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インダストリー4.0と日本の取組み -ビジネスモデルにどのような影響を与えるか- B-frontier研究所 高橋

Industry 4.0 と日本の取組み

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Page 1: Industry 4.0 と日本の取組み

インダストリー4.0と日本の取組み

-ビジネスモデルにどのような影響を与えるか-

B-frontier研究所 高橋 浩

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目次

Ⅰ.SMARTFACTORY

Ⅱ.インダストリー4.0とミッテルシュタント

Ⅲ.日本のGNT企業

Ⅳ.日本とドイツの比較

Ⅴ.IoT普及に伴なうビジネスモデルの変化

Ⅵ.日本の取組みの方向性と課題

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HANNOVER MESSE 2014

インダストリー4.0発表・浸透の経緯 2013年4月 HANNOVER MESSE 2013

2014年4月 インダストリー4.0一色

2015年4月 HANNOVER MESSE 2015

インダストリー4.0提案

インダストリー4.0の先にあるもの

企業名: FESTO KUKA BOSCH ABB IBG SAP ・・・

SmartFactory by Prof. Detlef Zuehlke

Ⅰ.SMARTFACTORY

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製造業の生産に影響を与えるメガトレンド

増大する複雑性とダイナミックスが今日の製造業生産における主要な挑戦

http://www.acatech.de/fileadmin/user_upload/Baumstruktur_nach_Website/Acatech/root/de/Aktuelles___Presse/Presseinfos___News/ab_2013/Detlef_Zuehlke.pdf

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製造業、特に中規模製造業(ミッテルシュタント)は、市場の変更要求に対する適応能力と、生産地ドイツのイノベーションにより、ドイツ経済と安定雇用、繁栄のバックボーンを成している。

急速に増大しているコスト・効率の圧力下で顧客固有製品と納期短縮のメガトレンドが世界市場で大幅強化された競争への対応を求めている。

機械工学分野におけるイノベーションのリードはドイツ競争力の要である。

この目的のため、現在の伝統的で階層的なオートメーション技術システムは交換が必要になっている。 パンフレット: SmartFactoryKL Pioneer of Industrie 4.0 より

明日の工場を創造する我々のビジョン

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Smartfactory kl

極めて短い時間内でも、どのようにして生産ラインを設定・切り替えできるか? (時間) 新製品を最小限サイズでも、どのようにして機械生産できるか? (サイズ) ドイツのような高賃金国であっても、どのようにしたら仕事を維持できるか? (賃金) それは非常に簡単:明日のスマートファクトリで

http://www.smartfactory.de/ HPより

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明日のスマートファクトリは完全にモジュール化される。 標準化されたインターフェースと最新ICT使用によって、

「Plug & Produce」をモットーとした高柔軟性で自動化された生産が可能になる。

明日のスマートファクトリは、製品個別化とコスト耐性を強化し、より短い製品サイクルに対応する説得的回答を提供する。

明日のスマートファクトリは、ドイツ製造業の最前線に、新しく熟練した仕事と決定的競争優位性をもたらす。

明日のスマートファクトリ

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PILZ FESTO Rexroch

MiniTec HARTING

プラグ・アンド・プレイ方式の開発

PILZ:FA機器メーカー FESTO:オートメーション機器メーカー Rexroch:産業機器メーカー(ボッシュ・グループ) HARTING:産業用コネクター・メーカー MiniTec:産業機器メーカー RITTAL:エンクロージャー/温度管理システム・メーカー Getriebebau NORD:産業用駆動装置メーカー ・・・・・・・・

http://www.smartfactory.de/ HPより

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http://mcpl2010.uc.pt/MCPLFactoryOfThings_DZ.pdf

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W3C: World Wide Web Consortium (W3C)~アプリケーション開発のためのオープンWebプラットフォーム EMMA: W3C内のExtensible MultiModal Annotation markup language USDL: W3C内のUnified Service Description Language OMM: W3C内のObject Memory Modeling

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FoT:factory of things

http://mcpl2010.uc.pt/MCPLFactoryOfThings_DZ.pdf

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http://www.gtai.de/GTAI/Content/JP/Meta/Events/Reviews/JGIF%252014/jgif14-zuehlke-1.pdf

