Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
平成 29年度 経済産業省委託調査報告
公表用
平成 29年度製造基盤技術実態等調査
低品位鉄鉱石の有効活用の可能性に関する調査報告書
平成 30年 2月
一般財団法人金属系材料研究開発センター
0
目次
1. 目的 1
2. 鉄鉱石の結晶構造解析に関する調査 1
2.1 代表的な鉄鉱石の成分分析 1
2.2 XRD(X線回折)定性分析 2
2.3 顕微鏡観察及び EPMA面分析 14
2.4 鉄鉱石の結晶構造解析に関する調査結果のまとめ 25
1
銘柄 T.Fe SiO2 Al2O3 CaO MgO K2O P S CW 備考(試料粒度)
1 A 65.54 1.89 1.15 0.03 0.08 0.022 0.049 0.009 2.03 1-3mm
2 B 62.62 6.95 0.92 0.07 0.10 0.009 0.048 0.004 1.60 1-3mm
3 C 67.79 2.00 0.25 0.05 0.01 0.004 0.015 0.003 0.39 有姿
4 D 57.78 3.60 2.55 0.14 0.09 0.010 0.037 0.025 9.23 1-3mm
5 E 58.68 4.08 1.48 0.06 0.05 0.005 0.047 0.011 8.66 1-3mm
6 F 57.23 5.51 1.25 0.06 0.08 0.006 0.040 0.016 9.82 1-3mm
7 G 61.49 3.42 2.06 0.04 0.08 0.012 0.110 0.025 5.56 1-3mm
8 H 63.79 5.93 0.41 1.78 1.26 0.026 0.138 0.029 0.49 1-3mm
9 I 60.73 8.34 1.25 0.06 0.06 0.017 0.070 0.008 2.74 1-3mm
10 J 65.27 7.55 0.23 0.19 0.42 0.146 0.019 0.002 0.26 有姿高脈石
低脈石・低P
中程度P
高P
低品位鉄鉱石の有効活用の可能性調査
1. 目的
我が国は鉄鉱石資源の大部分を豪州、ブラジルに依存しているが、近い将来、両国の鉄鉱石資源
は低品位化(鉄分含有量の低下、りん・硫黄・けい素等の不純物含有量の増加など)が予測されて
いる。こうした低品位な鉄鉱石の利用は、高炉スラグ量の増加、高炉の還元材比の低下などに繋が
ることから、我が国の鉄鋼業の国際競争力に影響を及ぼすとともに、不純物は鋼材の特性を劣化(靱
性、溶接性の低下など)させることから、早急に高度な不純物の除去技術等の低品位鉄鉱石の有効
活用技術を確立することが不可欠である。この低品位鉄鉱石の有効活用技術の確立は、我が国にお
ける鉄鋼業の国際競争力の強化のみならず、鉄鋼業におけるエネルギー消費量の低減、CO2排出量
の抑制に繋がる。
ここでは、未開発の不純物を多く含む低品位鉄鉱石の有効活用技術の確立を目的として、鉄鉱石
の結晶構造解析、不純物除去技術、塊状化技術についての現状分析や情報収集を行い、鉄鉱石中の
不純物除去技術の動向及び課題を調査する。
2. 鉄鉱石の結晶構造解析に関する調査
我が国の鉄鋼業が使用している主要産地の鉄鉱石について、りん・硫黄・けい素等の不純物を含
めた組成の結晶構造について調査する。具体的には、10体程度の供試体を無作為に入手し、科学
的手法(①化学分析、②XRD定性分析、③組織観察、④EPMA面分析)によって結晶構造を解
析し、鉄鉱石中の不純物の存在形態(不純物含有の鉱物が単体で存在するのか又は不純物が鉱物中
に固溶しているのか、不純物同士が化合物を形成しているのか、どのような化合物を形成している
のかについて判断できる微細組織の写真、化合物の同定や定量分析の結果など)を調査する。
2.1 代表的な鉄鉱石の成分分析
今回の試料粒度は比較的粗粒の1-3mmの粒度の鉱石を対象とした。各鉱石の化学組成を表1
に示す。
表1 各鉱石の化学組成
2
Pの高い鉱石は、G鉱石とH鉱石であり、P>0.1%である。また、高脈石鉱石であるI鉱石も
P=0.07%含有していた。
2. 2 XRD(X線回折)定性分析
X線回折装置はリガク製で、表2の測定条件で測定を実施した。
表2 X線回折装置の測定条件
また、解析に使用したXRDパターンデータベースは下記(表3)を使用した。
表3 XRDパターンデータベース
3
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 1200
100000
200000
300000
①IOCJ
ピークリスト
01-080-2377; Fe2 O3; Hematite, syn
01-081-0464; Fe O ( O H ); Goethite, syn
01-087-2096; Si O2; Quartz low, syn
01-088-0866; Fe3 O4; Magnetite
01-074-6632; Al ( O H )3; Gibbsite, syn
01-078-1996; Al2 ( Si2 O5 ) ( O H )4; Kaolinite-1A
2θ(deg)
X線回
折強
度(c
ount
s)
図2A ②SSFTのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト
※バックグラウンド除去後図 2A B鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
X線回
折強
度(c
ount
