トレーニング強度・量調整のための 主観的トレーニ...

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龍谷大学スポーツサイエンスコース教授

長谷川裕、JATI-SATI

トレーニング強度・量調整のための主観的トレーニング負担度の数量化

無料アプリを用いた「セッションRPE」の調査法を中心に

第2回JATI科学的手法を用いたトレーニング指導講習会2017/5/27 (大阪学院大学)

スポーツにおけるトレーニング指導

• アスリートのパフォーマンスを最大限に発達させること。

• 狙った試合で最高のパフォーマンスを発揮させること。

• オーバートレーニングとケガを防ぐこと。

• 上記の目的を達成するためのプログラムとピリオダイゼーション。• エクササイズ選択と配列

• 負荷設定(強度・量・休息時間)

• 頻度の短期および長期計画

• トレーニング活動それ自体の適切な指導と管理

そのためには、処方したトレーニング負荷が選手に対してどのような負荷となっているかを正確に知る必要がある。

トレーニング負荷(Load)

• 量(Volume)• 時間、距離、回数etc

• 強度(Intensity)• 物理的or外的(質量、高さ、衝撃力、スピード、パワーetc)• 生理的 or 内的(心拍数、血中乳酸濃度、VO2max、血中乳酸濃度

etc)

• 相対的 or 絶対的

• 総体としての負荷=Training Impulse (TRIMP)=量×強度• 呼吸循環器系、骨格筋系、神経系、内分泌系、自律神経系、感覚器系、心理的、努力感、疲労感、痛み、etc.

• その時々の環境条件や選手の様々な条件によって作用は異なる

• 個々の選手にどのような負荷となっているかを客観的に知るために…

主観的運動強度(負担度)

• 内的主観的な総体的運動負荷をとらえる• 個人差に対応• 日々の変化を捉える• 様々な種類のトレーニングに対応

• 有酸素・無酸素・スピード・ウェイト・プライオメトリクス・技術・戦術 etc.

• 問題点の発見の糸口• トレーニング負荷のコントロールのための客観的根拠となる

• 特別な機械を必要としない• メカトラブルに影響されない• 無料ですぐ始められる

自覚的(主観的)運動強度Rating of Perceived ExertionBorg RPE scale

6 7 Very, very light89 Very light

1011 Fairly light1213 Somewhat hard1415 Hard1617 Very hard1819 Very, very hard20

非常に楽である

かなり楽である

楽である

ややきつい

きつい

かなりきつい

非常にきつい

(1960年代 Gunner Borg &Hans Dahlström)

Category Ratio (C-R) 10

望月久;Borgによるcategory-ratio scale(CR-10)と等尺性筋力との関係、運動生理 8(1):7-10 ,1993

Category-ratio scale(CR-10)0 Nothing at all0.5 Very, very weak 非常に弱い1 Very weak かなり弱い2 Weak 弱い3 Moderate 中くらい4 Something strong やや強い5 Strong 強い6 7 Very strong かなり強い8910 Very, very strong 非常に強い

(maximum)

0 Rest1 Very, Very Easy2 Easy3 Moderate4 Somewhat Hard5 Hard67 Very hard8910 Maximal

(Foster et al. 2001)

Session RPE= C-R10 x training duration(min)

0 Nulla1 Molto, molto leggera2 Leggera3 Moderata4 Abbastanza dura5 Dura67 Molto dura8910 Massimale

(Impellizzeri et al. 2004)

セッションRPE• Borgの10段階主観的運動強度スケール(CR-10)

• セッション終了後(20-)30分間時点で評価

• 個人情報の守秘と意見交換の禁止

• 得られたCR-10にトレーニング時間を掛けてセッションRPEとする。

• 単位は任意単位(Arbitrary Unit:AU)とする。

• 各種の競技におけるさまざまなエクササイズ、幅広い選手層において、外的負荷によるトレーニング負荷と量との関係やセッション中のHR関連指標によって計算された負荷との高い相関関係が示されている。

• 水泳• 陸上競技• 自転車競技• サッカー• フットサル• ラグビー• オーストラリアンフットボール• バレーボール• バスケットボール• 柔道• テコンドー• レジスタストレーニング• フィールドセッション(スプリント・プライオメトリクス)

質問

今日の練習(試合・トレーニング)はどれくらいきつかったですか?

