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Copyright © 2017 Japanese Society for Pharmaceutical Palliative care and Sciences 初期がんからの 緩和ケア 一般社団法人 日本緩和医療薬学会 かん

かん わ 緩和ケア - jpps.umin.jpjpps.umin.jp/mayaku/file/1704_2.pdf · 1. まだ抗がん剤で治療中なので、緩和ケアは関係ない。 1. がんやがんの治療は痛くて当たり前。痛みは我慢するも

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初期がんからの緩和ケア

一般社団法人日本緩和医療薬学会

わかん

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初期がんからの緩和ケア

• 緩和ケアとは?

• 緩和ケアの認識の変化

• 緩和ケアに対する心のバリア

緩和ケアについて正しい知識を学びましょう

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緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問

題に直面する患者とその家族に対して、痛

みやその他の身体的、心理的、社会的な問

題、さらにスピリチュアルな問題を早期に

発見し、的確な評価と治療を行なうことに

よって、苦痛を予防したり和らげることで

QOL(人生の質、生活の質)を改善するア

プローチである。

緩和ケアとは?

世界保健機関(WHO), 2002

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全人的苦痛 社会的苦痛

身体的苦痛

精神的苦痛

スピリチュアルな苦痛

仕事上の問題人間観的な問題経済的な問題家庭内の問題相続

人生の意味への問い、罪の意識

苦しみの意味、死の恐怖、神の存在への追求、死生観に対する悩み

不安恐れ怒りうつ状態いらだち孤独感

痛み、だるさ、息苦しさ、動けないこと、日常生活の支障

世界保健機関(WHO), 2002

全人的苦痛(トータルペイン)

患者が訴える4つの

苦痛を総合的にとらえることが必要

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診断時 死亡

がん病変の治療 痛みの治療・緩和医療

がん病変の治療

痛みの治療・緩和医療診断時 死亡

遺族へのケア

世界保健機関(WHO), 2002必要に応じ、治療の早期から連携!

緩和ケアの認識の変化

緩和ケアはがんの初期から行うのね

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緩和ケアの認識

緩和ケアを知らない人が多いんだね知っている,

14.4

少し知っている, 23.8

全く知らない, 58.5

無回答, 3.3

緩和医療学会:一般市民を対象にした「緩和ケア」に関する認識度調査(n=2,312)

緩和ケアはがんの終末期だけでなく、がんの早期から治療と一緒に受けることができる

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緩和ケアに対する心のバリア

1.まだ抗がん剤で治療中なので、緩和ケアは関係ない。

1.がんやがんの治療は痛くて当たり前。痛みは我慢するものだ。

2.モルヒネなどの鎮痛薬は中毒症状を起こすから使わないほうがいい

3.緩和ケアは、抗がん剤治療が効かなくなった患者が受けるもの。そんな話はききたくない。

4.主治医に任せているので今は関係ない。http://gan-mag.com/medical/2123.html

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緩和ケアによって心と体の痛みがとれると・・・

前向きな生活が送れます

http://gan-mag.com/medical/2123.html

ぐっすりと眠れるようになる

何事にも前向きになる

食事が食べられるようになる

治療に対する意欲がわいてくる

明るくコミュニケーションがとれる

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がんの罹患率と痛みの発生率

一般社団法人日本緩和医療薬学会

り かん りつ

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がんの罹患率と痛みの発生率

•がんの死亡率

•がんの罹患率

•がんの進行度と痛みの発生率

がんの罹患率と痛みの発生率について正しい知識を学びましょう

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がん死亡数と全死亡数に対する割合

厚生労働省ホームページ

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がんの主な部位別死亡者数の年次推移

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がん部位別の罹患者数

死亡者と罹患者は数が違うのね

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がんの進行と痛みの発生率の関係

緩和ケア推進コンソーシアムホームページより許可を得て転載

がんと診断された時から痛みはありますので、適切に対処することが必要です

*がんになっても全ての患者が痛みを感じるわけではありません

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がんの痛みとは?

一般社団法人日本緩和医療薬学会

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がんの痛みとは?

