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経済産業省委託調査 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び 諸外国の税制改正動向に関する調査) 報告書 平成 30 年 3 月

平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

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経済産業省委託調査

平成 29 年度産業経済研究委託事業

(法人税改革の影響及び

諸外国の税制改正動向に関する調査)

報告書

平成 30 年 3 月

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<目 次>

第 I 章 本調査の目的および全体方針 ...................................................................................... 1

1. 調査の目的 ......................................................................................................................... 1

2. 調査の内容と本報告書の構成 ............................................................................................ 1

第 II 章 法人実効税率引き下げ・外形標準課税拡大の影響分析 .............................................. 3

1. 分析に用いたデータの概要 ................................................................................................ 3

2. 法人税改革の影響分析の枠組み......................................................................................... 9

3. 分析結果 ........................................................................................................................... 15

4. 分析結果のまとめ ............................................................................................................ 39

第 III 章 諸外国における法人税改革の動向 .......................................................................... 41

1. 法人税制を巡る各国の状況 .............................................................................................. 41

2. 米国 .................................................................................................................................. 44

3. 英国 .................................................................................................................................. 66

第 IV 章 アンケート調査 ...................................................................................................... 75

1. アンケート調査の概要 ..................................................................................................... 75

2. 保有現預金の用途 ............................................................................................................ 77

3. 最も重点的に取り組んだ無形資産投資 ............................................................................ 79

4. 課税標準額が取得価額の 5%となっている資産の課税標準額の割合 ............................. 81

5. 参考 .................................................................................................................................. 83

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第 I 章 本調査の目的および全体方針

1. 調査の目的

日本では、租税特別措置の改正と並行して法人税実効率の引下げを実施し、「成長志向の

法人税改革」を進めてきた。今後、経済実態に即して税制改正を推し進めるためには、近

年の税制改正が国内企業に与えた影響を検証し、より実効性のある税制改正を検討してい

く必要がある。

また、諸外国においても法人税等の税制改革の議論は進行しており、特に、米国や英国

においては、法人税率の大幅な引下げが進められると共に、課税方式の変更などについて

も検討されている。

そこで本調査では、今般の我が国の法人税改革や、研究開発税制、所得拡大促進税制等

の租税特別措置が、我が国企業に与える影響を調査する。また、諸外国の税制改正の動向

を調査する。それらや既存の統計等から得られる情報も踏まえ、政策立案に資する情報を

整備・分析する。

2. 調査の内容と本報告書の構成

本調査の内容と報告書の構成は以下の通りである。

(1) 定量分析

第Ⅱ章では、アンケートで収集したデータを用いて、平成 27 年度および平成 28 年度法

人税改革における法人実効税率引き下げ、外形標準課税拡大、租税特別措置縮減および欠

損金繰越控除限度額引き下げの影響を定量的に分析している。分析方法としては、税制改

革によって負担が変化しなかった企業、増税となった企業、減税となった企業についてア

ウトカムを比較している。分析対象としたアウトカムは、投資(国内外設備投資および研

究開発投資)、雇用(従業員数)、賃金(一人当たり年収)、生産性(一人当たり売上総利益

および全要素生産性)の 4つである。

アウトカムの比較にあたっては、単純比較に加えて、Propensity Score Matching を用い

た分析も行っている。

(2) 諸外国における法人税改革の動向

第Ⅲ章では、諸外国における法人税改革の動向を整理しており、以下の 3 つのパートで

構成されている。

第一は、諸外国における法人税改革のトレンドの把握である。諸外国では、法人税率引

き下げなどの改革が進んでいるが、その動向を整理している。

第二は、米国における法人税改革の調査結果である。米国では 2017年末に大規模な法人

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税改革が可決されており、連邦法人税率は従前の 35%から 21%まで引き下げられるととも

に、全世界所得課税からテリトリアル課税へと移行することになった。あわせて、新規設

備投資の即時償却および支払利子の損金算入制限や、国際課税制度の見直しなど、改正項

目は多岐に渡っている。米国における法人税改革の背景や評価を、現地調査を踏まえなが

ら整理している。

第三は、イギリスにおける法人税改革に関する調査結果である。イギリスは、主要先進

国で最も低い法人税率でありながら、経済活性化のため更なる法人税率の引き下げを実施

している。

(3) アンケート調査

第Ⅳ章では、本調査で実施したアンケート調査結果の概要を取りまとめている。アンケ

ート調査の対象は税法上の大企業(資本金 1 億円超)であり、企業の動向を把握するため

に実施した。

なお、本調査の実施にあたっては、税制の専門家や企業の関係者等の有識者から成る有

識者検討会を開催するとともに、有識者に対する個別ヒアリング調査を実施することによ

って、調査の進め方や検討の方向性について助言を得た。

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第 II 章 法人実効税率引き下げ・外形標準課税拡大の影響分析

1. 分析に用いたデータの概要

(1) データおよび分類

分析は、本調査で実施した資本金1億円以上の企業 19,530 社に対するアンケート調査を

用いる(アンケート調査の詳細は第 IV 章参照)。企業規模および産業の分類も第 IV 章と

同様である。

(2) 企業の特性比較

アンケート対象企業の特性を、法人税改革によって税負担が変化しなかった企業、増税

となった企業、減税となった企業のそれぞれについて示したものが表 1 である。増減税の

定義と企業規模・産業分類の定義については後述している。

アンケート回答企業は規模が大きくかつ所得の多い企業が多いため、全体としては「減

税」に区分される企業数が大きくなっている。

平均値をみると、変化なし企業は売上高からみても常用従業員数でみても規模がもっと

も大きく、次いで減税企業の規模が大きく、増税企業は全体として規模は小さい。しかし、

労働生産性の指標である常用従業員一人当たり売上総利益をみると、売上高や常用従業員

数と比べると、変化なし企業と減税企業の差はあまり大きくない。

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表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較

変化なし 増税 減税 変化なし 増税 減税 変化なし 増税 減税 変化なし 増税 減税 変化なし 増税 減税建設業 57 49 73 15,148 8,505 17,812 342.2 229.7 268.8 7.6 6.3 16.5 -1.9 4.5 -22.4素材型製造業 119 66 76 11,987 9,208 13,580 230.1 180.0 251.9 6.7 5.1 14.9 -1.9 6.3 -36.0加工組立型製造業 95 64 72 13,039 9,327 12,953 373.5 302.2 253.4 5.7 4.9 8.3 -1.2 8.9 -19.8その他製造業 109 51 51 13,200 7,674 11,752 360.8 277.0 281.3 9.2 6.1 10.3 -4.5 5.3 -17.3インフラサービス 298 121 107 8,039 6,516 8,914 315.9 304.6 211.1 13.6 7.3 19.1 -1.5 5.2 -17.7卸小売業 176 117 155 30,431 20,840 31,664 431.8 340.7 255.1 52.0 15.3 23.0 -1.6 6.3 -17.5金融・不動産業 133 113 122 4,566 626 6,692 113.9 46.1 103.0 42.3 25.4 46.4 -3.4 1.5 -23.0その他サービス業 175 190 110 16,963 3,615 7,099 413.3 329.0 218.9 20.5 8.2 24.9 -1.5 4.4 -11.7合計 1,162 771 766 14,567 7,787 14,793 329.6 261.0 222.2 21.8 10.7 22.7 -2.1 5.0 -20.1建設業 37 15 49 169,047 73,259 220,214 2,512.4 869.1 2,453.8 8.8 7.9 11.7 -60.0 37.5 -306.1素材型製造業 124 34 55 312,175 41,664 104,922 4,997.8 853.3 2,502.8 17.9 11.6 19.9 -5.7 37.1 -294.3加工組立型製造業 143 44 26 870,103 61,784 273,839 19,544.2 1,449.6 5,225.1 8.7 7.6 13.5 -230.9 61.2 -518.1その他製造業 73 23 25 152,664 45,608 83,460 3,788.0 1,414.9 1,702.0 13.6 14.3 19.2 10.2 26.5 -86.3インフラサービス 163 47 35 109,929 44,609 40,261 4,487.7 764.7 568.4 42.6 22.8 32.2 -30.0 33.2 -72.9卸小売業 90 45 56 648,629 124,544 360,453 7,962.1 2,989.2 3,000.0 17.9 16.2 21.1 3.6 49.1 -148.0金融・不動産業 113 70 64 96,928 15,136 106,251 1,432.0 601.7 731.3 40.9 59.5 48.1 -62.6 37.2 -181.1その他サービス業 91 42 28 93,708 80,811 45,559 3,440.6 1,219.8 1,590.0 45.4 12.7 57.5 -22.3 72.8 -140.3合計 834 320 338 351,957 57,885 163,948 7,140.2 1,254.6 2,127.9 24.6 23.5 27.6 -60.3 45.5 -216.8

1,996 1,091 1,104 154,640 22,430 60,123 3,146.1 551.0 798.8 23.0 14.5 24.2 -26.3 16.9 -80.0

中堅企業

大企業

合計

ネット増減税(百万円)

平均値常用従業員一人当たり売上総利益(百万円)

企業数売上高(百万円) 常用従業員数(人)

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(3) 母集団とアンケート回答企業の比較分析

① 会社標本調査との比較

表 2~表 4は、会社標本調査(平成 27年度)とアンケート回答企業の属性を、所得区分

と資本金区分で比較したものである。表 3は全体に占める各セルの割合を示しており、表 4

は資本金企業ごとの企業数に占める各セルの割合を示している。表 4 をみると分かるよう

に、資本金 100 億円超の企業を除くと、同じ資本金区分内でみても、アンケート回答企業

の方が欠損法人が少なく、所得が大きな企業が多い傾向にあることが分かる。

② 経済センサスとの比較

表 5~表 7は同様に、経済センサス(平成 26年基礎調査)とアンケート回答企業の属性

を、産業区分と資本金区分で比較したものである。表 7 で見ても、アンケート回答企業は

資本金 10 億円未満の企業が少なく、資本金 10 億円以上の企業についても、全体的には資

本金 50億円以上の超大企業の割合が高いことが分かる。産業別にみると、アンケート回答

企業は経済センサスよりもインフラサービスの割合が高く、卸小売の割合が低くなってい

る(表 6)。

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表 2 法人数の比較(会社標本調査・アンケート)

表 3 全体割合の比較(会社標本調査・アンケート)

表 4 資本金区分ごとの割合の比較(会社標本調査・アンケート)

会社標本調査 アンケート資本金区分 資本金区分

10億円以下100億円以下

100億円超合計

(1億円超)10億円以下

100億円以下

100億円超合計

(1億円超)所得区分 欠損法人 3,816 776 214 4,806 所得区分 欠損法人 417 138 67 622

1億円以下 5,501 645 119 6,265 1億円以下 933 117 18 106810億円以下 4,760 1,169 123 6,052 10億円以下 1273 344 44 166110億円超 1,211 1,420 626 3,257 10億円超 385 459 332 1176合計 15,288 4,010 1,082 20,380 合計 3,008 1058 461 4,527

会社標本調査 アンケート資本金区分 資本金区分

10億円以下100億円以

下100億円超 合計 10億円以下

100億円以下

100億円超合計

(1億円超)所得区分 欠損法人 18.7% 3.8% 1.1% 23.6% 所得区分 欠損法人 9.2% 3.0% 1.5% 13.7%

1億円以下 27.0% 3.2% 0.6% 30.7% 1億円以下 20.6% 2.6% 0.4% 23.6%10億円以下 23.4% 5.7% 0.6% 29.7% 10億円以下 28.1% 7.6% 1.0% 36.7%10億円超 5.9% 7.0% 3.1% 16.0% 10億円超 8.5% 10.1% 7.3% 26.0%合計 75.0% 19.7% 5.3% 100.0% 合計 66.4% 23.4% 10.2% 100.0%

会社標本調査 アンケート資本金区分 資本金区分

10億円以下100億円以

下100億円超 合計 10億円以下

100億円以下

100億円超 合計

所得区分 欠損法人 25.0% 19.4% 19.8% 23.6% 所得区分 欠損法人 13.9% 13.0% 14.5% 13.7%1億円以下 36.0% 16.1% 11.0% 30.7% 1億円以下 31.0% 11.1% 3.9% 23.6%10億円以下 31.1% 29.2% 11.4% 29.7% 10億円以下 42.3% 32.5% 9.5% 36.7%10億円超 7.9% 35.4% 57.9% 16.0% 10億円超 12.8% 43.4% 72.0% 26.0%合計 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 合計 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%

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表 5 法人数の比較(経済センサス・アンケート)

表 6 全体割合の比較(経済センサス・アンケート)

経済センサス アンケート資本金区分 資本金区分1億円超10億円未満

10~50億円未満

50億円以上 1億円超計1億円超10億円未満

10~50億円未満

50億円以上 1億円超計

産業 建設業 1,679 157 98 1,934 産業 建設業 198 72 26 296素材型製造業 1,973 429 312 2,714 素材型製造業 293 141 83 517加工組立型製造業 2,133 468 363 2,964 加工組立型製造業 256 135 97 488その他製造業 1,911 294 133 2,338 その他製造業 241 89 29 359インフラサービス 3,538 582 260 4,380 インフラサービス 587 176 62 825卸小売業 5,301 677 307 6,285 卸小売業 493 155 41 689金融・不動産業 2,845 474 390 3,709 金融・不動産業 422 146 94 662その他サービス業 4,476 575 343 5,394 その他サービス業 536 135 29 700合計(非該当除く) 23,856 3,656 2,206 29,718 合計(非該当除く) 3,026 1049 461 4,536

経済センサス アンケート資本金区分 資本金区分1億円超10億円未満

10~50億円未満

50億円以上 1億円超計1億円超10億円未満

10~50億円未満

50億円以上 1億円超計

産業 建設業 5.6% 0.5% 0.3% 6.5% 産業 建設業 4.4% 1.6% 0.6% 6.5%素材型製造業 6.6% 1.4% 1.0% 9.1% 素材型製造業 6.5% 3.1% 1.8% 11.4%加工組立型製造業 7.2% 1.6% 1.2% 10.0% 加工組立型製造業 5.6% 3.0% 2.1% 10.8%その他製造業 6.4% 1.0% 0.4% 7.9% その他製造業 5.3% 2.0% 0.6% 7.9%インフラサービス 11.9% 2.0% 0.9% 14.7% インフラサービス 12.9% 3.9% 1.4% 18.2%卸小売業 17.8% 2.3% 1.0% 21.1% 卸小売業 10.9% 3.4% 0.9% 15.2%金融・不動産業 9.6% 1.6% 1.3% 12.5% 金融・不動産業 9.3% 3.2% 2.1% 14.6%その他サービス業 15.1% 1.9% 1.2% 18.2% その他サービス業 11.8% 3.0% 0.6% 15.4%合計(非該当除く) 80.3% 12.3% 7.4% 100.0% 合計(非該当除く) 66.7% 23.1% 10.2% 100.0%

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表 7 産業区分ごとの割合の比較(経済センサス・アンケート)

