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Hiroshi Ohno Portfolio Works

Hiroshi Ohno Works

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Hiroshi OhnoPortfolio Works

Hiroshi Ohno

大野 宏

The University of Shiga PrefectureEnvironmental Science Graduate SchoolEnvironmental Architecture DesignLAB. Ashizawa ryuichi

Tel:+81 80 6133 4624Mail:[email protected]

Tel:080 6133 4624Mail:[email protected]

滋賀県立大学環境科学研究科 環境計画学専攻環境意匠研究部門 環境建築デザイン 芦澤竜一 研究室

畑友彦賞

槻橋賞

EA 賞 ( 最優秀賞 )

優秀賞

ベスト 12

堀越英嗣賞

Judges award

Judges award

First prize

Second prize

Best 12

Judges award

受賞暦

NEXTA2014

熱発コンぺ

滋賀県立大学卒業制作講評会

福岡デザインレビュー

JIA 全国審査

日本デザイン学会 2015

History of awarded prize

NEXTA2014

Thermogenic competition

The Umiversity Of Shiga Prefecture Diploma

Fukuoka Design Reviw

The Japan Instite of Architects Deploma national convention

Architectural Institute of Japan Design competition 2015

Hiroshi Ohno Works - 大野 宏 作品集

■Contents

01. 淡路の住宅 / Awazi House

実施プロジェクト / Implementation Project

02. 多賀公民館 / Tagatyo Public holl コンペディション / Competition

03. 気仙小学校 / Kesen School コンペディション / Competition

04. 屋島展望台 / Yashima Shightseeing tower コンペディション / Competition

05. 廃棄物利用 / Rematerial Reserch 研究 / Reserch

淡路島東浦の斜面地に計画している大阪ミナミのレストランのオーナー家族 3 人のための住処である。これまで都心で生活を送ってきた3人が、淡路島の自然の恩恵を十分に感じることができる住宅をつくろうと考え、敷地全体の環境を設計することを考えた。家の中心には炉をつくり、炉を中心とした渦巻き型のプランを取る。ワンルームで渦の中心に向かって上昇する空間は、夏場は風を通し、冬場には炉からの暖気を家全体に送りこむ。家の周りには池や畑、そしてコンポストトイレや雨水集水装置などを配置し、住み手が自然の循環を知覚し、楽しむことができるように考えた。淡路の地場で採れる自然素材、土、瓦を主要な仕上素材として考え、地元職人を中心に施主も参加しつくれるように、特殊な工法ではなく、一般的な工法でつくれる建築を考えている。この場に住み手を中心に人々が集い、皆の記憶にとどめられ、いずれこの住宅が、人々に開かれたレストランに変化していくことも視野に入れている。

淡路の住宅機能 

敷地

敷地面積

延べ床面積

         住宅

兵庫県淡路市

986.54 ㎡

102.8 ㎡

-2370

-1350

-4090

-4840

-4720

-1660

-2390

-4380-3420

-2410

-3400

-3600

-4200

■渦巻き自立壁渦巻き形状の曲面壁はそれ自身で自立するため、控壁など直交壁を必要とせず、自由な内部空間を生み出す。

■木骨版築工法木造で構成したフレームの間を土で突き固めた版築造とする “木骨版築工法” とする。壁内に竹筋を横方向に配することにより水平力を木造柱に伝えることにより、薄肉で高さの高い版築壁とすることが出来る。

渦を巻く木造

木造軸組模型 渦巻きの構造

淡路島で採れる材料を使おうと考え、土や瓦に注目した。現場で掘削する土と粘土を混し、版築を作成し、床材に淡路で制作が盛んな瓦を用いている。

版築 瓦

地域産の素材の活用

配置図 1/500

1/400牧草地帯

竹林

松林ため池

ため池畑

住宅に降り降りた雨水は、屋根を伝って池にたまる。貯水タンクに溜まった水は、畑、コンポストトイレや五右衛門風呂などまで水が流れていく。雨水をすぐに敷地外にはきだすのではなく、敷地全体に水が浸透していくシステムを考えた。

敷地内で循環する雨水利用ダイアグラム

空の間から外を見る

浴室から外を見る

客の間から外を見る

囲炉裏を見る

食の間を見る

廊下を見る

食の間から外を見る

玄関から中を見る

家族が集う空間を覆う屋根もまた渦巻き形態を持ち、2階の「空の間」からそのまま大地に降りることができる。屋根面は薄く土を載せ、大地の生態環境が連続するようにと考えた。

平面図 1/200

1F 2F

2

3

4

56

7

8

1

1.CL1 2.CL2 3. 寝室 4. 洗面室 5. トイレ 6. 風呂 7.LDK 8. ロフト

2

2

2

冬場は十分に自然光を室内に取り込み、夏場は庇と植物によって、自然光を遮る。

屋根を流れる雨水は、らせん状の屋根に従い、屋根の上を流れ落ちる。それらを一つの溜池にため、畑の灌水に再利用する。

玄関部分から取り込んだ風は、上昇する建物のらせん形状に従って、中心に向かって気圧の高低差を利用して、自然換気を働かせる。入口前の池による気化熱によって冷たい空気が家の中を通り抜けていく。

冬場に室内に取り込む太陽光から壁に蓄熱を行う。また、中心の炉や暖炉からの熱を熱容量の大きい版築壁や床のたたき土間に蓄熱し、家全体を暖かい環境を保つ。

夏の日差し

冬の日差し

「小さな家郡」と「大きな家」が作り出す多賀の門前町町民の持つ愛着を感じることができ、多賀ならではの魅力と誇りを再認識できる施設

門前町らしい活気が感じられる町の公民館

多賀町は「お多賀さん」で知られる古事記にもその名がある由緒ある多賀大社の門前町です。小さな家郡が軒を連ねるロビー空間は、参道に様々なお店が建ち並ぶ門前町の様な通り空間です。この空間を中心に、町のみんなが気軽に立ち寄れ賑わう空間を形成します。町の歴史を継承し、町を象徴する公民館を計画します。

まちのみんなが思い思いに自由に活動できる「小さな家」の集まりでもあり、そこに行けば誰かに必ず会える、故郷にあるような「大きな家」となる公民館。

町から人が集まる場

町から人が集まる場

EV

下駄箱

下駄箱

下駄箱

下駄箱

ステージ

ホール

倉庫

ホール操作室

トイレ

トイレ

機械室

工作室

杉の子第二作業所 多目的室(リハーサル室・音楽室・控え室など)

