食品のリスクって何だろう? - Saitama...2011/01/26  · 食品の危険...

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2011.1.26さいたま市食の安全フォーラム

毎日食べる食品は安全なの?

食品のリスクって何だろう?

東京大学名誉教授唐木 英明

karaki@gakushikai.jp

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食品のリスクって何だろう?

1.毎日の食品は安全なの?

2.化学物質の誤解

3.なぜ誤解をするのか?

4.安全と安心を近づける

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厚生労働省平成19 年次輸入食品監視統計

輸入が多い国の違反

0.7234.53,47377,647イタリア

0.4359.68,60189,704韓 国

0.710614.016,361116,867タ イ

0.6302.85,441196,566フランス

0.71269.919,475197,507米 国

0.440917.296,784563,847中 国

違反率C/Bx100

違反件数C

検査率B/Ax100

検査件数B

輸入件数A

国 名

違反はすべて「閾値」以下のわずかなもの

中国食品が危ない、ということはない!

中国産食品は危険か?

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食品検査品目数と違反品目数 (東京都及び特別区)

現在は「国産のほうが安全」ということはない!

国産食品のほうが安全か?

107 (0.5%)157 (0.2%)26421,82070,54292,362200175 (0.3%)129 (0.2%)20422,66166,79489,455200267 (0.3%)88 (0.2%)15521,90058,07479,973200395 (0.4%)74 (0.1%)16921,772 58,569 80,341 200447 (0.2%)83 (0.2%)13021,80756,00177,808200544 (0.2%)46 (0.1%)9023,80654,90378,709200630 (0.1%)54 (0.1%)84 24,864 53,027 77,891 2007 30 (0.1%)36 (0.1%)6622,76448,10770,8712008輸入品国産品総数輸入品国産品総数

違反品目数(%)検査品目数年度

3

5

0

100

200

300

400

500

600

1 6 11 16 21 26 31 36 41 46

食中毒死者数 (1954-2003)

1955 1965 1975 1985 1995 2003

食中毒患者数と死亡者数

0

10000

20000

30000

40000

50000

1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 2980 85 90 95 00 05 10

患者数

食品の危険 300~600万人?

2004 32005 72006 52007 72008 42009 02010 0

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食品のリスクって何だろう?

1.毎日の食品は安全なの?

2.化学物質の誤解

3.なぜ誤解をするのか?

4.安全と安心を近づける

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化学物質(農薬・添加物)4つの誤解

X化学物質は少しでもあったら危険

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パラケルサスParacelsus (1493 - 1541) スイスの内科医、錬金術師、占星術師。「トキシコロジーの父」とも呼ばれる。

すべてのものは毒である!

そして、その毒性は量で決まる!

安全を守る原則

リスクは量で決まる

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化学物質の量と作用の関係

無毒性量

一日摂取許容量

危険安全

安全:念のため危険と考える

規制値

合法 違反

いきち

閾値 これ以下なら細胞に作用しない量

違反をしても閾値を越えないような厳しい規制

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化学物質(農薬・添加物)4つの誤解

X化学物質は少しでもあったら危険大量なら毒・少量なら無毒:量と作用の関係

X「複合汚染」の恐怖

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化学物質の複合作用

薬の場合にはありうる・細胞機能に作用する量の化学物質を複数与えるとまれに相互作用が起こることがある拮抗作用、相加作用、相乗作用

食品添加物や残留農薬の場合にはありえない

・細胞機能に作用しない量の化学物質をいくつ与えても、何の作用も現れない

作用

作用なし添加物

作用あり薬

一日摂取

許容量

無毒性量

ここにも量と作用の関係

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化学物質(農薬・添加物)4つの誤解

X化学物質は少しでもあったら危険大量なら毒・少量なら無毒:量と作用の関係

X「複合汚染」の恐怖量と作用の関係の誤解

X天然・自然こそが安全

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危険なものはどんなに少しでもいや!でも、どんな食品にも危険性はある

<アレルギー物質>小麦、そば、卵、乳製品、落花生・・

<食中毒菌>鳥刺し、レバ刺し、生カキ・・

<水銀>マグロ、クジラ、メカジキ、キンメダイ

<有毒化学物質>フグ、キノコ、生大豆、青梅、

ギンナン、ジャガイモ、ホウレンソウ、タバコ、酒、コーヒー、塩、焼肉、焼き魚・・

天然・自然が安全ではない!

