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- 茨城研究農場 農場長 はた なか まこと タキイ種苗に入社をしてまも なく元祖「桃太郎」トマトが誕生 しました。それから、35年間ト マトの品種改良に取り組んでま いりました。その間、トマト産 地の温かいご支援を受けながら、 数々の「桃太郎」トマト品種を世 に送り出すことができました。 トマトがこれからもますます世 界中の人々に愛される野菜であ り続けられるように、タキイは 品種改良を続けます。 トマトに感謝 スタミナがありかた だま で肥大がよくて おいしい冬春栽培用品種 New トマト 耐病性 Tm-2 a .F1.F2.J3.V.Cf9.LS.N 「桃太郎ネクスト」適期表 ポイント 安定したスタミナ 多花で着果性にすぐれる 障害果の発生が少ない 硬玉で食味も良好 栽培型 ハウス 半促成 ハウス 抑 制 ハウス 促 成 2019 タキイ最前線 春種特集号 3

もも 太郎ネクスト」 - TAKIIもも た ろう 太郎ネクスト」 トマト 表 ! 耐病性 Tm-2a.F1.F2.J3.V.Cf9.LS.N 「桃太郎ネクスト」適期表 ポイント

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Page 1: もも 太郎ネクスト」 - TAKIIもも た ろう 太郎ネクスト」 トマト 表 ! 耐病性 Tm-2a.F1.F2.J3.V.Cf9.LS.N 「桃太郎ネクスト」適期表 ポイント

 

地球温暖化の影響で、昨今の天候

は寒暖の変化が激しく、トマトには

ストレスの多い栽培環境になってき

ています。中でも8月まきの長期越

冬栽培では、高温期から低温期そし

てまた高温期と、大きな温度変化を

経なければなりません。そのため、

低温少日照性と耐暑性を併せ持ち、

しかも長期栽培で多収を狙える強勢

さが品種に求められます。

 

今回発表します「桃太郎ネクスト」

は、これら必要とされる品種特性を

備え、試作品種TTM-

120

とし

て過去3年間の経済栽培にて、高い

評価を受けた品種です。その品種特

性と栽培ポイントを押さえ、「桃太郎

ネクスト」のポテンシャルを100

%引き出してください。

茨城研究農場農場長

畠はた

中なか

誠まこと

 タキイ種苗に入社をしてまもなく元祖「桃太郎」トマトが誕生しました。それから、35年間トマトの品種改良に取り組んでまいりました。その間、トマト産地の温かいご支援を受けながら、数々の「桃太郎」トマト品種を世に送り出すことができました。トマトがこれからもますます世界中の人々に愛される野菜であり続けられるように、タキイは品種改良を続けます。

トマトに感謝

スタミナがあり硬かた

玉だま

で肥大がよくておいしい冬春栽培用品種!

発New

「桃も

 た

 ろ

太郎ネクスト」

トマト

表 !

耐病性 Tm-2a.F1.F2.J3.V.Cf9.LS.N

■「桃太郎ネクスト」適期表

ポイント安定したスタミナ多花で着果性にすぐれる障害果の発生が少ない硬玉で食味も良好

栽 培 型

ハウス半促成

ハウス抑 制

ハウス促 成

2019 タキイ最前線 春種特集号 3

Page 2: もも 太郎ネクスト」 - TAKIIもも た ろう 太郎ネクスト」 トマト 表 ! 耐病性 Tm-2a.F1.F2.J3.V.Cf9.LS.N 「桃太郎ネクスト」適期表 ポイント

元肥を抑えて

追肥重点型の肥培管理

 

本種を作りこなす最大のポイ

ントは吸肥力のコントロール、

初期の草勢を抑えて樹勢を落ち

着かせることです。そのために、

元肥はロング肥料を主体にして、

チッソ成分量をかなり控えめに

する必要があります。「CF桃太

郎はるか」と比較して、チッソ

成分量を3〜4割程度思い切っ

て減らしましょう。その分、草

勢が落ち着く3段開花以降に、

追肥をしっかりと施してくださ

い。できれば通路やマルチの下

にぼかし肥料などの固形肥料を

施して、長期どりに備えます。

それ以降はやや高めのEC濃度

で潅水量は少なめで管理します。

定植苗は一部開花苗

 