s)各鉱石のXRD測定結果を図1A~図10Aに、また各図の一部領域を拡大した図を図 1B
~図10Bに示す。各測定データは、バックグラウンド除去後のデータを示している。
図 1A A 鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
4
2θ(deg)
X線回折強度
(cou
nts)
図3A ③PFFTのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト
※バックグラウンド除去後
図4A ④ROBEのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト
※バックグラウンド除去後
図 3A C鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
図 4A D鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
X線回折強度
(cou
nts)
5
※バックグラウンド除去後
図5A⑤HIYのXRDパターンと候補結晶相のピークリスト
図6A ⑥BHPYのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト
※バックグラウンド除去後
図 5A E鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
図 6A F鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
X線回折強度
(cou
nts)
X線回折強度
(cou
nts)
6
図7A ⑦PILBのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト
※バックグラウンド除去後
図8A Avnik SFのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト
※バックグラウンド除去後
図 7A G鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
図 8A H鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
X線回折強度
(cou
nts)
X線回折強度
(cou
nts)
7
図9A ⑨SFHTのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト
※バックグラウンド除去後
図10A ⑩SINOのXRDパターン (※)と候補結晶相のピークリスト
※バックグラウンド除去後
図 9A I鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
図 10A J鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
X線回折強度
(cou
nts)
X線回
折強
度(c
ount
s)
8
図 2B B 鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
図 2A の一部領域の拡大図
10 20 30 40 500
10000
20000 ①IOCJ
ピークリスト
01-080-2377; Fe2 O3; Hematite, syn
01-081-0464; Fe O ( O H ); Goethite, syn
01-087-2096; Si O2; Quartz low, syn
01-088-0866; Fe3 O4; Magnetite
01-074-6632; Al ( O H )3; Gibbsite, syn
01-078-1996; Al2 ( Si2 O5 ) ( O H )4; Kaolinite-1A
X線回折強度
(cou
nts)
図1B IOCJのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト(図1Aの一部領域の拡大図)図 1B A 鉱石の XRD パターン
(※)と候補結晶相のピークリスト
(図1A の一部領域の拡大図)
10 20 30 40 500
5000
10000
15000 ②SSFT
ピークリスト
01-080-2377; Fe2 O3; Hematite, syn
01-081-0464; Fe O ( O H ); Goethite, syn
01-087-2096; Si O2; Quartz low, syn
01-088-0866; Fe3 O4; Magnetite
00-019-0770; Mg3 Si4 O10 ( O H )2; Talc-2M
01-078-1996; Al2 ( Si2 O5 ) ( O H )4; Kaolinite-1A
X線回折強度
(cou
nts)
図2B SSFTのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト(図2Aの一部領域の拡大図)図 2B B 鉱石の XRD パターン
(※)と候補結晶相のピークリスト
(図 2A の一部領域の拡大図)
9
X線回折強度
(cou
nts)
図4B ROBEのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト(図4Aの一部領域の拡大図)
図 3B C 鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
(図 3A の一部領域の拡大図)
