You are shock · とにかくエピネフリンなんです!!...

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You are shock !!

ヒヤリハットカンファレンス

2011年8月5日

勤医協中央病院総合診療センター

川口 篤也

今日はいつもの作りとは違います

クイズ形式をとりながらその都度レクチャーも入ります。

1年前の話です

4月のある朝の救急外来で・・

蕁麻疹のふれこみで若い女性が、車椅子で連れてこられた

見るからに顔面蒼白

両上下肢に膨疹多数

会話は可能だが呼吸数は早い

かろうじて撓骨動脈触知可能

⇒この時点ですでに・・・

ちょっと

大げさだよな

ちょっとやばい?

完全に

ヤバイっしょ

ショック! アナフィラキシー

Vital Signs

意識: JCS-Ⅰ-1

血圧 : 88/30mmHg

脈拍 : 70/分

呼吸数:28/分

体温: 36.4℃

SpO2: 100%(room air)

いつもは120台

次に何をしますか?

エピネフリンですね ⇒0.3mg 筋注しました(どこにする?)

大腿外側に

打ちましょう!

とにかくエピネフリンなんです!!

アナフィラキシーと診断したら即座に

0.3-0.5mg 筋注(0.01mg/kg 子供 0.3mgまで)

アナフィラキシーの時に原則禁忌なし!!

必要なら3-5分(5-15)間隔で

静注は・・・

痛い目見ます→脈が触れない時には考慮

エピネフリンの次に大事なモノがあります・・・何でしょう?

ステロイドと抗ヒスタミン薬

ではないんですね!!

上記はあくまで補助療法

H1+H2 blocker→(併用の方が効果高い)

ジフェンヒドラミン 25-50mg iv etc

ラニチジン 50mg iv Ann Emerg Med 2000 Nov;36(5):462

メチルプレドニゾロン 125mg iv

→遅発性反応の防止

(8-10時間後くらい・・・72時間まで報告あり)

気道狭窄やショックに効果なし

効果発現に数10分から4時間くらい

持続

アスピリン喘息にはリンデロンR

など

β刺激薬吸入もあるか

正解は・・輸液と酸素です!! まず1-2Lをとにかく入れろ

→volume入れないと血圧上がらないよ

酸素は

けちらずに!!

もちろん気道確保大事ですよ

ちなみにグルカゴンは・・・

β-Blockerなど飲んでいて、エピネフリン投不+充分な補液に反応しないモノには使用して良い

グルカゴン 1-2mg 5分かけてIV

(投不速度早いと吐くことあり)

→筋注もありか

絶対グルカゴン単独ではダメ

→エピネフリンあってこそ

(脱顆粒防げない)

ここまで良いですね?

アナフィラキシーの診断は?

ショックになる前に診断したい!

皮膚症状は・・・

呼吸器症状は・・・

消化器症状は・・・

心血管系症状は・・・

90%

70%

40%

35%

Dr.林(福井大学教授)のABCD法則

A: Airway →喉頭浮腫、喉頭狭窄感

B: Breathing →喘鳴、咳、

C: Circulation→ショック、頻脈、めまい

D: Diarrea →下痢、嘔気、腹痛

全身蕁麻疹

即、エピネフリン!

症例に戻ると・・・

エピネフリン 0.3mg im

生食全開、酸素2L/min開始

mPSL 125mg+生食100ml DIV

ポララミンR 5mg iv

ザンタックR 50mg iv

Ass: S/O アナフィラキシーショック

来院時膨疹と血圧低下あり。エピネフリン0.3mgにて血圧は140台まで回復。Wheezeは認めなかった。

Plan:一晩入院して経過観察

きちんと

治療してますね

次にどうしますか?