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2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

パーセント

輸出額/名目GDPの変化

ドイツ:輸出/GDP*100 日本:輸出/GDP*100

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1000

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2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

10億

USドル

輸出額の変化(2000-2011)

ドイツ:輸出(10億USドル) 日本:輸出(10億USドル)

“隠れたチャンピオン”は過去10年間でドイツの輸出増加に大きく貢献 “隠れたチャンピオン”は最近10年で10%成長(10年間で2.5倍)

ドイツ 米国 日本 フランス

一人当たり輸出額(2011年)ドル 18,863 4,859 6,258 8,784

住民百万人当たり“隠れたチャンピオン”企業数 16 1.2 1.7 1.1

“隠れたチャンピオン”企業数 1316 372 215 69

①世界市場で業種上位3位以内orその企業が位置している大陸でトップ ②売上高が50億ドル未満 ③一般にほとんど無名

“隠れたチャンピオン”の定義

by ハーマン・サイモン

Ⅱ.インダストリー4.0とミッテルシュタント

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観賞魚用飼料

犬のリード

ホビー

医学理科学教材

教育

製薬業界向け包装システム

マイクロ電子機器組立システム

電子機器用特殊接着剤

製造業界向け部材

災害で被災した機器、設備復旧サー

ビス

(ディザスターリカバリー)

サービス

世界最大級のリチウム生産企業

製造業界向け資源

製造業界向け各種システム

シガレット製造機

グミのお菓子

食品産業

高圧水洗浄剤

製造業、非製造業双方向け部材

商用食器洗浄システム

風力発電システム

非製造業界向けシステム

ショッピングカート 空港手荷物カート

非製造業界向け製品

B to C市場 製造業B to B市場 非製造業B to B市場

ドイツの“隠れたチャンピオン”

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ドイツの“隠れたチャンピオン”のプロフィール B to C市場 製造業B to B市場 非製造業B to B市場

”隠れたチャンピオン”企業の平均売上高は約400億円、平均従業員数は2,000人位

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Flexi

マンフレッド・ボグダーン社長

犬のリード

B to C市場の例

①直接取引重視:世界中に直系子会社 ②顧客重視:各国の顧客対応要員強化 ③環境適応能力の高さ:ニーズ変化に対 応するR&D、特許取得強化

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The Winterhalter family 設立者: Karl Winterhalter, CEO: Jürgen Winterhalter CEOの息子: Ralph Winterhalter.

2010TOP 100 Innovator Product Innovations Vienna University of Economics and Business / Germany 2010Best Product "Pub Equipment "UC SeriesEurogatsro Warsaw / Poland 2010Innovation PrizeUC SeriesEUROPAIN Paris / France 2010Caterer and Hotelkeeper, Equipment & Supplies Excellence AwardUC SeriesHotelympia London / UK 2009Silver MedalUC SeriesDanubius Gastro Bratislava / Slovakia 2009Great Gold Medal for Outstanding QualityUC SeriesNovi Sad Fair / Serbia 20091st Prize, Category: Hygiene ConceptsGS 500 Energy+Eurogastro Warsaw / Poland 2008Gastro-Innovations PrizeGS 500 Energy+Intergastra Stuttgart / Germany 2008Hotelympia Golden AwardGS 500 EnergyHotelympia, London 20071st prize FCSI AwardGS 500 EnergyFCSI conference, Prague 2007"Grand Prix de l'Innovation" catégorie Grand MatérielGS 500 EnergySirha Lyon 20071st prizeGS 200 coolEurogastro Warsaw 20061st prizeMT innovative TechnologyHoreca Prague 20062006Product of the Year 2006MT SeriesHO.RE.KA Czech Republic 2006"Apria" 1st prize in the environment categoryMT SeriesEquip'hôtel Paris, "Apria“ 2006Gastro-Innovations PrizeMT-Series Hygiene conceptIntergastra Stuttgart 20051st prizeGS 300 power requirementsEuropain Paris 2002Hotelympia Golden AwardGS 200 & GS 300Hotelympia, London UK 2002Golden Salima (Zlatou Salimu)GS 302 dishwasher Czech Republic

