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無機化学-表紙
この表紙の裏面を下書き用紙として使いなさい。
平成 27 年度 神戸大学 大学院理学研究科 化学専攻 入学試験問題
無機化学
試験時間 12:30-15:10(160 分)
問題[I]~問題[III]に解答しなさい。
表紙を除いて 7 ページあります。
各ページに氏名(用紙上端)と受験番号(用紙下端)を記入しなさい。
受験番号を誤って記入すると採点の対象とならないことがあります。
氏名 無機化学-1
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 無機化学-1
[I]次の文章を読み,以下の問いに答えなさい。
宇宙を構成する元素の割合がいくつかの方法で推定されている。宇宙では( A )および( B )
の存在比が最も大きい。これらは宇宙形成の初期段階でも多量に存在した元素である。原子番号 26 の
( C )および(ア)原子番号 28 のニッケルの存在比は,その前後の原子番号の元素と比べて有意に大
きい。このことは,(イ)これらの元素の原子核の質量欠損が大きいことと矛盾しない。
元素には,一般にいくつかの同位体が存在する。例えば酸素には 3 種類の安定同位体 16O,17O,18O が
存在する。これらは原子核の組成が異なり,例えば 17O は( D )個の陽子と( E )個の中性子
からなる。試料に含まれる元素やその同位体比の分析は,宇宙や地球の歴史を解明する上でも有用である。
元素の特徴を示すパラメーターのひとつとして,電気陰性度がある。例えば2元化合物の結合の性質は,
含まれる2元素の電気陰性度の差を縦軸,平均を横軸にプロットした図で予測できる。この座標の上に,
18 族元素を除く全ての元素中で電気陰性度が最大の( F ),安定元素のうちで電気陰性度が最小の
( G ),および両者の化合物をそれぞれプロットすると,多くの2元化合物は,これらの3点をつな
いだ三角形(ケテラーの三角形)の内部にプロットできる。なお電気陰性度の定義はいくつかあるが,マ
リケンは,電気陰性度は(ウ)電子親和力とイオン化エネルギーの平均で与えられるとした。実際に第2~
第3周期の元素を見ると,同周期の元素では,電子親和力は( H )族元素が最大,( I )族元
素が最小,イオン化エネルギーは( J )族元素が最大,( K )族元素が最小の値を取る傾向が
ある。
問1.( A )~( K )にあてはまる元素記号あるいは数を答えなさい。
(A) (B) (C) (D)
(E) (F) (G) (H)
(I) (J) (K)
問2.下線部(ア)の原子の(a)中性状態および(b)二価カチオンの状態における電子配置を,例にならって
書きなさい(例:中性の Li 原子の場合 [He](2s)1)。また,それぞれが持つ不対電子の個数を書きなさい。
(a) 電子配置 個数
(b) 電子配置 個数
氏名 無機化学-2
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 無機化学-2
問3.下線部(イ)に関して,なぜ存在比が大きいことと質量欠損が大きいことが矛盾しないのか説明し
なさい。
問4.水素等の軽原子の核融合でも,ウラン等の重い原子の核分裂でもエネルギーが発生する。理由を説
明しなさい。
問5. (a)ある試料に含まれる特定の元素の同位体比を求めたい場合,および(b)岩石試料の小片に含まれ
る元素の種類と割合を溶解などの化学処理をせずに非破壊的に求めたい場合,例えばどのような機器分析
を行えばよいか,それぞれ答えなさい。
(a) (b)
問6.ポーリングはマリケンとは異なる考え方で電気陰性度を定義している。どのような考え方に基づく
定義か説明しなさい。
問7.ケテラーの三角形の(a)上部,(b)右下部,(c)左下部には,それぞれどのような結合からなる
物質が位置するかを答えなさい。
(a) (b) (c)
氏名 無機化学-3
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 無機化学-3
問8.下線部(ウ)の用語の意味を説明しなさい。
問9.ナトリウムとマグネシウムを比べると,どちらの元素の電子親和力が小さいか,理由と共に答えな
さい。
[II]次の文章を読み,以下の問いに答えなさい。
グリシナト配位子(H2NCH2COO–,gly と略記)は有用な配位子であり,各種の金属錯体を与える。[Pt(gly)2]
および [Be(gly)2]はいずれも4配位構造を持ち,それぞれ2個の gly がキレート配位している。これらの
錯体にはいずれも異性体が存在するが,光学異性体が存在するのは後者のみである。[Cd(gly)2]および
[Cu(gly)2]は[Pt(gly)2]と類似の構造を持つ単核錯体であるが,[Pt(gly)2]は結晶中でも4配位構造を保つのに
対し,[Cd(gly)2]は(ア)結晶中では6配位構造として観測される。一方,[Cu(gly)2]の結晶は一水和物として
得られ,結晶中では(イ)この水分子が Cu に配位結合した 5 配位構造の錯体が形成されている。[Co(gly)3]
は6配位構造を持ち,3個の gly がキレート配位している。
問1.下線部(ア)に関し,どのようなことが起こって6配位となっているかを推測し,説明しなさい。
問2.下線部(イ)に関し,この錯体が水分子を含んでいることを簡便に確認するにはどうしたらよいか,
考えうる分光学的な測定手段と,それで情報が得られる理由を書きなさい。
測定手段
理由:
氏名 無機化学-4
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 無機化学-4
問3.文中の情報に基づいて,(a) [Pt(gly)2]および(b) [Be(gly)2]のそれぞれの錯体について,考えうる異性