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・すべての野菜、果物は天然の農薬(化学物質)を含む

・うち52種類を調べたところ、27種類に発ガン性があった・この27種類はほとんどの食品に含まれていた

・私たちは平均毎日1.5グラムの天然農薬を食べている・その量は残留農薬基準の10,000倍以上・すなわち野菜、果物が含む農薬の99.99%は天然のもの

・残った0.01%の合成農薬を恐れて、無農薬を選ぶのか?

99.99% 天然農薬(天然化学物質)

0.01% 残留農薬(合成化学物質)

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--------------------------------

発癌物質 濃度 ppm 野菜・果物--------------------------------メトキサレン 0.8 – 32 パセリ、セロリ、セリヒドラジン安息香酸 11 - 42 キノコアリルイソチオシアン酸 12 – 72000 キャベツ、カリフラワー、カラシ菜、

西洋ワサビリモネン 31 – 8000 オレンジジュース、マンゴ、コショウエストラゴール 3000 – 3800 バジル、ウイキョウサフロール 100 – 10000 ナツメグ、ニクズクアクリル酸エチル 0.07 パイナップルセサモール 100 – 10000 ゴマメチルベンジルアルコール 1.3 ココア酢酸ベンジル 15 – 230 バジル、ジャスミン茶、蜂蜜カテコール 100 コーヒーカフェ酸 50 – 1800 リンゴ、サクランボ、ブドウ、モモ、

プラム、ニンジン、セロリ、ナス、レタス、ジャガイモ、コーヒー

クロロゲン酸 50 – 21600 リンゴ、アプリコット、サクランボ、モモ、ナシ、ブロッコリー、キャベツ、ケール、コーヒー

野菜・果物に含まれる発がん性化学物質の例

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・硝酸塩は、通常摂取する量なら有害ではない。・体内で亜硝酸塩に変化すると、 メトヘモグロビン血症や発ガン性物質であるニトロソ化合物に変化する恐れが一部で指摘されている。・しかし、硝酸塩と発ガンの関係についての科学的な証拠はない(JECFA)。

硝酸ナトリウムの食品添加物基準食肉製品の発色剤 亜硝酸根としての最大残存量70mg/kg

硝酸・亜硝酸

主な野菜中の硝酸塩含有量

(注)硝酸イオンとして算出。生鮮物中の含有量。厚生省データ(昭和63年当時)

ほうれん草 3560 mg/kgチンゲンサイ 3150サラダ菜 5360 基

準の

50倍!

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17黒木登志夫「暮らしの手帖」1990年4・5号

ガンの原因はなんだと思いますか?

食品添加物

農薬タバコ

大気汚染・公害 おこげ

ウイルス

普通の食べ物

性生活・出産職業

アルコール

放射線・紫外線

医薬品

工業生産物

ガンの専門家

食 事 30%喫 煙 30%ウイルス、細菌 5%運動不足 5%

米国での調査

誤解の影にメディアが

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たばこと肺がん:男性では4.5倍、女性では4.2倍厚生労働省多目的コホート研究

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191.27ニコチン0.4634.5タール(総称として)10.230000-トルイジン160672-ナフチルアミン1.796ヒドラジン3218000キノリン1700204~387ニトロソピロリジン5.1~22500~2750N -ニトロソノルニコチン100~5508.2~73ジエチルニトロサミン1.3~3.8 9.4~30メチルエチルニトロサミン0.4~5.9680~823ジメチルニトロサミン5.7~4368~136ベンゾ(a)ピレン20~40

主流煙 副流煙(受動喫煙)

(ng/本)

タバコの中の発がん性物質

http://www.e-kinen.jp/harm/poison.html

5倍100倍

50倍50倍20倍50倍50倍10倍

3倍50倍20倍

3倍3倍3倍

残留農薬 1万分の1発がん性なし

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食べすぎとタバコが最大の危険!

活性酸素の作用紫外線放射線ストレス

たばこ

食事活性酸素

酸化障害DNAタンパク質脂肪

ガン病気老化

・活性酸素消酵素SOD カタラーゼ

グルタチオン・ペルオキシダーゼ・抗酸化物質尿酸 グルタチオン

・発がん性物質

DNA修復酵素アポトーシス(細胞の自殺)

野菜・果物の化学物質

酸素

免疫

軽い運動

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21厚生労働省多目的コホート研究

野菜・果物はがんを増やさない・減らさない!

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野菜・果物は胃がんを予防する厚生労働省多目的コホート研究

野菜・果物は食道がんを予防する

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肉類 野菜

カロリー

カロリー

尿中の遺伝子酸化物質

食事⇒活性酸素⇒遺伝子に傷⇒ガン・病気・老化

食べないと死ぬ⇒肉より野菜のほうが害は少ない

名古屋大学 大澤俊彦 食品の成分と企画 放送大学2006.2.27 を改変

野菜が含む抗酸化物質の作用

野菜は

食べたほうが

いい!

