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多層式塗工技術開発の概要について
第1回 エネルギー使用合理化高効率抄紙技術開発等事後評価検討会
資料5-4
平成22年2月3日
製紙産業局紙業生活文化用品課
日本製紙株式会社
1
目 次
1.プロジェクトの概要
2.目標
3.成果、目標の達成度
4.事業化、波及効果
5.研究開発マネジメント・体制等
2
1.事業の概要
概 要
実施期間
予算総額
平成19 年度~平成20 年度 *事故報告により期間を6ヶ月延長
615百万円 (国負担額410百万円)( 成 年度 成 年度 )
情報用紙分野の感熱紙において、多層式塗工技術を確立する事により、同時多層塗工を可能とし塗工回数の削減により、効率を改善すると伴に、塗工量の精密制御により塗布量を削減し、乾燥に要するエネルギー使用の合理化を行う。
予算総額
実 施 者
プロジェクト
リーダー
(平成19年度:379百万円 平成20年度:236百万円)
日本製紙株式会社
日本製紙株式会社 技術本部長付部長 福島義和
3
1.発色原理
染料 顕色剤 ↓熱 ←サーマルヘッド(加熱体)
▲ ○ ▲ ○ ▲ ○ ▲ ○ ▲ ○ ▲ ○ ▲ ○ 発色層アンダー層
基紙
感熱紙の概要
○基紙表面に塗布された染料と顕色剤がプリンターのサーマルヘッドから熱を受け、溶融・接触することにより化学反応を起こして発色する。 動的感度
0.20
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
1.40
(低)印字濃度(高)O.D.値
一般的な感熱紙(FAX、レジ用紙等)
発色層アンダー層
基紙
オーバーコート層発色層アンダー層
基紙
ラベル、チケット等用の感熱紙
○オーバー層(外的要因からの保護)
○アンダー層(平滑性、蓄熱性の向上)
0.00
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4
(低)印字エネルギー(高) mj/dot
2.感熱紙の主な層構成 及び 主な役割
4
実証試験用に設置した同時多層式塗工部(タンデム型DF塗工部)
○新規性
・従来型のDF塗工部を2台並列に組合せる。
○懸念事項
・エアーカット装置の性能(カーテン膜に与える影響)
・塗工ヘッドへの結露、塗料混合による発色能力の低下 等
エアーカット装置塗工ヘッド
塗工ヘッド
エアーカット装置
<塗工部の多層化(従来型DF塗工部を2台組合せる 模式図)>
+
原紙原紙
5
実証試験用に設置した同時多層式塗工部(タンデム型DF塗工部)
#1ヘッド #2ヘッド
原紙
エアーカット装置
原紙
塗工部簡易模式図
<同時多層式塗工部全体模式図>
<操作側 写真> <駆動側 写真>
<操作側 №2エアーカット装置写真>
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2.目標
要素技術 目標・指標 妥当性・設定理由・根拠等
同時多層塗 及
塗工エネルギーの削減15%以上1)同時多層塗工効果 40%以上(比率6%)*パス回数削減による蒸気・電力原単位の削減
2)塗工量削減効果 10%以上(比率9%)
同時多層塗工(塗工回数半減)及び塗工量削減による電力・蒸気使用量の削減を生産量と比較し設定した。
同時多層式塗工方式に適した塗料を開発し、塗工エネルギーの合理化を図るとともに、実用化技術の確立と検証を行う。
同時多層塗工及び塗工量削減に適する塗料開発と 実証試験機による検証・改良
2)塗工量削減効果 10%以上(比率9%)*塗工削減による蒸気・電力原単位の削減
欠陥率(ストリーク、スクラッチ)の削減
50%以上
*ストリーク・スクラッチ:塗工部に異物が付着し
引掻き傷のような塗布斑を起す現象
従来塗工方式は接触式の為、ストリーク等の欠陥が発生するが、非接触の塗工方式に変更する事により減少する。尚、塗工方式変更による他の欠陥発生を考慮し削減率を50%と見込んだ 。
塗料流失量の削減50% 塗工方式変更により、塗工部及びスクリーンからの塗料流失箇所が減少することから、削減量を50% と見込んだ。
7
3.成果、目標の達成度
要素技術 目標・指標 成 果 達成度
塗工エネルギーの削減
15%以上エネルギー削減率:5.3%(重油換算) 一部達成
同時多層塗工において、開発した塗料で、ほぼ安定的に塗工できる事を検証し、目標には一部未達であったが、塗工エネルギーの合理化への優位性を確認した。また、実証試験機にて実用化に必要な技術の確立と検証を実施し、新たな課題についても確認を行った。
同時多層塗工及び塗工量削減に適する塗料開発 と 実証試験機による検証・改良
1) 同時多層塗工効果40%以上
2) 塗工量削減効果10%以上
1) 同時多層塗工効果 47.9%
2) 塗工量削減効果 3.9%
(達成)
(未達)
欠陥率(ストリーク、スクラッチ)の削減50%以上
欠陥率(ストリーク、スクラッチ)の削減 100%(塗工方式変更による欠陥発生は無)
達成
塗料流失量の削減 50% 塗料流失量の削減16.6% 未達
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3.成果、目標の達成度(説明資料)
要素技術
・同時多層塗工に適する塗料開発
・塗工量削減に適する塗料開発
○最適塗料物性(一例)
一般塗料 適性塗料 一般塗料 適性塗料
塗料濃度100% 85% 100% 100%
感熱層 オーバー層項目
一般塗料と適性塗料の曳糸性比較
1
10
[mm
]
適性塗料
・塗料濃度、増粘剤、界面活性剤等の添加量を調整することにより、粘度、表面張力、曳糸性を最適化し、多層同時塗工 及び 塗工量削減に適した塗料を開発した。
塗料濃度(%)
100% 85% 100% 100%
B粘度(mPa・s)
100% 30% 100% 110%
表面張力(mN/m)
100% 85% 100% 85%
破断時間(×10-2sec)
