8
2018年度 須磨学園中学校入学試験 国  語 第  2  回 (注 意) 解答用紙は、この問題冊子の中央にはさんであります。まず、解答用紙を取り出して、 受験番号と氏名を記入しなさい。 1.すべての問題を解答しなさい。 2.解答はすべて解答用紙に記入しなさい。 3.字数制限のある問題については、記号、句読点も1字と数えること。 4.試験終了後、 解答用紙のみ提出し、問題冊子は持ち帰りなさい。 ※この紙は再生紙・大豆インクを使用しています。

国 語 - 学校法人須磨学園 · 2019-02-08 · 全体の三分の一くらいの人がこのよなる。話をしていても相手が自分のことをどう思っているのか脅

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 国 語 - 学校法人須磨学園 · 2019-02-08 · 全体の三分の一くらいの人がこのよなる。話をしていても相手が自分のことをどう思っているのか脅

2018年度 須磨学園中学校入学試験

国  語第  2  回

(注 意)

 解答用紙は、この問題冊子の中央にはさんであります。まず、解答用紙を取り出して、

受験番号と氏名を記入しなさい。

1.すべての問題を解答しなさい。

2.解答はすべて解答用紙に記入しなさい。

3.字数制限のある問題については、記号、句読点も1字と数えること。

4.試験終了後、 解答用紙のみ提出し、問題冊子は持ち帰りなさい。

※この紙は再生紙・大豆インクを使用しています。

Page 2: 国 語 - 学校法人須磨学園 · 2019-02-08 · 全体の三分の一くらいの人がこのよなる。話をしていても相手が自分のことをどう思っているのか脅

次の文章を読んで、後の設問に答えなさい。

 

若い人たちと話していると、「人間どうしは決してわかりあ

えない」という人がいる。たしかに私は他人の心を覗の

きこむこ

とはできないし、他人も私の心を覗くことはできない。【 

 

】、だからといって「わかりあえない」といえるだろうか。

 

私たちがじっさいに注1他

者とコミュニケーションしている場面

から考えてみよう。駅の売店で買い物してお金を払は

ったら「お

客さん、二十円足りませんよ」。【 

② 

】私たちは「しまっ

た」と思って二十円払う。ちゃんとわかりあっている。「そん

なことじゃない、他人の心は結局はわからないといっているん

だ」とaハンロン

⌇⌇⌇⌇する人がいるだろうけれど、それもどうか。会

話のさいちゅう、友達が楽しい・悲しい気分でいることを私た

ちは明らかにわかる。友達が「おまえには俺の気持ちなんか絶

対にわからない!」と叫さ

んだときでさえ、彼がいま怒っている

ということだけは「わかる」のである。

 

つまり、ア私たちはふだん、他者のいうことをそれなりに理解

しあって生きているのだ。「それなりじゃダメ、一〇〇パーセ

ントわかってくれなきゃ嫌い

だ」という人もいるかもしれない。

でもほんとうに「すべて」わかってもらう必要があるだろう

か。私たちの心のなかにはさまざまな感情や考えや物たちが浮う

かんでいるが、それをそっくりそのまま、イちょうどコンピュー

タ同士をケーブルでつなぐようにして相手に伝える必要がある

のだろうか。「いいたいこと」があるときに、それだけを伝え

られればいいのではないか。そして、それはかなり簡単な場合

(売店の例)もあるし、難しいけれど一い

っしょうけんめい

生懸命に言葉をbクフウ

⌇⌇⌇

して伝えようとする場合もある(小説や詩)。

  

 

しかし人はしばしば、「人間は『そもそも』わかりあえな

い」と思う。なぜなのだろう。なかなか他人にいえないよう

な傷(劣れ

等とう

感かん

と結びついたものなど)を抱えこんでいて、い

つも他人との間に「壁」を感じている人もいるかもしれな

い。友達から裏切られたと思って「しょせん他人は信頼でき

ない」という感覚になっている人もいるかもしれない。

 

いま「信頼」といったけれど、他者関係のうえで大切なのは

「すべてわかること」ではなく「信頼できること」なのであ

る。この人は自分の話すことをきちんと聞いてくれるし、わか

らなかったら率そ

っちょく直にこちらに尋た

ねてくる。自分のほうも相手の

いいたいことをちゃんと聞こうとする。そういうエキャッチ・

ボールのできる人間関係が(少なくとも何人かのあいだには)

