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驚きの再現性 : 発光レポーターを利用した ADCC アッセイ 第一回目は抗体医薬の主要な作用機序の一つ、Antibody-dependent cell- mediated cytotoxicity ADCC)アッセイを取り上げます。従来の ADCC アッ セイは ①初代 NK 細胞(PBMC など)をエフェクター細胞として使用し、 ②エフェクター細胞が惹起したターゲット細胞死を検出していました。 しかし、バックグラウンドが高いため十分な検出感度が得られず、初代 NK 細胞の活性が不安定であるため再現性が低い、という問題がありま した。その上作業が煩雑で時間がかかるため開発研究においても使い づらいアッセイでしたが、さらに厳密さが要求される品質管理試験のク ライテリアを満たすことは極めて難しいものでした。 この問題を克服するため、プロメガではレポーターアッセイを応用した ADCC Reporter Bioassay を開発しました。ADCC では、抗体によるエフェク ター細胞活性化の際に NFAT シグナル経路が活性化されることがターゲッ ト細胞死につながるトリガーであることが報告されています。この NFAT グナル経路活性化をレポーターで検出することにより、従来のようにター ゲット細胞死を検出する方法に比べてバックグラウンドが大幅に低くなり、 検出感度が格段に向上しました(図 1 )。またエフェクター細胞として組換 Jurkat 細胞を使うことにより、NK 細胞の不安定さに起因する問題を克服 し、品質管理試験に使用できる高い再現性と信頼性を実現しました(図 2)。 NFAT-RE Luc 抗原 抗体 エフェクター細胞 (遺伝子組換えJurkat 細胞) ターゲット細胞 FcγRIIIa NFAT パスウェイ 1. ADCC Reporter Bioassay の概要 NFAT 応答配列により発現制御される ホタルルシフェラーゼの発光シグナルを測定。 10338MA 11427MB Percent ADCC Biolocigical Activity (Relative to N-glycosylated trastuzumab) Percent N-glycosylated trastuzumab 0 10 20 30 40 50 0 20 40 60 80 100 120 ADCC Reporter Bioassay PBMC-based ADCC assay 2. 抗体グリコシル化にともなう ADCC 活性の従来法との比較 従来法()に比べ、レポーター法()のエラーバーは非常に小さい アッセイプロトコールにも工夫を凝らしています。細胞培養が不要な Thaw-and-Use フォーマットを採用し、細胞を試薬のように使うことがで きるようになりました。このため従来 1 週間以上かかっていたアッセイ を、たった 1 日で終えることができます(図 3)。 3. 飛躍的に短縮されたプロトコル 従来法(1-2 週間) 製品に付属 する細胞 アッセイ、測定 アッセイバッファーに懸濁、 プレートに播く アッセイ、測定 細胞 培養 細胞数カウント、回収 アッセイバッファーに懸濁、 プレートに播く ドナーからの 細胞調達 準備 不要 ADCC レポーターアッセイ(24 時間以内) 所要時間 ADCC Reporter Bioassay のメリットはこれだけではありません。ADCC おいて、抗体はエフェクター細胞表面の Fc γ RIIIa 受容体と結合しますが、 この受容体には抗体と親和性の高い V variant と親和性の低い F variant があり、F variant ADCC が起きにくい事が報告されています。従来法 では親和性の高い V variant でなければ十分な差が見られなかったため、 V variant をホモで持つドナーからの細胞を使用していましたが、実際は 85の人が F variant をヘテロまたはホモで持つと報告されており、 V variant の調達が困難でした。そのため、多くの患者様での効き目を 評価できない点が問題となっていました。ADCC Reporter Bioassay では Jurkat 細胞に外来性 Fc γ RIIIa 受容体を導入しているため、V variant たは F variant を単独で発現するエフェクター細胞を容易に作ることが できます。また感度が高いため、抗体への応答性が低い F variant でも 十分なシグナルが得られ、効果判定ができるようになったのです(図 4)。 12447MA 0 20 40 60 80 Fold Induction F Variant ADCC V Variant ADCC –12 –11 –10 –9 –8 –7 –6 Log 10 [rituximab], g/ml 4. V variant F variant の応答性比較 今回紹介した ADCC アッセイの他にも、プロメガでは抗体医薬品開発を サポートする画期的な製品を次々に開発しています。次回は免疫チェック ポイントでホットな抗 PD-1 / PD-L1 抗体のアッセイをご紹介する予定で す。お楽しみに! ADCP レポーターバイオアッセイについては次ページをご覧ください。 バイオ医薬プロジェクト 抗体医薬に代表されるバイオ医薬品の研究開発が加速しています。バイオ医薬品の一般化を後押しすると期待されているバイオシミラーの開発も活 発化しています。「同程度の薬効を示す=バイオシミラー」だけでなく「よりよい効果を持つ=バイオベター」という考え方も出てきており、開発研究 から製造、品質管理まで、新たな技術が求められていることは間違いありません。 このセクションでは、抗体医薬の研究・評価試験のうち従来法の問題を新たな技術で克服したアッセイや、従来法では対応できなかった新しいニーズに応 えるアッセイをシリーズでご紹介します。 関連製品 サイズ カタログ番号 価格(¥) ADCC レポーターアッセイ コンプリートキット ADCC Reporter Bioassay, Complete WIL2-S1 キット G7014 138,000 ADCC Reporter Bioassay, Complete Raji1 キット G7015 138,000 コアキット ADCC Reporter Bioassay, Core Kit 1 キット G7010 115,000 5 キット G7018 515,000 キャンペーン対象製品:詳細については 8 ページをご覧ください。 コンプリートキットはエフェクター細胞(組換え Jurkat 細胞[Fc γ RIIIa-V158 バリアント , luc2])、ターゲット細胞(WIL2-S または Raji)、コントロール抗体(Anti-CD20)、アッセ イ試薬などが付属します)。 コアキットにはコンプリートキットに含まれるターゲット細胞およびコントロール抗体 が除かれています。 この他のエフェクター細胞として、Fc γ RIIIa-F158 バリアント、マウス Fc γ RIV、マウス Fc γ RIII などもご用意しております。詳細については弊社までお問合せください。 検索 プロメガ 抗体医薬 今すぐ始めたいけど装置が無い?そんな時は… www.promega.co.jp/rentamax/ 4

