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成人施設への移行を迎える発達障害児の支援について ~困難事例を通して~ . ももぞの学園の概要 知的障害児施設 入所定員数 50 名(男性 35 女性 6 41 H22.6 末現在) 2.プロフィール □女性利用者 OH さん(18 歳、H3 生まれ) 障害特性:軽度知的障害 IQ:60H21.3 田中ビネー式) 広汎性発達障害 PDD 母子家庭であり同様の障害を有していると思われる母親に適切な養育が成されないまま 思春期を迎える。本人との関係が破綻しかけた中で H16 精神科を受診。H17 児童相談所の 一時保護課に籍を置きながら実質は病院への長期入院を行った。(1年 4 ヶ月間) その後、 ももぞの学園の日中活動の体験利用・短期入所の利用を経て入所。 他府県よりの入所であり成人施設移行の困難さが生じている。 本人の特性として ①広汎性発達障害としての特性:予測がつかない(見通しが立たないと不安定になる)冗 談が通じない、騒がしい環境が苦手。 ②家庭養育の中で獲得したと考えられる特性:(母親以外の)大人の指示に従えない。自分 の要求を通そうとしての行動、駆け引き最終的には嫌がらせのような行動を取る。 ③母親との共依存 3.支援の内容 対象児への支援法として、 1 人で抱え込まない体制作り(ケース担当と生活支援のスタッ フを分ける、各関係機関と常に情報交換をし連携を図る)を行った。また、入院中よりル ール作りを行っていた。際限のないちょっかい出しや大声を出す事で反応を得ようとし続 ける事や、要求事がある時には同様の事が「逸脱行動」という形で要求が通るまで激しい 状態で続けられていた事から、保護室という空間で本人の嫌がらせによる駆け引きに応じ ない事をし続ける、支援者からの約束事を受け入れてもらう事を行っていた。 病院との連携 本人の生活の場は「ももぞの学園」であるという統一した対応の確認の場。ももぞので のルールが守れない際に入院(タイムアウト)し、ルールの確認を行う。 ・週1回の定期通院、不安定時の応対(電話・緊急通院・入院等) ・Drを招いての会議(退院後の支援について、本人の特性の周知等)

入所定員数 6 41 H22成人施設への移行を迎える発達障害児の支援について ~困難事例を通して~ 1. ももぞの学園の概要 知的障害児施設

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成人施設への移行を迎える発達障害児の支援について

~困難事例を通して~

1. ももぞの学園の概要

知的障害児施設 入所定員数 50名(男性 35名 女性 6名 計 41名 H22.6末現在)

2.プロフィール

□女性利用者 O・H さん(18 歳、H3 生まれ)

障害特性:軽度知的障害 IQ:60(H21.3 月 田中ビネー式)

広汎性発達障害 PDD

母子家庭であり同様の障害を有していると思われる母親に適切な養育が成されないまま

思春期を迎える。本人との関係が破綻しかけた中で H16 精神科を受診。H17 児童相談所の

一時保護課に籍を置きながら実質は病院への長期入院を行った。(1年 4 ヶ月間) その後、

ももぞの学園の日中活動の体験利用・短期入所の利用を経て入所。

他府県よりの入所であり成人施設移行の困難さが生じている。

本人の特性として

①広汎性発達障害としての特性:予測がつかない(見通しが立たないと不安定になる)冗

談が通じない、騒がしい環境が苦手。

②家庭養育の中で獲得したと考えられる特性:(母親以外の)大人の指示に従えない。自分

の要求を通そうとしての行動、駆け引き最終的には嫌がらせのような行動を取る。

③母親との共依存

3.支援の内容

対象児への支援法として、1 人で抱え込まない体制作り(ケース担当と生活支援のスタッ

フを分ける、各関係機関と常に情報交換をし連携を図る)を行った。また、入院中よりル

ール作りを行っていた。際限のないちょっかい出しや大声を出す事で反応を得ようとし続

ける事や、要求事がある時には同様の事が「逸脱行動」という形で要求が通るまで激しい

状態で続けられていた事から、保護室という空間で本人の嫌がらせによる駆け引きに応じ

ない事をし続ける、支援者からの約束事を受け入れてもらう事を行っていた。

病院との連携

本人の生活の場は「ももぞの学園」であるという統一した対応の確認の場。ももぞので

のルールが守れない際に入院(タイムアウト)し、ルールの確認を行う。

・週1回の定期通院、不安定時の応対(電話・緊急通院・入院等)