最近の受賞例

非製造業B to B市場の例

①直接取引重視:世界中のニーズに対応できる後継者育成 ②環境適応能力の高さ:ニーズ変化に対応できる新製品開 発、R&D、特許取得強化

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製造業B to B市場の例

世界トップレベルの工業用接着剤企業

Dr W.D.Herold(夫)は、元はDELOの役員。DELOの工業用接着剤部門を取得して独立。 その後、S.Herold(妻)が化学工学の学位を取得して合流。

従業員数:400人 年間売上額:8200万ドル R&D比率:売上の15%

対象は飛行機、自動車、家電製品、スマートカード、ガラス、ディスプレー他

DELO

①直接取引重視:世界中に直系/連携子会社 ②顧客重視:各国の顧客への指導機能充実 ③環境適応能力の高さ:R&D比率の充実

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ドイツの“隠れたチャンピオン”の戦略

主戦略 市場を意識的に狭く定義⇒絞った市場をグローバル化で拡大【“フォーカス&グローバル”戦略】

目標と成果

成長指向の高い目標設定と積極経営⇒選択市場への執拗な拘り【最近10年10%成長。10年間で2.5倍】

イノベーション

技術と市場をバランス良く統合⇒大企業を上回るイノベーション実現【一人当たり特許保有大企業の5倍以上。特許あたりコスト大企業の5分の1】

組織構成戦略

顧客との近さを技術以上に重視⇒顧客コンタクト従業員比率を拡大【従業員の25~50%顧客コンタクト対応(大企業は平均して5~10%)】

従業員モラル

独自職業訓練システムと有能な従業員⇒高い忠誠心と低い離職率【離職率年2.7%(ドイツ平均7.3%)】

Hermann Simon, “Hidden Champions (1): what German companies can teach you about innovation”

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“隠れたチャンピオン”の強さの源 (1) No.1になりうる市場・製品領域を絞り込む

• 営業やサービスの業務効率化の面で、圧倒的なNo.1シェアと品質を目指す。

• 市場をどう定義すればNo.1シェアを目指すことができるかをよくよく考え実践する。

• 顧客へ提供すべき価値は何で、それを提供するためには何が必要かを徹底的に考察する。 – No.1シェアを目指すことで、さまざまな相乗効果が生まれる(全社員の一体感など)。

– 顧客群と商品群が絞り込まれることで、全社員が目標を共有しやすくなる。

– 海外の事業現場と経営者の情報伝達経路が短くなり、意思決定のスピードやトップ営業の効率が増す。

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(2) 外部リソースの活用

• コアとなる技術は自社開発を行う一方、他の周辺技術は、積極的に社外技術活用

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(3) ハードとサービスを組み合わせる

• 製品(ハード)とサービスやソフトを一体化して顧客の信頼を維持

• サービスの質の高さを強みにし、顧客ニーズを製品開発に反映することで競争力を維持

Page 22: Industry 4.0 と日本の取組み

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ドイツの“隠れたチャンピオン”の強み ビジネスサービス重視!

製品品質

アドバイス

顧客との密接さ

経済性 定刻の配送

サービス

システム統合性 配送の柔軟性 価格

ドイツ製 特許

流通

広告

ベンダーとの協力

競争パフォーマンス

重要性

ドイツの

“隠れたチャンピオン”

製品専門化 顧客「ニッチ」市場 商品サービス

通常の 多国籍企業

生産ネットワーク ボリューム市場 新製品

ハーマン・サイモン,「グローバルビジネスの隠れたチャンピオン企業」より

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中堅・中小企業のビジネス環境

• 日本のイノベーションシステムの特性は大企業中心。しかし、変化のスピードに対応できていない。

• ・・・・そうこうしている間に、大量生産形態の下請け企業は国内では成り立たない経済環境に!

• 中堅・中小企業は新たな変化への適応を余儀なくされている!

