COMSOL Multiphysics® 電気化学計算(3)...電気化学計算(3) 橋口真宜、米大海...

Preview:

Citation preview

COMSOL Multiphysics®による電気化学計算(3)

橋口真宜、米大海第1技術部

計測エンジニアリングシステム株式会社東京都千代田区内神田1-9-5 井門内神田ビル5F

http://www.kesco.co.jp/https://www.comsol.jp/

「エンジニアのための電気化学」第3回 電通大リサージュ3F2017 12.13、15:00-16:30

今回の目標

(1) いままで林先生に学んだことと計算式との対応関係をはっきりさせる

(2) 実用的な問題にふれる~ 腐食/めっき

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 2

参考文献(1)林茂雄、「エンジニアのための電気化学」、コロナ社(2)大堺利行他、「ベーシック電気化学」、化学同人(3)渡辺正他、「電気化学」、丸善株式会社

COMSOL Multiphysics®における電気化学に関するインターフェース

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 3

電気化学系

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 4

https://www.kesco.co.jp/conference/2014/data/ConfTokyo2014Mini_electrochemistry.pdf

電解質溶液伝導度水

真空中で蒸留を繰り返した水 H O ↔ H + OHほとんど電気を通さない

電解質を溶かす

アレニウスの電離説 「電場が存在しなくても電解質はイオンに解離している」

正負の電荷をもつイオンが溶液中に生成し、溶液中を流れる電気の担い手になる。

2枚の電極を平行に入れ、電位差Eを与えると電流Iが流れる。

= /金属に関するオームの法則が溶液にも成立する。

== 1 =コールラウシュブリッジで被測定溶液の比伝導率κをもとめる。

電気伝導率Gが既知の溶液:KCl溶液固有のセル定数はGが既知の溶液で求めておく。

濃度/温度によって変化する。

モル電気伝導率Λ =強電解質(HCl)と弱電解質(CH3COOH)を区別できる

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 5

計算式との比較

, = Nernst-Einstein

= | | ,イオン移動度のデータの代わりにイオン等価伝導度λiが与えられている。

= | |Stokes-Einstein= 6

溶液粘性係数

水和イオンの半径電気導電率は濃度と移動度で表現されている。

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 6

計算における溶液の表現

電解質導電率σで表現する。

ユーザー定義で式記述でも良い。

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 7

イオンのある溶液の化学ポテンシャル

イオンがない場合

化学種iの化学ポテンシャル

イオンがある場合

= ○ + ln非理想溶液:活量

理想溶液:希釈溶液中の溶質、溶媒= ○ + ln= ○ + ln= ○ + ln 重量モル濃度

容量モル濃度

モル分率

溶質-溶媒間、溶質間相互作用有り= , ,γi:活量係数

電気的に中性の溶液に電荷をもった単独のイオンだけを加えることはできないので個々のイオンを別々に測定できない。= ○ + ln = ○ + ln+ = ( ○ + ○) + ln○ ln

イオンの平均活量イオンの化学ポテンシャル

1-1電解質の例

平均活量係数=Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 8

電極内の電子の電気化学ポテンシャル

電極層(M)

e-

真空

~1

ABC

電子の化学ポテンシャル:1モルの電子を無限遠の真空中から電極相の内部に付け加えるに必要な可逆仕事

相Mの外部電位(金属内部に誘起される鏡像電荷の影響を無視できる位置)

A-B:静電的仕事 −B-C:電極物質と電子との化学的結合による仕事

と静電的仕事の和−

電極表面層の電荷分布に起因する表面電位

= −= +電子の電気化学ポテンシャル

相Mの内部電位

× ガルバニ電位差:内部電位差

○ボルタ電位差:外部電位差

異なる相間の電位差は測定不可

同一相内の2点間の電位差は測定可

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 9

電極内のイオンの電気化学ポテンシャル

= ○ + +イオンの電気化学ポテンシャル

相Lの内部電位

金属中の電子の活量=1Ze=-1L=M

形式的には

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 10

電極電位

ただ一つの電極反応が起こり、反応が平衡である場合

平衡電極電位(Equilibrium electrode potential)