必要なのである。

 

若い人に多いのだが、嫌き

われていないかどうか相手の心をあ

れこれ想像し、疲つ

れたあげくに「しょせんわからない」とい

う。でも、相手の気持ちがわからないのなら、勇気を出してた

ずねてみるしかない。そういう率直さからしか、深い信頼関係

はつくっていけない。わからないと思うより、どういう努力の

仕方があるか、と考えてみてはどうか。

 

大学生に「あなたが恐れていること」という題で書いてもらっ

たら、いちばん多かったのは「他人に嫌われること」だった。

 「集団のなかで孤こ

独どく

になるのがとても怖くて自分の意見をい

えなかったりねじまげたりする」「友達と待ち合わせをしてい

て相手がなかなか来ないとcミスてられる

⌇⌇⌇⌇⌇⌇のではないかと不安に

なる。話をしていても相手が自分のことをどう思っているのか

気になって仕方がない」。全体の三分の一くらいの人がこのよ

うに書いてきたのだが、そんなにも多くの人が他者関係に脅お

ながら毎日を過ごしているのには驚お

どろい

た。

 

この現象は、「集団主義的教育の結果そうなったのだ」とか

「日本人はもともとオ他者志向的なのだ」というような言い方で

は説明がつかないと思う。日本社会では、八〇年代くらいから

「人は自分の幸福のために生きてよい」という個人主義の感覚

が広がってきたが、それにつれて学校のなかでも、集団が個人

を拘こ

うそく束する力(学校内ではこうふるまうのが当然、という注2規き

範はん

の力)は明らかに弱まってきている。なのに、集団や友達との

関係に脅える若者の数は【 

③ 

】増えているのだ。これはど

ういうことなのだろうか。

 

かつて、大学へ進学することが少数者の注3特と

っけん権だった時代が

あった。そのころの大学生はいまよりもずっと「大人」だっ

た。〈dヒンコン

⌇⌇⌇⌇のために進学できない友人たちもいるのに自分

は大学までこられたのだから、ぜひとも社会に貢こ

うけん献する立派な

人間にならなくてはいけない〉。こういう時代には、何がほん

とうに貢献といえるのか、どういう進路をとるべきなのかにつ

いて悩な

むことはあっても、カ他人の視線が気になって仕方がない

人は少なかっただろう。「社会に貢献する人物になる」という

目標がはっきりしているからだ。

 

何が価値あることなのかが自分のなかではっきりしていて、

自分がそこをめざして進んでいると思えるとき、人は他人の視

線にあまり脅えないですむ。だれがなんといおうと我が道を行

く、というふうな「気き

概がい

」をもつこともある。しかしいまのeタイ⌇⌇

シュウ

⌇⌇⌇化した大学の学生には、大義も人生の目標も与えられな

い。そして進むべき方向がはっきりしないとき、人は自分自身

の存在を肯こ

うてい定することができない(俺お

ってカッコいいとなかな

か思えない)。だから「他者から嫌われない」ということが自

分を支える最後の手段になってくるのかもしれない。

 

いまどきの若者は、自分の価値観を築きあげ自信をもって生

きていくためには、キかなり苦労しなくてはいけなくなっている

のだなあ、と思う。

(西に

しけん研

『哲学の練習問題』による)

注1 

他者 

… 

ここでは「他人」のこと。

注2 

規範 

… 

判断や行動の基準。ルール。

注3 

特権 

… 

特定の人間に与えられた権利。

─ 2 ─ ─ 1 ─

Page 3: 国 語 - 学校法人須磨学園 · 2019-02-08 · 全体の三分の一くらいの人がこのよなる。話をしていても相手が自分のことをどう思っているのか脅

