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フィボナッチ数列に現れる平方数は 1 と 144 だけであることの証明 フィボナッチ数列とは フィボナッチ数列 とは,「前の 2 つの数を加えると次の数になる」という数列です。 ただし,1 番目と 2 番目の数は両方とも1です。 1, 1, 1 + 1 = 2 ですから,3 番目の数は 2 になります。 1, 1, 2, 1 + 2 = 3 ですから,4 番目の数は 3 です。 1, 1, 2, 3, 5 番目の数は,2 + 3 = 5 です。 1, 1, 2, 3, 5, このようにしてできる数列が,「フィボナッチ数列」です。 12 番目までのフィボナッチ数列は,次のようになります。 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, … 12 番目までのフィボナッチ数列の中に,平方数は何個現れているでしょう。 12 番目までには,1 番目と 2 番目に "1",12 番目に "144"という平方数が現れています。 "1" と "144"の,2 種類の平方数が現れているわけですね。 では,13 番目以降には,どんな平方数が現れるでしょうか。 実は,どんなにフィボナッチ数列を書いていっても,13 番目以降には永遠に平方数は現れ ないのです。 このことは,西暦 1964 年にコーンさんによって証明されました。 このページでは,その コーンさんの証明の内容を見ていきます。ただし,初等数学の知識で 理解できるように,(行間を読み取らなくてよいように,)証明を少し変えてあります。 1/81 ページ

フィボナッチ数列に現れる平方数は 1 と 144 だけであ …suguru.jp/Fibonacci/Fibonacci_square.pdf · 参考文献 次の書籍やウェブサイトを参考にしました。

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フィボナッチ数列に現れる平方数は 1 と 144 だけであることの証明

 フィボナッチ数列とは

フィボナッチ数列 とは,「前の 2 つの数を加えると次の数になる」という数列です。

 ただし,1 番目と 2 番目の数は両方とも1です。

   1, 1,

 1 + 1 = 2 ですから,3 番目の数は 2 になります。

   1, 1, 2,

 1 + 2 = 3 ですから,4 番目の数は 3 です。

   1, 1, 2, 3,

 5 番目の数は,2 + 3 = 5 です。

   1, 1, 2, 3, 5,

 このようにしてできる数列が,「フィボナッチ数列」です。

 12 番目までのフィボナッチ数列は,次のようになります。

   1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, …

 12 番目までのフィボナッチ数列の中に,平方数は何個現れているでしょう。

 12 番目までには,1 番目と 2 番目に "1",12 番目に "144"という平方数が現れています。

"1" と "144"の,2 種類の平方数が現れているわけですね。

 では,13 番目以降には,どんな平方数が現れるでしょうか。

 実は,どんなにフィボナッチ数列を書いていっても,13 番目以降には永遠に平方数は現れ

ないのです。

 このことは,西暦 1964 年にコーンさんによって証明されました。

 このページでは,その コーンさんの証明の内容を見ていきます。ただし,初等数学の知識で

理解できるように,(行間を読み取らなくてよいように,)証明を少し変えてあります。

1/81 ページ

 参考文献

   次の書籍やウェブサイトを参考にしました。

フィボナッチ数の小宇宙(ミクロコスモス)―フィボナッチ数、リュカ数、黄金分割

 フィボナッチ数列の中の平方数に関して完全に解説している,日本で唯一無二の本かも知れ

ません。

素数が奏でる物語 2つの等差数列で語る数論の世界 (ブルーバックス)

 「平方剰余の相互法則の第一補充法則」というカッコいい名前の法則を,この本で理解できま

した。

素数はめぐる 循環小数で語る数論の世界 (ブルーバックス)

  循環小数についての本はいろいろ読みましたが,素数との関係がわかりやすく書かれた本

です。

世界は2乗でできている 自然にひそむ平方数の不思議 (ブルーバックス)

  フィボナッチ数列の中の平方数に関する証明の概略が書いてあり,霧が晴れた気持ちにな

りました。

144:フィボナッチ数と平方数(http://integers.hatenablog.com/entry/2015/12/18/000000)

  フィボナッチ数列と平方数に関して,完全に証明しているサイトです。

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 証明の大まかな流れ

フィボナッチ数列に現れる平方数は 1 と 144 だけである ことの証明は,次のような流れ

で進んでいきます。

第 1 章 フィボナッチ数列を,拡張フィボナッチ数列にします。

第 2 章 リュカ数列と,拡張リュカ数列を定義します。

第 3 章 18 個の予備の定理を証明します。

第 4 章 素因数分解に関する定理を証明します。

第 5 章 リュカ数列に現れる平方数は,1 と 4 だけであることを証明します。

第 6 章 リュカ数列に現れる「 2 ×平方数」は,18 だけであることを証明します。

第 7 章 <最終定理>

      フィボナッチ数列に現れる平方数は,1 と 144 だけであることを証明します。

3/81 ページ

 第 1 章 フィボナッチ数列を,拡張フィボナッチ数列にします。

 フィボナッチ数列の定義 

 「フィボナッチ数列」とは,1 番目と 2 番目が 1 で,3 番目からは,「前の 2 つの数を加えると

次の数になる」という数列です。

   1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, …

 フィボナッチ数列の 1 番目が 1 であることを, と表すことにします。

 2 番目も 1 ですから, です。

 3 番目は 2 ですから, です。

 同じように考えると,次のようになります。

……

 前の 2 つの数を加えると次の数になるのですから, を自然数として,

<フィボナッチ数列の定義>

 となります。

 拡張フィボナッチ数列とは 

 ところで,たし算の逆はひき算ですから,たとえば から,

となります。

 同じように考えれば, ……を定義することができて,次のよう

になります。

 …………

4/81 ページ

 このように, ……だけでなく, ……もふくめ

た,

   …… ……

を,拡張フィボナッチ数列 と名付けることにします。

 拡張フィボナッチ数列の定理 

 先ほど名付けた拡張フィボナッチ数列を,Fn と F-n とをくらべやすいように整理すると,次の

ようになります。

   ………    ………

が奇数のときは, で, が偶数のときは, となっているようです

ね。

 つまり,

<拡張フィボナッチ数列の定理>

が 0 以上の整数のとき, が成り立つ。

 (証明) に関する数学的帰納法で証明します。

のとき,

 左辺 = ,

 右辺 = なので,成り立っています。

のとき,

 左辺 = ,

 右辺 = なので,成り立っています。

のときと, のときに,与式が成り立っていると仮定します。つ

まり,

(…「仮定式①」と名付けます)

5/81 ページ

と,

(…「仮定式②」と名付けます)

が,成り立っていると仮定するのです。

 このときに, のときの式である,

(…「証明すべき式」と名付けます)

が成り立つことを証明すれば,完成です。

 ところで,

です。 (∵フィボナッチ数列の定義)

に を代入すると,

 式を整理して,

 移項して,

 上の式を利用して,

 「証明すべき式」の右辺

(∵上の式を利用)

(∵分配法則)

(∵ )

(∵ )

(∵仮定式①,仮定式②)

(∵フィボナッチ数列の定義)

=「証明すべき式」の左辺

 よって, のときの式と, のときの式を仮定したときに,

のときの式が成り立つので,数学的帰納法により,<拡張フィボ

ナッチ数列の定理>が成り立つことがわかりました。

(証明終)

6/81 ページ

 第 2 章 リュカ数列と拡張リュカ数列を定義します。

 「フィボナッチ数列」 とは,「 1 番目が 1, 2 番目も 1 で,3 番目からは,前の2つの数を加える

と次の数になる」 という数列でした。(→フィボナッチ数列の定義)

 「リュカ数列」 は,「前の2つの数を加えると次の数になる」 というところはフィボナッチ数列と

同じで,1 番目の数は 1 であることもフィボナッチ数列と同じですが,2 番目が 1 ではなく,3 で

あることが,フィボナッチ数列と違います。

 リュカ数列は,次のように定義されます。

<リュカ数列の定義>

 リュカ数列を 1 番目から 10 番目まで書くと,次のようになります。

   1, 3, 4, 7, 11, 18, 29, 47, 76, 123,…

 リュカ数列も,拡張フィボナッチ数列のように拡張することができます。

 …………

 このように, ……だけでなく, ……もふくめた,

   …… ……

を,拡張リュカ数列 と名付けることにします。

 拡張リュカ数列の定理 

 先ほど名付けた拡張リュカ数列を,Ln と L-n とをくらべやすいように整理すると,次のように

なります。

   ………    ………

7/81 ページ

が偶数のときは, で, が奇数のときは, となっているようですね。

 つまり,

<拡張リュカ数列の定理>

が 0 以上の整数のとき, が成り立つ。

 (証明)  証明の内容は,<拡張フィボナッチ数列の定理> とほとんど同じです。

に関する数学的帰納法で証明します。

のとき,

 左辺 = ,

 右辺 = なので,成り立っています。

のとき,

 左辺 = ,

 右辺 = なので,成り立っています。

のときと, のときに,与式が成り立っていると仮定します。つ

まり,

(…「仮定式①」と名付けます)

と,

(…「仮定式②」と名付けます)

が,成り立っていると仮定するのです。

 このときに, のときの式である,

(…「証明すべき式」と名付けます)

が成り立つことを証明すれば,完成です。

 ところで,

です。 (∵リュカ数列の定義)

に を代入すると,

 式を整理して,

 移項して,

8/81 ページ

 上の式を利用して,

 「証明すべき式」の右辺

(∵上の式を利用)

(∵分配法則)

(∵ )

(∵ )

(∵仮定式①,仮定式②)

(∵リュカ数列の定義)

=「証明すべき式」の左辺

 よって, のときの式と, のときの式を仮定したときに,

のときの式が成り立つので,数学的帰納法により,<拡張リュカ

数列の定理>が成り立つことがわかりました。

(証明終)

 リュカ数列は,「フィボナッチ数列に現れる平方数は 1 と 144 だけである証明」に,大変重要

な働きをします。

9/81 ページ

  第 3 章 18 個の予備の定理を証明します。

 第 5 章以降の定理を証明するためには,18 個の予備の定理を証明する必要があります。

 証明には数学的帰納法を使ったものが数多くあります。

 通常の数学的帰納法は,次のようにして,すべての自然数 に対して定理が成り立つことを

証明します。

• のときに定理が成り立つのを証明する。

• のときに定理が成り立つのを証明する。

• のときと, のときに定理が成り立つことを仮定すると,

のときに成り立つことが証明できる。

 しかし,拡張フィボナッチ数列や,拡張リュカ数列の定理の場合は, の場合も証明しなく

てはならないので,次の場合にも成り立つことを証明しなければなりません。

• のときと, のときに定理が成り立つことを仮定すると,

のときに成り立つことが証明できる。

 また, が自然数ではなく,マイナスをふくめたすべての整数を表している場合は, の

ときと のときに定理が成り立つことを証明しなくても,たとえば のときと の

ときのように,連続していればどんな 2 つの整数を使っても構いません。

 では,18 個の予備の定理を 1 つずつ,証明していきましょう。

10/81 ページ

<定理 3-1>

が整数のとき,

 (証明) に関する数学的帰納法で証明します。

のとき,

 左辺 = , (∵リュカ数列)