経済センサス アンケート資本金区分 資本金区分1億円超10億円未満

10~50億円未満

50億円以上 1億円超計1億円超10億円未満

10~50億円未満

50億円以上 1億円超計

産業 建設業 86.8% 8.1% 5.1% 100.0% 産業 建設業 66.9% 24.3% 8.8% 100.0%素材型製造業 72.7% 15.8% 11.5% 100.0% 素材型製造業 56.7% 27.3% 16.1% 100.0%加工組立型製造業 72.0% 15.8% 12.2% 100.0% 加工組立型製造業 52.5% 27.7% 19.9% 100.0%その他製造業 81.7% 12.6% 5.7% 100.0% その他製造業 67.1% 24.8% 8.1% 100.0%インフラサービス 80.8% 13.3% 5.9% 100.0% インフラサービス 71.2% 21.3% 7.5% 100.0%卸小売業 84.3% 10.8% 4.9% 100.0% 卸小売業 71.6% 22.5% 6.0% 100.0%金融・不動産業 76.7% 12.8% 10.5% 100.0% 金融・不動産業 63.7% 22.1% 14.2% 100.0%その他サービス業 83.0% 10.7% 6.4% 100.0% その他サービス業 76.6% 19.3% 4.1% 100.0%合計(非該当除く) 80.3% 12.3% 7.4% 100.0% 合計(非該当除く) 66.7% 23.1% 10.2% 100.0%

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2. 法人税改革の影響分析の枠組み

(1) 増税および減税の定義

アンケートで収集した企業別データを用いて、平成 28 年度および平成 27 年度税制改正

によって変化した法人実効税率の引き下げ(国税法人税減税分、法人住民税法人税割減税

分、地方法人税減税分、法人事業税所得割減税)、法人事業税の外形標準課税増税、租税特

別措置縮減および欠損金の繰越控除限度額引き下げによる増税の影響を、それぞれ分析す

る。以下、平成 28年度税制改正を念頭に置いて説明する。

平成 28年度税制改正を含む、近年の法人税改革の動向を整理したものが表 8である。平

成 28 年度は国税法人税率が 0.5%、法人事業税所得割(地方法人特別税を含む)が 2.4%、

それぞれ引き下げられた。法人住民税法人税割率と地方法人税率は変更されていないが、

課税ベースである国税法人税額が減税されたため、税額は引き下げられた。これにより法

人実効税率は、平成 27年度の 32.11%から 29.97%まで低下した。

その一方で、法人事業税の外形標準課税が強化されており、付加価値は 0.72%から 1.20%

へ、資本割は 0.3%から 0.5%へとそれぞれ引き上げられている。さらに欠損金の繰越控除

限度額については、平成 27年度は欠損金控除前の所得の 65%まで控除できる制度だったが、

平成 28年度は上限が 60%となった。

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表 8 分析対象とした法人税の改革項目

(注)いずれの年度も標準税率。法人事業税所得割率には地方法人特別税を含む。H25 年

度の国税法人税率および法人実効税率には、復興特別法人税を含む。H28年度については、青字は減税項目で、赤字は増税項目。

増税および減税の定義は以下のように行っている。まず、平成 28年度の企業データを用

いて以下の税負担率を計算する。分母はキャッシュフローを表しており、キャッシュフロ

ーに対する税負担率を計算していることになる。分子の法人事業税額は所得割、付加価値

割、資本割の合計であり、所得割には地方法人特別税を含む。また法人住民税法人税割額

には地方法人税額も含まれる。

税負担率 =国税法人税額+法人事業税額+法人住民税法人税割額

税引前当期純利益+減価償却費

次に、平成 28年度改正における法人実効税率の引き下げ、外形標準課税増税、および欠

損金の繰越控除限度額の引き下げがなかったと仮定した場合の負担率を、上記の計算式に

従って算出する。税負担率の実績値と法人実効税率引き下げ・外形標準課税増税がなかっ

たと仮定した場合の税負担率の差分を計算し、±1%pt 以内の変化に留まっているときは

H25年度 H26年度 H27年度 H28年度

37.00% 34.62% 32.11% 29.97%

28.05% 25.5% 23.9% 23.4%

- - 4.4% 4.4%

17.3% 17.3% 12.9% 12.9%

7.2% 7.2% 6.0% 3.6%

0.48% 0.48% 0.72% 1.20%

0.2% 0.2% 0.3% 0.5%

80/100 80/100 65/100 60/100

外形標準課税

国税法人税率

法人事業税

所得割率

付加価値割率

資本割率

法人実効税率

法人住民税法人税割

地方法人税

欠損金の繰越控除限度額

Page 15: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

11

「変化なし」、+1%pt 超の場合は「負担増」、-1%pt より小さい場合は「負担減」と定義

した。

また欠損金の繰越控除額については、アンケートを用いて控除上限に当たっている企業

を特定することは可能だが、控除上限が緩和されたときにどの程度まで控除するかは分か

らない。そこで控除上限に当たっている企業については、控除上限が 65%であれば 65%ま

で満額控除したと仮定して増税額を算出した。

(2) 比較するアウトカム

① 概要

変化なし、増税、減税の各企業について、以下のアウトカムを比較することによって法

人税改革の影響を分析する。

<投資関連>

対売上高国内設備投資比率の前年度からの変化(%)

対売上高海外設備投資比率の前年度からの変化(%)

対売上高研究開発投資比率の前年度からの変化(%)

<雇用関連>

常用従業員数の前年度からの変化率(%)

正社員・正職員数の前年度からの変化率(%)

パートタイム従業員数の前年度からの変化率(%)

<賃金関連>

常用従業員一人当たり平均年収の変化(=労務費・人件費/常用従業員数)

正社員・正職員一人当たり年収の変化(算出方法は後述)

パートタイム従業員一人当たり年収の変化(算出方法は後述)

<生産性関連>

常用従業員一人当たり売上総利益の変化

全要素生産性(TFP)上昇率(算出方法は後述)

② 正社員一人当たり年収とパートタイム従業員一人当たり年収の算出方法

アンケート調査では、各企業の労務費・人件費の総額しか把握していないため、正社員

一人当たりの年収とパートタイム従業員一人当たりの年収を把握することはできない。そ

こで以下のような手順によって、正社員一人当たり年収とパートタイム従業員一人当たり

年収を算出した。

正社員一人当たり年収=

(正社員数×産業別正社員平均年収)/(正社員数×産業別正社員平均年収+

Page 16: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

12

パートタイム従業員数×産業別パートタイム労働者平均年収)×労務費・人件費/正社員

パートタイム従業員一人当たり年収=

(パートタイム従業員数×産業別パートタイム労働者平均年収)/

(正社員数×産業別正社員平均年収

+パートタイム従業員数×産業別パートタイム労働者平均年収)

×労務費・人件費/パートタイム従業員数

正社員数、パートタイム従業員数、労務費・人件費はアンケート調査の各企業別の値を

用いた、産業別正社員平均年収と産業別パートタイム労働者平均年収は、賃金構造基本調

査の産業大分類の各年の数値を用いた。

③ TFP 上昇率の算出方法

アンケート調査では、資本ストックに関する項目を把握することはできないため、厳密

な意味での TFP 上昇率を測定することはできないが、以下のような方法によって簡便に算

出を行った。

付加価値額が以下のようなコブ・ダグラス型生産関数によって決定されると仮定する。

𝑌 = 𝐴𝐾𝛼𝐿1−𝛼

ここで、𝑌は付加価値額、𝐴は TFP、𝐾は資本ストック、𝐿は労働投入量、𝛼は資本分配率

である。両辺を、𝐿で割ることによって一人当たりの付加価値額の式に変形すると以下のよ

うになる。

𝑦 = 𝐴𝑘𝛼

ここで、𝑦は一人当たり付加価値額、𝑘は一人当たり資本ストック(資本装備率)である。

両辺を自然対数を取って時間で微分することで以下の式が得られる。

�̇�

𝑦=�̇�

𝐴+ 𝛼

�̇�

𝑘

データから、一人当たり付加価値増加率(�̇�/𝑦)と、一人当たり資本ストック増加率(�̇�/𝑘)を

計算すれば、その差分として TFP 上昇率(�̇�/𝐴)を算出することが出来る。具体的には、

一人当たり付加価値増加率(�̇�/𝑦)には常用従業員一人当たり売上総利益の変化率を用いる。

Page 17: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

13

一人当たり資本ストック増加率(�̇�/𝑘)については、𝑘は国民経済計算から産業別の資本装

備率を算出し、その値を用いる。�̇�は(設備投資-減価償却費)/常用従業員数から算出した。

以上の変数を当てはめることによって、企業別の TFP 上昇率(�̇�/𝐴)を算出することがで

きる。なお𝛼は一律で 1/3とした。

(3) 分析方法

法人税改革による影響を把握するため、変化なし、増税、減税の各企業について、以下

の方法を用いてアウトカム指標の変化を分析する。なお、いずれの分析でも、外形標準課

税の対象外の企業(電気供給業、ガス供給業、保険業)は分析対象から除外している。

① 単純比較

第一が単純比較である。変化なし、増税、減税の各企業について、アウトカム指標の平

均値を計算して単純比較を行う。

② Propensity Score Matching を用いた比較

第二が Propensity Score Matchingを用いた比較分析である。

税制の効果を測定する場合、しばしば「逆の因果」が問題となる。「逆の因果」のイメー

ジを示したものが図 1 である。たとえば税制改革によって減税になった企業は、投資や雇

用などを積極的に増加させる可能性があるが、減税企業と増税企業を単純に比較しても、

単に業績の良い企業が減税企業である可能性がある。

図 1 「逆の因果」のイメージ

こうした「逆の因果」が存在する場合、減税・増税の違いが設備投資等のアウトカム指

標に及ぼす効果のみを抽出することは簡単ではないが、近年は Propensity Score Matching

を用いて政策効果を抽出する方法が用いられるようになってきている。 Propensity Score

設備投資減税

多くの設備投資を行った企業ほど減税になる

減税によって設備投資が増加

Page 18: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

14

Matching を用いれば、増減税の違いがアウトカム指標どの程度増加させたかについて、よ

り厳密に検証を行うことが可能となる。

Propensity Score Matching のイメージを示したものが図 2である。まず分析対象のサン

プルを、減税企業と増税企業に分ける。次に Probit 分析や Logit 分析を用いて各企業の減

税確率(減税となる確率、Propensity Score)を計算する。

増税企業と減税企業から、減税確率が近い企業をマッチングし、それらの企業のアウト

カム指標を比較する。マッチングした企業のアウトカムの差が、減税によって増加したア

ウトカムとなる。

図 2 Propensity Score Matching による分析のイメージ

分析にあたっては、以下のような企業特性がほぼ似通っている企業をマッチングして、

アウトカム指標の比較を行っている。

常用従業員数(前年度)

常用従業員一人当たり売上総利益(前年度)

売上高(前年度)

資本金

常用従業員に占めるパートタイム労働者の割合(前年度)

海外売上高の有無(前年度)

創業年

上場の有無

産業

減税企業 増税企業

2つの企業の設備投資を比較分析

減税確率が近い企業をマッチング

Page 19: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

15

3. 分析結果

(1) 単純比較(平成 28 年度データを用いた分析)

平成 28年度データを用いた単純比較の結果をみていく。ここでは産業を、建設業、製造

業、卸小売業、その他に集約したうえで、変化なし企業、増税企業、減税企業のアウトカ

ム指標の比較を行った。グラフは変化なし企業との差分で示している。

① 投資関連

対売上高国内設備投資比率の変化 a)

変化なし企業と比較した場合の対売上高国内設備投資比率の変化をみると、大企業の減

税企業は全体として投資を抑制しているが、中堅企業の建設業・製造業は投資を拡大して

いる音が分かる。増税企業については、大企業の卸小売業やその他などで投資を減少させ

ているが、全体としては変化なし企業と大差ないことが分かる。

資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は 0.2%、増税企業は 0.1%、減税企

業は+0.0%となっている。

図 3 対売上高国内設備投資比率の変化(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)

-1.2%

-1.0%

-0.8%

-0.6%

-0.4%

-0.2%

0.0%

0.2%

0.4%

0.6%

0.8%

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 20: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

16

対売上高海外設備投資比率 b)

変化なし企業と比較した場合の対売上高海外設備投資比率の変化をみると、減税企業は

海外設備投資を全体として減少させていることが分かる。増税企業については、逆に変化

なし企業よりもやや増加させている。

ただし資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は+0.00%、増税企業は+0.03%、

減税企業は-0.04%であり、大きな差は確認されない。

図 4 対売上高海外設備投資比率の変化(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)

-0.3%

-0.2%

-0.1%

0.0%

0.1%

0.2%

0.3%

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 21: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

17

対売上高研究開発投資比率 c)

変化なし企業と比較した場合の対売上高研究開発投資比率の変化をみると、減税企業に

ついては大企業製造業については大きくなっているが、全体としては変化なし企業とほぼ

同水準であることが分かる。中堅企業のその他では変化なし企業の方が研究開発投資の増

加幅が大きい。一方、増税企業については、全体として研究開発投資を縮小していること

が分かる。

資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は+0.11%、増税企業は-0.02%、減税

企業は+0.13%となっている。

図 5 対売上高研究開発比率の変化(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)

-0.4%

-0.2%

0.0%

0.2%

0.4%

0.6%

0.8%

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 22: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

18

② 雇用関連:常用従業員数の変化率

変化なし企業と比較した場合の常用従業員数の変化率をみると、減税企業と変化なし企

業ではほとんど差はないことが分かる。ただし大企業に限定すると、減税企業は全体とし

て雇用を拡大させている。一方、増税企業については全体として雇用を減らしていること

が分かる。

資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は+2.2%、増税企業は+1.1%、減税

企業は+2.3%となっている。

図 6 常用従業員数の変化率(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)

-4%

-3%

-2%

-1%

0%

1%

2%

3%

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 23: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

19

③ 賃金関連:常用従業員一人当たり年収の変化額

変化なし企業と比較した場合の常用従業員一人当たり年収の変化額をみると、減税企業

は全体として年収が増加している傾向がある。特に大企業で年収の増加幅が大きい。増税

企業についても大企業を中心に年収を増加させていることが分かる。

資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は-0.6 万円、増税企業は+3.9 万円、

減税企業は+4.7万円となっている。

図 7 常用従業員一人当たりの年収変化額(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)(万円)

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

25

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 24: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

20

④ 生産性関連

常用従業員一人当たり売上総利益の変化額 a)

変化なし企業と比較した場合の常用従業員一人当たり売上総利益の変化額をみると、減

税企業は全体として一人当たりの売上総利益が増加していることが分かる。一方で、増税

企業については全体として変化なし企業と大差はない。

資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は+4.4万円、増税企業は+11.2万円、

減税企業は+37.8万円となっている。

図 8 常用従業員一人当たり売上総利益の変化額(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)(百万円)

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 25: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

21

TFP 上昇率 b)