一の設問

問一 【 

① 

】~【 

③ 

】に入る語として最も適当なもの

をそれぞれ一つ選び、番号で答えなさい。

【 

① 

1 

でも     

2 

そして

3 

さて     

4 

一方

【 

② 

1 

すると    

2 

ゆえに

3 

もしくは   

4 

すなわち

【 

③ 

1 

むしろ    

2 

ずっと

3 

やはり    

4 

むろん

問二 「私たちはふだん、他者のいうことをそれなりに理解し

あって生きている」(   

線部ア)とは、どういうこ

とですか。その説明として最も適当なものを、次の中か

ら一つ選び、番号で答えなさい。

1 

私たちはふだん、他者のいうことを一〇〇パーセント

ではないにしても、言いたいことを伝えられる程度に

は理解し合って生きているということ。

2 

人間同士は、他者の心は結局は分からないが、会話の

最中、目の前にいる他者の気持ちについては、ある程

度理解し合って生きているということ。

3 

人間同士は、決してわかり合えないわけではなく、日

常生活では、他者の発言における最低限の情報や感情

を理解し合って生きているということ。

4 

人間とは、確かに他者の心を覗くことはできないもの

の、相手との深い信頼関係を築くために、相手の気持

ちを理解しようと生きているということ。

問三 「ちょうどコンピュータ同士をケーブルでつなぐように

して相手に伝える」(   

線部イ)について、

一 

ここで使用されている比喩の名称として正しいものを

次の中から一つ選び、番号で答えなさい。

1 

直喩  

2 

隠喩  

3 

擬人法  

4 

倒置法

二 

文脈上、同じ意味となるような、四字熟語を答えなさい。

問四 

段落ウの働きについての説明として最も適当なものを、

次の中から一つ選び、番号で答えなさい。

1 

内容の伝わりやすさ以前に、人間が本質的にわかり合え

ないと思うのは他人との人間関係に原因があると考え、

他者との信頼関係について話題を展開させようとしている。

2 

人間関係においては、どんな人間も他人には言えないよ

うな傷を抱えているものだから、勇気を出して話しかけ

てゆくしか信頼関係はつくることができないと述べている。

3 

たとえ他人に自分の言いたいことを伝えることができた

としても、そもそも他人が自分のことを分かってくれな

いのは、他人との信頼関係に原因があると推察している。

4 

どのような努力をしても、他人とはそもそもわかりあえ

ないと諦めてしまうのは、他人との間にある壁や裏切り

が原因にあると考え、信頼関係の大切さを示し

唆さ

している。

問五 「キャッチ・ボール」(   

線部エ)と同じ意味の語を

抜き出して答えなさい。

問六 「他者志向的」(   

線部オ)とありますが、その意味

を踏まえた例文として適当でないものを一つ選び、番号

で答えなさい。

1 

A君は、いつも周りばかりを見て行動している。

2 

Bさんは常にお友達と同じメニューを注文する。

3 

C君は、朝のテレビの占いをとても信じやすい。

4 

Dさんはクラスのために自ら活動する良い人だ。

問七 「他人の視線が気になって仕方がない人は少なかっただろ

う」(   

線部カ)とありますが、それはなぜですか。その

理由として最も適当なものを一つ選び、番号で答えなさい。

1 

かつての大学進学が少数者の特権だった時代には、集

団を拘束する力が強かった分だけ、大学生はどのよう

な悩みにもくじけない強い意志を持っていただろうから。

2 

大学に進学できた少数の学生には、大勢の友人にはな

いたぐいまれな才能が備わっており、社会に貢献する

立派な人物になるという目標もはっきりしているから。

3 

一部の人間しか大学進学できなかった時代は、進学を

諦あきらめた友人の分も立派な人物になろうという明確な目

標に向かって、一い

ち途ず

に突き進むことができただろうから。

4 

人間とは他者の幸福のために生きるべきだという時代

感覚が残っていたため、集団における、あるべき個人

のふるまい方が意識するまでもなく決まっていたから。

一の設問は裏面に続く

─ 4 ─ ─ 3 ─

Page 4: 国 語 - 学校法人須磨学園 · 2019-02-08 · 全体の三分の一くらいの人がこのよなる。話をしていても相手が自分のことをどう思っているのか脅

問八 

筆者が「かなり苦労しなくてはいけなくなっているのだ

なあ、と思う」(   

線部キ)のは、若者がどういう

状況にあるからだと考えられますか。本文全体の内容を

踏まえ、一〇〇字以上一二〇字以内で説明しなさい。

(句読点も一字として数えます。なお、採点については、

どういう書かれ方をしているかについても見ます。)

