メキシコ乾燥地域・中小規模農家の 農家経営に関す...

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メキシコ乾燥地域・中小規模農家のメキシコ乾燥地域・中小規模農家の        農家経営に関する研究        農家経営に関する研究-JICA・南バハカリフォルニア州開発パートナーシップ事業を事例として-

農業経営情報科学専攻

生産情報システム学研究室

砂川 敦志

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調査対象地域調査対象地域

3

調査地域の現状調査地域の現状

主要作物農地面積(’98) 41,398ha (メキシコ全土の0.2%)

主要作物総生産高(’98) 740,966,085ペソ (1ペソ=11.03円)(メキシコ全土の0.48%)

生産形態(’91)  灌漑農法 : 天水農法  = 88,746ha : 10,484ha

・ 気候は“BW(砂漠気候)”に分類され、雨量は非常に少ない

・ 農業用水の90%を地下水に依存(生活用水とも共有)

・ 近年の観光産業の発展により、水使用量が飛躍的に増加。   このため、水を極力節約した農業が求められている

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調査地域の経営管理部門における特徴調査地域の経営管理部門における特徴

中小規模階層の農家が全体の90%を占める

農作業日誌等の「営農記帳」という概念がない

農業協同組合のような組織が存在しない

市場の状況把握ができていない農家が多い

市場には存在している生産出荷基準を          農家の方は把握していない もしくは考慮していない

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JICAJICA・・開発パートナーシップ事業開発パートナーシップ事業

2001年7月より始動

鳥取大学

CIBNOR

農業振興事業支援

研究事業支援

(栽培管理 植物病理

 土壌肥料 経営管理)経営管理経営管理

カリサール村

振興作物に関する

実地栽培検証

栽培技術確立

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研究の目的研究の目的

本事業におけるモデル農家を対象として

プロジェクトにおけるモデル農家の現状分析

農産物出荷市場対応策について検討

以上の側面より、乾燥地域における以上の側面より、乾燥地域における

           中小規模農家の農家経営確立の中小規模農家の農家経営確立の

方向性について検討方向性について検討

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研究方法研究方法

モデル農家の営農記帳を利用し、本プロジェクトにおける地域振興作物を中心とした経営分析を行う

振興指定作物の市場価格データを、BCS州および周辺州に関して収集し、比較して、出荷候補場や出荷有利時期に関して考察する

指定作物のうち、未だ販路や規格が明確でないものについて、他国における事例を参考として、これらの作物の出荷基準作成を試みる

8第1図  BCS州におけるGDP割合の推移

8.76%

8.05%

9.25%

9.15%

9.39%

7.71%

7.74%

2.82%

2.79%

2.79%

3.04%

3.41%

3.74%

3.93%

21.05%

21.83%

20.00%

20.06%

19.44%

18.61%

17.22%

25.20%

25.87%

27.20%

26.15%

26.17%

27.35%

28.04%

21.82%

21.42%

21.30%

21.55%

21.63%

22.40%

22.04%

20.35%

20.04%

19.46%

20.04%

19.95%

20.19%

21.03%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1993年

1994年

1995年

1996年

1997年

1998年

1999年

農業・漁業 製造工業 商業・レストラン及びホテル サービス(金融・不動産賃借・保険) サービス(公共・社会) その他の産業

TOTAL(1000Peso)

7,413,035

7,283,825

7,169,884

6,890,054

6,324,954

6,363,069

6,172,965

出典:Anuario Estadistico Baja California Sur edicion 2001

BCSBCSBCS州における州における州におけるGDPGDPGDP割合の推移割合の推移割合の推移

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BCSBCS州の総括的農家階層構成州の総括的農家階層構成

農家数割合 農 家 の 経 営 規 模 概 略 的 現 状

大 規 模 農 家 銀行や政府による支援がある

(Large Producer) (管内には4~5ヵ所、会社形態の大農場がある)

中 規 模 農 家 銀行や政府からの支援の可能性が有り得る

(Midium Producer) しかし、状況的に実現は困難

小 規 模 農 家

(Low and Very low 誰からも融資を受けることができない

capacity Producer)

参考:農業従事者数 20,138人(2000年次)

8~10%

40%

50~52%

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中小規模農家の状況中小規模農家の状況

水が自由に使えない

土地が脆弱であり、綿密な管理を怠った場合、塩害が起りやすい

作物の価格変動が不安定なため、収入もこれに呼応して不安定である

生産物の品質の良し悪しを考慮せず、混合し出荷しているため、高値で販売できていない

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農家説明会の様子及び実際に記帳された農作業日誌農家説明会の様子及び実際に記帳された農作業日誌

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トマティージョ部門 フリホールYorimon部門 チレ・グエリート部門 インゲンマメ部門 トウモロコシ部門 フリホールPinto部門経営全体(3ha)全体 全体 全体 全体 全体 全体 金額