– 国内外ニッチ市場に迅速に対応可能な企業へ

– 主体的な企業経営者の力量発揮へ

• 従来とは異なる変化対応の切り口を発見し、そこから新たな実践を試みるべき時期に来ている!

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Ⅲ.日本のGNT企業

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日本の企業 企業名 業種 本社 売上高 創業

キャステム 精密部品成形加工 福山市 45億円/200名 1970

インテリジェントセンサーテクノロジー 味覚センサー 厚木市 未公開/26名 2002

日本ミクロコーティング(Mipox) 磁気記録デバイス研磨 立川市 38億円/未公開 1925

東成エレクトロビーム 電子ビーム/レーザー加工 瑞穂町 未公開/80名 1977

野呂英作 多色混合毛糸 一宮市 未公開 1973

日本分析工業 分取液体クロマトグラフィー 瑞穂町 未公開 1965

電子制御国際 コイル試験機 羽村市 未公開/42名 1968

メトロール 旋盤用刃先位置決めセンサー 立川市 未公開/118名 1976

東洋ボディー 中小型トラック据付荷台 武蔵村山市 未公開/97名 1952

シギヤ精機製作所 円筒研削盤 福山市 72億円/277名 1911

タカコ 精密油圧ポンプ 京都精華町 単独65億円

/1248名(海外含) 1973

新日本テック 超精密金型製造 大阪鶴見区 未公開/75名 1954

細谷祐二「グローバル・ニッチトップ企業論」白桃書房(2014)で調査した「優れたNT型企業」40社中、インタビュー記事が充実している12社

GNT企業として顕彰されている例

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企業名

運用効率性と有効性 戦略能力とイノベーション 成長と資源配分の動力学

①インセンティブによる効率性

②マッチングを通した効率性

③部分統合とシステミック適応

④オープンイノベーション促進策

⑤インセンティブ構造改変策

⑥資源利用向け部門移動

キャステム 開発成功時は安価納入を前提に開発費半額顧客負担受注も

米国企業特許に抵触しない独自製法開発。しかし、米国企業圧力で大口顧客失う。そこで、小ロット顧客を急激に開拓し、加工対象拡大

インテリジェントセンサーテクノロジー

利用サードの別会社を作成。そのデータも踏まえてリードユーザーイノベーションを誘発

日本ミクロコーティング

ニーズを持つメーカーと密接に関わり逸早く製品開発しトップ継続

東成エレクトロビーム

米欧日民間航空機用国際認証プログラムNadcapなど国際資格逸早く取得

中小企業同士が対等の立場でもっと協力/連携

し合い集まれれば大きな力になると認識

世界最新加工機1号機を導入。

その装置で完成品メーカーの試作品加工を請け負うビジネスモデル

電子ビーム/レーザー加工

中堅企業組織ルーチンの抽出

鋳造による精密部品成形加工

味覚センサー

磁気記録デバイス研磨

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企業名

運用効率性と有効性 戦略能力とイノベーション 成長と資源配分の動力学

①インセンティブによる効率性

②マッチングを通した効率性

③部分統合とシステミック適応

④オープンイノベーション促進策

⑤インセンティブ構造改変策

⑥資源利用向け部門移動

野呂英作 代理店各国一社。国内製造に限定

手間コストが掛かり他企業が手を出さない分野へ

日本分析工業

大手が手掛けないニッチ市場目指す

用途を絞った専用機に特化

電子制御国際

実施義務無し試験機(コイル試験)を不可欠検査に

特許は存在せず模倣可能だが市場小で旨味無

メトロール 工作機械に標準採用され世界トップシェアに

工作機械向に加えB2Bインターネット販売で世界へ

トヨタとの共同開発ノウハウを工作機械分野他へ

東洋ボディー

顧客要望に応じた多品種生産を垂直統合的に

伊藤園他大手ベンディングカーボディを全量直接取引

シギヤ精機製作所

工作機械中でも円筒研削盤に特化

タカコ 原理が公知で特許が取れないので工法のノウハウと絶えざる工法改善で対処

全てを投げ出して新型ポンフ開発゚に没頭。現在、民生用で世界シェア75%

新日本テック

中小企業同士の連携