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化学物質(農薬・添加物)4つの誤解

X化学物質は少しでもあったら危険大量なら毒・少量なら無毒:量と作用の関係

X「複合汚染」の恐怖量と作用の関係の誤解

X天然・自然こそが安全野菜や果物は発ガン性化学物質の倉庫

・化学物質は蓄積する

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「丈夫な子どもを生むために今から薬は飲んでいません」

ー新婚の若い主婦ー

・薬は身体に蓄積するんでしょう?

・添加物や農薬も蓄積するって聞きました

・怖いですね!

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薬の飲み方

1日3回 毎食後

体内の薬

8 16 24 8 16 24 8 時朝 昼 夜 朝 昼 夜 朝

飲み始め飲み終わり

食品添加物も毎日食べているけれどその量はほぼゼロ!

薬は、医師・薬剤師の指示できちんと飲みましょう

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化学物質(農薬・添加物)4つの誤解

X化学物質は少しでもあったら危険大量なら毒・少量なら無毒:量と作用の関係

X「複合汚染」の恐怖量と作用の関係の誤解

X天然・自然こそが安全野菜や果物は発ガン性化学物質の倉庫

X化学物質は蓄積する蓄積するような化学物質は使われていない

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食品のリスクって何だろう?

1.毎日の食品は安全なの?

2.化学物質の誤解

3.なぜ誤解をするのか?

4.安全と安心を近づける

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食品に対する不安の男女差

鹿児島県2005年

男 女 主婦

強い不安 16.3% 23.0 % 23.1 %

多少不安 64.7 % 67.6 % 70.3 %

合計 81.0 % 90.6 % 93.4 %

女性、主婦の不安が強い:母性本能、脳の働きの性差

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・遺伝子・育った環境・ホルモン男の胎児:男性ホルモンを浴びる

身体と脳が男性化する女の胎児:男性ホルモンは浴びない

身体と脳が女性型のまま

どうやって見分けるか?

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人さし指、短い男性は暴力的?

カナダの研究チーム発表

カナダ・アルバータ大のハード博士らは学生の指の長さを計測し、人さし指と薬指の比率を計算。そのうえで、4種類の攻撃性(暴力の攻撃性、怒り、敵対心、言語的な攻撃性)を判断する質問に答えてもらった。

その結果、人さし指が薬指に対して短い男性ほど、「殴られたら殴り返す」というような「暴力の攻撃性」が強いことが分かった。女性はいずれの攻撃性についても関係がなかった。

胎児が母親の子宮内で浴びる男性ホルモン(テストステロン)の量が多いほど、人さし指が薬指に対して短くなる傾向が明らかになっているという。

ただし、ハード博士は「指の長さで推測できるのは性格のごく一部にすぎない。指の長さで人を選別しないように」と呼びかけている。

(Asahi.com06/03/07 14:29)

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88.4%

82.8%

80.6%

77.2%

75.0%

72.8%

69.4%

65.2%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

いわゆる健康食品

遺伝子組換え食品

食品添加物

BSE

家畜用抗生物質

細菌・ウイルス

農 薬

汚染物質

食品安全委員会 2006年アンケート調査

食品に対する不安の原因

ダイオキシンなど汚染物質

残留農薬

家畜用抗生物質

細菌・ウイルス

食品添加物

遺伝子組み換え食品

BSE

いわゆる健康食品

不安だらけだけれど、本当に危険なの?

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80%以上の人が不安なのに無農薬野菜はこれしかない!?

有機JAS認定食品の消費市場規模2,895億円

国内食品消費80兆円のおよそ0.36%生鮮品等・加工品・外食

生鮮品等消費15兆円のおよそ1.9%野菜・穀物・乳肉卵・魚介類 (2002年 ハーベスト・リサーチ)

全農地の0.18%(2008年オーガニックマーケットリサーチ)参考ヨーロッパ各国 7-10 %米国 3-4 %韓国 0.46%

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買い物で注意するのは価格と品質

(n=400,複数回答: 荒井2010)

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「聴かれて出てくる不安」

・買うか、買わないかを決めるのは価格、産地、期限、評判などの総合的な判断

「危険」という情報はその一つに過ぎない

・アンケートは筆記試験と同じ!「危険」という「知識」をもっていることを示す

⇒消費者は必ずしも「強い不安」を感じてはいないしかし、確かに不安はある

一部の消費者は無添加・無農薬を買う

それは大きな誤解! なぜ誤解をするのか?