 右辺 = , (∵拡張・フィボナッチ数列)

 左辺=右辺 なので,成り立っています。

のとき,

 左辺 = , (∵リュカ数列)

 右辺 = , (∵フィボナッチ数列)

 左辺=右辺 なので,成り立っています。

のときと, のときに,与式が成り立っていると仮定します。つ

まり,

(…「仮定式①」と名付けます)

と,

(…「仮定式②」と名付けます)

が,成り立っていると仮定するのです。

 このときに, のときの式である,

(…「証明すべき式①」と名付けます)

と, のときの式である,

(…「証明すべき式②」と名付けます)

が成り立つことを証明すれば,完成です。

 「証明すべき式①」の左辺

(∵リュカ数列の定義)

(∵仮定式①,仮定式②)

(∵交換)

(∵フィボナッチ数列の定義)

=「証明すべき式①」の右辺

 また,フィボナッチ数列の定義により,

 式を変形して,

11/81 ページ

 変形した式の に を代入して,

(…途中式①と名付けます)

 変形した式の に を代入して,

(…途中式②と名付けます)

 さらに,リュカ数列の定義により,

 式を変形して,

 この式の に を代入して,

(…途中式③と名付けます)

 「証明すべき式②」の左辺

(∵途中式③)

(∵仮定式①,仮定式②)

(∵交換)

(∵途中式①,途中式②)

=「証明すべき式②」の右辺

 よって, のときの式と, のときの式を仮定したときに,

のときの式と のときの式が成り立つので,数学的帰

納法により,<定理 3-1>が成り立つことがわかりました。

(証明終)

12/81 ページ

<定理 3-2>

が整数のとき,

 (証明) に関する数学的帰納法で証明します。

のとき,

 右辺

(∵拡張フィボナッチ・拡張リュカ数列)

=左辺 なので,成り立っています。

のとき,

 右辺

(∵フィボナッチ・リュカ数列)

(∵定理 3-1)

(∵結合法則)

(∵フィボナッチ数列の定義)

=左辺 なので,成り立っています。

のときと, のときに,与式が成り立っていると仮定します。つ

まり,

(…「仮定式①」と名付けます)

と,

(…「仮定式②」と名付けます)

が,成り立っていると仮定するのです。

 このときに, のときの式である,

(…「証明すべき式①」と名付けます)

と, のときの式である,

(…「証明すべき式②」と名付けます)

が成り立つことを証明すれば,完成です。

 「証明すべき式①」の右辺

(∵フィボナッチ,リュカ数列の定義)

(∵分配法則)

13/81 ページ

(∵交換)

(∵仮定式①,仮定式②)

(∵分配法則)

(∵フィボナッチ数列の定義)

=「証明すべき式①」の左辺

 「証明すべき式②の右辺」

(∵フィボナッチ,リュカ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵交換)

(∵仮定式②,仮定式①)

(∵分配法則)

(∵フィボナッチ数列の定義)

=「証明すべき式②の左辺」

 よって, のときの式と, のときの式を仮定したときに,

のときの式と のときの式が成り立つので,数学的帰

納法により,<定理 3-2>が成り立つことがわかりました。

(証明終)

14/81 ページ

<定理 3-3>

が整数のとき,

 (証明) に関する数学的帰納法で証明します。

のとき,

 右辺

(∵拡張フィボナッチ・拡張リュカ数列)

=左辺 なので,成り立っています。

のとき,

 右辺

(∵フィボナッチ・リュカ数列)

(∵5=4+1, 定理 3-1)

(∵結合法則)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵ 1+1=2)

(∵4=2+2)

(∵分配法則)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵定理 3-1)

=左辺 なので,成り立っています。

のときと, のときに,与式が成り立っていると仮定します。つ

まり,

(…「仮定式①」と名付けます)

と,

(…「仮定式②」と名付けます)

が,成り立っていると仮定するのです。

 このときに, のときの式である,

(…「証明すべき式①」と名付けます)

と, のときの式である,

(…「証明すべき式②」と名付けます)

15/81 ページ

が成り立つことを証明すれば,完成です。

 「証明すべき式①」の右辺

(∵フィボナッチ・リュカ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵交換)

(∵仮定式①,仮定式②)

(∵分配法則)

(∵リュカ数列の定義)

=「証明すべき式①」の左辺

 「証明すべき式②の右辺」

(∵フィボナッチ・リュカ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵交換)

(∵仮定式②,仮定式①)

(∵分配法則)

(∵リュカ数列の定義)

=「証明すべき式②の左辺」

 よって, のときの式と, のときの式を仮定したときに,

のときの式と のときの式が成り立つので,数学的帰

納法により,<定理 3-3>が成り立つことがわかりました。

(証明終)

16/81 ページ

<定理 3-4>

が整数のとき,

 (証明) が偶数の場合と奇数の場合に分けて証明します。

 < が偶数の場合>

として, ですから,

を証明すればよいことになります。

に関する数学的帰納法で証明します。

のとき,

 左辺

(∵フィボナッチ数列)

=右辺 なので,成り立ちます。

のときに,与式が成り立っていると仮定します。つまり,

(…「仮定式」と名付けます)

が,成り立っていると仮定するのです。

 このときに, のときの式である,

(…「証明すべき式①」と名付けます)

と, のときの式である,

(…「証明すべき式②」と名付けます)

が成り立つことを証明すれば,完成です。

 「証明すべき式①」の左辺

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵交換)

(∵分配法則)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵交換)

17/81 ページ

(∵分配法則)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵仮定式)

=「証明すべき式①」の右辺

 「証明すべき式②」の左辺

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵交換)

(∵分配法則)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵交換)

(∵分配法則)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵仮定式)

=「証明すべき式②」の右辺

 よって, のときの式を仮定したときに, のときの式と

のときの式が成り立つので,数学的帰納法により,<定理 3-4

>は が偶数の場合に成り立つことがわかりました。

 < が奇数の場合>

として,

ですから,

を証明すればよいことになります。

に関する数学的帰納法で証明します。

のとき,

 左辺

(∵拡張・フィボナッチ数列)

=右辺 なので,成り立ちます。

のときに,与式が成り立っていると仮定します。つまり,

(…「仮定式」と名付けます)

18/81 ページ

が,成り立っていると仮定するのです。

 このときに, のときの式である,

(…「証明すべき式①」と名付けます)

と, のときの式である,

(…「証明すべき式②」と名付けます)

が成り立つことを証明すれば,完成です。

 「証明すべき式①」の左辺

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵交換)

(∵分配法則)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵交換)

(∵分配法則)

(∵フィボナッチの定義)

(∵仮定式)

=「証明すべき式①」の右辺

 「証明すべき式②」の左辺

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵交換)

(∵分配法則)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵交換)

(∵分配法則)

(∵フィボナッチの定義)

(∵仮定式)

19/81 ページ

=「証明すべき式②」の右辺

 よって, のときの式を仮定したときに, のときの式

と のときの式が成り立つので,数学的帰納法により,<

定理 3-4>は が奇数の場合に成り立つことがわかりました。

 偶数のときも奇数のときも<定理 3-4>が成り立つことがわかった

ので,<定理 3-4>は証明されました。

(証明終)

<定理 3-5>

が整数のとき,

 (証明)  左辺

(∵定理 3-1)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵ 1 + 1 = 2)

(∵ 式の展開)

(∵ 1 - 5 = -4)

(∵ 分配法則)

(∵ 分配法則)

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵定理 3-4)

=右辺

(証明終)

20/81 ページ

<定理 3-6>

F 3の倍数=偶数,F 3の倍数でない=奇数

 (証明) を整数として,次の式を証明できればOKです。

=偶数, =奇数, =奇数

に関する数学的帰納法で証明します。

のとき,

=偶数,

=奇数,

=奇数

 よって与式は成り立っています。

のとき,与式が成り立っていると仮定します。

 つまり,

=偶数, =奇数, =奇数

(…「仮定式」と名付けます)

が成り立っていると,仮定するのです。

 このときに, のときの式である,

=偶数, =奇数, =奇数

と,

のときの式である,

=偶数, =奇数, =奇数

が成り立つことを証明すれば,完成です。

=奇数+奇数=偶数,

(∵仮定式)

=奇数+偶数=奇数,

(∵仮定式と上の式)

=偶数+奇数=奇数,

(∵上の式)

=奇数-偶数=奇数,

(∵仮定式)

=偶数-奇数=奇数,

(∵仮定式と上の式)

=奇数-奇数=偶数,

(∵上の式)

 よって,証明すべき式は,すべて証明されました。

(証明終)

21/81 ページ

<定理 3-7>

L 3の倍数=偶数,L 3の倍数でない=奇数

 (証明) 定理 3-6 と,ほとんど同じ内容です。

を整数として,次の式を証明できればOKです。

=偶数, =奇数, =奇数

に関する数学的帰納法で証明します。

のとき,

=偶数,

=奇数,

=奇数

 よって与式は成り立っています。

のとき,与式が成り立っていると仮定します。

 つまり,

=偶数, =奇数, =奇数

(…「仮定式」と名付けます)

が成り立っていると,仮定するのです。

 このときに, のときの式である,

=偶数, =奇数, =奇数

と, のときの式である,

=偶数, =奇数, =奇数

が成り立つことを証明すれば,完成です。

=奇数+奇数=偶数,

(∵仮定式)

=奇数+偶数=奇数,

(∵仮定式と上の式)

=偶数+奇数=奇数,

(∵上の式)

=奇数-偶数=奇数,

(∵仮定式)

=偶数-奇数=奇数,

(∵仮定式と上の式)

=奇数-奇数=偶数

(∵上の式)

 よって,証明すべき式は,すべて証明されました。

(証明終)