・Drを招いての会議(退院後の支援について、本人の特性の周知等)

Page 2: 入所定員数 6 41 H22成人施設への移行を迎える発達障害児の支援について ~困難事例を通して~ 1. ももぞの学園の概要 知的障害児施設

関係機関との連携

・病院

・児童相談所

・障害福祉課

・地域生活支援センター

・知的障害者更生相談所

これらの機関と調整会議を実施している。

また、スーパーバイザー(大学教授)によるアドバイスも受けている。

日中活動の保障

・義務教育(中学部)は約半数は欠席しており、高等部への進学は難しいと判断。卒業後

は園内の活動へ参加。

・生活介護施設で実習 H19.10~

・職業生活センターにて検査 H20.11

3 ヶ月のワークトレーニングを目指すも今の本人では難しいと言われる。

・就労継続支援(A 型)へ実習 H21.11 1ヶ月期間限定

1 ヶ月行い、休まずに参加するがストレスが大きかった為か、粗暴・物損等見られ長期

入院に繋がる。

母子関係の調整

母親は医療・障害の特徴・そして薬についての知識が多く、支援・医療内容への過度な

介入がある。母親自身も本人と同様な障害を有していると考えられ、支援方針についての

考えも持っているが、本人の支援に結びつかないことが多い。本人を混乱させ母親自身も

パニックになる。その為、

・Drと母親の面談(週 1 回)

・本人との電話連絡(週 1 回)を行っていた。

・外出、面会については、Dr を通し調整し実施。

日常生活支援

・生活のルール、本人のルールを守りながら、日課に沿った生活が送れるように支援。

・日中活動の場の保障を行う。

・毎食後の服薬支援と、頓服薬についても管理する。

・要求を叶える場の提供(行事・買い物・外出等)

・生活の中で支援の難しさを感じ、入院・通院の判断となった逸脱行為が

大量服薬 昼夜逆転 粗暴 暴言 物損 離園 飛び出し 放火

性的行動 要求を通す為のかけ引き(嫌がらせ)

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4.今後に向けて

H21.11 の実習を終える頃、粗暴・物損行為があったのを機に 5 ヶ月の長期入院となった。

その際、本人への支援の体制・方向性を職員間・また各関係機関とも調整を行った。

(1)成人施設への移行

現在、県内の知的障害者支援施設に待機登録を行っている。入所は定員の空き待ちの為、

入所時期の目途は立っておらず。しかし、その施設と移行までの間に本人にできることを

話し合い支援に役立てている。

(2)日中活動の場の保障

H19.10に利用していた生活介護施設を、ももぞので生活している間は利用する事とした。

(3)母子関係の調整

本人の入院を機に、これまで母親が支援に介入していた面についての介入を断り、主導

権を病院・施設(ももぞの)に移す。本人との接触についても制限を行った。また、その

調整についても各関係機関(病院・児相)が連携して行った。

(4)本人への支援について

病院と連携し本人の生活のルール・本人のルールを見直す。入院の間に本人にルールを

納得して貰う。

施設側の支援として、本人への支援を徹底させるために統一を行う。本人のスケジュー

ルを本人にも職員にもより見やすくし、働きかける内容や時間を統一した。また、余計な

情報を与えないためにも言葉かけの内容についても統一した。

5. 支援の実際・・・事例を通して

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成人施設への移行を迎える発達障害児の支援について~困難事例を通して~

知的障害児施設ももぞの学園

中山知子・山室真実

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はじめに・・・

児童期に精神病院に入院していた発達障害児の生活支援を、複数の事業所・病院・機関が連携をとりつつ行ってきた。

彼女との関わりの中で学んだこと、児童期から成人期に移行する発達障害児への支援について発表する。

Page 6: 入所定員数 6 41 H22成人施設への移行を迎える発達障害児の支援について ~困難事例を通して~ 1. ももぞの学園の概要 知的障害児施設

○発表の構成

①ももぞの学園の概要

②プロフィール

③入院前の支援

④長期入院

⑤入院後の支援

⑥考察

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1.ももぞの学園の概要

定員50名 (男性37名 女性6名 計43名 H22.9月現在)

