高等学校化学における個に応じた 指導に関する研究 -科学的能 … ·...

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高等学校化学における個に応じた指導に関する研究

-科学的能力の視点から-

1

○植田悠未

(広島大学大学院教育学研究科)

研究の概要

□ 目的

高等学校化学において,個に応じた指導という観点から,科学的能力を育成するための指導のあり方を考案し,授業実践を通してその効果を検証する。

□ 方法

科学的能力の習熟度別で段階的に課題を設定

チーム・ティーチングで指導

→ 高等学校1年生41名を対象

□ 結論

科学的能力

2

指導に肯定派

指導に否定派

科学的リテラシー

3

状況と文脈

科学に対する態度

科学的知識

OECD(2015)による定義

科学的能力

科学的リテラシー

学力格差

4

『PISA2009の課題を受けた今後の取組』

国立政策研究所(2010)

○「個に応じた指導」の推進と

そのための教育条件の整備充実

習熟度別指導,少人数指導の実施など

PISAにおける

学力格差

「義務教育における教育政策の再考」

山内(2014)

研究の目的と方法

□ 目的

高等学校化学において,個に応じた指導という観点から,科学的能力を育成するための指導のあり方を考案し,授業実践を通しその効果を検証する。

□ 指導

科学的能力の習熟度別で段階的に課題を設定

チーム・ティーチングで指導

→ 高等学校1年生41名を対象

□ 検証方法

質問紙調査,評価問題,コメントシート

5

研究の手順

1.指導法の考案

2.評価方法の設定

3.授業実践

4.効果検証

6

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
研究の手順を前に示します。まず,1指導法の考案について述べます。

科学的能力

7

科学的能力PISA2015

科学的な証拠を解釈すること

科学的な疑問を認識し計画すること

現象を科学的に説明すること

科学的に調査可能な

疑問を認識する力

何を測定するべきか

どの変数を変えたり

制御するべきかを

認識する力

能力1

能力2

科学的能力

8

科学的に調査可能な疑問を認識する力能力1

歩行用通路が利用されることで,どれくらい公園が侵食されるか

この公園の地域が100年前と同じ美しさであるか

科学的に調査可能

科学的に調査不可能

美しさの度合いは人によって異なる

PISAの問題例

科学的能力

9

何を測定するべきか,どの変数を変えたり

制御するべきかを認識する力能力2

酸性雨が大理石に与える影響

大理石+酢

実験にこの手順を含めるのはなぜか

PISAの問題例

反応を起こしているのは

水ではなく酸であることを示すため

発砲○

発砲×

条件を制御した対照実験

大理石+蒸留水

科学的能力

10

科学的に調査可能な

疑問を認識する力

能力1

何を測定するべきか

どの変数を変えたり

制御するべきかを

認識する力

能力2

1問題を

見いだす場面

2実験を

計画する場面

個に応じた指導

11

課題1

課題2

課題3

T1

T2

個に応じた指導

指導計画

12

第1時 課題に取り組ませ,科学的能力の実態を

把握する

第2時課題の記述状況で生徒を習熟度別の3つの

グループに分けて個に応じた指導を行う

第1時

13

第1時

疑問が科学的に調査可能か認識できる

条件制御ができる

能力1

能力2

第1時

14

第2時

課題1 課題2 課題3

T1 T2 T1

第1時第2時

課題1

日常的な場面における

科学的に調査不可能な疑問を与え

互いに議論させる

基準があいまいなため

人によって意見が分かれる

基準を決めなければ科学的な調査ができない疑問が存在する

能力1発熱反応と吸熱反応の

うち,より世の中の

役に立っている反応は

どちらか?

vs

第1時第2時

課題2

小学校理科の単元での

条件制御の問題を例に

条件制御の考え方を解説

初めに簡単な例で条件制御を理解することで,

学習内容が高度になっても条件制御の考え方を適応できる

能力2 食塩とミョウバン

それぞれの溶解度を

実験によって調べて

比較するには?

