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SORSTSCCS, Chukyo University第13回授業改革フェスティバル

第二回 決起集会2006.2.4.

中京大学

三宅なほみ

学びをデザインする

決起集会_0602042

中京大学情報科学部認知科学科

授業風景…

大学も変わりつつあります…

決起集会_060204

学習科学• 学習理論

–人はいかに学ぶかを明らかにする

• 学習支援

–人がうまく学べるための工夫を実践的に確かめる

• 認知科学が基盤

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うまくいく学び:得意になるまで

• 一定以上の時間をかける

• 強い動機付けを持つ

• 積極的に情報を収集して、覚える

• 教えあったり、議論したりする仲間がいる

• さまざまなレベルの先輩がいる

• 試行錯誤を繰り返して自分の知識を作る

• 学んだ成果が次の学びに結びつく

• 対象は限定されている

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学習の目的

• Portability– 学校の外に持ち出せる

• Dependability– 必要なとき、必要な場所で使える

• Sustainability– 一生学び続けるための基礎力をつける

– 科学を日常化する(Dinner table science)

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学習の方法

• Portability– 複数解を多視点からみて一般化、抽象化

• Dependability– 十分使いこなせるところまで時間をかける

• Sustainability– 学習の仕方、メタ認知、自己学習管理能力

– 「学習し続けるもの」のコミュニティを形成する

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学習方略の基本形

• 繰返し、時間をかけて自分で知識を作る

• 社会の中で、他人と協調的に学ぶ

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学習モデル

授業デザイン 実践

デザイン研究

デザイン原則

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従来の教育研究との違い

• 実践と研究を一緒に行う

• 学習のプロセスを詳しく分析する

• 統制群を使った実験をしない

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実験

仮説:インターネットを使うと効果が上がる

↑ ↑

独立変数 従属変数

実験群:インターネットを使う → 成績?

統制群:使わない → 成績?

結果: 実験群の成績 >? 統制群の成績

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実験をやらない理由• 学習はたくさんの要因が相互作用する複

雑なもの– 生徒(動機づけ、既有知識、家庭...)

– 教員(動機づけ、経験、知識、性格...)

– 学習活動

– テクノロジ

– ....

• 結果が出ても原因が特定できない

• 統制群を作り難い

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Brown, A. L., (1992),

“Design experiments: Theoretical and

methodological challenges

in creating complex interventions

in classroom settings,”The Journal of The Learning

Sciences, 2(2), pp.141-178.

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介入実験のやり方

訓練 せいぜい1、2日 →5,6週間

教え方直接教授

(工夫がない)→

内容、方法ともに工夫

人数 ほとんど1対1 → 協調作業

従来 Brown

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教え方の工夫

• ジグソー(Jigsaw)方式

• 相互学習法( Reciprocal teaching )

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動物の生態や進化

「動物の防御メカニズム」

「繁殖方法」

「食物連鎖」::