問九 

〰〰

線部a~eのカタカナを漢字で答えなさい。

a 

ハンロン  

b 

クフウ   c 

ミス(てられる)

d 

ヒンコン  e 

タイシュウ

下書き用(※これは解答用紙ではありません)

90100110120 80 70 30405060 20 10

─ 6 ─ ─ 5 ─

Page 5: 国 語 - 学校法人須磨学園 · 2019-02-08 · 全体の三分の一くらいの人がこのよなる。話をしていても相手が自分のことをどう思っているのか脅

次の【A】【B】は、ある家族をめぐる物語の一節です。

この作品は、作者の自伝的小説だとされています。これを

読んで、後の設問に答えなさい。

  【A】

 「どうか私を許してください」静子は大きな太い字で書き始

めた。「私の弱さ、あなたに迷め

いわく惑

をかけてしまったことを」私

もあなたの冷たさを許したのだから。忙い

そがしいと言って、有紀や

私を放っておいた時間を、日々を、私は許した。ア私はすべて許

した。許すしかなかった。

 「発ほ

作さ

的てき

にこんなことをするわけではありません。よく考え

た末のことです。私たちみんなにとって、こうするのが一番よ

いことなのです。どんな形であれ、罪の意識など感じないでく

ださい。あなたにとってだけでなく、私にとっても一番よいこ

となのですから。いま、この最後の瞬と

間き

にも、私は幸せを感じ

ていると言っていいでしょう。そして、あなたの幸せを祈い

って

います。」

 

静子はイ自分の名前を記すと、もう一枚、紙を取り出した。有

紀に言い残すことは考えてあった。「こんなことになってしま

いましたが、母さんが有紀を愛していることだけは信じてくだ

さい。まわりの人は、母さんが有紀を愛していなかったからあ

んなことをしたんだと言うでしょう。でも、そんなことは気に

しないようにね。有紀が大きくなって強い女性になったら、こ

二れが一番よい方法だったことがわかるでしょう。母さんがいま

何よりも残念に思っているのは、母さんを最初に見つけるのが

有紀だろうということです。ごめんなさいね。お父さんの会社

に電話して、全部、お父さんにやってもらうようにしてね」

■ウ筆を置いて読み返す。私の不幸せに負けないように、私のよ

うな女にならないようにしてやること、それが私にできる最良

のことなのよ。有紀にはこの先、まだまだ楽しいことが待って

いる。エ十二歳さ

のいまでも、わけなくクラス一番の成績を取れる

と、担任の教師は口を揃そ

えて言う。ことに美術の教師は、有紀

の水す

彩さい

画が

に感服している。有紀の絵には、絵画の技術だけでな

く、際き

だった知性と想像力が描き出されていると言っていた。

 「有紀は強い人です。きっとこのことを乗り越えて、素晴ら

しい女性になるでしょう。    

オ    

」静子は名前

を書きながら、有紀が新しいスカートをはいて駆か

けている姿を

思い描いた。コットンの白い生き

地じ

と栗く

りいろ色

のすそ飾か

りが、船の真

新しい帆ほ

のように春風に舞ま

う。ただ、私はそこにいてあなたを

抱だ

きとめてあげることはできない。でも、あなたはきっと自分

一人でもうまくやっていけるわ。

  【B】

 

秀ひで

樹き

はせき立てられるように注1ペ

ージをめくった。最後の一枚

は、注2コテージの椅い

子す

に座す

って眠ね

っている秀樹の鉛え

筆ぴつ

画が

だった。

緑色の注3キャンバス地が張られた寝ね

椅い

子す

だった。ピンと張った布

地を背中に感じられそうな気がした。絵に近づいて見ると、紙

の上に薄う

い花びらが押お

してあった。インクのしみのような色を

した花びらが四枚ずつ、花のような形にくっつけて押してあ

る。少なくとも十の花がスケッチにちりばめてあった。秀樹は

それが何の花か思い出した。あじさい。この小さな花が寄り集

まって、霧き

の山道に浮う

かぶ風船のような一つの大きなボールを

作る。

 