バイオ医薬プロジェクト ADCC アッセイ Reporter Bioassay, Complete (Raji) 1 キット G7015 138,000 コアキット ADCC Reporter Bioassay, Core Kit 1 キット G7010

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驚きの再現性 :発光レポーターを利用した ADCC アッセイ

第一回目は抗体医薬の主要な作用機序の一つ、Antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity(ADCC)アッセイを取り上げます。従来の ADCC アッセイは ①初代 NK 細胞(PBMC など)をエフェクター細胞として使用し、②エフェクター細胞が惹起したターゲット細胞死を検出していました。

しかし、バックグラウンドが高いため十分な検出感度が得られず、初代 NK 細胞の活性が不安定であるため再現性が低い、という問題がありました。その上作業が煩雑で時間がかかるため開発研究においても使いづらいアッセイでしたが、さらに厳密さが要求される品質管理試験のクライテリアを満たすことは極めて難しいものでした。

この問題を克服するため、プロメガではレポーターアッセイを応用した ADCC Reporter Bioassay を開発しました。ADCC では、抗体によるエフェクター細胞活性化の際に NFAT シグナル経路が活性化されることがターゲット細胞死につながるトリガーであることが報告されています。この NFAT シグナル経路活性化をレポーターで検出することにより、従来のようにターゲット細胞死を検出する方法に比べてバックグラウンドが大幅に低くなり、検出感度が格段に向上しました(図 1)。またエフェクター細胞として組換え Jurkat 細胞を使うことにより、NK 細胞の不安定さに起因する問題を克服し、品質管理試験に使用できる高い再現性と信頼性を実現しました(図 2)。

1033

8MA

NFAT-RE Luc

抗原抗体

エフェクター細胞(遺伝子組換えJurkat 細胞)

ターゲット細胞

FcγRIIIa

NFATパスウェイ

図 1. ADCC Reporter Bioassay の概要

NFAT 応答配列により発現制御される ホタルルシフェラーゼの発光シグナルを測定。 10

338M

A

1142

7MB

Perc

ent A

DCC

Biol

ocig

ical

Act

ivity

(Rel

ativ

e to

N-g

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Percent N-glycosylated trastuzumab