まずは

病歴や既往歴聞きますね

S: 昨年末に一度蕁麻疹が出たことがった。アレルゲンは丌

明。今朝7時頃パン、牛乳、ヨーグルトを自宅で食べ、家を出て学校に向かう途中8時15分ころに右頚部から後耳介にかけて蕁麻疹が出現し、学校に着いた時点で息苦しさを覚え座り込んだ。学校の先生が異変に気づき、当院救急外来を受診された。

Allergy: 確認されたものなし

Medication: なし

Last meal:

今朝パン、牛乳、ヨーグルト。昨夜の夕食

は豚肉、刺身(マグロなど)、味噌汁。

自宅は築15年の木造アパート。今朝は明らかな動物との接触歴なし

<既往歴> なし

翌日・・・

あなたが担当医になりました。

Vital 異常なく、蕁麻疹も出てません。

「先生、いつ帰れますか?」

S: 昨年末に一度蕁麻疹が出たことがった。アレルゲンは丌

明。今朝7時頃パン、牛乳、ヨーグルトを自宅で食べ、家を出て学校に向かう途中8時15分ころに右頚部から後耳介にかけて蕁麻疹が出現し、学校に着いた時点で息苦しさを覚え座り込んだ。学校の先生が異変に気づき、当院救急外来を受診された。

Allergy: 確認されたものなし

Medication: なし

Last meal:

今朝パン、牛乳、ヨーグルト。昨夜の夕食

は豚肉、刺身(マグロなど)、味噌汁。

自宅は築15年の木造アパート。今朝は明らかな動物との接触歴なし

<既往歴> なし

基本帰して良いのですが・・・

適切な治療後、どのくらい観察すべきかのコンセンサスはない

⇒8-10時間くらいで遅延反応が起きやすいので、そのくらいの観察が妥当か

帰すときには、原因検索と

アナフィラキシーの教育 が大事

基本入院ですね

原因検索・・・何か怪しいのありました?

<前日の夕食>

豚肉、刺身(マグロなど)、味噌汁

<当日の朝食>

パン、牛乳、ヨーグルト

他には?・・・

RAST(radioallergosorbent test)

採血しました。(アレルゲン特異的IgE)

⇒結果は後日

抗ヒスタミン薬内服処方され帰宅

アナフィラキシー教育されたかどうかはカルテからはわからず

そして数日後私の前に現れた

看護師問診:

S) 退院後診察。検査結果。昨日から頭が

ぼーっとする。また右の首が腫れている感

じある。

O) BP 147/96, P 72, WT ・・・

既往歴:なし

手術・輸血:なし

アレルギー:?

職業: 大学生

⇒じゃ、まずは検査結果みるかな・・

ほほう

アナフィラキシーになってるんだね

採血結果 血算・生化学特記すべきことなし

RAST:

ハウスダスト(-)、ダニ(-)、アスペルギルス(-)、

アルテルナリア(-)、ブタクサ(-)、カンジダ(-)、

ネコ(-)、ダイズ(-)、コムギ(-)、カモガヤ(-)、

ギュウニュウ(-)、ランパク(-)、ヨモギ(-)、

ソバ(-)、イヌ(-)、ランオウ(-)、スギ(-)、

ガ(-)、サバ(-)、カビ(-)、コメ(-)、

結局異常なし・・・・

うーん・・・ 何も引っかからなかったか・・・

とにかく何か手がかりはないか?

S) 3年くらい前に季節の変わり目にポ

ツポツとは蕁麻疹出ていた。ここ2年は全く出ていなかった。去年の秋に走った後に全身に蕁麻疹出現したが、今回のようにひどくはなかった。食事などで思い当たることはなし。今年の春から一人暮らし。化粧品変えたり、健康食品始めたとかはない。

O) 皮疹などなし

どうする? 俺、どうする?

とにかく何か手がかりはないか?