調理実習室

配膳室

手足洗い場

倉庫

作業場

土間

事務所

食堂

児童室

会議室(研修室)

会議室(研修室)

縁側

事務室

トイレ

トイレ 託児・授乳コーナー

倉庫

更衣室

更衣室

シャワー室

シャワー室

サークル等団体所有物管理スペース

搬入口

職員更衣室

職員更衣室

多目的トイレ

外部倉庫

図書室土間

土間

和室

エントランスロビー

町から人が集まる場

遊戯広場

操作室

外倉庫

舞台裏

給湯

給湯

障碍者用駐車場

多目的トイレ

多目的トイレ

相談室

収納

諸室が、エントランスロビーより一望でき、歩行者と車両の動線を明確に分けてお年寄りから子供まで誰もがアクセスやす

い平面計画です。

誰もが利用しやすく管理しやすい平面計画

諸室利用時

災害時 杉の子利用時調理場と一体

ホールとロビー一体時

■フレキシブルな空間利用

外部利用調理場利用

一体利用

炊き出し

各諸室利用

休息所閉館物販受入

避難所

概念配置図 1:1300

歩行者

エントランス

歩行者歩行者自動車容易な搬入

イベント時に大屋根と一体に使える大きな広場

▼▼ 搬入口搬入口

屋根が連なる多賀を象徴する公民館(俯瞰図)

多賀らしさ”のある入母屋や切妻屋根と周辺の山並みが織りなす景観多賀の集落にみられる入母屋造や切妻造の家々と呼応する民家が建ち並ぶような姿の公民館を計画します。大屋根と小屋根が

郡景を成し、鈴鹿山系の山並みを背景に多賀町の風景の一部となる公民館を計画します。

構造は、3つの構造方法を組み合わせたシンプルな構成です。それぞれの構造的特徴に合わせ、木材の樹齢・樹種・サイズを選択し、適材適所で使います。いずれも複雑な技術や特殊な工法が必要な構造ではなく、一般的な技術で加工や製作が可能な方法を採用します。①小さな家群(各居室群) 小径無垢材で構成→一般的な在来軸組構造+ルーバー耐力壁②エントランスロビー 中~大断面無垢材で構成→丸太柱+登り梁による大きな屋根下空間③ホール 中~大断面無垢材で構成→交叉トラス+小径材を集積したマッシブ  耐力壁による無柱の大空間

シンプルな架構法で多賀木材の魅力を活かす(構造計画)

300

21090

210

小径材を集積したマッシブ耐力壁

■一定のスパンごとでボルトを一体化

木タボ接合@300

■等断面杉積層(マッシブ耐力壁)小径材同士を一定の間隔で木ダボや金物で結合、無垢材が充填されるため断熱性や遮音性にも優れています。

一定の数毎にボルトで一体化

交叉トラス構造

ルーバー耐力壁小径材登梁+面材

小径材を組み合わせた在来軸組工法

百年生の木材を用いた丸太柱と登り梁

■小径材をルーバー状に連続的に配置し、一定の高さを無垢材で結合します。透明感を残しながらも強固な耐力壁となります。 40 年生材(樹径 25~ 50 ㎝、長さ 6m前後)

比較的短い梁や在来軸組構造となる箇所に使用します。①の柱梁・ 筋交い・ルーバー耐力壁に用います。

100 年生材(樹径 40~ 60 ㎝、長さ 8~ 10m程度)②ロビーや③ホールのような大きな空間の柱・トラス・マッシブ耐力壁に使用します。

芹川の対岸から見た風景

用途に応じて開放的にできるホール

EV

下駄箱

下駄箱

下駄箱

下駄箱

ステージ

ホール

倉庫

ホール操作室

トイレ

トイレ

機械室

工作室

杉の子第二作業所 多目的室(リハーサル室・音楽室・控え室など)

調理実習室

配膳室

手足洗い場

倉庫

作業場

土間

事務所

食堂

児童室

会議室(研修室)

会議室(研修室)

縁側

事務室

トイレ

トイレ 託児・授乳コーナー

倉庫

更衣室

更衣室

シャワー室

シャワー室

サークル等団体所有物管理スペース

搬入口

職員更衣室

職員更衣室

多目的トイレ

外部倉庫

図書室土間

土間

和室

エントランスロビー

町から人が集まる場

遊戯広場

ビオトープ

砂場

操作室

外倉庫

舞台裏

給湯

給湯

多目的トイレ

多目的トイレ

相談室

収納

概念 1F 平面図 1:600

マッシブ耐力壁開口またはガラス戸在来工法耐力壁ルーバー耐力壁

EV

ステージ

ホール

倉庫

ホール操作室

トイレ

トイレ

機械室

工作室

杉の子第二作業所 多目的室(リハーサル室・音楽室・控え室など)

手足洗い場

作業場

事務所

食堂

会議室(研修室)

会議室(研修室)

更衣室

更衣室

シャワー室

シャワー室

サークル等団体所有物管理スペース

搬入口

土間

町から人が集まる場

操作室

外倉庫

舞台裏

給湯

給湯

概念 2F 平面図

職員が施設内を一望できます

会議室を用途に応じて一体で使えます

イベントや即売所などのスペースとしても利用可能な土間空間

電気窯を設置します

気軽に立ち寄れる図書室

学習や読書することができる小スペースをつくります

隣接しており使用用途に応じて一体になります

エア浮上式客席をステージ下に設置します

開放的な活用も可能なホール

庇のある空間による外部空間とのつながり

内装や家具にも積極的に多賀木材を使用します

視界が抜ける平面計画 ひとつの大きな家のような賑わいを計画します。

様々な外部空間

分棟配置によって多方面からアクセスし易い公民館を計画します

諸室の分棟配置とそれらをつなぐ縁側・土間空間

ロビーと諸室の間には随所に縁側的空間を計画します

人々が留まり、気軽にコミュニケーションを図れます

地域産の石や土などを混ぜた左官仕上

エントランスロビー(多賀百年の森)100 年生木材の長尺・大断面(30cm~ 60cm)柱と登り梁が、多賀の百年の森を思わせる堂々とした木質空間です。

百年生木材を使用した柱

多賀大社の鳥居のような大空間へと続く境界

構造体以外に内壁や外壁そして床材等の仕上や家具等にも積極的に多賀木材を使用します。地域の

魅力を発信するだけでなく、多賀の地域素材の循環・利用を行う公民館を目指します。また、木材

だけでなく、多賀の土によって左官仕上を適所に施します。

豊かな地域素材を利用する

教育環境

地域森林保全 地域の象徴

地域産業の活性化

森林問題

林業振興森林再生

木質バイオマス発電

CO2 固定化 木材利用

光・風・水・熱等をコントロールし、環境に配慮した省エネルギー計画(設備計画) 機能ごとに明確に分かれた諸室は、利用状況を考慮してエネルギー管理を行い易い計画です。また