大企業自身ニーズを提示できなくなり丸投げしてくるのに対応し、自立的にソリューションを提案

多色混合毛糸

分取液体クロマトグラフィー

コイル試験機

旋盤用刃先位置決めセンサー

中小型トラック据付荷台

円筒研削盤

超精密金型製造

精密油圧ポンプ

Page 27: Industry 4.0 と日本の取組み

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中堅企業変化の経緯

資源配分を変えている例もあるがオンリーワン技術依存で分野はかなり限定されている

地域中小企業群受注、活性化の受け皿などになっている

下請け 独立化 外部連携 顧客ニーズ探索能力向上

大手メーカー・グローバル化

外部変化

中堅企業の自主的変化

市場向け情報発信 産産連携 産学連携

大企業が果たしていたハブ機能を一部代替

統合力を確保

全企業 多くの企業 コミュニティ主導企業など

客観性のあるベンチマーク (標準認定、標準化等)

自前技術を生かした初期製品開発。高評価の延長での後続製品開発時にユーザー企業などと連携強化

有力中堅企業経営者のイニシアティブで多様な組織形態のコミュニティ(企業連合orプラットフォーム)が登場

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日本とドイツの相違は“新しいニーズ収集とソリューション提供の段階の相違”か? 1. トップクラスの顧客から「課題、難題」が潜在ニーズとして持ち込まれる。

2. 世界トップ顧客の潜在ニーズを「嗅ぎ取り」、他のトップ企業で確認。挑戦目標を立てる。

3. トップクラス企業へのソリューション/新技術を提案。次世代製品に搭載し世界に訴求。世界デファクトスタンダードに影響力を行使する(標準化への発信力)。

挑戦的目標とリーダーシップ

高度に有能な従業員

顧客への近さ

焦点の絞り込み

グローバル指向

競争優位

下請けからの脱却

外部連携

日本の中堅企業

ドイツの“隠れたチャンピオン”との比較

日本は1.レベルの段階か?

Ⅳ.日本とドイツの比較

Page 30: Industry 4.0 と日本の取組み

ドイツ型経営の特徴

• 第一次世界大戦以降「経営共同体」の概念が重視されている。 –利害関係者によって提供される「諸力の共同体」

• 他国に比べ多様なステークホルダーの存在を前提とする傾向が強い。 –経営陣に労働者の席がある(しばしば50%)。

• 上場企業が少ない。 – ドイツ900社、日本3500社

–人口100万人あたり9個(ドイツ)、22.6個(日本)

–また、家族経営が多い。

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Page 32: Industry 4.0 と日本の取組み

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顧客特性の相違

「グローバルニッチトップ型中堅企業の成功に学ぶ」三菱総合研究所

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提供価値(商品)特性の相違

ドイツは、モノよりもソフトウェアを強みとしている企業が多い(機器にデータやノウハウを組み込んでいる)。

こうした企業は、ユーザーとのコミュニケーションを密にし、ノウハウを累積的に蓄積し、他社の追随を許さないポジションに至っている。

一方、日本は、材料技術・加工技術を強みにしている企業が多い。

吉村哲哉、「グローバルニッチトップ企業の企業戦略の特性の類型化の試み」、研究・技術計画学会秋季大会,2014

Page 34: Industry 4.0 と日本の取組み

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ドイツ 日本

自動車 鉄鋼 化学 機械 カメラ

フォルクスワーゲン BMW ティッセンクルップ BASF シーメンス ライカ

トヨタ ホンダ JFEスチール 三菱化学 日立製作所 ニコン

ホビー 教育 製造業 資源 サービス 各種システム 食品産業

Tetra, flexi,… 3B,… DELO,Uhlmann,KARCHER, GROHMANN,… Chemetall,… BELFOR,… ENERCON,Winterhalter, Wanzl,HAUNI,… HARIBO,…

製造業である程度類似企業が存在(ハイテック寄り、規模小)

