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(改訂 2.0) C 6 H 12 O 6 グルコースの構造式は必須 α 型と β 型がある フルクトースは最も甘い 単糖類は還元力を持つ グルコース・ブドウ糖 分子式は C 6 H 12 O 6 。地球上に生きる生物にとって必要なエネル ギー源であるブドウ糖である。ブドウ糖は栄養補助食品として薬 局にも売っている。構造式は必ず覚えること。6 個の炭素原子には 番号がついている。上記「要点」の図のようにした場合,右側か 123456 の順である。これは必ずしも覚えなくてもよ いことではあるが,知っていると便利である。1 番の炭素に結合す るヒドロキシル基 OH の方向が違うだけの α 型と β 型がある。両 方ともにしっかり覚えておきたい。 フルクトース・果糖 構造は念のため覚えておいた方がいい。普通は 6 個の原子が環 状構造を作っており,それを六員環というが,フルクトースは水中では結合が変わり,5 の原子が環状となる五員環構造もとる。五員環構造は知っていて損はない。フルクトースと α-グルコースが結合した二糖類のスクロースがたまに出題される。フルクトースはすべての 糖の中で最も甘い。 還元性 単糖類 C 6 H 12 O 6 はすべて還元力がある。フェーリング反応,銀鏡反応に陽性である。水 に溶けると下のように鎖状となり,アルデヒド基を形成するからである。フルクトースはケ トン基を持つが,水溶液中ではその隣の OH が移動して結局アルデヒド基を作るため,フル クトースも還元性をもつ。また,フルクトースのように直鎖型構造のときにケトン基をもつ 糖をケトースという。 c2252-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■

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単 糖 類  (改訂 2.0)

C6H12O6グルコースの構造式は必須α型と β型があるフルクトースは最も甘い単糖類は還元力を持つ

グルコース・ブドウ糖 分子式は C6H12O6。地球上に生きる生物にとって必要なエネル

ギー源であるブドウ糖である。ブドウ糖は栄養補助食品として薬

局にも売っている。構造式は必ず覚えること。6個の炭素原子には

番号がついている。上記「要点」の図のようにした場合,右側か

ら 1,2,3,4,5,6の順である。これは必ずしも覚えなくてもよ

いことではあるが,知っていると便利である。1番の炭素に結合す

るヒドロキシル基OHの方向が違うだけの α型と β 型がある。両

方ともにしっかり覚えておきたい。

フルクトース・果糖 構造は念のため覚えておいた方がいい。普通は 6個の原子が環

状構造を作っており,それを六員環というが,フルクトースは水中では結合が変わり,5個

の原子が環状となる五員環構造もとる。五員環構造は知っていて損はない。フルクトースと

α-グルコースが結合した二糖類のスクロースがたまに出題される。フルクトースはすべての

糖の中で最も甘い。

還 元 性 単糖類C6H12O6 はすべて還元力がある。フェーリング反応,銀鏡反応に陽性である。水

に溶けると下のように鎖状となり,アルデヒド基を形成するからである。フルクトースはケ

トン基を持つが,水溶液中ではその隣のOHが移動して結局アルデヒド基を作るため,フル

クトースも還元性をもつ。また,フルクトースのように直鎖型構造のときにケトン基をもつ

糖をケトースという。

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二 糖 類  (改訂 2.0)