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「食物連鎖」の下位テーマ

1)食物の生産

2)食物の消費

3)リサイクル

4)輸送

5)エネルギー交換

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「動物の食物連鎖」• リサーチグループ

– 相互学習法で資料の内容を確認

• ジグソー学習

• リサーチグループのメンバが担当部分の試験問題を作ってクラス全員で解く

• 「思考実験」

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「小動物がいなくなったらチータは絶滅するか?」

「食べるものを変えればよい。生き残りたいなら、草を食べなくてはならないからね」

「絶滅する。消化器官が草から栄養が採れるほど発達していないし、歯も草をすりつぶすようにできていないから」

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「動物の食物連鎖」• リサーチグループ

– 相互学習法で資料の内容を確認

• ジグソー学習

• リサーチグループのメンバが担当部分の試験問題を作ってクラス全員で解く

• 「思考実験」

• 発展問題– 「砂漠に適した動物をデザインする」

– 「ある特徴を持つ動物のすみかをデザインする」

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介入(実践)結果

• 内容理解度が高くなる

• 発展問題もきちんと解けるようになる

─6ヶ月、1年後でも大丈夫

• 自発的に相互学習法を使う

– 「学び方」の学習

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「デューイと何が違う?」

• 「学習には準備が要る」、「発見学習が良い」、「子どもの生活に密着した学習を」、など彼の主張はどれも正しい

– そういう意味では、何も違わない

• 違うのは、デューイの主張を現実にするための詳しいやり方がわかってきたこと

– デューイは具体的にどうすればいいかわかっていたわけではないが、私たちにはわかり始めている

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具体的なカリキュラム例

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Jasperプロジェクト

拠点Cognition and Technology Group at Vanderbilt

プロジェクトリーダー

John Bransford

決起集会_060204

• 複雑で、決まった答えのない問題が解けるようになる

• 数学について話し合えるようになる

• 他の教科と結びつけられる

• 社会の現実的な問題と結びつけられる

• 算数・数学は「おもしろい」と感じる

算数・数学の学習目標

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距離/速度/時間

統計と確率

幾何

代数

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ビデオ仕立てのマイクロ世界

• 動機付けになる

• 解法がいろいろあり得る

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一題、やってみてください

• Rescue at Boone’s Meadow

ブーン牧場でワシを救う

短縮版です.

¥Jasper_short.mov

決起集会_060204

カンバーランド

キングフィッシャー(ヒルダ)

ブーンズメドウ

65マイル60マイル

15マイル

ラリーのウルトラライト

30 マイル/時15 マイル/ガロン

5 ガロン/タンク

ラリーの体重 180

追加タンク 10 (1ガロン)

燃料 30(5ガロン)

可搬荷重 220

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MicroWorld問題を解いた後

• 類似課題をたくさん解く

• ツールを作る

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Lindbergh課題

パリまで 燃料容量 消費率 予想速度

3,600

マイル

450

ガロン

13.4ガロン/時

90

マイル

450/13.4 ×90=3022.2 < 3600!

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「賢い道具」

エミリーは、宅配業を始めることにしました。どこからどこに、どのくらいの重さの荷物を運びたい、などさまざまな注文が入ってきます。何分で、いくらかかるか即答したいのですが、うまい工夫はないでしょうか…

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Legacy

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学習過程の理解

• 長期のプロジェクト研究からは、実効力のある学習活動のデザイン原則だけでなく、学習とはどういう認知活動かについての新しい知見がみつかりつつある

決起集会_060204

WISEプロジェクト

Web-basedInquiryScienceEnvironment(ウェブを使った科学探究環境)

Marcia Linn, UC Berkeley

決起集会_060204

WISEのねらい

• ひとつのテーマをじっくり学ぶ

• 知識を統合する

– 「答え」を教えるのではなく、日常的に

知っていることと結びつける

– 新しく学ぶアイディア同士を結びつける

• 科学を学び続ける力を身につける

決起集会_060204

「熱と温度は同じか」1.日常的な課題で意見を出す (1週)2.実験を通して仕組みを理解する (4週)3.日常的な課題を再度解く (1週)

「光はどこまで届くか」4.日常的な課題で意見を出す (1週)5.証拠を集める (4週)6.証拠を元に議論する (2週)

熱と光の知識を統合する7.わかったことをまとめて使ってみる (3週)

決起集会_060204

・ 「熱と温度は同じか」

・ 「光はどこまで届くか」

・ 「光は熱に変わるか」

決起集会_060204

日常的な課題

1.部屋の温度計が25℃を示していた。部屋の中の鉄板や木の机、発泡スチロールのお椀はどんな温度か? 触ったらどう感じる?

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実験して確かめる

• 熱伝導を図にして示すシミュレータ

• 話し合い

→ Video

決起集会_06020444

解答

授業で:部屋の中の鉄板や木の机、発泡スチロールのお椀はすべて同じ温度。触ったときの感じが違うのは、手からの熱の伝わりやすさが違うから。

決起集会_060204

日常的な課題

1.部屋の温度計が25℃を示していた。部屋の中の鉄板や木の机、発泡スチロールのお椀はどんな温度か? 触ったらどう感じる?