変化なし企業と比較した場合の TFPをみると、減税企業は全体として TFP上昇率が高い

ことが分かる。一方で、増税企業については変化なし企業と比較すると TFP上昇率が低い。

資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は+0.7%、増税企業は-0.2%、減税

企業は+1.1%となっている。

図 9 TFP 上昇率(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)(%)

-4%

-2%

0%

2%

4%

6%

8%

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 26: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

22

(2) 単純比較(平成 27 年度データを用いた分析)

前節と同様の単純比較を、平成 27年度データについても見ていく。

① 投資関連

対売上高国内設備投資比率の変化 a)

変化なし企業と比較した場合の対売上高国内設備投資比率の変化をみると、中堅企業の

減税企業は全体として投資を抑制しているが、大企業は投資を拡大している音が分かる。

増税企業については、全体として投資を減少させているが、変化なし企業と大差ないこと

が分かる。

資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は 0.1%、増税企業は+0.0%、減税企

業は+0.1%となっている。

図 10 対売上高国内設備投資比率の変化(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)

-2.0%

-1.5%

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 27: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

23

対売上高海外設備投資比率 b)

変化なし企業と比較した場合の対売上高海外設備投資比率の変化をみると、減税企業は

海外設備投資を全体として増加させていることが分かる。増税企業については、変化なし

企業と大差はない。

資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は-0.01%、増税企業は+0.01%、減税

企業は+0.00%であり、大きな差は確認されない。

図 11 対売上高海外設備投資比率の変化(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)

-0.2%

-0.1%

-0.1%

0.0%

0.1%

0.1%

0.2%

0.2%

0.3%

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 28: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

24

対売上高研究開発投資比率 c)

変化なし企業と比較した場合の対売上高研究開発投資比率の変化をみると、減税企業に

ついては中堅企業を中心に研究開発投資を減少させていることが分かる。増税企業につい

ても、全体として研究開発投資を縮小している。

資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は+0.13%、増税企業は-0.02%、減税

企業は+0.04%となっている。

図 12 対売上高研究開発比率の変化(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)

-0.4%

-0.3%

-0.3%

-0.2%

-0.2%

-0.1%

-0.1%

0.0%

0.1%

0.1%

0.2%

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 29: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

25

② 雇用関連:常用従業員数の変化率

変化なし企業と比較した場合の常用従業員数の変化率をみると、減税企業と変化なし企

業ではほとんど差はないことが分かる。一方、増税企業については全体として雇用を減ら

していることが分かる。

資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は+2.0%、増税企業は+0.7%、減税

企業は+2.0%となっている。

図 13 常用従業員数の変化率(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)

-7%

-6%

-5%

-4%

-3%

-2%

-1%

0%

1%

2%

3%

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 30: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

26

③ 賃金関連:常用従業員一人当たり年収の変化額

変化なし企業と比較した場合の常用従業員一人当たり年収の変化額をみると、減税企業

は全体として年収が増加している傾向がある。特に大企業で年収の増加幅が大きい。増税

企業については中堅企業を中心に年収を減少させていることが分かる。

資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は+5.1万円、増税企業は+3.9万円、

減税企業は+8.3万円となっている。

図 14 常用従業員一人当たりの年収変化額(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)(万円)

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 31: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

27

④ 生産性関連

常用従業員一人当たり売上総利益の変化額 a)

変化なし企業と比較した場合の常用従業員一人当たり売上総利益の変化額をみると、減

税企業は全体として一人当たりの売上総利益が増加していることが分かる。一方で、増税

企業についても、増加幅は小さいものの変化なし企業よりも一人当たり売上総利益が増加

している。

資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は-7.4万円、増税企業は+12.3万円、

減税企業は+16.3万円となっている。

図 15 常用従業員一人当たり売上総利益の変化額(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)(百万円)

-0.6

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 32: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

28

TFP 上昇率 b)

変化なし企業と比較した場合の TFPをみると、減税企業は全体として TFP上昇率が高い

ことが分かる。一方で、増税企業については変化なし企業とほぼ同水準となっている。

資本金規模・産業の合計値でみると、変化なし企業は-0.1%、増税企業は+0.0%、減税

企業は+2.9%となっている。

図 16 TFP 上昇率(変化なし企業との比較)

(資本金規模別・産業別)(%)

-6%

-4%

-2%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

建設業

製造業

卸小売業

その他

建設業

製造業

卸小売業

その他

1億円超10億円未満 10億円以上 合計

増税 減税

Page 33: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

29

(3) Propensity Score Matching を用いた分析(平成 28 年度データを用いた分析)

平成 28年度データを用いて、平成 27年度から平成 28年度にかけての変化分をアウトカ

ム指標として、減税や増税が企業行動に与えた影響を分析する。

① 投資関連

減税企業、変化なし企業、増税企業のそれぞれについて投資への影響をみると、減税企

業は変化なし企業と比較して、統計的に有意に海外設備投資を減少させていることが分か

る。国内設備投資と研究開発投資については、減税企業と変化なし企業の間で統計的に有

意な差は生まれていないが、減税により空洞化を抑制する効果があった可能性がある。

増税企業については、変化なし企業と比較して研究開発投資を有意に減少させている。

図 17 対売上高投資比率の変化(Propensity Score Matching)(%)

(注1)「差分」の白抜きは統計的に有意ではない結果、色つきは統計的に有意な結果。 (注2)Propensity Score Matchingではマッチングの過程で分析対象企業の範囲は異なってくる。そこで、グラフ化にあたっては以下のような便宜的な計算を行った。まず、減税企業・変化なし企業の比較分析と、増税企業・変化なし企業の比較分析を行い、双方の分析においてマッチングされた変化なし企業の、対売上高投資比率の変化額の平均値を算出する。次に、双方の比較分析における差分を足すことで、減税企業と増税企業の対売上高投資比率を算出した。

-1.5%

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

国内設備投資(対売上高) 海外設備投資(対売上高) 研究開発投資(対売上高)

減税企業 変化なし

増税企業 差分(=減税企業-変化なし企業)

差分(=増税企業-変化なし企業)

Page 34: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

30

② 雇用関連

減税企業、変化なし企業、増税企業のそれぞれについて雇用への影響をみると、減税企

業は変化なし企業と全体的に大きな差はないが、パート従業員については減税企業の方が

有意に増加させている。一方、増税企業については、変化なし企業と比較して、常用従業

員と正社員を統計的に有意に減らしていることが分かる。

図 18 雇用増加率(Propensity Score Matching)(%)

(注1)「差分」の白抜きは統計的に有意ではない結果、色つきは統計的に有意な結果。 (注2)Propensity Score Matchingではマッチングの過程で分析対象企業の範囲は異なってくる。そこで、グラフ化にあたっては以下のような便宜的な計算を行った。まず、減税企業・変化なし企業の比較分析と、増税企業・変化なし企業の比較分析を行い、双方の分析においてマッチングされた変化なし企業の、雇用変化率の変化額の平均値を算出する。次に、双方の比較分析における差分を足すことで、減税企業と増税企業の雇用変化率を算出した。

-3.0%

-2.0%

-1.0%

0.0%

1.0%

2.0%

3.0%

4.0%

常用従業員数 正社員数 パート従業員数

減税企業 変化なし

増税企業 差分(=減税企業-変化なし企業)

差分(=増税企業-変化なし企業)

Page 35: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

31

③ 賃金関連

減税企業、変化なし企業、増税企業のそれぞれについて賃金への影響をみると、減税企

業および増税企業は、いずれも変化なし企業と比較して統計的に有意な差はない。

図 19 一人当たり賃金変化額(Propensity Score Matching)(万円)

(注1)「差分」の白抜きは統計的に有意ではない結果、色つきは統計的に有意な結果。 (注2)Propensity Score Matchingではマッチングの過程で分析対象企業の範囲は異なってくる。そこで、グラフ化にあたっては以下のような便宜的な計算を行った。まず、減税企業・変化なし企業の比較分析と、増税企業・変化なし企業の比較分析を行い、双方の分析においてマッチングされた変化なし企業の、一人当たり賃金変化額の平均値を算出する。次に、双方の比較分析における差分を足すことで、減税企業と増税企業の一人当たり賃金変化額を算出した。

-4

-2

0

2

4

6

8

一人当たり賃金 正社員一人当たり賃金 パート従業員一人当たり賃金

減税企業 変化なし

増税企業 差分(=減税企業-変化なし企業)

差分(=増税企業-変化なし企業)

Page 36: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

32

④ 生産性関連

減税企業、変化なし企業、増税企業のそれぞれについて生産性への影響をみると、減税

企業は変化なし企業と比較して、常用従業員一人当たり売上総利益を統計的に有意に増加

させている。

変化なし企業と比較して減税企業は一人当たり 40.9 万円ほど労働生産性を改善させてい

る。一方、変化なし企業と比較した場合の増税企業の一人当たり売上総利益の増加につい

ては、統計的に有意な差とはなっていない。

図 20 常用従業員一人当たり売上総利益の変化額(Propensity Score Matching)(百万円)

(注1)「差分」の白抜きは統計的に有意ではない結果、色つきは統計的に有意な結果。 (注2)Propensity Score Matchingではマッチングの過程で分析対象企業の範囲は異なってくる。そこで、グラフ化にあたっては以下のような便宜的な計算を行った。まず、減税企業・変化なし企業の比較分析と、増税企業・変化なし企業の比較分析を行い、双方の分析においてマッチングされた変化なし企業の、一人当たり売上総利益の変化額の平均値を算出する。次に、双方の比較分析における差分を足すことで、減税企業と増税企業の一人当たり売上総利益の変化額を算出した。

-0.10

-0.05

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

0.45

一人当たり売上総利益

減税企業 変化なし

増税企業 差分(=減税企業-変化なし企業)

差分(=増税企業-変化なし企業)

Page 37: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

33

同様に、TFP上昇率への影響をみてみる。「常用従業員一人当たり売上総利益」は全要素

生産性が上昇していなくても、資本装備率が高まれば、見かけ上は上昇してしまうことに

なるが、TFP上昇率はそうした資本装備率上昇の影響を取り除くことができる。

減税企業、変化なし企業、増税企業のそれぞれについて TFP 上昇率への影響をみると、

減税企業は変化なし企業と比較して TFP が上昇しているが統計的に有意ではなくなる。増

税企業についても変化なし企業と比較して TFP 上昇率は低下しているが、統計的に有意な

差とはなっていない。

図 21 TFP 上昇率(Propensity Score Matching)(%)

(注1)「差分」の白抜きは統計的に有意ではない結果、色つきは統計的に有意な結果。 (注2)Propensity Score Matchingではマッチングの過程で分析対象企業の範囲は異なってくる。そこで、グラフ化にあたっては以下のような便宜的な計算を行った。まず、減税企業・変化なし企業の比較分析と、増税企業・変化なし企業の比較分析を行い、双方の分析においてマッチングされた変化なし企業の、TFP 上昇率の平均値を算出する。次に、双方の比較分析における差分を足すことで、減税企業と増税企業の TFP上昇率を算出した。

-2%

-1%

0%

1%

2%

3%

TFP上昇率

減税企業 変化なし

増税企業 差分(=減税企業-変化なし企業)

差分(=増税企業-変化なし企業)

Page 38: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

34

(4) Propensity Score Matching を用いた分析(平成 27 年度データを用いた分析)

前節と同様の分析を、平成 27年度データを用いて、平成 26年度から平成 27年度にかけ

ての変化分をアウトカム指標として行う。対象とするのは平成 27年度の法人税改革であり、

改革による変化なし、増税および減税の定義は前節までと同様だが、平成 27年度に実施さ

れた研究開発税制の改正についても織り込んだうえで、増減税額を算出した。

① 投資関連

減税企業、変化なし企業、増税企業のそれぞれについて投資への影響をみると、減税企

業は変化なし企業と統計的に有意な差は確認されない。しかし増税企業については、変化

なし企業と比較して、統計的に有意に研究開発投資を減少させていることが分かる。

図 22 対売上高投資比率の変化(Propensity Score Matching)(%)

(注1)「差分」の白抜きは統計的に有意ではない結果、色つきは統計的に有意な結果。 (注2)Propensity Score Matchingではマッチングの過程で分析対象企業の範囲は異なってくる。そこで、グラフ化にあたっては以下のような便宜的な計算を行った。まず、減税企業・変化なし企業の比較分析と、増税企業・変化なし企業の比較分析を行い、双方の分析においてマッチングされた変化なし企業の、対売上高投資比率の変化額の平均値を算出する。次に、双方の比較分析における差分を足すことで、減税企業と増税企業の対売上高投資比率を算出した。

-1.5%

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

国内設備投資(対売上高) 海外設備投資(対売上高) 研究開発投資(対売上高)

減税企業 変化なし

増税企業 差分(=減税企業-変化なし企業)

差分(=増税企業-変化なし企業)

Page 39: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

35

② 雇用関連

減税企業、変化なし企業、増税企業のそれぞれについて雇用への影響をみると、減税企

業は変化なし企業と大きな差はないが、増税企業の場合、常用従業員数を有意に減少させ

ている。

図 23 雇用増加率(Propensity Score Matching)(%)

(注1)「差分」の白抜きは統計的に有意ではない結果、色つきは統計的に有意な結果。 (注2)Propensity Score Matchingではマッチングの過程で分析対象企業の範囲は異なってくる。そこで、グラフ化にあたっては以下のような便宜的な計算を行った。まず、減税企業・変化なし企業の比較分析と、増税企業・変化なし企業の比較分析を行い、双方の分析においてマッチングされた変化なし企業の、雇用変化率の変化額の平均値を算出する。次に、双方の比較分析における差分を足すことで、減税企業と増税企業の雇用変化率を算出した。

-1.5%

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

常用従業員数 正社員数 パート従業員数

減税企業 変化なし

増税企業 差分(=減税企業-変化なし企業)

差分(=増税企業-変化なし企業)

Page 40: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

36

③ 賃金関連

減税企業、変化なし企業、増税企業のそれぞれについて賃金への影響をみると、減税企

業は変化なし企業と比較して統計的に有意に賃金を増加させている。一方、増税企業は賃

金を減らしているが、統計的に有意ではない。

図 24 一人当たり賃金変化額(Propensity Score Matching)(万円)

(注1)「差分」の白抜きは統計的に有意ではない結果、色つきは統計的に有意な結果。 (注2)Propensity Score Matchingではマッチングの過程で分析対象企業の範囲は異なってくる。そこで、グラフ化にあたっては以下のような便宜的な計算を行った。まず、減税企業・変化なし企業の比較分析と、増税企業・変化なし企業の比較分析を行い、双方の分析においてマッチングされた変化なし企業の、一人当たり賃金変化額の平均値を算出する。次に、双方の比較分析における差分を足すことで、減税企業と増税企業の一人当たり賃金変化額を算出した。

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

10

12

一人当たり賃金 正社員一人当たり賃金 パート従業員一人当たり賃金

減税企業 変化なし

増税企業 差分(=減税企業-変化なし企業)