0 Rest 安静レベル 安静1 Very, Very Easy 非常に楽である めっちゃ楽だった2 Easy 楽である 楽だった3 Moderate 中くらい 中くらい4 Somewhat Hard ややきつい ちょっときつかった5 Hard きつい きつかった67 Very hard 非常にきつい めっちゃきつかった8910 Maximal 最大 これ以上はない

https://jp.surveymonkey.com/home/

まずアカウントを登録しよう

アカウントの削除

1

2

無料プランで10問、100人

アカウント作成後、アンケート作成に入るとこんな画面になる。

アンケートを一回でも作ったことがあればこうなる。

同じアンケートをするときはこれ。

アンケートに適当な名前を付ける

• セッションRPE• RPE〇月〇日• ゲームRPE vs〇〇大学, etc

アンケートカテゴリーは無視

新しい質問を追加する

質問タイプは「複数選択肢」の「マトリクス評価スケール」を選択

これを一行評価スケールにする、にチェック

2

1

3

質問を入力

• 今日の試合はあなたにとってどれくらいきつかったですか?• 今日のウェイトトレーニングはあなたにとってどれくらいきつかったですか?• 午前練習はあなたにとってどれくらいハードだったですか?

ここは無視

質問の下の画面マトリクス/評価スケールの初期画面

デフォルトは5列までしかないので を押して下に6個追加+

10段階のスケールを作成分析の統計処理で活用 0~10にする

Rest

Very, very easy

Easy

Moderate

Somewhat hard

Hard

Very hard

Maximal

8

9

いったん保存して、作った質問がどう見えるかチェックする。

2

これは×で消す。今後はこの通知を表示しない、をクリックしてもOK

プレビューとテスト

タブレット用確認画面

デスクトップ用確認画面

モバイルでは?携帯でどう見えるかをチェックする画面

実際のiPhoneの画面

完了でもどってもう一度編集しなおすことも可能。OKなら で進む。次へ➡

回収方法(コレクター)を選択

宛先を入れる前に、件名、メッセージと回答開始ボタンを編集

まずこの編集をポチっと押して

個人を特定して分析するためにはこれを選択

回答開始ボタンも編集して保存

画面、本文の下にあります。デフォルトは、「アンケートを始める」となっているので「回答する」に変更。

宛先のメールアドレスを入力

ひとつづつアドレスを入力した後Enterを押して確定。

または、受信者の追加ボタンを押して、CSVファイルからインポートする。

携帯からだとSMSやWhat’upのリストから選べる!

連絡先リストを作成しておくと便利。

宛先を入れたら、グループに名前を付けて保存できる。

CSVファイルを選択

②③

CSVファイルの作り方

メールアドレス、First name、Last name、のあと6項目追加可能。年齢、学年、ポジション、既往症、身長、体重、体脂肪率などを入れておくと、分析時に役立つ。

注意:インポートするときは、1行目を削除してから。

グループの中の個人を削除したり追加したりするには

この空欄をクリックすると以前作ったグループが表示されるので

グループを展開して

不要なアドレスを削除または追加する

宛先を指定したら で進む。次へ➡

匿名性を確保した調査を行いたい場合はここをオンにする。

送信のスケジュールを決める

すぐ送るか

送信日時を設定するか

①②

すぐならキャンセルできる

受信者(回答者)に届くメール

回答者は当てはまるボタンをポチっと押して完了

この部分は宣伝

2回目からの作成方法

既存のアンケートをコピー

コピーしたいアンケートを選択

モバイル画面の例

これを消す!

