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1 ©Social Finance, 2011Social Finance is Authorised and Regulated by the Financial Service Authority. FSA No: 497568
保健サービスにおけるソーシャル・インパクト・ボンド( SIB) の成果
翻訳 / コメント 株式会社ソーシャルインパクト・リサーチ
Ben Jupp, DirectorEleanor Stringer, Associate
2 ©Social Finance, 2011
最初に
株式会社ソーシャルインパクト・リサーチが本資料を翻訳した目的は、日本におけるソーシャルインパクトボンド( SIB) の理解を促進するためである。
SIB は英国で生まれ、オバマ政権においても 1 億ドル予算化され、ニューヨーク市で SIB 発行が予定されています。
SIB は、社会的課題の解決と投資家リターンを両立する新しい金融商品である。今後、日本においても SIB が普及することで、日本のソーシャルセクターに大きな変革をもたらすことが期待されています。
そのためには、行政セクターの方々、 NPO/ ソーシャルベンチャーの方々、我々金融仲介業者が SIB に関する正しい理解を得ることが不可欠です。本資料がその一助になれば幸いである。
ソーシャルインパクトボンドの研究会をおこなっていますので、ご興味がある方はご気軽にご連絡下さい。[email protected]
3©Social Finance, 2011
ソーシャル・ファイナンスは、社会課題に投資を呼び込むことを目的とした非営利組織です
政府 民間セクター非営利セクター
ソーシャル・ファイナンス研究・開発財務構造化資金調達
長期的なソーシャル・チェンジ
社会的投資の市場成長
非営利セクターの発展
私たちは、ファイナンスとソーシャルセクター・スペシャリストのチームです。社会的問題に効果的に取り組もうとする組織は、イノベーションを起こし成長するために持続的な収益と投資を必要とします。それを可能にするため、金銭的リターンだけではなく社会的インパクトに対しお金を使いたいという人々から資金を調達するのが私たちの役割です。ソーシャル・ファイナンスは非営利組織です。
重要な社会的課題
4©Social Finance, 2011
•ソーシャル・インパクト・ボンドとは、犯罪者の再犯防止や福祉健康分野などの公共事業において、社会的成果が生み出された場合にのみ支払いを行う公共セクター契約のことである。
•ソーシャル・インパクト・ボンドの契約においては、社会的な動機付けに基づいた投資家から資金を調達する。
•集められた資金は、成果を生み出したり大幅にコストを削減した予防的なサービスへの支払いに当てられる。
•投資家が受け取る金銭的リターンは、達成された成果の大きさに依存する。
ソーシャルインパクト・ボンド (SIB) とは予防的サービスに資金を調達する手法である
5©Social Finance, 2011
Key Fact
•最初の SI B パイロット事業は法務省 (Ministry of Justice)によって設けられた
•犯罪者の再犯を減らすことが目的•本事業は、ピーターバラ刑務所を出所した 短刑期 ( 最大 12 ヶ月 )の男性受刑者3,000人に対して実施
パイロット事業
•6年間のパイロット・スキームが 2010 年 9月に開始•対象者 ( 犯罪者 )一人に対し複数のサービス事業者が、収監中及び出所後に、強制的な介入を実施• サービスは、 SIB のファンド・ディレクターが管理する犯罪者のトラック・レコードに基づき、第3セクターの事業者によって行われた•ターゲット集団の ( 再犯の ) 有罪判決水準は、 Police National Computerから得た統計群と比較した
投資家•社会的投資家から 500 万ポンドが調達された•最初の投資家は、社会的動機に基づいた、そもそも慈善的なトラストや基金であり、社会的成果に注力している投資家たちである•( 再犯の ) 有罪判決が 7.5%以上減ると投資家にリターンが生まれる•サービスが成功しなければ、原資は戻らない
ピーターバラ刑務所
最初の SIB は犯罪者の再犯を減らす目的で500万ポンドの社会的投資が行われた
刑期 12 ヶ月以下の男性受刑者 3,000 人6©Social Finance, 2011
ソーシャルインパクトパートナーシップ 法務省
社会的投資家
再犯削減契約
SIB は法務省との契約に基づき、複数のサービス事業者に資金提供を行う
再犯の削減
St Giles Trust
収監前と収監中、及びコミュニティ内でのサポート
Ormiston Trust
受刑者が収監中と出所後の家族のサポート
YMCA/SOVA
受刑者とともに働く地域ボランティアのサポート
その他の介入
収監中及びコミュニティ内で受刑者に必要とされるサポート。ニーズを特定した上で資金調達する。
One Service プログラムによる運用中の資金調達
7©Social Finance, 2011
• 保健行政: ( 例 ) 喫煙の中止、健康な生活など
• 長期にわたる病気の管理: ( 例 ) :糖尿病、ぜんそくの他、筋ディストロフィーな
どの難病
• 緊急入院を減少させるためのサービスの改善: ( 例 ) テレヘルス ( 遠隔治療サービ
ス )や地域サービスの改善