S) 3年くらい前に季節の変わり目にポ

ツポツとは蕁麻疹出ていた。ここ2年は全く出ていなかった。去年の秋に走った後に全身に蕁麻疹出現したが、今回のようにひどくはなかった。食事などで思い当たることはなし。今年の春から一人暮らし。化粧品変えたり、健康食品始めたとかはない。

O) 皮疹などなし

去年走ったときに蕁麻疹か・・

A) アナフィラキシー後

RASTでは特定できず

運動誘発が絡んでるか・・・

原因わからないのでエピペン適応か

P) 抗ヒスタミン薬継続

家族と相談してエピペン処方

食事は毎日手帳につけましょう

けど今回走ってない・・

エピペンは講習会受けないと処方できません!! マイラン社の講習会(40分程度)を受けると処方できます。

処方する際に、ビデオを使っての手技の指導や患者追跡のための書類を書かなければならない

使用期限は1年間で、価格は13000円

通常1週間で取り寄せ可能

私はたまたま講習会を受けていた

アナフィラキシー教育とは?

アナフィラキシーとは命を失う可能性があること

最初の症状から3日間は再燃ありえること

症状が起こればすぐにエピネフリン自己注射して救急車を呼ぶべきこと

今後もアナフィラキシーを繰り返す可能性について

ちなみに

エピネフリン自己注射の仕方をキチンと教えるのが大事 DVD、練習キットなどで退院前に練習

丌適切な部位に打たない(指など)

常に持ち運ぶのが大事

家族や友達もアレルゲン、アナフィラキシーのリスク、そしてエピネフリン自己注射の使い方を学ぶべき

院内在庨抱えている病院は尐ないか

1週間後エピペンを取りに来ました

S) お酒飲んだときに蕁麻疹が1回出ま

した。お酒飲むと毎回出るわけではない。

P)エピペン指導

⇒友達も一緒に練習して帰りました

お酒飲むと血流良くなるからな。

単一の原因ではないのか・・・。

アナフィラキシーにはならなくて済んだか

翌日の医局朝会で・・・

当直医が昨日の入院患者の申し送りをしている・・・・

20代の女性がアナフィラキシーショックで搬送され・・・うんぬんかんぬん

20代女性のアナフィラキシーショックだあ!?

ま、まさか・・・電子カルテを見ると

心の声

You are SHOCK!!

もちろん彼女でした

カルテ記載より

<現病歴>

大学生。友人と登校中に頭が痒くなり出した。アレルギーかと思いしばらく様子を見ていたら、5分ほどしてかゆみが強くなり、

両腕が赤くなってきた。意識も遠のいてきたため友人にエピペンを1回大腿に筋注して

もらったがすぐには効かず、後方に倒れこんだ(頭部は友人が支えていた)。アナフィラキシー疑いで救急要請し、搬送された。

今朝の食事:パン、カフェオレ、イチゴゼリー

昨夜の食事:ホルモン、ご飯、アルコール

<Vital>

意識: JCS 1, BP 98/50, HR 94, RR:10, BT 36.3℃,

SpO2: 100%(リザーバー10L/min)

<身体所見>

General: 顔面蒼白で横たわっている

HEENT: 口唇蒼白

頚部: 内頚動脈拍動触知

皮膚: 両大腿に紅斑。他は(-)

呼吸: 喘鳴なし

#1 アナフィラキシーショック

今回もアレルゲンははっきりとしない。救急搬送直前のエピペン効果か来院時には血圧 98/50と救急車内より上昇し、その後もエピネフリン追加なしに補液で130台まで回復した。喘鳴は聴取・・・

P) 救急病棟で一晩経過観察

いやー、良かったのか、

悪かったのか・・・

数日後の内科外来

エピペン処方され翌日退院したようだ

<看護師問診>

数日前アナフィラキシーでエピペン使い救急搬送。原因突き止めたい。

いや私もですよ・・

モンスターが現れた・・・

本気出すしかない・・・

S) 極力パンは食べないようにしていた。2回目の発作起こった時の朝に、時間がなかったのであんパンを食べた。その後歩いて通学中にアナフィラキシー。

前回なったときもパンを食べた後だった。1回目と2回目の間に夜に1回だけパンを食べた。その後に自転車に乗ったが問題なかった。夜のはバターロールにマーガリンが入っているやつ。1回目の時はフランスパンのような中にクリームチーズが入ってるやつ。

最初から出せ!

