函館地区における在宅医療...

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函館地区における在宅医療函館地区における在宅医療の実践の実践

北美原クリニック理事長

函館五稜郭病院客員診療部長

岡田晋吾

函館市人口287,063人

年少人口(0~14歳)

32,283人(11.2%)

生産年齢人口(15~64歳)

180,342人(62.8%)

老年人口(65歳~)

74,438人(2525..9%9%)

道南医療圏

在宅医療って何?

在宅医療とは、一言でいえば患者さんのご自宅で(在宅で)、医療を行うこと。

一般的には往診と訪問診療があります。

でもクリニックの外来に来ている方も広い意味では在宅医療かもしれません。

病院のベッドではなくて家のベッドで寝るということです。

在宅医療は・・・・

医者がいる時間だけ医療の場

その他の時間は生活の場という認識が重要

往診と訪問診療ってどこが違うの?

往診は急に具合が悪くなって(熱がでた、下痢がひどいなど)病院や診療所に行けないときに医師がご自宅まで伺って診察や治療をすることです。

(短期間-最高で1週間くらい)

訪問診療は、医師、看護師などが定期的にご自宅を訪問し診察、検査、看護、投薬などをすること。慢性疾患などで長期にわたって在宅療養が必要なケースでは、計画的な訪問診療が必要となります。

(長期間ー最低でも1ヶ月以上」)

家に帰ったら誰が診てくれるの?

在宅医

訪問看護師

ホームヘルパー

歯科医、歯科衛生士

理学・作業療法士

ケアマネジャー

薬剤師

栄養士

そしてあなたの大事な人たち(ご家族など)、近所の人たち、友人

どこの医者が診てくれるの?

①近くのクリニックの先生

②訪問診療を行っている病院の先生

③在宅療養支援診療所の先生

在宅療養支援診療所新たな制度

在宅療養支援診療所の施設基準Ⅰ

1 保険医療機関たる診療所

2 24時間連絡を受ける医師又は看護職員を配置し、連絡先を文書で患家に提供、写しを診療録に添付

3 当該診療所において又は別の保険医療機関の保険医との連携により、患家の求めに応じて24時間往診可能な体制を確保し、往診担当医の氏名、担当日等を文書で患家に提

供、診療録に添付

4 当該診療所において又は別の保険医療機関、訪看ST等の看護師等との連携により、患家の求めに応じて、当該診療所の医師の指示に基づき24時間訪問看護の提供が可能な体制を確保し、訪問看護の担当者の氏名、担当日等を文書で患家に提供、写しを診療録に添付

P113、P477、P491

在宅療養支援診療所の施設基準Ⅱ

5 当該診療所において又は別の保険医療機関との連携により、緊急時に入院できる病床を常に確保し、受け入れ医療機関の名称等を届け出ている

6 連携する場合、連携する保険医療機関又は訪問看護STに患家の同意を得て、当該患者の病状、治療計画等を保険医療機関等に文書により随時提供、写しを診療録に添付

7 診療記録管理の体制整備

8 当該地域において、医療サービスと福祉サービスとの連携調整を担当する者と連携している

9 年1回程度、在宅看取り数を報告

P113、P477、P491

届出事項

在宅療養を担当する医師の氏名

・連絡を受ける担当者の氏名、資格

・連絡方法

・交代制で行う場合は、勤務分担表

・緊急時連絡の患者等への説明文書例

自施設職員又は連携により確保している他の医療・福祉サービスとの連携を担当するもの氏名、連絡先、資格、主な業務内容

・ P491

連携保険医療機関等Ⅰ

患者の診療情報について、あらかじめ在宅療養支援診療所の保険医から提供を受け、緊急時に活用できる体制で保管

緊急の往診又は訪問看護の後には、診療内容の要点を診療録に記載

在宅療養支援診療所の保険医が患者の診療情報を集約管理できるよう、速やかに診療情報の提供を行う (点数算定はできない)

