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35 13版 2010年 (平成22年 )1月 31日 日曜
ノーベル物理学賞を受けた
「CP対称性の破れ」に
つい
て、クォークを当時定説だ
った
四つで考えるとうまくいかず煮
詰ま
っていた。家で風呂に入
っ
て考え、あきらめようと決心し
て浴槽から立ち上が
った途端に
「何も4でやることないじゃな
いか」とひらめいた。六つなら
難しくない。翌朝、共同研究者
の小林誠さんに話すと
「そうで
すね」と。そんなものでした。
名古屋での子供時代、父から
影響を受けた。父は戦前は家具
職人で、戦後は砂糖商を営んで
いた。本当は電気技師になりた
か
ったらしい。好奇心旺盛な人
で、銭湯に行く途中、真
っ暗な
夜道を月明かり
で歩いている
と、月食が毎月起きない理由な
ど様々な話をしてくれた。好奇
心が自然と身に着いた。
高校に入
って名古屋大の著名
な物理学者
・坂田昌
一先生の
「坂田モデル」
(複合粒子を考
える素粒子像)が発表された。
同じ街
で新たな大理論が誕生
し、興奮した。坂田先生の研究
にまざりたいという希望が生ま
れた。だが、父から家業を継げ
益川敏英教授=大阪市中央区、伊藤菜々子撮影
と言われた。大学受験には当然
反対。母が間に入
って1回だけ
受験を許すと。背水の陣で猛勉
強した。でも、詰め込みの勉強
はすぐ忘れてしまう。
名古屋大時代は友達に恵まれ
た。物理や数学好きの仲間が集
まり、アインシ
ュタインら世界
的な学堵
・の傾度惇
オをつなぎ合わ
せた
「DEPHIO」という会
を作
った。議論して刺激を受け
あ
った。負けまいと家でこっそ
り勉強するわけ。学生時代は先
生も重要だけれど、それと同じ
かそれ以上に、周辺にいる友達
との議論が重要だと思
った。
子どもは本来、好奇心い
っば
い。親はそれをつぶさないよう
にしてあげることが重要だ。好
奇心を伸ばす原動力はあこが
れ。こんなにすごい人がいる、
すごい理論があると感動し、そ
の人に近づこうとする。ドン
・
キホーテは騎士道物語にあこが
れて、自分も騎士にな
ったつも
りで旅に出た。こ
っけいなん
だ。でも、歩み始めた時は誰で
もこっけいに決ま
っている。あ
ちこちにぶつかり、だんだん
一
人前にな
っていく。
僕の母はそんなに教育熱心で
はなか
ったけれど、家に学習参
考書が自然と置いてあ
った。子
どもは無理に読めと言
ったら絶
対に読まない。親は自分の子を
よく見て、それに合うような形
で少し外からサポートしてあげ
ることが大事だと思う。
◇
講演会は対談形式
で進めら
れ、朝日新聞の尾関章
・論説副
主幹が聞き手を務めた。
鄭好奇心の大切さ語る
朝日教育講演会
「ノーベル賞の益川敏英さんに聞く
『学びの
楽しさ』」
(朝日新聞社主催)が23日、大阪市中央区の御堂会
館であ
った。益川さんは少年時代や研究生活を振り返り、学問
の魅力や好奇心を抱くことの大切さを語
った。
朝日教育講演会
ますかわ 0と しひで 名古屋市生まれ。69歳。1967年、名古屋大大学院理学研究科博士課程修了o東京大原子核研究所助教授、京都大基礎物理学研究所教授・ 同所長などを歴
任。2003年から京都産業大教授。宇宙の成 り立ちにかかわる「CP対称性の破れ」という現象が起きる理由を73年、高エネルギー加速器研究機
構特別栄誉教授の小林誠さんと理論
的に説明し、08年にともにノーベル
物理学賞を受賞した。