22/81 ページ

<定理 3-8>

が 3 の倍数でなければ, と は互いに素で,

が 3 の倍数であれば, と の最大公約数は 2 になる。

 (証明)  大変面白い証明内容です。

定理 3-5により,次のことがわかっています。

が整数のとき,

 よって, は, か です。

と の最大公約数を とすると,

と表すことができます。ただし, と とは互いに素です。

の式を,定理 3-5の式に代入すると,

か になります。

 式を変形して,

 分配法則を適用して,

 よって, は か の約数のうち,平方数であるものなので, か

です。

 最大公約数は必ず正なので, は か です。

 ところで,定理 3-6と定理 3-7により,

F 3の倍数=偶数,F 3の倍数でない=奇数

L 3の倍数=偶数,L 3の倍数でない=奇数

 よって, が の倍数でないならば, も も奇数なので, を約数に

持つことはありません。したがって, は になり, と は互いに素に

なります。

23/81 ページ

 また, が の倍数ならば,定理 3-6と定理 3-7により, も も偶

数なので, を約数に持ちます。したがって, は になり, と

の最大公約数は になります。

(証明終)

<定理 3-9>

が整数のとき,

 (証明) に関する数学的帰納法で証明します。

のとき,

 右辺

(∵フィボナッチ数列)

(∵リュカ数列の定義)

=左辺 なので,成り立っています。

のとき,

 右辺

(∵フィボナッチ数列)

(∵ 2 = 1 + 1)

(∵リュカ数列の定義)

(∵リュカ数列の定義)

=左辺 なので,成り立っています。

のときと, のときに,与式が成り立っていると仮定します。

つまり,

(…「仮定式①」と名付けます)

と,

(…「仮定式②」と名付けます)

が,成り立っていると仮定するのです。

 このときに, のときの式である,

(…「証明すべき式①」と名付けます)

と, のときの式である,

24/81 ページ

(…「証明すべき式②」と名付けます)

が成り立つことを証明すれば,完成です。

 「証明すべき式①」の右辺

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵交換)

(∵仮定式①,仮定式②)

(∵リュカ数列の定義)

=「証明すべき式①」の左辺

 「証明すべき式②の右辺」

(∵フィボナッチ数列の定義)

(∵分配法則)

(∵交換)

(∵仮定式②,仮定式①)

(∵リュカ数列の定義)

=「証明すべき式②の左辺」

 よって, のときの式と, のときの式を仮定したときに,

のときの式と のときの式が成り立つので,数学的帰

納法により,<定理 3-9>が成り立つことがわかりました。

(証明終)

<定理 3-10>

が整数のとき,

 (証明) 定理 3-9 により,次のことがわかっています。

 この式において, に を代入すると,

(→「式ア」とします)

 また,定理 3-4 により,次のことがわかっています。

25/81 ページ

に を代入して,

(→「式イ」とします)

 同じく,定理 3-4 により,

 において, に を代入して,

(→「式ウ」とします)

 与式の左辺-右辺

(∵「式ア」)

(∵定理 3-1)

(∵分配法則,式の展開)

(∵式の整理)

(∵式ウ,イを利用するための整理)

(∵式ウ,イ)

 よって,与式の左辺と右辺が等しいので,<定理 3-10>が成り立つこと

がわかりました。

(証明終)

26/81 ページ

 次の<定理 3-11>以降の定理では,「……が で割り切れる 」 という定理が数多く出て

きますが,割り算ができるためには, が ではないことが前提です。

 しかし,リュカ数列の定義により, であるし,

ですから, 以降も正なので, ではありません。

 また, であるし,拡張リュカ数列の定理 により, なので, が で

ないなら, も ではありません。

 以上のことから, は にはならないことがわかり,安心して割り算できることがわかりまし

た。

<定理 3-11>

が偶数のとき, は で割り切れる。

 (証明) 定理 3-10 により,次のことがわかっています。

が整数のとき,

が偶数のとき, ですから,次のような式になります。

が偶数のとき,

 移項して,

 よって,「 が で割り切れる 」 ことを証明するためには,「

が で割り切れる 」 ことを証明するだけでよいです。

 ところが, ですから, は で割り切れるので,<

定理 3-11>が成り立つことがわかりました。

(証明終)

<定理 3-12>

が整数のとき, は で割り切れる。

 (証明) 定理 3-2 により,次のことがわかっています。

が整数のとき,

27/81 ページ

 この式の に を代入して,

 よって,

なので,

 したがって, なので, は で割り切れるので,

<定理 3-12>が成り立つことがわかりました。

(証明終)

<定理 3-13>

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割り切れる。

 (証明) 定理 3-3 により,次のことがわかっています。

が整数のとき,

 この式の, に を, に を代入すると,

フィボナッチ数列の定義 と リュカ数列の定義 により, です

から,

 両辺に 2 を加えて,

 分配法則により,

(…「式ア」と名付けます)

28/81 ページ

定理 3-12により,次のことがわかっています。

が整数のとき, は で割り切れる。

(…「式イ」と名付けます)

定理 3-11により,次のこともわかっています。

が偶数のとき, は で割り切れる。

(…「式ウ」と名付けます)

 「式イ」と「式ウ」から,

が偶数のとき, は で割り切れる。

 「式ア」から,

が偶数のとき, は で割り切れる。

 ところで,定理 3-7 により,次のことがわかっています。

L 3の倍数でない=奇数

 仮定により, は 3 の倍数でないのですから, は奇数です。よって,

2 を で割り切ることはできません。

 したがって, が で割り切れることになります。

 したがって,<定理 3-13>が成り立つことがわかりました。

(証明終)

29/81 ページ

<定理 3-14>

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割り切れる。

 (証明) 定理 3-2 により,次のことがわかっています。

が整数のとき,

 この式の, に を, に を代入すると,

リュカ数列の定義 と フィボナッチ数列の定義 により, です

から,

 両辺に 2 を加えて,

 分配法則により,

(…「式ア」と名付けます)

 ところで,定理 3-12により,次のことがわかっています。

が整数のとき, は で割り切れる。

(…「式イ」と名付けます)

 また,定理 3-11により,次のこともわかっています。

が偶数のとき, は で割り切れる。

(…「式ウ」と名付けます)

 「式イ」と「式ウ」から,

が偶数のとき, は で割り切れる。

 「式ア」から,

が偶数のとき, は で割り切れる。

30/81 ページ

 ところで,定理 3-7 により,次のことがわかっています。

L 3の倍数でない=奇数

 仮定により, は 3 の倍数でないのですから, は奇数です。よって,

2 を で割り切ることはできません。

 したがって, が で割り切れることになります。

 よって,<定理 3-14>が成り立つことがわかりました。

(証明終)

<定理 3-15>

が整数で, が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割り切れる。

 (証明) に関する数学的帰納法で証明します。

のとき,

(∵リュカ数列)

が で割り切れることを示せばよいのですが,定理 3-13である,

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割り切れる。

から,これは成り立ちます。

のとき,

(∵リュカ数列)

(∵リュカ数列の定義)

(∵ 3 = 2 + 1 )

が で割り切れることを示せばよいのですが, 定理 3-11により,次のこと

がわかっています。

が偶数のとき, は で割り切れる。

また,定理 3-13により,次のこともわかっています。

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割り切れる。

31/81 ページ

 よって, が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割り切れ,

も で割り切れることがわかるので,

が で割り切れることになり,成り立ちます。

 次に, のときと, のときに,与式が成り立っていると仮定

します。つまり,

が で割り切れる (…「仮定式①」と名付けます)

と,

が で割り切れる (…「仮定式②」と名付けます)

が,成り立っていると仮定するのです。

 このときに, のときの式である,

が で割り切れる

(…「証明すべき式①」と名付けます)

と, のときの式である,

が で割り切れる

(…「証明すべき式②」と名付けます)

が成り立つことを証明すれば,完成です。

 「証明すべき式①」

が で割り切れる

で割り切れる (∵リュカ数列の定義)

で割り切れる (∵交換)

 ところが,仮定式①と仮定式②により,これは成り立ちます。

 「証明すべき式②」

が で割り切れる

で割り切れる (∵リュカ数列の定義)

で割り切れる (∵リュカ数列の定義)

 ところが,仮定式②と仮定式①により,これも成り立ちます。

 よって, のときの式と, のときの式を仮定したときに,

のときの式と のときの式が成り立つので,数学的帰

納法により,<定理 3-15>が成り立つことがわかりました。

(証明終)

32/81 ページ

<定理 3-16>

が整数で, が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割り切れる。

 (証明) に関する数学的帰納法で証明します。

のとき,

(∵フィボナッチ数列)

が で割り切れることを示せばよいのですが,定理 3-14である,

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割り切れる。

から,これは成り立ちます。

のとき,

(∵フィボナッチ数列)

(∵フィボナッチ数列の定義)

が で割り切れることを示せばよいのですが, 定理 3-12により,次のこと

がわかっています。

が整数のとき, は で割り切れる。

 また,定理 3-14により,次のこともわかっています。

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割り切れる。

 よって, が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割り切れ,

も で割り切れることがわかるので, が

で割り切れることになり,成り立ちます。

 次に, のときと, のときに,与式が成り立っていると仮定しま

す。つまり,

が で割り切れる (…「仮定式①」と名付けます)

と,

が で割り切れる (…「仮定式②」と名付けます)

33/81 ページ

が,成り立っていると仮定するのです。

 このときに, のときの式である,

が で割り切れる

(…「証明すべき式①」と名付けます)

と, のときの式である,

が で割り切れる

(…「証明すべき式②」と名付けます)

が成り立つことを証明すれば,完成です。

 「証明すべき式①」

が で割り切れる

で割り切れる (∵フィボナッチ数列の定義)

で割り切れる (∵交換)

 ところが,仮定式①と仮定式②により,これは成り立ちます。

 「証明すべき式②」

が で割り切れる

で割り切れる (∵フィボナッチ数列の定義)

で割り切れる (∵フィボナッチ数列の定義)

 ところが,仮定式②と仮定式①により,これも成り立ちます。

 よって, のときの式と, のときの式を仮定したときに,

のときの式と のときの式が成り立つので,数学的帰

納法により,<定理 3-16>が成り立つことがわかりました。

(証明終)

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<定理 3-17>

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割ると あまる。

 (証明)  すべての整数は,6 で割ったときのあまりは,0, 1, 2, 3, 4, 5 のいずれかで

す。

 このあまりの中で,偶数で 3 の倍数でないものは,2, 4 のみです。

 よって, を 6 で割ったときのあまりが 2 または 4 のとき, は 4 で割る

と 3 あまることを証明すればOKです。

 ところで,リュカ数列は,1, 3, 4, 7, 11, 18, 29, 47, ……のように,はじめの 2

つが 1 と 3 で,そのあとは,直前の 2 個の和を次々と求めていってできる数

列ですが,これをちょっと変えて,「直前の 2 個の和」ではなく,「直前の 2 個

の和を 4 で割ったときのあまり」にすると,次のような数列になります。

 1, 3, 0, 3, 3, 2, 1, 3, ……

 この数列を,6 個ずつ段にして書くと,次のようになります。

 1, 3, 0, 3, 3, 2,

 1, 3, 0, 3, 3, 2,

 1, 3, 0, 3, 3, 2,

 ………………………

 ………………………

 つまり, を 6 で割ったときのあまりが 2 または 4 のとき, は,4 で割っ

たときのあまりが 3 になります。

 よって, が 偶数で 3 の倍数でないとき, は 4 で割ると 3 あまること

が証明されました。

(証明終)