体の立体構造をすべて図示しなさい。配位子はドナー原子を曲線で結ぶ方法(ドナー原子が N と O であ
れば N O)で略して表記しなさい。
(a)
(b)
問4.[Co(gly)3]には全部で何種類の異性体が存在するかを答えなさい。ただし,立体構造を描く必要はな
い。
氏名 無機化学-5
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 無機化学-5
[III]金属ハロゲン化物に関する以下の問いに答えなさい。
問1.ハロゲン化ナトリウムとハロゲン化銀の格子エンタルピーの実験値(LHexp)と計算値(LHcalc)
を下表に示した。計算値は NaCl 型構造を仮定してボルン・マイヤー式から求めたものである。この表を
もとに,以下の問いに答えなさい。
LHcalc / kJ mol1 LHexp / kJ mol1 LHcalc / kJ mol1 LHexp / kJ mol1
NaF 881 923 AgF 842 953
NaCl 753 786 AgCl 724 903
NaBr 720 747 AgBr 694 895
NaI 673 704 AgI 610 882
(a) 表から Na+と Ag+のイオン半径はどちらが大きいと推測されるか,そのように考えた理由も答えなさ
い。
イオン半径の大きなもの:
理由:
(b) 表中のナトリウム塩と銀塩それぞれについて,実験値と計算値との差が生じる理由を説明しなさい。
ナトリウム塩:
銀塩:
氏名 無機化学-6
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 無機化学-6
問2.NaCl が絶縁体である理由を Na の 3s 軌道と Cl の 3p 軌道からなるバンドを考えることで説明しな
さい。
問3.NaI の水溶液にヨウ素を入れると,I3イオンを含む褐色の溶液が得られる。しかし,その水溶液を
濃縮しても NaI3の結晶は単離できない。
(a) VSEPR モデルから予想される I3イオンの立体構造を結合(-)と孤立電子対(:)を用いて描きな
さい。
(b) NaI3 とは異なり, I3イオンを含む結晶として単離可能な塩の特徴を挙げなさい。また、結晶として
単離可能になる理由も答えなさい。
特徴:
理由:
氏名 無機化学-7
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 無機化学-7
問4.AgI は室温で NaCl 型構造ではなく,閃亜鉛鉱型構造を取っている。温度を上げていくと 137 ℃以
上でウルツ鉱型構造,146 ℃以上で立方晶へと相転移し,超イオン伝導性を示すことが知られている。
(a) 閃亜鉛鉱型構造とウルツ鉱型構造の違いを簡潔に説明しなさい。
(b) イオンはそれぞれ剛体球であると仮定し,ヨウ化物イオンのイオン半径を 2.06 Å とする。146 ℃以
上ではヨウ化物イオンの中心は一辺 5.03 Å の体心立方格子を形成するが,互いに接してはいない。銀イ
オンが体心立方格子の最大の四面体間隙の一部にヨウ化物イオンと接し存在するものとすると,銀イオ
ンのイオン半径は何 Å となるか。求める過程も示し,有効数字3けたで求めなさい。
(c) 銀イオンがヨウ化物イオンの体心立方格子の空隙間を移動することでイオン伝導性を担っている。こ
のイオン伝導度の単位はどのようにあらわされるか。また,イオン伝導度の温度依存性はどのようにな
ると予想されるか,理由と併せて答えなさい。
単位:
温度依存性とその理由:
有機化学-表紙
この表紙の裏面を下書き用紙として使いなさい。
平成 27 年度 神戸大学 大学院理学研究科 化学専攻 入学試験問題
有機化学
試験時間 12:30-15:10(160 分)
問題[I]~問題[VII]に解答しなさい。
表紙を除いて 8 ページあります。
各ページに受験番号(用紙下端)と氏名(用紙上端)を記入しなさい。
受験番号を誤って記入すると採点の対象とならないことがあります。
氏名 有機化学-1
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 有機化学-1
[I] 以下の問 1~問 4 に答えなさい。解答は解答欄に書くこと。
問 1.次の化合物(a)~(c)について立体中心の R, S 表示を含めて IUPAC 名を書きなさい。
問 2. 下記の化合物 A について以下の問いに答えなさい。
(a) 化合物 A とそのエナンチオマーが 1:4 の割合で存在する混合物のエナンチオマー過剰率(ee)を
答えなさい。
(b) 化合物 A の比旋光度[]は-139.0°である。(a)の混合物の比旋光度の値を答えなさい。
問 3.次の化合物を,酸性の強いものの順に,記号で並べ替えなさい。また,そのようになる理由を
説明しなさい。
(a) CH3CH2CH2CO2H (b) Cl3CCO2H (c) ClCH2CO2H (d) F3CCO2H (e) CH3CO2H
問 4. 次の化合物を,沸点の高いものの順に,記号で並べ替えなさい。また,そのようになる理由を
説明しなさい。
(a) CH3CH2OH (b) CH3CH2CH3 (c) CH3CH2NH2 (d) (CH3CH2CH2CH2)3N
O
OOMe
OMe
O
O
MeMeO
MeMeO
A
氏名 有機化学-2
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 有機化学-2
問 1
(a)
(b)
(c)
問 2
(a) (b)
問 3
順番
理由
問 4
順番
理由
氏名 有機化学-3
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 有機化学-3
[II] 以下の問1および 2 に答えなさい。解答は解答欄に書くこと。
問 1.次の化合物 A および B を Diels-Alder 反応を用いて一段階で合成したい。用いる適切なジエ
ンと求ジエン体の構造を書きなさい。
