ICTを利用したeラーニング開発と学習者ニーズ ·...

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ヴェネツィア2018年日本語教育国際研究大会(ヨーロッパ日本語教師会主催)8月4日(土) セッションE 5A

【パネル】 ICT/AIと日本語教育 ーこれから考えていかなければならないことー

ICTを利用したeラーニング開発と学習者ニーズ

熊野七絵(国際交流基金関西国際センター) Nanae_Kumano@jpf.go.jp

ICTを利用したeラーニング開発

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国際交流基金関西国際センターでは海外の日本語教育支援の一環として、Webサイト、アプリ、オンラインコース等の「eラーニング」を開発・運用

• 辞書機能(ことばを調べる)

日本語-英語

日本語-インドネシア語

• 介護、看護に携る人の日本語学習を支援する辞書サイト

• 2007年7月公開

• 語彙リスト作成(タグナビ)

• 書籍化、スマホ対応

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• 例文検索(場面や相手)

日本語でケアナビ

アニメ・マンガの日本語

• 2010年2月公開

• アニメ・マンガに現れる キャラクターやジャンルの表現をアニメ・マンガの世界観の中で、クイズやゲームで楽しく学べるサイト

• 英(日)、西、中、韓、仏

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• 2010年4月公開 • 日本語学習に役立つサイトやツール、アプリを紹介するポータルサイト

• eな情報局、記事更新型

• サイト検索機能とわかりやすい紹介記事

日本語学習ポータルサイト NIHONGO eな

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まるごと+(まるごとプラス)

入門(A1) 初級2(A2) 初級1(A2)

2013年2月 入門 (A1)(日、英、西)公開2014年6月 初級1(A2)(日、英、(尼))

2017年7月 初級2(A2)(日、英)

• コースブック『まるごと 日本のことばと文化』で学ぶ人の自習用サイト

• 課題遂行、異文化理解を重視、動画などを 活用した各種練習ができる

• 2016年8月公開 • 自分の楽しみを通して、 いろいろな日本や日本語について学べるサイト

• 12のトピックに関する情報を読んだり、聞いたりできる

• JFSのA1,A2レベルの日本語でわかる使える

• マルチデバイス対応

• 記事更新型

ひろがる もっといろんな日本と日本語

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• 2015年8月 ひらがな英語版公開

• 2016年1月 ひらがな・カタカナタイ語版

HIRAGANA/KATAKANA Memory Hint

• 2015年9月 カタカナ英語版 ひらがな・カタカナ インドネシア語版

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• 連想イラストとクイズで楽しく仮名を学べるスマートフォン・タブレット用アプリ

• 連想イラストとゲームで楽しく漢字を学べるスマートフォン・タブレット用アプリ

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KANJI Memory Hint1,2,3

• 2016年11月 KANJI 1 公開

• 2017年2月 KANJI 2 公開

• 2018年7月 KANJI 3 公開

JFにほんごeラーニング みなと

• 世界中の誰でも利用できるLMSを備えた 日本語学習のためのプラットフォーム

• 「みなと」でできること

オンラインコースで日本語が学べる コミュニティで仲間と交流できる サイトやアプリにアクセスできる • 2016年7月に公開

10 https://minato-jf.jp/

【表示言語:日、英、西、中、尼、泰、越】

• 2016年7月公開

eラーニング開発において 大切にしてきたこと

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1.時代の変化と学習者ニーズへの対応 2.ペルソナづくりと開発コンセプトの設定 3.新たな学習方法の提案と自律学習支援

1.時代の変化と学習者ニーズへの対応

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特定分野の日本語ニーズへの対応 -「日本語でケアナビ」 EPAによる介護・看護人材の受け入れ

-「アニメ・マンガの日本語」 日本のポップカルチャー人気、日本語学習のきっかけ 例: ニーズ調査 実際に現れる日本語データの抽出と分析 単なるリストではなく、Webサイトという形で提供

1.時代の変化と学習者ニーズへの対応

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ニーズの多様化への対応 -「NIHONGOeな」 日本語学習に役立つサイトの情報をわかりやすく提供

-「まるごと+」 ことばと文化を総合的に学ぶコースブックの自習用サイト

-「ひろがる」 好きなトピックから選んで日本や日本語に触れる

-「みなと」の日本語オンラインコース 興味、レベル、学習スタイル、解説言語などから選べる

1.時代の変化と学習者ニーズへの対応

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教育、学習スタイルやデバイスの変化への対応 -マルチデバイス対応サイト PCだけでなく、スマホやタブレットでも利用できる

-アプリ 隙間時間にオフラインで気軽に学べる

-プラットフォーム、オンラインコース 日本語学習に特化、コースを制作・運用できるLMS 世界中の誰でも、いつでも、どこでも日本語学習が可能

2.ペルソナづくりと開発コンセプトの設定

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ペルソナづくり 対象ユーザーが、どんな環境で、どんなデバイスで、 何に興味をもって、何ができるようになることを期待して、 どんなふうに使うのか、人物像を具体的に設定すること ニーズに基づくeラーニング開発の第1歩

開発コンセプト 開発のねらいや方向性を定めるコンテンツ設計の軸 (制作時もペルソナに立ち返る)

