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グローバル化時代の 日本企業のCFOの役割

グローバル化時代の 日本企業のCFOの役割 · グローバル化時代の日本企業のcfoの役割 | 1 本報告書を作成するにあたり、アンケート調査にご協力いただいた100人の

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グローバル化時代の 日本企業のCFOの役割

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1 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

本報告書を作成するにあたり、アンケート調査にご協力いただいた100人の日本企業のCFOの皆さまと、インタビューを通して示唆のある多くのコメントをいただいた以下のCFOの皆さまに深く御礼申し上げます。

伊藤忠商事株式会社 代表取締役 副社長執行役員 CFO 関 忠行氏

花王株式会社 執行役員 会計財務部門 統括 青木 和義氏

日清食品ホールディングス株式会社 取締役・CFO 横山 之雄氏

日本オラクル株式会社 執行役 副社長 最高財務責任者(CFO) 野坂 茂氏

Contents

はじめに 2

エグゼクティブサマリー - CEOの参謀としてのCFOの役割 3

経済環境の変化と グローバル企業の戦略テーマ 5

欧米企業のCFOの役割の変化 8

日本企業のグローバル展開に おける戦略・組織的な課題 10

日本企業のCFOのあるべき姿 - EYからの提言 13

日本企業のCFOの課題と解決策 19

添付資料

CFOサーベイ2013の結果要約 27

関連するEYのソートリーダーシップ 41

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2 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

はじめに 2008年の金融危機以降、先進国市場の

需要が伸び悩む中、グローバル経済にお

いて、BRICsさらにポストBRICsなどの

新興国市場がその存在感を高めています。

このような経済環境の変化は、企業の行

動パターンにも影響を与え、新興国に対

する企業の進出の勢いを加速させていま

す。新興国の経済力の向上は、現地での

需要を喚起し、新興国は今や単なるボ

リュームゾーンとしての位置づけから利

益を創出する市場へと変化しています。

この変化の時代に、日本企業はグローバ

ル市場で勝ち抜いていくために、CEOを

頂点とするトップマネジメントの強力な

リーダーシップのもと、大胆なグローバ

ル経営改革を推進することが求められて

います。

私どもEYは、経営の変革期を迎えた日

本企業がグローバル経営改革を実行する

にあたり、経営に関わるあらゆる情報が

集まり、ビジネス全体を俯瞰することが

できるCFOが果たす「参謀的」役割は大

きいと考え、この度日本企業のCFOの皆

さまを対象にアンケート調査(以下、

CFOサーベイ2013*1)とインタビュー

を実施しました。本報告書は、経営のグ

ローバル化が加速する中、日本企業の

CFOがどのような役割を果たすべきか、

そして、あるべき役割を目指すための課

題をいかに克服していくべきかについて、

CFOサーベイ2013の結果とCFOへのイン

タビュー結果を分析し、考察しています。

本報告書が、日本企業のCFOの皆様が、

自社の経営課題への取組みを立案・実行

する上で一助になれば幸いです。

新日本有限責任監査法人 理事長 EY Japan エリア・マネージング・パートナー 加藤 義孝

*1 調査概要については添付資料27ページ「CFOサーベイ2013の結果要約」をご参照ください。

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3 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

エグゼクティブサマリー - CEOの参謀としてのCFOの役割

企業活動のグローバル化により、不確実性の高い経営環境に

おける企業価値最大化のための最適資源配分や事業ポート

フォリオの見直し、リスク管理といった経営課題への対応が

かつてないほど重要になってきています。世界の成長市場が

新興国市場に移行し、競合企業の新興国市場でのゴールがボ

リューム追求から利益追求へと変化する中、グローバル化の

道半ばの日本企業にとって、CEOのリーダーシップのもと、

各市場における市場機会と事業リスクを適切に見極め、迅速

な経営資源配分を実施していくことは待ったなしの状況にあ

ります。この経営環境の変化により、社内外においてCFOの

戦略的役割の重要性に対する認識が高まっています。社内で、

経営に関わるほぼすべての情報にアクセスできるというポジ

ションにあるCFOが、企業価値を最大化するために「CEOの

参謀」として果たすべき戦略的役割は大きく、その実現に向

けてCFO及び経理・財務組織の変革を行う絶好のタイミング

と言えます。CFOサーベイ2013では、98%のCFOが経理・

財務部門を積極的に改革していきたいと回答しており、改革

実行の必要性を強く認識していることがわかりました。

日本企業のCFOは、経理・財務部門出身者が多くビジネスの

理解が不足していること、リストラによる人員削減で経理・

財務部門の人材が不足しているなど、様々な課題を抱えなが

らも、期待される戦略的役割を果たすべく高い意識を持って

業務に取り組んでいます。私どもEYは、事業構造の変革期

にある日本企業のCFOが企業価値最大化のため、「CEOの参

謀」として積極的に果たすべき戦略的役割として、次の3つ

が特に重要と考えます。

CEOの戦略的意思決定支援

CFOは、CEOとの連携を強化し、CEOの戦略策定・実行を支

援することが求められます。グローバル企業と伍して戦い生

存競争で勝ち残るためには、CEOの強いリーダーシップのも

と、新興国市場をターゲットとした成長戦略を策定し、実行

する必要がありますが、CFO はCEOが戦略的意思決定を行う

ために必要となる様々な経営情報提供やアドバイスを行うこ

とで、企業価値最大化に貢献することができます。

事業への積極的な関与

CFOは、CEOがコミットした連結財務目標を達成にするため

に、経営戦略をグループ全体に浸透させ、事業部門に対する

予算の配分やその達成状況のモニタリングを行い、必要に応

じて事業部門のコスト削減等施策推進においてアドバイザー

的役割を果たすことによって事業への関与を高めていく必要

があります。通常、事業部門の予実管理・ボトムラインの管

理(コントロール機能)については事業部内の経理・財務部

門が直接的責任を担っているため、CFOと事業部門の連携を

強化し情報共有化を図らない限り、この役割を果たすことは

困難と言えます。先進企業の中には、事業部内のコントロー

ル機能についてもCFOの管轄下に置くことによってCFOが事

業部門の情報へのアクセス等に対する権限を保持し、事業と

機能のマトリクス運営を行っているケースも見られ、当該役

割に対する一つの成功事例として参考にすることができます。

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4 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

CFOが上記役割を円滑に果たすためには、CFOが、従来の

「経理・財務部門のヘッド」から「CEOの参謀」としての役

割に進化できるよう、CEO自身の意識改革と組織内でのリー

ダーシップが鍵となります。また、同時に、CFO及び経理・

財務部門自身も、事業へ積極的に関与し、企業価値最大化に

貢献していくという意識改革が必要です。日本企業は、CEO

のリーダーシップのもと、CFO及び経理・財務部門の組織的位

置付けの変革、ビジネスに精通した次世代CFOの育成に取り組

むとともに、経営情報の「見える化」や連結ベースの経理・

財務機能の効率化を進めていくことにより、CFOが戦略的役割

を果たしやすい環境作りをしていくことが求められます。

ステークホルダー(株主・投資家)とのコミュニケー

ション

新興国市場への進出により、対処すべきリスクや株主・投資

家の属性等が多様化し、株主・投資家等外部のステークホル

ダーに対する企業の説明責任が高まっています。日本企業で

は、従来よりCEOが中心となり、株主・投資家とのコミュニ

ケーションを行ってきましたが、成長率や収益率の異なる市

場間における資源配分の合理性の説明など、その難易度は上

がっており、今後ますますCFOが果たす役割への期待は高ま

ることが予想されます。CFOはCEOとともに、企業業績の将

来予測や投資家の意思決定に資する有用な情報開示を積極的

に行い、外部のステークホルダーの期待に応えていく必要が

あります。

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5 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

経済環境の変化とグローバル 企業の戦略テーマ

グローバルでの生存競争に打ち勝つために、企業は新たなビジネスモデルを構築し、持続的成長を実現する必要があります。企業がグローバル化を成功させるために重要となる戦略テーマとは何でしょうか。