= −電極電位の定義

これはMとLという異なる相間の電位差なので測定不可

電荷数zの酸化体O、還元体R、関与電子数nの平衡電極電位

= ○ +標準酸化還元電位あるいは標準電位

Nernst equation

二つ以上の電極反応が同時に起こる場合(腐食)は混成電位(mixed potential)を扱うことになる。

○ = − ∆ ○反応の標準Gibbsエネルギー

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 11

計算における設定

初期値に電解質電位として設定することができる。

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 12

酸素/水素発生の電子授受

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 13

O + 4H + 4e = 2H O○ = 1.23 vs. SHEa = pa = [H ]= 1

= 1.23 + 4 2.303log (p · [H ] )

pH = −log [H ]IUPAC基準 還元方向 ln = 2.303log

= 1.23 − 0.059pH vs. SHE

水の酸化で酸素が発生する電位はpH=0で1.23V, pH=7で0.82V, pH=14で0.40V vs. SHEとなる。

2H + 2e = H○ = 0.00 vs. SHE

酸素の分圧は1atmとして式から落とす。

= 0.00 + 2 2.303log H− 2 2.303log (p )

a = pa = [H ]

水素の分圧は1atmとして式から落とす。= −0.059pH vs. SHE

酸素発生 水素発生

標準水素電極これまで導出した平衡電極電位Eは溶液相を基準とした金属電極相の内部電位であり、Eを直接、測定できない。

基準電極系の末端にMと同じ金属を接続し、それらの間の電位差を、電位差計によって測定する。林先生の内容を参照

基準電極系の利用

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 14

溶液と電極の界面電極において一種類の電極反応が平衡状態にある場合、電極と溶液の界面には電気化学ポテンシャルで決まる電位差を生じる。

一般に界面には電位がかかっており、溶液中では電荷分離が起こる。

この電荷分離によって形成された電極近傍の微細構造が電気二重層である。電気二重層の構造は溶液の組成によって変化し、電極反応速度に影響を与える。林先生の内容を参照。

理想分極性電極(ideal polarizable electrode)

理想非分極性電極(ideal non-polarizable electrode)

外部から電極に電荷を与えても電極反応が生じず、コンデンサのように静電的条件のみで電極電位が決まる。

ネルンスト式がなりたつような平衡状態にある電極では、外部から電極に供給された電荷はすぐに電極反応によって消費されてしまい、電極電位を自由に変更できない。

滴下水銀電極 林先生内容参照

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 15

計算における電気二重層の表現表面電荷密度キャパシタンス

電流密度保存則 電荷保存則

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 16

電極と電極反応電極自体が化学反応を行わない場合

電極自体が化学反応を行う場合

金属の腐食(corrosion)金属の析出、めっき(deposition)溶解(dissolution)

逆反応

鉄や銅がさびる、酸性溶液中で亜鉛が溶ける

化学的に安定な材料の電極を利用。得られた電流-電位曲線は溶液中の物質の反応として考えることができる。

金属を化学物質としてとらえる

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 17

電極反応の基本過程電極自体が化学反応を行わない場合

不均一電荷移動過程(heterogeneous charge-transfer process)

物質移動過程(mass-transfer process)

イオン電気伝導過程

電極/溶液界面での電荷移動によって、電極と電極近傍の溶液相との間には電気化学ポテンシャル差を生じる。

反応に関与しない支持電解質を過剰に共存させ、イオン電気伝導過程が律速にならないようにする。十分な支持電解質があれば電極表面の電気二重層の構造は支持電解質によって決まる。十分な支持電解質があれば泳動による項を無視できる。(溶液抵抗は十分に小さい。)

現実の系

反応関与物質が溶液相で化学反応を起こす、電極表面での吸着・脱着(adsorption/desorption)が反応に影響を及ぼす場合もある。

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 18

電極反応速度

O + ↔ R= (0, )= (0, )Faradayの法則Q = −nFN= = − = −

= − [ 0, − 0, ]電流

電流密度 = / Butler-Volmer式の導出につながる。

過電圧= −絶対値が十分に大きい

Tafel式

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 19

物質移動過程

十分な支持電解質

~0

Fickの拡散則

− · =電極表面電流との関係

電極-溶液界面上

If 電気的中性, 0

(クロノアンぺロメトリーの計算などに利用)

流体運動の影響u

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 20

[i]=A/m2 = C/s/m2

[F]=C/mol[n]=1

計算での電位の取り扱い例

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 21

同一相間で測定可

カソードB.C.

アノードB.C.

B.C.=Boundary Condition

計算における電位の取り扱い

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 22

カソードB.C. アノードB.C.