•がんの痛みについて

•我が国での痛み治療の実施状況

•がんの痛みを我慢すると・・・

がんの痛みについて正しい知識を学びましょう

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がんの痛みについて

がん患者の70%が痛みを経験するんだね

• 末期がん患者の約75%が痛みを経験する。

• 痛みは身体的苦痛だけでなく、精神的、社会的、霊的な(スピリチュアルな、宗教的な)面にも影響を及ぼし、患者の生活の質(Quality of Life)を著しく低下させる。

• 痛み止めを適切に使用することで、がんの痛みの80%はとることができる。

OPTIM

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18

がん患者の痛みの原因

がん患者の痛みといっても原因が色々あるのね• がんそのものの痛み

内臓の痛み

骨や皮膚の痛み

神経を巻き込んだ痛み

• がんの手術による痛み手術後のきずの痛み

• がん以外の痛み以前からの腰の痛み、膝の痛み、肩の痛み

OPTIM

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• VAS(visual analogue scale)

• NRS(numerical rating scale)

• Face Scale

痛みなし 想像できる最高の痛み100mm

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

痛みなし 想像できる最高の痛み

痛みの強さを調べる方法

0mm

臨床緩和医療薬学を引用転載

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わが国でのがんの痛み治療の実施状況

がんの痛みを経験した患者さんのうち、医師に痛みを訴えなかった方は29%、痛みを訴えたが、痛み治療が行なわれなかった方が35%でした。

みんな痛みを我慢しているのかな?

緩和ケア推進コンソーシアムホームページより許可を得て転載

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武士道 痛みに耐えることが美徳

痛い、痛いと言うことはみっともない

日本人の痛みの捉え方

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予防接種

男の子でしょ、

泣いちゃだめでしょう!

痛い時には痛いと言いなさい

痛みに耐える文化痛い時に痛いと言える文化

痛い時には痛いと言いましょう

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がんの痛みを我慢すると・・・

1. 毎日の暮らしが悪くなります食事ができないお風呂に入れない眠れない

2.心や気持ちのつらさがでてきます楽しいと思う事が減ったイライラして集中できなくなった

がんの痛みは早く治療しましょう

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がんの痛みに使われる薬剤

一般社団法人日本緩和医療薬学会

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がんの痛みに使われる薬剤

•麻薬の捉え方

•主な医療用麻薬の剤形

•医療用麻薬の作用

がんの痛みに使われる薬剤について学びましょう

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麻薬の捉え方

覚せい剤大麻危険(脱法)ドラッグ

幻覚発現薬コカインケタミン

医療用麻薬(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル)

医療用麻薬

法律上の麻薬(麻薬向精神薬取締法上の麻薬)

国民の、麻薬の一般的な認識

麻薬の捉え方

「麻薬」と「医療用麻薬」は区別し

ましょう

大事です!!

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モルヒネ 錠剤、カプセル、粉ぐすり、坐薬、注射

オキシコドン 錠剤、粉ぐすり、注射

フェンタニル 注射、貼りぐすり、舌下(ぜっか)錠、バッカル錠

主な医療用麻薬の剤形

たくさんの種類があるんだね

バッカル錠:錠剤の1種で、薬を頬と歯茎の間に挟み、口腔内の唾液でゆっくり溶かして使用する薬

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徐放性製剤 速効性製剤

モルヒネ徐放剤

フェンタニル貼付剤

モルヒネ錠

モルヒネ坐剤

モルヒネ末

モルヒネ内服液

オキシコドン徐放剤

(1989)

オキシコドン散

モルヒネ&フェンタニル

注射剤

(2003)(2007)

(2003)

(2002)

主な医療用麻薬の剤形

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フェンタニル速効性製剤

特殊な剤形もあるのね

イーフェンバッカル錠剤、アブストラル舌下錠パンフレット

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医療用麻薬の作用

1.一般的な鎮痛薬とは作用する場所がちがいます。

1.胃の粘膜を傷つけることはありません。

1.中毒になったり、寿命が短くなったりすることはありません。

1.早くから使っていても効かなくなることはありません。

1.主な副作用は、便秘・吐気・眠気ですが、予防できるお薬がありますので心配することはありません。

痛みを伝える神経に作用して痛みを和らげます。

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WHO除痛ラダー

一般社団法人日本緩和医療薬学会

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WHOの除痛ラダー(除痛方式)