問 2.下の化合物 C をベンズアルデヒドから合成する方法を書きなさい。ただし,炭素数3以下の
有機化合物あるいは無機反応剤を用いること。反応は一段階とは限らない。
問 1
A
ジエン 求ジエン体
B
ジエン 求ジエン体
問 2
O
O
OCH3
OCH3
O
O
CH3
CH3
A B
H
H
CH2 CH CH2OH
CH3
C
氏名 有機化学-4
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 有機化学-4
[III] ベンゼンを出発原料として,炭素数3以下の有機化合物あるいは無機反応剤を用いて以下の(a)
から(d)の化合物を合成する方法を示しなさい。配向性に注意し,反応の順番を考えること。解答は
解答欄に書くこと。
(a)
(b)
(c)
(d)
氏名 有機化学-5
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 有機化学-5
[IV] 次の反応の主生成物の構造式および反応機構を示しなさい。
氏名 有機化学-6
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 有機化学-6
[V] 以下の問 1〜3 の解答を解答欄に記入しなさい。
問1. 反応式(1)〜(5)の主生成物 A〜E の構造を示し,その反応が SN1, SN2, E1, E2 のいずれであ
るかを答えなさい。但し,反応式(4)は2つの基質の当モル量混合物を用いた競争反応である。
問2. 反応式(1),(2)では温度によって主生成物が異なる。その理由として考えられる事を答えな
さい。
問3. 反応式(4)の基質に反応性の差がある理由を説明しなさい。
<解答欄>
問
1
A B C D E
問
2
問
3
氏名 有機化学-7
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 有機化学-7
[VI] 以下の問 1〜3 の解答を解答欄に記入しなさい。
問1. 以下の反応スキーム中の化合物 A,B,C,E1,F1 の構造を示しなさい。E1,F1 については立
体化学が分かるように解答しなさい。
問2. 化合物 C から化合物 D への変換をどのように行うのか説明しなさい。但し,変換は1段階の反応
とは限らない。
問3. 化合物 D1 は化合物 D の立体異性体の一つである。化合物 D の立体異性体の構造を重複がないよ
うにすべて示しなさい。化合物 D1 は解答には含めないこと。
<解答欄>
A B C E1 F1
問
1
問
2
問
3
氏名 有機化学-8
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 有機化学-8
[VII] 下記のスペクトルデータから,分子の構造を推定し,構造式を示しなさい。推定過程を書く必要は
ない。ただし,NMR スペクトルは CDCl3溶媒中の化学シフト(単位 ppm)を示している。また,1H NMR
データの括弧内には,カップリングの形状(s = 一重線, d = 二重線, t = 三重線, q = 四重線, quint
= 五重線, sext = 六重線),プロトンの数が順に示されている。13C NMR の測定においては,プロトンデ
カップリング法を用いている。
問1. 分子式 C4H9Cl
1H NMR: δ 1.02 (t, 3H), 1.50 (d, 3H), 1.71 (quint, 2H), 3.97 (sext, 1H)
問2. 分子式 C5H10O3
1H NMR: δ 1.21 (t, 3H), 2.64 (t, 2H), 3.53 (q, 2H), 3.71 (t, 2H),
11.20 (s, 1H)
13C NMR: δ 15.0, 34.9, 65.6, 66.6, 177.2
問3. 分子式 C6H10O3
1H NMR: δ 1.08 (t, 3H), 2.59 (q, 2H), 3.48 (s, 2H), 3.73 (s, 3H)
13C NMR: δ 7.6, 36.3, 48.7, 52.3, 167.8, 203.3
物理化学-表紙
この表紙の裏面を下書き用紙として使いなさい。
平成 27 年度 神戸大学 大学院理学研究科 化学専攻 入学試験問題
物理化学
試験時間 12:30-15:10(160 分)
問題[I]~問題[VI]に解答しなさい。
表紙を除いて 6 ページあります。
各ページに氏名(用紙上端)と受験番号(用紙下端)を記入しなさい。
受験番号を誤って記入すると採点の対象とならないことがあります。
必要ならば以下の数値を使いなさい。
気体定数 R = 8.31 J K-1 mol-1
ボルツマン定数 kB = 1.38 × 10-23 J K-1
プランク定数 h = 6.63 × 10-34 J s
光速 c = 3.00 × 108 m s-1
アボガドロ定数 NA = 6.02 × 1023 mol-1
氏名 物理化学-1
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 物理化学-1
[I] 反応:A + B → C + D についての反応速度定数 k の温度変化を分子衝突の視点から考える。以下の
問いに答えなさい。
問 1. 温度 T における速度定数 k を気体定数 R,活性化エネルギーEa ,頻度因子 A を用いて表しなさい。
問 2. 頻度因子 A は分子の衝突頻度を表す。半径 RA の分子と半径 RB の分子が衝突して反応する場合,A
と B の平均相対速度を ⟨ ⟩ として,頻度因子 A を RA, RB, ⟨ ⟩ を用いて表しなさい。ただし,ここでは衝
突すれば必ず反応が起きると仮定する。
問 3. 気相反応:F + CH4 → HF+CH3について,F 原子と CH4分子をそれぞれ半径が 0.15 nm,0.19 nm の
剛体球と仮定し,温度を 298 K として以下の数値を求めなさい。また,導出の過程も書きなさい。なお,