αグルコース 2つ→マルトースβグルコース 2つ→セロビオースグルコースとフルクトース →スクロース (サッカロース)スクロースだけは還元力をもたない

糖 の 脱 水 単糖 2分子が脱水縮合すると二糖類ができる。このあたりは計算問題よりも名前が必要と

なってくる。分解する酵素 (加水分解における触媒)の名前もしっかり覚えたい。脱水によっ

てできるエーテル結合の−C−O− C−はグリコシド結合とよばれる。

  2C6H12O6 → C12H22O11 +H2Oのように,2つの単糖を脱水することでできる。

●マルトース・麦芽糖  αグルコース 2分子が脱水したもの。酵素マルターゼで分解でき

る。下図の右側で開環できるため,還元力を有する。

●セロビオース  βグルコース 2分子が脱水したもの。酵素セロビアーゼで分解できる。右

側のグルコースは上下反転して結合している。

●スクロース・ショ糖  αグルコースとフルクトースが脱水したもの。分解酵素はスクラー

ゼ (インベルターゼ)となる。出題としては少ないが,念のため覚えておきたい。構造式は

あまり重要とはされないが,書けるに越したことはない。スクロースは還元性はない。

 フルクトースが関連するショ糖の構造式の問題はたまに出題される。また,還元性に関し

てはよく出題される。二糖類はスクロースを除いて還元性がある。開環してアルデヒド基を

形成する部分がグリコシド結合に使われているからである。この理由は述べられるようにし

ておいてほしい。

 この他二糖類にはラクトースなどがある。

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多 糖 類  (改訂 2.0)

単糖類が縮合重合したもので (C6H10O5)nαグルコースが重合したものはデンプンβグルコースが重合したものは繊維デンプンはアミロース・アミロペクチンセルロースは繊維

デ ン プ ン すべてαグルコースからできているもの。(C6H10O5)nで

表される。途中,枝分かれのないアミロースと,枝分かれ

のあるアミロペクチンがある。アミロースは 1番と 4番の

炭素どうしがグリコシド結合したもので,らせん構造が長

く,水によく溶けてヨウ素液で青色に染まる。またアミロ

ペクチンは 1番と 4番のほか,所々6番と 1番の炭素どう

しがグリコシド結合をする。そのためらせんは短くヨウ素

液ではアミロースほど鮮やかな色にならず,赤紫色になる。

また,水には溶けにくい。

 デンプンはアミラーゼで加水分解され,デキストリンを

経て二糖類のマルトースになる。

例題 デンプン 400gを加水分解して得られるグルコースの

質量を有効数字 2桁で求めよ。C = 12,H = 1.0,O = 16

■解答■ グルコース単位で考える。デンプン 400g中に含

まれる αグルコース 1単位の C6H10O5 は式量 162なので,

グルコース単位は400

162molが存在する。これは分解して出

てくる αグルコース (C6H12O6 分子量 180)のモル数そのものであるから,400

162× 180 = 444.4 · · · ; 4.4× 102g □

セルロース  β グルコースが連結した糖類をセルロースという。セ

ルロースは植物の細胞壁などを構成する。水にも熱水にも

溶けにくい糖である。セルロースを溶かせる溶液としては

シュバイツァー試薬というものがある。酵素セルラーゼで

加水分解され,セロビオースになる。セルロースに無水酢

酸 (CH3CO)2Oを作用させて,ヒドロキシル基をアセチル

化をしたものをアセチルセルロースという。

例題 セルロース 200gを完全にアセチル化するための無水酢酸の質量を求めてみる。まず

200gに含まれる β グルコースは200

162molとなる。糖を構成するグルコース単位 1分子中に

はアセチル化されるヒドロキシル基は 3つあるので,この 3倍のモル数の無水酢酸が必要と

なる。無水酢酸の分子量は 102なので200

162× 3× 102 = 377.7 · · · ; 3.8× 102g □

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ア ミ ノ 酸  (改訂 2.0)