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<定理 3-18>

が 3 の倍数でなくしかも 4 の倍数であるとき, は でも でも割り切れない。

 (証明) 定理 3-7により,次のことがわかっています。

L 3の倍数=偶数,L 3の倍数でない=奇数

 よって, が 2 で割り切れないことはわかりました。

 あとは, が 3 でも割り切れないことがわかれば,証明終了です。

 ところで,リュカ数列は,1, 3, 4, 7, 11, 18, 29, 47, ……のように,はじめの 2

つが 1 と 3 で,そのあとは,直前の 2 個の和を次々と求めていってできる数

列ですが,これをちょっと変えて,「直前の 2 個の和」ではなく,「直前の 2 個

の和を 3 で割ったときのあまり」にすると,次のような数列になります。

 1, 0, 1, 1, 2, 0, 2, 2, ……

 この数列を,4 個ずつ段にして書くと,次のようになります。

 1, 0, 1, 1,

 2, 0, 2, 2,

 1, 0, 1, 1,

 2, 0, 2, 2,

 ………………………

 ………………………

 つまり, が 4 の倍数のとき, は,3 で割ったときのあまりが 1 か 2 に

なり,3 で割り切れることはありません。

 よって, が 3 の倍数ではない 4 の倍数のとき, は 2 でも 3 でも割り

切れないことが証明されました。

(証明終)

36/81 ページ

 第 4 章 素因数分解に関する定理を証明します。

 この章は,次の 4 個の定理を証明するための章です。

<定理 4-1>

が整数のとき, を素因数分解したときに, 4 で割ると 3 あまるような素因数は

現れない。

<定理 4-2>

が整数のとき, を素因数分解したときに, 4 で割ると 3 あまるような素因数は

現れない。

<定理 4-3>

が整数のとき, を素因数分解したときに, 4 で割ると 3 あまるような素因数

は,3 しか現れない。

<定理 4-4>

 ある整数が,4 で割ると 3 あまる整数で割りきれるとき,その整数を素因数分解する

と,必ず 4 で割ると 3 あまる素数がふくまれる。

 この 4 個の定理を証明するために,「補題 4-1」,「補題 4-2」,「フェルマの小定理」,「フェル

マの小定理の別の見方」,「因数定理の利用1」,「因数定理の利用2」,「因数定理の利用3」,

「定理 4-1」,「定理 4-2」,「定理 4-3」, 「定理 4-4」の順に証明していきます。

37/81 ページ

<補題 4-1>

が素数で, が と互いに素な整数のとき, を で割っ

たあまりはすべて異なる。

 (証明)  もし, と とが,同じあまりを持っていると仮定します。

 ここで, としても,一般性を失いません。

と の, で割ったときのあまりをどちらも とすると,

のように表すことができますから,

ですから,

は で割り切れることになります。

 よって, の素因数の中に がふくまれているはずですが, は

と互いに素なので を素因数に持っておらず, は, も も から

の間にある数なので, と の差(つまり, のこと)が, 以上に広がるこ

とはありえず, は 未満の数になるので, を素因数に持っていませ

ん。

 したがって, も を素因数に持っていないことになり,矛盾していま

す。

 矛盾の原因は, の中で, で割ったときに,同じ

あまりがあるのが存在すると仮定したからなので,あまりはすべて異なること

が証明できました。

(証明終)

38/81 ページ

<補題 4-2>

 整数 を 整数 で割ったときのあまりを とす

ると, は で割り切れる。

 (証明)

 ………………………

とします。一般的に, です。

に関する数学的帰納法で証明します。

のとき, ですから, は で割り切れるので,成

り立っています。

のとき, は で割り切れると仮定

します。

 そこで, とします。

です。 (…「式ア」と名付けます。)

 すると, のとき,

(∵「式ア」)

(∵ )

(∵式の展開)

(∵式の整理)

(∵分配法則)

ですから, は で割り切れま

す。

 よって,<補題 4-2>は証明されました。

(証明終)

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<フェルマの小定理>

が素数で, が と互いに素な整数のとき, は で割り切れる。

 (証明) は, と互いに素で, も と互いに素ですから,

も, と互いに素なので, で割ったときに割り切

れることはありません。

 そこで,

 ………………………

とします。

 すると, は 0 ではなく,しかも補題 4-1の,

が素数で, が と互いに素な整数のとき,

を で割ったあまりはすべて異なる。

により,すべて異なっています。

 すると, は,順番は変わっているかも知れませんが,

全体としては, と同じです。

 ですから,

(…「式ア」と名付けます。)

となります。

 ところで,補題 4-2により,次のことがわかっています。

 整数 を 整数 で割ったときのあまりを

とすると, は

で割り切れる。

 いまは, 整数 を 整数 で割ったときのあまり

を としたのですから,

は で割り切れる。

40/81 ページ

 整理して,

は で割り

切れる。

 上の式に は 個ありますから,

は で割り切れる。

 「式ア」により, ですから,

は で割り切れ

る。

 分配法則により,

は で割り切れる。

 よって, の素因数の中に がふくまれ

ていることになりますが, の素因数の中に がふくまれ

ることはないので, の中に がふくまれている,つまり,

は で割り切れることになり,フェルマの小定理が証明されました。

(証明終)

<フェルマの小定理の別の見方>

が素数で, が整数のとき, は で割り切れる。

 (証明) が と互いに素な整数のときは,フェルマの小定理により, は

で割り切れるので, も で割り切れることになり,

<フェルマの小定理の別の見方>が証明できました。

が と互いに素でないときは, は を素因数に持つので, とす

ることができ, も

で割り切れることになり,<フェルマの小定理の別の見方>が証明できまし

た。

(証明終)

41/81 ページ

<因数定理の利用1>

が 4 で割ると 3 あまる素数のとき,

を で割ると,あまりは になる。

 (証明) を 2 次式 で割ったときの商を とします。

 あまりは 1 次式になるので, とすると,

 この式は恒等式なので, にどんな値を代入しても,式は成り立ちます。

 そこで,( を 0 にしたいために) に虚数である を代入すると,

 ところで, は 4 で割ると 3 あまる素数なので, とすると,

 ところで, なので,

 また,

 よって,

 したがって,

になるので, となり,<因数定

理の利用1>は証明されました。

(証明終)

42/81 ページ

<因数定理の利用2>

が 4 で割ると 3 あまる素数のとき,

を で割ると,あまりは になる。

 (証明) を 2 次式 で割ったときの商を とします。

 あまりは 1 次式になるので, とすると,

 この式は恒等式なので, にどんな値を代入しても,式は成り立ちます。

 そこで,( を 0 にしたいために) に虚数である を代入すると,

 ところで, は 4 で割ると 3 あまる素数なので, とすると,

 ところで, なので,

 また,

 よって,

 したがって, なので,

になるので, となり,<因数定理の利

用2>は証明されました。

(証明終)

43/81 ページ

<因数定理の利用3>

が 4 で割ると 3 あまる素数のとき,

を で割ると,あまりは になる。

 (証明) を 2 次式 で割ったときの商を とします。

 あまりは 1 次式になるので, とすると,

 この式は恒等式なので, にどんな値を代入しても,式は成り立ちます。

 そこで,( を 0 にしたいために) に虚数である を代入すると,

 ところで, は 4 で割ると 3 あまる素数なので, とすると,

 ところで, なので,

 また,

 よって,

 したがって, になるので,

となり,<因数定理の利用3>

は証明されました。

(証明終)

44/81 ページ

<定理 4-1>

が整数のとき, を素因数分解したときに, 4 で割ると 3 あまるような素因数は

現れない。

 (証明)  背理法によって証明します。

が,4 で割ると 3 あまるような素因数 を持っていると仮定します。

 すると, は で割り切れます。 (…「仮定ア」と名付けます。)

 ところで, を で割ったとき,割り切れる場合と割り切れない場合がありま

すが,どちらにしても矛盾することを,これから証明します。

 まず, を で割ったとき,割り切れる場合を考えます。  商を とすると,

となりますが,そのとき, となり,

を で割ると 1 あまることになります。

 つまり, を で割っても,割り切れないことがわかり,「仮定ア」に矛

盾します。

 次に, を で割ったとき,割り切れない場合を考えます。

 このときの証明には,<因数定理の利用1>を使います。

<因数定理の利用1>によって,次のことがわかっています。

が 4 で割ると 3 あまる素数のとき,

を で割ると,あまりは になる。

 いま, が,4 で割ると 3 あまるような素因数 を持っていると仮定し

ているのですから,その を使って,

(…「式イ」と名付けます)

という式を作ることができます。ただし, は多項式です。

 ところで,<フェルマの小定理の別の見方>によって,

が素数で, が整数のとき, は で割り切れます。

45/81 ページ

 また,「仮定ア」により, は で割り切れるのですから,

も で割り切れます。

 「式イ」である,

において, は で割り切れ, も で割り切れるので

すから, も, で割り切れることになります。

 つまり, は という素因数を持っていなければならないのですが,

は という素因数を持っているわけがないので, が, という素因数を

持っていることになり, は で割り切れることになります。

 しかし,いまは, が で割ったとき,割り切れない場合を考えているの

ですから,これは矛盾です。

 よって, を で割ったとき,割り切れる場合と割り切れない場合があり

ますが,どちらにしても矛盾することが,証明できました。

 矛盾の原因は, が,4 で割ると 3 あまるような素因数を持っている

と仮定したことにあります。

 仮定が否定されたので, は,4 で割ると 3 あまるような素因数を

持っていない,つまり, を素因数分解したときに,4 で割ると 3 あま

るような素因数は現れないことがわかりました。

(証明終)

46/81 ページ

<定理 4-2>

が整数のとき, を素因数分解したときに, 4 で割ると 3 あまるような素因数は

現れない。

 (証明)  背理法によって証明します。

が,4 で割ると 3 あまるような素因数 を持っていると仮定します。

 すると, は で割り切れます。 (…「仮定ア」と名付けます。)

 ところで, を で割ったとき,割り切れる場合と割り切れない場合がありま

すが,どちらにしても矛盾することを,これから証明します。

 まず, を で割ったとき,割り切れる場合を考えます。  商を とすると,

となりますが,そのとき, となり,

を で割ると 4 あまることになります。(ただし, のときは,

ですから,1 あまります。)

