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ワイヤーチェンバーの原理と GEM 千葉研究室 修士1年 杉山史憲

ワイヤーチェンバーの原理とchibaken/html/sugiyama/the...・MSGC(Micro Strip Gas Chamber) ・MICROMEGAS(Micromesh Gaseous Detector) ・GEM(Gas Electron Multiplier) MSGC

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ワイヤーチェンバーの原理と GEM

千葉研究室

修士1年

杉山史憲

発表の流れ

1.飛跡検出器について

2.ガスワイヤーチェンバーの原理

3.GEMについて

4.GEMの中性子検出器への応用

5.今後の課題

発表の流れ

1.飛跡検出器について

2.ガスワイヤーチェンバーの原理

3.GEMについて

4.GEMの中性子検出器への応用

5.今後の課題

飛跡検出器とは

粒子の飛跡を検出するための測定器

主に素粒子物理学の実験に使われる

一言で言えば…

飛跡検出器とは

素粒子物理学とは?

一言で言えば…

物質の構成要素が何かをつきとめるのが目標

-構成要素そのもの

-素粒子の世界での相互作用

粒子の飛跡を検出するための測定器

主に素粒子物理学の実験に使われる

飛跡検出器とは

性能の高い複雑な測定器が

求められるようになってきた

ビームのエネルギー、強度の増加

測定機能の分化

時間、粒子の位置、運動量、

エネルギー、粒子識別のための測定器

飛跡検出器とは

性能の高い複雑な測定器が

求められるようになってきた

ビームのエネルギー、強度の増加

測定機能の分化

時間、粒子の位置、運動量、

エネルギー、粒子識別のための測定器

飛跡検出器とは

性能の高い複雑な測定器が

求められるようになってきた

ビームのエネルギー、強度の増加

測定機能の分化

時間、粒子の位置、運動量、

エネルギー、粒子識別のための測定器

飛跡検出器

飛跡検出器とは

・ガスワイヤーチェンバー

(MWPC、SWPC、DC)・半導体検出器

・GEMなどなど

飛跡検出器とは

・ガスワイヤーチェンバー

(MWPC、SWPC、DC)・半導体検出器

・GEMなどなど

発表の流れ

1.飛跡検出器について

2.ガスワイヤーチェンバーの原理

3.GEMについて

4.GEMの中性子検出器への応用

5.今後の課題

ガスワイヤーチェンバーの原理

KEKにて、製作が容易な

ワイヤーが1本の

チェンバー(SWPC)を作成したので、それを

例にとって説明する

自作のSWPCの詳細

3cm

3cm

20cm

ガスパイプ (エポキシ系接着剤で接着)

フィードスルー (シリコンゴムを塗る)

アルミ製

自作のSWPCの詳細

自作のSWPCの詳細

ワイヤー(直径0.03mm) 金メッキタングステン

電子線を通す穴(マイラーテープでふさいである)

自作のSWPCの詳細

かしめ具で固定

ガスワイヤーチェンバーの原理

・荷電粒子によるガス分子のイオン化

・生成された電子の移動

・アノードワイヤー近傍でのガス増幅

・パルス信号の発生

ガスワイヤーチェンバーの原理

・荷電粒子によるガス分子のイオン化

・生成された電子の移動

・アノードワイヤー近傍でのガス増幅

・パルス信号の発生

荷電粒子によるガス分子のイオン化

写真のチェンバーを動作

するとき、チェンバー内に

ガスを流す

荷電粒子がチェンバー内に入ると、荷電粒子と

ガス分子の中の電子との衝突が起こる

荷電粒子によるガス分子のイオン化

・電子と陽イオンが生成される

(イオン化)

・荷電粒子はその分だけ

エネルギーを失う

(エネルギー損失)

・発生する電子の数は

エネルギー損失の量に比例する

荷電粒子

電子

陽極ワイヤー+HV

陽イオン

荷電粒子によるガス分子のイオン化

・イオン化には2つの過程がある

-初期イオン化

~30個/cm(アルゴン)

-初期イオン化によって出来た電子には、大きな

エネルギーを持ったものも存在し、そのような

電子は、別の分子をイオン化できる

-最終的なイオン化の数

~100個/cm(アルゴン)

ガスワイヤーチェンバーの原理

・荷電粒子によるガス分子のイオン化

・生成された電子の移動

・アノードワイヤー近傍でのガス増幅

・パルス信号の発生

生成された電子の移動

・ワイヤーに高電圧を

印加することによって

電場を形成する陽極ワイヤー+HV

生成された電子の移動

・ワイヤーに高電圧を

印加することによって

電場を形成する

・電場に沿って電子が

アノードワイヤーに

向かって移動する

(電子のドリフト)