α-アミノ酸は1つの炭素原子に水素,アミノ基,カルボキシル基が  結合している他のアミノ酸とペプチド結合をする

アミノ酸とは アミノ酸はカルボキシル基−COOHとアミノ基−NH2 を持つ

炭化水素である。カルボキシル基のついた炭素から順にα,β,γ,

δ,…と続き,カルボキシル基とアミノ基が同じ炭素原子に結合

しているものを α-アミノ酸とよぶ。高校化学では基本的に α-ア

ミノ酸のみを扱う。α-アミノ酸は 1つの炭素原子に水素,アミノ

基,カルボキシル基が結合しており,あと 1つは任意である。こ

れをここでは Xと書くことにする。Xが Hとなると,グリシン

とよぶが,このようにXの部分が何であるかによって別個に名前がつけられている。

水溶液中での電離 アミノ酸は親水基であるカルボキシル基とアミノ基を持つので水に溶ける。このときカル

ボキシル基とアミノ基はそれぞれ

−COOHÀ −COO− +H+ · · ·①−NH2 +H+ À −NH3+ · · ·②

のように電離する。水溶液の液性を塩基性にする (H+を減ら

す)とルシャトリエの原理より,①の反応が右へ,②の反応は

左へ平衡が移動し,その結果−COO−が増えて−NH3+が減

る。水溶液の中では①,②の反応が同時に起こっており,pH

によって右図の L,M,Nの存在比が変化する。また①と②

が同時に起こった状態であるNは双性イオンとよばれる。

●等電点 平衡を使い,うまく pHを調整すると LとMの濃

度が等しくなり,このときの pHを等電点という。

LÀ N+H+ K1 =[N][H+]

[L]

NÀ M+H+ K2 =[M][H+]

[N]の式において [L] = [M]であればよいので,辺々かけ合わせる

と [M]と [L],そして [N]がすべて約分され,K1K2 = [H+]2となる。水素イオンの濃度が分

かったので,等電点は次のように表せる。

pH = − log√K1K2

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タンパク質 (I) タンパク質の性質  (改訂 2.0)