「アニメ・マンガの日本語」

開発コンセプトとコンテンツの工夫

アニメ・マンガと日本語学習をつなぐ。

アニメ・マンガの魅力や世界観を生かす。

楽しく学べ、自律学習につながる

アニメ風のキャラクターやマンガによる解説。

好きなキャラクター、ジャンル、レベル、内容を選べる。 マンガを読んだり、クイズやゲームで楽しく学べる

海外で人気のあるアニメ・マンガ作品に実際に現れる生き生きした日本語を学べる。

隙間時間などに気軽に文字を学べる

連想イラストで文字を「楽しく」覚える

クイズやゲームで「楽しく」繰り返し練習し達成感を感じる

「Memory Hint」アプリ 開発コンセプトとコンテンツの工夫

シンプルな2構成。 行、トピックなど小単位で覚え、短時間で練習

ひらがな・カタカナはメモリーヒントで覚え、50音表で確認 漢字はメモリーヒントで覚え、ことば、一覧の漢字チェックで確認

繰り返し見て覚える 異なる方法(クイズやゲーム)で練習 自分で範囲、内容、難易度を選択 学習の区切り、達成度に応じたごほうび

自学自習が「楽しく」続けられる

大人が「気軽に」使える

日本語で「できる」を実感する

「まるごと日本語オンラインコース」 開発コンセプトとコンテンツの工夫

インタラクティブな練習。 学習のサポート。 学習の進捗管理。

マルチデバイス対応。 ストレスなく使える。 直感的デザイン。

4技能の課題遂行活動。 実際の場面に即した練習。 学習のふりかえり。

3.新たな学習方法の提案と自律学習支援

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eラーニングをつくることは、 教室とは異なる自ら学べる新たな学習方法の提案

全体デザイン -UIデザイン(迷わない、わかりやすい)

-コンテンツ構成や学習要素の絞込み、正確なDB

3.新たな学習方法の提案と自律学習支援

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コンテンツの工夫 -段階的な学習(スモールステップで導入、確認)

-インタラクティブな練習(主体的な学び)

-クイズやゲームなどの方法(楽しく、達成感、ごほうび)

-学習のサポート(ヒント、解説、表記)

自律学習支援 -ニーズに合わせて自分で選べる(興味、スタイル、レベル)

-目標の明示と達成度の確認

-学習の進捗や成果の管理(マイページ、ポートフォリオ)

4.反響の把握と改善、教育現場での活用

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ユーザー(学習者)の反響の把握と改善

-サイト、アプリ等のアクセス解析、反響の声

-コースのアクセス解析、運用結果、アンケート結果

日本語教育現場での活用

-研修の授業で実践、活用アイデアの公開 「KCクリップーそのまま見せます!私たちの日本語教育ー」サイト

http://jfkc.jp/clip/

5.議論のポイント

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ICTを活用したeラーニング開発で

学習者ニーズを最も大切にしてきた

議論のポイント

今後、AI時代の到来を受け、新しい技術を eラーニング開発にどう活かせるのか、 それによって学習者ニーズにどう応えられるのか

5.議論のポイント

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関西国際センター20周年シンポジウムのパネル「日本語教育におけるeラーニングの意義と可能性」での議論、助言

ー学習機会の提供、日本語のリンガフランカ環境への評価

ーAI時代の日本語教育におけるeラーニングの活性化

・自然言語処理(言語処理による学習支援) ・教育工学研究(履歴データによる教育イノベーション)

5.議論のポイント

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新技術の動向 ー自然言語処理、教育工学等の学会、展示会等に参加 ーAI、ビッグデータ解析、AR、VR、ゲーム理論等の新技術

「日本語」については ー基礎研究段階のものが多い ー実用化、公開の精度はまだ ー「おたくにはどんなビッグデータがあるんですか?」の世界

5.議論のポイント

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日本語教育のeラーニングへの応用の可能性 CASTEL/J 2017 ー峯松 「OJAD」、「日本語韻律読み上げチュータ」 「英語シャドーイング音声レベル自動評価」 ー山本 「日本語解析システム雪だるま」 「漢字誤り訂正システム」 ー李 「J Writer」 ー島田他 「日本語文法認知診断Webテスト」 ー相川・高橋 「AIチュータ」 ⇒学習者の発話や作文の自動診断や添削、フィードバックが可能に? ⇒AIでリアルタイムで個別フィードバックができるようになる?

5.議論のポイント

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ICTを活用したeラーニング開発のノウハウに新技術を活用し、

何が「実用化」できるのか

AI、ビッグデータ解析(言語処理) ー「まるごとコース」の「会話チャレンジ」「発話チェック」は、 オンラインで難しいとさえる会話練習(擬似会話録音)、 音声認識技術を活用した発話チェックを実現 ⇒音声情報処理や言語処理の最新技術や成果の応用で、 各学習者の発話の即時フィードバック、 作文の添削や文法等の誤用へのフィードバックが できる?

5.議論のポイント

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AR(拡張現実)VR(仮想現実) ー 「まるごと+」や「まるごとコース」では、動画を活用し、 擬似会話参加の「リアルな練習」を実現 ⇒ARやVRを活用し、ARで実際の場面と連動させたり、 VRメガネのようにスマホを使って動画を見たりすることで、 よりリアルな会話練習ができる?

5.議論のポイント

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ゲーム理論

ー「アニメ・マンガの日本語」サイト、「Memory Hint」アプリ では、ゲームの効果を生かし、「気軽に」「楽しく」学び、 「達成感」を得られ、学習の「動機づけ」とすることを実現 ⇒他の新技術と組み合わせて新規コンテンツに応用する ことで、日本語学習へのハードルを下げ、多様なユー ザーニーズに応えることができる?

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