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正しい手洗いで撃退! ー暮らしにひそむ感染症ー
NTT東日本札幌病院
感染管理推進室 看護主任
感染管理認定看護師 金子陽香
健康セミナー 2018.7.21(土)
本日の内容
• 感染症とは
• 暮らしに潜む感染症
• 予防の基本『手洗い』
感染症
ウイルスや細菌などの病原微生物が身体に入り、引き起こされる病気
定着 侵入 増殖 感染
皮膚や粘膜 組織
微生物 細菌、ウイルス、カビ、寄生虫など
免疫
中外製薬ホームページhttps://chugai-pharm.info/bio/antibody/antibodyp02.html
「自分と違う異物」を攻撃し、排除しようとする 体の防御システム
感染が成立する要素
抵抗力 病原性 抵抗力 病原性
病原体の病原性と抵抗力(免疫)の力関係
夏といえば・・・食中毒
細菌が増殖する要件
栄養
水分 温度 + 時間
• ほとんどの細菌は10~60℃で増殖 • 36℃前後で最もよく発育
食中毒クイズ①
冬に食中毒は起こらない?
(1) 起こらない (2) 起こる
【答え】(2) 冬も起こる
【解説】
• 気温が下がり空気が乾燥してくると、ノロウイルスによる食中毒が増えてきます
• 食中毒のほか、感染した人の手を介してうつることがあります(感染性胃腸炎)
食中毒 (食品衛生法)
感染性胃腸炎 (感染症法)
原因
細菌 ウイルス 寄生虫 有毒・有害物質
細菌 ウイルス 寄生虫
定義
食品に起因する胃腸炎・神経障害などの中毒症の総称
感染性病原体による下痢・嘔吐が主な症状の感染症
時期
細菌:6月~9月 ウイルス:冬
秋から冬に流行 (特にノロウイルスが多い)
症状
•腹痛や下痢、吐き気、おう吐など •発熱やけん怠感などの風邪に似た症状のことも
食中毒クイズ②
(1)匂いをかぐ
(2)なめて味を確認する
(3)糸を引くかどうかで確認する
(4)微生物がいるか検査をする
東京大学大学院農学生命科学研究科 ホームページより http://www.frc.a.u-tokyo.ac.jp/quiz/?tax=54
食中毒菌が付いているかどうかは、 どのようにして判断する?
【答え】 (4)微生物がいるか検査をする
【解説】
• 菌は小さく目に見えません
• 匂いや色、味が変化するほど増殖しなくても食中毒を引き起こします
食中毒の発生と予防
食品に菌が付く
菌が増える
菌の増えた食品を食べる
食中毒発生
付けない!
増やさない! やっつける!
食中毒・感染性胃腸炎を起こす 細菌たち
1)カンピロバクター
https://www.tepika.net/infection/campylobacter.html
• 家畜(牛・豚)、特に鶏の腸管内にいる細菌
• 加熱不十分な鶏肉、レバー(刺身、半生)
• 潜伏期間:2~5日
• 合併症 「ギラン・バレー症候群」
下痢後1~3週間後に手足の麻痺、顔面神経麻痺、
呼吸困難など
よく焼く
日本で販売されている鶏肉で、カンピロバクターが付着しているのは何%か?
食中毒クイズ③
(1)1% (2)2~19% (3)20%以上
【答え】 (3)20%以上
【解説】 • 汚染割合は調査によって異なります
• 100%(9検体中9検体)や
67.4%(135検体中91検体)といった
値が報告されています
東京大学大学院農学生命科学研究科 ホームページより http://www.frc.a.u-tokyo.ac.jp/quiz/?tax=54
2)ウェルシュ菌
• 土や水の中、健康な人や動物の腸内など 自然界に幅広く生息
• 肉類、魚介類、野菜を使用した煮込み料理 (カレー、シチューなど)
• 食べる日の前日に大量に加熱調理され、 大きな器のまま室温で放冷→菌が増える
• 潜伏期間:約6~18時間(平均10時間)
酸素が少ない鍋底に注意 加熱時は良く混ぜる
すぐ冷やす
• 鶏卵、食肉、動物(ペットも)
• 小児や高齢者はわずかな菌量でも感染
• 潜伏期間:5~72時間(平均12時間)
3)サルモネラ菌
https://www.tepika.net/infection/salmonella.html
産み立て卵はよく洗う
さわったら手洗い
• 毒素が原因 加熱が無効
• 潜伏期間:30分~6時間(平均3時間)
• 手指・鼻・のど・耳・皮膚などにいる菌
• 傷、特に化膿した皮膚、荒れた皮膚
• 素手で扱う「手づくり食品」
おにぎり・弁当・サンドイッチなど
4)黄色ブドウ球菌
ラップや手袋を使用
5)腸管出血性大腸菌(O-157など) • 大腸菌は家畜やヒトの腸内に存在
• 病原性のある大腸菌のうち、ベロ毒素(VT)を産生し、出血を伴う腸炎などを起こすもの
• O-26やO-111など多数(約170種類)
• 加熱不十分な肉(特に表面)
• 潜伏期間:3~5日
https://www.tepika.net/infection/enterohemorrhagic.html
よく焼く
食中毒クイズ④
生肉を触って手に付着した菌は、
手を液体石けんで二度洗いすることで
どのくらいまで減るでしょうか?