• 高齢者がより長く家庭で活動的な生活を送り、施設入居によるケアを回避するための手助け: ( 例 ) リ・エイブルメント (Re-ablement )*
• 地域のメンタル・ヘルス・サービスの改善: ( 例 ) インフォーマルなサポートを提供するボランティア組織の参画
* リ・エイブルメント:病気療養者が施設入居によるケアを終えた後に自力で日常生活を送ることが できることをサポートするサービス
保健サービスには SIB を活かせる可能性が多い
以下のような保健関連サービスを扱う SIB に関心が高まっている
しかしながら、成功する SIB を立ち上げるためのハードルは高い
8©Social Finance, 2011
• 客観的に検証可能なしっかりとした成果測定基準• ターゲット集団は明確に定義され、アクセスしやすいこと• ベースライン / 比較対象のグループ
SIB は特定の状況に有用
投資家と事業委託者が契約において合意するためには、介入のインパクトを正確に測定できなければならない
• 介入サービスのエビデンス:公共セクターのコスト削減分よりも大幅な低コストで成果を達成することを示す
• 事業委託者からは独立したサービス事業者:(いくらかのパフォーマンス・リスクをシェアしていることは別として)投資家が事業者を緊密にモニターすることができる
投資家に投資をさせるには
•公共セクターのコスト削減分が簡単に特定でき金額化できること:これは成果の測定と密接に関係する
• 必要とされるサービスに対する内部資金の欠如や、成果達成のリスク・テイクに対する消極的であることは望ましくない
事業委託者が投資家に成果に応じた支払いをするには
9©Social Finance, 2011
長期的療養患者のケア改善には SIB が適用できる
• 人数は拡大している:人口の高齢化に伴い長期療養患者の人数は増大している。現在 1,540万人の長期療養患者は 2025年には 1,800万人に増えると見込まれる。
• 長期療養は非常に高コストである:最も保健医療コストがかかるのは LTC(肺胸郭コンプラ
イアンス )患者である。保健省は、 LTC患者の治療とケアが国内の保健及び社会的ケア費用の 70% に上ると見積もっている
• 入院患者のほとんどは長期療養患者である:これを減らすことができれば、事業委託者は直接的なコスト削減ができる
• 地域における一次ケアを改善すれば、患者の病院利用を減少することが証明されている:患者の健康は、テレヘルスや家庭でのケア容器を管理するサポートなどのサービスによって改善されるというコンセンサスが形成されている。
• 病院利用への介入のインパクトを評価するツール: Nuffield Trust などの組織は、国のヘルスケアデータから仮想のコントロール・グループを構成することができる
長期療養患者により良いケアをするための資金調達に SIB を導入すべき状況
事業委託者が、公共医療の介入策において成果だけではなく活動費用やアウトプットにも支払いをするならば、 SIB による資金調達を行う機会であろう
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SIB は様々な手法で長期療養のケアを改善することができる
SIB には保健医療問題 - 特に長期療養患者の管理 - を改善するための様々な利用法があると考えられる。
SIB の投資は成果が達成された時にリターンがなければならない。上記の例では全て、緊急治療に要したコストが削減され、削減分が投資家に支払われると私たちは想定している。
フォーカスする課題 例
地域における入院患者を減らす
地域での一次ケアを行うようにサービスを改善、創出するため、 SIB による資金調達を行う。一般開業医や熱心なトラスト、その他行政機関と協働し、専門医への照会や退院への道筋を改善し、入院の恐れのある患者に対する地域サービスに資金提供することができる。
特定のグループの健康を改善する
( 例:高齢者、糖尿病 )
投資によって治療フローを設計するサービスを改善することができる。例えば、保健関連の行政機関同士のパートナーシップとSIB による追加サービスへの資金提供によって、糖尿病の治療フローを改善することができる。
何らかの健康改善プログラム / 介入
を拡げる
オプションとして、特定の介入策の利用を拡大するサポートにフォーカスするということもできる。例えば、 SIB による資金提供によってテレヘルス・プログラムを拡張するなど。
11©Social Finance, 2011
• バーミンガムの “ Be Active スキーム” の分析 バーミンガムの運動プログラム Be Active のコストと利益をマトリクス・ナレッジ・グルー
プと共同で調査している。このスキームにより短期〜中期的なコスト削減の金額化ができれば、部分的に成果に基づくスキームで事業委託し、先行投資コストの資金調達に社会的投資を利用する可能性がある。
• 難病への投資ニーズの評価嚢胞性線維症、筋ディストロフィー、多発性硬化症などの難病のケアを改善することによっ
てコスト削減と健康改善ができるのかどうか、あるいは患者が非常に複雑な退院サポート( 例えば長期の話し合いなど ) を必要としているのかなどについてヤング・ファンデーショ
ンと共同で評価している。 成果が出せるのであれば、 SIB は事業委託者や投資家がケアの改善に向けてともに取り組むための方法となりえる。
ソーシャル・ファイナンスは保健医療分野におけるポテンシャルを評価するため調査を始めている。現在進行中のプロジェクトは:
次のスライドでは、この他に私たちが開発したいと考えている潜在的 SIB モデルの概要を示します。