WHO方式治療法について正しい知識を

学びましょう

• WHO三段階除痛ラダー

• WHO方式がん疼痛治療法基本薬リスト

• 鎮痛薬投与の5原則

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– 痛みについて患者の訴えを信じ、過小評価しないこと

– 痛みについての話し合いから始めること

– 痛みの強さと症状を把握すること

– 痛みの経過を詳細にきくこと

– 患者の心理状態を把握すること

– 理学的診療をていねいに行うこと

– 必要な検査を行うこと

– 痛み治療開始にあたっての評価測定時には、薬以外の治療法の適応も検討すること

– 治療を開始したら除痛の程度を必ず確認すること

世界保健機関編,武田文和訳:がんの痛みからの解放(第2版)金原出版,東京(1996)一部改変

痛みのアセスメントの手順

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世界保健機関編,武田文和訳:がんの痛みからの解放(第2版)金原出版,東京(1996)一部改変

非オピオイド鎮痛薬(NSAIDs,アスピリン,アセトアミノフェン)±鎮痛補助薬

軽度から中等度の痛み 中等度から高度の痛み

強オピオイド鎮痛薬

モルヒネ

オキシコドン

フェンタニル

メサドン

弱オピオイド鎮痛薬リン酸コデインジヒドロコデイントラマドール

【第1段階】 【第2段階】 【第3段階】

軽度の痛み

Cancer Pain Relief: WHO, 1996 茶色は医療用麻薬

WHOではがん疼痛治療に医療用麻薬の使用を推奨している。

WHO三段階除痛ラダー

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薬物群 代表薬 代替薬

非オピオイド鎮痛薬 アスピリンアセトアミノフェンイブプロフェンインドメタシン

(コリン・マグネシウム・トリサルチレート)(ジフルニサル)ナプロキセン

弱オピオイド(軽度から中等度の痛み用のオピオイド鎮痛薬)

コデイン ジヒドロコデインアヘン末トラマドール

強オピオイド(中等度から高度の痛み用のオピオイド鎮痛薬)

モルヒネ メサドン(ヒドロモルフィン*)オキシコドン

(レボルファノール)ペチジンブプレノルフィン

カッコ内は日本では使用できない医薬品 *国内製造販売承認申請中

世界保健機関編,武田文和訳:がんの痛みからの解放(第2版)金原出版,東京(1996)一部改変

WHO方式がん疼痛(とうつう)治療法基本薬リスト

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薬剤 標準量 副作用

アスピリン 500〜600mg/

回4〜6時間毎

胃の障害消化不良、下血

アセトアミノフェン 650〜1000mg/

回4〜6時間毎

肝と腎に対する毒性

イブプロフェン 400mg

4〜6時間毎胃の障害があるが、アスピリンより少ない

インドメタシン 25mg

6時間毎胃の障害が多い

世界保健機関編,武田文和訳:がんの痛みからの解放(第2版)金原出版,東京(1996)一部改変

がんの痛みに対する非オピオイド鎮痛薬

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経口的に

患者毎の個別的な量で

その上で細かい配慮を時刻を決めて

規則正しく

除痛ラダーにそって効力の順に

鎮痛薬を効果的かつ安全に使用するために、「WHO方式がん疼痛治療法」では5つの原則が示されています。

世界保健機関編,武田文和訳:がんの痛みからの解放(第2版)金原出版,東京(1996)一部改変

鎮痛薬投与の5原則

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• 第1目標

– 痛みに妨げられずに夜は良眠できる状態

• 第2目標

– 安静時に痛みがない状態

• 第3目標

– 体動時にも痛みがない状態

世界保健機関編,武田文和訳:がんの痛みからの解放(第2版)金原出版,東京(1996)一部改変

治療目標の設定(段階的な目標を設定)

