エンテロウイルス71に 関する最近の話題...エンテロウイルス71に...

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エンテロウイルス71に関する最近の話題

第10回ウイルス学夏の学校 みちのくウイルス塾第 回ウ 学夏 学校 ウ 塾

平成23年7月17日(独)国立病院機構 仙台医療センター

財団法人東京都医学総合研究所

ウイルス感染プロジェクトウイル 感染プ ジ クト

小池智

エンテロウイルス71とは?エンテロウイルス71とは?

ピコルナウイルス科

エンテロウイルス属エンテロウイルス属

Species A

動物に感染するウイルス

ピコルナウイルス pico(小さな)RNAウイルス

近縁のウイルス

ライノウイルス

ポリオウイルス

ライノウイルス

口蹄疫ウイルス

A型肝炎ウイルス

口蹄疫ウイルス

エンテロウイルスの遺伝子構造、粒子構造ンテ ウイル 遺伝子構造、粒子構造

5’UTR 3’UTR

4 capsid proteins 7 non‐capsid proteins

3B

VP4

VPg Poly AVP2 VP3 VP1 2A 2C3A

3C2B

3D

Species A enteroviruses

EV71EV71

Species DSpecies B

Species C

Species D

EV71が引き起こす病気EV71が引き起こす病気

HAND-FOOT-MOUTH DISEASE 手足口病DISEASE 手足口病

Coxsackie A 16 virus,E t i 71 d thEnterovirus 71, and others

スライド:岩崎琢也博士

エンテロウイルス71感染

経口感染 消化管 糞便

ウイルス血症

手足口病 稀に中枢神経系へ手足口病 稀に中枢神経系へ

無菌性髄膜炎急性脳炎急性脳炎急性弛緩性マヒ

これまでのエンテロウイルス71流行地域 発生年 症例数 死亡数 臨床症状

米国 1969 1973 20 1 髄膜炎 脳炎米国 1969-1973 20 1 髄膜炎、脳炎日本(愛媛) 1973 81 0 髄膜炎、脳炎、手足口病日本 1973 手足口病日本 1978 手足口病日本 1978 手足口病ブルガリア 1975 705 44 脳炎、ポリオ様麻痺ハンガリー 1978 1550 45 脳炎、ポリオ様麻痺豪州 1986 34 0 脳炎豪州 1986 34 0 脳炎香港 1986 5 0 麻痺マレーシア 1997 ? 29 脳炎、手足口病マレーシア 1997 ? 12 脳炎、手足口病マレ シア 1997 ? 12 脳炎、手足口病日本(大阪) 1997 3 3 脳炎、手足口病日本 1997 手足口病シンガポール 1997-1998 39 0 手足口病シンガポ ル 1997 1998 39 0 手足口病台湾 1998 407 78 脳炎、手足口病香港 1999 2 1 脳炎、豪州(パース) 1999 14 0 麻痺等( )台湾 2000 41 脳炎、手足口病

スライド:岩崎琢也博士

EV71の主な流行とその死者数EV71の主な流行とその死者数

1975年 ブルガリア 44名1975年 ブルガリア

1978年 ハンガリー

44名47名

1997年 マレーシア 34名1998年 台湾

2008年 中国

78名126名2008年 中国

2009年 中国

126名353名2009年 中国

2010年 中国

353名876名

問題点の解決案

• 危険なウイルスの流行をどのように調べるのか?

EV71の簡単で特異性の高い分離方法を作製する

• ウイルスは近年神経毒力がましたのか?そのメカニズムは?

デウイルスの神経毒力を測定できる動物モデルを作製する

• ワクチンや抗ウイルス薬の開発は?

適切な動物モデルを用いて有効性や安全性などを検定する

ポリオウイルスの例ポリオウイルスの例

•ヒトポリオウイルスレセプター(PVR)を同定し、PVRを発現するマウス細胞を作製する

ポリオウイルスを特異的に分離することが可能

•PVRを発現するトランスジェニックマウスを作製する

マウスにポリオウイルスを感染させてウイルスの毒力を

判定することが可能

ウイルスレセプターの役割

吸着 侵入 脱殻

複製の開始

吸着 侵入 脱殻

1. ウイルスレセプターは感染の初期過程で、細胞表面へのゲ吸着、細胞内への侵入、ウイルスゲノムの細胞質への放

出(脱殻)などに関与する。

1. ウイルス感染の宿主域や標的細胞の選択に重要な役割を果たす。を果たす。

ピコルナウイルスのレセプター

??

ポリオ コクサッキーB 口蹄疫

EV71コクサッキ−Aコクサッキ−B

ライノ(major group)

A型肝炎 エコー ライノ(minor group)

EV71エコーなど

(major group) (minor group)

スライド提供:J Bergelson博士

培養細胞でのEV71感受性

EV71

RD cells (human) L cells

(mouse)(mouse)

培養細胞でのEV71感受性

EV71infection

EV71 RNAtransfection

L cells(mouse)

infection

L cells(mouse)

transfection

(mouse) (mouse)