木構造の蓄熱性能を利用した温熱環境制御を行います。大きく跳ねだした屋根の軒は太陽高度の高

い南からの直接光をカットし、冬場の光を積極的に室内に取り込みます。外壁面に設ける縦ルーバー

は太陽高度の低い東西の直接日射を間接光に変えて室内に取り込みます。また穏やかな季節時には、

自然の風を室内へと呼び込むよう風の通り道を計画します。同時に実用可能な諸種の省エネルギー

策を網羅して BEMS 最適運転制御などを検討し、消費エネルギー 50%削減(対類似・同種建物)、

CASBEE 最高ランク取得を目指します。

モジュール空調機(床下設置)

川からの涼しい風を取り入れる

LED照明

アースダクト(予冷)地下水利用

雨水利用

散水

日射遮蔽太陽光発電自然通風

屋根散水

LED照明三角屋根による落雪防止

太陽熱給湯

太陽熱収集

冬季は遮蔽する

モジュール空調機(床下設置)アースダクト(予熱)

貯水槽(洗浄水、災害時雑用水)

雨水収集 床蓄熱

日射習得

ペレット・ボイラー暖房

貯蓄雨水槽(植栽散水、洗浄水、災害時雑用水、屋根散水)

重力換気

タスクアンビエント照明

在人時のみの暖房

在人時のみの冷房

地熱利用児童室から蕎麦畑を臨む

麦畑前の庭

地域のみんなが集まる場となり、地域に開かれたまちの景色を伝承する小学校「こどもの場所」と「まちの場所」をつくる小学校

■子供達が気兼ねなく、自由に時間を過ごせる学校 住宅地の中心に位置する新しい小学校は、地域の人々の拠り所となる場所であると同時に、子供達が誰にも遠慮することなく精一杯学び、遊び、時には思い切り騒いでよい場所であるべきだと考えます。 一方で、子供達は時には一人になりたく、自由な時間を過ごしたいと思うことがあるはずです。小学校内にみんなで集まれる場所をつくると同時に、一人用のちょっとした狭いスペースや、落ち着ける木陰など多様な場所・環境を、敷地内に作り出します。

  ■子供から大人まで、誰もが学び、自分の活動の拠点となる小学校 校舎を東側住宅地に寄せて配置し、小学校の東側に地域に開かれた誰もが交流できる「まちにわ」をつくります。多目的ホー

ルや図書室、家庭科室などは、「まちにわ」に面し、外からも直

接アクセスすることができます。中心に配置した「まちの広場」

はアリーナとも一体的に使う事が可能で、お祭りやイベントな

ど様々な用途で利用することが可能です。

三陸道

保育園

公民館

N

グランド

設計方法と考え方

駐車場

まちの広場アリーナと一体で使用可能

グランドの入り口

2F 平面図1F 配置図

広いグランドを囲む校舎・小高い山・東側の広場 周辺条件を考慮し、まず、子供達が安心して学べる場所を作るために、極力広くグランドを確保し、その外周に建物と小高い山を囲い込むように配置します。建物は 2階建てとします。 建物の東側は、学校と地域とを結ぶ「まちにわ」とし、開放的な広場を設けます。 グランドは閉鎖的に囲い込むのではなく、建物と小山には子供と地域の人々が使える「通り庭」を設け、学校と「まちにわ」をつなげます。また、樹木を配置し、グランドと住宅地を仕切ると同時に、緩やかにつなげます。

敷地の条件 新しい気仙小学校の敷地は、三陸道路、住宅地・保育所に囲まれていることが特徴と考えます。東側に面した三陸道路からは騒音や粉じんの問題があり、その他は住宅地・保育所との間では同じく子供達の騒ぎ声やセキュリティ、防災が問題となります。

「まちにわ」と小山により学校と地域をゆるやかにつなぐ 建物はプール棟、教室棟、アリーナ棟、施設棟の大きな 4つの分棟を宿場町の路地を思わせる通路によってつないでいます。また、各棟の隙間は「通り庭」のようにグランドと「まちにわ」をつなぎます。 教室は2Fに配置し、海への眺望を確保するとともに、前面の広々としたテラスに自由に出ることができます。 施設棟、アリーナ棟は「まちにわ」から直接アクセスできるよう東側に配置し、「まちにわ」と一体となって誰もが気軽に使う事のできる「まちの広場」となります。 また、各棟をつなぐ通路は、通常は閉じてセキュリティを確保し、休日やイベント等の際には開放できるようにします。グランドを囲む小山は、安全性を考慮し三陸道路側は最も高く、山裾にいくにしたがって子供の身長程度にゆるやかに低くし、グランドと外部を滑らかにつなげます。

住宅地

三陸道グランド

保育園公民館

N

敷地南側外周道路との高低差がなく、自動車・バスは南側からアクセスします。

建物は住宅地側に配置し、校庭とまちのにわをつなぐ通りにわを設ける

敷地北側住宅地との高低差(約 4~ 6m)を利用して住宅地とグランドを自然に仕切ります。住宅地への日射を考慮し、建物は配置せず、また小山はだんだん低くしていきます。

敷地東側地域に開放した広場。外周道路に最大 1m程度の高低差があり、歩行車は階段を上ってアクセスします。

N

三陸道

自動車道に面する

高低差 5m

高低差 1m

高低差なし

保育園公民館

住宅地

教室2F に配置し海への眺望をとる

デッキテラス広場と一体的な利用を可能にする

プール

特別教室

家庭科室等

職員室

図書室

アリーナ

保健室等

多目的ホールまちにわ一般開放する諸室 (■) はまち側に配置

グランド小山と校舎に囲まれた校庭

路地オープンスペースとして教室と一体として使用可能

通りにわまちにわ と グランドをつなぐ

教室

児童室等

N

N

まちにわ と グランド をつなぐ「とおりにわ」 まちにわ から続くアリーナ

教室から海を臨む

妻入りと平入りが連続する宿場町の風景を受け継ぐ ( 俯瞰図 )

教室棟の路地からアリーナ方向をみる

一階平面図 1:1200 二階平面図 1:1200

■多様な学びができ、海への眺望を確保した教室計画生徒達が毎日学ぶ教室は、2階に配置し、海を眺望することができます。また教室の前の通り庭(廊下)と屋上庭園とを連携してフレキシブルな使い方が可能です。