差分(=増税企業-変化なし企業)

Page 41: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

37

④ 生産性関連

減税企業、変化なし企業、増税企業のそれぞれについて生産性への影響をみると、減税

企業は変化なし企業と比較して、常用従業員一人当たり売上総利益を統計的に有意に増加

させている。具体的には、変化なし企業と比較して減税企業は一人当たり 68.6 万円ほど労

働生産性を改善させている。一方、変化なし企業と比較した場合の増税企業の一人当たり

売上総利益の増加については、統計的に有意な差とはなっていない。

図 25 常用従業員一人当たり売上総利益の変化額(Propensity Score Matching)(百万円)

(注1)「差分」の白抜きは統計的に有意ではない結果、色つきは統計的に有意な結果。 (注2)Propensity Score Matchingではマッチングの過程で分析対象企業の範囲は異なってくる。そこで、グラフ化にあたっては以下のような便宜的な計算を行った。まず、減税企業・変化なし企業の比較分析と、増税企業・変化なし企業の比較分析を行い、双方の分析においてマッチングされた変化なし企業の、一人当たり売上総利益の変化額の平均値を算出する。次に、双方の比較分析における差分を足すことで、減税企業と増税企業の一人当たり売上総利益の変化額を算出した。

-0.20

-0.10

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

0.80

一人当たり売上総利益

減税企業 変化なし

増税企業 差分(=減税企業-変化なし企業)

差分(=増税企業-変化なし企業)

Page 42: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

38

同様に、TFP上昇率への影響をみてみる。「常用従業員一人当たり売上総利益」は全要素

生産性が上昇していなくても、資本装備率が高まれば、見かけ上は上昇してしまうことに

なるが、TFP上昇率はそうした資本装備率上昇の影響を取り除くことができる。

減税企業、変化なし企業、増税企業のそれぞれについて TFP 上昇率への影響をみると、

減税企業は変化なし企業と比較して TFPが統計的に有意に上昇しており、年率で 3.6%ほど

上昇している。増税企業についての TFP上昇率は、変化なし企業と比較して大差はない。

図 26 TFP 上昇率(Propensity Score Matching)(%)

(注1)「差分」の白抜きは統計的に有意ではない結果、色つきは統計的に有意な結果。 (注2)Propensity Score Matchingではマッチングの過程で分析対象企業の範囲は異なってくる。そこで、グラフ化にあたっては以下のような便宜的な計算を行った。まず、減税企業・変化なし企業の比較分析と、増税企業・変化なし企業の比較分析を行い、双方の分析においてマッチングされた変化なし企業の、TFP 上昇率の平均値を算出する。次に、双方の比較分析における差分を足すことで、減税企業と増税企業の TFP上昇率を算出した。

-2%

-1%

0%

1%

2%

3%

4%

TFP上昇率

減税企業 変化なし

増税企業 差分(=減税企業-変化なし企業)

差分(=増税企業-変化なし企業)

Page 43: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

39

4. 分析結果のまとめ

法人実効税率を引き下げて外形標準課税を拡大する法人税改革について、企業行動に及

ぼした影響としては、以下のように整理することができる。全体として、平成 27年度改正

の方が企業行動に大きな影響を与えている傾向がある。これには2つの理由が考えられる。

第一に、平成 27 年度改正では実効税率が 2.5%程度低下しているが、平成 28 年度は 2%程

度であり、税制改正のインパクトが大きかった可能性がある。加えて、平成 27年度改正で

は、外形標準課税の割合が 2/8 から 3/8 へと 1/8 高まる形だったが、平成 28 年度改正では

3/8 から 5/8 へと 2/8 高まる形であり、外形標準課税の拡大割合も大きかった。第二に、企

業行動に対しては、平成 27 年度改正の時点で平成 28 年度改正もある程度織り込まれてお

り、企業行動の変化が平成 27年度時点でより大きくなった可能性がある。

(1) 投資

○ 法人税改革は全体として投資への影響は小さいが、平成 28年度については、減税企

業は海外設備投資を減少させており、空洞化を抑制させる効果があった。

○ 一方、増税企業は変化なし企業と比較して平成 27・28年度の両方において研究開発

投資を抑制している。増税となった企業は外形標準課税の拡大によって内部資金が

削減されたことと労働コストが上昇したことによって、研究開発投資を手控えてい

るものと考えられる。

(2) 雇用

○ 法人税改革によって増税となった企業については、常用従業員、とりわけ正社員を

抑制している。これは外形標準課税の拡大によって労働コストが高まったためだと

考えられる。

○ 一方で、法人税改革によって減税となった企業の雇用増加率は、法人税改革の影響

を受けなかった企業と大差ない。

(3) 賃金

○ 法人税改革によって減税となった企業は、平成 27年度に限定すると、変化なし企業

と比較して一人当たり賃金を統計的に有意に増加させている。

○ 法人税改革によって増税となった企業の賃金については、平成 27・28年度の両方に

おいて、法人税改革の影響を受けなかった企業と大差はない。

(4) 生産性

○ 法人税改革によって減税となった企業は、法人税改革の影響を受けなかった企業と

比較して、労働生産性が上昇している。平成 27年度に限定すると、減税企業は変化

なし企業と比較して TFP上昇率も有意に高い。

Page 44: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

40

○ 増税となった企業の生産性を、変化なし企業と統計的に有意な差はない。

Page 45: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

41

第 III 章 諸外国における法人税改革の動向

1. 法人税制を巡る各国の状況

(1) 法人税制を巡るトレンド

わが国の法人税負担の高さは、日本の立地競争力、国内企業の競争力を弱め、経済成長

を抑制するものとして、税率の引き下げが長らく主張されてきた。1980年代まで 40%を超

えていた国税法人税率は、90年代以降、徐々に引き下げられ、近年においても、「成長志向

の法人税改革」を実現する観点から、課税ベースの拡大とともに税率が引き下げられてい

る。平成 28 年度改正において、平成 28 年度・29 年度には国税法人税率 23.4%、法人実効

税率 29.97%とされ、平成 30年度には国税法人税率 23.2%、法人実効税率 29.74%とされた。

主要国と比較しても、遜色ない数字となっている。

図 27 主要国における国・地方を合わせた法人実効税率

(注)2017 年 1 月現在における国・地方を合わせた法人実効税率。ただし、米国(改正後)は 2018 年

以降、英国は 2017 年 4月現在における法人実効税率。

(出所)財務省 HP、ジェトロ HP、経産省 HP

近年の諸外国の法人実効税率の推移を見ると、ドイツが 52.03%(2000 年)から 29.79%

(2017 年)に、英国が 30%(2000 年)から 19%(2017 年)に引下げるなど、実効税率の

引下げが国際的な潮流となっている。

29.97

40.75

27.98

19.00

29.79 33.33

24.00 25.00

17.00

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

日本 米国

(改正前)

米国

(改正後)

英国 ドイツ フランス イタリア 中国 シンガポール

※カリフォルニア州(全国平均)

(%)

Page 46: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

42

図 28 主要国における法人実効税率の推移

(注)日本は復興特別法人税、フランスは社会保障負担金を含む値。財務省資料による実効税率とは定義

が異なる。

(出所)OECD Tax Database、KPMG Corporate tax rates table、シンガポール政府 HP

米国においては、2017年末に成立した” Tax Cuts and Jobs Act”(以下「2017年税制改革

法」)により、連邦法人税が 35%から 21%に引下げられた。それにより、連邦・州を合わ

せた法人実効税率は、州税の税率が高いカリフォルニア州においても、40.75%から 27.98%

へと大幅に引下げられることとなった。また、英国においては 2017年 4月に法人税率が 19%

に引下げられており、2020年 4月以降は 17%となる予定である。さらに、フランスにおい

ては、2017年 9月に成立した 2018年予算法において、2022年までに法人税率を 33.3%から

25%まで引き下げることを決定した。このように、主要国の間で更なる法人税率の引き下げ

の動きが見られ、国際的な法人税引き下げ競争が再燃する恐れがある。

法人税率の引き下げについて、法人税率の枠内での税収中立が保たれていないものも見

られる。例えば、米国における 2017年税制改正法では、法人税について、10年間の累計で

0.65兆ドルのネット減税、税制改正全体では、10年間の累計で 1.46兆ドルのネット減税と

なっている。

また、税率以外にも、英国におけるパテントボックス税制の導入、イタリアにおける ACE1

1 みなし利息控除(Allowance for Corporate Equity)を差す。企業行動に対し資本と負債の中

立性を保つため、資本の金額に対する一定割合を「みなし利息」として法人税の課税ベー

スから除外する。

15

20

25

30

35

40

45

50

55

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

(%)

米国

ドイツ

フランス

日本

中国

英国

シンガポール

イタリア

Page 47: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

43

の導入など、経済成長の促進を目指して種々の改革がなされている。

(2) 調査国及び調査事項

わが国の立地競争力、国内企業の競争力を維持・強化するためには、諸外国における法

人税改革の状況及び将来の見通しを正確に把握するとともに、財源や背景、政治状況等を

知ることが重要である。特に、わが国では、これまでの法人税改革によって課税ベースを

拡大しており、法人税の枠内での税収中立を図ることが徐々に困難になっている現状を踏

まえ、法人税率引き下げの必要性、財源確保の考え方、あるいは法人税以外の税を財源と

することの可能性について、各国のトレンドを把握することが重要であると考えられる。

米国では、2017年 12 月に税制改革法が成立し、法人税を含む税制の抜本的な改革がなさ

れることとなった。法人税については、法人税率の大幅な引き下げのほか、固定資産の即

時償却制度の導入、支払利子の損金算入制限、海外配当益金不算入制度(テリトリアル課税

への移行)等、大きな改革がなされた。また、政権が当初検討していた国境調整税について

は導入が見送られた。米国における法人税の抜本改革は、我が国を含む米国外の諸国にも

大きな影響を及ぼすことから、米国を重点的な調査対象とした。調査に当たっては、現地

を訪問し、シンクタンク、政府関係者等を対象にヒアリング調査を実施した。

また、英国についても、法人税率の大幅な引き下げを進めていることから、文献ベース

での調査を実施した。

調査理由 主な調査事項

米国 2017 年 12 月税率の税制改革法によ

って大規模な法人税改革が行われ

ている。

2017 年 12 月の税制改革法の背

景・内容

今後の法人税改革の見通し

英国 主要先進国で最も低い法人税率で

ありながら、経済活性化のため更な

る法人税率引き下げを実施してい

る。

近年の法人税改革の背景・内容

今後の法人税改革の見通し

Page 48: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

44

2. 米国

(1) 法人税制の概要

米国では、法人税は連邦及び州のレベルでそれぞれ課税される。連邦法人税は、長らく

法人税率は 35%に据え置かれ、その水準は OECD 諸国の中で高い水準に位置していたが、

2017年 12月に成立した税制改革法により 21%まで引き下げられた。

州法人税については、州ごとに内容が異なり、州法人所得税が存在していない州もある

が、高い税率を設定している州もある。ただし、州法人所得税が存在していない州の中に

は、別途フランチャイズ税2等が課されている州もある。

表 9 州法人税率(所得金額に応じて税率が異なる場合は最高税率)

州法人税率 州

9%以上 6州(アラスカ、イリノイ、アイオワ、ミネソタ、ニュージャー

ジー、ペンシルベニア)

5%以下 7 州(アリゾナ、コロラド、ミシシッピ、ノースカロライナ、ノー

スダコタ、サウスカロライナ、ユタ)

州法人税なし

6州(ネバダ、オハイオ、テキサス、ワシントン、サウスダコタ、

ワイオミング)

※うちネバダ、オハイオ、テキサス、ワシントンは州法人税に代

わりフランチャイズ税等が課されている。

(出所)Tax Foundation

なお、州法人税については、連邦法人税の損金算入項目となることから、連邦・州を合

わせた法人実効税率は、連邦法人税率×(1-州法人税率)+州法人税率となる。

2 例えば、テキサス州ではフランチャイズ税が課せられている。テキサス州では、グロスマ

ージンと呼ばれる粗利益に対し、按分率(総収入に占めるテキサス州の収入)を乗じ、さ

らに税率を乗じてフランチャイズ税に係る税額が計算される。

Page 49: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

45

(2) トランプ政権下の法人税改革

① 税制改革の概要

2017年 12月に成立した税制改革は、法人税のみならず個人課税、国際課税にまたがるも

のであり、2018年から 2027年までの 10年間で約 1.5兆ドルの大幅な減税となる。ただし、

減税のうち 1.13兆ドルは個人課税に係る減税であり、法人課税に係る減税額は 0.65兆ドル、

大半が法人への負担となる国際課税については 0.32 兆ドルの増税となる。

表 10 主な税制改正項目

改正内容 10年間の税収への影響

個人課税 個人所得税の税率を 10%~37%の 7段階に変更 ▲1.21兆ドル

標準控除の倍増 ▲0.72兆ドル

人的控除の廃止 +1.21兆ドル

代替ミニマム税の控除額引上げ ▲0.64兆ドル

子育て税額控除の拡充 ▲0.54兆ドル

個人課税合計 ▲1.13兆ドル

法人課税 法人税率を 21%に引下げ ▲1.35兆ドル

利子損金算入の制限(調整後課税所得の 30%まで) +0.25兆ドル

繰越欠損金の見直し(課税所得の 80%までに制限等) +0.20兆ドル

税額控除・所得控除(法人)の見直し +0.17兆ドル

新規設備投資の即時償却(2023年以降縮小) ▲0.09兆ドル

代替ミニマム税(法人)の廃止 ▲0.04兆ドル

その他法人課税 +0.19兆ドル

法人課税合計 ▲0.65兆ドル

国際課税 海外留保所得にかかる強制みなし配当課税 +0.34兆ドル

海外配当益金不算入 ▲0.22兆ドル

税源浸食対策 +0.15兆ドル

その他国際課税 +0.06兆ドル

国際課税合計 +0.32兆ドル

合計 ▲1.46兆ドル

(出所) “Joint Explanatory Statement of the Committee of Conderence”

なお、以下に 2017年税制改革における改正内容について記載するが、詳細項目について

は財務省あるいは IRS(歳入庁)が現在策定中のガイドラインに規定される予定である。

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46

② 税制改正の内容(法人課税)3

法人税率の引き下げ a)

法人税について、2017年までは所得の金額に応じて最高 35%の累進課税で課税されてい

たが、2018年以降は一律 21%に引下げられた。

35%の連邦法人税及び州税の適用により、米国は世界で最高水準の法人税率であった。

21%への引き下げにより、例えばカリフォルニア州の実効税率は 27.98%となり、日本・ド

イツ・フランスの法人実効税率を下回ることとなる。

表 11 米国における連邦法人税率

所得 2017年まで 2018年以降

$50,000以下 15% 21%

$50,000~$75,000 25%

$75,000~$10,000,000 34%

$10,000,000~ 35%

(出所)“Joint Explanatory Statement of the Committee of Conderence”

支払利子の損金算入制限 b)

2017 年までは、支払利子は原則として課税所得から差し引くことが可能であった。ただ

し、期末日現在の負債・資本比率が 1.5:1超となる場合は超過利子額又は非適格利子のうち、

いずれか少ない金額が損金算入不算入となっていた。超過利子額とは、純支払利子額が調

整後課税所得(利子、減価償却費、繰越欠損金控除額等を課税所得に戻し入れたキャッシ

ュベースの EBITDA に相当)の 50%を超過する額をいい、非適格利子は米国連邦法人所得

税の課税対象とならない国外関連者の受取利子となる。

2018 年からは、当該規定は撤廃され、事業上の支払利子から事業上の受取利子および一

定の資産購入にかかる借入利子を控除した純支払利子のうち、調整後課税所得の 30%を超

える部分については損金不算入となる。なお、損金不算入額は無期限に繰越され、将来に

控除限度余裕額が発生する際にはその範囲で損金算入される。

損金不算入の対象 ア.