各電極の

電極速度式で利用

各電極での過電圧

電解液電位(計算で求まる)

計算における流れの扱い

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 23

計算における流束表現

電気的中性 水ベース電気的中性

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 24

計算における流束表現

支持電解質 ポアソン

電流保存則 電荷保存則

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 25

電極反応の基本過程電極自体が化学反応を行う場合

腐食

酸性溶液中での鉄の溶解 F → F + 2電子は鉄(電極)内に蓄積される。 2H + 2 → H蓄積電子は水素ガスの生成に利用される。鉄表面には気泡が観察される。

鉄が溶けてその電子で水素ガスを出すというプロセスが、鉄がなくなるまで続く。

二つの反応が一つの金属表面で生じている。

混成電位を生じる。

腐食(Corrosion)は,金属がそれを取り囲む環境によって,化学的あるいは電気化学的に侵食されること

を言う。“さびる”という言葉は,とくに鉄あるいは鉄合金が腐食して,主として水化した酸化第二鉄からなる腐食生成物を生成する場合にのみ使い,非金属は腐食するとはいうが“さびる”とは言わない。http://ms-laboratory.jp/zai/part4/5/5.htm

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 26

計算における電極反応速度の表現

線形化BV

BV: Butler-Volmer

ユーザー定義 BV熱平衡

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 27

計算における電極反応速度の表現

アノードターフェル カソードターフェル濃度依存BV

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 28

BV: Butler-Volmer

腐食による電極界面形状の変形

電解液領域の形状変化の表現

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 29

電気化学計算への応用例

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 30

シリコンウェファー上への銅めっき

https://www.comsol.jp/model/electrodeposition-on-a-resistive-patterned-wafer-12361

Electrodeposition on a Resistive Patterned WaferApplication ID: 12361

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 31

パラメーターの設定

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 32

ジオメトリの設定

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 33

電解液側のモデリング

電流保存則

電解液電位 φl

未知数境界条件

固体電位φs

0.4 A20 S/m 外部からのエネルギー注入

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi34

電解液側のモデリング

電極表面での電解液電位の境界条件

めっき量

めっき速度

反応速度

外部電位 phis_waferこれは別のフィジックスクラスの方程式を満たす。

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 35

phis_waferの決め方

面上での方程式

膜厚の変化する領域

5.6e7 S/m

5.6e7 S/m

電解液側からの析出量

境界条件

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 36

計算結果(1)電解液電位

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 37

計算結果(2)固体電位

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 38

計算結果(3)界面電流密度

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 39

計算結果(4)めっき厚

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 40

回転ウェファーへの電気めっきへの流体運動の影響

Fountain Flow Effects on Electrodeposition on a Rotating WaferApplication ID: 13865

https://www.comsol.jp/model/fountain-flow-effects-on-electrodeposition-on-a-rotating-wafer-13865

2次元軸対称解析

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 41

電解液電位

境界条件

濃度cは希釈種輸送で算出

境界条件

0.5 S/m

ウェファー電位Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 42

ウェファー表面電位の計算

境界条件

電解液計算で算出

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 43

対流付き希釈種輸送

境界条件

濃度の流入・流出

境界条件

流体運動uCopyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 44

流体運動

境界条件

30 rpmCopyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 45

計算結果

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 46

腐食パラメータの推定への応用

30℃、8.0 ft/sの海水中で合金を腐食させ、そのときの電位を測定する。腐食の理論モデルを作成し、実験値と比較して、パラメタを推定する。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvsj1958/44/10/44_10_860/_pdf

pH=7.7

淡水、海水、大気中pH=4~9の弱酸性から弱アルカリ性

さびの形成をともなう腐食

腐食速度はpHに寄らず、0.1mm/年

COMSOL Application Libraries: Corrosion Module/Galvanic Corrosion/corrosion oarameter estimation

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 47

腐食モデル

金属の溶解速度

酸素還元反応

限界電流

電極面での総電流

推定パラメタ

= − ,

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 48

COMSOL Multiphysics®での設定

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 49

パラメーター

●●

●●

● 推定パラメータ

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 50

最小二乗法

実験値の読み込み

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 51

フィッティングの例

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 52

フィッティングの例

横軸対数表示

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 53

フィッティングの例

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 54

フィッティングの例横軸対数表示

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 55

フィッティングの例横軸対数表示

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 56

ご清聴ありがとうございました。

Copyright(c) 2017 M. Hashiguchi, D. Mi 57

Recommended