駐車場

まちに開放する小学校単独で使用するオープンスペース

N N

通路は開閉可能とし「まちにわ」と教室間のセキュリティを確保します。

小高い緑の山が、三陸道路からの騒音や粉じんを軽減し子供達を守ります

ホール周辺に防災に対応する部屋( アリーナ・多目的ホール・保健室・家庭科室 ) を固め防災を図ります。

2階テラスはまちの広場から直接階段で上がることができ、一体的な利用を可能にします。

2階教室から海の眺望

吹抜けを設け1階への採光を確保

アリーナは、まちの広場・まちにわと連携して利用することができ、災害時には、周辺住民が活動しやすい地域の防災拠点となります

小山の間を通りグランドへ

■今泉地区の集落の風景を再生する 震災によって失われた江戸時代からつくり上げられてきた今泉地区の町並みを継承するよう、これから新たにつくられる町の修景を誘導するシンボルとして小学校を計画します。古い商家に見られる通りにわのような抜けを随所に計画します。また宿場町の風景の特徴である平入りと妻入りが連続する風景をつくりだします。■豊かな地域資源を利用する。 構造だけでなく、岩手県産の木材を内装・外装・家具など多く利用します。また外壁の一部を岩手の材料でできた漆喰にすることによって、気仙大工や左官の仕事を伝承します。

東側立面図

今泉海道の景観を継承する

地域産木材・地元の技術を活かすシンプルな木構造 本計画の構造は、一般的な木造住宅で用いられる「在来軸組工法」と「なまこ耐力壁」、「交叉トラス」を加えた3つの要素によるシンプルな構成です。 また、特殊な工法や複雑な技術開発が必要な構造ではなく、地元の材料(気仙杉)の使用や、一般的な技法で加工・製作が可能な方法を採用し、工期の短縮とコストダウンを図ります。 ■各諸室群の壁面 在来軸組工法(柱と筋交い)により構成し、さらに補強が必要な箇所は、なまこ耐力壁により補強を行っています。補強の程度によって、なまこ耐力壁の斜め材の間隔を調整します。■床/テラス 地域産無垢材を用いたジョイスト状の梁により構成します。■屋根 アリーナおよび屋内プールは交叉トラスによる大スパン架構、それ以外の2階居室群の屋根は在来軸組工法による屋根構造とします。

相欠き

在来軸組工法+なまこ耐力壁(部分的)

在来軸組工法ジョイスト梁床

在来軸組工法屋根交叉トラス構造屋根

   耐力壁の構造一般的な在来軸組工法による木造耐力壁+斜め材を格子状に組み合わせた「なまこ耐力壁」。 「なまこ耐力壁」は小径材を相欠きして組み合わせた斜め格子で、在来軸組の構面の外側に付加的に取り付けます。また、必要強度に応じ、格子の間隔を調整します。

   交叉トラス大きな天井高を確保しつつも、開こうとする力(スラスト)を小さく抑える事が可能な形状のトラスです。 1m程度の間隔で配置し、架構を表わしで見せるため部材の断面はもえしろ設計を行います。

   ジョイスト梁床梁床は無垢材を1m程度の間隔でジョイスト状に並べて構成します。 梁は小径材をダボ等で組み合わせることでもえしろを含む必要な断面を確保します。

在来軸組工法

なまこ耐力壁補強

1F

2F RF

在来軸組工法+なまこ耐力壁補強

2F 屋根

アリーナ

プール

特別教室

職員室

特別教室

普通教室

特別教室

妻入りと平入りが連続する屋根

グランドから校舎を望む

海からの涼しい風を取り入れる

日射遮蔽

日射遮蔽

屋根散水 ( 雨水 )

床下プナム

冷温水パイプ雨水槽井水槽 井水ヒートポンプ ( 冷温水 )

自然換気

散水在人時のみの冷房

ソーラーパネル 太陽熱収集

LED照明

タスクアンビエント照明

自然の力を利用する環境計画光、風、熱などの自然のエネルギーを十分に利用し、アクティブな機械設備をミニマム化できるように計画します。■LCCO2 を削減し維持管理のしやすい省エネルギー建物にランニングコストを削減するため、自然エネルギー(太陽熱、太陽光、自然換気、地熱、地下水、雨水など)を最大限利用します。木質バイオマスを利用し暖房します(チップ・ペレットボイラ)。■地域に安心をもたらす防災拠点に災害時の福祉避難所、応急介護所、ボランティア地区センターとしての開設に備えた計画とします。災害時に特化した設備を設けるのではなく、日常的に使用する設備・システムを簡単な操作で切り替えて、緊急時に対応できるシステムとします。

アリーナと一体で使えるまちの広場

屋外多目的広場で行われるイベント

エントランスとインフォメーションカウンター

屋島寺から商店街を抜け展望台が見えてくる 展示 1(歴史・文化学習展示)

展示 2(自然環境学習展示)

ビオトープ空間を見る

多目的ホール1から多目的ホール 2を見る

屋内景観展望スペースから瀬戸内海を望む

水の音を聞きながら屋上から景観を望む

屋上は屋島を見渡せる高台になっている

屋上に上がる階段。光が差し込んでくる展示 2から水の間を見る

水の音ーため池から生まれる水循環を有する屋島の自然環境を体現するサスティナブル建築ー

地球科学的に価値を持つ屋島の地形。その大地の遺産を保全し、教育やツーリズムに活用しながら、地域の持続可能な文化を構築する場を提案します。高松は降水量が非常に少なく、人々は、ため池によって、必要な水を補ってきました。建築の屋根部や敷地内にため池をはじめとした雨水循環の装置をつくり、人々が水の恵みを感じながら、人々の活動で溢れるひらかれた建築空間を提案します。本施設を訪れることで、屋島や瀬戸内海の自然と人との関わりを学ぶことができる屋上拠点施設です。

