1
Ⓒ石油化学新聞社2021年 【昭和1年2月6日第3種郵便物認可】 週刊・毎月曜日発行 購読料/年間54,120円(本体49,200円+消費税4,920円)・6カ月27,060円(本体24,600円+消費税2,460円) 2021年(令和3年) 1月25日(月) 5221発行所 石油化学新聞社 26 22 26 姿22 50 18 調沿58 26年に100周年 新社長 12月の石化製品生産実績 (単位 : 1,000㌧、 %) 12月 前月比 同月比 1~12月 前年比 517.8 ▲4 ▲8 5,923.5 ▲8 103.6 ▲10 ▲7 1,306.0 ▲8 73.8 23 ▲5 741.7 ▲11 222.5 3 1 2,251.3 ▲8 58.0 2 ▲7 659.5 ▲7 184.1 6 ▲1 1,875.7 ▲7 134.1 2 ▲15 1,586.3 ▲6 249.5 18 ▲3 2,669.7 ▲1 40.2 30 10 388.6 ▲10 74.9 ▲3 1 806.6 ▲11 56.6 ▲3 ▲7 587.8 ▲14 アセトアルデヒド 5.4 ▲41 ▲43 76.5 ▲10 37.8 7 ▲4 415.1 ▲10 32.3 8 ▲20 307.6 ▲28 25.6 44 4 254.1 ▲11 299.0 17 ▲12 3,216.5 ▲13 119.6 9 ▲20 1,293.7 ▲24 423.7 16 ▲27 5,012.2 ▲24 22 西17 17 調17 調20 20 92 17 20 92 592 エチレン 21 20 90 使調20 93 27 石 化 協 和賀会長 和賀昌之会長 90 50 使19 24 使98 半導体基板材料 使使10 使20 19 使西13 22 調21 押出用PA6 調20 調使調調使21 19 調調調

半導体基板材料 新社長 5G向け高機能品拡充...SBR 32.3 8 20 307.6 28 B R 25.6 44 4 254.1 11 ベンゼン 299.0 17 12 3,216.5 13 トルエン 119.6 9 20 1,293.7 24 キシレン

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

  • Ⓒ石油化学新聞社2021年 【昭和31年2月6日第3種郵便物認可】 週刊・毎月曜日発行購読料/年間54,120円(本体49,200円+消費税4,920円)・6カ月27,060円(本体24,600円+消費税2,460円) 2021年(令和3年)