職員24名

敷地面積7,348.62㎡

入所対象者4才~18才

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平成22年9月1日現在1.ももぞの学園利用児童学年別人数

 中学部 就学前  就学後

 ひよこ 小1 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3 高1 高2 高3 山の子

 合 計

2ももぞの学園.利用児童学部毎の人数

ひよこ小学部中学部高等部山の子13 9 17 3

男性 女性

小学部

13 9

高等部

17

3 3

36 6

5 2

42

8 75 2 12 3 1

0

1

2

3

4

5

6

7

8

学年別人数表

人数

人数 2 3 1 5 2 1 3 5 2 8 7 3

 ひ

小1

小3

小4

小5

小6

中1

中2

中3

高1

高2

高3

山の

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

学部毎の人数

人数

人数 13 9 17 3

ひよこ 小学部 中学部 高等部 山の子

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ももぞの学園利用児童学年別人数

0

1

2

3

4

5

6

7

8

学年別人数表

人数

人数 2 3 1 5 2 1 3 5 2 8 7 3

 ひよこ

小1 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3 高1 高2 高3山の

小学部 中学部 高等部 合 計就学前

13 9 17就学後

42ひよこ 小1 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3 高1 高2 高3 山の子

2 3 1 5 2 1 3 5 2 8 7 3

男性 女性

36 6

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2.プロフィール 女性利用者 Hさん(18歳 H3年生まれ)

障害特性:

軽度知的障害 IQ60(H21.3月 田中ビネー式)

広汎性発達障害 PDD

現在の趣味等

好きなこと:音楽を聴く事・音楽の振付を覚えて踊ること

英語・漢字の学習

関心の強い事:ファッション(服・髪型・アクセサリー)・恋愛

好きな外出先:買い物・カラオケ・ゲームセンター・ボウリング

得意なこと:覚えること・辞書で調べること・歌うこと

苦手なこと:力仕事・グループワーク・自分で考えること・見た目が怖そうな人

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生育歴

乳幼児期:母・母方祖父母と生活。母子通園施設を利用しながら養育。

尐年期小学校低学年でいじめを受ける。中学年より 奇声。相手を挑発する行動高学年より 人の嫌がることを困ることを見て喜ぶ

家庭内暴力が見られ丌登校。母親の丌適切な養育態度(罵声・叱責)が強化中学校 暴力的行為・集中力の無さ・衝動性

H16年(中学1年生)6月より丌登校。家族への暴力の増加

母子生活の破綻

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本人の特性

①広汎性発達障害としての特性

予測がつかない(見通しが立たないと丌安定になる)冗談が通じない、騒がしい環境が苦手。

②家庭養育の中で獲得したと考えられる特性

(母親以外の)大人の指示に従えない。

自分の要求を通そうとしての行動、駆け引き最終的には嫌がらせのような行動を取る。

③母親との共依存

接触を持つと互いに情緒を乱すが接触を断つことができない。

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3.入院前の支援

(1)入所時の支援の体制

(2)支援の内容と経過

①病院との連携

②関係機関との連携

③日中活動の保障

④母子関係の調整

⑤日常生活支援

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(1)入所時の支援体制

①スタッフ個々で抱えこまない形での支援体制

【施設】

ケース担当(男性)

・支援計画を立てる

・本児の金銭管理代行業務

・本児の意見要求の返答

本児の生活する空間の日常支援は行わない。

援助スタッフ(女性)

・本児の生活する空間の支援(日常生活の直接支援)

・本児の意見要求について返答が難しい場合にはケース担当に答えを委ねる。

主幹

・ケース担当へのスーパービジョン

・家族への窓口等でサポート

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【学校】

○中学部教頭・担任教師

・学校での様子についての相談や情報交換を行なう

・学習支援

【児童相談所】

・施設や学校で行われている事への情報交換、相談

【病院】

・本人通院時のカウンセリング

・薬の処方

・施設内での関わりについての相談

・母親へのカウンセリング

・本人からの電話での相談についての対応(昼夜問わず)

