30
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食の安心・安全の確保に関する基礎知識 鹿児島 大学 名誉 教授 岡本嘉六

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鹿児島県立短期 大学特別 講義 2013 年 10 月 23 日(水). 食の安心・安全の確保に関する基礎知識 鹿児島 大学 名誉 教授 岡本嘉六. 学習 目標  食べることは、生きることの基礎であり、誕生以来、食べることを通して様々なことを学習し、躾(しつけ)られてきた。立場を変えてこれから親となり、子供にどう教えるか?. 1 . 日本における食中毒事故の概要 2 . 用量・反応関係: 食べる量と安全性 3 . 化学物質の安全性: 農薬、食品添加物 4 . 自然毒: フグやキノコの外に、ナチュラル志向 5 . 細菌性食中毒: 大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター - PowerPoint PPT Presentation

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食の安心・安全の確保に関する基礎知識鹿児島大学名誉教授 岡本嘉六

鹿児島県立短期大学特別講義2013年 10月 23日(水)

学習目標 食べることは、生きることの基礎であり、誕生以来、食べることを通して様々なことを学習し、躾(しつけ)られてきた。立場を変えてこれから親となり、子供にどう教えるか?1.日本における食中毒事故の概要2.用量・反応関係: 食べる量と安全性3.化学物質の安全性: 農薬、食品添加物4.自然毒: フグやキノコの外に、ナチュラル志向5.細菌性食中毒: 大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター6.農場から食卓までの安全性確保

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1.日本における食中毒事故の概要

患者数の推移

2004~ 2012年の平均で、年間 1,314件、 27,393名の食中毒事故があった。 9年間の死亡者は 51名だったが、その内自然毒が 27名を占め、細菌( 24名)を上回った。件数、患者数とも比較的少数であるが、自然毒の致命率は高い。他方、消費者の関心

が高い農薬や添加物など化学物質による事故件数は少なく、死亡者も発生していない。ノロウイルスは患者

数は多いが死亡はない。

731件343件

14件117件

細菌ウイルス化学物質自然毒

10,561名14,708名

251名343名

24名0名0名

27名

通算死亡数

年平均件数

年平均患者数

2004~2012年

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事故と事件「化学物質が怖い」と言うおばあちゃん、それを聞いて育っ

たお母さん、そのお母さんに育てられたあなたは・・・和歌山毒物カレー事件

1998年 7月 25日夕方、和歌山市で行われた夏祭において、提供されたカレーに毒物が混入された事件。 67人が腹痛や吐き気などを訴えて病院に搬送され、 4人( 64歳男性、 54歳男性、16歳女性、 10歳男児)が死亡した。当初保健所は食中毒事故によるものとして調査したが、警察庁の科学警察研究所が亜ヒ酸の混入と解明した。食中毒事故: 調理手順等を誤って有害な料理ができた(過

失)。毒物混入事件: 危害を加える目的を持って作った料理(故

意)。

「怖い化学物質がある」のは事実であり、そのため「劇毒物取締法」や「農薬取締法」等によって有資格者以外の取扱いを禁止している。そうした「怖い化学物質」が調理場に紛れ込むことは、犯罪以外にあり得ない。台所包丁を用いたバラバラ殺人事件が発生しているが、身の回りには犯罪に利用できるものが無数にある。犯罪を生まない社会を作ることは重要であるが、犯罪と食の安全は別問題だ。

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農薬散布時事故ニカメイチュウ防除のためにパラチオンが販売許可された 1954年(昭和

29年)には、散布時に 1957名が中毒し、 307名が死亡した。翌年「特定毒物指定制度」が導入されたが、散布時事故は収まらず毎年数十名の死亡が続いた。パラチオンが農薬登録取消しになったのは、米の自給が達成された後の 1969年であり、それまで農業者は犠牲を強いられたのである。

パラチオンを含めて有機リン系殺虫剤は植物体内や環境中での分解速度が速く、残留問題は発生しにくい。事実、パラチオンの農産物残留による健康被害は記録されていない。

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ヒ素ミルク事件:食品添加物問題1955年(昭和 30年) 6月頃から主に西日本を中心として乳

幼児の奇病が発生した。 8月になって、患児が特定のドライミルクを飲用していることが判明した。製造工程でのヒ素汚染が確認され、 12,344名が神経障害、臓器障害などの中毒症状を呈し、内 131名が死亡した。日本軽金属がボーキサイトからアルミを精製する際に出た産業廃棄物を新日本金属に顔料原料として売却