軟層部分が侵食される岩石の硬層部分メサのつくられ方

ビュートメサ

建築のつくられ方メサ

人工地盤

ため池をつくります 貯水槽

人間による侵食

水の間

帯水槽ができます

■屋島の周囲には、河川や湖がなく、人々は水を貯めることから生活を始めきました。新たな屋島山上に人々が集う場所も水を蓄えることからすべてが始まると考え、メサ地形の上に人工地盤によるため池をつくります。水盤の水は帯水槽へと導かれていきますが、途中堅いメサ地形の上に水が一時滞留し、周囲の地盤に浸食していきます。さらにお遍路を辿ってきた人々がこの水盤を回遊し始め、彼らの運動によって、地盤がすり鉢状に削り取られ、水盤は大地から浮遊する形態となっていきます。そして人の浸食作用から残った中央部には、水によって侵食され続けて生成した、人が入れる「水の間」が生まれます。「水の間」では上部から滴る水滴の音が鳴り響き、人々は変化する自然界の息吹を感じることができるのです。「水の間」の周囲にできた空間は、人々の活動であふれる場となり、屋上の水盤からは瀬戸内海を広く一望することができる集いの場となります。自然の侵食作用と人々の営み作用によって生まれた屋島を象徴する循環を中心とした建築を提案します。

メサ地形に連続する水盤から生まれる建築■長い歴史の中で、屋島は風雨によって大地が削り取られメサ地形という独特の島の形態がつくられてきました。この土地固有の

建築における水の循環

屋島における水の循環

便所洗浄水

中水利用

植栽散水

水道利用

農業用水

屋根散水

ため池

貯水

■年間を通じて比較的降水量が少ない瀬戸内海気候です。現代でも農業用水として屋島の周囲には、雨水をためるため池が多く存在し、風景の一部となっています。屋根形状はため池のように雨水をためる水盤の形態となっており、「水の間」に落ちる水滴が奏でる音はこの建築空間でしかできない体験を生み出します。

ため池による水循環の創出と音を奏でる水の間雨水を大切に扱う習慣を取り入れることで、水の音を奏でる建築をつくります

水の間平面イメージ 水による空間の移り変わり

少 多水量

■「水の間」は日本庭園に用いられる水琴窟の原理を応用して滴る水によって音を奏でる空間とし計画します。この水の音は、「水の間」の内部空間だけでなく、屋上の展望台、そして「水の間」周囲の人々の活動内部領域空間にも音を届けてくれます。屋上景観展望デッキ台では、人々が景観を楽しむだけでなく、水という自然現象が奏でる音を聞くことによって、屋島や目の前に広がる瀬戸内海の自然の循環を想像してもらうことを意図しています。「水の間」では、はじめに上部から落ちる水滴が、地域の特産であるかんかん石の床面に落ちて音が鳴り始め、床面に水が溜まると水滴が水面に当たることで室内で反響し、水の音に満ちた空間となります。「水の間」の空間形状は、音響効果を最適化するように導きます。

水盤と大地をつなぐ水の間 /水が音を奏でる

水の間断面イメージ 音のひろがり

音の広がり

■屋島には、四国八十八箇所霊場の第 84番札所である屋島寺があり、四国を回遊するお遍路道の一部にあり、多くの人々が訪れています。この回遊空間の一部である場所性を本計画では注目し、多くの回遊性を生み出す空間をつくることを考えました。

四国遍路の一部となる回遊式屋上展望空間屋島の回遊性を断絶しない、一本の遍路道を空間に取り入れます

水を蓄え人々の活力を与える長寿命な構造体地形とシェルの特性を活かす低コストで合理的な構造計画を目指します

柱 :101.6×9@2,000

RC 曲面壁t=200 ~ 300

RC シェルt = 250~4003.98

3.62

3.26

2.90

2.53

2.17

1.81

1.45

1.09

0.72

0.36

0.00

(単位:mm)

●たわみ解析図応力解析により規準に準拠した安全性の検討を行っています。最大たわみは弾性たわみで4mm以下におさえられています。

●屋根と鉄骨柱の接合部RC屋根は断熱、防水を行い、仕上げとして石材タイルを敷き詰め耐久性を高めます。 ●構造ダイアグラム

ガラス芯

□-100×100S.PL-22

STUD : M16D22

STP : D16@100

■シンプルで力の流れの明確な構造システム宙に浮かぶように持ち上げられた RC シェルの屋根、中央の水の間を囲う RCコア、外周に一定間隔でならぶ鉄骨柱の 3つの要素が、この建物の構造システムを構成します。本計画のコンセプトである「水を中心とした人の新たな活動」を表す形態がそのまま構造体となっており、力の流れの明確な構造計画です。■鉛直荷重・地震力・風圧力に対して鉛直荷重は外周の鉄骨柱と中央の RCコアが負担します。また、屋根が持つ椀状の形状は、屋根に高い剛性を付与し、たわみを抑制するシェル効果を発揮します。屋上では、大人数が自由な活動を展開できます。 地震力・風圧力は中央の RCコアが全て負担します。外周の鉄骨柱は軸力のみを負担し、視界を遮ることのない細い柱とします。■長寿命な構造体-雨水による中性化の回避屋上の水盤を構成するため、十分な鉄筋のかぶりを確保、密実なコンクリート打設を計画し、耐久性のあるシェルを作る施工計画とします。内部に水を引き込む際には、水盤エリアは鋼板を用いた防水を行い、雨水の貯水による RC躯体の中性化を防止します。■施工合理性・コスト本建物の断面計画は極力現状の地形・高低差を生かした形状です。掘削量と床付けの手間を最小限に押さえ、工期短縮とコスト削減に努めます。外力に対し総持ちで抵抗するシェルの特性を生かし、最小かつ最適なコンクリート打設計画、配筋計画とします。

ろ過

蒸発冷却により夏の室内空間のオーバーヒートを防ぎます

石垣と庇で南側の日射を遮断します

夏は庇で日射を遮る昼光および冬の日射はハイサイドで取り入れます

中水槽 ( オーバーフロー )

水面と深い庇を用いて光を入れます

蒸発冷却により自然換気の期間の気温を冷やします温冷水床冷暖房による快適な空間

夏 南

自然環境を最大限利用したエネルギーコストを低減するサスティナブルな環境計画建築瀬戸内の太陽、風、水といった気候に寄り添った、屋島ならではの環境建築を目指します 

■水と風が作り出す水の間および水景は、建物の上部を冷やし、内部の空気を冷やす環境装置としても機能します。■貴重な水資源に配慮し、水景を利用して雨水を回収し、水景や植栽潅水、便所洗浄水への再利用を行います。■海沿いの安定した風をうまく取り込めるよう、南北の開口を工夫し、自然換気による心地よい空間を作り出し、特定の機能が求められる室以外は半屋外的に使用しても問題ない環境とします。■空調が必要な室には、躯体をそのまま活用した温冷水式床冷暖房によりコストを抑え、快適な環境を作り出します。■ため池と天井面の反射を利用した自然採光、庇や樹木、地形によって日射を防ぎつつ自然光を効率よく取り入れるハイサイドライトなどにより、エネルギーを使わずに明るい空間を実現します。