・職員から「対応について」の相談

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入所当初は・・・

要求を通す為に問題行動を起こすことがパターン化。

本人 要求 支援者(日常支援) 相談 ケース担当

要求

直接援助に当たる女性スタッフが全てを抱え込むことを防ぐ。

様々な専門職と情報交換・相談。

援助の行き詰まりを防ぐ。

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○タイムアウト(心の切り替え)の支援

精神病院での支援

「保護室」

器物破損・他者への迷惑行為・自傷行為の出来ない空間

保護室の利用で

・嫌がらせによる駆け引きに乗らない

・約束事の確認(本人に提示し受け入れてもらう)

・気持ちの切り替え

約束が守れた時には誉めることで関係性を構築

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精神病院から施設入所までの経緯

①約1年半の入院(保護室から大部屋の移住)

②病院から一時保護課(児童相談所内)での院外生活の日中体験

③病院から一時保護課・ももぞの学園(日中活動)

Page 19: 入所定員数 6 41 H22成人施設への移行を迎える発達障害児の支援について ~困難事例を通して~ 1. ももぞの学園の概要 知的障害児施設

①病院との連携 病院との関わり

H16年8月から。

H17年2月(3回目の受診) 1年4ヶ月の長期入院

…児童相談所からの一時保護委託

本人の診察

・1週間に1回の定期での診察

・本人のカウンセリング

・生活の様子・約束事の振り返りと確認

・服薬調整

母へのカウンセリング

病院と施設の連携

・診察前に・・・

ケース担当から担当医へ「本人の様子」をFAX

・担当医による支援者の学習会・質疑応答の機会の設定

(2)支援の内容と経過

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病院での支援の経過

・情緒丌安定・混乱すると逸脱行為がありすぐに通院・入院を希望

・通院・入院しないと気持ちの切り替えが出来ない。

・施設では情緒が乱れると支援者の指示に応じることができない。

・生活の場所はももぞの学園であるという本人の認識

・施設での気持ちの切り替え

・緊急通院・入院の減尐

・安定時には通院の期間が2週間に1回に。

入所当初 入所後1年

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支援の課題

母子関係の課題診察時の実際

母子の間での口論

母親の(病院・施設の)支援への口出し

母親の本人への丌要な情報の伝達

母子共に互いに振り回され、病院・施設も振り回す

頓服薬支援者の指示で頓服薬に応じない。

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②関係機関との連携

調整会議の実施

・病院

・児童相談所

・障害福祉課

・地域生活支援センター

・知的障害者更生相談所

本人の入所から学期に1回のペースで会議を実施。

→本人の退所後の進路が課題。

県内・県外にも受け入れ先が見当たらず。

専門家によるアドバイス

大学教授による定期的な学習の機会

事例を挙げてのグループワーク 等

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③日中活動の保障

義務教育(中学部)卒業後、園内の日中活動へ参加

法人内の生活介護(通称:デイセンター)で実習H19.10~

職業生活センターにて検査 H20.11

3ヶ月のワークトレーニングを目指すも今の本人では難しいと言われる。

就労継続支援(A型)へ実習 H21.11 週3回(月・火・金)参加。1ヶ月期間限定

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日中活動を通しての成果

・参加が定着すると、生活リズムが整う。

・体を動かす。

・社会性が身につく。

(挨拶・言葉遣い・気配り・手伝い 等)