 つまり, を で割っても,割り切れないことがわかり,「仮定ア」に矛

盾します。

 次に, を で割ったとき,割り切れない場合を考えます。

 このときの証明には,<因数定理の利用2>を使います。

<因数定理の利用2>によって,次のことがわかっています。

が 4 で割ると 3 あまる素数のとき,

を で割ると,あまりは になる。

 いま, が,4 で割ると 3 あまるような素因数 を持っていると仮定し

ているのですから,その を使って,

(…「式イ」と名付けます)

という式を作ることができます。ただし, は多項式です。

 ところで,<フェルマの小定理の別の見方>によって,

が素数で, が整数のとき, は で割り切れます。

47/81 ページ

 また,「仮定ア」により, は で割り切れるのですから,

も で割り切れます。

 「式イ」である,

において, は で割り切れ, も で割り切れるので

すから, も, で割り切れることになります。

 つまり, は という素因数を持っていなければなりません。

 しかし, は,「整数2 + 1 」という形をしているの

で,定理 4-1の,

が整数のとき, を素因数分解したときに, 4 で割ると 3 あ

まるような素因数は現れない。

により, を素因数に持っていません。

は という素因数を持っていなければならないのですが,

の方は を素因数に持っていないので, の方が, という素

因数を持っていることになり, は で割り切れることになります。

 しかし,いまは, が で割ったとき,割り切れない場合を考えているの

ですから,これは矛盾です。

 よって, を で割ったとき,割り切れる場合と割り切れない場合があり

ますが,どちらにしても矛盾することが,証明できました。

 矛盾の原因は, が,4 で割ると 3 あまるような素因数を持っている

と仮定したことにあります。

 仮定が否定されたので, は,4 で割ると 3 あまるような素因数を

持っていない,つまり, を素因数分解したときに,4 で割ると 3 あま

るような素因数は現れないことがわかりました。

(証明終)

48/81 ページ

<定理 4-3>

が整数のとき, を素因数分解したときに, 4 で割ると 3 あまるような素因数

は,3 しか現れない。

 (証明)  背理法によって証明します。

が,「 3 以外の」 4 で割ると 3 あまるような素因数 を持っている

と仮定します。

 すると, は で割り切れます。 (…「仮定ア」と名付けます。)

 ところで, を で割ったとき,割り切れる場合と割り切れない場合がありま

すが,どちらにしても矛盾することを,これから証明します。

 まず, を で割ったとき,割り切れる場合を考えます。  商を とすると,

となりますが,そのとき, とな

り, を で割ると 36 あまることになります。

 ただし, は「 3 以外の」 4 で割ると 3 あまる素数ですから,7, 11, 19, 23,

31, 43, …などが考えられ, が 31 以下のときは,36 あまるわけではありませ

んが,割り切れないことは間違いありません。

 つまり, を で割っても,割り切れないことがわかり,「仮定ア」に矛

盾します。

 次に, を で割ったとき,割り切れない場合を考えます。

 このときの証明には,<因数定理の利用3>を使います。

<因数定理の利用3>によって,次のことがわかっています。

が 4 で割ると 3 あまる素数のとき,

を で割ると,あまりは になる。

 いま, が,4 で割ると 3 あまるような素因数 を持っていると仮定し

ているのですから,その を使って,

(…「式イ」と名付けます)

という式を作ることができます。ただし, は多項式です。

 ところで,<フェルマの小定理の別の見方>によって,

49/81 ページ

が素数で, が整数のとき, は で割り切れます。

 また,「仮定ア」により, は で割り切れるのですから,

も で割り切れます。

  「式イ」である,

において, は で割り切れ, も で割り切れるの

ですから, も, で割り切れることになります。

 つまり, は という素因数を持っていなければなりませ

ん。

 しかし, は,「整数2 + 1 」という形をして

いるので,定理 4-1の,

が整数のとき, を素因数分解したときに, 4 で割ると 3 あ

まるような素因数は現れない。

により, を素因数に持っていません。

は という素因数を持っていなければならないのです

が, の方は を素因数に持っていないので, の方が, と

いう素因数を持っていることになり, は で割り切れることになります。

 しかし,いまは, が で割ったとき,割り切れない場合を考えているの

ですから,これは矛盾です。

 よって, を で割ったとき,割り切れる場合と割り切れない場合があり

ますが,どちらにしても矛盾することが,証明できました。

 矛盾の原因は, が,4 で割ると 3 あまるような素因数を持ってい

ると仮定したことにあります。

 仮定が否定されたので, は,4 で割ると 3 あまるような素因数を

持っていない,つまり, を素因数分解したときに,4 で割ると 3 あま

るような素因数は,3 しか現れないことがわかりました。

(証明終)

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<定理 4-4>

 ある整数が,4 で割ると 3 あまる整数で割りきれるとき,その整数を素因数分解する

と,必ず 4 で割ると 3 あまる素数がふくまれる。

 (証明)  背理法で矛盾を導く方法で,証明していきます。

 ある整数が 4 で割ると 3 あまる整数で割りきれるとき,その整数を素因数分

解したときに,「 4 で割ると 3 あまる素数が 1 個もふくまれていない」と仮定し

ます。

…「仮定式」と名付けます

 4 で割ると 3 あまる整数というのは奇数ですから,素因数として 2 を持つこ

とはありません。

 しかも,仮定式から,素因数に「 4 で割ると 3 あまる素数」も,1 個もふくまれ

ていないと仮定しました。

 素因数として 2 も持っておらず,「 4 で割ると 3 あまる素数」も持っていない

となると,この整数の素因数は,すべて「 4 で割ると 1 あまる素数」だけになり

ます。

 つまり,「仮定式」から,

 4 で割ると 3 あまる整数= とすることができます。

ただし, は,すべて 4 で割ると 1 あまる素数です。

 ところが,補題 4-2によって,

 整数 を 整数 で割ったときのあまりを

とすると, は

で割り切れる。

 この式の,整数 を にして, を 4

にすると, はすべて 1 になりますから,補題 4-2は,

 素数 を 整数 で割ったときのあまりを

とすると, は で割り切れる。

となります。整理して,

 素数 を 整数 で割ったときのあまりを

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とすると, は で割り切れる。

 つまり,4 で割ると 3 あまる整数= = 4 で割ると,1 あま

となり,矛盾します。

 矛盾の原因は,"4 で割ると 3 あまる整数を素因数分解したときに,「 4

で割ると 3 あまる素数が 1 個もふくまれていない" と仮定したことにありま

す。

 よって, 4 で割ると 3 あまる整数を素因数分解すると,必ず 4 で割ると

3 あまる素数が 1 個はふくまれていることになり,<定理 4-4> は証明さ

れました。

(証明終)

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 第 5 章 リュカ数列に現れる平方数は,1 と 4 だけであることを証明します。

 リュカ数列は,1, 3, 4, 7, 11, 18, … と続きます。

 この中で,1 番目である 1 と,3 番目である 4 だけが,平方数であることを証明していきます。

<n が偶数の場合>

 リュカ数列の偶数番目には,平方数は現れない。

 (証明)  背理法で証明します。

 リュカ数列の偶数番目に,平方数が現れると仮定します。

 この章では,リュカ数列 において, が偶数のときは は平方数にな

らず, が 4 で割ると 1 あまる整数のときは のときのみ平方数にな

り, が 4 で割ると 3 あまる整数のときは のときのみ平方数になるこ

とを証明していきます。

 自然数の平方数は, と,い

つまでも続いていきますが,隣同士の平方数と平方数の間は,

と,どんどん広がっていきます。

 もっとも間がせまいのは, のときです。

 ところで,定理 3-10により,次のことがわかっています。

が整数のとき,

 つまり, 偶数 です。

は平方数ですから, 偶数 も平方数ならば,平方数と平方数の間が 2 し

かはなれていないことになり,矛盾します。

 矛盾の原因は,リュカ数列の偶数番目に,平方数が現れると仮定したことで

した。

 よって,リュカ数列の偶数番目には,平方数が現れないことが証明できまし

た。

(証明終)

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<n が 4 で割ると 1 あまる数の場合>

が 4 で割ると 1 あまる数の場合,リュカ数列 が平方数になるのは, のと

きだけである。

 (証明) のとき, は,確かに平方数です。

 そこで, ,つまり, のときに, が平方数になったと仮定

し,背理法で矛盾を導きます。

は,4 でわると 1 あまる整数ですから, は 0 より大きい 4 の倍数で

す。そこで, とすると, は 0 より大きい偶数です。

 ここで, を素因数分解してみます。

を素因数分解したときに,3 が何回現れるかに注目します。 回現れたと

し, とします。ただし,3 が 1 回も現れないこともあるので, は 0 

であることも考えられます。

は偶数だったので,素因数分解すると 2 がふくまれています。 を で

割ったときの商が ですが,3 で何回割っても, の中の素因数である 2 は

そのまま残っているので, の中にも,素因数 2 は残っています。つまり,

は偶数です。

 また, は を 3 で割れるだけ割った残りですから, の中に,もう 3 は

ふくまれていません。つまり, は 3 の倍数ではありません。

で, ですから,

と表せることになります。

 ただし, は 0 以上の整数で, は 0 より大きい偶数でしかも 3 の倍数で

はない数です。

 ここで,定理 3-15により,次のことがわかっています。

が整数で, が偶数で 3 の倍数でないとき,

は で割り切れる。

 この式を,何回も利用します。

に を代入して,

は で割り切れる。… 1 回目

54/81 ページ

に を代入してマイナスにして,

は で割り切れる。… 2 回目

に を代入して,

は で割り切れる。… 3 回目

 このように,i 番目ならば に を代入して,しかも偶数回目のと

きはマイナスにして,式をどんどん, 回目まで作っていきます。

回目は奇数回目ですから( のときも, なので奇数で

す),マイナスにはせず, に を代入することになり,

は で割り切れる。… 回目

 ところで,

でしたから, です。よって, 回目の式の中の,

は になり, は になります。

 よって, 回目の式を書き直すと,

は で割り切れる。… 回目

 もう一度,式だけ並べると,次のようになります。

は で割り切れる。… 1 回目

は で割り切れる。… 2 回目

は で割り切れる。… 3 回目

………………………………………………

………………………………………………

は で割り切れる。… 回目

 これらの,1 回目の式から 回目の式までを足します。

 すると,1 回目の式の と 2 回目の式の が打ち消し合

い,2 回目の式の と 3 回目の式の が打ち消し合い,と

いうように,どんどん打ち消し合って,結局,

は で割り切れる。

となります。

55/81 ページ

 ところで, です。  また,定理 3-17により

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割ると あまる。

から,

は 4 で割ると 3 あまる数 で割り切れる。

となります。

 ところで,定理 4-4 により,次のことがわかっています。

 ある整数が,4 で割ると 3 あまる整数で割りきれるとき,その整

数を素因数分解すると,必ず 4 で割ると 3 あまる素数がふくまれ

る。

 ということから, には,4 で割ると 3 あまる素数がふくまれるは

ずです。

 しかし, が平方数なら,定理 4-1によって,

が整数のとき, を素因数分解したときに,4 で割ると 3

あまるような素因数は現れない。

と矛盾します。

 矛盾の原因は, が 4 で割ると 1 あまる数で, のときに, が

平方数であると仮定したことにあります。

 よって, が 4 で割ると 3 あまる数のとき,リュカ数列 が平方数

になるのは, のときだけであることが証明できました。

(証明終)