アミノ酸が重合した大きな分子タンパク質を構成するアミノ酸は 20種類ビウレット反応に陽性その他反応を覚える水に溶けて親水コロイドとなる

タンパク質の定義 アミノ基とカルボキシル基が脱水して結合したものをアミド結合とよぶが,α-アミノ酸ど

うしのアミド結合はペプチド結合とよばれる。アミノ酸が 2つでペプチド結合が 1つのもの

をジペプチド,アミノ酸が 3つのものをトリペプチド…と言い,多くのアミノ酸が連結した

ものをポリペプチドという。そして分子量が 10,000以上 (一部 5,000程度のタンパク質もあ

る)のポリペプチドがタンパク質である。

タンパク質の各種反応●ビウレット反応 タンパク質の水溶液に水酸化ナトリウ

ム水溶液と,硫酸銅 (II)水溶液を加えると赤紫色になる。

これはペプチド結合が 2個以上ある場合のみ反応する。ア

ミノ酸が 2個のペプチドではビウレット反応しない。あく

までアミノ酸が 3個以上つながっている必要がある。

●キサントプロテイン反応 タンパク質に濃硝酸を加えて

加熱すると黄色い沈殿を作ることがある。これはタンパク

質内にあるベンゼン環がニトロ化されるためであり,キサ

ントプロテイン反応とよばれる。キサントとは,英単語の

xanthic(黄色のという形容詞) で,プロテインは protein(タ

ンパク質)である。

 そのため,構成アミノ酸としてフェニルアラニンや

チロシンのようなベンゼン環を持つアミノ酸を含む

ものであればこの反応が起こる。

●硫黄反応 構成アミノ酸としてシステインやメチ

オニンを含むタンパク質をまず水酸化ナトリウム水

溶液に溶かして酢酸にて中和し,酢酸鉛水溶液を加

えて加熱すると黒色沈殿を生じる。これは硫化鉛の

沈殿であり,硫黄反応とよばれる。普通のタンパク質

はシステインの他,シスチンという,システインどう

しが結合したものを含むため,硫黄反応は一般的なタンパク質なら陽性となる。

 上記 3つの反応はペプチドの構成アミノ酸決定の問題では重要な考え方である。例えばあ

るペプチドでビウレット反応は起こさなかったがキサントプロテイン反応と硫黄反応を起こ

したとすれば,それはベンゼン環を持つアミノ酸と硫黄を持つアミノ酸で構成されたジペプ

チドと考えられる。例としてフェニルアラニンとシステインがペプチド結合したものとも考

えることができる。

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タンパク質 (II) 酵素

タンパク質は立体構造  らせんのα-ヘリックス構造  ジグザグの β-シート構造酵素は生物体内での触媒最適 pHと最適温度がある

タンパク質の構造 前項『タンパク質 (I)』で説明した通り,アミノ酸どうしが

ペプチド結合をし,分子量が 5000以上になったものをタンパ

ク質という。タンパク質のような長いペプチドはらせん構造

であるα-ヘリックス構造やジグザグのβ-シート構造をとる。

またタンパク質は構成アミノ酸の種類によって特有の立体構造をとる。これは 2個のシステ

インの SHどうしが酸化されて Sと Sが結合した S−S結合もしくはジスルフィド結合とよ

ばれるものと,水素結合やファンデルワールス力などが複雑に絡み合っている。

●変性 タンパク質は結構ヤワである。熱,強酸,強塩基,水以外の液体,金属イオンなど

に弱く,立体構造が変わってしまう。これを変性という。

酵  素 生体内では様々な化学反応が行われている。たった今,

あなたの体内でも無数の化学反応が進んでいる途中であ

る。その化学反応を触媒するものが酵素とよばれるもので

ある。酵素はタンパク質でできている。そのタンパク質の

立体構造が標的となる物質と見事にハマるのである。酵素

の標的となる物質を基質,酵素タンパク質の,基質と結合

する部分のことを活性部位 (または活性中心)という。酵

素と基質が結合したものを酵素基質複合体という。

 酵素を構成するのもタンパク質なので,独自の立体構造

を持つ。その立体構造により相手,つまり基質が決まるが,

この性質を基質特異性という。また,温度や pHがちょう

どよくないとはたらいてくれないのである。ちょうどいい

温度を最適温度,ちょうどいい pHを最適 pHという。人体の中にある酵素は最適温度は 37

℃前後,つまり体温と同じ温度が多い。最適 pHは種類によって違う。

 酵素はタンパク質なのでもちろん,加熱すると変性してしま

い触媒能力を失ってしまう。ということは酵素として役に立た

なくなる。これを酵素の失活という。

 覚えてほしい酵素はいくつかあるが,代表を挙げる。その他

は教科書などで確認してもらいたい。デンプンを分解するアミ

ロースがだ液の中に,タンパク質を分解するペプシンが胃液の

中,トリプシンがすい液の中にある。油脂を分解するのはリパー

ゼである。また,過酸化水素を分解するカタラーゼが肝臓や血液中にある。

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合 成 繊 維 (I)  (改訂 2.5)

ε-カプロラクタム→6-ナイロンヘキサメチレンジアミン+アジピン酸→  6,6-ナイロンテレフタル酸+エチレングリコール→ポリエチレンテレフタラート

覚えるべき単量体 合成繊維としてよく出題される 3つを扱う。それぞれ単量体の名前,構造式と,多量体の

名前,構造式を覚えるようにしたい。そうすれば計算問題が出されても比較的楽に答えられ

る。ここでは 6-ナイロン,6,6-ナイロン,ポリエチレンテレフタラートを扱う。

●ポリエチレンテレフタラート ベンゼン環に 2つのカルボキシル基がパラ位に結合したテ

レフタル酸と,エチレングリコール (1,2-エタンジオール)はエステル結合を繰り返してポリ

エチレンテレフタラート (PET)を作る。このように,2種類の単量体から重合体が作られ

る反応を共重合という。ペットボトルの他,オーディオテープや衣類のポリエステル繊維と

して使われている。

● 6-ナイロン カプロラクタム (正式名称は ε-カプロラクタム)を必ず覚えてもらいたい。5

つのメチレン基をアミド結合で閉じて 1周した環状分子である。

カプロラクタムはいったん加水分解によりリングが切れて,アミノカプロン酸になる。そこ

で他のアミノカプロン酸と再びアミド結合をして重合する。これが開環重合であり,6-ナイ

ロンができる。炭素原子が 6個連続で続くためにこの名前となっている。

● 6,6-ナイロン 前述の 6-ナイロンの他,アジピン酸HOOC− (CH2)4 − COOH ヘキサメ

チレンジアミン H2N− (CH2)6 −NH2 とがアミド結合により共重合して出来上がる 6,6-ナ

イロンがある。

例題  6,6-ナイロン 100gの中に含まれる窒素原子の質量を求めよ。有効数字は 2桁で。原子

量は H = 1.0, C = 12, O = 16, N = 14。重合度を nとすると 6,6-ナイロンの式量は 226n

で,そのうち窒素原子は 28nに相当するので,100

226n× 28n = 12.38 · · · ; 12g

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合 成 繊 維 (II)  (改訂 2.0)