日中活動での課題

・目先の目標がないと続かない。

・情緒面に波があり継続的に参加できない。

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④母子関係の調整

母親

無職。収入は祖父母の年金のみ。

体調丌良の訴えが多く、医療機関にも多数かかっている。

医療・障害の特性・薬についての知識が豊富。

本人の支援の方針についての考えも持っているが・・・

母親も本人と同様の障害を有していると考えられ、母親の思いが支援に結びつかないことが多い。

病院・施設の支援方針への過度の介入。

本人を混乱させ、母親もパニックになる。

母と本人の関係性

本人にとって母は欲しい物の調達手段。母への挑発・脅し

→幼尐期の母からの暴言・叱責が残っている。

母は本人の要求を受け入れがち。

→本人の暴力・暴言が怖い為。

Page 26: 入所定員数 6 41 H22成人施設への移行を迎える発達障害児の支援について ~困難事例を通して~ 1. ももぞの学園の概要 知的障害児施設

母親への支援として

窓口を決めての対応

・施設ではケース担当が主に連絡を取る。

主幹・副園長がフォロー

関係機関と情報の共有を図り母に伝える情報の統一を行う。

・施設・病院・児童相談所からの情報を正確かつ統一して伝えることで母の混乱を防ぐ。

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⑤日常生活支援での重点援助ポイント

入所当初は…定期の服薬の拒否・過剰摂取昼夜逆転・身体症状の丌調・離園・破損行為嫌がらせ・指示に応じない

集団生活(ももぞの)でのルール→病院にて主治医より本人に確認

生活リズム→日中活動を通して

服薬の定着→本人の状態に合わせて頓服を促す

本人の丌安の除去→対人関係面の調整見通しを立てた支援(要求の保障・・・外出・散髪・買い物)金銭についての枠組み(出納帳をつける)

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日常生活支援の成果と課題

・掃除・洗濯等の日課の定着

・物品の計画的な購入

・際限のない要求の減尐

・余暇の過ごし方

・話し合いの解決方法の獲得

入所3年で直接援助職員(女性)

による担当の受け持ちが可能

・対人関係のトラブル

・母親とのトラブル

・支援者の指示による頓服薬の拒否

・多くの問題行動

他害・ 物損

火遊び(放火)

成果 課題

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4.長期入院

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本人の長期入院 H21.11月(就労継続A型の施設への実習中)

①異性

②対人関係

③母の問題

④インフルエンザ流行による職員丌足・体調丌良等

トラブルの重なり → 些細なきっかけにより粗暴行為 → 緊急入院

施設として

・将来の見通しが立たないままの支援の困難さ

・母親の過度の支援への干渉、阻害行為

干渉による本人の混乱

・緊急通院・入院の見定め

等の課題があり、これらの課題が改善しないままの支援は困難であった。

今回の入院を機に ・職員間での本人の理解・対応の共通認識を高める。

・病院・関係機関と連携し支援体制を整える。

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支援の実際

(1)新たな支援体制

(2)ルールに基づく生活

(3)母親

(4)進路について

(5)オーダーメイドマニュアル

(6)考察

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(1)新たな支援と支援体制

①本人への支援・日課・ルールの確認・支援・言葉掛けの統一・病院との連携・日中活動の保障H19.10月に利用していた生活介護へ実習継続・情緒の安定をはかる。

②母子関係の調整・母子分離を病院が中心に調整機関と連携

③成人施設への移行・成人施設への待機登録・待機登録先の施設との交流

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(2)ルールに基づく生活

①ももぞの学園の生活のルール

②生活場所は一人の建物(家)

守れない場合は、ももぞの学園での生活は困難

これらの事を納得しての退院・ももぞの学園の生活である

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○解離症状

「体が動く」「言わされる」「声が聞こえる」 「零祉様」

解離症状

症状が出るとももぞの学園のルールを守りにくくなる。

ストレスを感じる・要求を通したい、我慢や欲求を

置き換え、解離している様子。

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ももぞの学園生活でのルール

物について

・物のかしかりを行う場合は両方の担当に確認してから行う。

あとからの報告はみとめません。その物品をあずかります。

わりかんはしません

・欲しい物、買ってきて欲しい物があるときはケース担当に確認をしてから。

CDを借りる・やいてもらう時も担当に確認する。

・舎・ももぞのの物をとりこまない。

・おやつは おやつロッカーにてしまう。ミルメークも同じです。

・物を壊した時には、弁償する。

・物を壊さない

生活場所

・チャレ舎での生活です。

ゆり・もA舎は17時までは遊べます。

のぎく・さくら・ももBに用事がある時は玄関で話をして下さい。

17時からはチャレ舎で過ごします。

・職員は18:30 くすりを持って行く。

20:40~55分 話をしにチャレ舎に行きます。

舎のルール

・生活舎のルールを守る

・21時以降に他児の居室へ入らない

・ねる時に大声を出して騒がない

・チャレ舎にインターが付きます。1日3回まで。

インターの近くにカードを置くので使用後は裏返すこと。

お金

・被服費 3か月 3000円

・日用品費 3か月 500円

・訓練費 3か月 4500円

・舎費

みんなで使うもの。シャンプー・洗剤・しょうしゅうざい・カミソリ など

・訓練費から出す物

自分だけで使うもの。リップクリーム・トリートメント など

外出

・散髪外出

3か月に1回。散髪だけで他の場所には行かない

・職員が付き添う外出

月に1回。

・入院していて行けなくなった外出(舎外出・など)

