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OSSオフィスソフトウェア製品の組織的導入戦略に関する検討
経営情報学会 2014年春季全国研究発表大会
飯尾 淳 (中央大学)大釜 秀作 (住友電気工業株式会社)小笠原 徳彦 (株式会社ミライト情報システム)小川 知高 (株式会社アシスト)小林 勝哉 (エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社)谷本 收 (住友電工情報システム株式会社)
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はじめに(本研究の位置付け)● 中央大学,および,各社のメンバが共著者とし
て並んでいますが,各社の共同研究というものではなく,任意団体であるODPG(後述)による調査研究の報告です.
● 本研究は,昨年度に実施されたODPGにおけるワーキング・グループ活動をまとめて整理したものです.
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本研究の背景● 研究の背景
– 特定企業によるオフィスソフト製品(ワープロ・表計算・プレゼン)の寡占状態
– さまざまな課題● 古いバージョンのサポート終了,高コスト体質など
– オープンソース・ソフトウェア(OSS)の普及– OpenDocument Formatなどの世界標準が規格化– OSSオフィスソフト製品の機能・操作性も向上
● 機能的にも十分なものとなった
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本研究の目的● 以下のQuestionsを明らかにしたい!
● OSSオフィス製品は組織導入に耐え得るのか?● その際,なにに留意する必要があるのか?
– 導入事例を収集して整理する– 勘所は何か,どのように検討を進めればよいか– 導入に関する得失をどのように考えればよいか
など
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ODPGとは
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ODPGの活動● ODPGの活動を簡単に紹介
– 利用企業,団体が持つ,OSS Ofce SuiteおよびOpenDocument Format(ODF)の利用ノウハウの共有
– OSS Ofce SuiteおよびOpenDocument Format(ODF)の各種課題や互換性情報の収集,関連企業や団体への提言
– OSS Ofce SuiteおよびOpenDocument Format(ODF)の普及,発展を図る活動
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導入効果の整理● 定性的効果
– コンプライアンス(法令遵守)への対応● 適切なライセンス管理● 利用数制限の撤廃,コスト削減
– ベンダーフリー(自社主導)の実現● 特定ベンダに縛られない利用戦略を策定可能
– マルチプラットフォーム(BYOD含む)対応● OSに依存しない● 今後は,BYODにも対応可能と予想
– オープンスタンダードへの準拠
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導入効果の整理● 定量的効果 → 支出コストの抑制
– 具体的な数値は組織形態や利用状況に強く依存
● 費用の計算において検討すべき要素– 移行に関する検討と評価にかかる費用– 社内ドキュメント移行にかかる費用– マクロ(プログラム)の移行にかかる費用– OSSオフィスソフトのサポートにかかる費用– (非OSS製品の)新バージョン調達費用
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各段階での考慮点
意思決定と稟議段階
機能や操作性の評価
ユーザの利用促進
外部サービスと社内サポート体制
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意思決定と稟議段階● 意思決定方法
– 全組織的導入には「トップダウン」意思決定が必要
● 意思推進体制,役割や人数– 導入作業のための,専用のチームや委員会を設置– 現場の担当者だけでなく,意思決定できるメンバも
● 移行目的– 事前のコスト削減シミュレーション結果の提示や目
的の全組織的周知を進めること
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機能や操作性の観点からの評価● 従来環境を前提としたシステム
– システム改修を必要とするか否か,その判断● 組織外とのファイル交換
– 自組織以外との文書データ交換の量と種類– 「読むだけ」ならPDFという選択肢も
● 固有の機能や高度な使用法– 特有の機能を利用しているか,高度な使い方をしている
かどうか● 新しいソフトウェアの利用環境
– バージョンアップのやり方,プリンタ利用は問題ないか
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機能や操作性の観点からの評価● 固有の考慮点
– コミュニティ活動を受け入れる企業風土の有無● 従来資産(データ)の取扱い
– 既存の文書データをどう扱うか,作り直すか?● 操作性の違い
– 利用者にどれだけ影響するか,再教育は必要ないか?● クリップアートとフォント
– 文書作成に必要なデータの取扱い– 場合によってはフリーの画像やフォントの利用も検討
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ユーザの利用促進● 段階的もしくは部分的な切替えと,併用利用
– 特定部門から段階的に切り替えていくのか– 全組織一斉に切り替えるのか,残す部分はないか
● 移行に役立つドキュメントの整備– 研修資料・FAQ(よくある質問と回答)の用意
● 生産性低下への配慮– 「生産性低下」に対する懸念の払拭 → 後述
● 新しい環境特有の機能に関する訴求– ユーザにとって嬉しい機能の提示(一時期,PDF作成
機能がアドバンテージであった時期があった)
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外部サービスと社内サポート体制● サポート企業の選択
– 必要に応じて外部サポート企業の利用も検討
● 内部サポート体制の構築– ヘルプデスクの用意など– ヘルプデスクは段階的に用意することも可能
● ユーザ教育– 組織的利用に「ユーザ教育」は必須– 外部リソース(研修資料,ODPGなど)の活用
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製品の選び方● 複数の候補から製品を選択
– Apache OpenOfce vs LibreOfce, and others
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バージョンの選び方● Apache OpenOfce
– 慎重なバージョンアップポリシー● リリース直後のインストール or
マイナーバージョンアップを待つ方針● LibreOfce
– 半年に1度のメジャーリリース– 1ヶ月に1度のマイナーリリース
● セキュリティの不備や重大な不具合の修正など● 不具合修正対応は最新2バージョンのみ● コミュニティサポートも2年で終了
やや戦略的なバージョン選択ポリシーを要求
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関連研究● ホワイトカラーの業務に関する生産性の評価● とくに文書作成に関する生産性評価(少ない)
– 中高年のオフィス操作(リボンI/Fの評価)● Darejeh, A., and Singh, D., “Increasing Microsoft
Ofce Usability for Middle-Aged and Elder Users with Less Computer Literacy,” Journal of Industrial and Intelligent Information, Vol. 2, No. 1, pp. 56-62, 2014.
– クラウドコンピューティング環境の導入評価例● Petruch, K., Stantchev, V., and Tamm, G., “A survey on IT governance aspects of cloud computing,” International Journal of Web and Grid Services, Vol. 7, pp. 268-303, 2011.
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まとめと今後の課題● まとめ
– OSSオフィスソフトの組織導入に関する課題と考慮点,メリット(・デメリット)を整理した
– 事例を収集したうえで,ポイントを検討した– 「ガイドライン」として公開,今後の参考に
● 今後の課題として…– 導入効果の科学的評価– オフィスにおける文書作成業務に関する生産性評価– 多くの経営層が「生産性の低下」を憂慮!