損金不算入の対象となる事業上の支払利子とは、事業に関連して生じる利子(投資活動

に関連して生じる利子を除く)と規定されており、支払先が国外関連者となるものに制限

されない。また、資産購入にかかる借入利子とは、以下の要件を充足する債務に係る支払

利子となる。

自動乗用車の販売又はリースの購入資金に充てられるもの

購入された自動乗用車そのものが当該債務の担保として供されていること

3 “Joint Explanatory Statement of the Committee of Conderence”のほか、KPMG”New Tax

Law(H.R.1)-initial Observations”、PwC”米国税制改正:最終法案の法制化”等を参考としている。

Page 51: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

47

損金算入限度額の計算方法 イ.

損金算入限度額は調整課税所得の 30%に事業受取利子を加算した額となる。調整課税所

得は、連邦課税所得に以下の項目を加算又は減額調整した額となり、EBIT 相当額とされて

いる。なお、2021年以前の課税年度においては、減価償却等を加算調整した EBITDA 相当

額となる。

図 29 支払利子損金算入制限における調整税所得の計算方法

(出所)“Joint Explanatory Statement of the Committee of Conderence”をもとに MURCにて作成

新規設備投資の即時償却 ウ.

2017 年までは資産の種類によって定額法・定率法が適用され、一定の固定資産について

特別減価償却が認められていた。改正前の法においては、特別減価償却が認められる資産

について、2017年は取得価額の 50%、2018年は 40%、2019年は 30%を即時償却により事

業の用に供した年度に損金算入することが可能となっていた。

改正法により、2022 年末までに取得かつ事業供用された適格資産について、取得価額の

100%を即時償却することが可能となった。また、2023年以降に取得され事業供用された適

格資産については、段階的に償却率が縮小していく形になる。

繰越欠損金の見直し c)

2017 年までは繰越欠損金について、2 年間の繰戻還付、20 年間の繰越控除が認められて

おり、使用制限は設けられていなかった。

2018 年以降は、繰戻還付が廃止される一方、無期限に繰越が可能となる。ただし、繰越

欠損金の使用制限額は課税所得の 80%に制限される。

税額控除・所得控除(法人)の見直し d)

2017 年までは、国内製造控除が設けられ、米国内の製造活動から生じた一定の所得につ

課税所得- 事業に直接関連のない所得+ 事業に直接関連のない費用+ 事業上の支払利子- 事業上の受け取り利子+ 繰越欠損金控除額+ 減価償却費(2021年以前のみ)

調整課税所得(※2)

調整税所得の計算方法

EBITDA相当額(2021年

以前)

EBIT相当額(2022年

以降)

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いて、給与・報酬費用の 50%を限度として所得額の 9%の所得控除が認められていた。ま

た、同種資産の交換による課税繰延により、生産活動のために有している、又は投資目的

に有している資産について、同種資産の交換を行う場合、損益を認識しないこととしてい

た。

これらの措置については、税制改正における税収の確保を図るため、2018 年以降、廃止

または縮小となっている。国内製造控除については廃止され、同種資産の交換による課税

繰延については不動産以外の資産については認められないこととなった。

代替ミニマム税(法人)の廃止 e)

2017年までは 15%~35%の累進税率による通常の税額とは別に、課税所得に一定の調整

を加えた額に対して一律 20%の税率による代替ミニマム税の計算も行い、いずれか多い税

額が最終的な法人税額とされてきた。なお、代替ミニマム税の当期支払額は、翌課税年度

以降に無期限で繰越され、通常の税額が代替ミニマム税を上回る課税年度において AMTク

レジットとして税額控除の対象となった。

2018 年以降には代替ミニマム税が廃止された。なお、既存の AMT クレジットについて

は、通常税額との相殺が認められる。

試験研究費の償却方法の見直し f)

従前の制度では、減価償却を選択しない場合には試験研究費の支払または発生した課税

年度において全額を即時費用化することが認められていた。

改正法により、2022 年以降は一定の試験研究費について資産計上が強制され、その後 5

年間の期間にわたり償却されることとなる(研究開発活動が米国外で実施される場合には

15 年間)。

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③ 税制改正の内容(国際課税)

海外配当益金不算入制度の創設(テリトリアル課税への移行) a)

従前の制度は、全世界所得課税が採用されており、海外子会社等からの配当は米国で課

税されるととともに、外国税額控除制度により二重課税を排除する措置が採られていた。

米国の法人税率は世界で最高水準であるため、米国企業は大きな負担となっていた。

改正法において、全世界所得課税からテリトリアル課税に移行し、米国法人が 10%以上

の株式を保有する外国法人から受取配当の全額が益金不算入となった。なお、本制度の創

設に伴い、当該配当に課された外国源泉税、及び当該外国法人が支払った外国法人所得税

については直接あるいは間接外国税額控除は認められないこととなった。

海外子会社からのみなし配当所得 b)

海外配当益金不算入制度の創設に伴い、同制度導入以前に蓄積された未課税の海外利益

については、同制度導入直前に配当されたとみなされ、課税の対象となる。

CFC(被支配外国法人)及び 10%保有外国法人の累積海外留保所得のうち米国株主の持

分相当額は、海外配当益金不算入制度導入の前年におけるみなし配当所得として課税され

る。みなし配当のうち金銭・金銭同等物から成ると見做される部分(流動資産)は 15.5%

の税率で課税され、それ以外は 8%の税率で課税される。なお、納税にあたっては、8年間

の分割納税を選択することが可能である。

グローバル無形資産低課税所得(GILTI)の創設 c)

新たに低率課税のグローバル無形資産所得(GILTI)への課税制度が設けられ、CFCのグ

ローバル無形資産低課税所得は米国株主において合算課税の対象となる。2018 年から 2025

年までは合算対象となるグローバル無形資産所得の 50%が控除され、2026 年以降は 37.5%

に減額される。

なお、グローバル無形資産所得にかかる外国税額は課税所得に算入され、当該外国税額

の 80%を限度として外国税額控除が適用可能である。

外国源泉の無形資産関連所得(FDII)に関する所得控除 d)

改正法において、RICs(規制投資会社)、REIT(不動産投資信託)を除く米国法人の外国

源泉の無形資産関連所得(FDII)については 37.5%の所得控除が認められる。グローバル無形

資産低課税所得は税源浸食防止対策である一方、外国源泉の無形資産関連所得に関する所

得控除は、一定の税務上の恩恵を与えるものである。なお、所得控除は、2026 年以降は

21.875%となる。

無形固定資産の定義は明らかではないが、特許、商標、著作権などから発生する所得と

理解され、ロイターの推計によると、マイクロソフト、ウォルトディズニー、スターバッ

クス、オラクル、バンクオブアメリカ等は数十億ドルを節税できる可能性があるとされて

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いる。

なお、輸出企業向けの税制優遇であり、WTOに違反しているのではないかとの報道もな

されている。

税源浸食濫用防止規定(Base Erosion and Anti Abuse Tax ”BEAT”)の創設 e)

税源浸食濫用防止規定については外国関連者への税源浸食的支出により税額圧縮を行っ

ている企業に対する課税措置であり、RICs、REIT、S-Corporation(小規模法人)以外の法

人で、過去 3年間平均の総収入が 5億ドル以上であり、当該年度の税源浸食割合が 3%以上

の法人に適用される。

税源浸食割合 ア.

税源浸食割合は当該年度の税源浸食的支払の総額を当該年度の損金控除総額で除したも

のである。税源浸食的支払とは、国外の関連者への支払で、総所得から控除可能なもの(償

却資産の取得に係る支払いや支払利子)となる。なお、売上原価は原則として対象外とさ

れている。また、関連者とは、法人の 25%以上の持分(議決権又は時価)を有する株主(25%

株主)、25%株主と 50%超の持分関係で繋がる関連者、当該法人と 50%超の持分関係で繋

がる関係者となる。

BEAT 税額計算方法 イ.

修正課税所得の 10%が、通常の計算過程により算出される法人税額(R&Dやエネルギー

関連の税額控除前)を超えた場合、その差額分を納税する。

修正課税所得とは、通常の課税所得と Base Erosion Benefit の合計額である。

なお、課税所得算定時に過年度からの繰越欠損金を用いている場合は、繰越欠損金に占

める Base Erosion割合分も加算。Base Erosion Benefit とは、Base Erosion Payment(税源

浸食的支出)のうち、当該年度に損金算入される金額のことを指す。

Base Erosion Payment の主たる対象は、国外の関連者の支払い額(償却可能資産購入費

用、再保険費用も含む)であり、総所得(Gross Income)からの控除が可能なものである。

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(3) 2017 年税制改正の流れ

① 法人税改革の背景

米国における税制の抜本改革は 1986 年以来行われておらず、特に法人課税に対して、

OECD 諸国でトップクラスの高税率、代替ミニマム税の計算の必要性等による複雑性、全

世界所得課税方式等の問題が指摘されてきた。これを踏まえ、民主党のオバマ政権は、連

邦法人税率の 28%への引き下げと優遇措置の廃止を併せた法人税改革を提案した。また、

共和党は 2014年に下院歳入委員会議長であるデイブ・キャンプ氏が中心となり「キャンプ

案」を作成し、税率引下げ、テリトリアル税制の導入などの国際的に潮流に沿った改革案

を提示した。これらは成立しなかったが、検討が更に進められ、共和党はキャンプ案を基

礎として、2016年 6月に下院共和党は税制改革の青写真(House Republican Tax Reform

Blueprint 以下「下院共和党案」)を公表した。

下院共和党案では、法人税率の 20%への引き下げ、租税特別措置の廃止、テリトリアル

税制の導入が提案されたほか、輸入課税、輸出非課税といった国境調整措置の導入による

仕向地主義への転換、設備投資の即時償却と利子損金算入の制限によるキャッシュフロー

課税への転換が指向された。

2016年 9月、共和党の大統領候補のトランプ氏は大統領選の公約として法人税率の 15%

への引き下げ、海外子会社の内部留保への強制みなし配当課税等を打ちだした。

② 2017 年税制改正全体の流れ

トランプ政権発足後、2017年 4月にトランプ氏の選挙公約をもとに、「中核となる基本指

針」として税制改革案の概要が公表された。税制改革案の中では、法人税率の 15%への引

き下げ、テリトリアル税制の導入、海外子会社への強制みなし配当課税等が盛り込まれた。

2017 年 9 月、トランプ政権・議会指導部による税制改革案が提示された。法人税率につ

いては、下院共和党案を踏襲し 20%への引き下げ、テリトリアル税制の導入、設備投資の

即時償却と利子損金算入等の制限等が盛り込まれた。なお、国境調整措置は盛り込まれな

かった。

2017年 10月には、2017年税制改革法の成立について鍵となる 2018年度予算決議が成立

した。この決議の中で、2018年-2027年の 10年間における歳入、歳出の予算水準が示され、

税制改革法案は「財政調整措置」の対象とされた。これにより、上院においてフィリバス

ター(議事妨害)を回避し、単純過半数で税制改革法案を可決することが可能となった。

通常、上院におけるフィリバスターの回避のためには審議時間を制限することが必要であ

るが、これには 60票が必要であり、共和党の議席数はこれに満たないものである。しかし、

「財政調整措置」として支持された事項は審議時間の上限が設けられ、単純過半数(共和

党は両院で過半数の議席を有する)で可決することができる。財政調整措置では、「10年間

で計 1.5兆ドル以内の財政赤字を許容する」税制改革法案の作成が指示された。なお、当該

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1.5兆ドルは、税制改革によってもたらされる経済成長効果を織り込まない静学的な試算に

基づく財政赤字規模である。

その後、10 年間の減収幅合計 1.5 兆ドルの枠を前提として、上院・下院それぞれで税制

改革法案が議論され、最終的に法人税率の 21%への引き下げ、租税特別措置の廃止・縮減、

繰越欠損金の制限、設備投資の即時償却、利子損金算入の制限、テリトリアル税制の導入、

海外子会社への強制みなし配当課税、税源浸食対策(BEAT)等を含む税制改革が実現した。

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表 12 2017 年税制改正の流れ

2017年まで 下院共和党案

(2016年 6月)

ト ラ ン プ 選 挙 公 約

(2016年 9月)

政権改革案

(2017 年 4月)

政権・議会指導部案

(2017年 9月)

改正内容

(2017年 12月)

税率 35% 20% 15% 15% 20% 21%

欠損金の繰越

控除

繰戻:2年間

繰越控除:20年間

使用制限額:無制限

― ― ― ― 繰戻:廃止

繰越控除:無制限

使用制限額:課税所得の 80%

仕向地主義 ― 国境調整措置導入 ― ― ― ―

設備投資 修正加速度償却法

設備投資の即時償却

― ― 新規設備投資の即時償

新規設備投資の即時償却(2013

年以降縮小)

支払利子 利子について発生時損

金算入

利子損金算入の制限 利子損金算入の制限 利子損金算入の制限(調整後課

税所得の 30%)

域内課税方式

への転換

全世界所得課税+配当

に係る外国税額控除

海外子会社の配当免税

海外子会社の内部留保

課税(8.75%)

海外子会社の内部留保

課税(10%)

海外子会社の配当免税

海外子会社の内部留保

課税(税率不明)

海外子会社の配当免税

海外子会社の内部留保

課税(税率不明)

海外子会社の配当免税

海外留保利益に 1回課税(流動

資産 15.5%、非流動資産 8%)

税源浸食対策 ― ― ― ― ― Base Erosion and Anti-Abuse

Tax(BEAT)の導入

代替ミニマム

法人につき20%で代替

ミニマム税を計算

廃止 廃止 廃止 廃止 廃止

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③ 導入までになされた主な議論

法人税率 a)