その分は行きません。

人について

・暴力は行わない。言葉の暴力も同様

・ちょっかいを出さない

・勝手に出ていかない。友達も連れて行かない。

・ももぞの学園にいる間は恋愛はできません。職員ともできません。

お母さんについて

・お母さんへの電話は決められた日にかけます

それ以外はしません

職員について

・職員のいうことを聞きます

・薬は職員が出したものを飲むこと。宿直室に入り、勝手に飲まない

・大人なので「Hさん」と呼びます。

職員はほかの人にも「くん」「さん」で呼びます。

体調が悪いとき

・体調の悪い時は部屋で休みます。通院は職員で決めます・

・電話をかってにかけない

デイセンター

・デイセンターに月~金 通います

これらのことが守れない場合にはももぞの学園で生活出来ません。

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《平日》

※10時までに起きて準備をします

○朝ごはん … 職員がチャレ舎に持って行きます

・食器洗い・台拭き・床掃除

・デイセンターに行く準備(歯磨き・洗面・身だしなみを整える)

10時 学園出発 デイセンターに行きます。

~デイセンターで活動~

15時20分 デイセンター終了。学園に戻る

~学園にて自由時間~

17時 ○夕食 食管を栄養に取りに行きます。

・食器洗い・台拭き・床掃除・食管洗い

18時30分 服薬 職員が行く時間

(TTがある時はこの時間に持って行きます)

職員がチャレ舎に薬を届けに行きます。職員が食管を持って帰るので洗っておいて下さい

※夕食・食器洗い・台拭き・床掃除・食管洗いが終わったら

ドリル・日記をしましょう。

20時40分 職員とのお話の時間 職員が行く時間

~55分 ※この時間にドリル・日記のコメントをします。

21時 就寝時間

寝れないときは居室で過ごしましょう

☆トイレ・お風呂掃除は職員が行います

☆ももA舎・ゆり舎で遊べるのは17時までです。

ももB・のぎく・さくらに用事がある時は玄関で話をして下さい

☆17時以降は他の生活舎へ行きません。チャレ舎で過ごします・

☆職員は18時30分・20時40分~55分に行きます。

《休日》

○朝食 職員が朝食を持って行きます

・食器洗い・台拭き・床掃除

~学園にて自由時間~

12時 ○昼食 食管を栄養に取りに行きます。

・食器洗い・台拭き・床掃除

~学園にて自由時間~

15時 ・TT TT用品を職員が出しに行きます

~学園にて自由時間~

17時 ○夕食 食管を栄養に取りに行きます。

・食器洗い・台拭き・床掃除

18時30分 服薬 職員が行く時間

・職員がチャレ舎に届けに行きます。

・職員が食管を持って帰るので洗っておいて下さい

※夕食・食器洗い・台拭き・床掃除が終わったら

ドリル・日記をしましょう。

20時40分 職員とのお話の時間 職員が行く時間

~55分 ※この時間にドリル・日記のコメントをします。

21時 就寝時間

寝れない場合は居室で過ごしましょう

☆トイレ・お風呂掃除は職員が行います

☆ももA舎・ゆり舎で遊べるのは17時までです。

ももB・のぎく・さくらに用事がある時は玄関で話をして下さい

☆7時以降は他の生活舎へ行きません。チャレ舎で過ごします・

☆職員は18時30分・20時40分~55分に行きます。

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日中活動

生活介護事業使用 (通称:デイセンター)

