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矢筈岳右岸壁下部壁 大いなる空白 (3P 5.11a 60m) アプローチ 比叡山三峰のトンネルを 500 m 程北上すると,左脇に鋭角ターン が必要なコンクリート舗装の農道がある大型車では困難が予想さ れるこの農道を廃屋まで下り車三台分の空き地に車を止める屋脇から杉林を抜け沢に降り沢沿いに 100 m 程北上すると三角 錐の形状のボルダーがあるここから対岸の杉林の斜面を水平道へ 上がる水平道を南下すると数メートルのトンネルと 20 m 程度 のトンネルがあり更に 100 m 程進むと頭上に大きなルーフが見え てくるこのルーフのクラック直下のコーナー部分のフェイスから 取り付くここまでの所要時間は車から降りて約 20 取り付き からはハンガーボルトが三本確認でき更に 3P 目の中間部分まで 確認できる下降は 3P 目終了点の立木より懸垂下降使用ギア キャメロット # 0.5 ~ 4 (# 0.75 ~ 2 2 セット ) 1P 目 (5.11a 30m B4 NP) コーナー部分のフェイスから始まり小ルーフのコーナークラッ クを越えるとハンドサイズの易しいクラックとなる終了点は立 2005 6 5 下部コーナー部分のフェイスに陳内氏がハ ンガーボルトを設置この部分が核心でグレードを 5.11a (B4) とし 10m 登るとレイバックで始まる小ルーフ越えのコーナークラッ クとなりこの部分のグレードは 5.10b (NP)6 5 橋井参二 氏が初登10 8 日終了点の立木下部にバックアップ用ハンガー ボルトを 1 本設置2P 目 (5.10b 10m NP) ルーフ直下の水平クラックを左へトラバースするフェイスの要 素が強い終了点はハンガーボルト 2 スタンスの下には綱の瀬 川が見える5.10b というグレードは初登者曰くあのロケーショ ンで先の全く見えない状態でトラバースに入ることを加味したとの こと足が震えなければグレード以下に感じるのであろうか6 5 橋井・山口・荒巻・執行で偵察を行い宮川氏らにより 21 年前に設置された朽ちた RCC ボルトを確認10 8 日ハンガーボ ルトに打ち換え終了点とした10 9 荒巻悦子氏が初登. 3P 目 (5.9 20m NP) チムニーから始まるルーフクラックのチョックストーンを越え, クラック沿いにブッシュ帯へ入る.終了点は立木.水平道から見る とチョックストーン越えは困難そうに見えるが,登ってみるとハン ドの効きもよく意外に易しい.往年のクライマーにはグレード以下 写真 1 1P 目を試登する執行小ルーフのコーナークラック及び 3P 目のルーフクラックのチョックストーンが確認できる( 写真提供 橋井氏 ) 写真 2 2P 目を偵察中の橋井氏頭上にはルーフクラック( 写真提供 橋井氏 ) 最近ではハイカーに人気の矢筈岳水平道.トンネルを越え徒歩で南下すると,上部に右岸壁上部壁マスターズルー フより大きな張り出しが見える.このルーフの弱点であるクラックのチョックストーン部分を水平道から 3 ピッチで 抜ける.このルートは 1984 年に宮川 章 ( 故人 )・兵藤 勝・陳内安幸氏により偵察されており,この年は白岩孝行・ 内藤直也氏らにより岩と雪 111 号に発表された矢筈岳右岸壁上部壁開拓の 1 年程前である.2005 年 10 月 9 日完成. ルート名を大いなる空白とした.見た目より手頃なナチュラルプロテクション (NP) 主体のルートで,アプローチも 近い. 執行 信介 に感じられることと思う.陳内氏によると未登とのことであるが, 真相は如何に.ブッシュ帯の方が長いのが玉に瑕.10 月 9 日,執 行が初登 ( 初見 ). なおボルト設置に関して矢筈岳右岸壁下部壁及び上部壁は金 属の腐食が激しいのでステンレス等の腐食に強い材質を選択する 方が好ましい

ktarn.or.jpssigyo/kuuhaku/kuuhaku.pdfCreated Date 2/15/2006 10:05:46 AM

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Page 1: ktarn.or.jpssigyo/kuuhaku/kuuhaku.pdfCreated Date 2/15/2006 10:05:46 AM