法人税率については、下院共和党案(2016年 6月)では 20%、トランプ政権公約では 15%

となっていたが、政権・議会指導部案では 20%で合意されている。財政調整措置において

示された 2018年-2027 年の減税額 1.5兆ドルの枠内で上院・下院が審議したところ、上院案

では減税時期 2019 年、法人税率 21%の税制改革案が、下院では減税時期 2018 年、法人税

率 20%の税制改革案が通過した。最終的に、減税額 1.5 兆ドルの枠に合わせるよう調整が

なされ、減税時期 2018年、法人税率 21%となった。

現地ヒアリングにおいては、21%への引き下げには特に根拠がなく、あくまで 1.5兆ドル

の枠内に抑えるための政治的な駆け引きの結果である、との見解が示された。

図 30 法人税率の 21%への設定理由(ヒアリング結果)

【支払利子の損金算入制限、即時償却とキャッシュフロー課税の関係】

21%の設定に科学的な根拠はない。両院で調整された結果である。

もともとは法人税率を 20%まで引き下げるつもりだったが、1.5兆ドルの枠があったた

め最終的には 21%に落ち着いた。

上院・下院の協議により、税収への影響を踏まえて法人税率を 1%引き上げ 21%とし

た。21%の設定に特に根拠はなく、政治的な駆け引きの結果である。

共和党としては法人税率の引き下げについて、21%程度を目標としており、それ以上

下げることは規定していなかった。

税源浸食対策 b)

税源浸食への対策として、下院案では Excise Tax が、上院案では BEAT が盛り込まれて

いた。下院案で盛り込まれていた Excise Taxの概要は以下の通りである。

図 31 下院案での Excise Tax の概要

米国法人から国外関連会社に対する支払(支払利子を除く)で、損金算入可能なもの、売

上原価に含まれるもの、減価償却対象資産の簿価に含まれるものについては、20%の

物品税を課税。

国外関連会社は米国法人から受け取った支払いを米国事業関連所得として取り扱うこ

とを選択することも可能。

マークアップの無しの企業間取引、特定の証券や商品の取引には適用されない。

一定の利益率を基礎に ECI(Effectively Connected Income4)申告(PE 申告)を行うこと

により物品税は免税。米国事業関連所得に係る外国税額控除は国外の租税債務の 80%

4 外国法人が受け取る所得のうち、米国事業活動に関連するものを「米国実質事業所得(ECI)」

と言う。

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まで適用可能。

米国企業から国外関連会社への支払額が年間最低で 1 億ドルの企業で、国際財務報告

を実施しているグループにのみ適用。

現地ヒアリングにおいては、最終的に Excise Tax ではなく BEAT が盛り込まれた理由と

して、Excise TaxがWTO協定に違反している可能性がある点、および輸入品の価格上昇に

繋がる可能性がある点が挙げられた。

図 32 BEAT 導入・Excise Tax 撤回の理由(ヒアリング結果)

Excise Taxと比較して、輸入品価格上昇に繋がらないことから、BEAT が導入されたも

のと思料。

Excise TaxについてはWTO協定に違反している印象がある。

国境調整措置 c)

下院共和党案での国境調整措置の提案 ア.

下院共和党案では、法人税について「国境調整措置」を設けることが提案されている。

これは、輸出収入を益金に計上しないことを認める(輸出免税)とともに、輸入品に係る

支払額を損金に計上することを認めない(輸入課税)措置であり、源泉地主義である法人

税を仕向地主義に転換するものである。

下院共和党案では、国境調整措置を提案する理由として、米国を除く OECD 諸国では付

加価値税が導入されており、輸入品には輸入時点で課税し、輸出品には輸出時に還付する

「国境調整措置」が設けられており、米国企業の競争力低下を招いていることが挙げられ

ている。

導入に至らなかった理由 イ.

国境調整措置については、輸出補助金を禁止するWTO補助金協定違反の恐れがあること、

輸入分について国産品に求められている経費控除を認めないことは GATT の課税上の内国

民待遇違反の恐れがあること等、WTO との整合性から課題が指摘されていた。諸外国も、

当該措置に対する懸念を示していた。

また、米国国内においても、輸出産業にとっては減税となるが、輸入が多い自動車、小

売、エネルギー業界にとっては大幅な増税となることから、これら業界団体は国境調整措

置に反対していた。一方、ハーバード大学のフェルドシュタイン教授は、国境調整措置を

導入しても、為替調整により、輸出業者、輸入業者への影響は打ち消されると主張してい

た。

現地ヒアリングにおいては、国境調整措置が導入されなかった理由として、輸入業者か

らの反対が強かったことが挙げられた。

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図 33 国境調整措置が導入されなかった理由(ヒアリング結果)

国境調整を行うことで法人税を仕向地主義化する提案には、議会から抵抗があった。

ウォルマートや石油産業などの輸入企業が強く反対したため、導入されなかった。ま

た、多くの議員が、輸入財の国内価格上昇に懸念を持った。

輸入業者に課税され、負担が重くなることが挙げられる。エコノミストは為替調整が

なされるため、負担増につながらないと主張したが、輸入企業は強く反対した。

多くの経済学者は仕向地主義課税を支持していたが、輸入事業者などは導入に懸念が

強かった。

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(4) 税制改革の財源

2018 年度予算決議では、ベースラインと比較して 2018-2027 年の 10 年間で歳出を 5.1 兆

ドル、歳入を 1.6兆ドル減少させることとしている。また、税制改革等による経済成長によ

って 1.2兆ドルの歳入増を図ることとしている。推計に基づくと、2027年度には 1,970億ド

ルの黒字が見込まれる。税制改革の財源については、上述のとおり、この予算決議におい

て、1.5兆ドルの上限が示された。

① 減税規模の設定

当初の下院共和党案においては税収中立の考え方が取られていたが、最終的な 2017年税

制改革法では 1.5 兆ドルのネット減税となった。現地ヒアリングにおいては、1.5 兆ドルの

枠が設定された理由として、政治的な調整によるところが大きいとの見解が示された。

図 34 減税規模の設定(ヒアリング結果)

1.5 兆ドルの減税額は、予算決議の中で設定されているが、減税によって税収が減った

としても他の部分で補える範囲内だと考えられた。

上院と下院のリーダーシップによって財政赤字の許容範囲が設定された。1.5兆ドルの

減税額の設定理由について、共和党は、①時効を迎える措置を恒久化する場合の減収

0.5 兆ドルと、②税制改革による経済成長で取り戻せる増収 1兆ドルの合計である、と

のロジックを立てている。

1.5 兆ドルの減税額は、経済的な理屈や合理性はなく決定されたものである。

② 動学的な効果(フィードバック効果)

ダイナミックスコアリングの概要 a)

米国では、予算案や法案審議にあたっては、CBO(行政管理予算局)や JCT(両院合同

租税委員会)が財政推計を公表している。従来の推計方法は基本的に全て静学的な分析と

なっており、ある政策が行われたときに GDPなどのマクロ変数が変化しないことを前提と

している。これに対して、経済学的に考えれば、ある政策の実施に伴って家計や企業の行

動が変化し、GDPなどのマクロ変数も同時に変化すると考えられる。

米国において、80 年代の経済政策の支柱となったレーガノミクスにおいて、減税による

税収増効果が主張されていたが、当該主張の前提となっていたのは減税の動学的な経済効

果である。ブッシュ政権下において、減税の経済効果を含めた動学分析の要請が高まり、

CBO の財政推計を動学モデルで行う「ダイナミックスコアリング」が脚光を浴びることと

なった。

2015年には、下院は新たな議会規則 を採択し、ダイナミックスコアリングが公式推計に

昇格した。ダイナミックスコアリングを用いて推計する、経済成長による税収への影響を

フィードバック効果と呼ぶ。

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58

ダイナミックスコアリングモデルを用いた推計は、大統領予算分析(Analysis of the

President’s budget)、長期財政推計(Annual long term budget and economic outlook)など、

財政に与える影響の大きい政策分析において用いられている。

各機関の推計 b)

今般の税制改革については、各機関より、動学的な増収効果の推計結果が公表されてい

る。このうち、JCT が公表する推計結果が議会に正式に提出される。JCTは、マクロ経済一

般均衡モデル(MEGモデル)、世代間重複モデル(OLGモデル)、DSGEモデルの 3種類の

モデルを用いており、推計対象となる措置の特性によって 3 モデルの比重を変えて経済成

長への効果を推計している。2017 年税制改革法においては、マクロ経済一般均衡モデル及

び世代間重複モデルについて 0.4、DSGE モデルについて 0.2 の比重で加重平均して推計し

ている。

表 13 各機関におけるフィードバック効果の比較

機関名 動学的な増収効果 経済成長への寄与(ベースラインとの比較)

財務省

※上院法案に

係る推計

+1.8兆ドル(10年間) 【経済成長への影響】

各年度の経済成長率が平均して 0.7%上昇

※ただし、、規制改革、インフラ整備、福祉改革

などの効果も考慮している。うち半分が法人税

改革の効果と推計。

【モデル】

不明

JCT +4,510 億ドル(10年間) 【経済成長への影響】

10 年間の GDPの水準が 0.7%上昇

【モデル】

マクロ経済一般均衡モデル(MEGモデル)

世代間重複モデル(OLGモデル)

DSGEモデル

Tax Policy

Center

+1,860 億ドル(10年間) 【経済成長への影響】

10 年間の GDPの水準が 0.5%上昇

※10年後の GDP水準はほぼ同等

Tax

Foundation

+6,000 億ドル(10年間) 【経済成長への影響】

10 年後の GDPの水準が 2.86%上昇

(出所)Deaprtment of the Treasury(2017)“Analysis of Growth and Revenue Estimates Based on the U.S.

Senate Committee on Finance Tax Reform Plan”

Joint Committee on Taxation(2017)” MACROECONOMIC ANALYSIS OF THE CONFERENCE

AGREEMENT FOR H.R. 1, THE “TAX CUTS AND JOBS ACT”

Tax Policy Center(2017)” MACROECONOMIC ANALYSIS OF THE TAX CUTS AND JOBS

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59

ACT”

Tax Foundation(2017)” Preliminary Details and Analysis of the Tax Cuts and Jobs Act”

をもとに MURCにて作成

推計の妥当性 c)

表 13 に示す通り、2017 年税制改革法が経済成長にもたらす影響、当該経済成長による

増収額の推計は機関により大きく異なっている。静学推計と異なり、モデルの設定、前提

条件の設定により結果が大きく異なる。また、財務省の推計を除くと、Tax Foundation の

推計によるフィードバック効果が最も大きくなっている。

現地ヒアリングでは、モデルによって経済成長に係る推計値に差異が生じるものの、政

策決定プロセスにおいてはあまり大きな影響はない、との意見も聞かれた。

図 35 フィードバック効果の推計に係る見解(ヒアリング結果)

モデルの違いによる経済成長への影響の差異は、政策決定プロセスにはあまり大きな

影響は与えていない。

TaxFoundation の推計では、借入が増えても、世界の利子に影響がないことを前提と

している。米国を開放経済の小国であることを前提としている。

Tax Foundation のモデルは興味深いモデルであるが、金利が変化しないという現実的

ではない前提を置いている。

多くの政治家は経済成長率の予測として、大きな数字を掲げているが、現実的でない

数字であることが多い。

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(5) 税制改革の評価

① 個別項目に対する評価

法人税率の引き下げ a)

今回の法人税改革の目的の一つは、OECD 諸国で最も高い水準であった法人税率を引き

下げることであり、実際に日本・ドイツ・フランス等よりも低い法人税率が実現した。税

率については最終的に調整はなされたものの、共和党にとっては満足のいく水準であった

と推察される。

図 36 法人税率引下げへの評価(ヒアリング結果)

ビジネス志向・投資志向の税制改革によって米国の競争力を高めていく必要がある。

共和党としては法人税率の引き下げについて、21%程度を目標としており、それ以上

下げることは意図していなかった。

民主党議員は 21%の連邦法人税率は財政赤字を考えると低すぎると考えているかもし

れない。

固定資産の即時償却制度、支払利子の損金算入制限 b)

新規設備投資の即時償却については、今般の税制改革の項目の中で最も費用対効果が高

い(政府支出を削減することなく経済成長に貢献する)との見解が示された。

支払利子の損金算入制限については、外部借入に頼らざるを得ない企業に対して悪影響

を及ぼすのではないか、との見解が示された。

また、新規設備投資の即時償却と支払利子の損金算入制限を導入することにより、法人

税はキャッシュフロー課税に近づくように見えるが、現地ヒアリングにおいては、それは

形式的なものであり、また期限付きであるため、真のキャッシュフロー課税と呼ぶことは

できず、今後さらにキャッシュフロー課税に近づけるか意図があるのか不明である、との

見解が示された。加えて、支払利子損金算入の制限、即時償却の段階的な縮小については、

減税規模を 1.5兆ドルに設定したことにより必要となった措置である、との見解が示された。

図 37 支払利子損金算入の制限・即時償却導入(ヒアリング結果)

【即時償却の導入理由、内容】

即時償却は今般の税制改革の項目の中で最も費用対効果が高い(政府支出を削減する

ことなく経済成長に貢献する)項目である。今般の税制改革では建物が即時償却の対

象となっていないが、建物についても対象とし、かつ即時償却を恒久化すれば、7%も

の経済成長が見込まれる。

即時償却が徐々に縮小されることとなっているが、これは財政調整プロセスの中で定

められた減税規模の 1.5兆ドルの枠に収めるためのもの。

建設ブームとその反動が発生することから、即時償却については不動産業界から反対

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61

の声があった。

【支払利子損金算入の制限の導入理由、内容】

支払利子の損金算入の制限は減税規模を 1.5 兆ドルの枠に収めるために設定されたも

のである。

支払利子の損金算入の制限について、自己資金や新株発行により対応できる企業以外

には悪影響が及ぶのではないか。

支払利子の損金算入制限は投資促進を妨げることになるが、負債とエクイティを中立

に保つことへのメリットもある。

【支払利子の損金算入の制限、即時償却とキャッシュフロー課税の関係】

今回の改正により、法人税が形式上キャッシュフロー課税に似てきている面はあるが、

税改正項目のうち 1/3は期限付きになっている。

これまでの法人税と比較するとキャッシュフロー課税に近づいているが、真のキャッ

シュフロー課税とはまだ相当の距離がある。今後、さらにキャッシュフロー課税に近

づけるかも分からない。

国際課税 c)

今回の法人税改革では、国際課税方式として、全世界所得課税方式からテリトリアル課

税に移行しており、米国への資金流入の増加が予想される。FDII と GILTI については、米

国に無形資産を集めることが目的である、との見解が示された。また、BEAT については、

財務省によるガイドライン公表までは、算入項目等について不明確な部分も多い、との見

解が示された。

図 38 国際課税の改正に係る評価(ヒアリング結果)

【テリトリアル課税への移行】

テリトリアル課税への移行等により、米国への資金流入が大きく伸びるだろう。多く

の企業がレパトリを行うことを発表しており、数千億ドル規模の資本流入が期待され

る。

米国拠点の多国籍企業のほとんど全てはテリトリアル方式の方が減税となる。

全世界所得方式の導入や仕向地主義化よりも、テリトリアル方式への移行は望ましい

方向だと考えている。

【FDII、GILTIの導入】

FDII、GILTI の意図は、米国企業が保有している無形資産への課税システムを変えるよ

り、米国に無形資産を集めようとすることにある。

FDII について、通商の補助金にあたるとして、WTO協定に違反する可能性がある。

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【BEAT の導入】

税源浸食への対応は望ましい方向である。

GILTI と BEATの二重課税等、BEAT の計算方法には不明な項目がある。具体的な計算

方法については、財務省が策定するガイドラインによって明らかになるだろう。

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② 税制改革全体を通じた評価

財政の持続可能性 a)