2.お昼ご飯までソーダを冷えたままにしておくのに、ウールとアルミホイルのどちらで包むのがいい?

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「光はどこまで届くか?」

1)どこまでも届く

2)途中で消えてしまう

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1)光はどこまでも届く

• 太陽の光

• 望遠鏡

• サーチライト

• 夜の自転車

• ナイトビジョンゴーグル

2)光は途中で消えてしまう

• 暗闇

• サーチライト

• 夜の自転車

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光は

光は途中で消える

光はどこまでも届く

届いている!

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距離が遠くなると光は弱くなるから、光はやがて消える

もし光が見えないだけでそこに「ある」としたら、光は消えていないことになる

見えないのだったら「ある」とは言えない

ナイトビジョンゴーグルなら肉眼で見えない光も見えるから、光は「ある」のだ。

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• 「熱と温度は同じか」

⇒温度と違って熱は

伝わるもの=エネルギである

• 「光はどこまで届くか」

⇒吸収されなければどこまでも届く

• 「光は熱に変わるか」

⇒吸収された光は熱に変わる

光と熱=エネルギ光と熱=エネルギ

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解答

授業で:部屋の中の鉄板や木の机、発泡スチロールのお椀はすべて同じ温度。触ったときの感じが違うのは、手からの熱の伝わりやすさが違うから。

日常で:ソーダを冷えたままにしておくのには、ウールが良い。なぜなら、伝導率が低いので、熱を逃がしにくいから。

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熱力学の授業 完全版

熱と温度 2週間

断熱と熱伝導 2.25週間

熱の伝わり方 1週間

熱平衡 3.5週間

日常的な問題 3.5週間

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短縮版

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完全セット 短縮版1 短縮版2 短縮版3(週)

熱と温度

授業と日常を関連させる

熱流の絶縁と伝導率

熱平衡

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評価:熱と温度

• 選択式

–熱と温度は同じか違うか

• 記述式

–あなたの答えがなぜ正しいか説明しなさい

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選択式と記述式評価の差

記述式問題:(F(3,2875)=115,p<0.001)多肢選択問題:有意差なし

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ベース 完全セット 短縮版1 短縮版2 短縮版3

正答

率(%

)

多肢選択問題

記述式問題

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選択式の問題でも

• 海の水をバケツに一杯汲みました。温度を測ったところ、バケツの中の温度と海の海水の温度は同じでした。バケツの中と海全体とで熱エネルギーの量は同じでしょうか、違うでしょうか?

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バケツ問題なら

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ベース 完全セット 短縮版1 短縮版2 短縮版3

多肢選択問題

記述式問題

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完全版50人のインタビュー結果

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授業を受ける前 3週目 6週目 9週目 12週目割合(%)

誤回答

正誤混合

規範的回答

根拠を含む回答

熱平衡学習後 熱と温度学習後 絶縁と伝導率学習後

熱と温度の授業

Capstones後

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1人の学生の学習過程

説明に使われたアイディアの分類

インタビュー5:CLP教育後

2年後:高校入学前

4年後:高校3年の前

根拠を含む考え

インタビュー1:授業前

インタビュー2:熱平衡後

インタビュー3:過熱と冷却後

インタビュー4:断熱と伝導

= 感覚に関する考え = 断熱と伝導に関する考

規範的な考え

正誤混ざった考え

誤った考え

=熱平衡に関する考え

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私はこれから学びに影響しているたくさんの変数が一つ一つ、お互いに関係し合いながらどういう働きをしているのかはっきりさせていかなくてはなりません。確かな理論をつくるためにだけではなく人の学びを支援したいと思ったときに確実に、十分な支援ができるようにしたいからです。大事なことは普通の学校の普通の条件のもとでそこの学習を変えてゆくためにどうしても必要なことは何なのかそれをはっきりさせなければならない、ということです。

(Brown, 1992, p. 173)

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自分を知的に育てることがそもそも波風体験…