矢筈岳右岸壁下部壁 大いなる空白 (3P 5.11a 60m)

アプローチ 比叡山三峰のトンネルを 500 m程北上すると,左脇に鋭角ターン

が必要なコンクリート舗装の農道がある.大型車では困難が予想さ

れるこの農道を廃屋まで下り,車三台分の空き地に車を止める.廃

屋脇から杉林を抜け沢に降り,沢沿いに 100 m程北上すると,三角

錐の形状のボルダーがある.ここから対岸の杉林の斜面を水平道へ

上がる.水平道を南下すると,数メートルのトンネルと 20 m程度

のトンネルがあり,更に 100 m程進むと頭上に大きなルーフが見え

てくる.このルーフのクラック直下のコーナー部分のフェイスから

取り付く.ここまでの所要時間は車から降りて約 20分.取り付き

からはハンガーボルトが三本確認でき,更に 3P目の中間部分まで

確認できる.下降は 3P目終了点の立木より懸垂下降.

使用ギアキャメロット # 0.5 ~ 4 (# 0.75 ~ 2は 2セット )

1P 目 (5.11a 30m B4 NP) コーナー部分のフェイスから始まり,小ルーフのコーナークラッ

クを越えるとハンドサイズの易しいクラックとなる.終了点は立

木.2005年 6月 5日,下部コーナー部分のフェイスに陳内氏がハ

ンガーボルトを設置.この部分が核心でグレードを 5.11a (B4)とし

た.10m登るとレイバックで始まる小ルーフ越えのコーナークラッ

クとなり,この部分のグレードは 5.10b (NP).6月 5日,橋井参二

氏が初登.10月 8日終了点の立木下部にバックアップ用ハンガー

ボルトを 1本設置.

2P 目 (5.10b 10m NP) ルーフ直下の水平クラックを左へトラバースする.フェイスの要

素が強い.終了点はハンガーボルト 2本.スタンスの下には綱の瀬

川が見える.5.10bというグレードは,初登者曰く,あのロケーショ

ンで先の全く見えない状態でトラバースに入ることを加味したとの

こと.足が震えなければグレード以下に感じるのであろうか.6月

5日,橋井・山口・荒巻・執行で偵察を行い,宮川氏らにより 21

年前に設置された朽ちた RCCボルトを確認.10月 8日ハンガーボ

ルトに打ち換え終了点とした.10月 9日,荒巻悦子氏が初登.

3P 目 (5.9 20m NP) チムニーから始まるルーフクラックのチョックストーンを越え,

クラック沿いにブッシュ帯へ入る.終了点は立木.水平道から見る

とチョックストーン越えは困難そうに見えるが,登ってみるとハン

ドの効きもよく意外に易しい.往年のクライマーにはグレード以下

写真 1 1P目を試登する執行.小ルーフのコーナークラック及び 3P 目のルーフクラックのチョックストーンが確認できる. (写真提供 橋井氏 )

写真 2 2P目を偵察中の橋井氏.頭上にはルーフクラック. (写真提供 橋井氏 )

 最近ではハイカーに人気の矢筈岳水平道.トンネルを越え徒歩で南下すると,上部に右岸壁上部壁マスターズルーフより大きな張り出しが見える.このルーフの弱点であるクラックのチョックストーン部分を水平道から 3 ピッチで抜ける.このルートは 1984 年に宮川 章 ( 故人 )・兵藤 勝・陳内安幸氏により偵察されており,この年は白岩孝行・内藤直也氏らにより岩と雪 111 号に発表された矢筈岳右岸壁上部壁開拓の 1 年程前である.2005 年 10 月 9 日完成.ルート名を大いなる空白とした.見た目より手頃なナチュラルプロテクション (NP) 主体のルートで,アプローチも近い.

執行 信介

に感じられることと思う.陳内氏によると未登とのことであるが,

真相は如何に.ブッシュ帯の方が長いのが玉に瑕.10月 9日,執

行が初登 ( 初見 ).

 なお,ボルト設置に関して,矢筈岳右岸壁下部壁及び上部壁は金

属の腐食が激しいので,ステンレス等の腐食に強い材質を選択する

方が好ましい.