図 4B D 鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
(図 4A の一部領域の拡大図)
10 20 30 40 50
0
5000
10000
15000 ③PFFT
ピークリスト
01-080-2377; Fe2 O3; Hematite, syn
01-081-0464; Fe O ( O H ); Goethite, syn
01-087-2096; Si O2; Quartz low, syn
01-088-0866; Fe3 O4; Magnetite
2θ(deg)
X線回折強度
(cou
nts)
10
X線回折強度
(cou
nts)
図5B HIYのXRDパターンと候補結晶相のピークリスト(図5Aの一部領域の拡大図)
X線回折強度
(cou
nts)
図6B BHPYのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト(図6Aの一部領域の拡大図)
図 5B E 鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
(図 5A の一部領域の拡大図)
図 6B F 鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
(図 6A の一部領域の拡大図)
11
X線回
折強
度(c
ount
s)
図8B Avnik SFのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト(図8Aの一部領域の拡大図)
X線回折強度
(cou
nts)
図7B PILBのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト(図7Aの一部領域の拡大図)
図 8B H 鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
(図 8A の一部領域の拡大図)
図 7B G 鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
(図 7A の一部領域の拡大図)
12
X線回折強度
(cou
nts)
図10B SINOのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト(図10Aの一部領域の拡大図)
X線回折強度
(cou
nts)
図9B SFHTのXRDパターン(※)と候補結晶相のピークリスト(図9Aの一部領域の拡大図)図 9B I 鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
(図 9A の一部領域の拡大図)
図 10B J 鉱石の XRD パターン(※)
と候補結晶相のピークリスト
(図 10A の一部領域の拡大図)
13
X線回折法による鉱物同定結果を表4に示す。
表4 X線回折法による鉱物同定結果
・H 鉱石にはリンを含む鉱物として、Fluorapatite(Ca5(PO4)3F)が含まれる可能性がある。
ただし、ピークが微弱であるため断定には至らない。
・また、H 鉱石以外の鉄鉱石からは、リンを含む鉱物は検出されなかった。
検出されない理由としては、
① 検出下限以下、
② 結晶度が低いと出ない。XRDで検出不可である非晶質または微細結晶(目安として 100nm以下)と
して存在する、
③ 天然鉱物は純粋ではないので、純粋鉱物のデータベースとずれるなどが挙げられる。
上記のように、P鉱物の同定には、X線回折測定法には限界がある。
14
A鉱石
P
B鉱石
低脈石・低P鉱石
D鉱石
中程度P
C鉱石P=0.049% P=0.048% P=0.015% P=0.037%
E鉱石 F鉱石
中程度P 高P
G鉱石 H鉱石
P
P=0.047% P=0.040% P=0.110% P=0.138%
高脈石
I鉱石 J鉱石
P
P=0.070% P=0.019%
2.3 顕微鏡観察およびEPMA面分析
X 線回折法では H 鉱石のみ P 鉱物が検出されたが、X 線回折法では鉱物同定に限界があることか
ら、顕微鏡観察および EPMA により、「P」の存在部分を調査した。 調査法は、事前に P が存在する粒子を特定し(図11)、その粒子を含む領域に関し EPMA 分析
を実施した。F 鉱石、G 鉱石、H 鉱石に P が検知され、特に H 鉱石には P の濃縮した粒子が存在す
る。
図11 Pが含まれる粒子の特定 図11の中から「P」を含有する B 鉱石、 H 鉱石、I 鉱石中の粒子を選別し、顕微鏡観察と EPMA
マッピング(EPMA 面分析)を実施し、図12~図21に示す。
15
マッピング-1 マッピング-2
図12 A 鉱石の顕微鏡観察結果と EPMA マッピング
A鉱石
16
No.1
No.2
X線顕微鏡観察結果
P
Pの多いNo.1部分をEPMAマッピング
マッピング-1
図13 B 鉱石(P=0.048%)の顕微鏡観察結果と EPMA マッピング位置
B鉱石
Pの存在部分
Pの存在する部分にはCa,F,Alが存在。
P Ca
Fe Si Al
Cl F S
マッピング – 2
62
Pは存在しない
17
マッピング-1 マッピング-2
図14 C 鉱石の顕微鏡観察結果と EPMA マッピング
C鉱石
18
マッピング-1 マッピング-2
図15 D 鉱石の顕微鏡観察結果と EPMA マッピング
D鉱石
19
マッピング-1 マッピング-2
図16 E 鉱石の顕微鏡観察結果と EPMA マッピング
E鉱石
20
マッピング-1 マッピング-2
図17 F 鉱石の顕微鏡観察結果と EPMA マッピング