ドイツ 日本

住民百万人当たり“隠れたチャンピオン”企業数

16 1.7

日本とドイツの大企業/中堅企業比較

大企業

中堅企業

Page 35: Industry 4.0 と日本の取組み

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ドイツ 日本

大企業

類似点 多様な製造業分野をカバー 転職が少ない

多様な製造業分野をカバー 転職が少ない

相違点

業界主導企業が存在 国内/国際標準化容易

同一業態に多数企業乱立 国内標準化がまとまらない 外圧で国際標準に遅れて追随

中堅中小企業

類似点 中小企業の多い国 中小企業の多い国

相違点

中規模企業が多い 業態が多様 グローバル化が進展 最近の成長軌道の実績 国内各地域に万遍なく立地 輸出比率が高い 家族経営が多く後継者手当て

零細小規模企業が多い 製造業(下請け)が多い グローバル化が未進展 横ばい乃至縮小 3大工業地帯近辺での立地 輸出比率が低い 後継者に課題を抱えている

日本とドイツの類似点・相違点

Page 36: Industry 4.0 と日本の取組み

IoTを活用したFoT(スマートファクトリ)化とは?

• 製品開発・販売モデルから

⇒サービスパーツを提供し保守モデルへ

⇒更には利益に応じた成果ベース課金モデルへ

航空機エンジン:適切な飛行時間とエンジン出力

空調機器:快適な空調環境の提供

• IoT化による変化⇒業務を~ • 事後対応型から事前対応型へ

• 現場対応型から遠隔対応型へ

• 不明瞭なデータ蓄積型からデータ活用型へ

• 過去実績型から未来予測型へ

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常にモノがネットワークにつながって

いる世界

Ⅴ.IoT普及に伴なうビジネスモデルの変化

Page 37: Industry 4.0 と日本の取組み

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IoT化促進 デジタル化 促進

IT化 ⇒ 効率化

IoT化 ⇒ 価値創造

IoT普及はデジタル化を促進

デジタル化はIoT化を促進

IT化(効率化)よりIoT化(価値創造)の方がポジティブ

・ 共振化

Page 38: Industry 4.0 と日本の取組み

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これまでの「情報化社会」

大半はアナログデータのまま データは散在 利用はローカルネットワーク内

デジタル⇔アナログ連係には物理的制約

これからの「IoT社会」

全てがデジタルデータ 全データが集中的に管理 利用が実世界の社会規模で可能に

供給側ドリブンからユーザー側ドリブンへ

IoTによる技術革新

物理要素:小型化・省電力化・低廉化 情報処理要素:クラウド大規模化/低廉化・分散処理高度化・人工知能 接続機能:通信費用低廉化

Page 39: Industry 4.0 と日本の取組み

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IoT化 & デジタル化 の増殖!

一目瞭然化

組織に蓄えられた記憶や組織自体の“見える化”(一目瞭然化) 仕事をより抽象化 知性をよりプログラム化

価値創造と価値獲得の乖離

Page 40: Industry 4.0 と日本の取組み

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価値創造と価値獲得の乖離

機能価値の限界

サービス化へのシフト

サービス化は機能価値低減の克服策として登場 (ポジティブな側面もあるが)ネガティブな側面も強い

サービス化 ⇔ 価値獲得の手段強化と裏腹

機能のコモディティ化 モジュール化 摺合せ価値の減退

Page 41: Industry 4.0 と日本の取組み

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機能価値 (製品機能効果)

使用価値 (利用効果)

価値創造 顧客のためにどのような価値

を最大化するか?

使用価値 (利用量課金)

機能価値 (製品価格徴収)

価値獲得

どのような価値からお金を徴収するか?

AHS: Autonomous Haulage System

(無人ダンプトラック運行システム )