成長市場と成熟市場間の経営資源配分のバランス

企業の究極的な目標は、企業価値を最大化することです。

そのためには限られた経営資源を有効活用する必要があり

ます。経営資源の配分の巧拙は、成長市場と成熟市場、短

期的リターンと長期的リターン、売上拡大と利益率の向上

といった、多くのトレードオフの解消にかかっています。

CEOが策定した経営戦略に基づき、事業の選択と集中を行

い、リスクとリターンのバランスを取りながら成長分野に

優先的に資源配分を行っていく必要があります。不確実性

が高く、競争が激化する現代においては、経営のスピード

化を図り、環境の変化に応じて機動的に資源配分の見直し

を行い、経営資源を最大限に活用できた企業のみがグロー

バル市場で勝ち残ることができるといっても過言ではない

でしょう。

しかしながら、実際には多くの企業が様々な市場間で最適

なバランスをとることに苦労しています。なぜなら、新た

な市場に資源を投入するためには、すでに展開を行ってい

る成熟市場等で利益を獲得する必要があるため、成熟市場

等への戦略的投資をゼロにしてしまえばいいという単純な

問題ではないからです。

EY がグローバルで2012年に実施した成長市場と成熟市場

間の資源配分に関するCFO調査「A tale of two markets

Telling the story of investment across developed and

rapid-growth markets *2」(以下、EYグローバルサーベイ

2012)によれば、CFOの87%は、急速に成長する他の市場

があるにもかかわらず、成熟市場への資源配分を増やすこ

とに対して合理的に説明することは難しいと答えています。

一方で、CFOの63%は、短期的には成熟市場の方がより大き

なリターンが稼げる状況において、成長市場への投資を増

やすことに対して合理的に説明することは難しいと答えて

います。

*2 調査概要については添付資料41ページ「関連するEYのソートリーダーシップ」をご参照ください。

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6 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

新興国での超過収益の獲得

政治的不安定性等によりビジネスの不確実性が高い新興国

市場への進出は多くのリスクを伴うものであり、資源配分

に関する判断をより困難にさせるものの、グローバル企業

のCEOの多くは、成長を維持するために新興国市場に目を向

けています。昨今BRICs市場成長率が鈍化しているとはいえ、

図表1の通り将来的な成長予測を踏まえれば、新興国市場が

依然魅力のある市場であることには変わりはありません。

企業が収益を拡大し、成長を維持するために、新興国市場で

超過収益を獲得することは、重要な課題であると言えます。

図表1: BRICs諸国は今後も成長率で他国市場を上回る

*3 調査概要については添付資料41ページ「関連するEYのソートリーダーシップ」をご参照ください。

実質GDPの平均成長率( %)

12

10

8

6

4

2

0

-2

-4

2007 20091999 2001 2011 2013 20152003 20051995 1997

出典 : 国際通貨基金の世界経済見通しデータベース( 2012年10月)、2012年12月現在

「 グローバル化指数」対象国全体のGDP成長率 BRICs諸国のGDP成長率実質GDPの平均成長率(%) 「グローバル化指数」対象国全体のGDP成長率 BRICs諸国のGDP成長率

(出典:常識の枠を超えて 経済のグローバル化と新たな成長機会 *3)

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7 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

事業リスク管理体制の高度化

新たな市場への進出やM&Aを通じたグループ子会社数の増

加により、企業グループ全体のリスクエクスポージャーは

高まっています。ローカルへの権限移譲を進める一方で、

市場環境の変化に対応して迅速な戦略修正を可能とする本

社のリスク管理体制を整備することが、グローバル化を成

功させる上で重要な取組みとなります。

先進国市場と新興国市場間で資源配分を最適化し、株主・

投資家に対して、ハイリスク・ハイリターン市場への投資

成果を説明する責任やリターンを還元する責任を果たすた

めに、本社のリスク管理体制を高度化する必要があります。

全社共通の視点でリスク管理を行うことで、体力を上回る

リスクテーキングや、特定の国・地域・事業分野に対する

過度なリスクの集中を回避し、資源配分に見合ったリター

ンを確保することが可能となります。

は、グループ横断的に規定された主要18のリスクを集中管理すると共に、新たに発生するリスクに対応するためカンパ

ニー単位・全世界ベースで定期的にリスクアセスメントを実施しています。また、社内の会議体など様々な機会を通

じて、CFO及び各カンパニーCFOが事業の選択と集中、財務目標の達成、リスクアセット等に関する助言を行ってい

ます。例えば、ALM委員会の中で、年に1度各カンパニーCFOと経営企画部長が参加するカンパニー別BS(貸借対照

表)分析会を行っており、BSの内容分析・時系列分析・懸念資産など全カンパニーの情報・分析が出揃います。BS分

析会の資料は、社長とカンパニープレジデントが参加する経営戦略会議においても事業の選択と集中の経営判断に活

用されるなど、CFOによる全社のバランスシート・マネジメントに有効に活用されています。

当社グループの海外事業については、国別のリスク管理、採算管理を行っています。すなわち、カントリーリスク、

信用リスク等を考慮して「国枠」(国別の投資上限)を設け、特定国への投資集中リスクを排除するとともに、国

別・業種別のハードルレート(コーポレートが各事業に要求する期待リターン)を設定しています。各事業会社の主

要業績指標について定期的にモニタリングを徹底するとともに、不測の事態が起きた場合には、各国の財務担当部署

や世界4極のグループ金融統括会社より影響分析の内容が遅滞なくCFOに報告される仕組みになっています。

伊藤忠商事株式会社

代表取締役 副社長執行役員 CFO 関 忠行氏

中期経営計画で対外公表している財務目標の達成に向け、全社的な資産効率・資本効率を

維持しながら、選択と集中を推進するため、CFOは重要な役割を果たしています。当社で

は2000年代以降、全社的な事業ポートフォリオ管理の改善に取り組んできました。現在

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8 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

欧米企業のCFOの役割の変化

日本企業と比較して株主・投資家からの業績達成プレッ

シャーが大きい欧米企業では、マネジメントにとって企業

価値を最大化するための最適な資源配分の必要性はもとも

と高いものでした。欧米企業のCFOは、CEOが経営戦略を策

定するに際して、財務的観点から助言を行い、戦略実行後

は経営指標のモニタリングを行い、投資の成果をタイム

リーに報告することで、CEOの迅速な戦略修正をサポートし

てきました。そして、CFOがその役割を果たす上で必要な経

営情報を収集するためのツールとしての情報システム構築

を積極的に行ってきたため、グローバルレベルでの経営情

報の「見える化」(可視化)は従来より日本企業に比べて

かなり進んでいると言えます。

さらに、企業活動のグローバル化は、欧米企業のCFOの役割

にも変化をもたらしています。資源配分について根本的な

シフトが起こり、CEOは先進国市場と新興国市場の両方に目

を向けたマネジメント、すなわち新興国市場でチャンスを

捉えることと、先進国市場において利益の源泉を固守する

という相反するマネジメントを同時に行うことが求められ

ており、それに伴いCFOに対する経営関与に関する期待度も

次のとおり変化しています。

不確実性の高い市場に対する投資評価基準の精緻化

CFOは、CEOが策定した成長戦略を実現するために、確固と

した財務指標に基づきリスクとリターンを評価し、最適な

資源配分を達成する役割を担います。

EYグローバルサーベイ2012では、66%のCFOが成長市場へ

の投資について、データが不十分であったり透明性を欠く

ため確固とした評価基準を構築することは難しいと答えて

います。欧米企業のCFOは、こうした課題に対応し、新興国

市場と先進国市場間で最適な資源配分を行うために、新た

な評価基準の導入や評価頻度の向上など、環境変化に応じ

て資源配分方法の見直しを行っています。

「投資意思決定を行う前に、ベストケースとワーストケース

を予見するために、ストレステストや感応度分析を実施して

います。それらの情報に基づき長期投資決定を行うことがで

きるのです。」( Paulo Prignolato, CFO of Votorantim

Metas, an industrial conglomerate)