広場展望デッキ

水の間

貯水

植栽散水等の中水利用

夏季の屋根散水トイレの洗浄水

ビオトープ

井戸水

ろ過

水の流れと利用方法

屋外展望広場 2

南側断面図 1:200

A

A’

本市の文化観光情報案内設備が充実したエントランスホールです多目的ホール 2

100 ㎡

多目的ホール 165 ㎡

展示室 3(仮設展示室)55㎡ 展示室 2(自然環境学習展示)

50㎡

GL+590 GL+590

GL+590

GL+140

GL+140

GL-10

GL-460

GL-460

GL-610

GL-610

GL-610GL-10

展示室 1(歴史・文化学習展示)45㎡

エントランスホール(特産品展示)

インフォメーションセンター

屋外多目的広場

屋外展望広場 1

水盤

GL+1790

GL+3590GL+3390

GL+3290

GL-210

GL+690

GL-610

GL-410

GL-210

GL-10

GL+190

GL+390

GL+590

GL+790

GL+990

GL+1390

GL+1190

GL+1590

GL+2890GL+2290

GL+1990GL+1790

GL+1590

GL+2690

GL-410

GL-1810

GL-1610

GL-1410

GL-1410

GL-1210

GL-1010

GL-810

GL+1790

GL+1990

GL+1290

GL+1290

GL+1290

GL+1290

GL+1990

GL+1990

芝生広場

厨房

物販コーナー

WC3( 障害者用 )

授乳室

スタッフルーム

器材収納庫

カフェ(飲食スペース兼給水室)

屋内景観展望スペース・

90㎡

120 ㎡

13 ㎡

6㎡

6㎡

10 ㎡

10 ㎡

機械室8㎡

10 ㎡WC2( 女性用 )

60 ㎡

休憩室(水の間)

10㎡WC1( 男性用 )

EV

瀬戸内海の風景を眺められるカフェスペース

建具で仕切ることで、エントランスと屋内景観展望スペースを半屋外空間として使用できる

太陽の軌道や用途に応じて庇を伸ばします

野外活動の拠点となる広場野外でくつろぎながら眺望を望めます

傾斜のついた芝の丘では、子供たちが元気に遊ぶ中で屋島からの眺望を臨むことができます

用途に応じて水を抜き、イベント広場として使えます

屋上から接続する丘

・石垣は、敷地内で発生した石垣を再利用します・地形の一部が室内に入り込み、自然と一体的な内観となります

地形が低いこの場所には水が溜まり、多様な植生が存在します

屋島で取れる石を使用し、日本庭園のような石の庭をつくります

屋根からオーバーフローした雨水が地形の流れによってこの池に溜まります

屋上へ

ビオトープの庭

丘の広場

ため池

石垣

1/15 勾配スロープ

1/12 勾配スロープ

機材搬入動線

屋上へ

内部、外部、屋上と連続してフレキシブルに利用できる屋島の屋上回遊空間屋島の気候条件を反映することでできる様々な外部空間を提案します

水の間を中心に回遊性を持つ内外が連続するランドスケープと一体的な空間を計画します。敷地の周囲に、連続する性格の異なる外部スペースを計画し、内部と外部とを連続的に利用できる空間を計画します。敷地北西側には、内部のエントランスホール、屋内展望スペースと一体的に利用できる野外活動の拠点となる屋外多目的広場、屋外景観展望デッキとをつなげて計画します。エントランスホール、展望スペースは、扉を解放することで、外部空間と一体となった外部的な利用も可能です。南側には起伏のある芝生広場を計画し、人々は憩うことができ、瀬戸内海を一望できます。敷地東側には、周辺の木々と繋がるビオトープの庭を計画し、自然展示の一部とするなど内部の展示空間と一体的な利用をすることが可能です。

配置図兼平面図 1:200

0 20(m)2 6 10

面積表建築面積  670.55 ㎡建蔽率    19.7%延べ床面積 855.99 ㎡容積率   25.18%

平均地盤+1000

建築面積不加算エリア185.437 ㎡ = GL(平均地盤より +1000 以下の天井高を建築面積から除く)

- =

855.99 ㎡ 185.44 ㎡ 670.55 ㎡

屋島寺市街地

屋島の回遊

屋島山頂の回遊

■施設自体も、「水の間」を中心に、エントランスホール、展示室、多目的室、展望室さらには、屋上展望広場に至るまで、ぐるっと回遊できるワンルームのプランです。

屋上の水盤から望む瀬戸内の絶景

浮かびあがる水盤 内外を連続する人々の活動

広場を大きくつかう

連続した地形で屋上と丘が一体の外部展示ができる

展示室 3と多目的ホールを一体に使い、小学生の研修やハンズオン展示の場所としても機能する

瀬戸内芸術祭時には屋内のワンルーム空間、屋上展望スペース 、 屋外の各スペースを一体的に利用した展示が可能

廃棄物質再生による建築に関する研究 と 建築部材実験

現在、我々は大量生産、大量消費の社会で生活を送り、大量の廃棄物を出している。建設業界でも多くの生産、廃棄が行われている。その一方で、建設コスト高騰により住宅を建てにくい現状がある。この流れに即し近年、安価な住宅などが求められる傾向がある。また、被災地では被災時から復興にかけ建築資材の不足がおこる。実際、東日本大震災から3年が経過し、復旧・復興事業が本格化している中、被災地では資材の不足が復興の足かせになっている。そのようなローコストや資材不足の建築に対し、世の中に溢れる廃棄物を建設資材として利用する可能性を研究するものとする。

現在、我々は大量生産、大量消費の社会で生活を送り、大量の廃棄物を出している。建設業界でも多くの生産、廃棄が行われている。その一方で、建設コスト高騰により住宅を建てにくい現状がある。この流れに即し近年、安価な住宅などが求められる傾向がある。また、被災地では被災時から復興にかけ建築資材の不足がおこる。実際、東日本大震災から3年が経過し、復旧・復興事業が本格化している中、被災地では資材の不足が復興の足かせになっている。そのようなローコストや資材不足の建築に対し、世の中に溢れる廃棄物を建設資材として利用する可能性を研究するものとする。