アクリロニトリルとアクリル酸メチルの  共重合における計算練習ポリビニルアルコールは木工用ボンドの原料である酢酸ビニルから

アクリル系繊維 アクリロニトリル CH2 = CH(CN)はビニル基にシアノ基が結

合したものであり,アクリル繊維に使われる。アクリル酸メチル

などとともに重合される。2種類の単量体が重合される反応を共

重合とよぶ。

例題 アクリロニトリルとアクリル酸メチルを 4 : 1の比で共重

合した重合体に含まれる窒素原子の質量パーセントを求めよ。た

だし,C = 12, H = 1.0, N = 14, O = 16,有効数字は 2桁。

■解答■ 式量はアクリロニトリルが 53,アクリル酸メチルが 86であり,反応式は

4nCH2CH(CN) + nCH2CH(COOCH3)→ [−CH2CH(CN)−]4n[−CH2CH(COOCH3)−]nとなる。この重合体 1molに含まれる窒素は 14× 4n[g],全体の質量,つまり分子量は 53×4n+ 86× n[g]なので

14× 4n53× 4n+ 86× n × 100 = 18.79 · · · ; 19% □

ビ ニ ロ ン ビニロンは複雑な反応を経て作られる。正誤問題でも出さ

れることがあるので流れはしっかりおさえておきたい。まず

ポリ酢酸ビニルのエステル結合をけん化によって加水分解し,

ポリビニルアルコールを作る。

 ビニルアルコールをそのまま付加重合することはできな

い。なぜならビニルアルコールは非常に不安定で,すぐにア

セトアルデヒドになってしまうからである。ポリビニルアル

コールはメチレン基CH2が続くが,1つおきのCごとにヒド

ロキシル基OHが結合している。そこへホルムアルデヒドを

作用すると,脱水がおこり,一種のエーテル結合ができる。

この反応をアセタール化といい,ここでできあがったものが

ビニロンである。なお,ビニロンはすべてのヒドロキシル基

をアセタール化するわけではない。

●エーテル結合 ビニロンは全体の 3割程度しかアセタール

化されない。しかしアセタール化された部分は 2個のエーテル結合を持つため,水には溶け

にくくなる。

●アルコール ポリビニルアルコールはその名の通りアルコールなのでヒドロキシル基をも

つ。ビニロンはアセタール化されずに残るヒドロキシル基が多いため,水とはよく馴染み,

吸水性に富む。そのため全ヒドロキシル基をアセタール化するわけではない。

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合 成 樹 脂  (改訂 2.0)

覚えるべきプラスチックビニル基が付加重合してできた鎖式のものは熱可塑性立体網目構造のものは熱硬化性単量体をはっきり覚えておくべき

熱可塑性樹脂 プラスチックは種類が多い。熱を加えても化学的な

構造が変わらないものである。

●アクリル プラスチックといってもさまざまなもの

があるが,代表としては硬くて透明なアクリルがある。

CH2 = CH(COOH)がアクリル酸であり,このカルボ

キシル基側の炭素原子に結合している水素をメチル基

にしたものをメチルアクリル酸,略してメタクリル酸,

さらにカルボキシル基をメタノールでエステル化した

ものはメタクリル酸メチルとなり,これを付加重合し

たポリメタクリル酸メチルがいわゆるアクリル素材で

ある。プラスチック板以外にも,コンタクトレンズや光ファイバーなどにも使われている。

●スチロール 用途は発泡スチロールや,食品の容器などである。スチレンCH2 = CH(C6H5)

