく不可もなく。
4. ひょっとすると社会の負担になるかも。
5. 社会にとって負担だ。
ナチスは「ドイツ民族の改善」の
ためにいろいろ「頑張った」。
• ガンの研究とガン集団検診。
• タバコと肺ガンの関係を発見、禁煙運動。
• 自然食品の推奨。
• 優生学やユダヤ人虐殺も、同じ「民族改善」思想の延長線上に。
• 優生学は、「人種衛生学Racial Hygiene」などとも呼ばれた。
プロクター『健康帝国ナチス』草思社
第二次大戦後、
• ナチスの虐殺が表沙汰になり、「優生学」の権威は失墜。
• とはいえ、「遺伝病の排除」など、優生学の
「核心」は重視されていた:「修正優生学」
• 1960年代~70年代にかけて、リベラリズム・反権威運動の盛り上がりの中で、「優生学」は「悪の学問」「エセ科学」とされていく。
とはいえ、その後も、
• 1975:E.O.ウィルソン『社会生物学』
• 1994:ハーンシュタイン&マーレイ『ベルカーブ』
• 彼らの主張は「優生学だ!」というレッテルを貼られ、論争を呼んだ。
• つまり、1970年代以降、「優生学」は、「ナチス」と同じような、ののしり言葉になった。
しかし近年、
• 「新優生学」の思想が台頭。
• かつての「優生学」は社会中心・国家中心で、強権的(強制的な優生手術、さらにはユダヤ人虐殺など)であった。
–遺伝学的基盤も脆弱だった。
• 現代の「新優生学」は、個人中心。
–分子生物学の技術を背景に。
まとめ:「優生学」の流れ
• 戦前:「優生学」の誕生と流布。
–社会や国家全体の利益のために個人の遺伝的素質を改善する。
• 戦後:強権的側面の否定。「修正優生学」 –社会・国家中心的発想からの遺伝的改善という思想は残る。
• 1970年ごろ:優生学は「悪の思想」に。
• 1990年代以降:「新優生学」の台頭。
–個人主義的。分子生物学を背景に。
問い:遺伝子改造は、
• 「よくない」のだろうか?よくないとしたら理由は?
• 「社会の利益」中心の優生学の考え方は、どこが間違っていたのだろうか?
• 強制によらないで、社会全体の利益にもなるのなら、よいことではないのか?
• しかし、なぜ自分自身でなく、自分の
子供を改造したいのだろう??? • このへんのことは、『科学技術と倫理』(ナカニシヤ)所収の原稿に書いておいたので、読んでください。(レポートの参考文献として挙げたもの)
今日の分の「メールでコメント」は、
今の質問に対して、「子供を改造したい」「他人がやるのは止められない」「社会的に禁止す
べきだ」と答えた理由・根拠を書く。
反対意見を考慮して、自分の意見を根拠を示しながら書いてください。
ダメなコメントの例
• 「自分はやりたくないが、他人の行動は自由なので、止められない」
–自分の配偶者が「改造したい!」と言ったらどうするの?
• 「人為的な改善は必要ない」
– 「必要ない」は「禁止する理由」にはならない。
• 「生命倫理上問題なのでやるべきではない」
• 「人間の尊厳を冒すのでやるべきではない」
–具体的に何が問題なのか?
–人間の尊厳とは具体的には何か?
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