初期の草勢を抑えるのに開花

苗定植は必須です。若苗定植を

する抑制栽培でも、育苗用ポッ

トはできるだけ大きい物を用い

て日数を稼ぎ、蕾つ

ぼみ

を大きくして

から定植をしてください。

摘葉による草勢管理技術

 

間違えて初期生育が強勢にな

った場合の修正テクニックとし

て摘葉があります。1段花房の

下に8枚程度の本葉が着生しま

すが、その本葉を2〜3枚、元

から摘除します。

 

また、花房間には3枚の本葉

が出ますが、花房の直上で裏側

に展開する本葉を摘除します。

この本葉はトマトの樹勢を維持

するために主に働き、果実の肥

大にはあまり貢献しませんので、

安心して取ってください。

強めの換気でハウス内の

湿度を低めに保つ

 

本種は、土壌水分の吸い上げ

が強く、また空気中の湿度が高

いと節間が長くなると共に本葉

が大きくなりすぎますので、栽

培期間を通して潅水量を控えめ

にする必要があります。また、

日中は積極的に換気をしてくだ

さい。蒸し込み栽培は厳禁です。

環境制御ハウスでの管理

 

本種は環境制御ハウス内での

養液栽培の長期多収栽培にも適

した品種ですが、飽差管理を意

識しすぎた空中湿度の高い環境

下では大葉になりますので、飽

差はやや高め(湿度はやや低め)

に管理してください。

低温管理での

先とがり果への対策

 

花落ち部はごく小さくなって

いますが、このような特性の品

種はその花芽生長時に低温に遭

遇すると、先とがり果が発生す

る可能性が高くなるので、冬季

の夜間の最低気温は12℃を維持

するとともに、激しい寒暖差に

は注意が必要です。

安定したスタミナで 長期栽培に適する

多種類の障害果の発生が少ない

果実肥大力にすぐれ、 硬玉で食味も良好

多花で着果性にすぐれる

高度複合耐病性と台木の選択

 現在市販されている冬春品種の中でもトップクラスの草勢を示します。「CF桃太郎はるか」や「CF桃太郎J」と比較して、かなり吸肥力が強い品種なので、長期どりで安定した栽培性を発揮して、多収の狙える品種となっています。 この安定した草勢から、葉先枯れの発生も従来の「桃太郎」品種より少なくなります。

 従来の「桃太郎」トマトはすじ腐ぐさ

れの発生が多いという欠点がありましたが、本種はその点を厳しく改良した品種で、たとえ強勢に生育してもすじ腐れの発生が極めて少ないのが特長です。また、冬季の輪状裂果や夏季のがく割れ果、5月以降に発生する肩部の黄変果や空洞果も少なく、出荷ロスが減少します。

 低温少日照下でも安定した果実肥大力で、単価の高い冬場に大玉出荷が見込めます。また、硬玉で店もちがよく、春先の軟化玉の発生も少なくなります。食味は「桃太郎」の名前を冠するにふさわしく、甘みと酸味のバランスがとれ、肉質が緻

密みつ

で食感がよくて最高の味です。

 本種は花数が多くて勢いのある大きな花が咲くことで、安定した着果性を示します。

 トマトモザイクウイルス(Tm-2a

型)、萎い

凋ちょう

病レース1(F1)およびレース2(F2)、根

腐ぐされ

萎凋病(J3)、半身萎凋病(V)、葉かび病(Cf9)、斑点病(LS)、サツマイモネコブセンチュウ(N)に複合耐病性をもちます。 強勢な「桃太郎ネクスト」には、吸肥力のおとなしい台木がおすすめです。草勢管理方法や土壌の肥

沃よく

度、必要な土壌病害耐病性により異なりますが、越冬の長期どりでは「グリーンガード」「グリーンセーブ」。抑制栽培や半促成栽培の短期どりでは「Bバリア」などのおとなしい台木を選択してください。

栽培ポイント 品種特性1

23

45

多収を狙える「桃太郎ネクスト」

40

桃太郎ホープ

収量(t/10a)

平均糖度

桃太郎ネクスト 他社品種RE0

5

10

15

20

25

30

35

6

0

1

2

3

4

5● ●●

■10a当A品収量(t)■10a当B品収量(t)

●糖度総合平均

トマト収量調査試験データ(試験場:茨城研究農場 環境制御ハウス時期:2017 ~ 2018年、収穫11/13~6/29 ※1㎡当たり 3.2 株植え)

4 2019 タキイ最前線 春種特集号