頻度因子の単位は [cm3 molecule-1 s-1] とする。ここで,原子量は H:1.00,C:12.0,F:19.0 とする。
(1) 平均相対速度 ⟨ ⟩
(2) 頻度因子 A
氏名 物理化学-2
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 物理化学-2
問 4. 次の二つの気相反応について 298 K における頻度因子の実験値を示す。
反応(1): F + CH4 → HF+CH3 A = 3.0×10-10 [cm3 molecule-1 s-1]
反応(2): F+ CHF3 → HF+CF3 A = 6.3×10-12 [cm3 molecule-1 s-1]
CH4分子と CHF3分子の大きさの違いだけでは頻度因子の違いを説明できない。反応(2)の頻度因子が反応
(1)よりも小さくなる理由を説明しなさい。
[II] 反応:A→B が二次反応である場合,半減期を導出しなさい。説明に必要な物理量があれば,それら
を表す記号をすべて各自で定義して解答しなさい。
氏名 物理化学-3
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 物理化学-3
[III] 3 準位系について以下の問いに答えなさい。
問 1. 準位 n = 0, 1, 2 のエネルギーを,それぞれ, 210 ,, とする。n = 0, n = 1 の準位間,n = 1,n = 2 の
準位間で,それぞれボルツマン分布が成立している時,n = 0,n = 2 の準位間でもボルツマン分布が成立
することを証明しなさい。
問 2. 300 K における 0.100 mol の臭素分子気体の振動エネルギーを考える。分子は n = 0, 1, 2 の振動エネ
ルギー準位にのみ存在すると仮定して,各準位に存在する分子数を求めて,全振動エネルギーを求めなさ
い。ここで,臭素分子の振動エネルギーは次式で与えられるものとする。回転準位は考慮しなくてよい。
]J[1042.6,2
1 2100
hnhvib
氏名 物理化学-4
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 物理化学-4
[IV] 気体の可逆断熱圧縮について以下の問いに答えなさい。
問 1.可逆断熱圧縮された理想気体の温度が上昇する理由を説明しなさい。
問 2.可逆断熱圧縮する前の理想気体の温度と体積を T と V,圧縮した後の温度と体積を T*と V* とする。
定積熱容量 CV をもつ n mol の理想気体を断熱圧縮したとき V
VnR
T
TCV
**
lnln となることを示しな
さい。
問 3. ある実在気体を可逆断熱圧縮したところ,理想気体の仮定のもとで予測したよりも少ない温度上昇
が観測された。温度上昇が予測より少なくなった理由を説明しなさい。
氏名 物理化学-5
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 物理化学-5
問 4. 理想気体を問 2 のように可逆断熱圧縮したときのエントロピー変化ΔS を(1)温度 T・体積 V から
温度 T*・体積 V への定積加熱と,(2)温度 T*・体積 V から温度 T*・体積 V*への等温圧縮に分割して求
め,ΔS = 0 となることを示しなさい。
[V] 気体定数(R)の値を実験によって決定する方法を一つ述べなさい。測定した物理量にもとづいて気
体定数を決定する過程についても式を用いて説明すること。説明に必要な物理量があれば,それらを表す
記号をすべて各自で定義して解答しなさい。
氏名 物理化学-6
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 物理化学-6
[VI] 白金などの遷移金属を触媒として用いると炭化水素気体の異性化反応を室温付近でも進行させるこ
とができる。異性化反応の平衡について以下の問いに答えなさい。炭化水素気体を理想気体と仮定してよ
い。
問 1.ある触媒は trans-but-2-ene(通称 trans-2-ブテン)と cis-but-2-ene(通称 cis-2-ブテン)の異性化反応
だけを進行させる。1 mol の 2-ブテン気体を 300 K に保ってこの触媒に接触させたときの cis 体の平衡存在
量を mol を単位として有効数字二桁で求めなさい。平衡存在量とは化学平衡に到達したときの物質量であ
る。この温度で trans-2-ブテン(気体)と cis-2-ブテン(気体)の標準生成ギブズエネルギーは 63.1 と 66.0
kJ mol-1である。
問 2. ある別の触媒は 2-ブテンの cis-trans 異性化反応に加えて,2-ブテンと but-1-ene(通称 1-ブテン)の
異性化反応を同時に進行させる。1 mol の 2-ブテン気体を 300 K に保ってこの触媒に接触させたときの 1-
ブテンの平衡存在量を mol を単位として有効数字二桁で求めなさい。この温度で 1-ブテン(気体)の標準
生成ギブズエネルギーは 71.4 kJ mol-1である。
分析化学−表紙
平成 27 年度 神戸大学 大学院理学研究科 化学専攻 入学試験問題
分析化学
試験時間 12:30-15:10(160 分)
問題[Ⅰ]~問題[Ⅴ]に解答しなさい。
表紙を除いて7ページあります。
各ページに氏名(用紙上端)と受験番号(用紙下端)を記入しなさい。
受験番号を誤って記入すると採点の対象とならないことがあります。
各問題中,すべての溶質の活量係数は1とし,濃度を用いて計算してよい。
容量モル濃度の単位は M = mol dm–3であり,溶液の温度は 25 ℃とする。
この表紙の裏面を下書き用紙として使いなさい。
氏名 分析化学−1
この線より下に氏名を書いてはいけません
[Ⅰ] 1.0 10–4 M の Fe2+ と(0 〜 10) 10–4 M の 1,10-フェナントロリン(phen)を含む溶液(pH 8)を調