販 売 収 入 5000 3400 8000 0 8000 24400

自 家 消 費 0 2450 4 1450 600 4504

自 給 種 苗 用 -

自 給 飼 料 用 -

計 5000 5850 8004 1450 8000 600 28904

種 苗 費 1500 1500 1500 65 4565

肥 料 費 300 1000 1300

飼 料 費

家 畜 費

原 材 料 費 700 50 750

農 用 薬 剤 費 500 1000 300 1800

機 具 費

建物維持修繕費

農業用水道光熱費

作業用被服費

支 払 労 賃 500 900 1600 3000

負 債 利 子

計 3500 950 1600 3500 1800 65 11415

農 業 経 営 費 3500 950 1600 3500 1800 65 11415

家族労賃見積額 120peso×部門労働日数120peso×部門労働日数120peso×部門労働日120peso×部門労働日120peso×部門労働120peso×部門労働 31560

投下資本利子見積額 500.00 14.58 0.00 583.33 375.00 8.13 8342.17

計 4000.00 964.58 1600.00 4083.33 2175.00 73.13 51317.17

第2表:モデル農家Aの収益費用計算表

農業生産費用

項 目

農業経営費

農業粗収益

注)ドルで聞き取った部分は「1ドル=11.0ペソ(レートは2003.7.31のものを使用 資料:現地の聞き取り資料及び農作業日誌からの集計により作成

モデ

ル農

家モ

デル

農家

AAの

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モデル農家モデル農家AAの経営成果の経営成果

規 模 (ha) 3ha聞き取りから

家 族 労 働 日 数 (日) 263日農作業日誌から集計

投 下 資 本 額 (ペソ) 69518.1 土地+固定財+流動財

家 族 労 賃 見 積 額 (ペソ) 31560.0 該当地域の平均的な見積を出す(LaPazにおいては、一日120ペソ)

投下資本利子見積額 (ペソ) 8342.2 投下資本額×利子率(LaPazにおける平均的な利率は12%)

農 業 粗 収 益 (ペソ) 28904.0 表から集計

農 業 経 営 費 (ペソ) 11415.0 表から集計

農 業 生 産 費 用 (ペソ) 51317.2 農業経営費+家族労賃見積額+投下資本利子見積

農 業 純 収 益 (ペソ) 17489.0 農業粗収益-農業経営費

農 企 業 利 潤 (ペソ) -22413.2 農業粗収益-農業生産費用

農 業 純 収 益 率 (%) 60.5 (農業純収益/農業粗収益)*100

家族農業労働純収益 (ペソ) 9146.8 農業粗収益-(農業経営費+投下資本見積)

農 業 資 本 純 収 益 (ペソ) -14071.0 農業粗収益-(農業経営費+家族労賃見積)

1日当たり家族農業労働報酬 (ペソ) 34.8 家族労働純収益/当該部門家族労働日数

農 業 資 本 利 回 り (%) -20.2 農業資本純収益/投下資本額 * 100

資料:聞き取り及び農作業日誌から算出

農業経営全体 公式項   目

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農産物市場対応問題農産物市場対応問題

農産物が安く買い叩かれているという意識がある

不安定な市場価格に対する情報不足不安定な市場価格に対する情報不足

出荷時における、農産物選別の不備出荷時における、農産物選別の不備

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メキシコ経済省ホームページメキシコ経済省ホームページ

生産物 取引市場

 日付  出力単位

  を選択して出力

各州都中央市場の日毎の価格データを公開(ただし土日祝日は除く)

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出荷候補市場出荷候補市場

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振興作物振興作物

Chile(トウガラシ)

Nopal(ウチワサボテン) Savila(アロエベラ)

Frijol(インゲンマメ)

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ChileChile--JalapenoJalapeno種 市場価格推移種 市場価格推移

BCS州ラパス市場 Chile-Jalapeno市場価格推移

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

14.00

16.00

1月上旬

2月上旬

3月上旬

4月上旬

5月上旬

6月上旬

7月上旬

8月上旬

9月上旬

10月上旬

11月上旬

12月上旬

Peso/kg

2000年

2001年

2002年

2003年

Nayarid州テピク市場 Chile-Jalapeno市場価格推移

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

14.00

1月上旬

2月上旬

3月上旬

4月上旬

5月上旬

6月上旬

7月上旬

8月上旬

9月上旬

10月上旬

11月上旬

12月上旬

Peso/kg

2000年

2001年

2002年

2003年

Jalisco州グアダラハラ市場 Chile-Jalapeno市場価格推移

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

1月上旬

2月上旬

3月上旬

4月上旬

5月上旬

6月上旬

7月上旬

8月上旬

9月上旬

10月上旬

11月上旬

12月上旬

Peso/kg

2000年

2001年

2002年

2003年

Sinaloa州クリアカン市場 Chile-Jalapeno市場価格推移

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

1月上旬

2月上旬

3月上旬

4月上旬

5月上旬

6月上旬

7月上旬

8月上旬

9月上旬

10月上旬

11月上旬

12月上旬

Peso/kg

2000年

2001年

2002年

2003年

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市場価格と作業暦の比較市場価格と作業暦の比較((JalapenoJalapeno種)種)