「6カ月に1回、投資資産ごとに10年間の内部収益率(IRR)

を計算し、加重平均資本コスト(WACC)を下回る場合、資

産の活用ができていないと判断され、売却が検討されま

す。」(Peter Allen, CFO of property group Westfield)

(出典:EYグローバルサーベイ2012)

事業部門のリスクテーキングのマインドを醸成する

ための業績評価指標の見直し

利益をあげている先進国市場から短期的には損失が生じる

可能性のある新興国市場へ資源を振り分けることは、事業

部門やグループ会社等現場の抵抗を生み、実現が困難とな

る場合があります。この難易度の高いトレードオフを実現

するために、CFOは企業の成長戦略を現場に浸透させ、資源

を再配分する根拠や正当性に対する理解を促す必要があり

ます。

「大局を示し、なぜその市場への投資がビジネスにとって

必要かを理解してもらうことが重要です。適切な業績評価

指標を設定すれば、現場のマネージャーたちは、次第にそ

の投資の合理性を理解するようになるでしょう。」(Jon

Biro, Exective Vice-President and CFO at Consolidated

Graphics, a commercial printing company)

(出典:EYグローバルサーベイ2012)

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9 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

成長市場への資源配分の合理性説明に関するステー

クホルダーとのコミュニケーションの改善

新興国市場への進出は高いリスクを伴うものであるため、

企業の価値創造に向けての戦略や株主還元策についてのCFO

の説明責任はより重要性が高まっています。もはや、過去情

報を中心とするアニュアルレポートといった財務報告の枠組

みでは株主・投資家の情報要請に応えているとはいえず、多

くのCFOは、投資判断に資する「粒度の高い」(granular)

情報の提供やコミュニケーション頻度の向上など、株主・

投資家等外部のステークホルダーとのコミュニケーション

方法の見直しを行っています。

EYグローバルサーベイ2012によれば、74%のCFOが成長市

場への投資増加に対応して投資家等とのコミュニケーショ

ン頻度を増やす必要があると答えており、64%の投資家が成

長市場と成熟市場の将来見通しに関するより「粒度の高

い」情報提供をCFOに期待していると答えています。

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10 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

日本企業のグローバル展開における 戦略・組織的な課題

日本企業は、過去において高い商品開発力や高性能・高品

質を武器に、国内市場を中心に成長を維持してきました。

しかしながら、継続的な人口減少や高齢化に伴う需要減少

など、国内市場を取り巻く環境は厳しく、日本企業にとっ

ても、アジアをはじめとする新興国市場の成長の取り込み

は重要なテーマとなっています。欧米企業を始めとする競

合企業の新興国市場の捉え方が、ボリュームゾーンから、

利益獲得市場へと変化する中、いまだ、海外市場への積極

投資に慎重な多くの日本企業にとって、グローバル競争で

生き残るための組織風土の改革は待ったなしの状況にあり

ます。私どもEYは、日本企業がグローバル競争において持

続的成長を果たすための戦略・組織的課題は次の3点と考え

ます。

グローバルレベルでの最適機能配置と資源配分

新興国の台頭に伴う市場の多極化、消費地・生産地の多様

化により、日本企業にとっても、顧客ニーズへの迅速な対

応やコスト最適化のため、研究開発、マーケティング、調

達、製造、販売といったバリューチェーンのグローバルレ

ベルでの最適配置が課題となっています。日本国外のバリ

ューチェーンの割合が高まるにつれ、国、地域、事業とい

った単位での個別最適と、グループ全体での経営効率の追

求やブランド価値の向上といった全体最適のバランスの巧

拙が、グローバル競争を勝ち抜くためますます重要となっ

ています。従来、日本企業は、構造改革が必要な国内事業

への配慮や海外各地域の事業動向に関するリタラシーの低

さなどから、国、地域、事業ごとの資源配分の優先順位を

決めにくい体質にありました。しかし、選択と集中を実施

せず、総花的、あるいは国内偏重型の資源配分を行ってい

ては、海外競合企業との業界ポジション格差は拡大するば

かりです。地域、事業間のコンフリクトを調整し、資源配

分の優先順位を決定できるのはCEOに他なりません。日本企

業は、改めてグローバルレベルでの経営ビジョンと成長戦

略をグループ内で共有し、全体最適の観点から経営資源を

本社で一括管理し国内と海外、成長市場と成熟市場といっ

た異なる成長ステージの市場に対するダイナミックな資源

配分をしていくべきです。

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11 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

32

35

37

41

41

42

43

47

50

51

57

67

資金調達

財務報告

財務管理

法規制の順守

プロジェクト管理、事業変革計画

キャッシュ・フロー

IR及び利害関係者の管理

新興成長市場へのフォーカス

コストマネジメント

コーポレートガバナンス

マネジメント、役員会、成長戦略への助言

リスクマネジメント

有効回答数:100人、%表示

図表2: 3年前と比較してより重要となったタスク

リスクを取ること

欧米企業と比較して日本企業の新興国進出が遅れているこ

との一因として、リスク許容度が低いことがあげられます。

リスクとリターンの定義や情報の「見える化」が不十分で

あるために、投資の成果をタイムリーに評価し、機動的な

資源配分の見直しを行う体制が構築できず、リスクを伴う

投資に対して、過度に慎重になる傾向があります。新興国

市場等新たな市場で超過収益を確保し、成長を維持するた

めには、日本企業特有の完璧主義の呪縛から解放され、仮

説思考で戦略を立案、相応の仮説検証度で戦略を実行する

一方で事業のモニタリングを強化し、機動的に戦略修正が

できる体制構築が必要となります。

図表2の通り、「新興成長市場へのフォーカス」が3年前よ

り重要になったと47%のCFOが答えており、その重要性は認

識されていると言えます。

(出典:CFOサーベイ2013)

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12 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

花王株式会社

執行役員 会計財務部門 統括 青木 和義氏

トップの方針として、まず進出してみてリスクをとる、という意思決定がされることが多

いといえます。現地に進出することで、真のニーズが見えてくることもあるためです。

日本企業は、ダイナミックな資源配分を実現し、グローバル

市場において新たな成長モデルを確立し、企業価値創造を実

現すべき時に来ています。そのためには、CEOの強力なリー

ダーシップと、それを支える参謀的CFOの役割が重要になり

ます。

PDCAサイクルの徹底

前述のリスクテーキング体質への変革は、同時に事業のモ

ニタリング体制強化を担保することによりなされます。限

られた経営資源を有効に活用し、企業価値を創造していく

ために、PDCA(Plan(計画)、Do(実行)、Check(評

価)、Act(改善))サイクルを徹底し、機動的に戦略の見

直しや資源の再配分を行う必要があります。投資額に見

合った成果を上げていない事業からの撤退を決定するため

の撤退基準の設定などもこれに含まれます。

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13 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

日本企業のCFOのあるべき姿 - EYからの提言

日本企業のCFOは、CEOがダイナミックにグローバルレベルの経営資源の配分を行い、ステークホルダーの期待に応え企業

価値最大化を果たすことをサポートするため、「CEOの参謀」として、以下の3つの役割を果たすことが必要と考えます。

ステ

ーク

ホル

ダー

(株

主・

投資

家等

グループ会社A (国内)

グループ会社B (国内)

グループ会社C (海外)

グループ会社D (海外)

連結グループ

事業部門

事業A 事業B 事業C

A B A B C B A C

本社

グループ会社

戦略的意思決定支援 株主・投資家とのコミュニケーション

事業への積極的な関与

企業価値最大化の

期待

リターン

CEO 業績達成責任

経営資源配分の決定

CFO CEOの参謀として企業価値最

大化の支援

■「CEOの参謀」として果たすべき役割

• CEOの戦略的意思決定支援

• 事業への積極的な関与

• ステークホルダー(株主・投資家)とのコミュニケーション

図表3: 「CEOの参謀」としてのCFOの役割

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14 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