3.2 廃棄物の性質と廃棄物再生利用の可能性

3.1であげた事例をみると廃棄物が使われる際、廃棄物の特性を生か

した「工法」「意匠」「構造」「環境」の 4点の使用方法が顕在化される。

また廃棄物は建築資材としてつくられたものでないため、その他の材

料で廃棄物にない性能を補っていることがわかる。

この「工法」「意匠」「構造」「環境」の 4 点に注目し、2.2.2 で示し

た廃棄物の素材を整理すると表-2 の廃棄物性質分類表を作成する。廃

棄物の性質を 4 つの性能で分別することで、各廃棄物が持つ性能と抜

け落ちている性能を確認することができる。

表-2 廃棄物性質分類表

第四章 廃棄物利用による建築部位の検討

4.1 廃棄物から見た温室効果壁の検討

4.1.1 瓶の性質からみる建築の検討

例として廃棄瓶の建築への利用を考える。瓶が廃棄物として出てい

る状況下で、それをどのように利用するか作成した廃棄物性質分類表

から考察する。瓶の性質として、意匠、環境的な利用可能性が高い。多

様な色が存在すること、光を通すことから壁面に瓶を使うことと、光線

の影響を受けやすいことから熱環境の性質利用が考えられる。壁を作

成する上で、瓶の性質では工法、構造が成り立たないため、その他の素

材でその部分を補う必要がある。

4.1.2 瓶を含むコンクリート壁の温度変化実験

工法、構造を補うものにコンクリートを利用し、瓶を含むコンクリ

ート壁を作成した。熱環境の性質を持つ壁の検討実験として①気温と

何も加工されていない瓶の内部温度の温度変化比較(図-1)、②瓶を含

むコンクリート壁の気温、瓶内部温度、コンクリート面の温度比較(図

-2)を行った。この際、瓶の口から温度計を入れ、粘土で口を塞いだ。

図-1 気温と瓶内部温度の比較 図-2瓶を含むコンクリート壁温度変化比較

実験①では、太陽に当たっている状態で瓶内部は太陽光線の影響を

受け、最大で 16度温度が上昇した。実験②の状態と比較すると瓶の太

陽光線を受ける面積が小さくなったこと温度上昇は少なくなった。太

陽が落ちるとコンクリーとは気温以下になるが、瓶は気温に近づいて

いていることが分かる。この実験から冬の昼間瓶で生成した熱を室内

に放出することが考えられる。しかし断熱性が少ないため、夏の対処、

冬の夜の対処を共に考えなく他はならない。

4.1.2 瓶による室内温度変化実験

瓶が室内にあたえる影響を確認するための実験を行う。瓶一本が

0.064 ㎥に対してどのような影響を与えるか図るために 40×40×40 の

ボックスを 2 つつくり、一方には瓶を挿し、一方は比較対象として何

もしないもの、また瓶の内部温度が比較できるものを用意した。これか

ら実験を行い室内への影響を考察する。

4.2 必要性質からみた冷房床の検討

4.2.1 zeer potについての分析

zeer potとはアフリカ発明された非電化冷蔵庫である。つくり方は

大きい鉢の中に小さい鉢を入れ、その間に土を入れ、その土を水で浸

す。水の気化熱により鉢が冷やされ冷蔵庫の役割をするものである。土

を入れることで水を分散させ水からの気化熱が土に伝わり、その熱が

鉢に伝わる。冷えた熱が鉢に伝わり易いように、土より鉢の熱伝導率が

高いことが条件部となっていると考えられる。また鉢は多孔質であり、

保温性が高い。その性質により鉢が一回冷えると温まりにくくなって

いると考えられる。よって水の気化による冷却条件として、多孔質であ

ること、土以上に熱伝導率がいいことが予想される。現在、考察を実証

するため実物をつくり実験により分析中である。

通常の zeer pot と土を水に変えたものを比較し土の効果を検証する

4.2.2 性質から見る建築応用

zeer pot の原理を利用し、冷却効果のある建築を考察する。鉢にか

わる素材として、多孔質であること、土以上に熱伝導率がいいことが条

件であると考えられる。廃棄物性質分類表からそのような性質のもの

を探すとレンガが当てはまる。レンガは圧縮に強いため床材の利用を

考える。

4.2.3 冷房床温度変化実験についての検証

今後モックアップを作成し、冷房床の効果を検証していく。

第五章 結章

廃棄物質再生の可能性として廃棄物質分類表を作成した。廃棄物の

分類により、廃棄物の持ちうる性質が可視化できる。廃棄物の特出すべ

き性質使った建築が出ることにより、ローコストや被災に対応する住

環境の改善が見られるだろう。 参考文献 東京都環境局 廃棄物と資源循環

環境省 平成 25年版 環境循環社会・生物多様性白書

環境省 一般廃棄処理事業実態調査の結果(平成 23年度)について

廃棄物質再生による建築に関する研究

所属研究室 芦澤竜一研究室 学籍番号 1113004 氏名 大野 宏

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

第一章 序章

1.1 研究背景

現在、我々は大量生産、大量消費の社会で生活を送り、大量の廃棄

物を出している。建設業界でも多くの生産、廃棄が行われている。そ

の一方で、建設コスト高騰により住宅を建てにくい現状がある。この

流れに即し近年、安価な住宅などが求められる傾向がある。また、被

災地では被災時から復興にかけ建築資材の不足がおこる。実際、東日

本大震災から3年が経過し、復旧・復興事業が本格化している中、被

災地では資材の不足が復興の足かせになっている。そのようなローコ

ストや資材不足の建築に対し、世の中に溢れる廃棄物を建設資材とし

て利用する可能性を研究するものとする。

1.2 研究目的

本研究は、社会に溢れる廃棄物の建設資材としての利用方法を、事

例から調査・分析し、建築への転換の可能性を見つけ出す。また研

究・実験により廃棄物の有効的な利用方法を提示することによって、

今後新たな設計資料のひとつとして廃棄物の利用可能性を提案する。

1.3 研究意義

あらゆる場所に存在する廃棄物を資源化することにより、廃棄物

がローコスト住宅の資源や被災に対応する建築となることを示す。

第二章 廃棄物

2.1 廃棄の現状

2.1.1 ごみ総排出量とリサイクル率

平成 25年度におけるごみ総排出量は 4539万トン、1 人 1日当た

りのごみの排出量は 975 グラムである。今まで減少傾向にあったこの

数値は平成 23 年度から殆ど横這いである。また増加傾向であったリ

サイクル率も平成 20 年度から殆ど横這いであり、減少傾向にあった

最終処分量は横這い状態となっている。このような状況において廃棄