    1月25日(月)5221号発行所 石油化学新聞社

     「当社は特に2000

    年以降、成長に向けてM

    &Aなどを積極的に実施

    してきたことで、さまざ

    まな会社がグループに加

    わった。現在、グループ

    の従業員は全世界で1万

    1千人を超えており、海

    外の売上高比率も高い。

    個々の従業員の潜在的な

    能力を高めることで、当

    社グループには顕在化し

    ていない成長のポテンシ

    ャルがあると確信してい

    る。情報共有の場を増や

    すことなどによってアイ

    デアを出し合い、もっと

    ポテンシャルを引き出し

    ていきたい」

     同社は26年に創立10

    0周年を迎える。1月1

    日付で就任した川原仁社

    長を中心とした経営体制

    の下で、22〜26年の5カ

    年にわたる中期経営計画

    を今年1年かけて策定、

    実行し、持続的成長と企

    業価値向上を図る。

     「企業を支えるのは人

    材。文化など異なるいろ

    んな国の従業員がグルー

    プに加わったわけだが、

    当社創業以来の企業理念

    『世のため人のため他人

    のやれないことをやる』

    は研修などを通じて理解

    され、浸透し、グループ

    としてグローバルに打ち

    解けあってきている。地

    域ごとに異なる文化など

    多様性も尊重しながら、

    もっとコミュニケーショ

    ンの場を増やしていくこ

    とで、グループが変革

    し、進化するためのアイ

    デアなどを出し合い、そ

    れぞれのポテンシャルを

    最大限に発揮できるよう

    にして、さらなる成長へ

    とつなげていきたい」

     新中計は海外を含めた

    横断的なワーキングチー

    ムで今年から本格的な策

    定作業に入った。「独自

    の技術に新たな要素を取

    り込み、持続的に成長す

    るスペシャリティ化学企

    業」をあるべき姿として

    「ビニルアセテート事業

    に加え、イソプレン事業

    や環境ソリューション事

    業(炭素材料、カルゴン

    ・カーボンの両事業を1

    月1日付で統合)を第

    2、第3の柱として伸ば

    しながら、これらに続く

    第4、第5の柱の創出も

    目指していく」方針だ。

     「イソプレン事業では

    タイでポリアミド9T樹

    脂や水添熱可塑性エラス

    トマー、MPDの新プラ

    ント建設を進めており、

    建設工事はコロナ禍で数

    カ月ほど遅れているもの

    の、22年後半には順次商

    業ベースでの稼働を実現

    させたい。稼働から数年

    間は償却負担もあって苦

    労する可能性もあるが、

    中長期を見据えての投資

    であり、大きな柱に育て

    ていく。環境ソリューシ

    ョン事業でも環境関連や

    電池用途を中心とした活

    性炭の需要増を見越して

    米国、欧州(ベルギー)

    での増設を決めた。もち

    ろん、ビニルアセテート

    事業も引き続き拡大に取

    り組み、3本の柱で次期

    中計期間の成長を牽引し

    ていく」考え。

     第4、第5の柱につい

    ては「市場性、経済性な

    どを考えながら研究開発

    とイノベーションによっ

    て、次期中計で柱の事業

    となるような、いくつか

    の事業を育成・創出し、

    伸ばしていく。

     創立100周年を迎

    え、くらしき研究センタ

    ーが設立から50年を経過

    したこともあって、岡山

    県倉敷市に新研究所を建

    設することも計画してお

    り、「新中計の策定作業

    を進めていく中で投資計

    画の具体化や、研究開発

    拠点の役割・機能の見直

    しなども進めていくこと

    になる」。

     一方、同社は顧客視点

    のビジネス創出・文化の

    醸成に向け、18年からマ

    ーケティンググループが

    旗振り役となって自動

    車、農業、オイル&ガス

    掘削、サスティナビリテ

    ィなどのテーマについて

    横串のチームを編成し、

    研究開発、生産、販売を

    含む全社で情報を共有し

    ながら顧客へ幅広くソリ

    ューションを提案する取

    り組みを進めている。

     「スタートから3年を

    経過し、各テーマに対し

    て個別の製品ではなく複

    合化して新たな機能を付

    与したモノを提案するな

    ど、内容が年々濃くなっ

    てきている。当社にはユ

    ニークな製品、世界ナン

    バーワンの製品が多い。

    これまで製品、事業ごと

    にマーケティングを進め

    ていたが、これを横串の

    組織でグローバルに統一

    感を持って進めることで

    新たな効果が得られてき

    ており、クラレグループ

    として顧客に提案できる

    トータルソリューション

    の内容、質が高まってき

    たと感じる」

     川原社長はクラレを

    「内向けにも外向きにも

    活力、元気のある会社に

    したい」とし、「当社に

    は可能性のある人材が揃

    っており、より活性化し

    て個々のレベルを高める

    ことで新たなイノベーシ

    ョンも生まれてくる。生

    まれてくるイノベーショ

    ンは地球環境への貢献に

    もつながるものであり、

    それを伸ばすことによっ

    て収益の拡大にもつなが

    っていくはずだ」と強調

    する。

     「言うまでもないが、

    創立100周年はゴール

    ではない。さらに成長を

    続けていくため、どうい

    う節目にするかが重要と

    なる。企業理念に沿って

    クラレらしいやり方で

    『世のため人のため』に

    貢献していきたい」

     川原社長は中学から大

    学まで軟式テニスを続け

    た。現在はゴルフやスポ

    ーツ観戦などが趣味。早

    稲田大学政治経済学部卒

    で、欧州など海外でのビ

    ジネス経験も長い。埼玉

    県出身、58歳。

    人材活性化

    ポテンシャル発揮へ

    3つの柱で成長牽引

    26年に100周年

    川かわ原はら

    仁ひとし

    新 社 長

    環境安全を世界

    へ 化学各社の

    RC活動

    (2〜4面)