財政の持続可能性がさらに低下した、との見解が示された。

経済成長に資する改革項目 b)

今般の税制改革の項目の中で、即時償却の項目が最も費用対効果が高い(政府支出を削

減することなく経済成長に貢献する)との見解が示された。全ての建物を即時償却の対象

とし、かつ恒久化すれば、7%もの経済成長が見込まれる、との指摘もあった。

賃金上昇への影響 c)

2017 年税制改革を受けて、多くの企業が従業員への臨時ボーナスを支給しているが、今

回の税制改革が直接影響しているのか疑問の声も聞かれた。

図 39 2017 年税制改革と賃金の関係(ヒアリング結果)

法人税率を低下させることが従業員の賃上げに繋がるとの考えはある。まだ執行から

時間が経っていないため、効果測定のためには 2 年程度の時間がかかるのではないか

と考えている。

法人税引き下げの後、300社以上が従業員に臨時ボーナスを支払ったが、法人税改革の

影響なのか疑問。税制改正が賃金上昇につながる時間は、数年間かかるだろう。完全

なインパクトには 7年以上、およそ 10年かかるのではないか。

中小企業への影響 d)

法人税率の一本化と支払利子損金算入制限が、中小企業へ悪影響を及ぼす可能性がある

との指摘があった。一方で、税制改革全体として見れば、中小企業にとって有利な内容と

なっており、全体的に良い影響を及ぼすとの意見もあった。

(6) 今後の法人税改革の見通し

時限項目の延長等 a)

2017年税制改革法では、2023年以降に予定されている即時償却の縮小、2022年以降に予

定されている支払利子損金算入制限の厳格化等、時限項目がいくつか設けられている。こ

れら項目については、延長の議論が生じる可能性があるとの見解が示された。

図 40 時限項目の延長(ヒアリング結果)

支払利子損金不算入は 2022年からより厳格なものとなる予定であるが、実際はそうな

らないよう法改正がなされるのではないか。

即時償却等、今回の改正で期限が設けられている項目について、延長の圧力がかかる

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のではないか。

法人税率の更なる引下げ b)

法人税率については、今回大幅な引き下げが実現したため、当面は更なる引き下げはな

いのではないか、という指摘があった。一方で、今後、諸外国が更に法人税率を引き下げ

る場合には、それに追随する可能性がある、との意見も聞かれた。

図 41 更なる法人税率引下げの可能性(ヒアリング結果)

法人税率引き下げなどは恒久措置として盛り込まれており、今回の改革から 10年経過

後に財政中立にならなかったとしても、法改正されない限り続いていく。

米国では法人税率がすぐに引き下げられることは考えづらい。ただし、他国が法人税

率を更に引き下げるとそれに対応する可能性がある。

仮に諸外国が法人税率を引き下げる場合、米国が更に法人税率を引き下げる圧力を感

じることはあるかもしれないが、直近はない。また、どこが与党になるかが大きい。

財政制約を考えると、近い将来、さらに法人税率が引き下げられることは考えにくい

のではないか。

国境調整措置の導入 c)

2017年税制改革法で盛り込まれなかった国境調整措置については、政治的な難しさから、

今後も導入される見込みはない、との見通しが示された。また、法人税制で国境調整措置

を導入するよりも付加価値税(消費税)を導入する方が現実的である、付加価値税を導入

することにより法人税負担を抑制していくべき、といった意見も聞かれた。

図 42 国境調整措置の導入(ヒアリング結果)

【国境調整措置導入の可能性】

仕向地主義の導入を指向する意見もあるが、政治的に非常に難しく、今後も導入され

ることはないだろう。

2017 年に国境調整税に対する反対意見があまりにも強かったため、今後も仕向地主義

キャッシュフロー課税が通ることはないだろう。

【付加価値税(消費税)の導入】

グローバル経済の中、所得課税に依存するのではなく、消費税(付加価値税)を導入

すべきである。

共和党・民主党ともに付加価値税を導入する可能性はある。

付加価値税(消費税)を導入し、法人税負担を抑制していくのが望ましい方向性だと

考えている。

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仕向地主義キャッシュフロー課税よりも付加価値税を先に取り入れる方が理にかなっ

ている。付加価値税は諸外国で導入されており、税の内容も事前に分かっている。

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3. 英国5

(1) 法人税制の概要

英国の法人税率は 2000年時点では 30.0%であったが、英国経済の活性化と対内直接投資

EU諸国内での法人税率引き下げ競争に対抗すべく、2008年に法人税率が 28.0%に引き下げ

られたことを皮切りに段階的に引き下げられてきており、2017 年現在では 19.0%となって

いる。これは、EU主要国の中でも低い水準である。さらに、同税率は 2020年までに 17.0%

に引き下げられることが予定されている

法人税の対象となるのは、有限責任会社、無限責任会社、共済会又は慈善団体その他組

織を含む事業体の所得である。一般的なパートナーシップは法人税の納税義務者とならな

い(パススルー)。

2015年 4月以降、課税所得が 30万ポンド以下の企業に対する軽減税率、150万ポンド以

下の中小企業に対する税額控除(Marginal Relief)が共に廃止され、法人税率は課税所得に

関わらず 20.0%となった(リングフェンス所得6を除く)。

なお地方税としての法人所得課税は存在しない。

表 14 英国における法人税率

課税対象所得 税

2017 年

4月 1日~

2015年

4 月 1 日~

2017年

3月 31日

2014年

4月 1日~

2015年

3月 31日

2013年

4月 1日~

2014年

3月 31日

2012年

4月 1日~

2013年

3月 31日

£300,000 以

減 19.0% 20.0%

20.0%

£300,000 超 標

準 21.0% 23.0% 24.0%

£300,000 超

£ 1,500,000

以下

- - 1/400 3/400 4/400

(出所)JETROホームページから加筆修正

5 「平成 28年度産業経済研究委託事業(法人課税負担の実態に関する調査)報告書」をベースとし、一部

情報をアップデートしている。 6 リングフェンス所得(イギリス領の油田開発事業から得られた収益)には、30%の標準税率が適用され

る。ただし、課税所得が 30万ポンド以下の場合は、19%の軽減税率が適用される。また、課税所得が 30

万ポンド超~150万ポンド以下の場合には、法人税額から控除(Marginal Relief)が受けられる。

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(2) キャメロン政権以降の法人税制改革

① 税制改革の哲学:ロードマップ

2010 年 5 月のデービッド・キャメロン政権誕生以降、英国では法人税改革が急速に進め

られてきた。法人税率引き下げを含む法人税制改革は、2010年 11月に財務省から公表され

た法人税制改革のロードマップ”Corporate Tax Road Map”に基づいている7。この時に示さ

れた法人税改革の原則は、以下の 5点である。

【法人税改革の原則】

1) 課税ベースを維持しながらの税率引き下げ:

税率が低く優遇措置や控除が少ない法人税制は、投資を促進し経済活動の歪みを抑制す

る。

2) 安定した税制の確保:

安定的な税制は企業活動にとって重要である。政府は無用な税制改正を避け、持続可能

で長期安定的な税制を構築する。

3) 最新の事業実態の反映:

グローバリゼーションと技術進歩によって、企業経営は過去 20年間ますます急速に転換

してきた。税制はそうした企業経営の実態に対応する必要がある。

4) 複雑性の排除:

政府は簡素な税制を志向してきたが、複雑性が残っている。政府はより簡素な税制を構

築する必要がある。

5) 納税者に対する公平なシステム:

税制は、企業間で公平であることが望ましく、控除や免税措置は制限すべきである。

7 緊急予算(Budget June 2010)および歳出計画(Spending Review)を受け、2010年 11月に財務省より

公表された。

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② 法人税率の引き下げ

キャメロン政権では、2011 年以降、法人税制改革のロードマップに従って法人税率の引

き下げが進められてきた。2011年度以降の法人税率を提案時期ごとに整理したものが表 15

である。2010 年度時点の法人税率は 28%だったが、2010 年 5 月の提案において 2011 年度

以降毎年 1%ずつ税率を引き下げ、2014年度には 24%まで引き下げることが盛り込まれた。

しかし実際には、2011 年度には 2%引き下げられて 26%になり、2012 年度にはさらに 2%

引き下げられて 24%となった。2012 年 3 月時点の提案では、2013 年度に 23%、2014 年度

に 22%と、さらに 1%ずつ引き下げる予定となっていたが、2012年 12月の秋の財政演説に

よって、2014 年度に 21%に引き下げることが盛り込まれた。その後、2015 年度には 20%

に引き下げられた後、2015 年 7 月には、2017 年 4 月から 19%に引下げ、2020 年 4 月から

18%に引下げることが決まった。なお、2016年財政法により、2020年以降の税率について、

さらに引き下げ幅を拡大し、17%まで引き下げられることとなった。

なお、2010 年度までは課税所得が 30 万ポンド以下の中小企業に対しては 22%の軽減税

率が適用されていた。軽減税率は 2011 年度に 20%に引き下げられたが、2015 年度に標準

税率が 20%まで引き下げられたため、消滅する形になっている。これは税率を単一化する

ことによって税制の簡素化を企図したものである。

表 15 英国における法人税率の推移

提案時期 各年度における法人税率

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

2010年 5月

28%

27% 26% 25% 24% - - -

2011年 3月 26% 25% 24% 23% - - -

2012年 3月 - 24% 23%

22% - - -

2012年 12月(秋演説) - - 21% - - -

2013年 3月 - - - - 20% 20% 19%

(注)四角囲みが実際の法人税率

(出所)Oxford University Centre for Business Taxation “Business Taxation under the Coalition

Government” February 2015 に 2016・2017年度分を加筆

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69

③ 減価償却制度の見直し

英国では、建物は減価償却できない制度となっているが、その他の資産については資本

控除(Capital Allowance)という仕組みの定率法が適用されている。建物付属設備と機械

装置等に対する資本控除率は 2011年度まで 20%だったが、2012年度に 18%に引き下げら

れた。なお電子システム等の特別な資本財については 10%から 8%に引き下げられている。

これは課税ベースを拡大する措置である。

減価償却制度についてのもう一つの見直しが年次投資控除(Annual Investment

Allowance:AIA)である。年次投資控除とは、自動車を除く一般的な設備や機械に対して

適用され投資額が全額即時償却される制度だが、即時償却には上限額がある。年次投資控

除の上限の推移を示したものが表 16 である。2012 年 3 月までは、年次投資控除の上限は

10 万£だった。しかし課税ベースの拡大を図るために、2012 年 4 月に 4 分の 1 の 2.5 万£ま

で引き下げられた。しかしこの上限額はわずか 8カ月しか続かず、2013年 1月には 10倍の

25 万£まで引き上げられ、2014 年 4 月にはさらに倍の 50 万£まで引き上げられた。年次投

資控除上限の予見不可能で頻繁な制度改正は、企業の投資行動の不確実性を高める要因に

なると批判されてきた。そのため英国政府は、2016 年 1月以降、年次投資控除の上限を 20

万£で恒久措置化することを決定した。

表 16 年次投資控除の上限の推移

2012年 3月

以前

2012年 4月~

2012年 12月

2013年 1月~

2014年 3月

2014年 4月~

2015年 12月

2016年 1月

以降

10 万£ 2.5 万£ 25万£ 50万£ 20万£

(出所)英国政府ホームページ

④ 研究開発税制およびパテントボックス税制

英国の研究開発税制は 2000年代初頭に導入されたが、2008年に大幅拡充された。キャメ

ロン政権では以下の 2 つの改革が行われた。第一は、中小企業は 2010年まで研究開発費の

175%を課税所得から控除できる仕組みだったが、それを 2011年 4月に 200%まで引き上げ

た。その後、2012 年 4 月には 225%まで引き上げ、2015 年 4 月には 230%まで拡大させて

いる。これによって、中小企業は研究開発投資をさらに増やすインセンティブを持つこと

になった。改革の第二は、2013年の Above the Line控除の導入である。欠損法人の大企業

の場合、研究開発投資を行ったとしてもすぐには優遇措置を受けることはできず、将来課

税所得が発生した段階で控除を受けることができる。Above the Line控除では、欠損法人

であっても研究開発費の 11%の税額が還付されることになる。

イノベーション関連のもう一つの改革が、2013 年からのパテントボックス税制の段階的

な導入である。パテントボックスは、特許や関連知的財産権から生じる利益に対して 10%

の軽減税率を適用する制度である。

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70

(3) 財源確保策

このように、法人税改革はネット減税になっているが、財源を確保するために歳出カッ

トや他の税負担を拡大させる方策を講じている。ここでは主要な税負担拡大方策である付

加価値税(Value Added Tax)、国民保険料(National Insurance Contributions)、ビジネス

レート(Business Rate)の 3つを取り上げる。

① 付加価値税率

諸外国の付加価値税の標準税率の推移を示したものが図 43である。英国の付加価値税は

1973年に税率 10%で導入され、1991年以降はながらく 17.5%で据え置かれてきた。英国の

付加価値税には軽減税率が導入されており、食料品、水道水、新聞、雑誌、書籍、国内旅

客輸送、医薬品、居住用建物の建築、障害者用機器等は税率 0%であり、家庭用燃料や電力

等の税率は 5%である8。

図 43 諸外国の付加価値税の標準税率の推移

(出所)財務省ホームページ「諸外国における付加価値税の標準税率の推移」

しかし、2008 年のリーマンショック後に経済が急速に悪化し、雇用情勢と消費が低迷す

るなか、当時のブラウン政権は、景気刺激を目的として 17.5%だった付加価値税を同年 12

月 1日から 2009年 12月 31日までの 13カ月間 15%に引き下げた。しかしその後、2010年

に誕生したキャメロン政権が作成した 2010年 6月の緊急予算案では、財政赤字の解消を目

8 財務省ホームページ「主要国の付加価値税の概要」

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/108.htm

Page 75: 平成 29 年度産業経済研究委託事業 (法人税改革の影響及び ...4 表 1 変化なし・増税・減税企業の企業数・平均値比較 ìFúFç Q&ï ö&ï ìFúFç