保健医療分野におけるソーシャル・ファイナンスの仕事
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• 入院の恐れのある患者は、健康データの分析で特定できる:入院の恐れのある患者の多くはたいてい1つ以上の長期的疾患を持っているが、他の理由においても脆弱である場合が多い。例えば、高齢者に多い例では、精神的な問題を抱えていたりする。リスク予防モデルにより、近い将来に入院の恐れがありそうな患者を特定することができる。
• 地域におけるサービスの改善は患者の健康に対しインパクトを持つことが証明されている:例えば、遠隔治療やケース・マネジメントなどのケアをうまく統合すると入院の回避に効果があった。スメスウィック ( ウェスト・ミッドランド ) のコミュニティ・インタレスト・カンパニーは一般開業医と協働し、ターゲットとなる患者に対し、遠隔治療やグループ・コンサルテーションなどのサービスを実施した。結果はすぐに現れ、緊急入院が大幅に減少した。
例:一般開業医による患者への一次ケアを助ける
ケースマネジメント
疾病マネジメント
自己管理のサポート
予防と健康促進
0.5% :非常に高い
0.5 - 5% :高い
6 - 20% :やや危険
21 -100% :低い
相対リスク例: SI Bがどのように機能するか•事業委託者は地域人口における入院の減少に対し支払を行うことに同意する。
•投資家は一般開業医が成果を出すのをサポートする。•リスクのある患者を規則的に特定するのに資金を使う。•リスクありと判断された患者は、次に健康を保ち自立して生活するためのサービスを受ける。遠隔治療や自己管理サポートに加え、ケース・マネジメントを追加してもよい。
•入院が減少し、事業委託者がコスト削減から得た金額から、投資家はリターンを得る。
一般開業医が入院の恐れのある患者に行うサービスを改善することを SIB でサポートする例
13©Social Finance, 2011
• 糖尿病患者は大幅に増加している:英国では現在 240万人の成人が糖尿病にかかっており、その数は2025年に 360万人になると見積もられている。
• そのため保健サービスを増進しなければならない:常時、病院内の 10人に 1人が糖尿病で、 1週間に 70人以上が切断手術を受けるという状況である。
• しかしこのコストは予防的ケアを行うことによって削減することができる:糖尿病は習慣的な病気であるから、自己ケア・自己管理が治療の大部分をなす。このケアを改善すれば、悪化を防ぎ不必要な入院を避けることができる。試算によれば、切断手術の 80% は予防できる可能性がある。
例:糖尿病ケアの改善を助けるサービスに資金提供を行う例
例: SI Bがどのように機能するか•事業委託者は「より健康な糖尿病患者」に対し支払を行うことに同意する。
•サービス事業者とトラストは協働し、入院のリスクが高い患者を特定し治療の道筋をたて個々の患者に合わせたサービスを効率的に行う。
• サービス事業者は、 新しいサービスに当てる外部資金を提供してくれる投資家とともにジョイント・ベンチャーを作る。
•投資家とサービス事業者は費用対効果にあったサービスから得た金銭的利益を分け合う。
臨床事業委託グループ
サービス事業者 投資家
ジョイント・ベンチャー
成果ベースの契約
治療フロー治療フロー
地域ケア一次ケア緊急サービス
糖尿病患者に、的を絞ったより良いサービスを行うため SIB で資金調達を行う例
14©Social Finance, 2011
•この他に保健サービスにおいて SIB が適用できる課題はないか
•コスト削減分を金額化する努力について
•現在の事業委託環境の課題
議論
ヘルスケア分野における機会やチャレンジに対しぜひご意見やご感想をお寄せください。この他、議論の余地がある課題には以下のようなテーマがあります。
SIB の実現可能性評価について、以下のテクニカル・ガイドにおいて情報提供を行っています。http://www.socialfinance.org.uk/sib/guides
会社概要
株式会社ソーシャルインパクト・リサーチソーシャルベンチャーの経営支援事業ソーシャルインパクトの測定およびコンサルティングファンド組成、運用、証券化事業ソーシャルファイナンスのプラットフォーム運営証券会社向けアナリストレポート作成東京都新宿区弁天町87-1105
2010年10月1日1000万円適格機関投資家等特例業者第二種金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2623号熊沢 拓、河合朋子
社名事業内容
本社設立
資本金登録
代表者
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門脇 哲男株式会社ソーシャルインパクト・リサーチ パートナー
日本貿易振興機構(JETRO)日本興業銀行NY支店 米国野村證券NY企業金融部 バイスプレジデント ケミカル証券東京事務所 取締役企業金融担当上席代表 ドレスナー証券東京支店 引受部次長株式会社ジャフコ 海外投資部次長 、香港社長、他を歴任
河合 朋子株式会社ソーシャルインパクト・リサーチ パートナー、工学博士
東京都立大学大学院博士課程修了、工学博士エコール・ダルシテクテュール・パリ=ベルヴィル校留学文化女子短期大学非常勤講師不動産会社 取締役
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