製し,光路長 1.0 cmの吸収セルを用いて吸光度を測定した。以下の問いに答えなさい。
問1.510 nmでの吸光度 A を phen 濃度に対してプロットした
ところ,右図のようになった。溶液中で生成した Fe2+ と
phen の錯体の組成比(Fe2+:phen)を,右図から作図的に
求めなさい。
問2. phen 濃度が 2.0 10–4 M のとき,A は 0.70 であった。このとき,光の透過率は何%か。
問3.phen 濃度が高いとき,A は一定値(=1.1)を示した。Fe2+ と phen の錯体のモル吸光係数 を求め
なさい。単位も記すこと。
受験番号 分析化学−1
氏名 分析化学−2
この線より下に氏名を書いてはいけません
[Ⅱ] K+ に選択的に応答する液膜型イオン電極を作製し,下に示す電池系 (1) を組んでポテンショメトリ
ー測定を行った。液膜中にはイオン感応物質とともに,あらかじめ一定量の K+ を疎水性の陰イオン
との塩として溶解してある。以下の問いに答えなさい。
参照電極│試料液│液膜│内部液│内部電極 (液膜から右がイオン電極) (1)
問1.液膜中および試料液中の K+ の電気化学ポテンシャル( および )を表す式を書きなさい。た
だし,各相中の内部電位をm および s,K+ のモル濃度(=活量としてよい)を [K+]m および [K+]s で
表しなさい。他に必要な記号があれば自分で定義して用いなさい。
問2.K+ が試料液│液膜界面で分配平衡にあると仮定し,界面のガルバニ電位差 (=m – s)を表す
式を導きなさい。
問3.試料液中の K+ のモル濃度が 0.1 mM から 10 mM に増大したとき,電池系 (1) の起電力は何 mV 変
化するか。ただし,妨害イオンは無いものとし,RT/F = 25.7 mV(R: 気体定数,T = 298 K ,F: ファ
ラデー定数)である。
問4.下に示すようなクラウンエーテルがイオン感応物質として用いられる。この効果を説明しなさい。
受験番号 分析化学−2
氏名 分析化学−3
この線より下に氏名を書いてはいけません
[Ⅲ] 次の文を読み,以下の問いに答えなさい。
金属イオンの系統分析では,酸性溶液中での硫化物の溶解度の違いを利用してCd2+とCo2+を分離する。
ここでは,その分離条件について考える。以下,試料に含まれる(完全に溶解したときの)各金属イオ
ンの初期濃度を 1.0 10–2 M とし,その 99.9%以上が沈殿し,濃度が 1.0 10–5 M 以下になったとき,金属
イオンは完全に沈殿したものとする。なお,Cd2+と Co2+の硫化物の溶解度積を,それぞれ Ksp(CdS) = 5.0
10–28 M2および Ksp(CoS) = 4.0 10–21 M2とする。また,硫化物の溶解などにより生じた S2− は,以下の平
衡反応によって溶液中でプロトン付加し,HS− や H2S に変わるものとする。
H2S HS– + H+; 酸解離定数:Ka1 = 9.5 10–8 M (1)
HS– S2– + H+; 酸解離定数:Ka2 = 1.9 10–15 M (2)
※ 十分酸性な溶液では [H+] ≫1.0 10–7 M なので,a[H+]2 + b[H+] = c から [H+] を求める場合,a >107 b
の条件を満たせば,[H+] は a[H+]2 ≒ c の近似式から求められる。
問1. いま,CdS のみを含む溶液が沈殿平衡にあるとする。この溶液中の S2− の副反応係数 S(H) は,
S(H) 1 [H ]
Ka2
[H ]2
Ka1Ka2
で与えられる。この溶液に溶解している Cd2+の濃度が 1.0 10–5 M であるときの S(H) の値を求め
なさい。
問2. 問1の結果より,溶液のプロトン濃度 [H+] を求めなさい。
(次頁に続く)
受験番号 分析化学−3
氏名 分析化学−4
この線より下に氏名を書いてはいけません
問3. CoS のみを含む溶液で CoS がすべて溶解する [H+] の条件を求めなさい。
問4. 次に,CdS と CoS が共存する場合を考える。Cd2+の濃度が 1.0 10–5 M のとき, CoS の溶解によ
って溶液に生じた S2–,HS–,H2S の濃度の和 [S2–]Co + [HS–]Co + [H2S]Coを求めなさい。
(次頁に続く)
受験番号 分析化学−4
氏名 分析化学−5
この線より下に氏名を書いてはいけません
問5. 問4の系で Cd2+を沈殿(CdS)として,Co2+を上澄みとして完全に分離できる溶液の [H+] の条件
を求めなさい。
問6. 実際の金属イオンの系統分析では,分族試薬を HCl とする分離操作の上澄みとして Cd2+と Co2+
を含む溶液を得る。このような溶液で Cd2+ と Co2+を完全に分離するために溶液の [H+] を正確に
調整するには,どのような操作が必要になるか。その操作を具体的に説明しなさい。
受験番号 分析化学−5
氏名 分析化学−6
この線より下に氏名を書いてはいけません
[Ⅳ] 酒石酸水素カリウム(HOOC-CH(OH)CH(OH)-COO− K+)は,水に溶けると以下のような酸解離反応
を起こすため,それ自身で緩衝剤として働く。以下の問いに答えなさい。
Ka1 Ka2
HOOC-CH(OH)CH(OH)-COOH HOOC-CH(OH)CH(OH)-COO− −OOC-CH(OH)CH(OH)-COO−
H2A HA– A2–
問1.酸解離定数 Ka1および Ka2を式で表しなさい。濃度は [H2A],[HA–],[A2–],[H+] のように記せ。
問2.溶液の pH を,pKa1,pKa2,および濃度比 [H2A]/[A2–]を用いて表しなさい。
問3.濃度比 [H2A]/[A2–]は,酒石酸水素カリウムを溶かしてできた HA– が解離して A2– になるときに出
す H+ と,それが HA– と結合して H2A に変わるときに使われる H+ の割合を示す。この割合がほぼ 1
