超高強度繊維補強コンクリート(UFC)を用いた軽量・高耐 …UFC...

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[2013 年 8 月 30 日]

超高強度繊維補強コンクリート(UFC)を用いた軽量・高耐久な道路橋床版を開発 鋼床版と同等の軽さと優れた疲労耐久性を同時に実現/大規模更新時代への対応も視野

阪神高速道路株式会社(社長:山澤俱和)と鹿島建設株式会社(社長:中村満義)は共同で、超高強

度繊維補強コンクリート(UFC:Ultra High Strength Fiber Reinforced Concrete)を用いた、鋼床版と

比較して同等の軽さながら、より高い疲労耐久性を有する道路橋床版を日本で初めて開発しました。 阪神高速道路では、先進の道路サービスを目指して、公募により選定した大学や企業と共同研究を

行うなど、積極的に技術開発に取り組んでいます。一方鹿島は、独自の UFC を開発・実用化するなど

高い技術力を保有しています。阪神高速道路と鹿島は、2011 年より共同研究を行い開発に取り組んで

きた結果、このほど軽量かつ耐久性の高い UFC 床版の実橋への採用が可能になりました。 今後、阪神高速道路と鹿島は、この UFC 床版の実用化へ向けた検討を引き続き行うことにしていま

す。

UFC 床版(見上げ)

UFC 床版を用いた道路橋

阪神高速道路株式会社

鹿 島 建 設 株 式 会 社

プレテンション PC 鋼材

ワッフル型の UFC 床版

報道配付資料

床版形式による重さの比較(UFC 床版を 1 とした場合)

【開発の背景】

開発が進んだ都市部で高速道路橋を計画する際には、橋脚の位置や基礎の規模が制約されたり、

非常に短い期間での建設が要求されたりすることから、軽量な鋼床版の使用頻度が他道路と比べ相対

的に高くなっていますが、近年、既設橋においてはさまざまな要因による金属疲労亀裂が顕在化してい

ます。新設橋梁においては構造改良によってリスクの低減がはかられていますが、舗装の損傷など付

随した懸念も残されています。 そこで、阪神高速道路と鹿島は、鋼床版に代わる軽量かつ高耐久なコンクリート系の道路橋床版の

開発を目指し、床版の材料に UFC を使用した道路橋床版の共同研究を 2011 年から開始しました。そ

して、詳細な解析(3次元FEM解析)による試設計、および輪荷重走行試験を行い、優れた疲労耐久性

を実現した UFC 床版を開発しました。

なお、本共同研究は、大阪大学の松井繁之名誉教授、長岡技術科学大学の長井正嗣名誉教授、

東京工業大学の二羽淳一郎教授、神戸大学の三木朋広准教授を委員とする「UFC(超高強度繊維補

強コンクリート)を用いた道路橋に関する検討会」において技術的な指導をいただいています。

【UFC 床版の概要】 UFC は、通常のコンクリートの約 5 倍という高い圧縮強度を活かして、より大きなプレストレス(圧縮

力)を導入でき、鋼繊維の補強効果から高い引張強度が得られることにより鉄筋が不要となるため、極

限まで部材を薄くし、軽量化が可能です。また、組織が非常に緻密であるという材料特性から、高い耐

久性も期待できます。鹿島では特殊な鋼繊維を使用した独自の UFC である「サクセム®」を 2006 年に

開発、これまでに羽田空港 D 滑走路の桟橋部などに適用した実績があります。 今回、阪神高速道路と鹿島が開発した UFC 床版は、鋼床版箱桁のデッキプレートおよび縦リブを

UFC 床版に置き換えるもので、リブの配置をワッフル型としてさらに軽量化をはかりました。リブには高

強度 PC 鋼材を配置し、プレテンション方式で 2 方向にプレストレスを導入しています。

鋼繊維 UFC 床版 実験供試体 (見上げ)

【UFC 床版の試設計及び輪荷重走行試験】

合成桁の床版への適用を想定し、UFC 床版としての試設計、各種基本性能の確認を行いました。

UFC 床版は直接活荷重(構造物上を移動する車両の重量)を受けるスラブと、高強度 PC 鋼材を配置

するリブから構成することとし、床版重量を鋼床版と同等とすることを目標に、それぞれ最小の部材厚と

して設定しました。床版の設計については、活荷重による発生応力度に対して構造の成立性を確認す

ることを目的に詳細な解析を行いました。これらの試設計及び解析により、鋼床版と同等の軽さで UFC床版を構成できることが確認できました。

また、実際に「サクセム」を使用した UFC 床版にて、車輪の走行を想定した輪荷重走行試験による安

全性の検証も行いました。試験には大阪工業大学所有の輪荷重走行試験装置を用いて、100kN から

220kN まで荷重を階段状に増加させながら、各荷重で 4 万回、合計 20 万回の輪荷重走行試験を行い

ました。これは設計荷重のおよそ 2 倍にあたる過酷な条件での試験で、阪神高速道路で実測された軸

重の 100 年分以上に相当するものです。輪荷重走行試験の後、床版に水を張ってさらに 4 万回の輪荷

重試験を行った後でも、床版に損傷はなく健全で、この UFC 床版の高い疲労耐久性を確認できまし

た。

輪荷重走行試験プログラム

0

50

100

150

200

250

0 5 10 15 20 25

載荷

荷重

(kN

)

走行回数(万回)

静的計測

疲労試験

水張疲労試験

挙動確認試験

輪荷重走行試験

水張疲労試験

輪荷重走行試験状況

【今後の展開】 今回開発した UFC 床版は、鋼床版と同等の軽量化がはかられつつ、疲労耐久性に優れることが確

認されました。床版の製作コストについても、鋼床版と同等以下と試算しています。 阪神高速道路と鹿島は、この UFC 床版の実用化に向けた検討を引き続き行うことにしており、その

高い耐久性から長大橋への適用(メンテナンス費用が低減)や、大規模更新時代に向けた既設床版の

代替としての検討も進めていきます。