を付加重合したものである。

●塩化ビニル 水道管などに使われる「塩ビ」である。これは塩化ビニル CH2 = CHClが

付加重合したポリ塩化ビニルのことである。化学薬品に強く,熱に弱い。

●ポリエチレン・ポリプロピレン プラスチックでもよく見かけるのがこれである。エチレ

ンCH2 = CH2やプロピレンCH2 = CHCH3が付加重合したもので,バケツ,ケース,クリ

アファイルなどに利用されている。

 以上 4つ,まずはこれらを覚えることから始まる。

熱硬化性樹脂 立体網目構造のものは熱硬化性のものが多い。

●フェノール樹脂 フェノールとホルムアルデヒドを共重合する

と,ベンゼン環の水素とホルムアルデヒドの酸素原子とで脱水が

起こり,網目構造になる。これをフェノール樹脂という。立体網

目構造の熱硬化性樹脂である。また,ベークライトともよばれ,

プリント基板などにも使われている。プリント基板というのは機

械の中に入っており,回路を固定するものである。中学の技術家

庭などで組み立てた人も多いのではないだろうか。

●尿素樹脂 尿素 (NH2)2COもホルムアルデヒドと共重合するこ

とにより,尿素樹脂ができる。アミノ基の Hとホルムアルデヒドの酸素とで脱水が起こる

のである。尿素樹脂はユリア樹脂ともよばれている。尿素樹脂の代表的な用途としては衣類

のボタンなどが挙げられる。

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イオン交換樹脂  (改訂 2.0)

陽イオン交換樹脂  →陽イオンを水素イオンに陰イオン交換樹脂  →陰イオンを水酸化物イオンに両方使うと純水が得られる

陽イオン交換樹脂 スチレンと p-ジビニルベンゼンを共重合させ,さらに濃硫酸

を加えてベンゼン環の一部をスルホン化し,スルホ基をつける

などの処置をとったものは陽イオン交換樹脂とよばれる。つま

り,ポリスチレンどうしが所々ベンゼン環でつながっており,さ

らにベンゼン環にスルホ基がついているものと考えればよい。

 ここに塩化ナトリウム水溶液や塩化カルシウム水溶液などの

イオン結合性の溶質を溶かした水溶液を通すと,陽イオンであ

るナトリウムイオン Na+ やカルシウムイオン Ca2+ などがス

ルホ基で引っかかって代わりにスルホ基についていた水素イオ

ンが外に出される。陽イオンが水素イオンになるため,陽イオ

ン交換樹脂に電解質水溶液を通した場合は一般的には pHは下

がって酸性に近づく。メチルオレンジを入れておいて陽イオン交換樹脂を使うと酸性になる

ため,赤色に変色する。

陰イオン交換樹脂 陽イオン交換樹脂と同じようにスチレン,p-ジビニルベンゼン

を共重合した樹脂に,トリメチルアミンという原子団に水酸化物

イオンを結合させた N+(CH3)3OH− のような基をつけたものを

考える。ここに塩化ナトリウム水溶液や硫酸カリウム水溶液など

を通すと,塩化物イオン Cl−や硫酸イオン SO42−などの代わり

に水酸化物イオンが外に出される。このような樹脂のことを陰イ

オン交換樹脂という。陰イオン交換樹脂に水溶液を通すと水酸化

物イオンが増えるので塩基性に近づく。

例題 硫酸ナトリウム水溶液Na2SO4を陰イオン交換樹脂に通す。

通した水溶液を 10m`を中和するのに 0.10mol/`塩酸が 20m`が必要だった。初めの硫酸ナ

トリウム水溶液のモル濃度を求めよ。

■解答■ 求める濃度を x[mol/`]とする。Na2SO4 + 2OH− → 2NaOH+ SO4

2−のように

1molの硫酸ナトリウムから 2molの水酸化ナトリウムができるため 2価として扱う。

x× 10

1000× 2 = 0.10× 20

1000× 1 ∴ x = 0.10 0.10mol/`

●脱イオン水 陽イオン交換樹脂では色々な陽イオンが水素イオンH+となる。また陰イオ

ン交換樹脂では色々な陰イオンが水酸化物イオンOH−となる。ではこの 2つの樹脂を同時

に使って電解質の水溶液を接触させた場合はどうなるか。これはH+とOH−が出るので,2

つが結合して水が出る。このようにして作られた水を脱イオン水という。

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