参加をももぞの学園のルールに明記している

体調丌良時の過ごし方

自室にて過ごす事

日常生活

日課・ももぞの学園のルールに沿った生活

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○丌適切行動への対応 *事例を通して

【事例①】

○解離状態でありルールを破る。

【職員の対応】

伝えを行うも、本人の解離の様子に戸惑いが生じる

【主治医からのアドバイス・その後の対応】

解離状態が出ていても本人に振り回されない事

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【事例②】

○無断で園外に出、行方丌明になる。

前日から情緒が悪く、解離症状もある。

本人がこだわりを持っているO職員の早退した情報を聞き、情緒が大きく乱れ園から出て行く。数時間後に地域にてみつかる。

【職員の対応】

逸脱行動であり、園で受け入れは困難とし入院とした

【主治医からのアドバイス・その後の対応】

恋愛については考えないこと。

解離症状時は頓服を飲む

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【事例③】

○迷惑行動による支援の統一性の揺らぎ

数日情緒の悪い日が続いておりルールを壊そうとする姿や職員へ対して威圧的態度・迷惑行為、粗暴行為まで時間の問題と判断し入院

【職員の対応】

長期入院前の駆け引き行動が出ており、支援者の支援を崩そうとしていると判断し病院にて切り替えを実施

【主治医からの指示・その後の対応】

ももぞの学園のルールの再確認の実施

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○行動の把握・情報制限

引継ぎを細かく行う

駆け引き行動の防止

課題の事前予測・早期対応

他部署・実習生・ボランティアへの説明

法人全体としての取組み

言葉の統一性・フローチャート

言葉での混乱を避ける

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○言葉のフローチャート《デイセンター》

《解離症状》

《丌眠時》

デイセンターに行きましょう

「しんどい」 部屋で休みましょう

「行きたくない」

ももぞの学園のルールです

「あやつられる」「言わされる」

あなたが考えている事です

23時以降に起きている

丌眠時の頓服を飲みましょう

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○病院との連携

精神科への定期通院を継続(週1回)

一週間の生活の振り返り・ルールの再確認

主治医との連携

通院の打ち合わせ、通院職員への引継ぎ

病院へ電話の要求

基本は定期通院時に話を行う。

必要性に応じ実施

頓服の服薬

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頓服の名前 商品名 効能効果

丌安時 ジプレキサザイディス錠5mg

丌安時服薬興奮を鎮め、感じすぎたり、考えすぎたりを鎮める薬

解離時 レボトミン散【10%】ワイパックス錠1・0mg

解離状態のとき服薬

眼球上転時 アーテン散1%(局)乳糖 眼球上転時服薬動きにくい等の症状を浴する作用がある。

丌眠時 レンドルミン錠0・25mgレボトミン錠25mg

丌眠時服薬。ももぞの学園では23時以降に起きている場合には服薬。丌安や緊張を鎮めたり、眠りに入りやすくする作用がある。感じすぎたり・考えすぎたりするのを抑える薬

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○病院に対する職員の意識の変化

・情緒丌安定時でも

職員が限界まで支援を続ける。

・本人の感情が爆発、丌適切行動を行い入院

“病院”を利用して、情緒丌安定時には早めに調整

•入院前

退院後

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(3)母親との関係

■関係機関と話し合い・弁護士への相談・確認の実施

18歳であり成人施設へ移行手続きを行う

支援の方針は園に任せる

電話(週1回)、面会は当面は行わない

母親とのトラブルが減り、対応にも変化が見られる

母子分離が図れたことは大きな成果である

ももぞの学園での生活について

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(4)進路について

他施設の検討・待機登録

阻害要因

受け入れる施設の検討

促進要因

関係機関との調整会議

今後の課題

課題達成のポイント

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(5)オーダーメイドマニュアル

○どんな場面で

○どんな支援をしたら

○こういう行動をした

○支援のポイント

母との共依存 母子分離接触を断つ

母親自身の変化

支援の主導権

会話の構造化 会話の返答の統一

混乱回数の減尐

統一性を持ち支援の実施

将来 成人施設移行の手続き

移行への意識の芽生え

丌安定要素を明確にした

デイセンター ルールに明記した

参加回数が増えた

行くべき所として促した

職員間の引継ぎ

引継ぎを細かく行い、支援前に確認する

駆け引き行動の防止

情報の共有環境つくり

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(6)考察《現在の状況》

駆け引き行動・問題行動への防止、混乱を防ぎ

安定した生活の基盤を作った

現在、成人施設移行の見通しがたたない事が

本人の一番の丌安要素である

多くの関係機関に支えられて支援を行えた

現状の制度として問題・・・二次障害があるも障害程度区分4

中軽度の知的障害かつ発達障害児の成人期の生活場所

本人 ・・・ ルールの設定職員 ・・・ 支援の統一を行った事