    12月の石化製品生産実績(単位 : 1,000㌧、 %)

    12月 前月比前 年同月比

    1~12月計

    前年比

    エ チ レ ン 517.8 ▲4 ▲8 5,923.5 ▲8L D P E 103.6 ▲10 ▲7 1,306.0 ▲8H D P E 73.8 23 ▲5 741.7 ▲11P     P 222.5 3 1 2,251.3 ▲8P     S 58.0 2 ▲7 659.5 ▲7S     M 184.1 6 ▲1 1,875.7 ▲7P V C 134.1 2 ▲15 1,586.3 ▲6V C M 249.5 18 ▲3 2,669.7 ▲1M M A 40.2 30 10 388.6 ▲10E     O 74.9 ▲3 1 806.6 ▲11E     G 56.6 ▲3 ▲7 587.8 ▲14アセトアルデヒド 5.4 ▲41 ▲43 76.5 ▲10A     N 37.8 7 ▲4 415.1 ▲10S B R 32.3 8 ▲20 307.6 ▲28B     R 25.6 44 4 254.1 ▲11ベ ン ゼ ン 299.0 17 ▲12 3,216.5 ▲13ト ル エ ン 119.6 9 ▲20 1,293.7 ▲24キ シ レ ン 423.7 16 ▲27 5,012.2 ▲24