陽極ワイヤー+HV

荷電粒子

電子

陽極ワイヤー+HV

ガスワイヤーチェンバーの原理

・荷電粒子によるガス分子のイオン化

・生成された電子の移動

・アノードワイヤー近傍でのガス増幅

・パルス信号の発生

アノードワイヤー近傍でのガス増幅

・細いワイヤー(直径~0.03mm)を使う

ことによって高電場(>30kV/cm)が容易に

得られる

・その高電場によって電子が加速される

・加速された電子がさらにガス分子を

イオン化する

アノードワイヤー近傍でのガス増幅

・この繰り返しによって

電子、及びイオンが

ネズミ算式に増大する

(ガス増幅、電子雪崩)

・増幅度は~105まで

容易に得られる

電子

陽極ワイヤー

ワイヤーチェンバーの原理

・荷電粒子によるガス分子のイオン化

・生成された電子の移動

・アノードワイヤー近傍でのガス増幅

・パルス信号の発生

電磁誘導によるパルス信号の発生

・最終的な電気信号(パルス信号)は、電子、

及びイオンの移動によって信号が発生する

電圧

時間陽極ワイヤー

パルス信号電子

イオン+

発表の流れ

1.飛跡検出器について

2.ガスワイヤーチェンバーの原理

3.GEMについて

4.GEMの中性子検出器への応用

5.今後の課題

新しい試み

・MPGD(Micro Pattern Gas Detector)の開発-ワイヤー以外のもので高電場を形成してガス増幅させる

-色々な種類がある

・MSGC(Micro Strip Gas Chamber)・MICROMEGAS(Micromesh Gaseous Detector)・GEM(Gas Electron Multiplier)

MSGC

・MSGC(Micro Strip Gas Chamber)・PCB(回路板)で電極を

形成してガス増幅

・絶縁層での電荷の蓄積

→ 放電

・増幅度をさほど

大きく出来ない

例:μ-PIC

MICROMEGAS・

MICROMEGAS

(Micromesh Gaseous Detector)・金属メッシュを読み出しPCBの上

50μm程度のところに配置

・その間に高電圧を印加して、

高電場を形成してガス増幅

・スペーサーを配置し、50μm程度と

狭いギャップを確保

200 μm

MICROMEGAS

S1

S2

GEM

・両面フレキシブル基盤を使用

-厚さ

50μm程度

-多数の穴

・ピッチ

140μm

・穴径

70μm

・両穴間に高電圧

-穴内に高電場が形成され、ガス増幅が起こる

GEMフォイル(全体図)

10cm

10cm

GEMフォイル(拡大図)

50 μm

5 μm

5μm

Cu

Polyimide

140 μm

GEMの測定器としての配置

読み出し

カソードプレート

GEM

読み出し基盤

動作信号生成の違い

GEMの多層化

ΔVGEM 依存

ΔVGEMが1V増加するとゲインは約8%増加ΔVGEMが1V増加するとゲインは約8%増加

ED 依存

強電場ではゲインが下がるΔVGEM =320VET =1.6kV/cmEI =3.2kV/cm

最大値で規格化

ED 依存(電場の様子)

S.Bachmann, et. al., NIM A 438(1999) 376-408

GEM表面に入る電気力線が増加

Drift電場が弱い場合 Drift電場が強い場合

Transfer

Drift Drift

Transfer

EI 依存

低電場領域で増加 ΔVGEM =320VED =0.5kV/cmET =1.6kV/cm

増加が緩やかに

EI 依存(電場の様子)