段階的な目標があるんだね

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• 患者に痛みを我慢させない

• 患者が痛みを気軽に訴えられるよう配慮する

• 日常の診療で痛みについて常に患者と話し合う

• なるべく早くから痛みに対応する

• 痛みが強い場合は躊躇なくWHO三段階除痛ラダーの第2段目や第3段目の薬剤を開始する

• 医療用麻薬を開始するときには患者や家族の不安や気がかりに丁寧に対応する

疼痛治療を行なう上での注意点

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がんの痛みと医療用麻薬の作用

一般社団法人日本緩和医療薬学会

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がんの痛みと医療用麻薬の作用

• がんとがんの痛み

•オピオイド受容体サブタイプ

医療用麻薬の作用について正しい知識を

学びましょう

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二人に一人が「がん」で亡くなる時代

がん患者の70-80%に痛みが現れる

がん患者の痛みは医療用麻薬でとれる時代である

がんとがんの痛み

がんの痛みは医療用麻薬で治療するのね

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モルヒネ オキシコドン フェンタニル

鎮痛の強さ 1 1.5 100

代謝 グルクロン酸抱合 CYP2D6

CYP3A4

CYP3A4

代謝産物 M-3-G 55%

(有意な鎮痛活性なし)

M-6-G 15%

(鎮痛活性あり)

オキシモルフォン1%未満

(鎮痛活性あり)

ノルオキシコドン12~39%

(有意な鎮痛活性なし)

ノルフェンタニル(有意な鎮痛活性

なし)

腎障害による影響

あり 少ない 少ない

bioavailability 30% 60~90% ―

蛋白結合率 20〜36% 45% 80~86%

肝障害による影響

あり あり あり

臨床緩和医療薬学を引用改変

代表的医療用麻薬の特徴

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μ受容体 δ受容体 κ受容体

内因性リガンドβ-エンドルフィン

エンドモルフィンエンケファリン ダイノルフィン

作動薬モルヒネ、フェンタニル、

オキシコドンエンケファリン Ketocyclazocine

生理機能

鎮痛、多幸感、興奮

依存形成、抗利尿

ドパミン遊離作用

鎮痛、多幸感、情動

依存形成

鎮痛、嫌悪感

鎮静、利尿

ドパミン遊離

抑制作用

臨床緩和医療薬学を引用改変

医療用麻薬は主にμ受容体に結合し、痛みを緩和する

オピオイド受容体サブタイプの機能

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緩和ケアによって心と体の痛みがとれると・・・

前向きな生活が送れます

http://gan-mag.com/medical/2123.html

ぐっすりと眠れるようになる

何事にも前向きになる

食事が食べられるようになる

治療に対する意欲がわいてくる

明るくコミュニケーションがとれる

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医療用麻薬の副作用

一般社団法人日本緩和医療薬学会

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医療用麻薬の副作用

• 医療用麻薬の副作用

•医療用麻薬の副作用についての誤解

医療用麻薬の副作用について正しい知識を

学びましょう

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医療用麻薬の主な副作用

便秘 継続的にみられます。下剤を使用し便通コントロールを行うことができます。

吐き気 飲み始めて1-2週間で治まります。前もって吐き気止めを使用したり、継続的に使用することもできます。

眠気 飲み始めたとき、用量を増やしたときに出てきます 1週間ほどで自然に軽減ないし消失します。

痛みがとれるとそれまでの睡眠不足が解消されて、眠くなることもあります。

その他 痛みをとるための量よりもはるかに多く使用すると、呼吸が遅くなることがあります。

副作用は対処できるのね

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医療用麻薬の副作用についての誤解

1.中毒や依存症になる2.寿命が短くなる3.副作用が強いため、最後の手段の薬剤である4.使いはじめるとするとやめられない5.精神が錯乱する まだまだ誤解されて

いるんだね

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緩和ケアによって心と体の痛みがとれると・・・

前向きな生活が送れます

http://gan-mag.com/medical/2123.html

ぐっすりと眠れるようになる

何事にも前向きになる

食事が食べられるようになる

治療に対する意欲がわいてくる

明るくコミュニケーションがとれる

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医療用麻薬の使用状況−日本と先進国の比較−

一般社団法人日本緩和医療薬学会

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医療用麻薬の使用状況

• 主要各国の医療用麻薬消費量

• 本邦における医療用麻薬消費量推移

• オピオイド鎮痛薬の充足率

医療用麻薬の使用状況について学びま

しょう

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0.0 4500.0 9000.0 13500.0 18000.0 22500.0