P492

連携保険医療機関等Ⅱ

連携保険医療機関等が、往診又は訪問看護を行った場合は、初再診料、往診料、在宅患者訪問看護・指導料は、往診等を行った保険医療機関で算定

往診等を行った場合、レセプト適用欄に在宅療養支援診療所の名称及び{支援}と記載

P114、P492

在宅時医学総合管理料

月1回算定医師、看護師配置施設入所者は算定対象外在宅療養支援診療所の場合

(1)在宅療養支援診療所 (2)それ以外

処方せん交付 4200点 2200点処方せん交付なし 4500点 2500点

一定の重傷患者に対し、医師により往診又は訪問診療を退院の日から起算し1月以内に4回以上行った場合、重傷者加算として月1回 1000点を加算

P106、P118、P478

在宅時医学総合管理料(算定要件)

旧在宅時医学管理料+旧寝たきり老人在宅総合診療料

診療所又は200床未満の病院において、居宅療養患者であって通院困難なものに対して、同意を得て、計画的な医学管理の下に月2回以上の訪問診療を行った場合であって、患者等の求めに応じて常時往診及び訪問看護を行うことができる体制を整備している場合に算定

当該診療所又は他の保険医療機関との連携により、往診及び訪問看護ができる24時間体制を確保し、担当者の氏名担当日等を文書で提供(在宅療養支援診療所のみの要件)

P106、P118、P478

月1回の定期訪問診療

あらかじめ日程を決めて、月に一度診察を行います。たとえば1ヶ月に1度外来を受診して1か月分の薬をも

らい、必要なときには検査を受ける、というようなことを自宅で行う感じです。

比較的病状が安定しておられる方が対象となります。

当院では月1回の訪問の方でも原則24時間対応を

行っています。

月2回以上の定期訪問診療

病状が不安定で24時間の対応を必要とする患者さんに対して、あらかじめ日程を決めて月2回以上訪問します。主に寝

たきりもしくは寝たきりに準じた(がんの末期など)、通院が困難、処置が多い患者さんなどを対象に行っています。

夜間・休日を含め、24時間を通して病状の変化に対応できる

よう、連絡体制と緊急往診体制をとります。

訪問日以外に医師の往診が必要な際は、臨時の往診で対応します。臨時往診、点滴・注射等を行った場合や緊急・夜間・深夜・休日の往診については別途料金が加算されます。

在宅でできることは?訪問診療、心電図、血液検査経管栄養法(胃ろうなど)中心静脈栄養法在宅酸素療法在宅自己注射在宅患者訪問栄養指導在宅患者訪問薬剤指導褥瘡の処置膀胱留置カテーテルや胃瘻・気管切開、人工呼吸器の管理がんの疼痛管理がん化学療法つまり病院で行う医療のほとんどのことは在宅でも可能なのです。

在宅でできないこと

レントゲン検査

内視鏡検査

CT検査

MRI検査

PET-CT検査

手術

など

どんな患者さんが対象?

●老衰 ●脳血管障害後遺症

●神経難病 ●認知症

●脊髄損傷 ●肝硬変、腎不全などの慢性疾患

●骨折などの整形外科疾患

●悪性腫瘍(がん、肉腫)

●その他

クリニックでの診病連携

クリニッククリニック

AA病院病院(総合病院)(総合病院)

乳がん、大腸がん胃がん、胆石循環器、整形外科透析患者、呼吸器科、前立腺、ポリペク

B病院(総合病院)(総合病院)

腎臓癌腎臓癌褥瘡手術例褥瘡手術例

CC病院病院(地域支援病院)(地域支援病院)

ポリペクポリペク糖尿病糖尿病虫垂炎虫垂炎

DDクリニッククリニック(肛門科)(肛門科)

肛門周囲膿瘍肛門周囲膿瘍痔核痔核

D病院

CT,MRI検査

EE病院病院(総合病院)(総合病院)

白血病白血病呼吸器科呼吸器科

FF病院病院(脳外科病院)(脳外科病院)