価値創造と価値獲得の関係⇒使用価値にシフト

Page 42: Industry 4.0 と日本の取組み

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IoT化はチャンスと脅威を創出

「コンテンツ」を集める機構

「行動情報」を集める機構

「コンテンツ」を集める機構

「行動情報」を集める機構

「モノの情報」を集める機構

これまでの「情報化社会」 これからの「IoT社会」

SNSなど

パーソナライズなど

SNSなど

パーソナライズなど

スマート化

消費者向け、企業向けにギャップ

モノとモノに関わるコンテンツ、顧客行動情報間にギャップ デジタル化領域局在化

消費者向け/企業向け一体化

コンテンツ、顧客行動情報、モノの情報の一体化 遍くデジタル化した環境を活用可

「モノの機能」を訴求する機構

宣伝/HPなど

Page 43: Industry 4.0 と日本の取組み

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IoT化&デジタル化によるチャンスと脅威

価値獲得

使用価値

機能価値

機能価値 使用価値 価値創造

価値獲得

使用価値

機能価値

価値獲得

使用価値

機能価値

機能価値 使用価値 価値創造

機能価値 使用価値 価値創造

チャンス 脅威

既存ビジネス領域縮小 新ビジネス領域拡大

Page 44: Industry 4.0 と日本の取組み

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IoT アプリケーション領域とIoT活用手法

Sundmaeker論文 Vision and Challenges for Realizing the Internet of Things 293 2010, p.49などから

産業 環境 社会

製造業、物流、サービス産業、銀行・金融、政府当局、仲介業、など

農業・繁殖、リサイクル、環境管理サービス、

エネルギー管理、など

市民/その他の

社会構造に向けた政府サービス、電子インクルージョンなど

自律化

モニタリング、制御、最適化を結びつけてかつては夢でしかなかったような高レベル自律性を実現

最適化

モニタリングデータを製品の働きを制御する機能と組み合わせて製品性能を最適化

制御

製品機器やクラウド上の遠隔コマンド/アルゴリズムによって制御

監視

センサーと外部データを使って製品状態、稼働状況、外部環境をモニタリング

領域

IoT能力

Page 45: Industry 4.0 と日本の取組み

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KRONES(飲料充填装置の世界的メーカー)の事例 従業員1万2千人 遠隔監視/診断サービスでIoT導入

情報を顧客と共有しコミュニケーションを円滑化⇒顧客から他社製装置も含めて一体管理をしたいとの希望

他社製装置提供企業の対応案は・・・接続インタフェースを開示してもらって作り込む?

しかし、もう一つの案は、対応を渋っている間に顧客から見放され、KRONOS社製の類似装置に置き換えの運命!

「信頼できる接続性と遠隔監視によるサービス性」がビジネスの生命線 先行企業の標準による機器間連携が始まる可能性

事例1.

Page 46: Industry 4.0 と日本の取組み

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ケーザー・コンプレッサー(空気圧縮機メーカー)の事例

安価で使い易くあらゆる製造現場で利用される空気圧縮機メーカー

従来は圧縮空気の品質、コンプレッサーの省エネ性能、稼働率などで競争

ケーザー社はそのような中、顧客に代わってコンプレッサー運用を実施

供給空気容量に応じて課金する新ビジネスを開始 ⇒コンプレッサー販売から圧縮空気販売にビジネスモデルを転換

圧縮空気は固定費から変動費に替わり初期費用不要に 大口圧縮空気ユーザー だけでなく、小口ユーザーの開拓に成功

事例2.

Page 47: Industry 4.0 と日本の取組み

業界の競争はどのように変わっていくか

• 全ての産業でデータを核としたビジネスモデル革新が生じる。

• 産業の垣根を越えた大変革が不可避!

• 企業・産業の壁を越えた他社との連携が必要になる。

• ユーザーニーズを踏まえた迅速かつ柔軟な価値創造への転換が必要になる。

• “試行錯誤の中から新たなビジネスモデルが生まれる”との認識での挑戦が必要になる。

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Ⅵ.日本の取組みの方向性と課題

Page 48: Industry 4.0 と日本の取組み

新たに醸成されるIoT社会

• モジュール化が拡大

• プラグ&プレイ的技術が登場

• 可視化領域が拡大

• シミュレーション適応領域が拡大

• 最適化領域が拡大

• 新たなBPR的活動が再来

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• プラットフォーム構築競争が激化

• ビジネスモデル構築競争が激化

• バーチャル空間での操作が拡大

• 複雑化する社会

• 産業の区分けが曖昧化

技術面に関わる傾向 組織面に関わる傾向

Page 49: Industry 4.0 と日本の取組み

競争力の源泉や力を入れるべき方針/戦略はどのように変わっていくか

• データを活かした事業展開のためにはプレイヤー間の戦略的連携が鍵になる。

⇒『適切な連携パートナー探索と連携の模索』

• データをいち早く押さえてビジネス化した者が勝ちの世界へ突入する。

⇒スピードが生命。これを実現するための『コーポレートガバナンスの見直しや組織構造改革の推進』

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Page 50: Industry 4.0 と日本の取組み

勃興する巨人との競争をいかに勝ち抜くか

• “隠れたチャンピオン”の3大特性は…..