     聖徳太子によって創建

    された法隆寺は、太子が

    亡くなったとされる旧暦

    2月22日に当たる4月3

    日から5日まで、遠忌法

    要(1400回忌)を営

    むことを決定した。金堂

    や五重塔がある西院伽藍

    (がらん)で営なむ法要

    では、太子像を大講堂に

    移し、その前で太子ゆか

    りの寺院の僧侶も参加し

    て読経や窑楽の奉納をす

    るという▼聖徳太子は皇

    族・政治家であるととも

    に、仏教を日本に広めた

    人として知られる。法隆

    寺だけでなく、仏教布教

    のために多数の寺院を建

    立したことが伝えられて

    おり、大乗仏教の法華

    経、勝鬘経(しょうまん

    ぎょう)、維摩経(やい

    まきょう)という三つの

    経典を解説した注釈書

    「三行靸疏(さんぎょう

    ぎしょ)」も書いている

    ▼聖徳太子が制定したと

    される17条憲法は、日本

    書紀に記されている。こ

    の憲法でも仏教を取り上

    げ、第2条では仏教の三

    つの宝である仏、法理、

    僧侶を篤く敬うよう求

    め、「仏教は生物が最後

    に行きつくところであ

    り、どの国にとっても究

    極の宗教である」と伝え

    ている▼17条憲法は国民

    の権利と自由を保障する

    根本規範である現代憲法

    とは違い、為政者の倫理

    や道徳を示したものだ

    が、その内容は現代社会

    にも通じる部分が多い。

    「和をもって貴しとな

    し」で始まる第1条は、

    議論を通じて調和するこ

    とを求めており、第17条

    では「国家の重大事では

    独断で判断すると誤るこ

    とがあるが、議論をすれ

    ば正しい結論が得られ

    る」と述べている▼通常

    国会がスタートした。緊

    急事態宣言下の国会であ

    り、感染症対策について

    激しい議論になると思わ

    れるが、議論を尽くして

    調和を図り、国家・国民

    のために正しい結論を導

    きだしてもらいたい。

     石油化学工業協会がま

    とめた主要石油化学製品

    の20年生産実績による

    と、エチレン生産は前年

    比7・7%減の592万

    3500㌧と2年ぶりに

    前年実績を下回った。

     定修を行ったナフサク

    ラッカーが6基と前年の

    3基より多く供給量が減

    ったうえに、新型コロナ

    ウイルスによる経済停滞

    で石化製品需要が落ち込

    み、特に3〜9月にクラ

    ッカーの稼働率が大きく

    下落した。

    20年平均のクラッカー

    稼働率は92・6%と前年

    より3㌽ほど低下した。

    エチレン以外の石化品17

    品目の生産もマイナスだ

    った。

    20年生産

    平均稼働率92・6%

    7・7%減の592万㌧

    エチレン

     石油化学工業協会(石

    化協)の和賀昌之会長

    (三菱ケミカル社長)は

    定例記者会見で、21年の

    世界情勢について、「す

    べては新型コロナに起因

    することに影響される

    が、ワクチン接種の普及

    拡大と相まって社会・経

    済情勢も緩慢ながら回復

    に向かうだろう」との見

    方を示すとともに、今年

    の石化業界について「足

    元は在庫を絞り込み、需

    給バランスはウェルから

    タイト気味にある。少な

    くとも20年より悪化する

    要因は見当たらない。エ

    チレンプラントの稼働も

    足元の90%超の高稼働を

    維持して推移するだろ

    う」と展望し、「石化製

    品は日常のあらゆる分野

    で多岐にわたり使用され

    ている。我々石化業界は

    安全・安定運転を継続

    し、生活に必要な製品の

    供給責任を果たしてい

    く」と改めて強調した。

    20年のエチレン生産

    は、バブル経済崩壊後の

    円高不況に見窑われた93

    年以来、27年ぶりに60

    0万㌧を下回り、前年比

    7・7%減の592万3

    500㌧となった。この

    ニュートラル

    技術力で牽引

    経済回復へ期待感

    石 化 協和賀会長

    和賀昌之会長

    ことについて和賀会長

    は、「年前半の減産が響

    き通年の実績を押し下げ

    たもので、6月以降7カ

    月連続で90%を超えてい

    る」と回復途上にあるこ

    とを示す一方で、「老朽

    化問題を抱えるなかでの

    プラント高稼働は事故の

    リスクを高める。常態化

    したリスクだが、我々は

    常に安全に気を張ってい

    る」と語った。

    50年カーボンニュート

    ラルに向けた動きについ

    て「すべての有機物を燃

    やさないということは不

    可能なこと」としたうえ

    で、「GHG(温室効果

    ガス)排出削減の努力を

    続けると同時に、ビヨン

    ドゼロに向けたイノベー

    ションが不可欠で、これ

    をリードするのは、ケミ

    カルリサイクルやCC

    U、人工光合成などの技

    術を有する石油化学業界

    だ」と意欲を示した。 

     三菱ガス化学は、スマートフォンなどに使われる半導体パッケージ基板材料の高機

    能品を拡充する。特に第5世代移動通信システム(5G)対応スマホの基板に求められ

    る「低反り材料」や「高周波対応材料」の需要が拡大しており、これら高機能品を開

    発し市場投入することで事業拡大を加速させる。半導体基板の世界市場は19年から24

    年まで年平均9%の成長が見込まれる中、市場全体を上回る成長率を確保する考えだ。

     三菱ガス化学は、耐熱

    性や誘電特性に優れる独

    自開発のビスマレイミド

    ・トリアジン(BT)樹

    脂を使ったプリプレグ

    (ガラスクロス基材に樹

    脂を含浸させたシート)