BCS州ラパス市場 Chile-Jalapeno市場価格推移

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

14.00

16.00

1月上旬

2月上旬

3月上旬

4月上旬

5月上旬

6月上旬

7月上旬

8月上旬

9月上旬

10月

上旬

11月

上旬

12月

上旬

Peso/kg

2000年

2001年

2002年

2003年

生育日数 播種密度(kg/ha) 播種開始日 収穫開始日150~160日 0.5 9/5~11/25 12/15~4/15

表:Chile-Jalapeno種のラパスにおける標準的な作業暦

出典:Fechas de Siembra y Recomendadas en el Distrito LaPaz

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NopalNopalに関する出荷有利時期に関する出荷有利時期

Nayarid・Tepic市場  Nopal市場価格推移

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

14.00

1月上旬2月

上旬3月

上旬4月

上旬5月

上旬6月

上旬7月

上旬8月

上旬9月

上旬

10月上旬

11月上旬

12月上旬

Peso/kg

2000年

2001年

2002年

2003年

Sonora・Helmosillo市場 市場価格推移

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

14.001月上旬

2月上旬

3月上旬

4月上旬

5月上旬

6月上旬

7月上旬

8月上旬

9月上旬

10月上旬

11月上旬

12月上旬

Peso/kg

2000年

2001年

2002年

2003年

ウ チ ワ サ ボ テ ン   出 荷 量 割 合 の 季 節 変 動

0 %

1 0 %

2 0 %

3 0 %

4 0 %

5 0 %

6 0 %

7 0 %

1 月 ~ 2 月 3 月 ~ 7 月 8 月 ~ 1 0 月 1 1 月 ~ 1 2 月

出 典 : A S E R C A c o n d a t o s d e l " M e r c a d o M u n d ia l d e l N o p a l" C IE S T A A M

22遮光栽培実験遮光栽培実験

23

出荷時における農産物選別の不備

市場には存在している生産出荷基準を農家のほうが把握していないもしくは考慮していない 

農家が一目でわかるような農家が一目でわかるような生産物出荷規格の作成生産物出荷規格の作成

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生産規格例(生産規格例(Chile Chile -- GueritoGuerito種種))

規格外のもの

良いものと悪いものとの比較 形の良いもの

形の良いもの

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ウチワサボテン・アロエベラの規格基準ウチワサボテン・アロエベラの規格基準

州内及び国内での基準がはっきりしていない

国内における利用例が少ない

以上二点より、作成が難しいとされている

他所における規格基準を参考とする他所における規格基準を参考とする

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規格基準の先駆例調査規格基準の先駆例調査

ウチワサボテン アロエベラ

・ASERCA(メキシコ経済省

    傘下機関)の

農作物実態報告書

・日本における企業 A及びB・(財)日本健康・栄養食品協会

以上からの聞き取り調査

・IASC(国際アロエ科学協議会)        のホームページ閲覧

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ウチワサボテンの規格ウチワサボテンの規格

「Paca」と呼ばれる円筒形に近い入れ物に

納める形で出荷が成される

「Paca」のサイズ 「Paca」の大きさ 一葉の大きさ 一葉の厚さ 「Paca」に入れる枚数

Mediano

Chico o Cambray

10cm

7cm

90cm×2m×20~25cm

90cm×2m×14~20cm

出典:"Mercado mundial nopalito" ASERCA UAM CIETAAM MEX

Grande 90cm×2m×25~30cm 13cm 1cm 2000~2500枚

2500~3000枚

3000~3500枚

0.5~0.7cm

0.4~0.5cm

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アロエベラの規格アロエベラの規格

・アロエベラ生葉

生産規格:有機無農薬で三ヵ年を経過した圃場にて   育成された親株から株分けしたもの

出荷規格:上記の圃場で18ヶ月以上栽培され、一葉        の重量が900g以上のもの

以上、企業より聞き取り

・アロエベラ製品

アロエ成分の必要含有量、検査方法、

品質表示基準、表示方法等、多岐にわたり事細かに掲載

以上、(財)日本健康・栄養食品協会基準規格集

             及びIASCホームページを参考

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カリサール農業生産組合カリサール農業生産組合

結成 : 2003年11月下旬

目標として定められた事項

グループでの生産計画立案

農産物の共同栽培・収穫 及び 広報

機材、資源の共同購入

生産作物の多様化

市場情報の相互交換

環境保全型農業推進           etc

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結論結論現段階では、こうしたすべての事項に、

農家が個人で対応していくことは困難ではないかと思われる

プロジェクトにおけるモデル農家のみならず、この地域におけるすべての中小規模農家の経営確立を図るにあたり、設立された農業協同組合の概念を最大限に利用、普及し、農家同士の相互協力を積極的に執り行っていくことが重要であると推察する

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