①直接取引重視

②顧客重視

③環境適応能力の高さ

・・英米流戦略論とは異なる驚異的効果を上げている。

• 日本のGNT/中堅企業は潜在的能力はあるが、従来克服できなかった文化的壁も立ちはだかる。

• 文化的特性を意識しつつ、海外進出への圧倒的貪欲さを身に付け、“隠れたチャンピオン”キャッチアップ戦略が有効と思われる。

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Page 51: Industry 4.0 と日本の取組み

ドイツからの示唆

“フォーカス&グローバル”戦略による幅広い最終顧客ニーズ獲得は・・・

⇒価値創造と価値獲得パラダイム・シフトに有利

⇒製造拠点の国内維持、高賃金確保に有利

コア技術は徹底して自社開発を行う一方、他周辺技術は、積極的に社外技術活用のオープン志向は・・・

⇒多様な知恵を結集させるプラットフォーム形成に有利

⇒顧客ニーズに柔軟&スピーディーに対応する経営戦略に有利

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Page 52: Industry 4.0 と日本の取組み

日本の取組みの方向性

中小企業のIT/IoT活用による底上げ

ケイレツを超えた大企業と中小企業のオープンな連携

グローバル・ニッチ需要に即応可能な組織体制の整備

顧客需要に柔軟に対応できるフレキシブル構造の実現

価値創造の使用価値提供への抜本的シフト

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Page 53: Industry 4.0 と日本の取組み

日本の課題

経営トップの理解促進

ICT/IoT戦略投資の活性化

グローバル・ニッチのニーズ・キャッチアップへの貪欲な挑戦

新しい価値創造力の強化

企業組織従業員が新環境に積極参加可能なインセンティブ等の整備

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Page 54: Industry 4.0 と日本の取組み

参考文献 • 細谷裕二,「グローバル・ニッチトップ企業」,白桃書房,2014.

• 細谷裕二, 「グローバル・ニッチトップ企業に代表される優れたものづくり中小・中堅企業の研究-日本のものづくりニッチトップ企業に関するアンケート調査結果を中心に- 」, RIETI Discussion Paper Series 13-J-007, 2013.

• 稲垣京輔,「中小製造業経営者にみる協働組織の形成と協働関係を構築する能力に関す

る研究」, RIETI Discussion Paper Series 13-J-021, 2013.

• 吉村哲哉、「グローバルニッチトップ企業の企業戦略の特性の類型化の試み」、研究・技術計画学会秋季大会,2014

• ハーマン・サイモン,「Hidden Champions of the 21st Century(グローバルビジネスの隠れたチャンピオン企業)」,中央経済社,2012.

• Hermann Simon, “Hidden Champions (1): what German companies can teach you about innovation”,http://www.whiteboardmag.com/hidden-champions-1-what-german-companies-can-teach-you-about-innovation/

• Hermann Simon, “ Hidden Champions (2): why do these hidden, global, innovative, extremely profitable companies thrive?”, http://www.whiteboardmag.com/hidden-champions-2-why-do-these-hidden-global-innovative-extremely-profitable-companies-thrive/

• Sundmaeker, “Vision and Challenges for Realizing the Internet of Things “, 2010

• Detlef Zuehlke, “SmartFactory—Towards a factory-of-things”, Annual Reviews in Control 34 (2010) 129–138

• http://www.acatech.de/fileadmin/user_upload/Baumstruktur_nach_Website/Acatech/root/de/Aktuelles___Presse/Presseinfos___News/ab_2013/Detlef_Zuehlke.pdf

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