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1930年代に広域的な地盤沈下が社会的
に注目されるようになった。現在では地
盤沈下に関する全国的な傾向は沈静化し
つつある。しかし、地球温暖化に伴う海
面上昇が懸念されており、それへの対応
を立案する中で地盤沈下の問題は改めて
重要な課題となっている。
平成22年度の状況
平成22年度において全国で年間2cm以上沈下した地域は6地域(平成21年度は6地域)で、2㎝以上沈下した面積は5.5km2(平成21年度は24km2)であった。また、年間4cm以上の沈下を観測した地域はなかった(平成21年度は1地域)。年間 大沈下量は、福岡県柳川市の2.8cmであった。
地盤沈下の原因は以下の5つに分類することができる。
① 盛土載荷による地盤沈下② 地下水の過剰揚水による広域地盤
沈下③ 天然ガス等の採取による地盤沈下④ コラプス現象による地盤沈下⑤ 地下空洞、トンネル掘削による地
盤沈下
コラプス現象
降雨時の斜面崩壊などのように、負の間隙水圧が浸透水により消散する場合は、不飽和土から飽和土へと移行する。この際のサクション変動は負の間隙水圧変動に伴う有効応力の変化として影響する。
不飽和土から飽和土へ
地盤沈下の原因 沈下の機構
自然現象
乾燥 沖積粘土,有機質土の乾燥,収縮
地下水変動 圧密現象
地下空洞 陥没(シンクホール)
人為的作業
表面荷重 圧縮,圧密
地下水揚水 有効応力増大,水圧分布低下
地下資源採取 有効応力増大,水圧分布低下,陥没
干拓、灌漑 コラプス現象,乾燥
地下掘削 陥没
地盤沈下の予測
地下水は、自由地下水(不圧地下水)と、
被圧地下水に分けられる。
被圧地下水は、流速が非常に遅くま
た地表水や自由地下水が垂直方法に
浸透してこないために、その水位や
水質は非常に安定した状態にある。
井戸からの過剰揚水等による人為的な要
因を受けた場合には、被圧帯水層の水位
が低下し、それに接する粘土層の水圧も
低下して圧密が進行することになる。
この被圧帯水層の低下による粘土層の間
隙水圧分布の変化を模式的に示したのが、
次の図である。
粘土層上面の水圧は、ほぼ一定を保っている自由地下水に接するために変わらないが、被圧帯水層からの地下水汲み上げに伴って、粘土層下面の水位がΔhだけ低下することになる。そのため、粘土層内の水圧は時間的遅れを伴いながら減少する。この水圧消散に対する粘土層の沈下量Δs は、次式で求められる。
dZms zzv
有効応力
有効応力とは土は土粒子と呼ばれる固体粒子が互い
に接触しながら集合したものである。この集合体は土粒子により骨組み構造を形成し,その隙間が間隙と呼ばれる空間で,この部分に空気や水が存在する。土粒子と間隙が組合さったものが土となる。
土粒子
間隙
Z 面における単位面積当たりの接触部分の数はn 個で,n 個の接触面積の総和をAとし,接触部分に加わる鉛直荷重の平均値をqとすれば,単位面積当たりの全鉛直荷
重はnq+u(1-A)となる。これを全応力と呼ぶ。
q q q
A/nA/n
q
A/nA/n
z
uu
u
nqは土粒子間に伝わる力で粒子間応力と呼ば
れるものである。これを’とおくと,u(1-A)は単位面積当たりに等方圧で加わっている間隙水圧であり,Aは単位面積1に対して極めて小さな面積と考えられるので,
A=0とみなせば,=’+u という関係を得
る。
q q q
A/nA/n
q
A/nA/n
z
uu
u
この粒子間応力とおいた’ が有効応力といわれるもので,体積変化や土の摩擦抵抗に直接有効に働く応力である。一般に有効応力を直接測ることは困難であるために,全応力や間隙水圧を計算するか計測して,次式に示したそれらの差から求められる。
' uq q q