と見なせるとき,酒石酸水素カリウム溶液は緩衝作用を示す。このとき,[HA–] ≫ Ka1が成り立つこ
とを証明しなさい。
受験番号 分析化学−6
氏名 分析化学−7
この線より下に氏名を書いてはいけません
[Ⅴ] 機器分析法に関する以下の問いに答えなさい。
問1.原子吸光法にどのような光源が用いられるかを述べ,この手法が定性分析に用いられない理由を
説明しなさい。
問2.液体クロマトグラフィーはロシアの生化学者 Michael Tswett が,植物の抽出液から数種類の色素を
分離したのが始まりだと言われている。その実験装置の概略図を示し,液体クロマトグラフィーの
原理を説明しなさい。
受験番号 分析化学−7
生物化学-表紙
この表紙の裏面を下書き用紙として使いなさい。
平成 27 年度 神戸大学 大学院理学研究科 化学専攻 入学試験問題
生物化学
試験時間 12:30-15:10(160 分)
問題[ I ]~問題[V]に解答しなさい。
表紙を除いて 7 ページあります。
各ページに受験番号(用紙下端)と氏名(用紙上端)を記入しなさい。
受験番号を誤って記入すると採点の対象とならないことがあります。
氏名 生物化学-1
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 生物化学-1
[ I ] 以下の問1~5に答えなさい。
問1. ラマチャンドラン・ダイアグラムについて,図の概略を示し,(二次構造,二面角,Φ(ファイ),
Ψ(サイ))の語句をすべて用い説明しなさい。
問2. 酵素の競合阻害について,(ミカエリス定数,阻害定数,基質,最大速度)の語句をすべて用い説
明しなさい。
問3. 分子シャペロンとその作用機構について説明しなさい。
問4. トリグリセリドは脂質の一種であるにも関わらず,脂質二分子膜の構成成分にはならない。この理
由について,トリグリセリドの構造特徴をグリセロリン脂質と比較しながら説明しなさい。
問5. 単糖は,その分子内のアルデヒド基またはケトン基と,同じく分子内のヒドロキシル基が反応し環
状構造をとるが,それにも関わらず還元性を示すことのできる理由を説明しなさい。
氏名 生物化学-2
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 生物化学-2
[II] 次の文章を読み,以下の問いに答えなさい。
生物化学の実験では,pH を一定に保つため,通常緩衝溶液を用いる。緩衝溶液として,中性では
(A)リン酸,(B)トリス,酸性では酢酸などを用いる。アミノ酸やタンパク質は pH によって大きく構造機
能が変化する。例えば,アスパラギン酸は,側鎖カルボキシル基の pKaが 4.0,主鎖カルボキシル基の pKa
が 2.3 であるため, pH 1.0 では( ア ),pH 3.0 では( イ ),pH 7.0 では( ウ )という化学式で
表される構造が主成分となる。タンパク質中では,側鎖の pKaの違いにより,種々の構造機能の変化が生
じる。例えば,タンパク質分解酵素であるトリプシンでは,活性部位付近に,セリン,ヒスチジン,
(C)アスパラギン酸で構成される( エ )が配置されており,互いに連携して機能を発現している。と
ころが,(D)pH を 7.0 から 5.0 に低下させると機能が低下する。さらに(E)pH を 1.0 まで下げると機能は著
しく低下する。トリプシンは基質中で正電荷を持つアミノ酸残基,すなわち( オ ),( カ )の C 末
端側の( キ )結合を切断する。このように特定の基質のみに働く性質を酵素の( ク )と呼び,酵
素側の(F)構造要因によってもたらされる。
問1. 空欄( ア )~( ク )に当てはまる化学式または語句を答えなさい。
( ア ) ( イ )
( ウ ) ( エ )
( オ ) ( カ )
( キ ) ( ク )
問2. 下線部(A)について,適当なリン酸塩を用いて pH 7.0,濃度 100 mM の緩衝溶液を 1 L 程度調製
する場合の実際的な実験手順を示しなさい。ただし,原子量は H 1.00,O 16.0,Na 23.0,P 31.0 とする。
問3. 問2で作製した緩衝溶液では,主として2種類のリン酸分子種が存在している。それぞれの分子種
の化学式および濃度比を示しなさい。ただし,中性付近におけるリン酸の pKa = 6.8 とする。
氏名 生物化学-3
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 生物化学-3
問4. 下線部(A),(B)について,リン酸およびトリスを用いて作成した2種類の pH 7.0 の緩衝溶液に
ついて,実験的にはどのように使い分けたら良いか。それぞれの問題点とともに説明しなさい。なお、ト
リスの pKaは 8.1 である。
問5. リン酸および酢酸の酸解離に伴うエンタルピー変化(ΔH)はほとんどゼロであるが,トリスは
ΔH = 47 kJ mol-1 と大きい。この点で,トリスを用いる際の注意点を理由とともに述べなさい。
問6. 下線部(C)について,トリプシンの機能発現にこのアスパラギン酸の果たしている役割を説明し
なさい。
問7. 下線部(D)について,pH を 7.0 から 5.0 に低下させることで機能が低下する理由を説明しなさい。
問8. 下線部(E)について,考えられる要因(問7で示したものを除く)を述べなさい。
問9. 下線部(F)について,トリプシンの場合はどのような構造が要因であるか説明しなさい。
氏名 生物化学-4
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 生物化学-4
[III] 脂質二分子膜を介してのナトリウムイオンの輸送の駆動力は電気化学ポテンシャル差に依存し,下
式で表わされる。これに基づき以下の問1~3に答えなさい。
∆ lnNa in
Na outNa ∆