松野製薬会社がそれを買取り、別の化学会社に精製させた第二リン酸ソーダを森永乳業徳島工場に納品

その当時は、農場にバルクーラー、輸送にタンクローリーという冷蔵システムがなく、集乳缶をトラックに積んで乳工場まで常温輸送していた。そのため、細菌が増殖して pHが下がり、粉ミルク製造の加熱工程で固まることがあり、それを防ぐのに中和剤として第二リン酸ソーダを使用していた。現在とは事情が全く違う。この事故までは、最終製品に確認できるものだけが食品添加

物に指定されていたが、最終製品に残らない物質も指定するように食品衛生法が改正された。年配の方が食品添加物を怖がるのは、この事件と発癌性の懸念だが、そのような科学的事実は、もはやない。

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閾値(いきち)とは、生体に何らかの悪

影響を及ぼす最小濃度であり、動物実験や疫

学的研究によって求められた科学的数値であ

る。

DNAに障害を与えると、 DNA ➔RNA ➔ 蛋白の増幅回路が働き、代謝異常がおきて癌などの障害が発生する。閾値 がない物質の低濃度領域 は、実験できない。食品に限らず、 100%安全なことは世の中にはなく、リスクを下げることしかできない。

2.用量・反応関係: 食べる量と安全性

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  食中毒 糖尿病 心疾患  患者数 罹患率 死亡数 死亡率 死亡率 死亡率

1960 37,253 39.5 218 0.231 3.4 73.21970 32,516 31.1 63 0.060 7.4 86.71980 32,727 28.0 23 0.020 7.3 106.21990 37,516 30.4 5 0.004 7.7 128.12000 43,307 34.1 4 0.003 9.8 116.82010 25,972 20.3 0 0 11.4 149.8

罹患率、死亡率とも人口 10 万当り日本における食中毒、糖尿病、心疾患による死亡の推

食の安全性とは、食品自体の安全性とともに、「安全な食品であっても<危険な食べ方>をすると健康を害して病気になる」事態を防ぐことも重要である。

2005年に制定された食育基本法で、食育を「健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるもの」とし、「食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる」とされている。

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生態への影響

用量無作用量

種差1/10

個体差1/10

致死量

中毒量

医薬品の用量

ADI

閾値 がある化学物質の用量・反応関係

一日摂取許容量( ADI)とは、一生涯毎日食べ続けても健康への悪影響 が出ない量

動物に所定濃度 の餌を食べ続けさせ、急性毒性、慢性毒性、発癌性、催奇形性、繁殖障害、薬理試験(中枢神経、自律神経、呼吸・循環器、消化器、血液、骨格筋)などを総合して求めた無作用量の 1/100の用量であり、国際機関によって承認されている。

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閾値 がない化学物質の安全性日常的に発癌物質を食べており、それは避けられない。「ゼ

ロリスクはありえない」ことを前提として、リスクを下げる努力をする。

ニトロソアミン

ベンゾピレン

加熱分解物質

世界最初に日本人が発見した化学発癌物質で、有機物質の不完全燃焼の過程で生成される様々な多環芳香族炭化水素 焼け焦げを食べ➔ない野菜の硝酸が体内で代謝された亜硝酸が魚肉の二級アミンと胃内反応して生成する 日本➔食で胃癌が多い理由の一つアミノ酸の一種であるトリプトファンの加熱分解物 Trip-P1 などは、ベンゾピレンより数千倍の突然変異原性を持っている 生野菜が➔突然変異原性を軽減してくれる

動物を用いた発癌試験では多くの検体をこなせないので、培養細胞系による突然変異原性試験が行われ、陽性物質は食用から除外されている。これまでに全ての農薬や添加物などが国際的に検査され、陽性となったものは製造・販売禁止になってきた。

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3.化学物質の安全性: 農薬、食品添加物

トマト: 0.2 枝豆: 0.5

小麦:10ppm(mg/kg)

大豆: 0.2

さやいんげん:0.5

米: 0.2

一日摂取許容量( ADI ) 許容残留量(MRL)