アメリカ

カナダ

オーストラリア

ドイツ

オーストリア

フランス

イギリス

イタリア

韓国

日本

モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンの合計(100万人1日当りモルヒネ消費量換算(S-DDD))

INCB 2010

(17,926)

(16,444)

(15,045)

(14,227)

(7,806)

(6,407)

(3,309)

(2,675)

(1,257)

(979)

主要各国の医療用麻薬消費量(2007-2009)

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1990年代

コデイン モルヒネ

2015年

コデイン モルヒネ

トラマドール

タペンタドール

フェンタニル

オキシコドン

メサドン

選択肢は年々増加している

消費量は増加しているのか?

使用可能な医療用麻薬(2007-2009)

現在では多くの医療用麻薬が使用できるんだね

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2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

消費量(

kg)

(年)出典:厚生労働省

モルヒネ換算量

ゆるやかな増加、近年はやや減少傾向

本邦における医療用麻薬消費量の推移

最近はやや減少傾向なのね

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2004 2006 2008 2010

2003 2005 2007 2009 2011

(年)

2004 2006 2008 2010

2003 2005 2007 2009 2011

2004 2006 2008 2010

2003 2005 2007 2009 2011

(年)(年)

消費量(

kg)

消費量(

kg)

■ オキシコドン ■ フェンタニル

出典:厚生労働省

慢性疼痛への適応拡大

本邦における医療用麻薬消費量の推移

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JPSM (2014) 47: 283-297

AC

M 2

010(%)

Canada USA Austria AustraliaGermany France UK Korea Italy Japan

Adequacy of Consumption Measure(ACM)2010 年の医療用麻薬の消費量(モルヒネ換算)と Seya らの報告(J Pain Palliat Care

Pharmacother, 2011)にもとづく妥当消費量から算出した充足率

15%

目指すべきオピオイド鎮痛薬の充足率

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医療用麻薬に対する誤解

一般社団法人日本緩和医療薬学会

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医療用麻薬に対する誤解

• がんの痛みからの解放を阻害する因子

• がんの痛み治療に関する誤った認識

• 医療用麻薬と麻薬の違い

医療用麻薬の誤解について正しい知識を

学びましょう

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がん患者が痛みから解放されていない現状には多くの理由があるが、主な理由は次の通りである。

1)がんの痛みからの解放や緩和ケアに関する国の政策の欠如

2)がん患者の痛みが緩和できることへの医療担当者、医療政策立案者、医療行政担当者、それに市民の認識不足

3)資金の不足、医療やケアの配分システムの不十分さと人材の不足

4)オピオイド鎮痛薬の医療目的の使用が精神的依存や薬の不正使用につながるとの不安

5)オピオイド鎮痛薬の入手と使用に対する法的な制約

(Cancer Pain Relief: WHO, 1996)

がんの痛みからの解放を阻害(そがい)する因子

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医療用麻薬(オピオイド)の使用を避けたいと思う理由をお教え下さい。(複数回答可) (n = 41)

95.1%

95.1%

61.0%

39.0%

24.4%

9.8%

0%

0 20 40 60 80 100

中毒や依存症になると思うから

痛みを抑える最後の手段という気がするから

寿命が縮むと感じるから

次々と服用する量が増やされるのが嫌だから

副作用が強いから

使用しても痛みが治まらないことがあるから

その他

Q.