EV71 受容体の同定

ヒトのDNAを一部分持っているマウス細胞の集団

マウス

ス細胞の集団

EV71-感受性

この中のヒト由マウスL929 細胞

感受性細胞株

来DNAを探す

SCARB2

Ltr051

SCARB2

ヒトRD細胞染色体DNAをトランス

クシフェクション

Ltr246

70,000 形質転換細胞群のうち2つがEV71感受性

形質転換細胞株のEV71感染形質転換細胞株のEV71感染

EV71感受性細胞の出現頻度

No of susceptible cells

受性細 現頻度

1 /10 0001

No of susceptible cells/No. of total transformants

Exp. No. EV71感受性細胞

1 /10,0001

0/20,0002

020 0004

1/20,0003

020,0004

2/70,000total EV-GFP感染24時間後

マイクロアレイによる受容体遺伝子の検索

Ltr051 cells

マイクロアレイに競合的にハイブリダイズさせる

Ltr051 cellsLtr246 cells

mRNACy3 or Cy5で標

識する

L cells

mRNA 識する

候補遺伝子候補遺伝子を発現

L cellsPCRで本当

に形質転換細胞 遺伝

EV71-GFPを感染させ

てみる

細胞に遺伝子が入っていたかチ クする てみるチェックする

SCARB2 の発現で L929 cell はEV71感受性を獲得する

SCARB2Empt

感受性を獲得する

SCARB2

Transfection

Empty

L929 cells L929 cellsL929 cells L929 cells

Infect EV71-GFP

SCARB2(Scavenger receptor class B, member 2)

も ばれ SCARB2 は LIMPII, CD36L2,LPG85とも呼ばれている SCARB2 はSCARB1,CD36とともにCD36 遺伝子ファミ

リ に属するリー に属する SCARB2 膜貫通領域を2カ所持つ SCARB2 は主にendosome lysosomeに存在 SCARB2 は主にendosome,lysosomeに存在

SCARB2

NC

How many EV71 receptors?

Receptors identified for hand foot and mouth virusReceptors identified for hand, foot and mouth virusPatel & Bergelson (2009) Nature Medicine 15:728-729

ウイルスの分離に用いる細胞

RD細胞RD細胞Vero細胞

1. 検体をinoculateする(ヒトを宿主とする様々なウイルスも増殖可能。まずはウイルスを全部増やす。)

2 増えてきたウイルスを同定する(抗血清への反応性やPCR2. 増えてきたウイルスを同定する(抗血清への反応性やPCRの増殖、塩基配列などを調べる)

ポリオウイルスの分離に用いる細胞

L20B細胞L20B細胞

マウス由来L細胞に、ポリオウイルスの感染受容体PVR CD155を発現させた細胞。

ポリオウイルスは感染するが他のヒトのウイルスは大抵感染できないきない。

L‐SCARB2細胞の樹立

SCARB2

Transfection

L929細胞

P i で選択後Puromycinで選択後、クローニング

L SCARB2細胞L-SCARB2細胞

L-SCARB2 細胞でのEV71の増殖

5ul) 7

RDD

50/2

5

5

6RD

L-SCARB2

TCID

4

5

Log 1

0

3L929

iter (

L

1

2L929

Viru

s t

0

1

0 24 48V Hour Post-infection0 24 48

仙台ウイルスセンター、山形県衛生研究所、愛知県衛生研究所、島根県保健環境科学研究所から臨床分離株の分与を受けてSpecies A enterovirusをRD細胞、L細胞、L-SCARB2細胞に感染させたSCARB2細胞に感染させた。

CVA2 10株株

L-SCARB2細胞

L細胞

RD細胞

○ ?

レセプター テストした株

CVA3 22株CVA4 11株CVA5 10株

○×

○○

hSCARB2CVA6 7株CVA8 17株CVA10 10株×

×○

Not hSCARB2 株

CVA12 9株CVA14 17株CVA16 36株

××× ?CVA16 36株EV71 162株

Species A enterovirusの部はヒトSCARB2をレセ ×

×

一部はヒトSCARB2をレセプターとしている

×

×

×

×

×

×

×

×

EV71

( )

EV71

L-SCARB2細胞

細胞を れば を分離 きる

L SCARB2細胞

1. L-SCARB2細胞を用いれば、EV71を分離できる可能性がある。

2. ただし特異性は完全ではなく、CVA16, CVA14, も同時に分離される れら ウイ はCVA7も同時に分離される。これらのウイルスは

EV71と同じレセプターを使うウイルスである。

3. これらのウイルスがEV71と同様に中枢神経系合併症を引き起 す とがな はなぜか併症を引き起こすことがないのはなぜか?

ヒトSCARB2の発現

(kDa) 脳 心臓 小腸 腎臓 肝臓 肺 骨格筋 胃 脾臓 卵巣 精巣

97116

66

pons cerebellum

PVR t マウスの作製PVR-tg マウスの作製

ヒトPVR遺伝子の導入

PV感染PV感染

PVR-tgマウス

PV接種後後肢マヒを示

PVR tgマウス

PV接種後後肢マヒを示したPVR-tg マウス

脊髄のウイルス抗原

SCARB2 マウスの作製SCARB2 マウスの作製

ヒトSCARB2遺伝子の導入

EV71感染EV71感染

?

今後できる可能性のあること今後 能性 あ

1. L-SCARB2細胞を用いたウイルス分離システムの確立

2. SCARB2マウスを用いたウイルス毒力検定系の確立

EV71を迅速に分離し、マウスによってその神経毒力を検定する

ウイルスの強毒化のメカニズムを明らかにするウイルスの強毒化のメカニズムを明らかにする

強毒化したウイルスの流行に対して迅速かつ的確な情報を提供する

ウイルスの進化、新たな強毒株の出現を予測する

ワクチンや抗ウイルス薬の開発に役立てるワクチンや抗ウイルス薬の開発に役立てる

まとめまとめ

病 あ が 稀1. EV71は手足口病の原因となるウイルスであるが、稀に重篤な中枢神経系合併症を起こすので注意が必要である。

2. このウイルスのレセプターの一つSCARB2を同定した。

3. ヒトSCARB2を発現するマウス細胞株を作製して、ウイルス分離用培養細胞系としての有効性をテストした。

4. ヒトSCARB2を発現するトランスジェニックマウスを作製して ウイルスの神経毒力を測定するマウス系としての有て、ウイルスの神経毒力を測定するマウス系としての有効性とテストした。

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