CEOの戦略的意思決定支援

CEOの戦略的意思決定支援とは、CFOによるマネジメント

レポート作成・提供と経理・財務の視点に基づく戦略的ア

ドバイスに関する業務を意味しています。CFOはほぼ全て

の部門に関する主要経営情報にアクセスできる社内で唯一

のポジションであり、全社最適の観点から、CEOに対し情

報提供や助言を行うことは非常に重要な役割の一つと言え

ます。当該役割の重要性については、図表4の通り、「マネ

ジメント、役員会、成長戦略への助言」が上位2位(57%)

に位置づけられることからも明らかなように、日本企業に

おいて認知されつつあります。

例えば、各事業部門が主導するM&A案件や設備投資計画は、

事業部門の部分最適な視点に基づく判断に陥るリスクがあ

り、CFOが、成熟市場と新興市場、短期・長期的なリター

ン等、二律背反の関係にある選択肢の中から、全社視点で

分析の上、CEOの戦略的意思決定を支援することが具体的

な役割として挙げられます。全社の事業ポートフォリオ方

針に基づく不採算事業の撤退等についても、事業部門とは

独立した立場にあるCFOだからこそ適切に判断しうる立場

にあると言えます。

32

35

37

41

41

42

43

47

50

51

57

67

資金調達

財務報告

財務管理

法規制の順守

プロジェクト管理、事業変革計画

キャッシュ・フロー

IR及び利害関係者の管理

新興成長市場へのフォーカス

コストマネジメント

コーポレートガバナンス

マネジメント、役員会、成長戦略への助言

リスクマネジメント

有効回答数:100人、%表示

図表4: 3年前と比較してより重要となったタスク

(出典:CFOサーベイ2013)

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15 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

また、当該役割を果たすためには、連結ベースの予算・実

績数値を含む主要業積指標(Key Performance Indicator :

KPI)を、高い頻度で(例:月次・週次)、スピーディーに

(例:営業日10日で連結実績数値作成)かつ様々な分析角

度(例:製品別・事業別・地域別)で、「見える化」され

ていることが不可欠と言えます。例えば、グローバルで複

数の生産拠点・調達拠点がある場合、同一製品や原材料の

生産・調達コストや在庫量の比較分析結果をスピーディー

にCEOに提供することによって、どの生産拠点の生産量を

増産・減少すべきか、どの拠点で調達量を増加・減少すべ

きかという抜本的なコスト削減の経営意思決定をCEOが行

うことが可能となります。

CFOの情報提供機能は、事業規模が大きくビジネスが複雑

なグローバル企業であればあるほどその実践の難易度は高

く、その実現可能性はシステムインフラの整備状況やCFO

の権限に依存している部分も大きいと言えます。つまり、

全社的に経営情報の「見える化」が進んでおり、CFOがこ

れらの情報にアクセスできることが当該役割を果たす上で

の必要条件と言えます。

事業への積極的な関与

CFOによる事業への積極的な関与とは、連結財務目標の達

成のため、各事業部の予算達成状況をモニタリングすると

ともに、必要に応じて、事業部門の施策推進においてCFO

自身がアドバイザーとして積極的に関与することを意味し

ます。

日清食品ホールディングス株式会社

取締役・CFO 横山 之雄氏

CFOは、従来、ブックキーパーとして過去の数字を解釈する業務が中心でしたが、今後は、

数字の先に何があるかを読み解くことが必要となります。これからのCFOは、グローバ

ル・マーケットの動向をしっかりと把握しながら、各種の財務数値や経営情報を専門的な

視点から解釈・分析して、どのような方向を目指していくべきかを示すナビゲーターとし

ての役割、すなわちCEOの「ファイナンシャル・パートナー」としての機能を果たすことが重要と考えます。当社

グループのCFOとして、グローバル企業としてのポジショニングを明確にしながら、グローバル経営を支えるため

のビジネスプロセスやERPなども含めたプラットフォームを整備・構築していくことが、当面の重要なミッション

であると認識しています。

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16 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

CEOが株主・投資家にコミットした連結財務目標を確実に達

成するためには、企業戦略をグループ全体に浸透させると

ともに、各事業部・各グループ会社にその財務目標をブ

レークダウンし、達成状況を適時にモニタリングすること

が必要となります。例えば、全社的なROEを各グループ会社

に配分する場合、各社に求められるROEは均一ではなく、事

業規模や機能(製造・販売)によって、各事業部・各グ

ループ会社の数値目標はバラつきが出てくることとなりま

すが、当該指標を事業部別・会社別にモニタリングするこ

とによって、連結ベースの目標達成状況を把握し、必要に

応じて、打開策の検討とその実践のリーダーシップを発揮

できる立場にあるのがCFOと言えます。

また、CFOは単にモニタリングするだけではなく、各事業部

や各グループ会社と協力の上、その打開策推進のリーダー

シップを発揮することも求められます。当該施策は、リス

トラクチャリング、調達コストの低減等によるコスト削減

及び借入金の削減等、多岐に渡り、さらに、国内のみなら

ず、海外のグループ会社も含めて、重要なコストを連結

ベースで横串管理し、場合によっては、国別の交渉ではな

くグローバルベースの交渉によって、調達・物流等のコス

ト削減(例:取引条件の改善)を助言するなど、営業経費

削減にも踏み込むことも役割として考えられます。

上記の役割を果たす上で、事業部内の経理・財務部門との

連携は非常に重要なポイントと言えます。一般的に、事業

部内の経理・財務部門が当該事業部の予実管理・ボトムラ

インの管理(コントロール機能)に関する直接的な責任を

担っているため、両者で密接な連携が図られない限り、CFO

による連結グループ全体の財務数値の掌握は非常に困難と

言えるためです。日本企業の多くは事業軸による管理を重

視しており、CFOの事業部門に対する権限が欠如している

ケースが多く、事業への積極的な関与をしにくい状況にあ

るのが実情と言えます。先進企業の中には、事業部内のコ

ントロール機能についてもCFOの管轄下に置くことによって

CFOが事業部門の情報へのアクセス等に対する権限を保持し、

事業と機能(経理・財務、人事等)のマトリクス経営を

行っているケースも見られ、当該役割を果たす上での解決

策の一つと言えます。

日本オラクル株式会社

執行役 副社長 最高財務責任者(CFO) 野坂 茂氏

当社の経理部門は、収益部門である事業部との間で、市場環境に関する情報や各種経営情

報を共有しながら、売上高・コスト構造・販管費構造・売上利益・フリーキャッシュフ

ローといった各種の財務指標をシミュレーションしています。こうした分析データを、

CEOを含むマネジメントチームに対して提供することにより、戦略立案・実行に関する

ディスカッションを先導していくことがCFOの重要な役割と認識しています。 また、当社グループでは管理会計と財務会計が基本的に一致しているため、各事業部に「ビジネスファイナンス」と

いう担当者を配置しており、予実管理を日常的にサポートしています。「ビジネスファイナンス」担当者は、事業部

ではなく、あくまで財務部門に所属しており、ボトムラインである粗利益までを管理する役割を持っています。

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17 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

ステークホルダー(株主・投資家)とのコミュニケー

ション

株主・投資家とのコミュニケーションにおけるCFOの役割と

は、CEOが説明する戦略及びその達成状況を、財務的視点か

ら、株主・投資家が正確に理解できるようにコミュニケー

ションサポートを行うとともに、株主・投資家の期待を経営

にフィードバックすることを意味します。図表5の通り、当

該コミュニケーションはCEOが主体的な役割を果たすという

理解は依然として変わりはないものの、「会社の財務健全性

に関する信頼性を高めることがCFOにとっての主な優先課題

である(98%)」、「企業の顔としての役割を果たすことをま

すます求められている(91%)」といった項目に関して、日本

企業のCFOから非常に高い同意が得られており、当該コミュニ

ケーションの重要性に関する認識の高さを示しています。

3

13

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27

9

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64

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72

CEOよりもCFOの方が、ステークホルダーに対して企業業績

を適切に説明しうる立場にある。

財務業績管理から、複雑なステークホルダーの管理に力点を

移すことは、困難を伴う挑戦である。

非財務の経営指標はさらに重要になりつつある。

財務業績全般に関わる全ての課題について、「企業の顔」と

しての役割を果たすことがますます求められている。

CFOを対象としたトレーニングの実施は、CFOが今後直面す

る様々な課題により適切に対処することに有用である。

金融危機後、会社の財務健全性に関する信頼を高めることが

CFOにとっての主な優先課題である。

強く同意 同意 有効回答数:100人、%表示

図表5: ステークホルダーとのコミュニケーション

(出典:CFOサーベイ2013)