(%)

がん疼痛治療患者調査レポート Vol.1(2005年)

医療用麻薬の使用を避けたい理由

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がんの痛み治療に関する誤った認識 (1)

がんと2006年12月に告知され,余命1ヶ月と医師に告げられた。”すべてを投げ出したくなる”ほどの激痛と戦いながら唄い続けることを選択。その姿に多くの視聴者が彼女

の生き方に感銘を受け,多くの反響を呼んだ。

しかし・・・

モルヒネを飲むと頭がボーっとして歌詞を覚えられないから,痛み治療は行わないで唄い続けることを決意。

モルヒネ等の医療用麻薬に関する誤解・偏見を視聴者に与える可能性が高い。

彼女の痛みに耐えて,唄い続ける姿が多くの人々に感銘を与えた。

「あるシンガーのお話」’07.8 某テレビで放映

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がんの痛み治療に関する誤った認識 (2)

大腸がんステージⅣで闘病していることを表明した記者会見で、夜中にこんな痛みと闘うのはつらい」「モルヒネで殺してくれと言いました。安楽死ですね」といった趣旨の発言をされた俳優。

その後、訃報が報じられた。報道では「モルヒネを使っても取れない痛みに耐えた」「苦しみながら壮絶死」といった言葉が並んだ。

モルヒネ等の医療用麻薬に関する誤解・偏見を視聴者に与える可能性が高い。モルヒネは命を縮める薬ではなく、苦痛を和らげる薬であり、適切に使用することで、確実に苦痛を和らげ、生活の質を高める。マスコミには、ぜひのそのようなことを解説してほしい。

報道では、癌終末期は強い苦痛に耐えるのが当たり前で、まるで苦しみに耐え抜いたことを称えるような論調のものが多く見受けられた。逆に、適切な緩和ケアが受けられなかったのではないか、という報道はまるで皆無であった。

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医師の適切な処方に従ったがん疼痛治療に用いられる医療用麻薬は安全で効果的である。

番組の制作にあたっては,がん疼痛治療の専門家の監修のもとで作成することが必須である。

国家的に「がんの痛み治療」の普及活動が行われて

おり,国民に正しい医療用麻薬の使用法を広げていくことが急務である。(がん対策基本法)

がんの痛み治療に関する誤った認識まとめ

まだまだ誤った認識をしている人がいるのね

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アヘン戦争がんの痛み治療にモルヒネのような強い鎮痛薬を使いましょう。

中毒になって、廃人になってしまうから使いたくない。

がん年齢の人はアヘン戦争から麻薬に対する恐怖がある

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アヘン戦争

がんの痛み治療にモルヒネのような強い鎮痛薬を使いましょう。

中毒になって、廃人になってしまうから使いたくない。

ダメ。ゼッタイ。

若い人はアヘン戦争に加え、「ダメ。ゼッタイ。」から麻薬に対する恐怖がある

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•麻薬中毒になってしまう…

•最後の手段かもしれない…

•寿命が短くなってしまう…

•危ない、怖い…

痛みをとってほしい…

ならば痛みを我慢しようか…

でも、医療用麻薬を使うと・・・

がんの痛みを我慢する理由

緩和ケア推進コンソーシアムホームページより許可を得て転載

Copyright © 2017 Japanese Society for Pharmaceutical Palliative care and Sciences

•麻薬中毒になってしまう…

•最後の手段かもしれない…

•寿命が短くなってしまう…

•危ない、怖い…

痛みをとってほしい…

ならば痛みを我慢しようか…

でも、医療用麻薬を使うと・・・

がんの痛みを我慢する理由

緩和ケア推進コンソーシアムホームページより許可を得て転載

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脱法ドラッグ・不正麻薬・覚せい剤・大麻

「ダメ ゼッタイ」薬物乱用防止教育

脱法ドラッグ・不正麻薬・覚せい剤・大麻≠医療用麻薬

厚生労働省

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「医療用麻薬」と「麻薬」は何が違うの?

不正麻薬医療用麻薬

麻薬

違法な流通によって乱用される麻薬

医薬品の基準に従い国家が審査し、有効性および安全性が確認され医薬品として製造、販売が承認

必要不可欠な薬適正使用

必要ない薬ダメ。ゼッタイ。

「医療用麻薬」は「不正麻薬」と全く異なる!