    と、その両面に銅箔を施

    した銅張積層板を「BT

    材料」と称し、半導体基

    板向けに展開している。

     BT材料は優れた耐熱

    性や電気絶縁性が高く評

    価され、98年に半導体基

    板に本格的に採用されて

    以来、重大な品質問題が

    なく、顧客から高い信頼

    を獲得し、世界の半導体

    基板材料市場で約4割の

    シェアを持つ。特に「軽

    薄短小」な用途に強く、

    スマホなどのモバイル向

    けが全体の約5割、サー

    バーを含むパソコン関連

    向けが約4割を占める。

     BT材料の売上高に占

    めるプリプレグと銅張積

    層板の割合は現在約4対 5

    G向け高機能品拡充

    三菱ガス

    化  学

    年9%超の成長目指す

    半導体基板材料

    6。近年、銅張積層板の

    売上高がほぼ横ばいで推

    移しているのに対し、プ

    リプレグの売上高が拡大

    し、割合が高まってい

    る。5Gの進展や電子機

    器の小型化・高機能化を

    背景に、基板の多層化、

    複数の基板を積層するシ

    ステムインパッケージ

    (SiP)などの高密度

    実装が進み、これら基板

    の材料として高機能プリ

    プレグの引き合いが活発

    化しているためだ。さら

    に今後需要増が見込まれ

    る5G(ミリ波)対応ス

    マホには多層構造のアン

    テナインパッケージ(A

    iP)が1台当たり2〜

    4個搭載されるため、高

    機能プリプレグの使用量

    が大幅に増える。

     高機能プリプレグは、

    基板の反り対策に使われ

    る熱膨張率10

    未満の低

    反り材料や、高周波数帯

    域での信号損失を低減す

    るために使われる電気特

    性に優れる高周波対応材

    料などがある。20年度は

    高周波対応材料の販売が

    本格化したことで、BT

    材料の売上高に占める高

    機能品比率は約7割(19

    年度は5割強)に高まる

    見通し。

     新たな用途として、5

    Gの本格普及に向け整備

    が進むスモールセル(小

    型基地局)のアンテナモ

    ジュール(プリント配線

    板)向けに新規BT材料

    を提案中。電気特性によ

    り優れ、屋外設置時の温

    度変化に対する耐性を備

    えた新規材料を開発し

    た。スモールセルに使わ

    れるプリント配線板には

    AiPと同様に多数の部

    品が実装されるため、材

    料の大きな需要が見込ま

    れる。

     BT材料の生産拠点と

    して、子会社のMGCエ

    レクトロテクノ(ET)

    の工場(福島県西郷村)

    と13年に稼働したETの

    タイ子会社ETTを有す

    る。

     ETはマザー工場とし

    て新製品の量産化、先端

    ・高機能・少量多品種の

    生産を担い、ETTは大

    量少品種の生産を担当し

    ている。ETTではプリ

    プレグ設備を追加導入し

    22年4月に稼働する予定

    で、新たに高機能プリプ

    レグの生産を始める。

     宇部興産は、ポリアミ

    ド6樹脂(PA6)の押

    出成形用において日本

    (宇部工場)、タイ、ス

    ペインの3拠点に重合設

    備を持つ優位性を生かし

    た共重合品の生産最適化

    に取り組む。押出用の共

    重合品のうち、共押出に

    よるシュリンクフィルム

    向けはスペインを中心

    に、2軸延伸によるラミ

    ネート用の基材向けは日

    本、タイを中心に生産す

    ることを検討中だ。機能

    面で差別化を図りなが

    ら、生産性の向上を追求

    していくことで一層の競

    争力強化へつなげる。

     同社はPA6の世界的

    大手で、宇部(重合能力

    は年産5万3千㌧)、タ

    イ(7万5千㌧)、スペ

    イン(7万㌧)に主原料

    カプロラクタム(CP

    L)からの一貫生産体制

    を持つ。PA6は世界需

    要の約7割が射出用だ

    が、同社では販売量の過

    半が押出用で、日本と欧

    州を中心に高いシェアを

    持つ。食品包装フィルム

    を中心とする押出用は、

    世界的なフードロス削減

    の動きが需要にも影響し

    ているものの、景気変動

    の影響は少なく、コロナ

    禍でも個人消費の伸びに

    より比較的堅調。

     なかでも軟包装向けの

    共重合品は世界的にも競

    合メーカーが少なく、有

    力企業はBASFくら

    い。これを差別化と競争

    力の強化でさらに拡大

    し、21年度には世界シェ

    ア5割(現在は約4割)