なお,Rは気体定数(8.31 J K-1 mol-1),Tは絶対温度(0 °C = 273 K), [Na+]in,[Na+]outはそれぞれナ
トリウムイオンの膜の内側,外側での濃度,ZNa+はナトリウムイオンの電荷,Fはファラデー定数
(96500 C mol-1),ΔΨは膜電位(外側に対する内側の電位差)とする。
問1. ある細胞でのナトリウムイオン濃度は,細胞外では 135 mM,細胞内では 15.0 mM であるとする。
ナトリウムイオンの移動が見かけ上停止する(平衡状態となる)のに必要な膜電位を計算しなさい。上述
の膜電位の定義に留意し,単位も付けること。ただし,温度は 37.0 °C とする。
問2. 問1と同じ細胞について,細胞内外の実際の電位差(静止電位)を測定したところ,–70 mV であ
った。ナトリウムイオンがこの細胞内に移動するための駆動力である電気化学ポテンシャル差を計算し単
位を付けて答えなさい。ただし,温度は 37.0 °C とする。
氏名 生物化学-5
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 生物化学-5
問3. 静止電位において問1のナトリウムイオンの細胞外濃度を保つには,Na+/K+ポンプによる膜輸送が
不可欠である。このポンプは ATP の加水分解と共役してナトリウムイオンを輸送するが,その輸送は能
動輸送,受動輸送のどちらであるか答えなさい。また,その輸送の方向は,細胞の内側から外側,外側か
ら内側のうちどちらであるかについて,理由とあわせて答えなさい。
・輸送の種類(どちらかに丸をつけなさい):能動輸送 ・ 受動輸送
・輸送の方向(括弧の中に,内,外のいずれかを記入しなさい):細胞の( )側から( )側
理由:
[IV] 次の文章を読み,問1~5に答えなさい。
(A)紫外線,電離放射線,(B)ある種の化学物質は,DNA を直接損傷させる。その結果,(C)1塩基対が
他の塩基対に置換したり,あるいは(D)1個から複数個のヌクレオチド対が DNA 中に挿入されるか,あ
るいは DNA から欠失する。前者のような置換のともなう変異を( ア )と呼び,後者のような変異を
( イ )と呼ぶ。
問1. ( ア )および( イ )に最も適する語句を記入しなさい。
( ア )
( イ )
氏名 生物化学-6
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 生物化学-6
問2. 下線部(A)に関して,紫外線と電離放射線とで DNA への損傷の程度を比較すると,一般に電離
放射線が大きい。なぜか,物理化学的に説明しなさい。
問3. 下線部(B)に関して,亜硝酸や硫酸ジメチル(ジメチル硫酸とも呼ぶ)などの化学物質はどのよ
うにして下線部(C)のような変異を導入するのか説明しなさい。
問4. 下線部(C)のような変異がタンパク質をコードする遺伝子内に起こった場合,通常はサイレント
変異,ミスセンス変異,ナンセンス変異のいずれかが出現する。それぞれの変異の生体への影響の程度を
大中小で示し,さらにその理由を変異の原因をもとに説明しなさい。
サイレント変異
ナンセンス変異
ミスセンス変異
問5. 下線部(D)のような変異がタンパク質をコードする遺伝子内におこった場合,その生体への影響
は非常に大きい。なぜか説明しなさい。
氏名 生物化学-7
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 生物化学-7
[V] 次の文章を読み,問1~4に答えなさい。
解糖系で生じたピルビン酸に由来するアセチル基は,ピルビン酸デヒドロゲナーゼにより CoA に移さ
れてアセチル CoA が生ずる。続いて,アセチル CoA は( ア )に存在する( イ )サイクルと呼ば
れる8連反応よりなる循環回路に入る。この回路において,アセチル基の部分は分解されて( ウ )分
子の CO2になり,遊離するエネルギーは NADH や FADH2など還元型化合物に保存される。循環回路での
正味の反応は
3NAD+ + FAD + GDP + Pi + アセチル CoA → 3NADH + FADH2 + GTP + CoA + ( ウ )CO2 ・・・・(1)
で表される。
問1. ( ア ),( イ ),( ウ )に適する語句または数値を記入しなさい。
( ア ) ( イ )
( ウ )
問2. 下線部の反応においては,1分子のピルビン酸から 1 分子のアセチル CoA,1分子の CO2,1分
子の NADH が生ずる。 (1) 式にならって,下線部での正味の反応式((2) 式とする)を書きなさい。ただ
し,ピルビン酸およびアセチル CoA の構造式を書く必要はない。
問3. (1) 式と (2) 式とをあわせ,ピルビン酸が CO2 にまで完全分解されるときの正味の反応式 (3) を
書きなさい。ただし,ピルビン酸およびアセチル CoA の構造式を書く必要はない。
問4. (3) 式より,ピルビン酸1分子より最大何個の ATP が合成できるか計算しなさい。
量子化学-表紙
この表紙の裏面を下書き用紙として使いなさい。
平成 27 年度 神戸大学 大学院理学研究科 化学専攻 入学試験問題
量子化学
試験時間 12:30-15:10(160 分)
問題[ I ]~問題[V]に解答しなさい。
表紙を除いて6ページあります。
各ページに氏名(用紙上端)と受験番号(用紙下端)を記入しなさい。
受験番号を誤って記入すると採点の対象とならないことがあります。
必要ならば以下の数値を使いなさい。
ボルツマン定数 kB = 1.38 × 10-23 J K-1 プランク定数 h = 6.63 × 10-34 J s 光速 c = 3.00 × 108 m s-1
必要な場合は以下の式を使いなさい。
10!dn a x
nnx e x
a
(nは正の整数)
2
0d
4a xe x
a
2210
1 3 5 2 1d2
n a xn n
nx e xaa
( n は正の整数)