モルヒネ フェンタニル オキシコドン 「MDMA (エクスタシー)」

「マジック・マッシュルーム」

「幻覚薬 (LSD) 」

「違法ドラッグ 」 等

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医療用麻薬によって心と体の痛みがとれると・・・

前向きな生活が送れます

http://gan-mag.com/medical/2123.html

ぐっすりと眠れるようになる

何事にも前向きになる

食事が食べられるようになる

治療に対する意欲がわいてくる

明るくコミュニケーションがとれる

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疼痛下における依存性

一般社団法人日本緩和医療薬学会

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疼痛下における依存性

• 薬物依存の定義

•疼痛下での薬物依存

•がん疼痛時に中毒とならない理由

痛みのある時の依存性について正しい知識を学び

ましょう

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WHOは1964年に「嗜癖 ( し へ き ) addiction」および「習慣

habituation」という用語を撤回し、「薬物依存drug dependence」と

言う用語を提案した。

1969年にWHO Expert Committee on Drug Dependence

(ECDD) は薬物依存とは「生体と薬物の相互作用の結果生じた生

体の精神的、時には精神的/身体的状態をさし、この状態は薬物

の精神効果を体験するため、また、時に退薬による苦痛から逃れ

るために、薬物を絶えずまたは周期的に摂取することへの強迫を

必ず伴う行動やその他の反応によって特徴づけられる。」と定義し

た。

薬物依存 drug dependence の定義

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多幸感 増量

中断

葛藤

欲求

回避

薬物の使用

身体依存

耐性

精神依存

退薬症候

合法

薬物依存へのプロセスならびにその悪循環

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Cancer Pain Relief: WHO, 1996

がんの痛みの治療に医療用麻薬

を使用しても、

身体的依存は問題化せず、

精神的依存も起こらない!

WHOが認めた事実!

安心して使用できるのね

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朝日新聞科学部科学エディター高橋真理子編集委員

疼痛下での薬物依存

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モルヒネ精神依存

腹側蓋被野 (A10)側坐核

Morphine は、中脳辺縁ドパミン神経系の起始核が存在する腹側被蓋野において、抑制性神経伝達物質である GABA の遊離を抑制し (脱抑制)、ドパミン神経の過興奮を引き起こすことで、精神依存を発現する。

中脳辺縁ドパミン神経系

m

モルヒネ

GABA↓

ドパミン↑

精神依存の発現

脱抑制

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医療従事者だけでなく、国民の理解が不可欠

医療従事者だけでなく、国民の理解が不可欠

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・漸減法(ぜんげんほう)により安全に中止できる。まず、モルヒネ投与量を半減し、2〜3日続ける

・問題がなければ、さらに2〜3日毎に半減していく

・30mg/日となったら、これを2〜3日続けてからモルヒネの中止に至る

がん緩和ケアに関するマニュアル、平成17年

モルヒネの反復投与が不要となった時

モルヒネの身体依存は漸減法に従い減量していけば特に臨床的に問題とはならず、社会的問題にもなっていない

そうしたら安心ね

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医療用麻薬によって心と体の痛みがとれると・・・

前向きな生活が送れます

http://gan-mag.com/medical/2123.html

ぐっすりと眠れるようになる

何事にも前向きになる

食事が食べられるようになる

治療に対する意欲がわいてくる

明るくコミュニケーションがとれる

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薬物依存(全般と医療用麻薬) 対象年代

薬物とは? 中学生以上

お酒やタバコの依存性 中学生以上

薬物依存とは? 中学生以上

薬物乱用に使用される薬物 中学生以上

不正薬物と医療用麻薬•向精神薬の違い 中学生以上

危険(脱法)ドラッグ 中学生以上

薬物依存症の症状 中学生以上

薬物依存症の治療 中学生以上

麻薬の取り締まり 中学生以上

乱用される薬物に対する心構え 中学生以上

がん疼痛治療と医療用麻薬 対象年代

初期がんからの緩和ケア 高校生以上

がんの罹患率と痛みの発生率 高校生以上

がんの痛みとは 高校生以上

がんの痛みに使われる薬剤はどんなものがあるの? 18歳以上

WHO除痛ラダー 18歳以上

がんの痛みと医療用麻薬の作用 18歳以上

医療用麻薬の副作用 高校生以上

医療用麻薬の使用状況-日本と先進国の比較‐ 18歳以上

医療用麻薬に対する誤解 高校生以上

疼痛下における依存性 高校生以上

対象年代の目安