乾かわ

いた花びらを見つめながら、その休き

ゅう暇か

のことを思い返し

た。二日めに、秀樹と静子は何かのことで言い争いをし、秀樹

はコテージから出て行った。結局、何時間かあとになって、山

道を一人きりでぶらぶらしているときに摘つ

んだ大きなアジサイ

の花を持って戻も

った。山道を歩きながら、はじめは不ふ

機き

嫌げん

だっ

たが、やがて悪かったと思い始めた。本当に悪かったと。カ秀樹

はその花を静子に突つ

きだした。静子の顔にぶつかりそうな勢い

で。それから、湿し

気け

があったからだったか、なかったからだっ

たか、とにかく湿気のせいでピンクにならずにブルーになった

んだというようなことをつぶやき、静子がまるで何ごともな

かったようにふるまってくれることを願いながら、寝椅子に

座った。

 

静子は願い通りの振ふ

る舞ま

いをしてくれた。花を受け取り、大

きな水差しにそれを活い

けて、夕食は近くのリゾートホテルに食

べに行きましょうか、と聞いた。朝の口げんかのことはひとこ

とも口にしなかった。そして微ほ

笑え

みを浮かべて、怯お

えたような

顔の有紀の方を振ふ

り向む

いて言った。見てごらんなさい、あじさ

いはね、キ土の中の水分がどのぐらいあるかで色が決まるんで

すって。それが静子だった……穏お

やかで、つつましやかで、秀

樹の気持ちをいつも思いやる。一い

っしょ緒

に暮らしていた間に、静子

が秀樹に対して声を荒あ

げたこともなかったし、部屋を出ていっ

てドアを叩た

きつけ、すねてしまうようなこともなかった。静子

が許してくれたらしいとわかると、一日じゅう歩いた疲つ

れか

ら、寝椅子で眠りこんでしまった。静子はそのときにスケッチ

をし、この花を最後のページに押したのだろう。

 

秀樹は、あの午後の静子をありのままに思い出そうとした。

思い出そうとして、何度も瞬ま

ばたきをした。だが、無む

駄だ

だった。デ

スクスタンドの強き

ょうれつ烈な

光の中で、秀樹ははかなげな花をじっと

見つめていた。記き

憶おく

は、インクのしみだけを彼か

に残し、彼から

逃に

げていく。スケッチブックを閉じ、引き出しにしまって鍵か

かけた。それから、ずっと長いことそのまま座っていた。ク肘ひ

机の端は

につき、頭を抱か

えて。まるで重い荷物を支えているかの

ように。

  (キョウコモリ『シズコズ・ドーター』

〈池田真紀子訳〉による)

注1 

ページ 

………… 

静子のスケッチブックを指す。

注2 

コテージ 

……… 

キャンプ用の設備の整った宿泊施設。

注3 

キャンバス地 

… 

丈夫な厚手の粗布。

─ 8 ─ ─ 7 ─

Page 6: 国 語 - 学校法人須磨学園 · 2019-02-08 · 全体の三分の一くらいの人がこのよなる。話をしていても相手が自分のことをどう思っているのか脅

の設問

問一 「私はすべて許した。許すしかなかった。」(   

線部

ア)に込められた「静子」の気持ちの説明として、最も

適当なものを一つ選び、番号で答えなさい。

1 

家族に関わろうとしない夫だとしても、娘にはかけが

えのない一人の家族である事実を受け入れようとして

いる。

2 

夫のふるまいを家族のために許したのだから、きっと

夫も、自分の行いを許してくれるはずだと納得する気

持ち。

3 

長い間、娘や妻を省みなかった夫に対し、家族のため

とは言え、許すしかなかった境遇を耐えがたく感じて

いる。

4 

家族で過ごす時間よりも自分の仕事を優先した夫を、

家族のために許すべきではなかったと激しく後悔して

いる。

問二 「自分の名前を記す」(   

線部イ)とは、ここではど

ういうことを意味していますか。二〇字以内で説明しな

さい。

問三 「筆を置いて読み返す」(   

線部ウ)とありますが、

「静子」が「読み返」した内容のはじめの五字を抜き出

して答えなさい。

問四 「十二歳のいまでも、わけなくクラス一番の成績を取れ

ると、担任の教師は口を揃えて言う」(   

線部エ)

