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5 節 塗装 1.概 要 塗装は、一般的に物体の装飾や保護、防錆を目的として行われますが、建築物などでは 通路とそれ以外のスペースの識別などにも使用されることがあります。なお、同様の目的で めっきを施すこともありますが、塗装の多くは表面に皮膜となる塗料を常温・大気下で塗布 することができ、より簡便です。ただ、めっきに比べると塗料の性質上、強固な皮膜とはなり にくい嫌いがあります。 金属の多くは大気中の酸素に触れることで酸化し錆を発生させるが、こと鉄の場合は表 面の錆が内部に向かって浸蝕する性質が強く、多くの鉄製品では塗装が必須です。また 単純に見栄えを良くするための装飾の目的でも塗装はしばしば行われます。 塗料にも目的によって様々な性質のものがあり、防錆用に耐候性に優れ厚い皮膜を作る ものから、装飾用に耐光性に優れ発色良く光沢ある表面に仕上がるもの、艶消しなど特定 の性質を持つものなど様々です。これらには各々得手不得手があり、その目的に添って使 い分け、或いは重ね塗りが行われます。また適切に重ね塗りすることで、単一の塗料では 得られない強固で見栄えの良い塗装を行うことが出来ます。 塗料は皮膜の平均的な厚さが同じ場合は、特に均一に施された塗装ほど長持ちしますが、 これは一度の塗布では難しい場合があります。このため単一の塗料でも重ね塗りする場合 があり、その際には前回と同一の一定方向に向かって帯状に塗布していくのではなく、前 回とは直角になる方向に塗布していくことで、塗斑を抑えることが行われています。 ここでは主に、鋼材の塗装について述べその他の機能塗装についても概説します。 2.主な塗装方法 2-1 刷毛塗り、ローラ塗り はじめに 建築物の外装、床、鋼材(主に型鋼)等の塗装に使われます。塗装性能は多くの場合 刷毛塗りがローラ塗りに優ります。当事業所の場合は高い腐食性環境にある事と被塗 装物の形状が小形であり、複雑なため、刷毛塗りが適していると考えます。 2-2 吹付塗装 塗料を霧状にして高圧空気(缶スプレー、あるいはエアーブラシとエアコンプレッサーを使 用)とともに吹きつける。自動車を補修する場合の部分塗装などに使われる方法です。 2-3 エアレススプレー 塗料を霧状にして高圧空気(缶スプレー、あるいはエアーブラシとエアコンプレッサーを使 用)とともに吹きつける。自動車を補修する場合の部分塗装などに使われる方法です。 2-4 エアレススプレー 吹付塗装の一種で、高圧空気を使わず、塗料を高圧にしてその圧力で噴霧する方式。高 圧空気中の水分を嫌う塗料などに使われます。建築物などの大型のものに対する塗 装として使われます。