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<n が 4 で割ると 3 あまる数の場合>

が 4 で割ると 3 あまる数の場合,リュカ数列 が平方数になるのは, のと

きだけである。

 (証明)  証明は,<n が 4 で割ると 1 あまる数の場合> と非常によく似ています。

のとき, は,確かに平方数です。

 そこで, ,つまり, のときに が平方数になったと仮定し,背

理法で矛盾を導きます。

は,4 でわると 3 あまる整数ですから, は 0 より大きい 4 の倍数で

す。そこで, とすると, は 0 より大きい偶数です。

 ここで, を素因数分解してみます。

を素因数分解したときに,3 が何回現れるかに注目します。 回現れたと

し, とします。ただし,3 が 1 回も現れないこともあるので, は 0 

であることも考えられます。

は偶数だったので,素因数分解すると 2 がふくまれています。 を で

割ったときの商が ですが,3 で何回割っても, の中の素因数である 2 は

そのまま残っているので, の中にも,素因数 2 は残っています。つまり,

は偶数です。

 また, は を 3 で割れるだけ割った残りですから, の中に,もう 3 は

ふくまれていません。つまり, は 3 の倍数ではありません。

で, ですから,

と表せることになります。

 ただし, は 0 以上の整数で, は 0 より大きい偶数でしかも 3 の倍数で

はない数です。

 ここで,定理 3-15により,次のことがわかっています。

が整数で, が偶数で 3 の倍数でないとき,

は で割り切れる。

 この式を,何回も利用します。

に を代入して,

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は で割り切れる。… 1 回目

に を代入してマイナスにして,

は で割り切れる。… 2 回目

に を代入して,

は で割り切れる。… 3 回目

 このように,i 番目ならば に を代入して,しかも偶数回目のと

きはマイナスにして,式をどんどん, 回目まで作っていきます。

回目は奇数回目ですから( のときも なので奇数で

す),マイナスにはせず, に を代入することになり,

は で割り切れる。… 回目

 ところで,

でしたから, です。よって, 回目の式の中の,

は になり, は になります。

 よって, 回目の式を書き直すと,

は で割り切れる。… 回目

 もう一度,式だけ並べると,次のようになります。

は で割り切れる。… 1 回目

は で割り切れる。… 2 回目

は で割り切れる。… 3 回目

………………………………………………

………………………………………………

は で割り切れる。… 回目

 これらの,1 回目の式から 回目の式までを足します。

 すると,1 回目の式の と 2 回目の式の が打ち消し合

い,2 回目の式の と 3 回目の式の が打ち消し合い,と

いうように,どんどん打ち消し合って,結局,

は で割り切れる。

58/81 ページ

となります。

 ところで, です。  また,定理 3-17により

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割ると あまる。

から,

は 4 で割ると 3 あまる数 で割り切れる。

となります。

 ところで,定理 4-4 により,次のことがわかっています。

 ある整数が,4 で割ると 3 あまる整数で割りきれるとき,その整

数を素因数分解すると,必ず 4 で割ると 3 あまる素数がふくまれ

る。

 ということから, には,4 で割ると 3 あまる素数がふくまれる

はずです。

 しかし, が平方数なら,定理 4-2によって,

が整数のとき, を素因数分解したときに,4 で割ると 3

あまるような素因数は現れない。

と矛盾します。

 矛盾の原因は, が 4 で割ると 3 あまる数で, のときに が

平方数であると仮定したことにあります。

 よって, が 4 で割ると 3 あまる数のとき,リュカ数列 が平方数

になるのは, のときだけであることが証明できました。

(証明終)

 以上のことから,リュカ数列の偶数番目には平方数は現れず, が 4 で割ると 1 あまる数の

ときは,1 番目の 1 のみ, が 4 で割ると 3 あまる数のときは,3 番目の 4 のみが平方数であ

ることがわかりました。

 結局,リュカ数列に現れる平方数は,( 1 番目の)1 と,( 3 番目の)4 だけであることが証明

できました。

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 第 6 章 リュカ数列に現れる「 2 ×平方数」は,18 だけであることを証明しま

す。

 リュカ数列は,1, 3, 4, 7, 11, 18, … と続きます。

 この中で,6 番目である 18 は,2×32 ですから,「 2 ×平方数」の形をしています。

 リュカ数列には, の他には「 2 ×平方数」の形をしているものはないことを証明して

いきます。

 証明は,n を 8 で割ったときのあまりによって,分けて証明します。

 n を 8 で割ったときのあまりは,0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 が考えられますが,まず,

 あまりが 1, 3, 5, 7 の場合。つまり,n が奇数の場合。

 次に,あまりが 0, 4 の場合。つまり,n が 4 の倍数の場合。

 次に,あまりが 6 の場合。

 最後に,あまりが 2 の場合。

 このように分けて,証明していきます。

<奇数番目の場合>

 リュカ数列が奇数番目の場合,「 2 ×平方数」は現れない。

 (証明) が奇数のときに, が「 2 ×平方数」になったと仮定し,矛盾を導きま

す。

が「 2 ×平方数」 だとすると, は偶数です。

定理 3-7によって,

L 3の倍数=偶数,L 3の倍数でない=奇数

ですから, は 3 の倍数です。

 よって, は 奇数で,しかも 3 の倍数です。

 このような は,6 で割ると 3 あまる数です。

 ところで,リュカ数列は,1, 3, 4, 7, 11, 18, 29, 47, ……のように,はじめの 2

つが 1 と 3 で,そのあとは,直前の 2 個の和を次々と求めていってできる数

列ですが,これをちょっと変えて,「直前の 2 個の和」ではなく,「直前の 2 個

の和を 8 で割ったときのあまり」にすると,次のような数列になります。

60/81 ページ

 1, 3, 4, 7, 3, 2, 5, 7, ……

 この数列を,6 個ずつ段にして書くと,次のようになります。

 1, 3, 4, 7, 3, 2,

 5, 7, 4, 3, 7, 2,

 1, 3, 4, 7, 3, 2,

 5, 7, 4, 3, 7, 2,

 1, 3, 4, 7, 3, 2,

 5, 7, 4, 3, 7, 2,

 ………………………

 ………………………

 つまり,

L 6で割ると3あまる数 は,8 で割ると 4 あまるような数です。

 よって, と表すことができますから,

 2 ×平方数=

となり,

 平方数=

 つまり,「 4 で割ると 2 あまる平方数がある。」

ということになります。

 ところが,偶数の平方数は, のようになり,4 で割ると割り

切れ,

 奇数の平方数は, のように

なり,4 で割ると 1 だけあまります。

 結局, 「 4 で割ると 2 あまる」ような平方数はありえず,矛盾しています。

 矛盾の原因は, が奇数のときに, が「 2 ×平方数」になったと仮

定したことにあります。

 よって,リュカ数列の奇数番目には,「 2 ×平方数」は現れないことにな

り,証明が完成しました。

(証明終)

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< 4 の倍数番目の場合>

 リュカ数列が 4 の倍数番目の場合,「 2 ×平方数」は現れない。

 (証明)  証明は,第 5 章の <n が 4 で割ると 1 あまる数の場合> と非常によく似

ています。

が 4 の倍数のとき, が「 2 ×平方数」 になったと仮定して,矛盾を導

きます。

は 4 の倍数です。そこで, とすると, は偶数です。

 ここで, を素因数分解してみます。

を素因数分解したときに,3 が何回現れるかに注目します。 回現れたと

し, とします。ただし,3 が 1 回も現れないこともあるので, は 0 

であることも考えられます。

は偶数だったので,素因数分解すると 2 がふくまれています。 を で

割ったときの商が ですが,3 で何回割っても, の中の素因数である 2 は

そのまま残っているので, の中にも,素因数 2 は残っています。つまり,

は偶数です。

 また, は を 3 で割れるだけ割った残りですから, の中に,もう 3 は

ふくまれていません。つまり, は 3 の倍数ではありません。

で, ですから,

と表せることになります。

 ただし, は 0 以上の整数であり, は偶数でしかも 3 の倍数ではない数

です。

 ここで,定理 3-15により,次のことがわかっています。

が整数で, が偶数で 3 の倍数でないとき,

は で割り切れる。

 この式を,何回も利用します。

に を代入して,

は で割り切れる。… 1 回目

62/81 ページ

に を代入してマイナスにして,

は で割り切れる。… 2 回目

に を代入して,

は で割り切れる。… 3 回目

 このように,i 番目ならば に を代入して,しかも偶数回目のと

きはマイナスにして,式をどんどん, 回目まで作っていきます。

回目は奇数回目ですから( のときも なので奇数で

す),マイナスにはせず, に を代入することになり,

は で割り切れる。… 回目

 ところで,

でしたから, です。よって, 回目の式の中の,

は になり, は になります。

 よって, 回目の式を書き直すと,

は で割り切れる。… 回目

 もう一度,式だけ並べると,次のようになります。

は で割り切れる。… 1 回目

は で割り切れる。… 2 回目

は で割り切れる。… 3 回目

………………………………………………

………………………………………………

は で割り切れる。… 回目

 これらの,1 回目の式から 回目の式までを足します。

 すると,1 回目の式の と 2 回目の式の が打ち消し合

い,2 回目の式の と 3 回目の式の が打ち消し合い,と

いうように,どんどん打ち消し合って,結局,

は で割り切れる。

63/81 ページ

となります。

 ところで, です。  また,定理 3-17により

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割ると あまる。

から,

は 4 で割ると 3 あまる数 で割り切れる。

となります。

を 2 倍して,

は 4 で割ると 3 あまる数 で割り切れる。

 ということも成り立ちます。

 ところで,定理 4-4 により,次のことがわかっています。

 ある整数が,4 で割ると 3 あまる整数で割りきれるとき,その整

数を素因数分解すると,必ず 4 で割ると 3 あまる素数がふくまれ

る。

 ということから, には,4 で割ると 3 あまる素数がふくまれる

はずです。

 しかし, が「 2 ×平方数」なら, となるような整数 があ

り,そのとき, となって, は平方数です。

 つまり,平方数+4 には,4 で割ると 3 あまる素数がふくまれるはずで

す。  ところが,定理 4-2によって,

が整数のとき, を素因数分解したときに,4 で割ると 3

あまるような素因数は現れない。

となり,矛盾しています。

 矛盾の原因は,リュカ数列の 4 の倍数番目に,「 2 ×平方数」が現れ

ると仮定したことにあります。

 よって,リュカ数列の 4 の倍数番目には,「 2 ×平方数」は現れないこ

とが証明できました。

(証明終)

