心肺蘇生中の心電図解析に基づく抽出波形の早期認知 システ...

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 「突然の心停止」では、多くの場合、心室細動などの重症不整脈が原因であるといわれている。この

ような重症不整脈には、出来るだけ早い除細動(電気ショック)が最も有効であることが知られてお

り、空港、駅、大学等の教育機関などに AED が設置されている。また、心肺蘇生法の標準的なガイド

ラインを提供している AHA(米国心臓学会)ガイドラインでは、「絶え間ない心臓マッサージ」を重

要な基本コンセプトとしている。しかしながら、心電図波形が除細動の適用波形か否かの判定には、

すべての蘇生処置を中断しなければならないといった重大な自己矛盾に直面してしまう。さらに、こ

のように蘇生処置をすべていったん中断させることは、患者の回復に重大な不利益をもたらす。この

ようなことから、本研究では、「絶え間ない心臓マッサージ」をはじめさまざまな蘇生措置を講じなが

ら、安全かつ確実に除細動適用波形を認知できる早期認知システムの開発を目的としている、このシ

ステムの実現により、心停止患者の蘇生率向上に大きな効果をもたらすことができる。

 本研究では、これまでに心臓マッサージ実施中の心電図波形を解析することにより、心臓マッサー

ジによる影響を心電図波形から除去する心電図波形認知アルゴリズムを構築し、本アルゴリズムを搭

載した新システム(早期認知システム)を心肺蘇生術が実施される現場(杏林大学救命救急センター ER

室)に導入した。更に、実際の救命救急現場での検証の前段階として、高性能シミュレータ SimMan

を用いて、一連の救命救急の流れを模擬し、その流れの中で開発したアルゴリズムの有用性を検証した。

 今後の課題としては、早期認知システムによって抽出された心臓マッサージ中に心電図波形と2005

年の AHA ガイドラインに基づく心肺蘇生術が定める5サイクル(約2分)ごとの心臓マッサージの

間歇期(非施行時)の心電図波形を記録し、その異同を検討するとともに、実用化に向け、安全性の

検証や処理の高速化・高精度化が挙げられる。

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一  般

心肺蘇生中の心電図解析に基づく抽出波形の早期認知システムの臨床応用・実用化に向けた検証

(研) 情報ソリューション部門 計算機システム工学講座

(教) システム創生工学専攻・電気電子創生工学コース・

電気電子システム講座

(学) 電気電子工学科・電気電子システム講座

准教授 大屋英稔

Tel & Fax:088-656-7467 E-mail:hide-o@ee.tokushima-u.ac.jp

Fig.1:心電図波形認知アルゴリズムによる心電図波形データの認知例(左上:心臓マッサージ実施時に記録された心電図波形、左下:心臓マッサージによる影響を除去した波形、右上:左上の波形(心臓マッサージ実施時に記録された心電図波形)のスペクトル、右下:左下の波形(心臓マッサージによる影響を除去した波形)のスペクトル)

Fig.2:SymManと日本光電製 AED

大屋英稔

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