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5 節 塗装

1.概 要

塗装は、一般的に物体の装飾や保護、防錆を目的として行われますが、建築物などでは

通路とそれ以外のスペースの識別などにも使用されることがあります。なお、同様の目的で

めっきを施すこともありますが、塗装の多くは表面に皮膜となる塗料を常温・大気下で塗布

することができ、より簡便です。ただ、めっきに比べると塗料の性質上、強固な皮膜とはなり

にくい嫌いがあります。

金属の多くは大気中の酸素に触れることで酸化し錆を発生させるが、こと鉄の場合は表

面の錆が内部に向かって浸蝕する性質が強く、多くの鉄製品では塗装が必須です。また

単純に見栄えを良くするための装飾の目的でも塗装はしばしば行われます。

塗料にも目的によって様々な性質のものがあり、防錆用に耐候性に優れ厚い皮膜を作る

ものから、装飾用に耐光性に優れ発色良く光沢ある表面に仕上がるもの、艶消しなど特定

の性質を持つものなど様々です。これらには各々得手不得手があり、その目的に添って使

い分け、或いは重ね塗りが行われます。また適切に重ね塗りすることで、単一の塗料では

得られない強固で見栄えの良い塗装を行うことが出来ます。

塗料は皮膜の平均的な厚さが同じ場合は、特に均一に施された塗装ほど長持ちしますが、

これは一度の塗布では難しい場合があります。このため単一の塗料でも重ね塗りする場合

があり、その際には前回と同一の一定方向に向かって帯状に塗布していくのではなく、前

回とは直角になる方向に塗布していくことで、塗斑を抑えることが行われています。

ここでは主に、鋼材の塗装について述べその他の機能塗装についても概説します。

2.主な塗装方法

2-1 刷毛塗り、ローラ塗り はじめに

建築物の外装、床、鋼材(主に型鋼)等の塗装に使われます。塗装性能は多くの場合

刷毛塗りがローラ塗りに優ります。当事業所の場合は高い腐食性環境にある事と被塗

装物の形状が小形であり、複雑なため、刷毛塗りが適していると考えます。

2-2 吹付塗装

塗料を霧状にして高圧空気(缶スプレー、あるいはエアーブラシとエアコンプレッサーを使

用)とともに吹きつける。自動車を補修する場合の部分塗装などに使われる方法です。

2-3 エアレススプレー

塗料を霧状にして高圧空気(缶スプレー、あるいはエアーブラシとエアコンプレッサーを使

用)とともに吹きつける。自動車を補修する場合の部分塗装などに使われる方法です。

2-4 エアレススプレー

吹付塗装の一種で、高圧空気を使わず、塗料を高圧にしてその圧力で噴霧する方式。高

圧空気中の水分を嫌う塗料などに使われます。建築物などの大型のものに対する塗

装として使われます。

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2-5 ロールコーター

被塗物を正極(+)、噴霧状にした塗料を負極(-)に帯電させ、電気的に塗料を被塗物に

吸着させる方法で、工場における連続塗装法として用いられます。

2-6 粉体塗装

粉体焼付け塗装とも。粉末状の樹脂(ポリエステル等)からなる塗料を、静電気により被

塗物に付着させた後、加熱溶解して塗膜を形成します。

3. 塗 料

3-1 塗料の構成

3-2 顔料の種類と構成

3-3 樹脂の構成と種類

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3-4 添加剤の種類

3-5 溶剤の種類

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4.素地調整と下塗り

4-1 鉄部塗装の下地処理(ケレン)

(注意事項)

1) 素地調整後に鉄の素材が露出(金属光沢露出状態)になれば、その日の内に下塗り塗料を

塗装してください。そうしませんと調整後の素地は活性が高いため、再びすぐに錆びてしま

います。 2) 活膜(付着力テストの結果、健全と判定された塗膜)として残存した部分と、錆落しや素地調整

して除去してあらわれた「段差」は、ペーパーがけして滑らかに仕上げます。

用が掛かる場合があります。参考として、鉄部の下地処理の内容を記述します。

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4-2 錆止塗料

錆止め塗料の種類鉄部塗装は塗装作業そのものより、下地処理に費

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4-3 素地調整と錆止塗料の選択

錆落とし(素地調整)後の状態により、錆止め塗料は選択されなくてはいけません。どん

なに高価な錆止め塗料で塗装しても、素地の状態が不適であれば十分な錆止め効果は期待

できません。

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5.試験

5-1 活膜付着力テスト

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5-2 膜厚検査

a.磁石を使用したタイプ(Pull-Off Gages)

永久磁石の素地鉄板に対する吸引力が、塗膜の厚さによって変化することを利用

したもので、マイクロテスト(Microtest)やインスペクター(Inspector)がこの代表です。

b.電磁式を使用したタイプ(Electromsgnetic Gages)

塗膜厚により、鉄心入りコイルの磁束と自己インダクタンスが変化するのを利用し

たもので、ケットの電磁微厚計(L-1B 型)やサンコーのミニテスターがこの代表で

す。

c.磁石を電磁式に利用したタイプ(Fixed Probe Gages)