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18 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

日本においては、CEOとIR部門が中心となりIR活動を行って

いることが一般的と言えますが、ここでのCFOの役割は、単

なる決算説明に留まらず、短期的な視点に陥りがちなアナ

リストに対して、中長期計画や単年度の決算予想・実績等、

現在・将来のビジネスモデルを正確に理解してもらえるよ

うに継続的にコミュニケーションを図ること、及びアナリ

ストの将来予測などの投資家の期待を経営にフィードバッ

クすることによって、社内外の目標値のギャップについて

調整を図ることが考えられます。

花王株式会社

執行役員 会計財務部門 統括 青木 和義氏

経営トップは、株主・投資家の期待に応えることが使命であるという強い意識を持ち、外部公表数値の達成は必達目

標と考えています。経理・財務部門はそのための啓蒙活動を行う役割を担い、株主・投資家の期待を経営トップに随

時にフィードバックしています。また、グループ各社の業績目標達成のための助言にも積極的に関与しています。こ

うして、CEO、事業部門及び経理・財務部門が、一丸となって株主・投資家の期待に応えられるよう最善の経営努力

を尽くすことで、23期連続増配を達成することができています。

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19 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

日本企業のCFOの課題と解決策

(1) 日本企業のCFOの課題

前述の通り、不確実で変化の激しいビジネス環境での生存競争に勝ち抜くため、日本企業のCFOは「CEOの参謀」としての

役割を果たす必要性が高いと私どもは考えますが、多くの日本企業のCFOはその役割を十分に果たしているとは言い難いの

が実情と言えます。当該役割を果たす上での主な課題については、以下の3つが考えられます。

日本オラクル株式会社

執行役 副社長 最高財務責任者(CFO) 野坂 茂氏

CFOへのキャリアパスには、経理・財務部門の人材がビジネスの知識・経験を身に付けてCFOに近づいていくケース

と、ビジネス経験のある営業部門や経営企画部門などの人材が経理・財務の知識・経験を身に付けてCFOになるケー

スの二通りがあると考えられます。

CFOが果たすべき機能である、ビジネスパートナーとしての事業部への支援業務や、CEOに対して付加価値の高い情

報を発信するといった業務については、後者のキャリアパス、すなわち、現場経験が豊富な人材が、経理・財務のテ

クニックを身に付けながら、会計専門領域は部下に任せて、自らはビジネスの洞察力(Business Acumen)をさらに

高めていく、といった人材の方が適しているのではないでしょうか。

次世代のCFOを育成するためには、経理・財務に関するテクニカルな知識の習得だけでなく、子会社の経営者として

の経験を積むといったOJTを重視するキャリアパスが重要と考えています。

事業に関する知見・経験の不足

CFOが、「CEOの参謀」としての役割を果たす上での前提条

件として、ビジネスに対する深い知見及び経験に基づく洞

察力が必要となります。機動的な資源配分に関わるアドバ

イスをCEOに提供する上では、事業の将来性、事業のプロ

セス(開発、購買、製造、販売、マーケティング等)、製

品特性、競合他社と比較した上での強み・弱み等に関する

理解は非常に重要です。しかしながら、昨今においては、

会計基準変更や四半期決算対応等により企業に対する経

理・財務分野の品質要求はますます高くなる傾向にあり、

日本企業のCFOの多くは、経理・財務部門でのキャリアの

み有するケースも少なくありません。そのため、日本企業

のCFOが事業への積極的な関与を果たす上での適切なスキ

ルセットを有していないことが、「CEOの参謀」の役割を

果たす上での阻害要因の一つとなっていると言えます。

• 事業に関する知見・経験の不足

• 事業部門等の情報不足と事業関与への権限欠如

• 経理・財務部門の業務の非効率性

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20 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

事業部門等の情報不足と事業関与への権限欠如

CFOが、CEOの戦略的意思決定支援やその連結財務目標達成

のために本社/事業部門・国内外グループ会社に積極的に関

与するためには、経営情報の「見える化」とそれらの情報に

CFOがアクセスできることが非常に重要なポイントとなりま

す。当該情報は、事業別・製品別・地域別・顧客別の連結財

務数値、財務・非財務のKPIのみならず、昨今ではビジネス

インテリジェンスによる分析結果等、多岐に渡ります。

多くの日本企業では、情報の作成プロセスが全てIT化されて

いるケースは稀であり、情報の作成を経営企画部門や事業

部門が連結財務数値をベースに行っている例も少なくなく

(例:連結数値を製品別に手作業で按分)、CFOや経理・財

務部門が当該情報に直接アクセスすることが難しい場合も

多いと言えます。また、図表6の通り、事業部門に関与する

上での阻害要因として、51%のCFOが組織風土(タテ割り構

造、風通しの悪さ)と答えており、情報へのアクセス権限

自体が欠如しているケースも多いと考えられます。

10

22

27

33

38

51

58

非現実的又は過大な目標

他の事業部門との関係

スキル不足

厳しい経済環境

経理・財務部門にとって重要となりつつある

分野における経験不足

組織風土(タテ割り構造、事業部門との関係や社内でのコ

ミュニケーションの風通しの悪さ等)

経理・財務部門におけるリソース不足

有効回答数:100人、%表示

図表6: 事業部門に関与する上での阻害要因

(出典:CFOサーベイ2013)

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21 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

*4 調査概要については添付資料41ページ「関連するEYのソートリーダーシップ」をご参照ください。

経理・財務部門の業務の非効率性

経理・財務部門は、ディスクロージャー対応(連結・個別

決算・開示)等の経理業務や入出金管理等の財務業務と

いった伝統的な役割について、従来通り対応する必要があ

る一方で、「CEOの参謀」としてCEOの戦略の立案・実行を

支援するという新たな戦略的役割までカバーする必要があ

り、限られた経営資源の中でいかに対応すべきか、実務上、

非常に難しい問題と言えます。欧米の先進企業と比較した

場 合 、 付 加 価 値 の 低 い 単 純 作 業 に 関 す る 業 務 の 集 約 化

(シェアードサービスセンター化)、自動化(IT化)等の対

応が十分ではない日本企業は少なくありません。図表7の通

り、日本企業における伝統的な役割と戦略的役割の現在の

時間比は、最も多くの回答企業(24%)が30%の時間のみを

戦略的役割に使っているとの結果が得られました。一方、

EYが2010年に行った欧州 企業のCFOを対象とした調 査

「The DNA of the CFO *4」では、70%の時間を戦略的役割

に費やしている回答企業が最も多く、日本企業との相違を

如実に表した結果となっています。将来は戦略的役割の業

務割合が増加すると考えているCFOが多いという結果でした

が、その実現のために日本の経理・財務部門の業務はまだ

効率化の余地を多く残していると言えます。

図表7: 伝統的な役割と戦略的役割の業務時間比

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0% 現在 将来

時間(%)

伝統的な役割

戦略的役割

有効回答数:100人、%表示

(出典:CFOサーベイ2013)

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22 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

(2) 課題に対する解決策

今回の調査結果を踏まえ、CFOが「CEOの参謀」としての新たな役割を果たすためには、以下の現状の課題に対する解決策

が考えられます。

図表8: 日本企業のCFOの課題と解決策

• CFOに対する認識・位置付けの変革

• ビジネスに精通した次世代CFOの育成

• 経営情報の「見える化」

• 連結ベースの経理・財務機能の効率化

「CEOの参謀」として 果たすべき役割

日本企業の CFOの課題

課題に対する解決策

CEOの戦略的 意思決定支援

事業への 積極的な関与

ステークホルダー (株主・投資家)との

コミュニケーション

事業に関する知見・ 経験の不足

事業部門等の 情報不足と事業

関与への権限欠如

経理・財務部門の 業務の非効率性

ビジネスに精通した 次世代CFOの育成

経営情報の 「見える化」

連結ベースの 経理・財務機能

の効率化

CFOに対する認識・ 位置付けの変革

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23 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