0 10 20 30 40 500

20

40

60

80

100

120 ADCC Reporter Bioassay

PBMC-based ADCC assay

図 2. 抗体グリコシル化にともなう ADCC 活性の従来法との比較

従来法(■)に比べ、レポーター法(■)のエラーバーは非常に小さい

アッセイプロトコールにも工夫を凝らしています。細胞培養が不要な Thaw-and-Use フォーマットを採用し、細胞を試薬のように使うことができるようになりました。このため従来 1週間以上かかっていたアッセイを、たった 1 日で終えることができます(図 3)。

図 3. 飛躍的に短縮されたプロトコル

従来法(1-2週間)

製品に付属する細胞

アッセイ、測定アッセイバッファーに懸濁、 プレートに播く

アッセイ、測定細胞 培養 細胞数カウント、回収アッセイバッファーに懸濁、

プレートに播く‘Cells as reagents’: Frozen, thaw-and-use cells (3-24hr)‘Cells as reagents’: Frozen, thaw-and-use cells (3-24hr)‘Cells as reagents’: Frozen, thaw-and-use cells (3-24hr)‘Cells as reagents’: Frozen, thaw-and-use cells (3-24hr)‘Cells as reagents’: Frozen, thaw-and-use cells (3-24hr)

ドナーからの 細胞調達

準備 不要

‘Cells as reagents’: Frozen, thaw-and-use cells (3-24hr)

ADCCレポーターアッセイ(24時間以内)

所要時間

‘Cells as reagents’: Frozen, thaw-and-use cells (3-24hr)‘Cells as reagents’: Frozen, thaw-and-use cells (3-24hr)‘Cells as reagents’: Frozen, thaw-and-use cells (3-24hr)

‘Cells as reagents’: Frozen, thaw-and-use cells (3-24hr)‘Cells as reagents’: Frozen, thaw-and-use cells (3-24hr)‘Cells as reagents’: Frozen, thaw-and-use cells (3-24hr)‘Cells as reagents’: Frozen, thaw-and-use cells (3-24hr)

ADCC Reporter Bioassay のメリットはこれだけではありません。ADCC において、抗体はエフェクター細胞表面の Fc γ RIIIa 受容体と結合しますが、この受容体には抗体と親和性の高い V variant と親和性の低い F variant があり、F variant は ADCC が起きにくい事が報告されています。従来法では親和性の高い V variant でなければ十分な差が見られなかったため、V variant をホモで持つドナーからの細胞を使用していましたが、実際は約 85% の人が F variant をヘテロまたはホモで持つと報告されており、V variant の調達が困難でした。そのため、多くの患者様での効き目を評価できない点が問題となっていました。ADCC Reporter Bioassay では Jurkat 細胞に外来性 Fc γ RIIIa 受容体を導入しているため、V variant または F variant を単独で発現するエフェクター細胞を容易に作ることができます。また感度が高いため、抗体への応答性が低い F variant でも十分なシグナルが得られ、効果判定ができるようになったのです(図 4)。

1244

7MA

0

20

40

60

80

Fold

Indu

ctio

n

F Variant ADCCV Variant ADCC

–12 –11 –10 –9 –8 –7 –6

Log10[rituximab], g/ml

図 4. V variant と F variant の応答性比較

今回紹介した ADCC アッセイの他にも、プロメガでは抗体医薬品開発をサポートする画期的な製品を次々に開発しています。次回は免疫チェックポイントでホットな抗 PD-1 / PD-L1 抗体のアッセイをご紹介する予定です。お楽しみに!