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ヒューリスティク heuristic

少ない努力で直感的に結論を求める方法

例)暗証番号を忘れた!

1)順番にしらみつぶしに調べる(コンピューターが使う方法)

2)誕生日などの手掛りを使って試行錯誤で調べる(ヒューリスティク)

→しらみつぶしに調べれば時間がかかるが、必ず正解に到達

ヒューリスティクは短い時間で答えが出るが、まちがいも多い

危険を逃れるための判断は一瞬で行う必要がある。だから、直感的な判断(ヒューリスティク)をする。

直感の7割は正しい

「このあたりだろう」と、パッと見当で指すんですね。それがいい手で…。

Eureka!

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直感的な判断:ヒューリスティク

ほとんどの場合直感で判断し、行動する

・危険情報重視 ・利益情報重視・安全情報無視 ・信頼する人に従う・前例に従う ・迷ったら本能に従う

・結論は「白か、黒か」

これは進化の中で得た生き残り作戦

・危険情報と利益情報を無視したら死ぬ・安全情報を無視しても実害はない・経験者以外が自分で判断したら死ぬ・理性的な判断は時間がかかる・直感的判断なら一瞬で対処できる

悪いことに

気を取られる!

安心は

信頼から!

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危険情報

利益情報

安全情報

利益がない危険は避ける!無駄な危険を避けないと生きてゆけない

誤解の原因は直感的判断- 人間の視野の狭さを自覚する -添加物

農 薬組換え食品ワクチン原 発

米国産牛肉

タバコ酒

自動車健康食品

利益があれば危険は無視!逃げるだけでは生きてゆけない

危険情報 安全情報

重視!

重視!

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水1㎥の値段さいたま市水道183円ペットボトル 24万円(0.5リットル 120円)

1300倍!

水の費用対効果

インチキ機能水

アルカリ水・水素

水・酸素水・海洋

層水・波動水・パ

イウォーター・・・

値段は?危険

性は?

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質 問

1)年収800万円と1000万円の管理職があります。あなたはどちらに就職しますか?

2) 周囲の人の年収が500万円のA地区で、年収800万円の管理職があります。

周囲の人の年収が2000万円のB地区で、年収1000万円の管理職があります。

あなたはどちらの地区に就職しますか?

迷う人はいない

ほとんどの人が

迷う悪いことに気を取られて経済的合理性とは違った判断をする

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村井敏明・龍谷大学法科大学院教授

しかし、人々が不安に思うほど犯罪が増加しているという実証的データはない。

実態がないのに人々の不安だけが増大し、治安の強化や罰則の強化を求めるという現象を、「モラル・パニック」や「集団ヒステリー」で説明する研究論文も多く現れている。

マスコミによって一地方の犯罪があっという間に日本全国に報道されることが、犯罪不安の蔓延という現象をもたらしているのであろうと推測される。

犯罪の増加によって市民生活の安全が脅かされ、人々には犯罪に侵害されるという不安が増大しているという。

悪いことに

気を取られる!

学術の動向 2007.8

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食品のリスクって何だろう?

1.毎日の食品は安全なの?

2.化学物質の誤解

3.なぜ誤解をするのか?

4.安全と安心を近づける

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日本の食品の安全性は高い

・食品添加物や残留農薬は厳しい規制により安全性が守られ、日本の食品の安全性は高い。・中国からの輸入食品の安全性は国産食品とまったく差がない。・「冷凍餃子事件」は犯罪であり、中国食品の安全性の問題ではないにもかかわらず、誤解により中国食品嫌いが加速した。

*****

・ただし食中毒の危険は依然として大きい。生肉や食品の取り扱いなどに注意が必要・アレルギーにも注意!

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健康被害あり

(許容できないリスク)

健康被害なし

(許容できるリスク)

不確実領域

(安全係数)

小 リスク 大

リスクが大きいのはどれ?リスクが大きいのはどれ?

普通の食品(種類と量)喫煙・飲酒・健康食品食中毒(刺身・生野菜・生卵・生肉)

食品添加物残留農薬

遺伝子組換え食品牛 肉

厳しい規制で安全が守られている

主に個人の注意

気になる! 気にならない!

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安心= 安全 +信頼感性 科学 感性

判断の大事な条件=信頼

「安心」とは「安全」という言葉を信じられること

事業者と行政

信頼の確保に

努力!

そしてまちがったうわさ話にだまされない科学の知識

利益 政治

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