脳神経疾患脳神経疾患

医療モデルの変化今までののモデル

病院から健康体健康体として社会に送り出す病院・施設完結型

これからのモデル身体機能障害を抱えながら身体機能障害を抱えながら地域で生活するモデル

ネットワーク型、地域完結型、在宅療養型在宅療養型

高齢化高齢化慢性疾患の増加慢性疾患の増加病院の機能分化病院の機能分化

当院の理念地域で信頼されるホームドクターに

プライマリーケア消化器外科医・循環器内科医

専門的診療内視鏡検査・心臓エコー

抗がん剤治療透析など

2004年7月開業 医師1人、看護師3人、事務2人2005年4月 循環器内科医合流 医師2人 看護師5人 事務3人2006年5月 透析医合流 医師3人 看護師9人 ME2人 事務3人現在 医師3人 看護師17人 管理栄養士1人、ME2人 事務5人

慢性疾患を抱えた高齢者が増える一般市民には自分の症状が何かなのかわからない

胸部腹部内科外科

がん患者の増加、抗がん剤治療の多様化勤務医の疲労、透析患者の増加

車の両輪のように

在宅医療をなぜ?

開業半年後80歳の女性(長万部町)が娘さんに連れられて来院。胃カメラで進行胃がん。

手術後当院でフォロー。函館在住の娘さんのところで療養。入院はしたくないと言うことで当院外来で点滴、疼痛管理。

通院も困難で在宅医療を希望。

朝点滴に行き、昼に見に行って夜抜去ということの繰り返しで看取る。

ホームドクターは両輪だけでは足りなかった

当院の理念地域で信頼されるホームドクター

専門的診療内視鏡検査・心臓エコー

透析

プライマリーケア消化器外科医・循環器内科医

在宅医療看取り、緩和ケア、PEG

恥ずかしいことに訪問看護師を1人も知らなかった!

中野先生のところへ勉強に・・・

図1 当院の在宅連携システム

岡田 阿部師長駒谷師長

報告指示

報告指示

患者・家族

患者・家族

患者・家族

患者・家族

患者・家族

報告指示

患者・家族

患者・家族

患者・家族

患者・家族

患者・家族

報告指示

ケアマネージャー

訪問看護ステーション

ケアマネージャー

訪問看護ステーション 報告

指示報告指示

報告指示

報告指示

訪問看護ステーションとの連携

すべての訪問看護ステーションと連携。

ケアマネジャー、訪問看護師とのやり取りはまずは担当の当院看護師

訪問診療の予定、物品の管理なども担当看護師

④地域での課題

在宅医療について病院、開業医、市民の理解不足

家で死ぬというのは体裁が悪い?

地域の医療者同士の連携不足

⇒まずは地域で何が問題なのかを考えましょう。

第2回道南在宅ケア研究会シンポジウム「道南における在宅ケアの現状と展望」 【座 長】 北美原クリ

ニック理事長 岡田 晋吾1. 1.道南在宅ケア事情について

渡島保健所保健福祉企画課 保健推進係長 羽山 美由樹 氏2. 2.訪問看護ステーションの活動状況報告

函館訪問看護ステーション 所長 笹原 理恵 氏3. 3.訪問看護ステーションを利用するにあたってケンゆのかわ訪問看護ステーション 所長 南 正子 氏

4. 4.在宅ケアでの連携と問題点函館市居宅介護支援事業所連絡協議会 会長 佐藤 重生 氏5. 5.在宅医療における問題点

飯田内科クリニック 院長 飯田 善樹 氏

3030

第4回定例会(平成19年8月30日)

1. ミニレクチャー「口腔ケアとその実際」講師:光銭歯科医院 光銭 裕二 院長

2. 事例検討(グループワーク)「癌患者の心理~プロセス毎に移りゆく心理状況を考察する~」進行:函館訪問看護ステーション

笹原 理恵 所長 他

Hakodate Municipal Hospital

変わったこと

病院スタッフが在宅医療を理解してくれた

⇒早めの在宅移行、退院前カンファレンスの実施など

顔の見える連携

在宅医療への新しい診療所の参加

気軽に相談できる関係ができた

市民も在宅医療への要望が増え

1人⇒5人⇒9人⇒9人(4-10月)

74歳直腸がん術後肺転移、脳転移

在宅医療の実際

家で亡くなるということ在宅看取り

死亡場所の比較

病院 高齢者施設 自宅など がんの病院死亡割合

日本 81% 3% 16% 93%

アメリカ 41% 22% 31% 37%

オランダ 35% 33% 31% 28%

在宅ホスピスケア

あなたは根本的に病気を治す方法はもうないと言われたらどこですごしたいでしょうか?