64/81 ページ

<n が 8 で割ると 6 あまる数の場合>

が 8 で割ると 6 あまる数の場合,リュカ数列 が「 2 ×平方数」 になるのは,

のときのみである。

 (証明)  証明は,第 5 章の <n が 4 で割ると 1 あまる数の場合> と非常によく似

ています。

のとき, は,確かに「 2 ×平方数」になっています。

 そこで, ,つまり, のときに, が 「 2 ×平方数」になったと

仮定し,矛盾を導きます。

は,8 でわると 6 あまる整数ですから, は 0 より大きい 8 の倍数で

す。そこで, とすると, は 0 より大きい4の倍数です。

 ここで, を素因数分解してみます。

を素因数分解したときに,3 が何回現れるかに注目します。 回現れたと

し, とします。ただし,3 が 1 回も現れないこともあるので, は 0 

であることも考えられます。

は 4 の倍数だったので,素因数分解すると 2 が 2 個以上ふくまれていま

す。 を で割ったときの商が ですが,3 で何回割っても, の中の素因

数である 2 はそのまま残っているので, の中にも,素因数 2 は 2 個以上

残っています。つまり, は 4 の倍数です。

 また, は を 3 で割れるだけ割った残りですから, の中に,もう 3 は

ふくまれていません。つまり, は 3 の倍数ではありません。

で, ですから,

と表せることになります。

 ただし, は 0 以上の整数で, は 0 より大きい 4 の倍数でしかも 3 の倍

数ではない数です。

 ここで,定理 3-15により,次のことがわかっています。

が整数で, が偶数で 3 の倍数でないとき,

は で割り切れる。

65/81 ページ

 この式を,何回も利用します。

に を代入して,

は で割り切れる。… 1 回目

に を代入してマイナスにして,

は で割り切れる。… 2 回目

に を代入して,

は で割り切れる。… 3 回目

 このように,i 番目ならば に を代入して,しかも偶数回目のと

きはマイナスにして,式をどんどん, 回目まで作っていきます。

回目は奇数回目ですから( のときも, なので奇数で

す),マイナスにはせず, に を代入することになり,

は で割り切れる。… 回目

 ところで,

でしたから, です。よって, 回目の式の中の,

は になり, は になります。

 よって, 回目の式を書き直すと,

は で割り切れる。… 回目

 もう一度,式だけ並べると,次のようになります。

は で割り切れる。… 1 回目

は で割り切れる。… 2 回目

は で割り切れる。… 3 回目

………………………………………………

………………………………………………

は で割り切れる。… 回目

 これらの,1 回目の式から 回目の式までを足します。

 すると,1 回目の式の と 2 回目の式の が打ち消し合

い,2 回目の式の と 3 回目の式の が打ち消し合い,と

66/81 ページ

いうように,どんどん打ち消し合って,結局,

は で割り切れる。

となります。

 ところで, です。  また,定理 3-17により

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割ると あまる。

から,

は 4 で割ると 3 あまる数 で割り切れる。

となります。

を 2 倍して,

は 4 で割ると 3 あまる数 で割り切れる。

ということも成り立ちます。

 ところで,定理 4-4 により,次のことがわかっています。

 ある整数が,4 で割ると 3 あまる整数で割りきれるとき,その整

数を素因数分解すると,必ず 4 で割ると 3 あまる素数がふくまれ

る。

ということから, には,4 で割ると 3 あまる素数がふくまれる

はずです。

 ところで,定理 3-18によって,

が 3 の倍数でなくしかも 4 の倍数であるとき, は でも

でも割り切れない。

 ということから, には,3 という素数はふくまれません。よっ

て,

には,3 ではない「4 で割ると 3 あまる素数」がふくまれる

はずです。

67/81 ページ

 しかし, が「 2 ×平方数」なら, となるような整数

があり,そのとき, となって, は平方数で

す。

 つまり,平方数+36 には,3 ではない「4 で割ると 3 あまる素数」が

ふくまれるはずです。

 ところが, が平方数なら,定理 4-3によって,

が整数のとき, を素因数分解したときに,4 で割る

と 3 あまるような素因数は, 3 しか現れない。

と矛盾します。

 矛盾の原因は, が 8 で割ると 6 あまる整数のとき,リュカ数列

(ただし を除く)に「 2 ×平方数」が現れると仮定したこと

にあります。

 よって, が 8 で割ると 6 あまる整数のとき,リュカ数列 は

のときのみ「 2 ×平方数」になることが証明できました。

(証明終)

<n が 8 で割ると 2 あまる数の場合>

が 8 で割ると 2 あまる数の場合,リュカ数列 に「 2 ×平方数」は現れない。

 (証明) が 8 で割ると 2 あまる数のとき,リュカ数列 に 「 2 ×平方数」が現れ

ると仮定し,矛盾を導きます。

は 8 で割ると 2 あまる数なので, とします。

拡張リュカ数列の定理により,次のことがわかっています。

が 0 以上の整数のとき, が成り立つ。

68/81 ページ

のとき, は偶数ですから, となるので,

となります。

 よって, に「 2 ×平方数」は現れないことを証明する代わりに,

に「 2 ×平方数」は現れないことを証明してもOKです。

 ところで, が 8 で割ると 2 あまる数のとき, で

す。このとき, となり,たとえば

のように, は,8 で割ると 6 あまる数です。

 もっときちんと説明すると,

なので, は,8

で割ると 6 あまる数です。  したがって,

が 8 で割ると 6 あまるマイナスの数の場合,平方数は現れない。

ということを証明することになります。

 その証明は,「n が 8 で割ると 6 あまる数の場合」と似ています。

 そこで, で, は,8 でわると 6 あまる整数ですから,「 -8の倍

数+6」 とできます。そこで, とすると, は 0 より大きい偶数

(本当は 4 の倍数)です。

 ここで, を素因数分解してみます。

を素因数分解したときに,3 が何回現れるかに注目します。 回現れた

とし, とします。ただし,3 が 1 回も現れないこともあるので, は

0 であることも考えられます。

は偶数だったので,素因数分解すると 2 がふくまれています。 を

で割ったときの商が ですが,3 で何回割っても, の中の素因数である

2 はそのまま残っているので, の中にも,素因数 2 は残っています。つ

まり, は偶数(本当は 4 の倍数)です。

 また, は を 3 で割れるだけ割った残りですから, の中に,もう 3

はふくまれていません。つまり, は 3 の倍数ではありません。

で, ですから,

と表せることになります。

 ただし, は 0 以上の整数で, は 0 より大きい偶数(本当は 4 の倍

数)でしかも 3 の倍数ではない数です。

69/81 ページ

 ここで,定理 3-15により,次のことがわかっています。

が整数で, が偶数で 3 の倍数でないとき,

は で割り切れる。

 この式を,何回も利用します。

 1 回目はそのままで,

は で割り切れる。… 1 回目

に を代入してマイナスにして,

は で割り切れる。… 2 回目

に を代入して,

は で割り切れる。… 3 回目

 このように,i 番目ならば に を代入して,しかも偶数

回目のときはマイナスにして,式をどんどん, 回目まで作っていきま

す。

回目は奇数回目ですから( のときも, なので奇数

です),マイナスにはせず, に を代入することにな

り,

は で割り切れる。… 回目

 ところで,

でしたから, です。よって, 回目の式の中の,

は になり, は になります。

 よって, 回目の式を書き直すと,

は で割り切れる。… 回目

 もう一度,式だけ並べると,次のようになります。

70/81 ページ

は で割り切れる。… 1 回目

は で割り切れる。… 2 回目

は で割り切れる。… 3 回目

………………………………………………

………………………………………………

は で割り切れる。… 回目

 これらの,1 回目の式から 回目の式までを足します。

 すると,1 回目の式の と 2 回目の式の が打ち

消し合い,2 回目の式の と 3 回目の式の が打ち

消し合い,というように,どんどん打ち消し合って,結局,

は で割り切れる。

となります。

 ところで, です。  また,定理 3-17により

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割ると あま

る。

から,

は 4 で割ると 3 あまる数 で割り切れる。

となります。

を 2 倍して,

は 4 で割ると 3 あまる数 で割り切れる。

ということも成り立ちます。

 ところで,定理 4-4 により,次のことがわかっています。

 ある整数が,4 で割ると 3 あまる整数で割りきれるとき,その

整数を素因数分解すると,必ず 4 で割ると 3 あまる素数がふ

くまれる。

ということから, には,4 で割ると 3 あまる素数がふくまれ

るはずです。

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 ところで, は,本当は 4 の倍数で,しかも 3 の倍数ではない

ので,定理 3-18 が利用できます。

が 3 の倍数でなくしかも 4 の倍数であるとき, は

でも でも割り切れない。

 このことから, には,3 という素数はふくまれません。

よって,

には,3 ではない「4 で割ると 3 あまる素数」がふくま

れるはずです。

 しかし, が「 2 ×平方数」なら, となるような整数

があり,そのとき, となって, は平方数

です。

 つまり,平方数+36 には,3 ではない「4 で割ると 3 あまる素

数」がふくまれるはずです。

 ところが, が平方数なら,定理 4-3によって,

が整数のとき, を素因数分解したときに,4 で

割ると 3 あまるような素因数は, 3 しか現れない。

と矛盾します。

 矛盾の原因は, が 8 で割ると 2 あまる数のとき,リュカ数列

に「 2 ×平方数」 が現れると仮定したことにあります。

 よって, が 8 で割ると 2 あまる数のとき,リュカ数列 には

「 2 ×平方数」は現れないことが証明できました。

(証明終)