CFOに対する認識・位置付けの変革

日本企業における最大の問題は、伝統的な経理・財務業務

に関する職責のみ果たせばよいという組織内のCFOに対する

認識、言いかえれば、CFOに対して戦略的役割を果たすこと

が期待されていないことにあると私どもは考えます。

欧米の先進企業のように非常に強いリーダーシップを発揮

するCEOの下では、いわゆる参謀役が必要不可欠です。一方、

日本企業では労働流動性が低くサラリーマン社長が多いこ

と、株式の持ち合いなどの特殊要因により株主・投資家の

プレッシャーが必ずしも強くない等の理由から、協調型の

CEOが多く、経営トップ自身が、必ずしも「CEOの参謀」と

しての役割をCFOに求めていないのかもしれません。しかし

ながら、前述の花王のように、株主・投資家にコミットし

た公表数値の達成のため、社長の強いリーダーシップによ

る経営が行われ、CFOはその必達目標を達成するために非常

に幅広い職責を担っているケースもあります。グローバル

化や経済環境の変化に対応して、今後は日本企業のCEOも株

主・投資家に対して連結財務目標をコミットし、その達成

に向けて経営のかじ取りを行う必要があり、参謀役として

のCFOが不可決になると言えます。

不確実性の高い経営環境下において、機動的に経営資源の

配分を柔軟かつスピーディーに変更して、グローバル企業

との生存競争に勝ち抜いていくためには、日本企業のCEOが

強いリーダーシップを発揮すべく自己改革を行い、変化に

迅速かつ効果的に対処できるよう組織を変革していく必要

があります。そして、CFO自身も「CEOの参謀」としての新

たな役割を積極的に発揮することによってCEOの強いリー

ダーシップを支援するとともに、自らの戦略的役割の重要

性に関する組織内の理解を促すことが解決策の第一歩と言

えます。

ビジネスに精通した次世代CFOの育成

「CEOの参謀」としての役割を果たす上では、事業・ビジネ

スに精通していることが必要不可欠と言え、当該スキル・

経験を持つ次世代CFOの育成を、長期的なスパンで行ってい

く必要があります。そのためには、営業や経営企画など経

理・財務部門以外の経験を積めるローテーション制度の導

入や広範な業務の経験が積める海外グループ会社への積極

的な派遣など、人事制度の見直しを行うことが考えられま

す。例えば、花王では、本社経理・財務部門トップの下で、

花王グループの経理人材育成に関するマネジメントが行わ

れており、工場経理への異動もしくは国内外グループ会社

へマネジメントとして出向する等を通じて、現場経験を有

する経理人材育成を図っています。また、各カンパニーに

CFOを配置することにより、コーポレートのCFOへの経験を

積める仕組みを設けている企業もあります。これらの先進

的な日本企業のように、次世代CFOの育成については長期的

なスパンでかつ計画的に必要なスキル・経験を積めるよう

育成プログラムや人事評価の仕組みを整備・運用していく

必要があります。

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24 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

経営情報の「見える化」

CFOが戦略的役割を果たす上では、事業部門もしくは国内外

のグループ会社の経営情報・KPIが、多様な分析角度でかつ

スピーディーに入手できるインフラ整備が必要と言えます。

連結ベースの「見える化」の実現は、多額のITインフラ投資

による情報系システム・基幹業務システムの統一のみなら

ず、業務・データ・マスタ・会計基準等の標準化・統一化

によって初めて可能となります。当該インフラは、日本の

先進的な企業でさえも、海外グループ会社までカバーでき

ているケースは多くはなく、図表9の通り、76%のCFOが、

今後、取り組むべき重要な課題として「経営管理機能の強

化」を挙げているのは、日本企業における当該分野の重要

性を示唆しています。

また、上記を前提とした場合、ITプロジェクトについても、

IT部門や経営企画部門に任せきりではなく、むしろCFOが

リーダーシップを発揮して、To beモデルの経理管理の在り

方を踏まえ、ITインフラの整備の職責を担うことも場合に

よっては必要と言えます。

図表9: CFOにとっての今後の経営課題

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不正対応

グループ組織再編(サプライチェーン、タックスプランニング他)

BPO、シェアードサービス

CFO、経理・財務部門の機能評価

ERPシステムの統一

財務報告の正確性の向上

プロセスの標準化

内部統制の効率化

キャッシュマネジメントシステムの導入、運転資本管理の改善

タックスプランニングによる税務コスト削減

会計・税務リスクのグローバル管理(本社によるマネジメント)

統一会計基準の導入

新興国等の海外進出支援(管理面のサポート)

決算早期化(人員増、プロセス、システム化等)・決算期統一

コスト削減(人員削減、システム化による業務効率化・自動化)

M&A(案件探し、M&A後の対応、他)

経営管理機能の強化(予算機能強化、統一尺度による業績評価等)

経理・財務部門の人材育成

有効回答数:100人、%表示 (出典:CFOサーベイ2013)

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25 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

連結ベースの経理・財務機能の効率化

CFOが戦略的役割を果たすため、経理・財務部門の人員数増

加による対応はある程度は必要とは言えますが、その一方で、

単純業務・付加価値の低い業務の自動化・効率化を図ること

は費用対効果の観点から必要と言えます。これは単に会計シ

ステム導入・改修による業務プロセスの自動化のみならず、

経理・財務という機能軸で業務の集約化・アウトソーシング

化を連結ベースで行うことも含まれます。

国内の効率性追求とグローバル化の同時達成、スケールメ

リットと細分化の追求、集約化と分散化のバランスは非常に

難しいテーマと言えますが、成功している欧米のグローバル

企業は、経理・財務といった管理業務をグローバルで一元化

する一方で、製造・販売・マーケティングといった業務領域

は現地に任せることによってそのバランスを図っています。

前ページの図表9によれば、経営課題として「BPO、シェ

アードサービス」と答えたCFOの割合は17%と低い結果とな

りましたが、経理・財務機能を含む管理業務・バックオフィ

ス業務の集約化・効率化・アウトソーシング化を図り、サー

ビスの質向上とコスト削減を同時に達成することは、今後、

日本企業がグローバル競争に勝ち抜くためにCFOが着手すべ

き領域の一つと言えます。

日本オラクル株式会社

執行役 副社長 最高財務責任者(CFO) 野坂 茂氏

当社グループでは、自社のアプリケーション製品を最大限に活用して、グローバルレベルで多くの経営・財務情報を

CFOが把握できる仕組み、いわゆる「見える化」を実現しています。各事業部の情報を横串で横断的に共有すること

により、事業部間でのシナジーが期待できる場合には、CFOがカタリスト(触媒)としての役割を発揮して、各事業

部に対して具体的な営業提案にまで踏み込んでアドバイスをすることも意識的に行っています。このような付加価値

の高い業務は、CFOとして重要と認識しており、なるべく多くの時間を割くように心掛けています。

また、グローバル組織の目的は、本社の意思決定が迅速に現場に伝わり、実行すべき施策を早期に展開できること、

また、コントロールが容易になり、リスク管理が十分行えることなどが挙げられます。こうした目的を実現するため

に、グローバルレベルでの業務プロセスの標準化や、ITの統合、全社を対象としたシェアードサービス化などの取り

組み、いわゆるGSI(グローバル・シングル・インスタンス)を推進することにより、全社的なコスト削減や、経営

情報の精緻化、決算早期化などを実現してきました。

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26 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