A/nA/n
q
A/nA/n
z
uu
u
粘土層
砂層
砂層
t=17 kN/m3
sat=14 kN/m3
Cc=2.0e0=0.8
5 m
10 m
4 m
sat=20 kN/m3
図に示した地盤は当初,地表面と地下水面が等しく静水圧分布をしていた。その後,地下水位が4 m低下した。
①このときの沈下量を求めよ。ただし,地下水位低下後も静水圧分布である。
②1年後の沈下量を求めよ。
地下水利用による広域地盤沈下を予測するためには、地下水流動解析と水位変動に対する地盤特性を考慮した沈下解析との数値シミュレーシヨンが有効である。
3次元地下水流動モデルによる数値シミュレーシヨンは、近年の知見の蓄積や計算機の性能の向上により適用の可能性は高まっているが、モデルを構築するための地下水や地質に関する詳細な調査が必要である。
地盤沈下対策
現在,地盤沈下対策としては① 「工業用水法」(1956年施行)
② 「建築物用地下水の採取の規制に関する法律(ビル用水法) 」(1962年施行)の2つが地下水揚水施設に適用されている。
法律による地下水用水規制は、現在のところ工業用と建築用に限られている.
規制の対象となる指定地域は、① 工業用水法が10都府県② ビル用水法が4都府県にわたって
いる。
多くの地方公共団体では、地域の特性に見合った地下水採取の規制等の条例を定めて地盤沈下の防止および地下水の保全を図っている。
また、地盤沈下に伴う被害の著しい濃尾平野、筑後・佐賀平野、関東平野北部の3地域については、地盤沈下防止等対策関係閣僚会議において,地域ごとの「地盤沈下防止等対策要綱」が策定された。
これらの地域では、規制(保全)区域において、①地下水採取規制、②代替水源の確保および代替水の供給、③節水および水使用の合理化からなる地盤沈下防止対策を講じている。
地下空洞による沈下・陥没
地下空洞は、自然要因および人為的要因に起因するものに大別される。
自然に起因する地下空洞として洞窟がある。洞窟は岩の中の空洞と考えることができるため、空洞としては比較的安定している。しかし、時間の経過に伴う空洞の拡大、その他が原因となり、地表の陥没や沈下現象などを生じる場合がある。
人為的要因に起因する地下空洞として
地下資源の開発に伴って形成される採掘洞窟がある。石炭、金属鉱物、石材などの固体資源の掘削に伴う地下空洞は、① 資源の種類② 地盤の力学特性③ 採掘深さ④ 採掘方法その規模・形状が異なる。空洞の規模は自然の洞窟と比較して一般に大きい。
そのため、地表への影響も空洞の規模に比例して増加する。特に,石炭は層状に堆積し、しかも複数の層として存在し、石炭掘削に伴う影響範囲は広く地表の沈下量・陥没なども大きくなる。
地盤沈下は,採掘の直接,または一次的な影響である。沈下は終息するまでに、採掘から数箇月~数年を要する緩慢な現象である。
地表陥没は、地下浅所に残存している古洞と称される採掘空洞や坑道天盤が破壊し、地表が陥没する現象である。
採掘終了から長い時間を経過した後、瞬時に発生することが多い。突発的な現象であるため、発生の予知・予測が困難である。
大谷町の採石場跡の陥没
大谷石とは、栃木県宇都宮市大谷町付近一帯から採掘される、流紋岩質角礫凝灰岩の総称(火山性の噴出物が固まった堆積岩の一種)
門柱や石垣に広く利用されている。火に強く加工しやすい。
陥没事故がたびたび発生。1989年2月10日9時前、採石場跡が陥没。3月5日17時ごろ再び陥没。民家3軒が地下30mにのまれた。
その後地震計が設置。1996年の陥没は予知された。県に埋め戻しを求められているようだが、県は原因者(採掘者・地権者)による埋め戻しを主張。
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