71

的として付加価値税率を 20%に引き上げることが盛り込まれ、2011年 1月より施行され現

在に至っている。

付加価値税の増税は家計負担の増加によって英国経済に打撃を与える可能性があるとし

て、小売業界から懸念が表明されたが9、オズボーン財務相は所得税や国民保険料と比較す

れば、付加価値税の増税は個人の就労阻害や企業の国際競争力低下といった悪影響が少な

く、財政健全化を行うためには不可避の方策であるとしている10。

② 国民保険料

英国では、公的年金および国民保健サービス(National Health Service:NHS)の財源を

賄うために国民保険料が徴収されている。国民保険料は、被用者と雇用者を対象としたク

ラス 1、自営業者を対象としたクラス 2、学生や海外居住者などが任意で支払うクラス 3、

高収入の自営業者に対するクラス 4 の 4 種類に分かれている。クラス 2 とクラス 3 は定額

保険料であり、クラス 1とクラス 4は所得に対する定率保険料となっている。

被用者を対象としたクラス 1の 2016年度保険料について示したものが表 17 である。保

険料率は週給によって異なっており、週給 155£~827£の場合の被用者保険料率は 12%とな

る。827£を超える分については保険料率が 14%となる。一方、雇用者については週給 156£以

上について 13.8%保険料率が負荷されている。

表 17 クラス 1 の国民保険料率(2017 年度)

クラス 1

国民保険料

対象 課税対象となる週給 保険料率

被用者 157~866£ 12%

866£を超える部分 14%

雇用者 157£を超える部分 13.8%

(出所)HMRC “Main Features of NICs 1999-2000 To 2017-16”

クラス 1保険料率(Main Rate)の推移を示したものが図 44である。2003年度以降、被

用者保険料率は 11%、雇用者保険料率は 12.8%で推移してきたが、2011年度にはそれぞれ

12%と 13.8%に引き上げられて現在に至っている。

9 BBC news “VAT rate rises from 17.5% to 20%”

http://www.bbc.com/news/business-12099638” 10 The Guardian “Miliband accuses Osborne of misleading people over VAT rise”

https://www.theguardian.com/politics/2011/jan/04/george-osborne-vat-rise-least-damaging

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図 44 クラス 1 保険料率(Main Rate)の推移

(出所)HMRC “Main Features of NICs 1999-2000 To 2017-18”

③ ビジネスレート

ビジネスレートは非居住用(事業用)資産(店舗、事務所、倉庫、工場など)に対する

固定資産税である。ビジネスレートの税率は中央政府が決定し、自治体が徴収を行ってい

る。イングランドとウェールズでは、資産評価局が市場の年間賃貸額に基づく課税評価額

を算出し、中央政府が決定する税率(Multiplier)を掛けることで税額を算出する11。2017

年度の評価額 1 ポンド当たりの課税額は、イングランド 47.9 ペンスである。小規模事業者

に対しても軽減措置が行われている。

表 18 ビジネスレートの税率(評価額 1 ポンド当たりの課税額:ペンス)

標準 小規模事業者

2017年度 47.9 ペンス 46.6ペンス

2016年度 49.7 ペンス 48.4ペンス

2015年度 49.3 ペンス 48.0ペンス

(出所)英国政府 HP

11 スコットランド、北アイルランドでは取り扱いが異なっている。

12.0%

13.8%

8%

9%

10%

11%

12%

13%

14%

15%

被用者 雇用者

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④ 税収内訳の変化

こうした一連の税制改革によって、英国政府の税収内訳は変化してきている。一般政府

における税収の内訳を 2010年と 2016年について示したものが図 45である。法人税は 2010

年の税収の 8.5%を占めていたが、2015 年には 8.1%まで減少している。その一方で、付加

価値税は 18.7%から 20.8%まで上昇している。また社会保険料とビジネスレートはおおむ

ね同水準の割合を維持していることが分かる。

以上から英国では、法人税改革によってネット減税となっているものの、歳出カットを

行ない、付加価値税や社会保険料、ビジネスレート等の負担を拡大させることによって、

財政再建をしながら法人税負担を軽減してきていることが分かる。

図 45 英国一般政府の税収の内訳

(出所)OECD “Revenue Statistics”

28.2%

26.2%

8.6%

8.1%

19.0%

18.9%

4.7%

4.6%

18.7%

20.8%

20.8%

21.4%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

2010

2016

所得税 法人税 社会保険料 ビジネスレート 付加価値税 その他

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第 IV 章 アンケート調査

1. アンケート調査の概要

(1) 実施時期・発送数・回収数

アンケート調査票は 2017年 7月 7日(金)に発送した。調査対象は、資本金1億円超の

19,530社である。最終的な回収数は 4,804社の回収を得ており、回収率は 25.2%となってい

る。

表 19 アンケート調査の概要

項目 内容

調査対象 資本金1億円超の企業

うち、宛先不明等での返送数

19,530 社

468社

調査方式 郵送配布・留置・郵送回収における自記方式

調査期間 2017年 7月 10日~2017年 9月 4日

(調査票上の〆切は7月 21 日だが、督促状況等を踏まえて、回収期

間を延長)

回収数 4,804 社

回答率 25.2%(宛先不明等による返送数除く)

(2) 企業規模の定義

以下の企業を中小企業・中堅企業・大企業とそれぞれ定義した。アンケート調査対象企

業は原則として資本金 1 億円超の税法上の大企業だが、調査対象企業を選定した時点での

資本金と、調査実施時の資本金に差異が生まれるケースがあるため、以下の集計では中小

企業も集計対象に含まれている。

○ 中小企業 :資本金 1億円以下

○ 中堅企業 :資本金 1億円超 10億円以下

○ 大企業 :資本金 10億円超

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(3) 産業分類の定義

合計でみると、「卸売業」の割合が最も高く 10.3%となっている。次いで、「サービス業

(9.2%)」、「情報・通信業(8.5%)」、「不動産業(7.4%)」となっている。

企業規模別にみると、「中堅企業」では、「卸売業(11.5%、11.8%)」、「サービス業(12.3%、

10.5%)」の割合が高くなっている。大企業では、「卸売業(7.6%)」、「不動産業(6.8%)」、

「建設業(6.5%)」の順に割合が高い。

なお、「集計用産業分類」は、産業分類別集計を行う際に用いる集約した産業分類である。

表 20 業種別割合および集計用産業分類

(n=4727) (n=130) (n=2962) (n=1621)

合計 中小企業 中堅企業 大企業

対象外 水産・農林業 0.4% 0.8% 0.5% 0.2%

鉱業 0.6% 1.5% 0.2% 1.2%

建設業 建設業 6.4% 4.6% 6.4% 6.5%

その他製造業 食料品 3.1% 4.6% 2.8% 3.4%

繊維製品 0.8% 2.3% 0.5% 1.1%

素材型製造業 パルプ・紙 0.5% 0.0% 0.5% 0.6%

化学 4.3% 3.1% 3.6% 5.6%

医薬品 1.0% 2.3% 0.6% 1.7%

石油・石炭製品 0.3% 0.8% 0.2% 0.6%

ゴム製品 0.5% 0.0% 0.5% 0.5%

ガラス・土石製品 1.1% 0.0% 1.1% 1.2%

鉄鋼 1.5% 0.0% 1.4% 1.9%

非鉄金属 1.8% 0.0% 1.6% 2.5%

その他製造業 金属製品 1.7% 0.0% 1.8% 1.5%

加工組立型製造業 機械 2.2% 1.5% 1.4% 3.8%

電気機器 4.1% 3.1% 3.7% 5.0%

輸送用機器 3.0% 0.8% 2.2% 4.7%

精密機器 1.3% 2.3% 1.1% 1.4%

その他製造業 その他製品 2.4% 2.3% 2.8% 1.6%

インフラサービス 電気・ガス業 3.0% 4.6% 2.8% 3.1%

陸運業 2.0% 2.3% 1.4% 3.0%

海運業 0.8% 0.0% 0.9% 0.7%

空運業 0.3% 0.0% 0.2% 0.6%

倉庫・運輸関連業 3.2% 1.5% 3.8% 2.1%

情報・通信業 8.5% 5.4% 9.9% 6.3%

卸小売業 卸売業 10.3% 11.5% 11.8% 7.6%

小売業 4.7% 6.2% 4.6% 4.9%

金融・不動産業 銀行業 1.0% 0.0% 0.0% 2.7%

証券、商品先物取引業 1.2% 0.0% 1.1% 1.6%

保険業 1.0% 2.3% 0.6% 1.7%

その他金融業 3.8% 1.5% 4.1% 3.4%

不動産業 7.4% 8.5% 7.7% 6.8%

その他サービス業 サービス業 9.2% 12.3% 10.5% 6.4%

対象外 その他 6.5% 13.8% 7.3% 4.4%

無回答 1.6% 1.5% 1.5% 1.2%

集計用産業分類 産業分類

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2. 保有現預金の用途

現在保有する現預金の今後の用途として最も多い活用先について、全体では「運転資金

(41.4%)」が最も多く、次いで「設備投資(国内)(25.4%)」、「借入返済(10.3%)」が多い。

企業規模別に見ると、「中小企業」においては、全体の傾向よりも「運転資金(51.2%)」

の割合が高く、「設備投資(国内)(15.4%)」の割合が低くなっている。「大企業」において

は、「運転資金(32.8%)」が最も多く、次いで「設備投資(国内)(30.0%)」と、約 3 割ず

つを占めている。

産業分類別に見ると、「卸小売業」、「建設業」における「運転資金(52.9%、52.9%)」、「そ

の他製造業」、「インフラサービス」、「素材型製造業」における「設備投資(国内)(35.0%、

32.8%、32.6%)」等で、全体の傾向よりも割合が高くなっている。

図 46 保有現預金の用途(企業規模別)

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図 47 保有現預金の用途(産業分類別)

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3. 最も重点的に取り組んだ無形資産投資

直近年度において、最も重点的に取り組んだ無形資産投資について、全体では「重点的

に取り組んだ無形資産投資はない(43.7%)」が最も多くなっている。投資先としては「ソ

フトウェア開発(28.1%)」が最も多く、「研究開発(12.0%)」、「教育訓練(OJT、Off-JT 等)

(6.9%)」が次いでいる。

企業規模別に見ると、「中小企業」、「中堅企業」では「重点的に取り組んだ無形資産投資

はない(52.8%、49.2%)」が約半数を占める。投資先としては、「大企業」における「研究

開発(20.3%)」、「ソフトウェア開発(33.8%)」等で、全体の傾向よりも割合が高くなって

いる。

産業分類別に見ると、「金融・不動産業」では「重点的に取り組んだ無形資産投資はない

(58.7%)」が半数を超えている。投資先としては、「加工組立型製造業」、「素材型製造業」

における「研究開発(38.1%、31.7%)」、「建設業」における「教育訓練(OJT、Off-JT 等)

(15.0%)」等で、全体の傾向よりも割合が高くなっている。

図 48 最も重点的に取り組んだ無形資産投資(企業規模別)

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図 49 最も重点的に取り組んだ無形資産投資(産業分類別)

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4. 課税標準額が取得価額の 5%となっている資産の課税標準額の割合

償却資産の課税標準額(合計)のうち、課税標準額が取得価額の 5%(指定限度額)とな

っている資産の課税標準額の割合について、全体では「9%以上(43.8%)」が最も多く、「0

(17.2%)」、「1~3%未満(17.1%)」が次いでいる。

企業規模別に見ると、「中小企業」における「9%以上(52.5%)」、「0(20.3%)」等で、全

体の傾向よりも割合が高くなっている。

産業分類別に見ると、「素材型製造業」における「9%以上(61.4%)」、「金融・不動産業」

における「0(29.0%)」、「加工組立型製造業」、「その他製造業」における「9%以上(54.0%、

54.0%)」等で、全体の傾向よりも割合が高くなっている。

図 50 課税標準額が取得価額の 5%となっている資産の課税標準額の割合

(企業規模別)

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図 51 課税標準額が取得価額の 5%となっている資産の課税標準額の割合

(産業分類別)

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5. 参考

(1) 納税方式

全体では、「単独納税(81.5%)」が最も多く、「連結納税(子法人)(12.9%)」、「連結納税

(親法人)(5.6%)」の順となっている。

企業規模別に見ると、「大企業」における「連結納税(親法人)(12.8%)」等で、全体の

傾向よりも割合が高くなっている。

産業分類別に見ると、「加工組立型製造業」では、全体の傾向よりも「単独納税(66.0%)」

の割合が低く、「連結納税(親法人)(15.6%)」の割合が高くなっている。その他には、「イ

ンフラサービス」、「金融・不動産業」における「単独納税(87.9%、87.0%)」等で、全体の

傾向よりも割合が高くなっている。

図 52 納税方式

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図 53 納税方式(産業分類別)

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(2) 会計方式

全体では、「単独会計(56.7%)」が最も多く、「連結会計(子法人)(23.3%)」、「連結会計

(親法人)(20.0%)」の順となっている。

企業規模別に見ると、「大企業」における「連結会計(親法人)(43.6%)」の割合が全体

の傾向よりもかなり高くなっている。

産業分類別に見ると、「加工組立型製造業」、「素材型製造業」においては「単独会計」、「連

結会計(親法人)」、「連結会計(子法人)」の割合がおよそ 3分割となっている。「金融・不

動産業」、「その他サービス業」、「インフラサービス」等で「単独会計(69.1%、66.1%、62.6%)」

の割合が全体の傾向よりも高くなっている。

図 54 会計方式(企業規模別)

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図 55 会計方式(産業分類別)

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(3) 連結納税の範囲

全体では、「連結会計だが連結納税はしていない(75.7%)」が最も多く 7割を超えている。

次いで、「連結会計の範囲と連結納税の範囲は異なる(20.2%)」、「連結会計の範囲と連結納

税の範囲は同一(4.1%)」となっている。

企業規模別に見ると、「中小企業」における「連結会計の範囲と連結納税の範囲は異なる

(44.4%)」、「中堅企業」における「連結会計だが連結納税はしていない(88.8%)」等で、

全体の傾向よりも割合が高くなっている。

産業分類別に見ると、「加工組立型製造業」、「素材型製造業」における「連結会計の範囲

と連結納税の範囲は異なる(34.2%、26.6%)」、「その他サービス業」における「連結会計だ

が連結納税はしていない(87.3%)」等で、全体の傾向よりも割合が高くなっている。

図 56 連結納税の範囲(企業規模別)

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図 57 連結納税の範囲(産業分類別)

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(4) 株式公開の状況

全体では、「未上場(81.3%)」、「上場(18.7%)」となっている。

企業規模別では、「大企業」は「上場」が 44.0%、「未上場」が 56.0%という割合なのに対

し、「中小企業」、「中堅企業」では「未上場」の割合が 9割を越えている。

産業分類別では、「上場」の割合が「加工組立型製造業(35.5%)」、「素材型製造業(28.5%)」

等で、全体の傾向よりも高くなっている。

図 58 株式公開の状況(企業規模別)

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図 59 株式公開の状況(産業分類別)

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(様式2)

頁 図表番号70 図43

タイトル諸外国の付加価値税の標準税率の推移

二次利用未承諾リスト

委託事業名 平成29年度産業経済研究委託事業(法人税改革の影響及び諸外国の税制改正動向に関する調査)

報告書の題名 平成29年度産業経済研究委託事業(法人税改革の影響及び諸外国の税制改正動向に関する調査) 報告書

受注事業者名 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社