(3) 最後に

不確実性の高いビジネス環境においては、いかに優れたグ

ローバル戦略であっても適時適切に見直しを行い、経営資

源の再配分・事業ポートフォリオの変更を行う必要があり、

当該変化に迅速かつ柔軟に対応できる企業のみ、生存競争

に打ち勝つことができます。

従来、内需に依存してきた日本企業は、今後、生き残りを

賭けて海外進出を加速していく必要があり、今まさに日本

企業は変革期にあります。官民を挙げたアベノミクスによ

る経済好転の兆し、物理的距離・文化的な理解可能性に関

する優位性のあるアジア新興国経済の著しい発展等、日本

企業にとって明るい材料は増えつつあります。

欧米等先進国企業が、BRICsからポストBRICsへとターゲッ

ト市場を多様化させ、量的成長から利益成長の追求へと、

新興国ビジネスにおいて次のステージに進もうとしている

今、日本企業も遅れを取らぬよう旧弊を捨て変革を行う必

要があります。当該状況下において日本企業のCFOが果たす

べき役割は大きいと言え、企業の成長戦略に貢献すべくCFO

自身も自らを変革していく必要があると私どもは考えます。

今回の調査が、日本企業のCFOの皆様にとって一助になれば

幸いに存じます。

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27 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

CFOサーベイ2013の結果要約

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28 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

CFOサーベイ2013は、経営のグローバル化によって変革の時期を迎えた日本企業のCFOが直面する課題や目指

すべき将来像について示唆を得るために行ったアンケート調査であり、100人のCFOから回答を得ました。

(日本CFO協会と共同で調査を実施。調査期間:2013年3月~4月)

図表1: 伝統的な役割(連結・個別決算・開示や入出金管理等の財務業務など)と戦略的役割(CEOの戦略立案・実行の支援など)の業務時間比

1. CFOの課題・役割について

依然として伝統的な役割に割く時間の方が多いものの、将来は戦略的役割に

費やす時間が現在よりも増えると回答している傾向が見られます。

伝統的な役割に一定の時間が必要と認識しながらも、あるべき姿として、よ

り戦略的役割に費やす時間を増やす必要があると考えられているようです。

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10%

0% 現在 将来

時間(%)

伝統的な役割

戦略的役割

有効回答数:100人、%表示

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29 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

図表2: 組織戦略においてCFOが中心的役割を果たしていると思われる領域

「戦略実行に資する具体的なオペレーション」の割合は高く、8割超の回答者

が同意しています。

38

60

65

68

68

82

経営戦略の策定

IR活動(例えば、投資家、アナリスト、メディア

等に対する説明)

戦略策定に資する情報提供

経営上の意思決定が、確固とした経理・財務指標

に基づき行われるようにすること

戦略目標の達成に資する財務の重要なイニシア

ティブの発揮

戦略実行に資する具体的なオペレーション(例え

ば、資金調達など)

有効回答数:100人、%表示

図表3:CFOが事業部門に対する役割を発揮する上での障壁

10

22

27

33

38

51

58

非現実的又は過大な目標

他の事業部門との関係

スキル不足

厳しい経済環境

経理・財務部門にとって重要となりつつある分野に

おける経験不足

組織風土(タテ割り構造、事業部門との関係や社内

でのコミュニケーションの風通しの悪さ等)

経理・財務部門におけるリソース不足

有効回答数:100人、%表示

「経理・財務部門におけるリソース不足」を重大な障害と考えている傾向が出て

います。また、「組織風土が障害」となるとの回答も半数以上ありました。

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30 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

図表4:CFOとして自身の実績を評価する指標

図表5:3年前と比較してより重要となったタスク

1

5

11

20

28

33

40

71

自身の報酬等待遇の改善

財務管理に関する市場からの高い評判の獲得(組織の評

判)

企業倫理の確立(強力なガバナンスを有していると社会

から信頼されている等)

有望な人材を採用、育成する能力

財務管理者としてのCFOに対する市場や社内からの評判

(個人の評判)

ビジネスリーダーとしてのCFOに対する市場や社内から

の評判

社内の主要な事業プロジェクトに対する貢献度

会社の財務指標(収益、利益、株価、ROE等)の改善

有効回答数:100人、%表示

32

35

37

41

41

42

43

47

50

51

57

67

資金調達

財務報告

財務管理

法規制の順守

プロジェクト管理、事業変革計画

キャッシュ・フロー

IR及び利害関係者の管理

新興成長市場へのフォーカス

コストマネジメント

コーポレートガバナンス

マネジメント、役員会、成長戦略への助言

リスクマネジメント

有効回答数:100人、%表示

「会社の財務指標の改善」を自身の

実績評価指標としているCFOが最も

多いという結果になりました。

リスクマネジメントの重要性が高まっ

ているという回答が多く得られまし

た。経済環境の不確実性の増大に伴

い、多くのCFOが不測の事態への対応

の重要性を強く認識しているためと

考えられます。

マネジメント等への助言についても以

前より重要度が増したタスクとして

上位に位置づけられており、戦略的

役割の重要性が認識されていること

のあらわれと言えます。

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31 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

図表6:ステークホルダーとのコミュニケーション

全体的に肯定的な回答が多く、ステー

クホルダーとのコミュ二ケーションの

重要性について多くのCFOが認識して

いるという結果となりました。

3

13

12

27

9

26

36

63

75

64

83

72

CEOよりもCFOの方が、ステークホルダーに対して企業業

績を適切に説明しうる立場にある。

財務業績管理から、複雑なステークホルダーの管理に力点

を移すことは、困難を伴う挑戦である。

非財務の経営指標はさらに重要になりつつある。

財務業績全般に関わる全ての課題について、「企業の顔」

としての役割を果たすことが益々求められている。

CFOを対象としたトレーニングの実施は、CFOが今後直面

する様々な課題により適切に対処することに有用である。

金融危機後、会社の財務健全性に関する信頼を高めること

がCFOにとっての主な優先課題である。

強く同意 同意 有効回答数:100人、%表示

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32 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

図表7:開発が必要なスキル

最も多い回答は「CEOや役員会等の

上層部を管理するスキル」という結

果となりました。

「 戦 略の 設計 及 び実 施の スキ ル 開

発」も上位に位置づけられており、

今後より戦略的役割を果たすべきで

あるという意識のあらわれと考えら

れます。

9

10

15

20

23

23

23

31

39

43

47

メディア等におけるプレゼンテーションスキル

ステークホルダーの管理

コミュニケーションや影響を与えるスキル

分析とアドバイザリーのスキル

財務管理に関する新しいトレンドとテクニック

(自身の部署における)人材管理スキル

企業が属している業界に関する深い洞察力

組織にとって重要な国の市場に関する深い洞察力

プロジェクト及びチェンジマネジメントスキル

戦略の設計及び実施

CEOや役員会等の上層部を管理するスキル

有効回答数:100人、%表示

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33 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

図表8:経理・財務組織の改革と次世代CFOの育成

ほぼすべてのCFOが経理・財務部門を積極的に改革していきたいと考えている

と回答しています。

一方で、次世代CFOの育成義務を認識しながらも、人材開発スキルや時間が不

足しているなどの課題も浮かび上がりました。また、CFOの役割が広範になっ

てきていることから、経理・財務部門における経験だけでは、将来的にCFOに

なるにあたってのスキルを身につけるには不十分であると感じているCFOも多

いようです。

40

36

22

13

12

15

4

17

11

58

62

73

76

72

61

68

52

55

7

経理・財務部門を今後積極的に改革していきたいと考えている。

CFOは社内における次世代CFO候補を育成する義務がある。

CFOの戦略的機能や高度なイメージはCFO職を魅力的なキャリア目

標とする。

人材開発や調整のスキルを磨きたい。

人材開発に十分な時間が割けていない。

「CFO」というタイトルは今日におけるCFOの役割や責任のすべて

を伝達していない。

会社は経理・財務部門の若手が広範なビジネススキルを身に付ける

ための機会を創出している。

現状の経理・財務部門には将来CFOとなる広範なスキルを持つ人材

は少ない。

CFOとして成功するために必要なスキルの幅が広がることで、CFO

候補者がより限定的になっていく。

次世代の財務リーダーを育成するのは主に人事部門(HR)の役割

である。

強く同意 同意 有効回答数:100人、%表示

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34 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