 以上のことから, が奇数であるときと,4 の倍数のときと,8 で割ると 2 あまる数のとき,リュ

カ数列 には「 2 ×平方数」となる数は現れず, が 8 で割ると 6 あまる数のときには,

という「 2 ×平方数」が現れることがわかりました。

 結局,リュカ数列に現れる「 2 ×平方数」は,6 番目の 18 のみであることが証明できました。

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   第 7 章 <最終定理>

      フィボナッチ数列に現れる平方数は,1 と 144 だけであることを

   証明します。

 いよいよ,フィボナッチ数列には,平方数は 1 と 144 しか現れないことを証明するときがやっ

てきました。

 まず, が偶数のときを考えます。そして, が奇数のときは,4 で割って 1 あまるときと,4

で割って 3 あまるときに分けて考えます。

<偶数番目の場合>

が偶数の場合, のときに平方数となる。

 (証明)  なかなか面白い証明内容ですよ。

定理 3-2より,次のことがわかっています。

が整数のとき,

 この式の, に を代入すると,

 よって,

 結局,

となるので, が偶数のとき, とすれば, となります。

 ところで,定理 3-8により,次のことがわかっています。

が 3 の倍数でなければ, と は互いに素で,

が 3 の倍数であれば, と の最大公約数は 2 になる。

 そこで,まず が 3 の倍数でないときのことを考えてみます。

が 3 の倍数でないとき, ですから, も 3 の倍数でありません。

が平方数であるとすると,素因数分解すると

のようになりますが,たとえば 2 個が, と に 1 個ずつふくまれてし

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まうと, と が互いに素という条件に反してしまうので, は 2 個と

も, か にふくまれている必要があります。

 このように考えると, も も平方数であることがわかります。

が平方数となるのは,第 5 章 で, のときと のときだけ

であることが証明されています。すると, , または

となりますが,6 は 3 の倍数なのでダメです。

のときは,確かに は平方数なのでOKです。

 これで, が偶数でしかも 3 の倍数でないときは, のみが平方数

であることが証明できました。

 次に, が 3 の倍数であるときを考えます。

が 3 の倍数であるとき, ですから, も 3 の倍数です。

 このとき, と の最大公約数は 2 ですから,

とすることができます。ただし, と は互いに素です。

 このとき, です。

が平方数ならば, とすれば, となり, も

平方数です。

 そこで,先ほどの 3 の倍数でないときと同じ考え方により, も も 平方

数になります。

 よって, 「 2 ×平方数」, 「 2 ×平方数」なので,

も も,「 2 ×平方数」 であることがわかりました。

 ところで,  が「 2 ×平方数」となるのは,第 6 章 で, のとき

だけであることがわかっています。

 したがって, ですから, となり,12 は 3 の倍数なの

でOKで,確かに も平方数になっているのでOKです。

 これで, が偶数でしかも 3 の倍数のとき, は のときの

み平方数になることがわかりました。

 結局, が偶数のとき, は のときに平方数にな

ることが証明できました。

(証明終)

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<n が 4 で割ると 1 あまる数の場合>

が 4 で割ると 1 あまる数の場合, のときに平方数となる。

 (証明)  証明は,第 5 章の <n が 4 で割ると 1 あまる数の場合> と非常によく似

ています。

のとき, は,確かに平方数です。

 そこで, ,つまり, のときに, が平方数になったと仮定

し,矛盾を導きます。

は,4 でわると 1 あまる整数ですから, は 0 より大きい 4 の倍数で

す。そこで, とすると, は 0 より大きい偶数です。

 ここで, を素因数分解してみます。

を素因数分解したときに,3 が何回現れるかに注目します。 回現れたと

し, とします。ただし,3 が 1 回も現れないこともあるので, は 0 

であることも考えられます。

は偶数だったので,素因数分解すると 2 がふくまれています。 を で

割ったときの商が ですが,3 で何回割っても, の中の素因数である 2 は

そのまま残っているので, の中にも,素因数 2 は残っています。つまり,

は偶数です。

 また, は を 3 で割れるだけ割った残りですから, の中に,もう 3 は

ふくまれていません。つまり, は 3 の倍数ではありません。

で, ですから,

と表せることになります。

 ただし, は 0 以上の整数で, は 0 より大きい偶数でしかも 3 の倍数で

はない数です。

 ここで,定理 3-16により,次のことがわかっています。

が整数で, が偶数で 3 の倍数でないとき,

は で割り切れる。

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 この式を,何回も利用します。

に を代入して,

は で割り切れる。… 1 回目

に を代入してマイナスにして,

は で割り切れる。… 2 回目

に を代入して,

は で割り切れる。… 3 回目

 このように,i 番目ならば に を代入して,しかも偶数回目のと

きはマイナスにして,式をどんどん, 回目まで作っていきます。

回目は奇数回目ですから( のときも, なので奇数で

す),マイナスにはせず, に を代入することになり,

は で割り切れる。… 回目

 ところで,

でしたから, です。よって, 回目の式の中の,

は になり, は になります。

 よって, 回目の式を書き直すと,

は で割り切れる。… 回目

 もう一度,式だけ並べると,次のようになります。

は で割り切れる。… 1 回目

は で割り切れる。… 2 回目

は で割り切れる。… 3 回目

………………………………………………

………………………………………………

は で割り切れる。… 回目

 これらの,1 回目の式から 回目の式までを足します。

 すると,1 回目の式の と 2 回目の式の が打ち消し合

い,2 回目の式の と 3 回目の式の が打ち消し合い,と

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いうように,どんどん打ち消し合って,結局,

は で割り切れる。

となります。

 ところで, です。  また,定理 3-17により

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割ると あまる。

から,

は 4 で割ると 3 あまる数 で割り切れる。

となります。

 ところで,定理 4-4 により,次のことがわかっています。

 ある整数が,4 で割ると 3 あまる整数で割りきれるとき,その整

数を素因数分解すると,必ず 4 で割ると 3 あまる素数がふくまれ

る。

 ということから, には,4 で割ると 3 あまる素数がふくまれる

はずです。

 しかし, が平方数なら,定理 4-1によって,

が整数のとき, を素因数分解したときに,4 で割ると 3

あまるような素因数は現れない。

と矛盾します。

 矛盾の原因は, のときに が平方数であると仮定したことに

あります。

 よって, が 4 で割ると 1 あまる数の場合, のときのみ平方数

になることが証明できました。

(証明終)

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<n が 4 で割ると 3 あまる数の場合>

が 4 で割ると 3 あまる数の場合, に平方数は現れない。

 (証明)  証明は,第 6 章の <n が 8 で割ると 2 あまる数の場合> と非常によく似

ています。

が 4 で割ると 3 あまる数のときに, が平方数になったと仮定し,矛盾

を導きます。

拡張フィボナッチ数列の定理により,次のことがわかっています。

が 0 以上の整数のとき, が成り立つ。

のとき, ですから,

となります。

 よって, に平方数は現れないことを証明する代わりに, に平方数は

現れないことを証明してもOKです。

 ところで, が 4 で割ると 3 あまる数のとき, です。こ

のとき, となり,たとえば

のように, は,4 で割ると 1 あまる数です。

 もっときちんと説明すると,

なので, は,4 で

割ると 1 あまる数です。  したがって,

が 4 で割ると 1 あまるマイナスの数の場合,平方数は現れない。

ということを証明することになります。(この章の 「n が 4 で割ると1 あまる数

の場合」と似ています)

 そこで, で, は,4 でわると 1 あまる整数ですから,「 -4の倍数

+1」 とできます。そこで, とすると, は 0 より大きい偶数です。

 ここで, を素因数分解してみます。

を素因数分解したときに,3 が何回現れるかに注目します。 回現れたと

し, とします。ただし,3 が 1 回も現れないこともあるので, は 0 

であることも考えられます。

は偶数だったので,素因数分解すると 2 がふくまれています。 を で

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割ったときの商が ですが,3 で何回割っても, の中の素因数である 2

はそのまま残っているので, の中にも,素因数 2 は残っています。つま

り, は偶数です。

 また, は を 3 で割れるだけ割った残りですから, の中に,もう 3

はふくまれていません。つまり, は 3 の倍数ではありません。

で, ですから,

と表せることになります。

 ただし, は 0 以上の整数で, は 0 より大きい偶数でしかも 3 の倍数

ではない数です。

 ここで,定理 3-16により,次のことがわかっています。

が整数で, が偶数で 3 の倍数でないとき,

は で割り切れる。

 この式を,何回も利用します。

 1 回目はそのままで,

は で割り切れる。… 1 回目

に を代入してマイナスにして,

は で割り切れる。… 2 回目

に を代入して,

は で割り切れる。… 3 回目

 このように,i 番目ならば に を代入して,しかも偶数回

目のときはマイナスにして,式をどんどん, 回目まで作っていきます。

回目は奇数回目ですから( のときも, なので奇数で

す),マイナスにはせず, に を代入することになり,

は で割り切れる。… 回目

 ところで,

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でしたから, です。よって, 回目の式の中の,

は になり, は になります。

 よって, 回目の式を書き直すと,

は で割り切れる。… 回目

 もう一度,式だけ並べると,次のようになります。

は で割り切れる。… 1 回目

は で割り切れる。… 2 回目

は で割り切れる。… 3 回目

………………………………………………

………………………………………………

は で割り切れる。… 回目

 これらの,1 回目の式から 回目の式までを足します。

 すると,1 回目の式の と 2 回目の式の が打ち消し

合い,2 回目の式の と 3 回目の式の が打ち消し合

い,というように,どんどん打ち消し合って,結局,

は で割り切れる。

となります。

 ところで, です。  また,定理 3-17により

が偶数で 3 の倍数でないとき, は で割ると あまる。

から,

は 4 で割ると 3 あまる数 で割り切れる。

となります。

 ところで,定理 4-4 により,次のことがわかっています。

 ある整数が,4 で割ると 3 あまる整数で割りきれるとき,その整

数を素因数分解すると,必ず 4 で割ると 3 あまる素数がふくまれ

る。

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 ということから, には,4 で割ると 3 あまる素数がふくまれ

るはずです。

 しかし, が平方数なら,定理 4-1によって,

が整数のとき, を素因数分解したときに,4 で割ると

3 あまるような素因数は現れない。

と矛盾します。

 矛盾の原因は, が 4 で割ると 3 あまる数のとき, が平方数

であると仮定したことにあります。

 よって, が 4 で割ると 3 あまる数のとき,平方数は現れないこと

が証明できました。

(証明終)

 以上のことから,フィボナッチ数列 において, が偶数のときは の

ときに平方数となり, が 4 で割ると 1 あまる数のときは のときに平方数となり, が

4 で割ると 3 あまる数のときは平方数が現れないことがわかりました。

 結局,フィボナッチ数列に現れる平方数は,1 と 144 だけであることが証明できました。

 おしまい。

(証明終)

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