(1) 10分の1 (2) 100分の1 (3) 1,000分の1 (4) 10,000分の1
【答え】 (3)1,000分の1
【解説】 特に肉を触った場合は、他の調理をする前に少なくとも二度洗いをするようにしましょう。
https://family.saraya.com/kansen/noro/index.html
手洗いが最重要
【番外編】 夏に注意が必要な感染症
残念ですが手洗いだけでは防げないものもあります
1)虫による感染症
・原因:ウイルスを有するマダニに咬まれる
・症状:発熱、筋肉痛、麻痺、意識障害、
けいれん、髄膜炎、脳炎など
• 平成30年5月31日
国内5例目(いずれも道内)の患者が発生
ダニ媒介脳炎
対策は「咬まれない」こと
草むらや藪・森林などに注意が必要
• 肌の露出を少なくする
• 長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴、帽子、 手袋、首にタオルを巻く
• 草むらや藪・森林などの場所で、長時間地面に直接寝転んだり、座ったり、服を置かない
• 首にかけるタオルや脱いだ上着などは、直接地面に置いたり木にかけたりしない
2)水による感染症
レジオネラ肺炎
• レジオネラ属菌:河川、土壌など自然環境に生息
• 原因:汚染した水のエアロゾル(微粒子)の吸い込み
※人から人へはうつらない
・循環式浴槽水(24時間風呂) ・ホテルロビーの噴水 ・車、野菜への噴霧水 など
• 免疫が低下した人は特に注意(健常者もかかる)
糖尿病、慢性呼吸器疾患、乳幼児、高齢者など
大酒家、多量喫煙者もかかりやすい
• 潜伏期間:平均4~5日
• 症状:だるさ、悪寒、頭痛、食欲不振、筋肉痛、咳、
高熱、胸痛、呼吸困難など徐々に悪化
病勢の進行が早く、致死率が高い 早期受診
対策はエアロゾルを「吸い込まない」こと (施設では水の管理)
感染成立の輪
感染予防の手段
咳やくしゃみの しぶきを 吸い込みうつる
空気感染
飛沫感染
接触感染
感染のもとを もっている人
感染を受ける (受けやすい)人
出典:「INFECTION CONTROL 26巻 4号」
手や物を介して うつる
感染経路
例えばインフルエンザの感染経路
ウイルスが粘膜に付着
①ウイルスを含んだ飛沫を吸い込む(飛沫感染)
②飛沫の付いた手で粘膜に触れる(接触感染)
夏でも 発生します
物から人へも うつります
接触(または経口)感染を防ぐには
微生物を
• 自分の体に入れない
• 他の場所(人)へ運ばない
正しい手洗いが必要 • しっかり手を濡らす
• 石けんは十分量
• 15秒以上こする
• すすぎもしっかり
• 手荒れ予防
【演習】 正しい手洗いをしてみよう!
①蛍光塗料を1プッシュ塗布
②手洗い(流水と石けん)
③ブラックライトで洗い残しを確認
洗い残したところが光ります!
アルコールを使った手指消毒のポイント
• 見た目に汚れていないときに限る
• 乾いた手に15秒以上かけて、よく擦りこむ
• 指先から手首まで、まんべんなく
• 手指消毒用を台拭きなどに代用しない
• スプレー式のものは吸い込みに注意
まとめ 感染症の予防には
• 微生物に負けない体作り(抵抗力)
• 正しい手洗いを習慣にする
ご清聴ありがとうございました
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