まずこれをクリックすると

のコピーという文字が追加されてしまうので…

ここらへんにカーソルを持っていくと現れる編集ボタンを押して…

質問と回答を修正・編集

必要なければ次へ進む

モバイルアプリから配信するには、マイアンケートを選んでコピーを作る。

左にスワイプしてコピーをクリック

必要に応じて編集し、送信をクリック

モバイルならSMSで配信できる

回収状態を調べる

回答者を追跡

受信者タブを押して、誰が回答し誰がまだ回答していないかが分かる

複数コレクター使用の場合

いよいよ集計結果の分析

デフォルトは平均値なので、まずカスタマイズをクリックして、表示オプションを選ぶ。

奥行きは分布を選ぶ。

分布グラフは6種類

グラフのアイコンを押して切り替える

気になる個人を個別に分析

数値データテーブルとベーシック統計

有料エキスポートサービスを使わずにエクセルで分析

最低値 最高値 中央値 平均値 SD

2月13日 2 4 2 2.67 0.94

2月14日 3 7 4.5 4.75 1.79

2月15日 1 8 6 5.4 2.42

2月16日 1 9 3 3.4 2.94

2月17日 2 6 3 3.8 1.47

2月18日 5 10 8 7.67 2.05

選択してエクセルにコピペ

0123456789

10

2月13日 2月14日 2月15日 2月16日 2月17日 2月18日

セッションRPEの推移

最低値 最高値 中央値 平均値

折れ線による傾向グラフの作成

平均値と標準偏差の傾向

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

2月13日 2月14日 2月15日 2月16日 2月17日 2月18日

平均値(SD)

最低値 最高値 中央値 平均値 SD

2月13日 2 4 2 2.67 0.94

2月14日 3 7 4.5 4.75 1.79

2月15日 1 8 6 5.4 2.42

2月16日 1 9 3 3.4 2.94

2月17日 2 6 3 3.8 1.47

2月18日 5 10 8 7.67 2.05

1

2

3

バラつきを見るためのSDエラーバーの表示法

誤差範囲その他の誤差範囲オプション

• 両方向• キャップあり• ユーザー設定• 値の指定

標準偏差エラーバーの自動表示

↑矢印をクリックして

↓をクリックして負の値も同じ列をドラッグ

2

3

1

4

SDの範囲をドラッグ

平均値とSDの傾向グラフ

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

2月5日 2月6日 2月7日 2月8日 2月9日 2月10日 2月11日 2月12日 2月13日 2月14日 2月15日 2月16日 2月17日

平均値(SD)

最大

めちゃきつい

きつい

ちょっときつい

中くらい

めちゃ楽

安静レベル

Session RPEC-R10 x トレーニング時間

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

(AU)

トレーニング日

session RPE日付 CR10練習時間

sessionRPE

CR10のSD sRPEのSD

5/1 2.67 80 213.6 0.94 75.2

5/2 4.75 70 332.5 1.79 125.3

5/3 5.4 60 324 2.42 145.2

5/4 0 0 0 2.94 0

5/5 3.8 60 228 1.47 88.2

5/6 7.67 50 383.5 2.05 102.5

5/7 8.9 80 712 2.446 195.68

5/8 5.4 90 486 2.592 233.28

5/9 0 0 0 2.738 0

5/10 5.6 80 448 2.884 230.72

5/11 6.7 50 335 3.03 151.5

5/12 7.8 45 351 3.176 142.92

5/13 7.5 60 450 3.322 199.32

5/14 6.4 90 576 3.468 312.12

5/15 8.9 35 311.5 3.614 126.49

5/16 3 45 135 3.76 169.2

プロサッカー選手におけるセッションRPEと心拍数によるトレーニング負荷との対応関係

(Scott et al. 2013)

• □と■は異なる方法による心拍数からのトレーニング負荷• 棒グラフはセッションRPE

個人のフォローはどうするか?