塗膜厚により、コの字形をした永久磁石の間に流れる磁束の変化を利用したもの

で、ルコメーター(Eloco-meter)やミニテスター、パーマスコープがこの代表です

d.乾燥塗膜厚の評価 社団法人 日本道路協会「鋼道路橋塗装便覧」抜粋

鋼橋のような複雑な形状の大型構造物の塗装をはけやスプレー機によって行う場

合は 塗布作業を良好に行っても塗料を均一な厚さに塗布することは難しい。また、鋼

材面には50~100μm程度のあらさがあり、塗膜厚の測定精度も測定のやりかたや

測定箇所の形状などによってばらつく。したがって、塗膜厚の測定値は1点ごとに異な

っており、塗膜厚の評価は多くの測定値を統計処理して行うことが必要である。一般に

は次のような評価方法が用いられる。

ⅰ.ロットの大きさ

測定ロットは、塗装系別、塗布方法別、部材の種類別に設定します。作業姿勢によ

る塗膜厚のばらつきを評価したい場合は、作業姿勢別に設定することもある。

ⅱ.測定数

1ロット当たりの測定数は25点以上とする。各点の測定は5回行い、その平均値

を その点の測定値とする。ロットを作業姿勢別に設定しない場合は、測定位置は

作業 姿勢ごとの点数が等しくなるように設定する。

ⅲ.管理基準値

a、ロットの塗膜厚平均値は、目標塗膜厚合計値の90%以上であること。

b、測定値の最小値は、目標塗膜厚合計値の70%以上であること。

c、測定値の分布の標準偏差は、目標塗膜厚合計値の20%を超えないこと。ただ

し、測定値の平均値が目標塗膜厚合計値より大きい場合はこの限りではない。

なお、1層当たりの乾燥塗膜厚を直接測定することは不可能であり、乾燥塗膜

厚の管理は、基本的には測定時の塗膜全厚に対して行うものである。塗膜厚

平均値の差をとって1層当たりの塗膜厚平均値とみなすことも行われているが、

最小値と標準偏差については即定時の塗膜全厚に対する値しか知りえず、塗

膜厚の管理方法としては不十分であることに留意する必要がある。

ⅳ.不合格ロットの処理

不合格なにったロットについてはさらに同数の測定を行い、当初の測定値と合わ

せて計算した結果が管理基準値を満足していれば合格とする。不合格となったロット

は、最上層の塗料を増し塗りして測定をやり直す。

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5-3 検査のポイント

a.素地調整

厳密な検査を行うこと。素地調整と錆止め塗装は 1 日の内に必ず終了し、錆止

め塗装の前に降雨があった場合は素地調整をやり直す必要があります。

b.角部の膜厚確保 角部は塗り厚が薄くなりがちであり、発錆は 90%以上、角部か

ら現れます。

c.雨が当たらない部分、塵埃のたまりやすい部分の重点的な確認、供用中のダメー

ジが大 きな箇所なので、膜厚、仕上がりを注意して確認する必要があります。

6.その他の機能塗装(塗料)

6-1 防虫防腐塗料

木部に深く浸透して、内部よりクサレやカビ・虫による害、風化から木材を守る

塗料です。表面に塗膜を作る塗料と違い、浸透性のため半透明の色彩になります。

防虫防腐効果を確かなのものとするためには毎年重ね塗り(旧塗膜の上に直に塗

る)が推奨される。

6-2 防汚塗料

使われる目的や環境によって汚染の仕組みが異なります。

外壁:雨等の水がかかる所であれば、超親水性の塗料が使われます。水と共

に汚れを流し落とす原理(例:光触媒)

内壁:塗料のチョーキング現象を逆手にとって、汚れを分解して拡散してします。

ただし、人が触れたりしない高所などに限る。

船底:船底塗料とは、船の外観を美しく保つだけでなく、船速を遅くする「水棲生

物」の付着を防ぐための添加剤を含む塗料で、大きく分けて 2 つの種類があります。

(自己消耗型高硬度型)

6-3 防塵塗料

コンクリート床面の経年変化に伴う塵埃の発生を押さえ、人の健康や精密機械を故障か

ら守ります。

6-4 耐熱塗料

耐熱塗料とは、一般樹脂系の塗料で使用できない温度域(通常 200℃以上)の所に塗装

る塗料です。耐熱温度 300℃~700℃までの各温度ごとで別商品

6-5 耐火塗料

(発泡性耐火塗料被覆)250℃程度の温度で塗膜の発泡が起り、290~300℃で断熱層を

形成する発泡型断熱有機質系塗料です。鉄骨用

6-6 遮熱塗料・断熱塗料

可視光・赤外波長域に高い反射率を持つ無機酸化物を用いた、熱反射特殊セラミックに

る熱反射効果と、中空構造を持つ断熱特殊セラミックによる断熱効果のダブルブロックで、

日射・気温差による熱が室内に侵入するのを低減します。

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6-7 導電性塗料

「電気を通す塗料」で、導電性に「金属粉、カーボン、銀粉など」、フィラーとして半導性

には「金属酸化物」、帯電防止剤で「カーボンブラック」、接着剤として「アクリル、ビニ

ル、エポキシなど」を混ぜ合わせた塗料です。

6-8 絶縁性塗料

電子部品やプリント基板に塗布して接触によるショートや腐食から守ります。用途は工業

ですが、電気の知識があれば家庭での応用も考えられます。

6-9 熱反射塗料

太陽熱反射塗料:反射性能が高いセラミックバルーン(セラミックの小さな中空の粒)や

半導体金属酸化物の超微粒子が配合された反射断熱塗料です。

7.亜鉛めっきと塗装の併用

近年、鋼構造物において、溶融亜鉛めっきの上に塗装されることが増えています。

7-1 主な利用目的

周囲環境との調和・美観・注意喚起の安全対策(航空障害物の識別)等厳しい腐食環境

での耐久性の保持、補修困難な亜鉛めっき構造物等の耐久性付与、など。

7-2 原理

亜鉛めっき上に適切な塗装を施した場合の耐久性は、亜鉛めっきと塗装の寿命を加えた

よりかなり大きくなります。これは、表面の塗膜がバリア-となって水・腐食因子をブロックし、

亜鉛のイオン化を妨げること、又、水や腐食因子が透過しても耐食性のある亜鉛めっきが

密な保護皮膜を形成し鉄をさびから守り、強固な素地を維持する事による相乗効果です。