0.2 3.3 70.0 75.8
0.001
0.01
0.1
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07
Time [s]
Dia
mete
r
一般塗料
※塗料濃度、粘度、表面張力数値:一般塗料に対する割合で表示
9
3.成果、目標の達成度(説明資料)
○塗工量削減効果(一例)
0.80
1.00
1.20
1.40(高)O.D値
要素技術
・同時多層塗工に適する塗料開発
・塗工量削減に適する塗料開発
0.00
0.20
0.40
0.60
0.80
0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40
(低)印字エネルギ (ー高) mi/dot
(低)印字濃度(
従来塗工方式
同時多層塗工方式(塗工量9%ダウン)
・従来塗工と同時多層塗工方式による感熱紙の動的感度比較
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3.成果、目標の達成度(説明資料)
○塗工エネルギーの削減 15%以上(重油換算) : 5.3% 一部達成
1)同時多層塗工効果 40% : 47.9%(達成) 2)塗工量削減効果 10% : 3.9%(未達)
従来塗工方式 同時多層塗工方式 削減率 削減効果
○同時多層塗工による塗工エネルギー削減効果(内訳)
項 目 蒸気原単位 電力原単位 重油換算効果 効果目標値
同時多層塗工効果 45.8% 50.0% 47.9% 40%
塗工量削減効果 4.5% 3.5% 3.9% 10%
全 体 - - 5.3% 15%以上
※主な未達理由 : 塗料濃度低下と随伴エアーの影響が大きく、塗工膜の更なる薄膜化により膜揺れ・膜切れが発生し、塗工量の削減が進まなかった。⇒エアーカット装置 及び 吸排気バランス、塗料処方の改良等を検討中。
従来塗工方式 同時多層塗工方式 削減率 削減効果
蒸気原単位Kg/100Kg
166 90 45.8%
電力原単位KWH/100Kg
32.0 16.0 50.0%
47.9%
従来塗工方式 同時多層塗工方式 削減率 削減効果
蒸気原単位Kg/100Kg
111 106 4.5%
電力原単位KWH/100Kg
23.5 22.7 3.4%
3.9%
○塗工量削減による塗工エネルギー削減効果(内訳)
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3.成果、目標の達成度(説明資料)
○欠陥率(ストリーク、スクラッチ)削減50% : 100%(達成)
・20回/年程度の発生頻度に対し、ストリーク、スクラッチの発生は無い(塗工部変更による欠陥の増加は無い)。
・実証試験の初期段階では、欠陥の増加(塗工不調)となったが、各種対応により同時多層塗工可能な条件を確立した。
不具合項目 対 応
原紙とエアーカット装置のクリアランス調整(平均:2.0mm⇒1.5mm)
エアーカット装置への給気エアー受入口を増設(1箇所を2箇所)
給気エアーの脈動防止(バルブの設置)
エアーカット装置の給気・吸引バランスを調整
エアーカット装置の給気エアー取入口の変更
<エアーカット不良>・膜揺れ、膜切れによる塗工斑
・0.24t/日の塗料流失量に対し、変更後は0.20t/日となり、削減率は16.6%であった。※主な未達理由 : 脱泡処理後の塗料のゲル化によるスクリーン詰りにより塗料替え増加によって未達となった。
⇒塗料処方の改善を検討中(感熱塗料は粘度低下、オーバー層は処方変更等)。
○塗料流失量の削減50%以上 : 16.6%(未達)
エアーカット装置の給気エアー取入口の変更
塗工室の空調調整(温度、吹出し口)
塗料温度の調整
<結露>・結露水の塗料への混入による塗工斑
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4.事業化、波及効果
○事業化の見通し
実証試験機を設置した勿来工場2号コーターでは、目標の効果を達成するには至らなかったが、多層式塗工方式の技術確立にて塗工紙製造時の塗工エネルギーの削減効果及び塗工量の削減を確認できた為、塗工方式の変更を行っている。特に対象とした汎用の感熱紙に関しては、ほぼ塗工方式の変更を終了しており、現在、認定紙に関して、実機試作や試作品の評価を進めている。また、塗工エネルギーの合理化の推進に関しても、同時多層塗工適性の向上を目指した塗料開発や課題となった随伴エアーのカット適性の改良等を継続検討している。
○波及効果○波及効果
感熱紙市場は、世界的に約100万t/年、年率約5%の成長市場と考えられ、情報用紙分野では貴重な成長品種である。日本の感熱紙市場は、10万t強で、微増であるが成長を続けている。また、アジア地域(日本を除く)では、急速に需要が拡大していることから、アジア地域で感熱紙の生産に参入するメーカーも増加してきている。この様な状況の中、諸外国に対抗する手段の一つとして、本技術開発の実機検証から、塗工エネルギーの合理化及び塗工量の削減によるコストメリット等も見込まれ、国際競争力の強化が図れる。更に、塗工紙の多層化(高機能化や差別化)が、既設のコーターで可能となることから、塗工回数の増加による効率ダウンやドライヤー等の増設・コーターのレイアウト変更、コーターの新設のような大型投資も抑制でき、企業の弱体化が防止できると考えられる。
H20.6 特許出願 出願№2008-159992感熱記録材料(審査中)
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5.研究開発マネジメント・体制等○体制図
日本製紙株式会社
研究開発本部 要素技術開発
技術本部 推進窓口
勿来工場 実証試験場
○スケジュール
H19年度 H20年度○ラボテスト
・同時多層塗工に適する塗料開発・塗工量削減に適する開発
○実証試験設備設置
○実機テスト
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