1 個別回答を選び2

3

これで進めて

この数字をエクセルに入力

個人別の推移

わかりやすいようにCR-10で説明しますが、実際はトレーニング時間を掛けたセッションRPEで。

個々人の急激な変化に素早く対応するために、重要な変化を捉える。そのために、一定のバラつき範囲からの逸脱状況を見やすくする。

過度な平均値からの逸脱を捉える

0

100

200

300

400

500

600

700

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

平均値

+1SD

-1SD

先頭行を端から端まで選択し

条件付き書式の新しいルールを選択する。

平均値+1標準偏差以上

平均値-1標準偏差

1行目の書式を各行にコピー

ここをダブルクリックして

各行の左端を次々にクリックしていく。

氏 名 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 平均 SD

イチロー 4 4 4 4 4 1 0 2 4 4 3 4 7 3.46 1.71

ジロー 7 7 7 7 7 7 0 7 7 7 7 7 7 6.46 1.94

サブロー 6 4 8 3 8 7 0 5 5 5 5 6 5 5.15 2.12

シロー 4 5 7 5 8 8 0 6 7 3 6 7 3 5.31 2.32

ゴロー 5 4 6 4 8 8 0 4 6 4 7 8 5 5.31 2.25

ロクロー 6 6 8 6 8 7 0 7 8 8 7 8 4 9 6.57 2.28

シチロー 7 7 7 4 6 6 0 7 6 4 8 7 4 5.62 2.14

マチロー 5 6 6 3 7 8 0 6 7 6 6 6 4 5.38 2.06

クロー 8 9 8 9 8 8 8 8 8 8 8 8 8 5 7.93 0.92

ジュウロー 5 4 6 4 7 8 0 5 4 5 5 8 2 4.85 2.23

2017年3月

全ての行に張り付けたら、もう一度これをクリックして終了。

Session RPEを応用した内的負荷のさらに深い分析法MonotonyとStrain

• Monotony(単調度)

• Strain(緊張度)

•日々のセッションRPEを記録する。

•週の平均RPEを計算し、その標準偏差で除して、単調さ”Monotony”を求める

•週の平均RPEに”Monotony”を乗じて緊張度(Strain)を求める

•それぞれ別のグラフとして表示しておくと、体調の変化や動機付けの変化との関係を見つけやすい。

体調調査

McLean et al.(2010)

不眠症

気分 重い/気が張ってる

イライラ/怒りっぽい

疲労度・睡眠の質・筋肉痛・ストレスレベル・気分

疲労度

睡眠の質

筋肉痛

ストレスレベル

「スライダー」で作成

疲労度の例非常に疲れているー普通ー全く疲れていない

オプションタブをクリックして、 スケールの範囲を1~5ステップサイズを1に指定開始位置は左端

この「セッションRPE」と明日の「フィットネス-疲労」のPDFダウンロードはこちらからどうぞ

S&Cスポーツ科学計測テクノロジーhttp://www.sandcplanning.com/

References• Borg G. A.V. (1982) Psychophysical bases of perceived exertion. Med Sci

Sports Exerc. 14(5): 377-381.• Borg G. (1998) Borg’s perceived exertion and pain scales. Human Kinetics,

Champaign IL.• Foster C., J.A. Florhaug, J.Franklin, L. Gottshall, L.A. Hrovatin,S.PARKER, P.

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• McLean B.D. J.A. Coutts, V. Kelly, M.R. McGuigan and S.J. Cormac(2010) Neuromuscular, Endocrine, and perceptual fatigue responses during different length between-match microcycles in professional rugby league players. Int J Sports Physiol Perform. 5: 367-383.

• Lockie R.G., A.J. Murphy, B.R. SCOTT and X.A.K. Janse de Jonge (2012) Quantifying session ratings of perceived exertion for field-based speed training methods in team sport athletes. J Strength Cond Res. 26(10): 2721–2728.

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• Maurizio F., R.Ghielmetti, A.J.Coutts, F. Schena and F.M.Impellizzeri(2015) Effect of Training-Session Intensity Distribution on Session Rating of Perceived Exertion in Soccer Players. Int J Sports Physiol and Perform. 10:426 -430.

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