物の再資源化を考え直す必要がある。

ごみ総排出量の推移 リサイクル率の推移

2.1.2 リサイクルの現状と再物質化

リサイクルするための過程で大量のエネルギーを消費し、リサイク

ルでないものより費用がかかり、品質が落ちるということが指摘され

る。このような廃棄物を再資源化するリサイクルではなく、廃棄物を再

物質化することで、エネルギーや費用を比較的小さくする。また廃棄物

の性質を生かし過去の使用と違う用途に変換することで、廃棄物のメ

リットを引き出すことが可能である。

2.2 廃棄物着目

2.2.2 廃棄物の性質

廃棄物質の素材に注目し、各素材がそれぞれどのような特徴を持つ

のか明らかにことで、廃棄物の利用可能性を考察する。表-1 ではその

一例を示す。

表-1 廃棄物と性質

第三章 再生物質化

3.1 廃棄物再利用事例

3.1.1 段ボールシェルター

シェルターとしての事例。持ち運べるシェルターとして簡易な工法

と休息をとるための熱環境が求められる。使用材料として加工容易で

ある性質と断熱性能が高いダンボールを利用し、工法面と環境面の性

質を生かしている。

3.1.2 空き缶による壁面仕上げ

壁面仕上げ材の事例。壁面の仕上げ材として耐久性、耐水性が求めら

れる。使用材料として耐水性がある空き缶が利用されている。ここでは

様々色の缶がランダムに配置され意匠的なデザインが大きく感じられ

る。工法としては釘が利用されている。

3.1.3 廃棄パレットを利用した倉庫

倉庫の壁面、構造体の事例。強度を持たせるために強い材料でつく

られたパレットの性質を利用し構造を含む壁面に利用されている。南

面は隙間をつくりガラスを入れることで室内に光を入れている。

3.1.4 藁を利用した断熱壁

建物の壁面の事例。藁を束とすることで多くの空気層をつくり、その

上から土を塗り環境的に断熱性を高めている例である。構造としては、

木材を入れ藁を支えている。

-2

0

2

4

6

8

10

12

14

16

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22

気温 瓶内部温度 コンクリート南面 コンクリート北面

5.5

8.5 8

54

3 3

8.6

16

24

5.2

4

3 3

0

5

10

15

20

25

30

35

14 15 16 17 18 19 20

気温 瓶内部温度

瓶を含むコンクリート壁の温度変化実験 工法、構造を補うものにコンクリートを利用し、瓶を含むコンクリート壁を作成した。熱環境の性質を持つ壁の検討実験として①気温と何も加工されていない瓶の内部温度の温度変化比較 ( 図 -1)、②瓶を含むコンクリート壁の気温、瓶内部温度、コンクリート面の温度比較 ( 図 -2) を行った。この際、瓶の口から温度計を入れ、粘土で口を塞いだ。

 工法、構造を補うものにコンクリートを利用し、瓶を含むコンクリート壁を作成した。熱環境の性質を持つ壁の検討実験として①気温と何も加工されていない瓶の内部温度の温度変化比較 ( 図 -1)、②瓶を含むコンクリート壁の気温、瓶内部温度、コンクリート面の温度比較 ( 図 -2) を行った。この際、瓶の口から温度計を入れ、粘土で口を塞いだ。

モルタル

モルタル

放熱

熱をつくる

■瓶の性質

■廃棄瓶の利用

■太陽光を当てた状態での瓶内部の気温変化

ダンボール  アルミ缶  木材  藁 瓶 レンガ

工法 意匠 構造 環境

備考

軽量・錆びにくい

0.4

203

0.55~1.1

空気を浄化する

光線の影響を受けやすい

加工が容易

積層可能

変形しやすい

多様色

強度がある

弾力性がある

耐火性がある

断熱性がある

防音性がある

光を通す

気密性が高い

熱伝導率

耐水性がある

光を通す → 壁面の利用 光線の影響を受けやすい → 瓶中で熱をつくる光を通す → 壁面の利用 光線の影響を受けやすい → 瓶中で熱をつくる

瓶を含むコンクリート壁の温度変化実験

 太陽に当たっている状態で瓶内部は太陽光線の影響を受け、最大で 16 度温度が上昇した。実験②の状態と比較すると瓶の太陽光線を受ける面積が小さくなったこと温度上昇は少なくなった。太陽が落ちるとコンクリーとは気温以下になるが、瓶は気温に近づいていていることが分かる。この実験から冬の昼間瓶で生成した熱を室内に放出することが考えられる。しかし断熱性が少ないため、夏の対処、冬の夜の対処を共に考えなく他はならない。

 太陽に当たっている状態で瓶内部は太陽光線の影響を受け、最大で 16 度温度が上昇した。実験②の状態と比較すると瓶の太陽光線を受ける面積が小さくなったこと温度上昇は少なくなった。太陽が落ちるとコンクリーとは気温以下になるが、瓶は気温に近づいていていることが分かる。この実験から冬の昼間瓶で生成した熱を室内に放出することが考えられる。しかし断熱性が少ないため、夏の対処、冬の夜の対処を共に考えなく他はならない。

図 -1 気温と瓶内部温度の比較  図 -2 瓶を含むコンクリート壁温度変化比較

実際に左の写真のように土の上にレンガを敷き温度変化を確かめた。外気温 22.5℃坪内部温度 20℃  坪内部表面温度 18.5℃ 湿った土の上のレンガ床表面温度 19℃  乾いた土の上のレンガ床表面温度 22℃レンガ表面温度は湿った土のレンガは冷えたことから冷却効果を持つ冷房床の作成は可能である。

実際に左の写真のように土の上にレンガを敷き温度変化を確かめた。外気温 22.5℃坪内部温度 20℃  坪内部表面温度 18.5℃ 湿った土の上のレンガ床表面温度 19℃  乾いた土の上のレンガ床表面温度 22℃レンガ表面温度は湿った土のレンガは冷えたことから冷却効果を持つ冷房床の作成は可能である。

気化熱の原理を利用し、冷房効果をもつ床を作成する。

レンガ

■pot in pot の分析

水分を多く含んだ砂

冷える

気化

必要性質多孔質:保温性が高く、鉢が一回冷えると温まりにくくなっている。土以上に熱伝導率が良い:陶器が一番冷えやすい状態にある。

実際に pot in pot を作成し、土の効果などを検証中

■建築

廃棄物レンガ:多孔質       熱伝導率が良い     強度がある ( 圧縮に強い )

仕上げ材通気性が必要

水を多く含む土

気化

熱の移動

レンガを利用した床の冷却実験

アフリカで非電化冷蔵庫として利用されている pot in pot

熱の移動

Tel : +81 80 6133 4624Mail: [email protected]