S) 入学してから朝にパンを食べて歩いて通学

したことは何回かあったが、その時は起こっていない。どちらも雨が降りそうだったのと月経前だった。4月から引越して一人暮らしです。

A) アナフィラキシーショック後・・原因丌明

パンを食べただけでは

起こらないようだ。

パンの種類なのか?

運動も特にしてないしな・・・。

2回の共通点はなんだ?

2回のエピソードに共通は・・

1. 朝にパンを食べている

2. 朝徒歩で通学中

3. 月経前

4. 天気が曇りから雨

P) 2週間後再診

それまでに文献検索や詳しい医療機関探します

絶対私が

調べ上げます・・・

あ、言っちゃった

なにかピンと来ますか?

文献調べました

Up To Dateで運動誘発性アナフィラキシー(Exercise-induced anaphylaxis(EIAn))を調べた

運動の強度・・・ジョギング、テニス、ダンスなど激しいものが多いが、散歩などでも起こす人がいる

食事と関連することもあるが、特定のものを食べて運動した時だけアナフィラキシーになることもある。

歩くだけでも

なるんだ・・

特定のもの・・パン?

RAST陰性だけど・・・

特定の食物+運動の場合

食物依存性運動誘発性アナフィラキシー

(Food-dependent,exercise-induced anaphylaxis (FDEIAn)) と呼ぶ

他に症状を誘発するco-triggersがある

NSAIDs

アルコール

月経前や排卵期

外気温(高温多湿、寒冷曝露)

花粉症の人は花粉の季節

ガチョーン~~!!!

もろかぶってるやんけー

おくやみ申し上げます

*画像は割愛

トリプルショック!!!

最初のアナフィラキシーショック 自分がエピペン処方した翌日に、そのエピ

ペンを使って運ばれてきたショック Up To Date調べるとすぐに分かったかも知

れないショック

あとはパンだな・・・

FDEIAn をwikipediaで調べてみた

原因食物として小麦、エビ、果物が多い

⇒小麦はω-グリアジン・高分子量グルテニンが原因物質とわかっている

⇒グルテニンに対する特異的IgEが検査できる

これだ!!

次の外来で『グルテニン』のRAST検

査しようと思ったら、『グルテン』しかなかった・・・まあいいっか似てる名前だし・・・

ちなみに

グルテン⇒グリアジンとグルテニンを水分の存在下で反応させると結合してグルテンになる・・・粘りの成分

結果はもちろん・・・・

グルテン・・陽性

診断

食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIAn)

グルテン摂取+歩行が原因

co-triggerとして, 月経前、天候が関不か

治療

パンを食べない・・・特に日中

月経前、曇から雨の時は特に気をつける

アルコールも注意

小麦を避けるのはなかなか難しいので、他のことが重ならないように気をつける

内服

クロモグリク酸を食事前に飲むと予防効果あるかも

⇒小規模スタディーあり

H1-blockerは予防効果はないが、症状軽減の可能性あり。

他ロイコトリエン拮抗薬やステロイドetc

その後・・・

アナフィラキシーは一度もなし

ただし蕁麻疹、全身掻痒感、喉の違和感などで受診している

今は喘息の診断で吸入ステロイドしている

今後もまだまだ気が抜けないかー

参考文献

Up To Date:

Exercise-induced anaphylaxis:

Clinical manifestations, epidemiology, and diagnosis etc

DynaMed: anaphylaxis

Step Beyond Resident ③: 林寛之著

Google先生

御清聴ありがとうございました

質問は?

atsuyaka@gmail.com

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