F 鉱石
21
マッピング-1 マッピング-2
図18 G 鉱石の顕微鏡観察結果と EPMA マッピング
G鉱石
22
No.1
No.2
X線顕微鏡観察結果
P
14
No.1,No.2の粒子にPの濃縮部分あり
マッピング-1 マッピング-2
図19 H 鉱石(P=0.138%)の顕微鏡観察結果と EPMA マッピング
H鉱石
15
Pの存在する部分にはCa,Fが存在。Pは Fe(マグネタイト)の周囲に存在。
P Ca
Fe Si Al
Cl F S
P Ca
Fe Si Al
Cl F S
Pの存在する部分にはCa,Fが存在。Pは Fe(マグネタイト)の周囲に存在。
23
X線顕微鏡観察結果
P
No.1
No.2
No.1の部分にPが濃縮した部分あり
マッピング-1
図20 I 鉱石(P=0.070%)の顕微鏡観察結果と EPMA マッピング位置
I 鉱石
P Ca
Fe Si Al
Cl F S
Pの存在する部分にはCa,F,Cl が存在。Pは Fe(マグネタイト)に隣接。
マッピング - 2
63
24
マッピング-1 マッピング-2
図21 J 鉱石(P=0.019%)の顕微鏡観察結果と EPMA マッピング
J 鉱石
25
Pの標準物質にFのピークが見られるため、本分析試料でのFの存在をチェックするため、 図22にPとFのピークを比較した。
図22 PとFのピーク比較 EPMA 分析結果から、H 鉱石, B 鉱石には P、Ca、F の存在が、I 鉱石には P、Ca、Cl、F が検
出されたことから、P は 燐灰石(apatite Ca5(PO4)3X (X=F, Cl)として存在している可能性は
高い。また、藍鉄鉱(vivianite Fe3(PO4)2 ・8H2O)の結晶は見当たらなかった。 2.4 鉄鉱石の結晶構造解析に関する調査結果のまとめ
10個の鉄鉱石に対し、科学的手法(①化学分析、②XRD 定性分析、③組織観察、④EPMA 面分
析)を用いて、結晶構造を解析し、鉄鉱石中の不純物の存在形態(不純物含有の鉱物が単体で存在
するのか又は不純物が鉱物中に固溶しているのか、不純物同士が化合物を形成しているのか、どの
ような化合物を形成しているのかについて判断できる微細組織の写真、化合物の同定や定量分析の
結果など)を実施した結果を表5にまとめた。
26
銘柄 T.Fe SiO2 Al2O3 CaO MgO K2O P S CW 備考(試料粒度) XRD分析 EPMA分析 Pの存在する形態
1 A 65.54 1.89 1.15 0.03 0.08 0.022 0.049 0.009 2.03 1-3mm Pの存在する鉱物を特定できなかった。
2 B 62.62 6.95 0.92 0.07 0.10 0.009 0.048 0.004 1.60 1-3mm P-Ca-F Pは燐灰石(Apatite)として
存在している可能性が高い
3 C 67.79 2.00 0.25 0.05 0.01 0.004 0.015 0.003 0.39 有姿
4 D 57.78 3.60 2.55 0.14 0.09 0.010 0.037 0.025 9.23 1-3mm
5 E 58.68 4.08 1.48 0.06 0.05 0.005 0.047 0.011 8.66 1-3mm
6 F 57.23 5.51 1.25 0.06 0.08 0.006 0.040 0.016 9.82 1-3mm
7 G 61.49 3.42 2.06 0.04 0.08 0.012 0.110 0.025 5.56 1-3mm
8 H 63.79 5.93 0.41 1.78 1.26 0.026 0.138 0.029 0.49 1-3mmFluorapatiteCa5(PO4)3F
P-Ca-F
9 I 60.73 8.34 1.25 0.06 0.06 0.017 0.070 0.008 2.74 1-3mm P-Ca-F-Cl
10 J 65.27 7.55 0.23 0.19 0.42 0.146 0.019 0.002 0.26 有姿 Pの存在する鉱物を特定できなかった。
高脈石
Pは燐灰石(Apatite)として
存在している可能性が高い
Pの存在する鉱物を特定できなかった。
低脈石・低P
中程度P
高P
下
限
濃
度
限
界
表5 鉄鉱石の結晶構造解析に関する調査結果の総括
●化学成分からは、G 鉱石、H 鉱石および I 鉱石はP濃度の高い鉱石である。 ●しかし、XRD 分析では P が検出されたのは H 鉱石のみであり、本解析に供した鉱石の粒度が 1~3mm と粗粒であったことも影響しているかも知れないが、P の含有量は少なく XRD 分析では検
出下限以下だった可能性が高い。もしくは検出不可の非晶質または微細結晶(目安として 100nm 以
下)として存在する等の可能性が挙げられる。 ●EPMA 分析から、上記鉱石中に存在する P は脈石中に存在しており、Fe(酸化鉄)には固溶してい
ない。P を含有する粒子は 100μm程度で、大粒子も存在しており、酸化鉄(マグネタイト)に隣接
して存在している。EPMA 分析結果からは、P の存在する鉱物としては、燐灰石(Ca5(PO4)3X (X=F,Cl))の可能性が高い。B 鉱石、H 鉱石、I 鉱石で検出されたアパタイトは粒度が大きく、マグ
ネタイトに隣接しているので、磁選して除去できる可能性がある。一方、成分分析結果では P の高
い豪州 G 鉱石でも、X線回折、EPMA 分析では P を検出できていない。今回の試料粒度は 1-3mmで、比較的粗粒の粒子を調査したため、微粒部分に P が濃縮している可能性もあり、さらなる調査
が必要と考えられる。
以上