図表9:CFOにとっての今後の経営課題

CFOの役割が広範になりつつある中で、直面する経営課題も多様化しています。

中でも、「経理・財務部門の人材育成」 及び「経営管理機能の強化」 に関して

は、CFOの大多数が重要な課題であることに同意しています。

12

13

17

20

22

24

24

27

27

28

34

37

39

40

43

43

76

81

不正対応

グループ組織再編(サプライチェーン、タックスプランニング他)

BPO、シェアードサービス

CFO、経理・財務部門の機能評価

ERPシステムの統一

財務報告の正確性の向上

プロセスの標準化

内部統制の効率化

キャッシュマネジメントシステムの導入、運転資本管理の改善

タックスプランニングによる税務コスト削減

会計・税務リスクのグローバル管理(本社によるマネジメント)

統一会計基準の導入

新興国等の海外進出支援(管理面のサポート)

決算早期化(人員増、プロセス、システム化等)・決算期統一

コスト削減(人員削減、システム化による業務効率化・自動化)

M&A(案件探し、M&A後の対応、他)

経営管理機能の強化(予算機能強化、統一尺度による業績評価等)

経理・財務部門の人材育成

有効回答数:100人、%表示

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35 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

図表10: 新興国等の海外進出に伴い想定される課題とその課題の対象となる国

すべての項目で中国が1位となり、また、タイとインドを合わせた3カ国がほぼ

全ての項目で上位3位を占めるという結果になりました。

これは、多くの日本企業が上記3カ国に進出済みであり、これらの課題を現に

抱えているということを意味しています。

中国に関しては、稼得利益の本国への還流規制や横領等の不正リスクに関して

特に関心が高いものと考えられます。

他方、近年注目が集まっているミャンマーについて、これらの想定課題の対象

国として考えている回答者はあまり見られませんでした。

これは、進出は検討しているものの、未だ具体的な計画段階には至っていない

企業が多いためと推察されます。

国名 法規制対応(出資規制/外貨規制な

ど)

現地当局への報告(決算書類・税務

申告書)

決算業務の管理(親会社へのレ

ポーティング期限の遅延、決算の精

度)

人材の確保・外部専門家の欠如

(質、コスト、日本語対応)

不正対応

中国 24% 22% 21% 20% 25%

タイ 13% 13% 15% 14% 9%

インド 13% 10% 14% 11% 9%

インドネシア 12% 8% 10% 9% 9%

ベトナム 7% 4% 4% 4% 6%

台湾 4% 6% 5% 3% 5%

マレーシア 5% 3% 5% 3% 2%

その他 22% 34% 26% 36% 35%

(有効回答数:39人)

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36 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

図表11:親会社における経理・財務部門のおおよその業務割合

2. 経理・財務部門の役割について

経理・財務部門の役割は、依然として決算機能及び財務

機能が中心です。

2

5

9

12

15

23

34

その他

M&A(案件探し、DD他)

内部統制(J-SOX、リスクマネジメント)

マネジメントへの戦略的意思決定支援

予算・中長期計画

財務(借入、日々の入出金業務他)

連結・個別決算・開示

有効回答数:100人、%表示

図表12:CFOは経理・財務部門と経営企画部門及びIR部門を管轄しているか

CFOが戦略的役割を果たす上で、その中心的な機能を持つ

経営企画部門が管轄にあるかは重要なポイントと言えま

すが、約30%の回答者が経営企画部を所管する結果となり

ました。2つの部門のみがCFOの管轄下にある企業では、

CFOが経理・財務部門及びIR部門を管轄している企業が

72%を占めています。

4

32

36

28

その他

内、1つの部門のみがCFOの管轄下

内、2つの部門のみがCFOの管轄下

全ての部門(経理・財務部門、経営企画部門、

IR部門)がCFOの管轄下

有効回答数:100人、%表示

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37 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

図表13:グループ全体の経理・財務部門のおおよその人員数

0 3

10

20

27

23

17

0

10

20

30

グループ売上5,000億円以上の企業(計30社)

3

22

39

19

8 6 3

0

10

20

30

40

50

グループ売上1,000億円以上5,000億円未満の企業(計36社)

53

26

18

3 0 0 0

0

10

20

30

40

50

60

グループ売上1,000億円未満の企業(計34社)

有効回答数:100人、%表示

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38 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

図表14:親会社の経理・財務部門のおおよその人員数

0

10

3

23 23 23

7 10

0

10

20

30

グループ売上5,000億円以上の企業(計30社)

8

19 22

33

6 6 3 3

0

10

20

30

40

グループ売上1,000億円以上5,000億円未満の企業(計36社)

18

44

15 12

0 0 0

12

0

10

20

30

40

50

グループ売上1,000億円未満の企業(計34社)

有効回答数:100人、%表示

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39 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

図表15:グループ売上高

3. 回答者プロファイル

2

32

36

19

11

100億円未満

100億円以上~1,000億円未満

1,000億円以上~5,000億円未満

5,000億円以上~1兆円未満

1兆円以上

有効回答数:100人、%表示

図表16:業種

1

1

1

2

2

2

2

3

3

3

4

4

5

5

6

8

9

9

9

10

11

水産・農林業

製造業 石油・石炭製品

製造業 鉄鋼

製造業 パルプ・紙

製造業 繊維製品

製造業 非鉄金属

不動産業

建設業

製造業 輸送用機器

製造業 金属製品

サービス業

製造業 医薬品

倉庫・運輸関連業

製造業 その他製品

卸売業

製造業 食料品

情報・通信

製造業 機械

小売業

製造業 電気機器

製造業 化学

有効回答数:100人、%表示

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40 グローバル化時代の日本企業のCFOの役割 |

図表17:海外売上高比率

図表18:グループ従業員数

1

16

30

25

28

無回答

1,000人未満

1,000人以上~5,000人未満

5,000人以上~10,000人未満

10,000人以上

有効回答数:100人、%表示

14

27

22

16

21

0%

10%未満

10%以上~30%未満

30%以上~50%未満

50%以上

有効回答数:100人、%表示

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41 | グローバル化時代の日本企業のCFOの役割

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EY | Assurance | Tax | Transactions | Advisory EYについて EYは、アシュアランス、税務、トランザクションおよびアドバイザリーなどの分野における世界的なリーダーです。私たちの深い洞察と高品質なサービスは、世界中の資本市場や経済活動に信頼をもたらします。私たちはさまざまなステークホルダーの期待に応えるチームを率いるリーダーを生み出していきます。そうすることで、構成員、クライアント、そして地域社会のために、より良い世界の構築に貢献します。 EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバル・ネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。詳しくは、ey.com をご覧ください。 新日本有限責任監査法人について 新日本有限責任監査法人は、EYメンバーファームです。全国に拠点を持つ日本最大級の監査法人業界のリーダーです。監査および保証業務をはじめ、各種財務アドバイザリーの分野で高品質なサービスを提供しています。EYグローバル・ネットワークを通じ、日本を取り巻く経済活動の基盤に信頼をもたらし、より良い世界の構築に貢献します。詳しくは、www.shinnihon.or.jp をご覧ください。 © 2013 Ernst & Young ShinNihon LLC All Rights Reserved. 本書又は本書に含まれる資料は、一定の編集を経た要約形式の情報を掲載するものです。したがって、本書又は本書に含まれる資料のご利用は一般的な参考目的の利用に限られるものとし、特定の目的を前提とした利用、詳細な調査への代用、専門的な判断の材料としてのご利用等はしないでください。本書又は本書に含まれる資料について、新日本有限責任監査法人を含むEYの他のいかなるグローバル・ネットワークのメンバーも、その内容の正確性、完全性、目的適合性その他いかなる点についてもこれを保証するものではなく、本書又は本書に含まれる資料に基づいた行動又は行動をしないことにより発生したいかなる損害についても一切の責任を負いません。

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