当該の有害物質が含まれ得る全ての食品について、摂取量を加味しながら、それぞれの食品について許容残留量(MRL)が設定される。

動物の生涯に亘る投与試験から求められた一日摂取許容量( ADI)は、ヒトが生涯に亘って摂取しても健康に影響 しない量である。

ADIを達成するため、全ての食品に許容残留量(MRL)を設定する。市販食品の喫食による

量は、 ADIを大きく下回っている。

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トマト 枝豆

こむぎ

大豆

さやいんげん

実際の残留量

枝豆

コムギ

大豆

さやいんげん

トマト

一過性の超過は健康に影響せず

農水省がそれぞれの食品の実際の残留分析値を測定して公表している。分析値はMRLを大幅に下回っており、 MRLを超える事例はきわめてまれ(年に数検体)である。

仮に、トマトの残留値がMRLを超えても、総体としては ADIの範囲内にある。しかも、一過性のことであり、一生涯を通しての摂取を想定した ADIであるから、短期間の暴露は健康に全く影響しない。

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中国産餃子事件:メタミドホス2007年 12月下旬から 2008年 1月にかけて中国製冷凍餃子を

食べた千葉県千葉市、市川市、兵庫県高砂市の 3家族計 10人が下痢や嘔吐などの中毒症状を訴え、このうち、市川市の女児が一時意識不明の重体になった。このような急性毒性を示す濃度 は、通常の「残留」では起こ

りえず、製品段階で誰かが意図的に毒物混入したことが明らかだった。県警が餃子を鑑定したところ、メタミドホスなど有機リン系

殺虫剤が検出され、餃子の皮では 3580ppm、具では 3160ppmと数個食べただけで死に至る可能性がある量であった。メタミドホスは日本では農薬として登録されたことがなく、中国では2007年 1月から販売と使用が全面禁止されていた。混入地点を巡って日中の公安当局の応酬が続いたが、 2009年3月になって毒物を混入させた容疑で天洋食品の元従業員が拘束された。このような有害物質の意図的混入は、解雇などのトラブル、増量による営利目的(粉ミルクへのメラミン添加)、未承認医薬品を用いたダイエット食品など中国の食品製造業界のモラルが指摘されている。

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4.自然毒: フグやキノコの外に、ナチュラル志向自然毒食中毒患者数(数字は死亡数)

2

11

33

4

3

1

4

22

1

自然毒による患者数は漸減傾向にあるが、死亡者が無くなっていない。植物性が動物性より多く、 2012年でそれぞれ、 219名( 70件)と 49名( 27件)であった。発生場所は、飲食店 2件、事業場 5件、学校 1件、販売店 2件、その他 4件で、残りの 83

件は家庭であった。アオブダイ 1名、トリカブト 2名の死亡例は、いずれも家庭であった。キノコは 26件、フグは 14件あったが死亡はなかった。学校ではジャガイモを食べた 26名中半数が発症した。食べると嘔吐・呼吸困難

などから、摂取後数十分で死亡する。即効性で、解毒剤はない。 1986年には「トリカブト保険金殺人事件」が起きている。

グロリオサ: 和名で、キツネユリとも言い、観賞用栽培が広がっている。球根はヤマノイモやナガイモに似ている。

緑変部にソラニン

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ボツリヌス毒破傷風毒ジフテリア毒パリトキシンテトロドトキシンサキシトキシン

  0.00003  0.0001  0.3  0.6  8.710

10,000

土壌細菌土壌細菌病原細菌

イソギンチャク類フグ、ヒョウモンダコ

二枚貝

50%致死量μg/kg mouse

青酸カリ

産生・保有

自然毒の脅威との戦いが人類史の一側面

青酸配糖体:アミグダリン(ウメ、アンズ、モモ)、ドーリン(イネ科)青酸配糖体を含む生薬: キョウニン(杏仁)、トウニン、ショウキョウ

1億倍: 有機信者の泥付野菜は怖い!

ファゼオルナチン(アオイマメ)、リナマリン(キャサバ)

1000倍

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5.細菌性食中毒: 大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター160

140

120

100

80

60

40

20

0

発生件数

細菌は、汚染食品中で増殖して、喫食者に食中毒を引き起こす。増殖に好都合な夏場に多発する。ウイルスは生きてい

る細胞の酵素系と有機物を利用して増殖し、外界では死滅する一方である。したがって、死滅が遅い気温が低い冬場に多発する。

フグ料理は冬場が盛んであるが、自分で釣りをするので年中発生している。スーパーには年中キノコが出ているが、キノコ狩りは秋が本場である。

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サルモネラ

カンピロバクター

腸炎ビブリオ

黄色ブドウ球菌腸管出血性大腸菌

主な食中毒菌による患者数の推移

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腸炎ビブリオ1950 年大阪で発生

した「シラス中毒事故(患者 272 名中 20名が死亡)」を契機に日本で発見された菌。

沿岸部海水中に生息し、水温が 20℃ を超えると増殖して魚介類に付着する。すなわち、夏場の近海魚はほぼ全て菌で汚染されている。菌液の服用試験で、

10 ~ 100 万個服用しないと発症しなかったが、 1000 万個以上服用した運動部学生は危篤状態になった。➔ 菌を増殖させない(冷蔵、刺身は早く食べる) 、魚を料理した包丁やまな板は熱湯消毒(海水と等しい塩分濃度の浅漬けで菌が増殖して中毒事故が起きている)。