高等学校の内容における

条件制御の課題に取り組ませる

溶質 水の体積

水の温度

実験1 食塩 100 mL 25℃実験2 ミョウ

バン

100 mL 25℃

第1時

17

第2時

課題3

より発展的な

条件制御の問題に取り組ませる

能力2能力1

ヘスの法則を証明するための実験計画書を提示

条件が制御されていない部分を修正

研究の手順

1.指導法の考案

2.評価方法の設定

3.授業実践

4.効果検証

18

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
研究の手順を前に示します。まず,1指導法の考案について述べます。

評価方法

19

質問紙

質問紙

評価問題

コメントシート

実践科学的能力に関する

意識の変化

・・・科学的能力

・・・個に応じた指導についての感想

質問紙

20

大多和(2014)が作成した科学的能力についての質問

紙を事前に実施 → 4因子が抽出された

観察・実験を計画するときに,変える条件が何かを考えるようにしている…など6項目

条件制御

現在の科学技術で調査できることには限界がある…など3項目

科学的な調査能力1

能力2

評価問題

PISA(2006)で使用された問題のうち,対象とする

科学的能力を測定する問題を各2問選出

能力1

能力2

・日焼け止めに関する問題 問2

・グランドキャニオンに関する問題 問1

・日焼け止めに関する問題 問1・日焼け止めに関する問題 問3

コメントシート

22

「自分のためになった」と思いますか

5 – 4 – 3 – 2 – 1

コメントシート質問1

個に応じた指導を取り入れた授業について

「意欲が高まった」と思いますか

5 – 4 – 3 – 2 – 1

コメントシート質問2

理由 理由

研究の手順

1.指導法の考案

2.評価方法の設定

3.授業実践

4.効果検証

23

授業計画

24

時 対象クラス(41名)

「金属のイオン化傾向」

「反応熱」

第1時

第2時

25

第1時

疑問が科学的に調査可能か認識できる

9人条件制御ができる

24人

能力1

能力2

8人

33人

26

第2時

9人 8人

課題1 課題2 課題3

T1

24人

T2 T1

研究の手順

1.指導法の考案

2.評価方法の設定

3.授業実践

4.効果検証

27

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
研究の手順を前に示します。まず,1指導法の考案について述べます。

コメントシート

28

回答 人数

肯定群 28

否定群 5

肯定群 20

否定群 7

n=40

コメントシート問1

コメントシート質問2

※ 3を選んだ生徒は除外

追跡

質問紙

評価問題

「自分のためになった」

「意欲が高まった」

肯定群は否定群に比べて科学的能力がより育成されたのではないか

肯定群・・・5や4を選択否定群・・・1や2を選択

質問紙との相関

29

†:p<.10

n=40

コメントシート問1 「自分のためになった」

授業前 授業後F値

肯定群 否定群 肯定群 否定群

科学的な調査

4.35(.72)

4.53(.30)

4.39(.66)

3.93(.92) 3.36†

条件制御3.82(.64)

3.70(.40)

3.95(.62)

3.33(.59) 3.24†

質問紙との相関

30

n=40

コメントシート問2 「意欲が高まった」

†:p<.10

授業前 授業後F値

肯定群 否定群 肯定群 否定群

科学的な調査

4.35(.72)

4.22(.81)

4.39(.66)

4.00(.89) 0.59

条件制御3.82(.64)

3.53(.50)

3.95(.62)

3.19(.67) 3.89†

質問紙との相関

31

指導を肯定的に捉えた生徒は科学的能力に関する意識が

有意に高まった傾向が見られた

コメントシート 質問紙

「自分のためになった」

肯定

科学的な調査UP

条件制御UP「意欲が高まった」

肯定条件制御UP

実際に能力は

身についたのか

評価問題

評価問題との相関

32

n=40コメントシート

回答 平均得点 標準偏差 t値

「自分のためになった」

肯定 3.46 .582.22*

否定 2.80 .83

「意欲が高まった」

肯定 3.46 .581.75†

否定 3.00 .82*:p<.05 †:p<.10

肯定群は科学的能力が有意に高い傾向がある

効果検証のまとめ

個に応じた指導は,生徒自身が「自分のためになった」

「意欲が高まった」と実感できるものである必要がある

33

肯定群

質問紙

評価問題

科学的能力

コメントシートの記述

否定派の意見

34

単に「習熟度別」と言って指導を分けると

疎外感を感じさせてしまう可能性がある

コメントシートの記述

35

自分の自身の変化を実感している様子がうかがえる

肯定派の意見

指導のあり方

36

生徒のつまづきや指導の意図を明確に

認識させることで生徒に納得させて課題に

取り組ませる

生徒自身の変化を実感できるようにする

研究の概要

□ 目的

高等学校化学において,個に応じた指導という観点から,科学的能力を育成するための指導のあり方を考案し,授業実践を通してその効果を検証する。

□ 方法

科学的能力の習熟度別に指導 → 高等学校1年生41名

□ 結論

科学的能力

□ 指導法への示唆

生徒のつまづきや指導の意図を明確にする

生徒自身の変化を実感できるようにする 37

指導に肯定派

指導に否定派>

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