に込められた「静子」の気持ちの説明として、最も適当

なものを一つ選び、番号で答えなさい。

1 

得意な美術のように、やる気さえあれば学業成績も少

しは良くなるのにと少し不満に思っている。

2 

どの担任も認めるほど、昔から素晴らしく優秀である

自分の娘を母親として誇らしく思っている。

3 

有紀がたやすくクラス一番の成績を取ることができほ

ど頭が良かったのだと、静かに驚いている。

4 

有紀には自分の努力次第で、クラス一番の成績を取る

楽しみが待っていること羨ましく思っている。

問五   

オ  

にあてはまる内容を次の中から二つ選び、

番号で答えなさい。

1 

一度は有紀とお出かけしたかった。

2 

母さんは有紀を愛しています。

3 

母さんがいたら、有紀を邪じゃ

魔ま

してしまうわ。

4 

お父さんのこと、お願いね。

5 

母さんは素敵な女性になった有紀に会えるのを楽しみ

にしています。

6 

なぜだか昔の有紀のことばかり思い出してしまうわ。

問六 「秀樹はその花を静子に突きだした」(   

線部カ)と

いう表現からうかがわれる「秀樹」の人物像についての

説明として、最も適当なものを一つ選び、番号で答えな

さい。

1 

気持ちが強すぎると、相手との距離感を適切に保てな

くなる人物。

2 

どうするべきかという理性よりも、やや感情が先走り

がちな人物。

3 

良いと思ったことは行動し、相手の迷惑をあまり気に

しない人物。

4 

相手への思いとは裏腹に、つい無愛想な態度を取って

しまう人物。

問七 「土の中の水分がどのぐらいあるかで色が決まるんで

すって」(   

線部キ)という発言に関する説明とし

て、最も適当なものを一つ選び、番号で答えなさい。

1 

直前の秀樹との間の言い争いをやり過ごし、夫婦のい

さかいとは関係のない有紀の前では、落ち着いた、知

的な母親を演じようとする意味合いもある。

2 

秀樹から聞いたアジサイの色が変わる原因を自分なり

に捉え返し、才能豊かな有紀に伝えることで、有紀の

知的好奇心を育もうとする意味合いもある。

3 

直接的には有紀を落ち着かせながら、直前の秀樹の発

言を受けて応答した発言である点で、間接的には言い

争いをしていた秀樹を許す意味合いもある。

4 

有紀に向けた何気ない発言を通して、実はアジサイが

湿気によって色が変わると考えていた秀樹の間違いを

遠回しに否定しようとする意味合いもある。

二の設問は裏面に続く

─ 10 ─ ─ 9 ─

Page 7: 国 語 - 学校法人須磨学園 · 2019-02-08 · 全体の三分の一くらいの人がこのよなる。話をしていても相手が自分のことをどう思っているのか脅

問八 「肘を机の端につき、頭を抱えて」(   

線部ク)とあ

りますが、それはなぜですか。その理由として、最も適

当なものを一つ選び、番号で答えなさい。

1 

静子の死後に、控ひか

えめな彼女の深い愛情に気づいたから。

2 

静子にもっと優しくしておけばと、激しく後悔したから。

3 

静子の死を、今さらどうしようもできないと思ったから。

4 

静子は、夫との関係に悩んで死んだのだと分かったから。

問九 「有紀」の精神的な自立について、「静子」と「有紀」と

の関わりに触れつつ、あなた自身の考えるところを

一〇〇字以上一二〇字以内で述べなさい。(句読点も一

字として数えます。なお、採点については、どういう書

かれ方をしているかについても見ます。)

下書き用(※これは解答用紙ではありません)

90100110120 80 70 30405060 20 10

─ 12 ─ ─ 11 ─

Page 8: 国 語 - 学校法人須磨学園 · 2019-02-08 · 全体の三分の一くらいの人がこのよなる。話をしていても相手が自分のことをどう思っているのか脅

問三

問一

問二

問四

問五

※※

問七

問六

30405060708090100110120 20 10

問八

問九a

二※

問四

問一

問八

問七

問六

問五

問三

問二

102030405060708090100110 20 10

問九

120

てられる

(※の欄には、何も記入してはいけません)

受 験 番 号氏 名

2018年度 須磨学園中学校 第2回入学試験解答用紙 国語