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食品中で菌が産生した毒素(エンテロトキシン)によって、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、頭痛などを起こす。毒素は100℃ 、 30 分の加熱でも失活しない。毒素の作用なので、喫食から発症までの潜伏期間が短い。黄色ブドウ球菌はヒトや動物に常在している。切り傷が化膿するのはこの菌によるものであり、牛の乳房炎の原因菌である。

黄色ブドウ球菌

傷のある手でオニギリを作った   ➔ 3 ~ 4 時間すると毒オニギリ

雪印乳業事故

牛の乳房炎

家畜の化膿巣

調理人の手指傷

肉・卵

洗浄不足交差汚染加熱不足

菌の増殖と毒素産生保存温度と時間

2000 年 6 月末、雪印乳業大阪工場で製造された牛乳を飲んだ学童を中心に 14,780 人の被害者が発生した。原料の脱脂粉乳を生産した北海道工場で停電事故中に菌が増殖し、廃棄処分しなかった。

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サルモネラ 家畜や伴侶動物が保菌している。 2000種類以上の血清型があり、各動物種に対する病原性を異にする。犬や猫の糞便(砂場の幼児)、不顕性感染している家畜から生産された畜産物の喫食によりヒトは感染する。

採卵用種鶏 卵 雛・育成 卵

ブロイラー 肉

非可食部分を餌に加工羽や骨は餌に加工され、感染鶏から汚染が広がる

S. Infantis

S. Enteritidis

調理時に肉の中心部まで十分加熱すれば、菌は死滅する。卵を生または半熟で食べる場合は、菌が増殖していない新鮮な卵を使用する。産卵する前に卵に入る菌はごく少数であり、卵白には菌の発育を抑える成分が含まれている。しかし、卵黄膜がもろくなり、卵黄が卵白に漏れ出すと、その抑制力が無くなり菌が増殖する。卵黄

濃厚卵白水様卵白

保存温度と時間によって卵黄膜が脆弱化する

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カンピロバクター 様々な動物の腸管内に生息し、環境や食肉を汚染する。とくに鶏は無症状で保菌率が高い。

環境汚染により、飲用水や野菜が汚染されることもある。 1982 年に新規開店したスーパーが掘った井戸が汚染され、 8000 名近くの客が感染した。少数の菌で感染し、潜伏期が長かった。低温では長期間生存するので、冷蔵庫を過信してはならない。

他方、乾燥と熱に弱く、調理時の加熱が有効である。「トリ刺し」は、表面を焼くかまたは「湯通し」した「タタキ」である。名称から「生食」と思って食べている鹿児島県外で食中毒が多発している。

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死亡は、ハイリスク者(年少者、高齢者、妊婦、免疫低下者、糖尿病などの基礎疾患のある者)で起きている。

年齢 患者数 % 死者数

% 致命率

0~ 4 583 2.5  1 4.5  17.2 

5~ 9 7426 32.3  4 18.2  5.4 

10~14

4678 20.3  2 9.1  4.3 

15~19

1442 6.3  0 0.0  0.0 

20~29

2147 9.3  0 0.0  0.0 

30~39

1540 6.7  0 0.0  0.0 

40~49

1807 7.9  0 0.0  0.0 

50~59

1796 7.8  2 9.1  11.1 

60~69

728 3.2  0 0.0  0.0 

>70 431 1.9  13 59.1  301.6 

不詳 429 1.9  0 0.0  0.0 

1996~ 2010年における年齢別発生状況

  事件 患者 死者1996 179 14488 81997 176 5407 01998 16 182 31999 8 46 02000 16 113 12001 24 378 02002 13 273 92003 12 184 12004 18 70 02005 24 105 02006 24 179 02007 25 928 02008 17 115 02009 26 181 02010 27 358 02011 21 614 72012 11 275 8

計 637 23896 37

年平均 37.5  1405.6  2.2 

致命率 0.15 

腸管出血性大腸菌

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腸管出血性大腸菌の感染様式非加熱の食肉

レバー刺し 細切れ生牛肉

子供には食べさせない!