ADCP レポーターバイオアッセイについては次ページをご覧ください。

バイオ医薬プロジェクト

抗体医薬に代表されるバイオ医薬品の研究開発が加速しています。バイオ医薬品の一般化を後押しすると期待されているバイオシミラーの開発も活発化しています。「同程度の薬効を示す=バイオシミラー」だけでなく「よりよい効果を持つ=バイオベター」という考え方も出てきており、開発研究から製造、品質管理まで、新たな技術が求められていることは間違いありません。このセクションでは、抗体医薬の研究・評価試験のうち従来法の問題を新たな技術で克服したアッセイや、従来法では対応できなかった新しいニーズに応えるアッセイをシリーズでご紹介します。

関連製品サイズ カタログ番号 価格(¥)

ADCC レポーターアッセイコンプリートキットADCC Reporter Bioassay, Complete(WIL2-S) 1 キット G7014 138,000 特

ADCC Reporter Bioassay, Complete(Raji) 1 キット G7015 138,000コアキット

ADCC Reporter Bioassay, Core Kit1 キット G7010 115,0005 キット G7018 515,000

特 キャンペーン対象製品:詳細については 8 ページをご覧ください。

※ コンプリートキットはエフェクター細胞(組換え Jurkat 細胞[Fc γ RIIIa-V158 バリアント , luc2])、ターゲット細胞(WIL2-S または Raji)、コントロール抗体(Anti-CD20)、アッセイ試薬などが付属します)。※ コアキットにはコンプリートキットに含まれるターゲット細胞およびコントロール抗体が除かれています。※ この他のエフェクター細胞として、Fc γ RIIIa-F158 バリアント、マウス Fc γ RIV、マウス

Fc γ RIII などもご用意しております。詳細については弊社までお問合せください。

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今すぐ始めたいけど装置が無い?そんな時は…www.promega.co.jp/rentamax/4

ADCP もレポーターバイオアッセイ

最近 ADCC と並んで、ADCP という言葉を見たまたは聞いたことがあるのではないでしょうか?ADCP とはどういう現象でしょうか?また ADCC と何が違うのでしょうか?

ADCC(Antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)の主役は NK 細胞です。活性化した NK 細胞は液性成分を分泌してターゲット細胞を殺します。一方、ADCP (Antibody-dependent cell-mediated phagocytosis)の主役はマクロファージです。活性化したマクロファージはターゲット細胞を貪食することで排除します(図 5)。ADCPではエフェクター細胞の種類のほか、関係する Fc γ 受容体の種類も違います。ADCC ではタイプ III 受容体(Fc γ RIIIa)を介してエフェクター細胞が活性化しますが、ADCPではタイプ II 受容体(Fc γ RIIa)を介するため、ADCCアッセイ用の細胞では ADCPアッセイができません。ADCPアッセイのニーズが高まったことを受け、この度プロメガでは ADCP Reporter Bioassay を発売しました。タイプ II 受容体にも高親和性の H variant と低親和性の R variant があることが分かっており、プロメガでは両方のアッセイキットをご用意しています。R variant キットはまだカスタム品ですが、将来的にカタログ品化する予定です。

図 5. ADCC と ADCP の作用機序比較

ADCC

抗体 パーフォリンとグランザイム

NK細胞マクロファージ

FcγRIIIa

FcγRIIa

ADCP液性成分によるがん細胞の破壊 ファゴサイトーシスによるがん細胞の破壊

がん細胞

ADCC および ADCP バイオアッセイバイオアッセイ システムに含まれる細胞 カタログ番号ADCC Reporter BioassaysComplete Kit (WIL2-S)1

Effector Cells: Fc γ RIIIa-V158 Jurkat cellsTarget Cells: WIL2S or Raji cells

G7014Complete Kit (Raji) G7015Core Kit2. G7010ADCC Reporter Bioassays, F Variant5Core Kit Effector Cells: Fc γ RIIIa-F158 Jurkat cells G9790mFc γ RIV ADCC Reporter BioassaysComplete Kit Effector Cells: Mouse Fc γ RIV Jurkat cells カスタム品mFc γ RIII ADCC Reporter BioassaysCore Kit Effector Cells: Mouse Fc γ RIII Jurkat cells カスタム品Fc γ RIIa-H ADCP Reporter Bioassays  新発売!

Complete KitEffector Cells: Fc γ RIIa-H131 Jurkat cells

G9901Core Kit G9991Fc γ RIIa-R ADCP Reporter BioassaysCore Kit Effector Cells: Fc γ RIIa-R131 Jurkat cells カスタム品Fc γ RI ADCP Reporter BioassaysCore Kit Effector Cells: Fc γ RI Jurkat cells カスタム品※カスタム品については弊社テクニカルサービス部までお問合せください。

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