    を確保したい考え。共重

    宇部興産

    共重合品の競争力向上

    3拠点で生産最適化

    押出用PA6

    合品はシュリンクフィル

    ム向けとラミネート用基

    材向けを中心とし、それ

    ぞれ3拠点体制を生かし

    た最適生産によって収益

    性を高めていく。

     押出用は中・高粘度

    (射出用は低粘度)のポ

    リマーが適する。射出用

    は仮にポリマーを外部調

    達してもコンパウンド技

    術で差別化できるが、押

    出用はポリマー技術が拡

    販の大きなポイント。ポ

    リマーの自社生産も押出

    用に重点を置き、能力増

    強も計画していたが、現

    在はCPLの採算悪化も

    あって収益向上に軸足を

    移している。3拠点での

    最適生産もその一環。

     並行してポリマー技術

    による差別化にも注力す

    る。シュリンクフィルム

    向けではシュリンク性を

    従来品比で5割ほど向上

    したポリマーの開発も進

    めており、近々市場投入

    しハイシュリンクフィル

    ム向けとして拡大を目指

    す。2軸延伸向けでは透

    明性などを維持しなが

    ら、顧客の生産性向上に

    つながる滑り性、耐熱

    性、耐ピンホール性など

    の向上に取り組む。

     EPDMなど各種特殊

    合成ゴムの需給がひっ迫

    している。自動車部品メ

    ーカーをはじめユーザー

    の在庫積み増しの動きも

    重なり、実需以上のオー

    ダーが寄せられている。

    新型コロナの影響で20年

    前半に低調だった各社の

    販売数量は急速に盛り返

    している。

     住友化学の千葉工場の

    年産4万㌧EPDMプラ

    ントは昨年9月ごろから

    フル稼働に移行。EPD

    Mはウェザーストリップ

    など自動車部品に使わ

    れ、同社の場合、出荷の

    7〜8割が自動車分野。

    自動車生産の再開を背景

    ユーザー在庫

    実需以上の状況

    特殊ゴム需給ひっ迫

    に足元は需要に供給が追

    いつかない状況だ。

     CRを手がける東ソー

    もインド向けを牽引役に

    フル生産フル販売が続

    く。先行きの調達リスク

    に備えようとユーザーの

    在庫の積み増しの影響も

    あり、ホースなど自動車

    部品用途、医療用手袋用

    途、その他工業用途は軒

    並み好調。南陽事業所で

    は今秋デボトル増強が完

    了し、生産能力は現状比

    3千㌧増の年3万7千㌧

    となる。特に医療用手袋

    用途の需要の伸びに対応

    していく方針だ。

     水素化ニトリルゴムや

    アクリルゴムなど耐油性

    特殊合成ゴムの世界最大

    手である日本ゼオンも実

    需以上という出荷状況と

    なっている。徳山工場で

    は定修明けの自社の在庫

    積み増しも加わって当

    分、フル稼働が続く見通

    しだ。

     タイヤ向け汎用ゴムも

    特殊合成ゴムと同様の状

    況。自動車部品から若干

    遅れ、タイヤ生産が持ち

    直しており、それに伴い

    ESBRや低燃費タイヤ

    に使うS―SBRの需要

    が急速に回復。S―SB

    Rについては現在の状況

    が続けば21年通年の需要

    は19年並みに戻ると予想

    されている。

     需給ひっ迫は次第に落

    ち着き、ウエルバランス

    に基調が転換することに

    なるが、タイミングとし

    ては3〜4月の年度末が

    一つの目安となってい

    る。ただ、輸出分につい

    ては国内向け優先の出荷

    調整に加え、コンテナ不

    足を背景に足元の状況は

    長期化する見通し。

     現在、多くのメーカー

    が海外ユーザーの旺盛な

    需要への対応に苦慮して

    おり、その影響から国内

    外ともユーザーは現地調

    達が基本という。物流会

    社の情報などから場合に

    よっては4〜6月期も事

    態は解消されず、季節性

    からコロナ感染が弱まり

    生産活動が活発化する夏

    場には海外の需給ひっ迫

    の度合いが増す可能性が

    ありそうだ。