⇒私は住み慣れた家で好きなもの・人に囲まれて自分らしく過ごしたいと思っています。

これが在宅ホスピスケアです。

でもそんなことが可能かどうか心配?でしょう

⇒私も2年半前までそうでした・・・・・医者なのに

生きるということは死ぬと言うこと

健康なときに自分や大切な人の病気、まして死について考えられないということは当然です。縁起でもないことかも知れませんね。

でも人は生きている限り死から逃れることはできません。

どう死ぬかと言うことは実はどう生きるかということです。(生き様=死に様)

せめて最期くらいは病院で

せめて最期くらいは在宅で・・

ニーズのあわせて柔軟に

患者、家族に選択肢を

病室内でできることはすべてできる

病室内でできないことはできない

家でしかできないこともる・・・・

在宅在宅療養患者療養患者(家族を含む)(家族を含む)

薬剤搬送(薬剤師)

患者の意を受けた患者の意を受けた在宅医療に協力する者在宅医療に協力する者

連 携 先

薬 局在宅療養在宅療養

支援診療所支援診療所

連 絡 先

訪 問 看 護

ス テ ー シ ョ ン麻薬処方せん

医師の指示による投薬(看護師)

麻薬処方せん

処方せんFAX電送

-2007.4.1より-

麻薬管理マニュアル改訂のポイント(在宅)

看護師・准看護師ホームヘルパー看護福祉士など

処方せん確認後薬剤交付 服薬指導

在宅医療をうまくうけるためには?

①在宅にこだわらない、病院もうまく使う②介護保険をうまく使う③日ごろからかかりつけ医をもっておく④家族にやさしくしておく

①在宅にこだわらない、病院もうまく使う⇒二人の主治医を持つ

病院の医師=医療モデルでの役割目的:疾病の治療や救命、目標:健康への回復対象:疾患場所:病院、施設

かかりつけ医=生活モデル目的:生活の質向上目標:自立対象:障害の克服によるADLの維持、向上

場所:患者が生活する場所

シームレスな連携作りで患者も家族も安心

②介護保険をうまく使う⇒いいケアプランを立ててもらおう

介護保険制度の概要

在宅を重視し,一人暮らしや高齢者のみの世帯でも,可能な限り在宅生活が続けられるような支援

重度障害を持つ高齢者や一人暮らしの要介護高齢者が,24時間対応のサービスが受けられる仕組み

ケアマネージャーのもとで,在宅および施設サービスを一元化して効率よく提供

65歳以下でもがんの末期などでも使えます

③日ごろからかかりつけ医をもっておく⇒いざとなったときにあたふたしない

かかりつけ医とは

●かかりつけ医とは、気軽に病気の相談ができ、患者の皆さんの日頃の健康状態をわかっている、身近な医院・診療所の先生のことです。日々の健康管理と安心のためにも「かかりつけ医」を持つことが大切。

●専門的な検査や診療が必要と判断された場合は、かかりつけ医から最適の病院へ紹介します。

④家族にやさしくしておく⇒胸に手をあてて考えよう

在宅医療におけるITの利用

診療情報の共有

投薬内容、検査結果、バイタルなど

文書作成機能

紹介状、訪問看護指示書、ケアプラン、看護報告書

⑥わが国の在宅医療推進に関わる課題

在宅療養支援診療所の活動が十分ではない

理由:制度が理解されていない

訪問看護ステーションなどとの連携などのノウ

ハウがわからないなど

病院スタッフと在宅スタッフとがお互いを知らない

地域の特性にあわせた在宅医療を作らなければならない

5050

患者中心の連携に必要なこと

Face to Faceの連携作り

⇒疾患管理のためのネットワーク作り

急性期病院から施設、在宅へのスムーズな移行

⇒退院計画の早期プランニング

⇒地域連携退院時共同指導を積極的に行なう

退院時カンファレンス開催

在宅にかかわるすべての職種がかかわる

⇒担当者会議(ケアカンファレンス)開催

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