日本天文学会2015年秋季年会...

Preview:

Citation preview

谷口 義明 (愛媛大学・宇宙進化研究センター)

突然、星を作らなくなった銀河の発見 − 100億年前、銀河に何が起こったのか?−

日本天文学会2015年秋季年会 プレスリリース講演

報道解禁日時 2015年9月9日午前0時

(新聞の場合、9月9日朝刊から)

発見には2種類ある1.量的発見

   [例] 類似天体は見つかっていたが    より明るい天体が見つかった

2.質的発見    今まで見つかっていなかった    天体が見つかった

今回

現在の宇宙は 美しい銀河の世界

宇宙年齢 = 138 億歳

銀河はどのように 育ってきたのか?

銀河の平均的な星生成の歴史

宇宙年齢 30億歳でピーク

大質量銀河の場合 100億年前、星形成が突然止まった

銀河進化の大問題

重い銀河ほど早く進化する (星を作らなくなる時期が早い)

(Cowie+96, AJ, 112, 839)

大質量銀河における 『星生成抑制問題』

そのメカニズムがわからない

遠方宇宙にある2種類の銀河星生成銀河

星を活発に作っている銀河

パッシブ銀河 星生成が止まってから 数億年以上経過し、 静かに進化している銀河

大問題:過渡期の銀河が見つからない

大質量銀河における 『星生成抑制問題』 解明への道

星生成を止めたばかりで パッシブ銀河へ進化しつつある

大質量銀河を発見し 性質を見極める

星生成を止めたばかりの銀河は なぜ見つからないのか

星生成を止めて、 パッシブ銀河へ進化していく タイムスケールが短いため?

統計的に個数が少ないはずなので 遠方宇宙の広域探査が必要!

『宇宙進化サーベイ』 COSMOSプロジェクト

すばる COSMOS20 プロジェクト

COSMOS: 世界最高性能の望遠鏡の共演

HST

Subaru Keck VLT

XMM

GALEX SST

VLA

Chandra

史上初の宇宙の暗黒物質の3次元地図

(Massey+07, Nature, 445, 286)

『宇宙進化サーベイ』 すばる COSMOS20 プロジェクト

ろくぶんぎ座方向の2平方度の広さの天域

⚪ は発見された

6個のマエストロ銀河

『宇宙進化サーベイ』 すばる COSMOS20 プロジェクト

広帯域 6枚

狭帯域 2枚

中帯域 12枚

3種類の光学フィルター

広帯域では輝線天体が暗くしかみえない 狭帯域では輝線天体の観測効率が低い 中帯域なら異常に強い輝線天体が見つかる

『宇宙進化サーベイ』 すばる COSMOS20 プロジェクト

12枚の中帯域フィルターによる探査

中帯域フィルターで 何を探すか?

ライマンα輝線で 明るく輝く天体ライマンα輝線は

100億光年彼方の銀河の目印

水素原子の放射するライマンα 輝線

電離ガスのトレーサー

電離ガスの起源

⒈ 光電離  大質量星(太陽より10倍以上重い星)が  放射する紫外線による電離

2.衝突電離  ガス同士の激しい衝突による電離

マエストロ銀河の例

突然、星を作らなくなった銀河を 6個発見(マエストロ銀河と命名)

10万光年 10万光年

MAESTLO MAssive Extremely STrong Lymanα Object

マエストロ銀河

重く 極端に 強い

ライマンα 天体

ライマンα 輝線 = 水素原子の放射する最も強い輝線

マエストロ銀河の例 青い部分がライマンα 輝線(電離ガス)

マエストロ銀河の周りに拡がる 電離ガス

10万光年 10万光年

マエストロ銀河を 取り巻くように拡がっている

ライマンα 輝線(電離ガス)の起源は?

答え:スーパーウインド (銀河風)

銀河本体には 電離源となる大質量星が少ない!

スーパーウインド

(チャンドラX線宇宙望遠鏡)

近傍宇宙でのスーパーウインドの例(M82)

スーパーウインド激しい星生成で生まれた大質量星が

一斉に超新星爆発を起こし 爆風波となり銀河内のガスを 銀河の外に掃き出してしまう

スーパーウインドの後は 銀河にガスがなくなるので

星生成は止まる(チャンドラX線宇宙望遠鏡)

星生成銀河からマエストロ銀河 そしてパッシブ銀河へ

短命の青い大質量星がなくなるため 紫外線が弱くなっていく

わずか1000万年の 出来事

スーパーウインドの 理論予測と合致

光電離

衝突電離

『宇宙進化サーベイ』 すばる COSMOS20 プロジェクト

12枚の中帯域フィルターによる探査

これだけ探してたった6個!

今まで、見つからないはず

星生成銀河からマエストロ銀河 そしてパッシブ銀河へ

今回の発見のまとめ・ 宇宙誕生から数億年の頃に誕生した銀河は、    ガスから星を作ることで成長してきた ・  大質量銀河はなぜか約 100 億年前に星を作らなくなった   (銀河進化に関する最大の未解明問題) ・ これまでにない大規模な輝線銀河の探査を通して、    100 億光年彼方の宇宙でまさに星生成を止めつつある    大質量銀河を世界で初めて発見(「マエストロ銀河」) ・ 今回の発見から“多数の超新星爆発によって起こる    スーパーウィンド(銀河風)が原因で、銀河の中に    星を作るガスがなくなり星生成が止まる” ことが示唆された

Recommended