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手嶋龍 さん 使 退 タブレットで松平定知 蝉し ぐれ」 取材旅行ではタブレッ ト端末を愛用する 撮影/坪 田充晃 企画構成/座 間真―・ 新潮社

ryuichiteshima.com · Created Date: 9/13/2012 4:09:20 PM

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Page 1: ryuichiteshima.com · Created Date: 9/13/2012 4:09:20 PM

手嶋龍一 さん

手嶋龍

一さんといえば、NH

Kワシントン支局長の時代、ブ

ッシュ対ゴアの大統領選の朝、

「選挙

のプ

ロも誰

ひとり優劣

を日にしなくなった」と髪の毛

本の接戦を言い当てたレポート

を思い出す。NHKから独立後

は、世界に張り巡らした情報網

を駆使して、ノンフイクション

から小説まで多くの著作を世に

ってきた。また慶応大学大学

院教授としてインテリジ

エンス

論を講義している。インテリジ

エンスとは、膨大な

一般情報の

海からきらりと光る原石を見

け出し、指導者に揺るぎない決

断を促す選り抜かれた情報をい

う。「フクシマ原発事故を経験し

た日本は今こそインテリジ

エン

ス能力を磨かなければ」と手嶋

さんは語る。 一年のうち三カ月

は欧米や東アジアなど取材の旅

に出かける。「命にも等し

い情

報源をみだりにサイバー

・スペ

ースにさらすわけにはいきませ

ん。貴重な情報を手に入れるに

は、これはという人に会

って話

を聞く他に王道はありません」

穏やかな語り回の

一方、孤独

でストイ

ツクなインテリジ

エン

ス・マスターの面影を漂わせる。

相手の懐にす

っと入りこむため

なのか、「いつも眠そうな眼をし

ているといわれます」とユーモ

アを忘れない。手嶋さんは取材

旅行ではタブレツト端末を愛用

している。「特殊な利用法と笑

われるのですが」と前置きし、

披露してくれたのは、タブレッ

トで小説の朗読を聴く愉しみ。

NHKアナウンサーだ

つた松平

定知さんが朗読する藤沢周平の

『蝉しぐれ』がお気に入りだ。

「松平さん朗読の

『蝉しぐれ』

は、ダウンロードすると十二時

間の大作。揺れる飛行機や列車

でもタブレツトなら快適です。

松平さんが精魂こめて読み聞か

せる藤沢作品は天下

一品。同時

に文体をじ

っくり味わいたいと

きは、電子ブックを開きます。

端正な文章をタブレツトの大き

な文字で追

っていく。 一年間、

無人島で暮らすことになっても、

松平さん朗読の

『蝉しぐれ』さ

えあれば退屈しない。奇跡のよ

うな組み合わせ。原作者である

ジョン・ル・カレが朗読する

『寒

い国から帰

ってきたスパイ』も

お薦め。ジャック

・ロンドンの

『火を熾す』も鋼を思わせる見

事な文体で朗読向きです」

眼下にマンハツタンの摩天楼

を眺めつつ、『蝉しぐれ』を聴き

終えるとタブレットを閉じ、空

港で情報源と待ち合わせる。極

上のインテリジエンスを求めて。

通信速度と映像美が際立ち、新

しい操作感覚を備えた防水ス

マートフオン「ARROWS

Z」

タブレットで松平定知の「蝉しぐれ」

取材旅行ではタブレット端末を愛用する

撮影/坪 田充晃 企画構成/座 間真―・新潮社