22 110
!d2
n a xn
nx e xa
( n は正の整数)
0 0sin sin d cos cos d
2a a
nmn x m x n x m x ax xa a a a
0sin cos d 0
a n x m x xa a (mとnは整数)
氏名 量子化学-1
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 量子化学-1
[I] 次の関数は,調和振動子の量子数 v = 2 に対する波動関数である。以下の問いに答えなさい。
222 1 exp2xx N x
(1)
問1. ばね定数をk,換算質量を m,調和振動子の変位を x,プランク定数を 2で割ったものを として,この系の
ハミルトン演算子 H を表しなさい。
問2. 波動関数(1)を規格化しなさい。すなわち,N を,等を用いてあらわしなさい。
問3. 波動関数 x とハミルトン演算子 H ,およびエネルギー E は, H x E x の関係を満足する。
波動関数(1)に問 1 で求めたハミルトン演算子を作用させることにより, を ,k m および を用い
て表しなさい。
氏名 量子化学-2
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 量子化学-2
[II] 角運動量演算子 ˆ ˆ ˆ, ,x y zl l l について,以下の問いに答えなさい。
問1. xl および yl を,x, y, z を用いて表しなさい。
問2. ˆ ˆ ˆ ˆ ˆ ˆ,x y x y y xl l l l l l を, zl を用いて表しなさい。
氏名 量子化学-3
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 量子化学-3
[III] 二次元の四角形のポテンシャル井戸の中に閉じ込められた質量 m の粒子について考える。以下の問い答え
なさい。
問1. ポテンシャルエネルギーが,
, 0V x y 0 , 0x a y a
,V x y (上記以外)
であるとする。この系のエネルギーと波動関数を求めなさい。なお,長さ a の一次元のポテンシャル井戸の
中に閉じ込められた質量 m の粒子に対する波動関数は,
2 sin 0( )
0 0,n
n x x aa ax
x x a
となることは自明のこととしてよい。ただし,n = 1, 2, 3…である。
氏名 量子化学-4
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 量子化学-4
問2. 2次元のポテンシャル井戸の形状が,次のように正方形でない場合,
, 0V x y 0 1 , 0 1x a y a
,V x y (上記以外)
ポテンシャル井戸の形状が問1の様な正方形の場合と比較して,エネル
ギー準位がどのように異なるか,説明しなさい。ただし, 1 とする。
[IV] 多電子原子に関して,以下の問いに答えなさい。ただし,核スピンの影響は考えなくてよい。
問1. ヘリウム原子の基底状態の電子配置は(1s)2である。ヘリウム原子の第1励起状態の電子配置を書きな
さい。
問2. 問1で挙げた電子配置が持ちうる電子状態の項の記号を全て書きなさい。
問3. 問2で挙げた電子状態の中で,最もエネルギーの低い状態の項の記号を書きなさい。
氏名 量子化学-5
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 量子化学-5
問4. 問3で挙げた電子状態について,スピンまで含めた波動関数を書きなさい。縮退している場合は縮
退している波動関数を全て書きなさい。なお,必要な場合には空間波動関数とスピン関数の表記には
以下の表記を使いなさい。
空間波動関数: 1s 2s 2p 2p 2p, , , ,x y z
i i i i i ,スピン関数: ,i i
(ただし, iは電子( 1,2i )を表す。)
[V] 右図の水素分子イオン(H2+)について,以下の問いに答えなさい。
ただし,プロトンの質量を M ,電子の質量をm,プロトン1,プ
ロトン2,および電子のラプラシアンをそれぞれ 2 2 2e1 2, , で表
すとする。なお,解答は原子単位系と SI 単位系のどちらで解答し
てもかまわない。
問1. 右図の水素分子イオン(H2+)について,核の運動を考慮したハミ
ルトン演算子 H を書きなさい。
問2. 水素分子イオン(H2+)の電子エネルギーをボルン・オッペンハイマー近似(BO 近似)を使って求めること
を考える。BO 近似とはどのような近似なのか,近似の根拠も含めて説明しなさい。
問3. BO 近似における水素分子イオン(H2+)のハミルトン演算子 BOH を書きなさい。
氏名 量子化学-6
この線より下に氏名を書いてはいけません
受験番号 量子化学-6
問4. BO 近似を使って水素分子イオン(H2+)の基底状態の電子エネルギーを計算する際に,水素原子の 1s 軌
道の波動関数を使ってイオンの電子の波動関数を次式で表す。 1 と 2 はそれぞれプロトン1と
プロトン2を中心とする規格化された水素原子の 1s 軌道の波動関数である。
1 2c
規格化定数 c を,重なり積分を S として表しなさい。導出の過程も記すこと。
問5. BO 近似を使って,核間距離 R の関数としての水素分子イオン(H2+)の基底状態のエネルギーを,クー
ロン積分 J ,交換積分 K ,重なり積分 S ,水素原子の 1s 軌道のエネルギー 1sE を使って表しなさい。
導出の過程も記すこと。
ただし,クーロン積分 J ,交換積分 K は原子単位系を用いると次式で表される。
1 1 2 22 1
1 1 1 1d dJr R r R
v v
1 2 2 12 1
1 1d dS SKr R r R
v v
問6. 水素分子(H2)と水素分子イオン(H2+)とでは,どちらが核間振動の振動周波数が高いと考えられるか。
理由も含めて答えなさい。