S.Bachmann, et. al., NIM A 438(1999) 376-408

GEM表面に戻る電気力線が減少

Induction電場が強い場合

Induction

Transfer

Induction電場が弱い場合

Transfer

Induction

ET 依存

低電場では増加

高電場では減少

ΔVGEM =320VED =0.5kV/cmEI =3.2kV/cm

ED 、ET 、EI の決定

良いゲインが

得られるような

電場にそれぞれ

設定する

高頻度耐性

ワイヤーチェンバー GEM

GEMの特徴

・真の2次元読み出しが可能-画像に出来る

・多層化が可能-安定した動作

-荷電粒子への変換層を多層化できる

・高頻度耐性

・応用範囲が広い-X線検出器や中性子検出器への利用

・真の2次元読み出しが可能-画像に出来る

・多層化が可能-安定した動作

-荷電粒子への変換層を多層化できる

・高頻度耐性

・応用範囲が広い-X線検出器や中性子検出器への利用

GEMの特徴

発表の流れ

1.飛跡検出器について

2.ガスワイヤーチェンバーの原理

3.GEMについて

4.GEMの中性子検出器への応用

5.今後の課題

中性子検出器

高価封じ切り

チェンバー製作上で材料に制約

GEMの中性子検出器への応用

0.5(1)mm

GEM1-B

GEM4-Cu

GEM2-B

GEM3-Cu

P10 gas

1 mm

1 mm

1 mm

1 mm

・中性子とBが反応して

アルファ線を放出

・アルファ線がガス分子と

衝突して電子を生成

・電子がGEMの穴で

増幅された後、基板で

読み出される

読み出し基板

α

GEMの2次元読み出し

GEMの2次元読み出し

1.6mmピッチのリードパッドを使用

GEMを使った中性子検出器の利点

・高価な3Heガスがいらない

-圧力容器不要

-ガスをたれ流しで使える

・自由な読み出しパターンを選べる

・高分解能-位置、時間

・ガンマ線に対して不感

-Bが軽いのでガンマ線に対してあまり反応しない

発表の流れ

1.飛跡検出器について

2.ガスワイヤーチェンバーの原理

3.GEMについて

4.GEMの中性子検出器への応用

5.今後の課題

今後の課題

Ⅰ.中性子の検出効率を上げたい

・枚数の増加

・ボロンの厚みの最適化

-0.6μm(現在)→1.2μm

・読み出しピッチの改良

-1.2mm(現在)→0.8mm→0.4mm

今後の課題

Ⅱ.自作のSWPCを用いて千葉研究室に

信号で見ることの出来る飛跡検出器を

立ち上げたい

・信号を見るための機材については集まりつつある

・位置精度を上げるための工夫を現在検討中

その他の測定器

・運動量を測る測定器

-強い磁場を用いて、粒子がどの程度

曲げられるかを測定する

-何層かの比例係数管を用いる

・エネルギーを測る測定器

-カロリーメーター

・入射粒子を測定器内で止めて、そのエネルギーに

比例する量を電気信号でとりだす

その他の測定器

・粒子識別のための測定器-粒子識別の普遍的な方法は無い

-例えば、e、μ、π、K、Pを識別する場合

・電磁シャワーを起こす→e・厚い壁も突き抜ける→μ

・電荷をもったハドロンは識別するのが最も難しく、

その粒子の運動量の領域に適した測定を行うことにより

識別する

その他の飛跡検出器

・ドリフトチェンバー(DC)-原理はワイヤーチェンバーと同じ

-ワイヤー間隔は数cm-電子の移動時間の測定によって位置精度を

上昇させる(50μm程度)

・半導体検出器-荷電粒子が電子とホールを生成し、その電子を電気信号

として取り出す

-高精度の位置分解能(10μmよりもよい)

-比較的高価かつ狭い範囲に限られる

比例計数管におけるガスの特性

H2

HeN2

O2

NeArKrXeCO2

CH4

C4H10

Gas(keV/cm)

初期イオン化の数(個/cm)

最終的なイオン化の数(個/cm)

0.34 5.2 9.2

エネルギー損失

0.32 5.9 7.81.96 10 562.26 22 731.41 12 392.44 29.4 944.60 22 1926.76 44 3073.01 34 911.48 16 534.50 46 195

ガス中の電子のドリフト速度

・自分で作成したSWPCでは

だいたい5cm/μsecくらい

ワイヤーで得る高電場

( )ln( / )

VE rr b a

=V:アノードとカソードの間の電圧

a:ワイヤーの半径

b:カソードの半径

r:中心からの距離

電磁誘導によるパルス信号の発生

電圧

時間

陽極ワイヤー

パルス信号

電子

カソード

陽極ワイヤー側の信号

カソード側の信号

電圧

時間

パルス信号

電磁誘導によるパルス信号の発生

・実際はワイヤー付近が一番、電子と

イオンの数が多いので、ワイヤー近傍の

場合を考えればよい

・ワイヤー近傍なので、電子はすぐワイヤーに

到達してしまい、信号形成にはあまり寄与

しない

・イオンの移動速度は電場に比例するので、

だんだん遅くなる→信号形成に大きく起因する

電磁誘導によるパルス信号の発生

電圧

時間

陽極ワイヤー

パルス信号

電子

イオン- +

カソード

陽極ワイヤー側の信号

両面フレキシブル基盤

・プリント配線基板の1種で、薄くて屈曲性がある

・絶縁体には柔軟性の高いポリイミドを用いている

・Cu薄膜を電極として用いる

GEMのX線検出器への応用

X線吸収画像

ET 依存

Induction

Transfer

Transfer

DriftGEM-1

GEM-2

GEM-3

ED dependence

EI dependence

ED dependence×EI dependence

Drift領域とInduction領域、

双方の特徴を持っているのではないか

ED dependence×EI dependence

Readout pads

ET 依存

良く一致する良く一致する

ΔVGEM =320VED =0.5kV/cmEI =3.2kV/cm

GEM内での電子の様子

ガスの封じきりとたれ流し

・ガスの封じきりの場合

-アウトガスのない容器に限定される

-接着剤は使えない

-ヒットレートが高いと使えない

・ガスがたれ流しの場合

-ガスを常に流している状態なので容器等の

アウトガスは考えなくて良い

-ガスがなくならない

信号を見るための機材

・写真のような機材を用意する

オシロスコープ高圧電源 後段増幅器

信号線

高圧線

ガスパイプ

前置増幅器

これらの機材で粒子がヒットしたかどうかを確認できる

改良を加える

・速さがわかる!

・チェンバーを

2方向に並べれば

位置もわかる!

・現在、このような事を実現可能な回路や

機材について検討中