発酵不十分な堆肥

この感染経路を断つのは難しい!

調理時の交差汚染

大人は腹痛・下痢程度で終わるが・・・

用便後の便器、ドアノブには、下痢便中の大腸菌が付着する。その後に利用する子供は・・・

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1) 清潔の維持*食品を取扱う前だけでなく、調理中も頻繁に石鹸で手を洗う*トイレ後は石鹸で手を洗う* 全ての表面と食品の調理に使用した器具を洗って消毒する* 害虫、害獣およびその他の動物から台所と食品を保護する

3) 完全に加熱する* 食品、とくに赤身肉、家禽肉および魚介類は十分に加熱する* スープやシチューなどの食品は、具の中まで確実に 70℃に達するよう沸騰させる。食肉は、肉汁がピンク色でなく確実に透明になるにする。理想的には、調理用温度計を使用する* 調理済み食品は完全に再加熱する* フライ、網焼き、オーブン焼きする際に、有害物質が生じるのを避けるため、過度に加熱しない

2) 生の食材と調理済み食品を分ける* 生の赤身肉、家禽肉および魚介類をその他の食品と分ける*生の食材を調理するための包丁やまな板などの機器と器具は区別して使う* 生の食材と調理済み食品が接触しないように、別々の容器で保存する

4) 安全な温度に保つ* 調理した食品を 2  時間以上室温に放置しない。* 調理済み食品と傷みやすい食品は全て速やかに冷蔵する( 5°C 以下が好ましい)。* 調理した食品は食べるまで熱い状態( 60°C 以上)を保つ。* 冷蔵庫内でも食品を余りに長期間は保存しない。* 冷凍食品を室温で解凍しない。

5) 安全な水と原材料を使用する* 安全な水を使用するか、または安全にするための処理をする。* 新鮮で健全な食品を選ぶ。*殺菌乳のような安全処理された食品を選ぶ。* 果物や野菜は、生で食べる場合はとくに、良く洗う。* 消費期限を過ぎた食品を使用しない。

食品をより安全にする 5 つの鍵(WHO)

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5.塩分 と糖分 は控えめに* 少なめの塩分 と糖分で調理 する* 高塩分 の食品 を避ける* 砂糖 が加えられてい る清涼飲料 水や果実飲料 の摂取 を制限 する* 甘い果物 や菓子 (たとえ ば、 クッキ ー、ケーキ )の代わりに生の果物 をおやつに選ぶ

健康な食習慣の 5つの鍵(WHO)1.生後 6ヵ月間は赤ちゃんにあな

たの母乳だけを与える。 * 生後 6ヵ月 まで、 赤ちゃん は昼と夜に は昼と夜に 母乳だけを与える べき *赤ちゃん がお腹をすかした時は、母乳与える。

2.多様な食品を食べる * 主食、マメ類野菜果物および動性品など様々を組合わせてべる。

3.野菜と果物を十分に食べる。 * 様々 な野菜 と果物 を食べる( 1日 400 g以上 )* 糖分や脂肪 が多いおやつの代わりに、生の野菜 と果物 をおやつ に食べる。* 野菜 と果物 を調理 する際、 重要 なビタミン を壊すよう な加熱 し すぎを避ける* 缶入 りまたは乾燥 した野菜 と果物 を使って も良いが、塩や砂糖 を加えずに種々 の物を選ぶ

4.脂肪 と油は適量 にする。* 動物性 脂肪 や飽和脂肪 が多い油(たとえ ば、 コナツ 油、ヤシ油 )よりも、 不飽和脂肪が多い植物 油( たとえ ば、 オリーブ 油、大豆 油、ヒマワリ 油、 トウモロコシ 油)を選ぶ* 赤身肉 よりも脂肪 が一般的 に少ない 白身肉( たとえ ば、 家禽 )や魚を選ぶ* 脂肪 と塩分 が多い加工肉 やランチョミート の摂取 を制限 する* 可能 ならば、 低または減脂肪 の乳や乳製品 を利用 する*工業製 トランス脂肪酸 を含む加工 食品、 食品、 焼き物お よび揚げ物 を避ける

命(食べ物)を安全にいただくことが、生活の基本!

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6.農場から食卓までの安全性確保

食肉検査 解体 輸送 市場 問屋 小売店 調理 保存素畜 動物薬畜舎環境

リスク・レベルのモデル

病気動物薬残留食中毒菌薬剤耐性菌

と畜検査員による法律

に基づく検査

輸送距離が延びるにつ

れ、

細菌増殖に必要な時間も長く

なる。

温度管理等の法的基準もない。

調理時の加熱は細菌を殺滅する。

しかし、

食材や料理を室温で

の放置すれば、

菌は増殖す

る。

リスクが減るのは 2箇所だけ

農場 流通過程 消費過程食肉センター

食肉検査 カッ

出荷 喫食調理飼料・飲水

食肉の安全性に関わる社会システム(1)

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リスク・レベルのモデル

GAP

HACCP

? ?

農場における適正な衛生管理

解体処理工程など食肉センターの衛生管理

流通過程が変わらなければ

消費者は

リスクは残 る!

輸送 市場 問屋 小売店 調理素畜 飼料・飲水

動物薬

農場 流通過程 消費過程食肉センター

解体 保存カッ

出荷 喫食

病原体低減/ HACCP

食肉検査

食肉の安全性に関わる社会システム( 2)

畜舎環境

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リスク・レベルのモデル

GAP

HACCP

? ?流通過程の衛生基準

消費者教育

素畜 飼料・飲水

動物薬畜舎環境

農場 流通過程 消費過程食肉センター

輸送 市場 問屋 小売店 調理食肉検査 解体 保存カッ

出荷 喫食

食品 輸 送衛 生 法 (米国、 1990 )適正取扱い規範

台所の HACCP

食肉の安全性に関わる社会システム( 3)

「農場から食卓まで」の、全ての段階で安全性確保対策

を実施することによって、初めてリスクが小 さくなる。

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農業生産工程管理( GAP: Good Agricultural Practice )農業生産活動を行う上で 必 要 な関係法令 等の内容に則して定められる点

検項目 に沿って、農業生産活動の各工程の正確な実施、記録、点検及び評価を行うことによる持続的 な改善活動のこと。

GAPの共通基盤に関するガイドライン(農林水産省)ガイドラインにおける取組事項(野菜)

1 食品安全を主な目的 とする取組ほ場環境の確認と衛生管理、農薬 の使用、水の使用、肥料 ・培養液の使用、作業者等の衛生管理、機械・施設・容器 等の衛生管理、収穫以降の農産物の管理2 環境保全を主な目的 とする取組農薬 による環境負荷 の低減対策、肥料による環境負荷 の低減対策、土壌の管理、廃棄物の適正な処理・利 用、エネルギーの節減対策、特定外来生物の適正利用、生物多様性に配慮した鳥獣被害対策3 労働安全を主な目的 とする取組危険作業等の把握、農作業従事者の制限、服装及び保護具 の着用等、作業環境への対応、機械等の導入・点検・整備・管 理、機械等の利用、農薬・燃料等の管理、事故後の備え4 農業生産工程管理の全般に係る取組技術 ・ ノウハウ(知 的 財産)の保護・ 活用、情報の記録・保管 、生産工程管理の実施、記録の保存期間

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HACCP と衛生水準

標準作業手順SOP

一般的衛 生管理PP

衛生標準作業手順SSOP

危害解析 必 須管理点記録

検 証再吟味

衛生標準作業手順SSOP

危害解析 必 須管理点記録

検 証再吟味

衛生標準作業手順SSOP

永続的改善 システム

 HACCP は定まった衛生水 準 を規定するものではなく、衛生水 準を向上させる永続的 システムであり、そのシステムの可否を認証するものである。加工手順 食品衛生 法

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相互理解と協力に基づく信頼性構築が基礎となる

食品の安全性: 科学に基づく合理的判断安心: 食料生産提供網に対する信頼感

1. FAO 、 WHO 、 Codex委 員会 、 OIE などの国際機関が、世界的 科学者を集めた委員会 で農場から食卓までの安全性確保に関する基準 を策定している。これらの国際基準 を満たさない食料は、 輸入検疫 によって排除されている。

2. ISO 、 Global GAP 、 SQF などの民間機関による第三者認証システムが国際展開しており、多くの食品産業がそれらの認証を取得している。貿易に参入する食品産業は、取引相手から認証取得の証明書の提示を求められる。

3.国内農産物については、農水省および県 の主導による GAP認証が推進されている。

4. 上記の基準 や認証の基礎となっている HACCP や GAP は、農場から食卓までの食品の安全性を確保するための最新の科学的方法 である。

なぜ安心できるのか?